説明

金属を連続鋳造するための、液体冷却された鋳型

【課題】 金属を連続鋳造するための、液体冷却された鋳型であって、この鋳型が、銅または銅合金から成る鋳型板1、1aを備えており、これら鋳型板が、固定ボルトを用いて、それぞれに、アダプター板、または冷却水ボックスと結合されており、その際、これら固定ボルトが、冷却剤流動側面2から、島形状に突出する台地形基部3に沿って固定されており、これら台地形基部が、少なくとも部分的に、鋳型板1、1aとアダプター板もしくは冷却水ボックスとの間に形成された冷却剤間隙内へと突出しており、且つ、この冷却剤の流動方向Sに適合された流線形の形状を備えている。本発明の課題は、この様式の液体冷却された鋳型を、熱的な過負荷を防止し且つ耐用期間を増大するために、この鋳型の冷却性能に関して改善することである。
【解決手段】 冷却剤流動側面2が、領域的に、2つの隣接する台地形基部3の間に配設された、冷却剤間隙内へと突出する冷却リブ4、5、6、6a〜6d、7、7a、11を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念における特徴に従う、金属を連続鋳造するための、液体冷却された鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
この様式の鋳型は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102 37 472号明細書(特許文献1)から公知である。連続鋳造法設備内における、この様式の鋳型板の使用の際に、鋳込みプロセスからの高い熱の供給に基づいて、所定のプロセスパラメータにおいて、予想外に高い、局部的で熱的な負荷の状態になる。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102 37 472号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、上記のことを出発点として、本発明の根底をなす課題は、冒頭に記載した様式の液体冷却された鋳型を、熱的な過負荷を防止し且つ耐用期間を増大するために、この鋳型の冷却性能に関して改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1の特徴を有する、液体冷却された鋳型でもって解決される。
【0005】
本発明の思想の有利な更なる構成は、従属請求項の対象である。
【発明の効果】
【0006】
液体冷却された鋳型の冷却作用を局部的に増大させるために、冷却剤流動側面が、領域的に、2つの隣接する台地形基部の間に配設された、冷却剤間隙内へと突出する冷却リブを有していることが提案される。
【0007】
本発明の意味における冷却リブは、ウェブ形の隆起部であり、これら冷却リブが、台地形基部と同じ方向に指向している。これら冷却リブは、少なくとも部分的に冷却剤間隙内へと突出しており、即ち、これら冷却リブが、これら台地形基部の場合におけると同様に、冷却剤流動側面に対して隆起している。これら冷却リブの高さ、および従って冷却剤との接触面積は、2つの冷却リブの間に、この冷却剤流動側面に形成された溝部が設けられることによって増大され得る。このようにして、これら冷却リブによって縮小された流動断面積が、少なくとも部分的に再び拡大され、従って、同様にこの流動断面積の低減無しに、改善された冷却作用も、冷却リブを備えるこの領域内において得られる。
【0008】
基本的にしかしながら、冷却剤の流動速度を増大させる目的で、流動断面積を減少させることは達成しようと努力される。このことから、鋳型板からこの冷却剤への局部的に改善された熱伝達が与えられ、且つ従って、鋳型の改善された冷却がこの領域内において与えられる。それに加えて、これら冷却リブによって、冷却面がこれら領域内へと拡大され、このことによって、同様に改善された冷却が与えられる。
【0009】
この改善された冷却によって、鋳型板の板厚を、この領域内において低減させることは可能である。このことから、溶融金属の方を向いた、いわゆる高温側面と、冷却剤との間の、比較的に僅かな間隔が結果として生じる。流動断面積自体は、この板厚の低減によって狭められず、即ち、冷却剤間隙の幅が不変である。断面積変化は、唯一、設けられた冷却リブによって与えられ、これら冷却リブによって、温度レベルがこの厚さ低減されたゾーン内において低下される。
