金属インク用の光硬化プロセス
金属インクの溶液が混合されて、分配器を用いて基板上に印刷又は分配される。フィルムを乾燥させて、水又は溶媒を除去する。場合によっては、フィルムの分配の後で、光硬化ステップの前に、熱硬化ステップを導入することができる。オーブンを用いて、又はホットプレート等のヒータの表面上に基板を配置することによって、基板及び堆積フィルムを硬化させることができる。乾燥及び/又は熱硬化ステップに続いて、光源からのレーザビーム又は焦点光を、直接書き込みとして知られるプロセスでフィルムの表面上に向ける。光は、フィルムが低抵抗率を有するようにフィルムを光硬化させる機能を果たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第61/053574号及び61/169618号の優先権を主張し、これらの出願は参照として本願に組み込まれるものである。
【0002】
本発明は、一般的に電子回路用の導電パスを形成するための金属インクに関する。
【背景技術】
【0003】
ナノテクノロジー及びナノサイエンスの目的は、数ナノメートルのサイズの対象物(オブジェクト)を理解し、制御し、操作することである。ナノオブジェクトは、単一原子と分子とバルク物質との中間体として振る舞うことが知られている。こうした性質は特有のものであり、バルク物質の性質と異なることが多々ある。特に、ナノオブジェクトは、サイズと共に劇的に変化する性質を示し得る。このことは、その処方プロセスを精密に制御することによって、その性質を制御する可能性を切り開く。
【0004】
ナノクラスタは、平均直径が100nm未満であり、構成要素の数が10から106の範囲の原子又は分子の凝集体である。ナノクラスタは決まったサイズや、構造、組成を有さない。結果として、ナノクラスタは多様な形態を示す。ナノクラスタは、一様であり得(一種類の原子又は分子のみから成ることを意味する)、又は、異種成分から成り得る。ナノクラスタ内の成分は、その成分に応じて、静電力、ファンデルワールス力、共有結合等の非常に多様な力によって結び付けられ得る。Cu(銅)等の金属原子の小クラスタは、バルク金属のニアリーフリーエレクトロンによる力というよりも、共有結合的な力によって結び付けられる。数百個程度の原子を含むクラスタは、略3〜5ナノメートルの直径となり、量子閉じ込めによる強いサイズ依存性を有する。クラスタが大きくなると(最大100ナノメートルの直径)、クラスタは、バルクサイズの極限に近づくなだらかな振る舞いの変化を示す。
【0005】
ナノクラスタは一般的に、バルクでのような結晶格子構造を有さない。有限個のクラスタは、多数の面を備えた多数のヘドロニック(hedronic)構造等の多数のナノ結晶構造を示し得る。一部のナノクラスタは結晶性固体であり得る。ナノクラスタを含む物理的プロセスを説明するためには、所定のサイズ及び組成に対して、結晶構造が主流なのか又は非結晶構造が主流であるのかを理解することが重要である。
【0006】
検討材料として興味深い問題は、ナノクラスタが存在する際の液体から固体への銅等の相転移の状況において何が起きるのかということである。この問題に対する答えは、熱力学的及び力学的なエネルギー安定性の影響を提供する。ナノクラスタは、非常に高い表面積対体積比を有し、高い表面エネルギーを有する。ナノクラスタの構造(ファセット(面)、エッジ(縁)、頂点を含む)は、この表面エネルギーに強い影響力を有し、ナノ粒子の振る舞いを支配する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T.L.Hill著、“Thermodynamics of Small Systems”、パートI及びII、Benjamin、アムステルダム、1964年
【非特許文献2】A.L.Mackay、Acta Crystallogr.、1962年、第15巻、p.916
【非特許文献3】T.P.Martin、Phys.Rep.、1996年、第273巻、p.199
【非特許文献4】J.A.Alonso、Chem.Rev.、(ワシントンD.C.)、2000年、第100巻、p.637
【非特許文献5】K.Jug、B.Zummerman、A.M.Kostler、Int.J.Quantum Chem.、2002年、第90巻、p.594
【非特許文献6】S.Darby、T.V.Mortimer‐Jones、R.L.Johnson、C.Roberts、J.Chem.Phys.、2002年、第116巻、p.1536
【非特許文献7】J.P.Doye、D.J.Wales、New J.Chem.、1998年、第22巻、p.733
【非特許文献8】P.Pawlow、Z.Phys.Chem.,Stoechiom.Verwandtschaftsl.、1909年、第65巻、p.1
【非特許文献9】R.Kofman、P.Cheyssac、A.Aouaj、Y.Lereah、G.Deutscher、T.Ben‐David、J.M.Pennison、A.Bourret、Surf.Sci.、1994年、第303巻、p.231
【非特許文献10】L.Wang、Y.Zhang、X.Bian、Y.Chen、Phys.Lett.A、2003年、第310巻、p.197
【非特許文献11】S.L.Lai、J.Y.Guo、V.Petrova、G.Ramanath、L.H.Allen、Phys.Rev.Lett.、1996年、第77巻、p.99
【非特許文献12】J.Westergren、H.Gronbeck、A.Rosen、S.Nordholm、J.Chem.Phys.、1998年、第109巻、p.9848
【非特許文献13】V.N.Likhachev外、“Anomalous heat capacity of nanoparticles”、Phys.Lett.A、第357巻、p.236
【非特許文献14】A.Proykova外、“Temperature induced phase transformations of molecular nanoclusters”、Vacuum、2003年、第68巻、p.87