【0010】
冷却リブは、特に鋳型の溶湯レベルの領域内において配設されている。何故ならば、ここで、本発明により、最も高い熱的な負荷生じるからである。
【0011】
基本的に、冷却リブは、冷却剤間隙の内部での圧力損失が過度に大きくならないように寸法を設定されているべきである。過度に高い圧力損失の場合、蒸気気泡を形成する状態となることの危険が存在し、このことによって、熱移送が著しく悪化される。更に、過度に高い圧力損失の場合、冷却剤量の、即ち容積流の低減の状態となることの危険が存在する。この容積流は、予め設定された最大の圧力に基づいて、適宜には増大され得ない。
【0012】
基本的に、冷却リブを冷却剤の流動方向に対して平行に、冷却剤間隙の内側で配設することは可能である。合目的に、これら冷却リブは、しかも、この流動方向に対して角度をなした状態にある長さ部分(Laengenabschnitte)を有している。この場合、45°までの角度範囲が合目的と見なされる。この選択された角度は、この冷却リブの長手方向の延在にわたって変化可能であり、即ち同様に蛇行線形状の経過も可能である。少なくとも領域的に屈曲すること、または湾曲における経過によって、付加的に流動の乱れが形成され、これら流動の乱れは、鋳型板の冷却剤流動側面と冷却剤との間の熱伝達を改善する。蛇行形状の冷却リブは、これら冷却リブが、これら冷却リブの経過内において、流線形の台地形基部の輪郭に適合されていることの利点を有している。
【0013】
互いに隣接する冷却リブ、もしくは、冷却リブと隣接する台地形基部によって形成された流動通路は、本発明の思想の有利な実施形態において、これら流動通路の内部での圧力損失を制限するために、これら冷却リブの長手方向の延在にわたって、一様の断面積を備えている。
【0014】
有利な更なる構成において、台地形基部は、垂直方向列内において一列に、並びに、水平方向列内において一列に配設されており、その際、2つの連続する水平方向列の台地形基部が、水平方向内において、相互に互い違いにずらされた状態で配設されている。このことによって、部分的な均一化が、これら冷却リブによって発生する、冷却剤の高い圧力損失のために得られる。互いに連続する水平方向列が相互に互い違いにずらされていることの無い、垂直方向列、および水平方向列内における、台地形基部の1つの配設において、脈動する冷却剤流が形成される。何故ならば、この冷却剤流は、流動方向内において、反復して断面積が狭小、および断面積が拡大されるからである。この不都合な効果は、これら台地形基部が、互いに連続する水平方向列が、水平方向内において相互に互い違いにずらされていることによって減少される。この冷却剤流の脈動は、2つの連続する水平方向列の台地形基部が、互いに隣接する台地形基部の半分の水平方向間隔だけ、相互に互い違いにずらされて配設されている場合に最も僅かである。このような配設の場合、同様に流動抵抗も最も僅かである。
【0015】
次に、図に示された2つの実施例に基づいて、本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、鋳型板1を示しており、この鋳型板が、詳細には図示されていないアダプター板に沿って固定される。この鋳型板1、およびアダプター板は、詳細には図示されていない、金属を連続鋳造するための、液体冷却された鋳型の板状ユニットを形成している。この鋳型板1は、有利には>350Mpaの耐力を有する銅または銅合金から成り、その際、強度は、基本的に、同様に比較的に僅かであることも可能である。この鋳型板1は、不均等な壁厚を有している。選択的に、この鋳型板は、この鋳型板の全延在にわたって、一定の壁厚を備えている。
【0017】
冷却剤でもって鋳型板1を冷却するために、冷却剤間隙が鋳型板1とアダプター板との間に設けられており、冷却剤間隙は、この冷却剤間隙の高さ内において、冷却剤流動側面2の上方に突出する台地形基部3によって規定されている。これら台地形基部3は、基本的に菱形の構成を備えており、且つ従って、流動技術的に有利に、この冷却剤の流動方向Sに適合されている。これら台地形基部3は、この実施例において、この鋳型板1と共に1つの部材から成るように形成されている。
【0018】