【非特許文献15】H.Zhu、Philos.Mag.Lett.、1996年、第73巻、p.27
【非特許文献16】G.Mie、Ann.Phys.、1908年、第25巻、p.377
【非特許文献17】U.Kreibig、J.Phys.F、1974年、第4巻、p.999
【非特許文献18】J.A.Creighton、D.G.Eadon、J.Chem.Soc.,Faraday Trans.、1991年、第87巻、p.3881
【非特許文献19】A.Henglein、J.Phys.Chem.、1993年、第97巻、p.5457−5471
【非特許文献20】T.H.Fleisch外、J.App.Surf.Sci.、1982年、第10巻、p.50
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ナノクラスタの物理的振る舞いを完全に理解するために、複数の段階が行われる。第一に、ナノ粒子構造は、銅ナノクラスタの振る舞いを理解するための出発点である。構造‐性質の関係性の非常に複雑な理解を得るために、最小エネルギーの状態の深い研究が行われ、その結果が分析されている。そうした結果は非常に複雑で入り組んでいて、現在までにおいて、銅ナノクラスタに対しては、世界中の誰によっても行われていない。第二には、温度上昇の効果を求めることである。この問題に答えるためには、有限系の熱力学の専門家である必要があるが、そのような専門家は世界中においても非常に少ない。第三に、特に銅ナノクラスタの相転移に対して、実験設定における時間スケール対形態の相転移の時間スケールがどのようなものであるかを理解する必要がある。基本的に、この問題は、ナノクラスタの形成及び破壊における力学的効果の研究によって解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】結晶性クラスタ、二十面体(Icosahedron)クラスタ、十面体(Decahedron)クラスタについての過剰エネルギーに対する定性的振る舞いを示す。
【図2】固体コア及び周囲の液体シェルを備えた粒子を示す。
【図3】錫クラスタに対する理論及び実験の融点の比較である。
【図4】銅ナノクラスタに対する成長シミュレーションを示す。
【図5】水中の長球Rh及びPt粒子に対する双極子近似において計算された吸収スペクトルのグラフを示す。粒子の短径は10nmであり、アスペクト比は1.0(---)、2.0(---)、3.0(---)である。
【図6】入射光の電場ベクトルによる球状金属粒子の分極を示す。
【図7】水中のカドミウムとタリウムの凝集した粒子(a)と孤立した粒子(b)の吸収スペクトルを示す。
【図8】平均粒径と、粉末の色と、インクの色と、光硬化後の抵抗率との間の相関関係を示す。
【図9】亜酸化窒素に晒す前(0)と多様な時間で晒した後との古くなったCd溶液の吸収スペクトルを示す。
【図10】光硬化プロセスにおける銅酸化物から金属銅への還元の証拠を示す
【図11A】空気中100℃でのプレ硬化後のSangyo社の銅ナノ粒子(〜50nm)を示す;Cu/Cu2Oは2.6:1(28%Cu2O)である。
【図11B】光硬化プロセス後のSangyo社のナノ粒子を示す;Cu2Oピークの強度が顕著に減少していて、Cu/Cu2Oは13:1(7%Cu2O)である。
【図12A】空気中100℃でプレ硬化させたAmerican Elements社の銅ナノ粒子を示す。
【図12B】American Elements社の銅ナノ粒子が1300Vの電圧で光硬化されて、光硬化後に青みがかった色が観測される様を示す。
【図12C】American Elements社の銅ナノ粒子が1400Vの電圧で光硬化されて、光硬化後に赤みがかった色が観測される様を示す。
【図13】フラッシュキセノンランプからのスペクトルを示す。
【図14】本発明の実施形態による乾燥パラメータを示す。
【図15】サンプル3〜8に対する電気特性がサンプル2のものに非常に良く似ている様を示す。
【図16】光焼結ステップ中のカプトンからの銅のブローオフのパーセンテージを示す。
【図17】各サンプルに対する乾燥パラメータを示す。
【図18】サンプル5及び7〜10に対する電気特性がサンプル2のものよりも優れている様を示す。
【図19】光焼結ステップ中のカプトンからの銅のブローオフのパーセンテージを示す。
【図20】各サンプルに対する乾燥パラメータを示す。
【図21】サンプル2〜5の抵抗率がサンプル1のものと比較して増大していた様を示す。
【図22】サンプル3及び4が低い低効率を有しながらも、光焼結中にわずか20%のブローオフしか有していなかった様を示す。
【図23】サンプルに対する電気特性を示す。
【図24】乾燥時間を示す。
【図25】光焼結プロセス中のカプトンからの銅のブローオフのパーセンテージを示す。
【図26A】ナノ粒子金属フィルムのインクジェット印刷及び光硬化用のシステムを示す。
【図26B】ナノ粒子金属フィルムのインクジェット印刷及び光硬化用の方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
銅ナノクラスタの表面構造:
一般的に、所定の構造のサイズNのクラスタの結合エネルギー(Eb)を以下のように書くことができる:
Eb=aN+bN2/3+cN1/3+d (1)
ここで、第一項は、体積の寄与に対応し、他の項は、ファセット、エッジ、頂点からの表面の寄与を表す(非特許文献1を参照)。体積の寄与と表面の寄与とは競合する。低表面エネルギーのクラスタは、表面積対体積の比を最適化するために、一般的に準球形状と最密ファセットを有する。
【0011】
式(1)から、サイズNのクラスタの安定性を反映する有用なパラメータを求めることができる:
【数1】
ここで、εcohは、バルク固体における粒子当たりの凝集エネルギーであり、Δは、完全なバルク結晶におけるN個の原子に対する過剰エネルギーである。結晶構造のクラスタに対して、式(1)のパラメータaは単純にεcohであり、