本発明による鋳型板1の場合、冷却剤流動側面に沿って、領域的に、隣接する台地形基部3の間に配設された冷却リブ4、5、6、7が設けられている。これら冷却リブ4、5、6、7は、基本的に、冷却剤の流動方向Sに延在しており、且つ、金属溶融物の溶湯レベルの領域内において設けられている。この実施例において、これら冷却リブ4、5、6、7は、3つの台地形基部の高さ領域を通して延在している。これら冷却リブ4、5、6、7は、基本的に、確かにこの流動方向S内において整向されているが、しかしながら、これら冷却リブが蛇行形状に指向しており、即ちこれら冷却リブが多数の湾曲部を有している。これら湾曲部の位置は、これら台地形基部3の配設に適合されている。このことによって、一様の断面積を有する流動通路8、9、10が形成される。これら流動通路8、9、10は、これら互いに隣接する冷却リブ4、5、6、7によってと同様に、これら隣接する台地形基部3に沿っての冷却リブ4、5、6、7によっても形成される。
【0019】
台地形基部3が、垂直方向列V内において一列に、並びに、水平方向列H1、H2内において一列に配設されていることは認識可能である。これら2つの連続する水平方向列H1、H2の台地形基部3は、水平方向内において、相互に互い違いにずらされた状態で配設されている。この実施例において、これら水平方向列H1、H2の台地形基部は、半分の水平方向間隔Hだけ、相互に互い違いにずらされた状態で配設されている。
【0020】
図2の鋳型板1aは、基本的に、図1の鋳型板に、2つの連続する水平方向列H3、H4の台地形基部3が、水平方向内において、相互に互い違いにずらされた状態で配設されていないことの相違を有して相応している。
【0021】
図3は、鋳型板1の冷却リブ4、5、6、7を備える領域の、拡大された部分図を示しており、この部分図から、これら冷却リブ4、5、6、7、および流動通路8、9、10の経過が比較的に明確に読み取れる。これら異なる流動通路8、9、10の幅が、これら流動通路の全長にわたって基本的に一定であり、これに対して、これら冷却リブ4、5、6、7の幅が、これら冷却リブの長手方向の延在内において全く変化可能であり、且つ、特に良好に図4に基づいて認められる冷却リブの島形状の領域が形成され得ることは認識可能である。
【0022】
図4内における台地形基部3の他の様式の配設に基づいて、同様に冷却リブおよび流動通路の他の模様も形成され、その際、2つの台地形基部の水平方向の間隔に応じて、2つから4つまでの冷却リブが互いに並列して配設されており、これら冷却リブが、これら冷却リブの長手方向の延在内において太くなり、且つ収斂している。これら冷却リブは、この実施例において、異なる長さを有している。最も良く、このことは冷却リブ6aおよび7aに基づいて認められる。この冷却リブ6aは、台地形基部3と同じような輪郭を有しており、且つ従って、隣接する冷却リブ7aよりも著しく短い。ほぼこの冷却リブ6aと同じ高さで、2つの更に別の冷却リブ6b、6cが設けられており、これら冷却リブが、これら冷却リブの全輪郭において、ほぼ台座状の冷却リブ6aに相応し、ただし、流動方向において中央で分割されており、従って、これら冷却リブ6b、6cの間に、流動通路が設けられている。幾分更に先へ図面の平面内において左側に、著しくより幅狭の、台地形基部状の冷却リブ6dが認められる。それぞれの冷却リブ、もしくは流動通路の精確な輪郭は、流動技術的な諸要件から与えられ、且つ、個々に、それぞれの鋳型板に、即ち基本的に台地形基部3の配設に適合されている。
【0023】
図面の平面内において右側に、2つの台地形基部3が、流動方向S内、即ち垂直方向において、相前後して位置して、流動方向に延在する冷却リブ11によって互いに結合されていることが認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】台地形基部に向けての注視の方向における、鋳型板の第1の実施形態の後方の外観の透視図である。
【図2】図1の図に相応する、そのような鋳型板1の、更に別の実施形態の図である。
【図3】図1の鋳型板の、拡大された部分図である。
【図4】図2の鋳型板の、拡大された部分図である。
【符号の説明】
【0025】
1 鋳型板
1a 鋳型板
2 鋳型板1の冷却剤流動側面
3 台地形基部
4 冷却リブ
5 冷却リブ
6 冷却リブ
6a 冷却リブ
6b 冷却リブ
6c 冷却リブ
6d 冷却リブ
7 冷却リブ
7a 冷却リブ
8 流動通路
9 流動通路
10 流動通路
11 冷却リブ
H 台地形基部3の間の水平方向間隔
H1 水平方向列
H2 水平方向列
H3 水平方向列
H4 水平方向列