limN→∞Δ=Eb (3)
となる。
【0012】
図1のグラフに示されるように、ナノ結晶構造の場合には、a>εcohで、サイズが大きくなると、Δは発散する。
【0013】
光硬化を利用して行われる溶融プロセスにおける固体から液体への、また、液体から固体への相転移を厳密に模倣しまた計算するためには、固体銅ナノクラスタの取ることのできる異なる複数のクラスタ形状がどのようなものであるのかを実験的及び理論的に理解することが重要である。
【0014】
二十面体(二十面のファセット)及び十面体(十面のファセット)等の可能な最低エネルギーを有する異なる複数の形状を構築する解法は、文献に与えられている(非特許文献2、非特許文献3を参照)。
【0015】
特に銅クラスタに対して、小銅ナノクラスタのエネルギー特性を理解するために、ある研究が行われた(非特許文献4を参照)。例えば、N≦10に対して、小さなNに対する平面状構造(フレーク)の可能性の証拠が存在し、略1015にNが大きくなると、二十面体が、立方体よりも好ましいものとなる。こうしたクラスタのエネルギー論を理解するためには、密度汎関数法(非特許文献5を参照)に基づいた、又は、半経験的ポテンシャル計算(非特許文献6、非特許文献7を参照)に基づいた、非常に複雑な計算及び研究を行わなければならない。いずれの場合でも、小数の実験結果と比較された全ての計算は、銅のナノクラスタに対して、二十面体、中間サイズの十面体、大きな面心立方(fcc)クラスタが主流であることを示している。
【0016】
銅ナノ粒子の融点のサイズ依存性:
重要な点は、融点のサイズ依存性を理解することである。所定の物質に対するナノクラスタの融点のサイズ依存性は通常、サイズの減少と共に単調減少し、また、不規則な変化も示し得る。
【0017】
簡単のため、所定の圧力pにおけるサイズNで球形状のクラスタを考える。その融点は、サイズの関数Tm(N)であると予想される。そして、Tm(N)とTm(∞)(バルク物質の融点)との比較を行う。銅ナノクラスタの光硬化の場合、そのナノクラスタの固体‐液体相転移を研究することが重要である。Tm(N)の解を求めるためには、固体及び液体の化学ポテンシャルを同等として以下の式を解く必要がある:
μs(p,T)=μl(p,T) (4)
【0018】
この式は、完全な固体と完全な液体クラスタの化学ポテンシャルが溶融において等しいことを意味している。複数の数学的操作(非特許文献8を参照)の後に、以下の式が得られる:
【数2】
ここで、Cは定数であり、粒子当たりの溶融潜熱、粒子の密度、固体気体界面や液体気体界面等における界面張力に依存する。
【0019】
このモデルは、光硬化プロセスの場合であると考えられる表面溶融の可能性を含ませることによって、改良可能である。この場合、図2に示されるように、溶融プロセスはナノクラスタの表面から始まると考えられる。
【0020】
溶融温度は、固体コア/液体シェル粒子に対する平衡条件を課すことによって、求められる。このモデルは、特に金属粒子に対して、更に複雑になり拡張される(非特許文献9を参照)。この場合、新たな変数ξが導入され、この変数は、固体液体界面及び液体気体界面の間の有効相互作用を考慮するのに加えて、原子と液体金属の間の相互作用の長さに対する指標である。この有効相互作用は反発性であり、図2に示されるように、固体コアと気体との間の液体シェルの形成を好む。その式ははるかに複雑であるが、極限ξ→0において、式(5)で表される単純な解に戻されることは興味深い。
【0021】
固体コア/液体シェルモデルはより正確であり、実験結果にはるかにフィットすると考えられる。実際、一部の研究者(非特許文献10)は、銅についてのN=500に対して、この固体コア/液体シェルモデルが非常に良くフィットすることを発見した。例えば、図3は、錫クラスタの理論及び実験の融点の比較を示すグラフであり(非特許文献11を参照)、この方法が、サイズに対する錫クラスタの溶融温度の低下を理論的に予言することができることを明示している。
【0022】
ナノクラスタ及び光硬化における溶融プロセス:
光硬化プロセスに対して、銅ナノクラスタの溶融プロセスと、液体銅ナノ小滴の凝固プロセスにおける銅ナノクラスタの形成との両方を考慮する。特に、力学的効果は、ナノクラスタの形成に強く影響し得る。重要な検討事項は、銅ナノクラスタ形成の時間スケールである。ナノクラスタ形成の時間スケールは、1ミリ秒未満から数ミリ秒にまで及び得る。この時間スケールに対して、力学的観点から、クラスタは、最小自由エネルギー構造に到達することができず、非常に長寿命の準安定状態に陥ったままであり得る。特に、本願で開示される光硬化プロセスの場合のように、クラスタが凝固の後に更に冷却される場合に非常に長寿命となる。
【0023】
本願で説明される光硬化プロセスにおける銅の固体クラスタの形成プロセスのモデルを構築し研究するために、熱浴に接触している固体クラスタを研究する。本発明の一実施形態においては、この浴は、基板及び基板周囲の環境を含むので、より複雑になる。
【0024】
ナノクラスタの形成を研究するためには二つのモデルがある。一つは、液体状態成長モデルと称され、固体化するまで液滴を凝固させることによってシミュレーションされ、通常はNが一定でTが減少する。銅金属の場合、原子の蒸発の効果をこのタイプの計算で考慮する必要はない。何故ならば、融点と沸点との間に非常に大きな差があり、結果として、気化冷却は無視できるからである。
【0025】
他のモデルは、固体状態成長モデルと称され、一定温度で小さな初期シードに個々の原子を追加することによってシミュレーションされる。銅ナノクラスタの光硬化においては、液体ナノ小滴の凝固の効果が存在するので、温度が一定とは考えられない。
【0026】
優れたモデルは、より冷たい周囲環境との熱接触を再現することである。こうした方法では、温度変化速度等の最も関連するパラメータを考慮することができる。この方法に従って(非特許文献12を参照)、温度変化がナノクラスタの半径Rに反比例する関係を得ることができる:
【数3】
【0027】
銅ナノクラスタの成長は、上述のようにポリ二十面体クラスタ構造によって支配されている。理論的には、ポリ二十面体構造が好むいくつかのマジックサイズ、つまりNの値が存在し、最も安定になることが確かめられていることは興味深い。例えば、図4は、400Kの温度におけるCu38の成長プロセスを示す。
【0028】
ナノ粒子の異常熱容量及び光硬化プロセス
光硬化プロセスを理解するために、ナノ粒子の異常熱容量を考慮する(非特許文献13を参照)。そもそも何故ナノクラスタ又はナノ粒子の異常熱容量の振る舞いを予測すべきなのかという疑問がある。大抵の状況では、こうした熱容量は、バルクのものと定性的には同様である。しかしながら、問題は、ナノクラスタの形成又はその溶融において、二つ以上の相の共存領域が存在する点である。このことは、熱容量の或る特異な振る舞いを生じさせ得る。光硬化プロセスにおいては、ナノクラスタの相変化という状況が存在する。このような小さな系の熱力学は、熱力学の標準的な教科書の範囲外である。
【0029】
理解のために、二つの相に対する平衡を考える。二つの相の間の平衡(バルク形態又はナノクラスタ形態)は、平衡定数によって説明可能である:
Keq(T)=exp(−ΔF/KT) (7)
ここで、ΔFは、固体と液体との間の自由エネルギーの差である。また、以下の関係が知られている:
ΔF=NΔμ (8)
【0030】
結果として、平衡定数を以下のように書くことができる:
Keq(T)=exp(−NΔμ/KT) (9)
ここで、Nは、系の中の粒子数であり、Δμは、二つの相の化学ポテンシャルの平均差である。
【0031】
従って、Δμ/kTが非常に小さい(略10−10)としても、Nが1020のオーダであると、熱力学的に好ましくない相は、あまりにも好ましくないものであるので、単純に観測不能である。しかしながら、Nが10や1000のオーダの場合には、各相が、そのようなものとして認識される一般的な特性を確立するのに十分長く存続する限りにおいて、二つ以上の相が熱力学的に平衡で共存し得る温度及び圧力範囲を見つけることは非常に簡単である。実際には、上述のように、銅ナノクラスタの溶融又は凝固の場合、異性体が共存可能な状況が存在し得て、これは、結果として、異常熱容量の振る舞いを誘起し得る。このことは、他の変数と共に、銅ナノクラスタの温度誘起相転移として光硬化をモデル化する際には、考慮される。このタイプのモデル化では、大規模な分子動力学(MD,molecular dynamics)及びジャンプ‐ウォーキング・モンテカルロ(MC,Monte Carlo)シミュレーションが用いられるが(非特許文献14を参照)、これには、固体‐固体変換、固体‐液体変換、凝固点以下での冷却現象を取り扱う必要がある。これは非常に複雑であり、数百万の構成を用いて、同じサイズの異なるクラスタに対してシミュレーションを平均化する。このタイプの計算及びモデル化は、光硬化実験の範囲外である。
【0032】
合体を考慮しようとすると、モデル化は、更に複雑になる。このプロセスは非常に複雑で、二つの固体クラスタ、液体と固体クラスタ、二つの液体クラスタの合体を考慮しなければならない。二つの液体クラスタの合体は急速に生じる一方で、二つの固体クラスタの合体プロセスははるかに時間がかかる。
【0033】
いずれにせよ、研究者は、二つの固体クラスタの合体は非常に複雑で、非常に遅い時間スケールで行われ、単一領域のクラスタ又は複数のグレインを示す複雑な構造のいずれかの形成が含まれ得ると結論付けている(非特許文献15を参照)。実際に何が生じるのかは、初期クラスタのサイズ及び構造に依存し、使用される銅ナノ粒子の初期サイズの光硬化における関数となり得る。
【0034】
ナノ粒子の吸収スペクトル
光硬化プロセスには、小金属粒子による光吸収の研究及び分析が含まれる。小粒子による光吸収の理論は、ミー方程式によって説明される(非特許文献16を参照)。粒子の吸収は、バルク金属自体のものとは大きく異なることが多いと認識されてはいるが、所定の溶媒中の粒子の吸収スペクトルは、バルク金属の光学定数から計算可能である。最も単純な場合は、粒子が球形で、そのサイズが光の波長に比べて小さい場合である。更に、簡単のため、粒子が溶液中で良く分離されていると仮定する。ミー理論によると、略3から20ナノメートルの間の粒径においては、粒径に対する吸収スペクトルの強い依存性は存在しない。これは、この非常に小さな粒径ではバルク金属の電子の平均自由行程がはるかに大きく、結果として、ミー方程式の最も顕著な項が双極子の項によるものであり、溶液中の全金属濃度のみに依存して、粒径には依存しないからである。この場合、mol−1・L・cm−1単位での吸収係数は、以下の関係式から計算される:
【数4】
ここで、
‐ λはnm単位での光の波長;
‐ Mは分子量;
‐ ρは金属の密度;
‐ n0は溶媒の屈折率;
‐ ε1、ε2は金属の誘電率の実部と虚部である。
【0035】
興味深い状況は、粒子のサイズが、電子の平均自由行程(銀に対して52ナノメートル、銅に対して39ナノメートル)よりも小さくなる場合である。この場合、吸収バンドが広がる。その理由は、サイズ補正が必要であり、式(10)が以下の関係によりサイズに依存し始めるからである(非特許文献17を参照):
ε2=ε2(バルク)+(ωp2/ω3)(νF/R) (11)
ここで、
‐ ωは光の周波数;
‐ ωpは特定の金属のプラズモン周波数;
‐ νFはフェルミ準位における電子の速度;
‐ Rは粒子の半径である。
【0036】
基本的には、比R/νFは、特定の金属粒子中の電子の自由移動の平均時間である。
【0037】