S 流動方向
V 垂直方向列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を連続鋳造するための、液体冷却された鋳型であって、この鋳型が、
銅または銅合金から成る鋳型板(1、1a)を備えており、
これら鋳型板が、固定ボルトを用いて、それぞれに、アダプター板、または冷却水ボックスと結合されており、その際、
これら固定ボルトが、冷却剤流動側面(2)から、島形状に突出する台地形基部(3)に沿って固定されており、これら台地形基部が、少なくとも部分的に、鋳型板(1、1a)とアダプター板もしくは冷却水ボックスとの間に形成された冷却剤間隙内へと突出しており、且つ、この冷却剤の流動方向(S)に適合された流線形の形状を備えている様式の上記鋳型において、
冷却剤流動側面(2)が、領域的に、2つの隣接する台地形基部(3)の間に配設された、冷却剤間隙内へと突出する冷却リブ(4、5、6、6a〜6d、7、7a、11)を有していることを特徴とする鋳型。
【請求項2】
鋳型板は、冷却リブ(4、5、6、6a〜6d、7、7a、11)の領域内において低減された壁厚を有していることを特徴とする請求項1に記載の鋳型。
【請求項3】
冷却リブ(4、5、6、6a〜6d、7、7a、11)は、
冷却リブ(4、5、6、6a〜6d、7、7a、11)を備える領域内における、冷却剤間隙の流動断面積が、冷却リブ(4、5、6、6a〜6d、7、7a、11)の無い領域内における流動断面積に相応するように寸法を設定されていることを特徴とする請求項2に記載の鋳型。
【請求項4】
流動断面積は、冷却リブ(4、5、6、6a〜6d、7、7a、11)によって低減されていることを特徴とする請求項2に記載の鋳型。
【請求項5】
冷却リブ(4、5、6、6a〜6d、7、7a)は、溶湯レベルの高さ領域内において配設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項6】
冷却リブは、流動方向(S)に対して平行に整向されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項7】
冷却リブ(4、5、6、6a〜6d、7、7a)は、しかしながら、この流動方向(S)に対して角度をなした状態にある長さ部分を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項8】
冷却リブ(4、5、6、6a〜6d、7、7a)は、これら冷却リブの長手方向の延在において蛇行線形状に経過していることを特徴とする請求項7に記載の鋳型。
【請求項9】
冷却リブ(4、5、6、6a〜6d、7、7a)は、これら冷却リブの経過内において、台地形基部(3)の輪郭に適合されていることを特徴とする請求項8に記載の鋳型。
【請求項10】
互いに隣接する冷却リブ(4、5、6、6a〜6d、7、7a)、および、冷却リブ(4、6)と隣接する台地形基部(3)によって形成された流動通路(8、9、10)は、流動方向内において一様の断面積を有して形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項11】
台地形基部(3)は、垂直方向列(V)内において一列に、並びに、水平方向列(H1、H2)内において一列に配設されており、その際、2つの連続する水平方向列(H1、H2)の台地形基部(3)が、水平方向内において、相互に互い違いにずらされた状態で配設されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一つに記載の鋳型。
【請求項12】
2つの連続する水平方向列(H1、H2)の台地形基部(3)は、互いに隣接する台地形基部(3)の半分の水平方向間隔(H)だけ、相互に互い違いにずらされて配設されていることを特徴とする請求項11に記載の鋳型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−341312(P2006−341312A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155783(P2006−155783)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(391011951)カーエム・オイローパ・メタル・アクチエンゲゼルシヤフト (9)
【Fターム(参考)】