ミー方程式を用いた大規模なモデル化及び計算が、CreightonとEadonによって行われている(非特許文献18を参照)(図5を参照)。図5は、双極子近似を考慮して、400ナノメートルの波長以下での金属の吸収をうまく説明する様子を示す。吸収の全体像を完成させるためには、特定の金属における電子エネルギー準位及び許容される光学遷移を考慮する必要がある。第一に、バンド内遷移を取り扱う必要があり、これには場合によって光子の関与が必要とされる。この場合、こうしたバンド内遷移は、光の吸収に顕著には寄与しない。しかしながら、激しい吸収が一部の金属粒子では観測され、図6に示されるように、低光子エネルギーでのそのピークは、粒子中の自由電子の集団励起によって生じる。
【0038】
図6を参照すると、入射光の電場ベクトルの影響下における電子の移動は、粒子球面にわたる双極子励起につながる。そして、正の分極電荷は、電子を振動させる復元力として作用する。従って、数オングストローム(遮蔽距離に略等しい)の表面層内部の電子密度が振動する一方で、粒子内部は一定のままである。場合によっては(銀等)、集団振動の励起(プラズモン吸収)及びバンド内遷移が、分離された波長の形態において生じる。銅(並びに金)の場合、プラズモン共鳴が可視光において生じる。しかしながら、こうした共鳴は、バンド内遷移によって重ね合わせられる。
【0039】
金属粒子の吸収に対するプラズモン振動の寄与は、別に取り扱うことができる。例えば、吸収定数に対するミー方程式は以下のように書ける:
K=9πNVn03cλ2/σ[(λm2−λ2)2+λ2λm4/λa2] (12)
ここで、
‐ Kはcm−1単位での吸収定数であり、K=αcln10、ここでcはモル/リットル単位での金属の濃度;
‐ Nは粒子濃度;
‐ Vは粒子当たりの体積;
‐ λm2=λc2(ε0+2n02)は極大吸収の波長;
‐ ε0は金属の高周波誘電率;
‐ λcはプラズマ波長、λc2=(2πc)2m/4πNee2、また、代表的な特徴 である;
‐ Neは自由電子の密度;
‐ λaは吸収の半値におけるバンド幅に関する定数、
λm2/λa=(ε0+2n02)c/2σ
‐ σはDC伝導度、σ=Nee2{r}/mνF;
‐ Mは有効電子質量;
‐ {r}はコロイド中の電子の平均自由行程;
‐ 1/{r}=(1/r+1/r∞);
‐ r∞はバルク金属における平均自由行程。
【0040】
上述の関係は、バンド位置が粒子のサイズに依存しないことを示している。粒子表面に電子を加えることによるNeの増加は、青方偏移及びバンド幅の減少につながり、結果として、吸収極大の増大につながる。
【0041】
吸収スペクトルに対するナノ粒子凝集の効果:
観測されるスペクトルの実験と計算との間の優れた比較は、限られた数の場合に対して、以前から可能であった。その主な理由は、金属は、コロイド溶液中において孤立粒子を形成せずに、数個又は多数の粒子の凝集体になることが多いからである。凝集体は、吸収スペクトルを劇的に変化させ得る。典型的な例が図7に示されていて、カドミウム及びタリウムコロイドの吸収スペクトルがグラフにされている。
【0042】
図7のスペクトル(a)は、凝集した粒子を含む溶液に対して得られたものである。一方、スペクトル(b)は、凝集が生じない条件下で作製された溶液に対して得られたものである。スペクトル(b)は、ミー方程式と良く一致し、図5の計算されたスペクトルとも良く一致する。
【0043】
上述の説明及び図7の結果を考慮すると、コロイド状金属物質は、スペクトルがスペクトル(a)と同様であると、黒色を呈する。一方、粒子が凝集していないと(つまり、良く分散して粒子間が良く分離されていると)、スペクトル(b)によって示されるより金属的な色が観測される。
【0044】
図8にまとめられているように、平均粒径と、粉末の色と、インクの色と、硬化後の抵抗率との間には結果としての相関関係が存在する。優れたインクは、粉末及びインクの色が赤褐色又は茶色の範囲内にある時に得られる。漆黒または非常に暗い見た目の粒子及びインクが存在する場合には、凝集が生じている。
【0045】
溶液が古くなると、スペクトル(b)からスペクトル(a)への吸収スペクトルの劇的な変化が生じる(図7を参照)。その理由は、初期段階において良く分散して孤立した銅ナノ粒子が存在する一方で、経時プロセスによって凝集体が段々大きくなるからである。結果として、銅コロイドの色が、金属的な赤褐色からより暗い色に変化し、最終的には黒色に移る。
【0046】
古くなったカドミウム(Cd)溶液のスペクトルにおいて非常に興味深い実験が説明されている(非特許文献19を参照)。古くなったカドミウム溶液を、亜酸化窒素に晒して、スペクトルを時間の関数として測定した。カドミウム粒子は、以下の式に従ってN2Oとゆっくり反応する:
Cd0+N2O+H2O→Cd+++N2+2OH− (13)
【0047】
図9に見て取れるように、この反応の間に吸収強度が低下するだけではなく、長波長ピークのスペクトル形状が急激に消失している。その効果は、凝集したコロイドの色の酸化還元反応において頻繁に生じる現象によるものである;つまり、凝集体の分解が、多かれ少なかれ孤立した粒子を生じさせる。このことは、粒子の帯電に寄与する:つまり、N2Oとの反応が進行すると、粒子は正に帯電して、互いに反発する。
【0048】
光硬化プロセス中の銅酸化物から銅への還元
Sangyo社(〜50nm)及びAmerican Elements社(80nm)製の銅ナノ粒子を、B1タイプインクと処方する(IPA、ヘキシルアミン及び銅ナノ粒子)。銅ナノ粒子の組は両方とも、銅酸化物を20%以上含む。図10に示される証拠は、光硬化が銅酸化物を金属銅に光還元することができることを示す。
【0049】
フラッシュランプでは、銅酸化物の光還元に対する閾値エネルギーが存在し得る。光硬化インクの個々のXRDを、Sangyo社及びAmerican Elements社のB1タイプインク処方剤の両方に対して行った。図11(a)は、空気中100℃でプレ硬化させた後のSangyo社の銅ナノ粒子のXRDを示し、図11(b)に示されるのは、光硬化プロセス後のXRDに対する変化である。
【0050】
この場合、Cu2Oは、完全に銅(200)に変化している。同じ現象がAmerican Elements社の銅ナノ粒子でも観測されたが、この場合、光硬化ランプの電圧に対する依存性が観測された(図12を参照)。図12Aは、空気中100℃でプレ硬化させたAmerican Elements社の銅ナノ粒子を示す;図12Bは、1300Vの電圧で光硬化させたAmerican Elements社の銅ナノ粒子を示し、青みがかった色が光硬化後に観測される;図12Cは、1400Vの電圧で光硬化させたAmerican Elements社の銅ナノ粒子を示し、赤みがかった色が光硬化後に観測される。
【0051】
映像及びXRDのデータは、銅酸化物から金属銅への還元が光硬化中に生じていることを示している。Fleischの仕事によると(非特許文献20を参照)、金属酸化物のバンドギャップが金属酸化物の生成エンタルピーよりも大きい場合、金属への光還元は、バンドギャップよりも高いエネルギーを有する金属酸化物を照射することによって達成可能である。Cu2OとCuOのバンドギャップはそれぞれ、1.9eV(188kJ/mol)、2.6eV(257kJ/mol)である。対応するCu2OとCuOの生成エンタルピーはそれぞれ、157kJ/mol、168kJ/molである。従って、100nmから400nmのUV放射によって、銅酸化物が金属銅に還元される。
【0052】
ナノ粒子の光吸収スペクトル及びフラッシュランプのスペクトル分布:
光吸収スペクトルの分析に基づくと、フラッシュランプのスペクトル分布が重要である。図13に示されるスペクトル分布はキセノンランプの典型的なものであり、使用される出力の略6%が380nm以下のUV放射として放出される。フォトニックエネルギーの大部分は実際には可視光から赤外線の波長の範囲である。電流フラッシュランプと比較して、UV範囲においてより高いエネルギー密度を有するUVランプが有用であり得る。
【0053】
他の考えられるUVランプは、崩壊性エキシマ錯体を含み、銅酸化物を同時に溶融及び光還元することができる改良されたフォトニック硬化ランプを提供し得る。エキシマランプは、多様なUV及びVUV波長において高強度でナローバンドの放射を提供する。エキシマランプは、電子の運動エネルギーをUV放射に変換する非常に効率的なエネルギーコンバータであり得る。エキシマシステムでは、自己吸収は観測されない。大抵の場合、エキシマ形成ガス混合物は、一つの主なナロー放出バンドを示す。エキシマシステムは、自然放出を制限するために、飽和効果が開始する前に非常に高い出力密度でポンピング可能である。従って、非常に明るいUV及びVUV源を構築して本発明の実施形態で使用することができる。
【0054】
また、この分析は、Optomec社のプリンタで結果を説明し、最高の硬化結果を達成するためのより良い選択肢又はレーザモノクロマティック放射へと更に向かい得る。
【0055】
上述のように、金属インクを光焼結させるプロセスにおいて、金属インクをプレ焼結させて、過剰なビヒクル及び溶媒を除去する。これは、オーブンを用いて空気中で行うことができるが、30〜60分間の乾燥時間が必要となり得る。製造プロセスにおいて、この時間は長過ぎるものとなり得る。以下の代替実施形態は、この乾燥時間を減少させる方法を説明する。
【0056】
図26Aを参照すると、ナノ粒子銅フィルム(又は他の適切な金属インク)を同時に又はほぼ同時にインクジェット印刷及び光硬化させるデバイス800が示されている。このデバイスは、基板804の表面上に銅インク801を分配するためのインクジェット分配器802を含む。また、このデバイス800は、インクジェット分配器802によって堆積されたインクフィルム803を硬化させるための光源806も含む。光源はレーザ源(パルス又は連続)、パルスランプ、又は焦点ビームであり得る。一部実施形態では、分配器802は、所定の経路に沿って基板上を自動で通過するように構成される。更に、分配器802は、基板804上に複数の所定の位置及び時間において銅インクを分配するように構成可能である。光源806は、インクジェット分配器802に取り付けられるか、又は、分配器802とは別に基板800上を移動するように構成可能である。光源806は、分配器802によってインクジェット印刷されたフィルムが堆積された後に直ちにフィルムを光硬化させるように構成可能である。代わりに、光源806は、フィルムの堆積に続いて所定の時間でフィルムを光硬化させるように構成可能である。光源806及び分配器802の動きは、コンピュータシステム/制御装置808によって制御可能である。使用者は、制御装置が自動的に所定の経路で分配器802及び光源806を並進移動させるようにコンピュータ808をプログラムし得る。一部実施形態では、光源806及び分配器802が固定されて、基板が、コンピュータ/制御装置808によって制御される可動プラットフォーム上に配置される。
【0057】
光硬化プロセスのフローチャートが図26Bに示されている。金属インクの溶液が、混合されて(810)、分配器802を用いて基板804上に印刷又は分配される(812)。フィルムの堆積は、明確なパターンが形成されるように厳しく制御される。そして、フィルムを乾燥させて(814)、水や溶媒を除去する。
【0058】
場合によっては、熱硬化ステップを、フィルムの堆積に続いて、光硬化ステップの前に導入することができる。基板及び堆積フィルムを、オーブンを用いて、又はホットプレート等のヒータの表面上に基板を配置することによって硬化させることができる。例えば、一部実施形態では、光硬化の前に、フィルムを空気中100℃で30分間にわたってプレ硬化させる。代わりに、熱硬化を、レーザをフィルム表面上に向けることによって行うことができる。乾燥及び/又は熱硬化ステップに続いて、直接書き込みとして知られているプロセスで、光源からのレーザビーム又は焦点光を、フィルムの表面上に向ける(816)。光は、低抵抗を有するようにフィルムを光硬化させる機能を果たす。一般的に、印刷/分配ステップ及び乾燥ステップの後において、金属フィルムは絶縁性である。しかしながら、光硬化プロセスの後では、その絶縁性フィルムが導電性フィルム809となる(図26Aを参照)。
【0059】
一部実施形態では、分配器802を用いて、パターンのおおまかなアウトライン又はブランケットフィルムを堆積させる。典型的には、印刷方法で、25〜50マイクロメートル又はそれ以上のオーダのフィーチャサイズを達成することができる。より微細なフィーチャが必要な場合、パターン/ブランケットフィルムを、光の焦点ビーム又はレーザを用いて精緻に又は小さくすることができるが、この場合、フィーチャは、レーザのスポットサイズによって、又は光ビームの焦点によって定義される。典型的には、光は1マイクロメートル以下に合焦可能である。従って、サブミクロンのフィーチャが可能である。究極的には、フィーチャサイズは、導電性フィルムに使用されるナノ粒子のサイズによって限定され得る。金属粒子を、1〜5nmのオーダのフィーチャを有するように形成可能である。
【0060】
銅ナノ粒子インクに対する真空乾燥の効果:
気流環境とは対照的な真空環境における銅ナノ粒子インクの乾燥の効果を求める実験を行った。サンプルを超音波処理及び手動での撹拌で準備した。そして、サンプルを印刷及び乾燥させた。そして、真空オーブンを用いて、多様な温度でインクを乾燥させた。比較用に、大気中の気流環境下で基準サンプルも用意した。全てのサンプルを光焼結させて、電気特性及び接着性を測定した。結果は、真空環境において乾燥が行われると、選択されたインクに対する乾燥時間が、顕著に減少するというものであった。
【0061】
上述のプロセスは、インクの処方に依存して、30〜60分間にわたって大気圧で気流環境において乾燥させた銅インクサンプルを説明する。この乾燥は、印刷後にインクに残っている溶媒を蒸発によって除去するために行われる。溶媒の蒸発は、続く光焼結プロセスを補助する。インクが過剰量の溶媒を含む場合、結果は、“ブローオフ(吹き飛ばし)”と呼ばれるものであり、溶媒が急速に(実際にはほぼ瞬時に)蒸発して、銅ナノ粒子が基板から周囲環境に吹き飛ばされるという状態である。
【0062】
溶媒をより急速に除去することによって、高スループット製造システムに対して、プロセスがよりコスト効率の良いものとなり得る。多様な温度ではあるが一つの真空レベルにおいて実験を行った。選択されたインクに対する乾燥時間が、気流環境で乾燥させた基準サンプルと比較して導電性又は接着性に顕著に影響することなく、100℃又は125℃で乾燥させた際に減少することがわかった。しかしながら、150℃では、導電性が低下する傾向がある。この実験から収集されたデータは、乾燥時間が真空乾燥によって短縮可能であることを証明するものであるが、このプロセスは、より低い温度及びより短い乾燥時間を有するように拡張可能でもあり、大量生産に向けた銅インクの実行可能性を更に強化し得る。
【0063】
そして、処方されたインクを超音波処理及び手動で撹拌して、凝集体を分解した。インクは数週間にわたって保存期間の研究に用いられ、この実験までシェルフに保存されていた。ドローダウン印刷の前に、インクを略30秒間にわたって手動で撹拌して、16分間にわたって超音波処理して、更に30秒間にわたって手動で撹拌した。
【0064】
使用された方法:
ドローダウン印刷
印刷は、#10ワイヤ被覆ロッドを用いたカプトン基板上のドローダウン印刷機を用いて行われた。ロッドはインクでコーティングされて、均一なコーティングを提供するために表面にわたって引き出された。複数のサンプルを同じ方法で印刷して、実験範囲を適正化した。印刷後に、サンプルをシェルフ上で空気乾燥させた。
【0065】
気流乾燥
二つのサンプルを気流オーブン中100℃で乾燥させたが、一つは30分間、他方は60分間乾燥させた。これらのサンプルは、真空乾燥サンプルとの後での比較用の標準的なプロセスの基準を提供するために作製された。
【0066】
真空乾燥
残りのサンプルは、真空オーブンで多様な温度及び多様な長さの時間で乾燥させた。図14は、各サンプルに対する乾燥パラメータを示す。加熱して、脱ガス用に空の真空オーブンをポンピングして、汚染物を除去した後に、オーブンを通気して、各サンプルに対して以下の手順を行った:
・ 赤外線(IR)温度計によるプラットフォームの温度のチェック及び記録
・ プラットフォームの中心にサンプルを配置
・ 真空ポンピングを開始
・ 圧力が略‐25水銀柱インチに達すると(平均で93秒)、タイマーを始動
・ 時間が切れると、オーブンの圧力(全てのサンプルに対して略‐29.5水銀柱インチ)を記録
・ 直ちにオーブンを通気
・ オーブンが通気されると、IR温度計でプラットフォームの温度をチェック及び記録
・ 全てのサンプルに対して繰り返す
【0067】
焼結前の準備
気流及び真空乾燥が完了すると、接着テストパターンを提供するために、全てのサンプルを記録した。また、光焼結ステップの前の厚さのデータを提供するために、サンプルに番号を付けてプロフィロメータ上で測定した。
【0068】
光焼結
光焼結は、インクを導電性銅フィルムに硬化させるのに用いられる上述の方法である。これには、インクを高集中UV光の短パルスに晒すことが含まれる。全てのサンプルを、各ショットに対して同じ出力及びパルス幅で光焼結させた。用いられた出力は1200Vであり、パルス幅は400、500、600、700、800マイクロ秒であった。
【0069】
特性試験
光焼結が完了した後に、各サンプルの接着性及び電気特性を特性評価した。第一に、4点プローブ法を用いて、フィルムのシート抵抗を測定した。第二に、フィルムの厚さをプロフィロメータ上で測定した。最後に、接着性を、ASTM Standard Test Method for Measuring Adhesion by Tape Test(テープテストによる接着力測定用のASTM標準試験方法)を用いて試験した。全てのデータを収集した後、シート抵抗及び厚さのデータを用いて、抵抗率を計算した。
【0070】
結果
図15を参照すると、サンプル3〜8に対する電気特性は、この処方に対して標準的な熱プロセスで処理されたサンプル2のものに非常によく似ている。しかしながら、真空下150℃で乾燥させたサンプル9及び10では、顕著に抵抗率が増大している。この実験では、全てのサンプルに対して接着性は優れていた(1〜10点中の10点)。これらのデータは、真空乾燥が銅ナノ粒子インクの乾燥時間を短縮する実行可能な解決策であることを示している。図16は、光焼結ステップ中のカプトンからの銅のブローオフのパーセンテージを示す。これらの結果は、マイクロオーム・cmの範囲での抵抗率が、優れた接着力と共に真空中で達成されていることを示し、また、1気圧で100℃で60又は30分間にわたる乾燥と比較して、同程度の抵抗が125℃で5分間の真空乾燥(サンプル#6)で得られることを示している。サンプル#6では、銅のブローオフはわずか5%である。
【0071】
銅ナノ粒子インクに対する赤外線乾燥の効果:
気流オーブン環境(標準的な乾燥プロセス)とは対照的な赤外線ランプ下で銅ナノ粒子インクを乾燥させることの効果を求める実験を行った。サンプルを、超音波処理及び手動での撹拌で準備した。そして、サンプルを印刷及び空気乾燥させた。そして、赤外線ランプを多様な距離で用いて、インクを更に乾燥させた。比較用に、一つのサンプルを乾燥プロセス無しで硬化させて、もう一つのサンプルを気流オーブン環境で乾燥させた。全てのサンプルを光焼結させて、電気特性及び接着性を測定した。この実験で収集されたデータは、赤外線ランプによる乾燥は、気流オーブン乾燥と比較して必要な乾燥時間を減少させることを示している。興味深いことに、何ら乾燥プロセスに晒さなかったサンプルが、気流オーブンで乾燥させたサンプルと同様の電気特性を示した。
【0072】
実験は、市販の赤外線ランプを用いて行われ、大気中でランプまでの多様な距離でサンプルを乾燥させた。適切な長さの時間にわたって短距離で、また、長時間にわたって中程度の距離でサンプルを乾燥させると、インクに顕著な損傷が生じ、結果として光焼結中にインクが吹き飛ばされる。中程度から長距離ではあらゆる長さの時間にわたって乾燥させたサンプルが、ほとんど変化を示さず、場合によっては、気流オーブンで乾燥させたサンプルと比較して僅かな改善を示した。
【0073】
この実験から収集されたデータは乾燥時間が赤外線乾燥で短縮されることを示すのに十分なものであるが、この実験は、より多様なパラメータ(距離及び時間)を含むように拡張可能でもあり、大量生産に向けての銅インクの実現可能性が更に強化される。
この実験で使用された機材:
赤外線ランプ=Phillips社の250W赤熱ランプであり、クランプオンスタイルの反射ソケットに取り付けられている
気流オーブン=Despatch(モデル#LCCL‐54)
ドローダウン=Gardco社のAuto‐DrawIII(モデル#DP‐1250)
【0074】
固体銅ナノ粒子をN2パージグローブボックス内の分散媒に加えて、小型のへらで塊を媒体中に分解させた。そして、インクを超音波処理及び手動で撹拌して、全ての凝集体を分解した。そのインクは数週間にわたって保存期間の研究に用いられ、シェルフに保存された。ドローダウン印刷の直前に、インクを略30秒間にわたって手動で撹拌して、8分間にわたって超音波処理して、更に30秒間にわたって手動で撹拌した。
【0075】
使用された方法:
ドローダウン印刷
印刷は、#10ワイヤ被覆ロッドを用いたカプトン基板上のドローダウン印刷機を用いて行われた。ロッドはインクでコーティングされて、均一なコーティングを提供するために表面にわたって引き出された。複数のサンプルを同じ方法で印刷して、実験範囲を適正化した。印刷後に、サンプルをシェルフ上で空気乾燥させた。一つのサンプルを硬化前のこの状態のままにした。
【0076】
気流焼成
一つのサンプルを100℃で30分間にわたって気流オーブン内で乾燥させた。このサンプルは、赤外線乾燥サンプルに対して後で比較するための標準プロセスの基準を提供するために作製された。
【0077】
赤外線乾燥
残りのサンプルを赤外線ランプの下で、ランプまでの多様な距離で多様な長さの時間に対して乾燥させた。図17は、各サンプルに対する乾燥パラメータを示す。サンプルを、絶縁性セラミックプラットフォーム上で乾燥させて、サンプルからプラットフォームへの及びその逆の熱伝達を最小化した。
【0078】
焼結前の準備
サンプルの乾燥が完了すると、フィルムの厚さを測定する手段を提供するために、全てのサンプルを記録した。そして、光焼結ステップ前の厚さのデータを提供するために、サンプルをプロフィロメータ上で測定した。
【0079】
光焼結
全てのサンプルを、各ショットに対して同じ出力及びパルス幅で光焼結させた。使用された出力は1200Vであり、パルス幅は500、600、700μ秒であった。これは、実験時に用いられる標準的な方法の簡略版である。
【0080】
特性試験
光焼結が完了した後に、各サンプルの接着性及び電気特性を特性評価した。第一に、フィルムのシート抵抗を、4点プローブ法を用いて測定した。第二に、フィルムの厚さをプロフィロメータ上で測定した。最後に、接着力を、接着テープのストリップを加えてその後除去することによって試験した。全てのデータを収集した後に、抵抗率を、シート抵抗及び厚さの結果を用いて計算した。
【0081】
結果
図18を参照すると、サンプル5及び7〜10に対する電気特性は、この処方に対して標準的な焼成を用いて処理されたサンプル2のものよりも優れている。しかしながら、近い範囲で乾燥させたサンプル3及び4は、硬化プロセス中にフィルムが完全に吹き飛んでしまったために無限の抵抗率を示した。6インチで30分間にわたって乾燥させたサンプル6でも抵抗率が増大した。この実験では大抵のサンプルに対して、接着力は許容可能なものであった。ブローオフは、乾燥パラメータに依存して10%から100%の範囲のいずれかで全てのサンプルに対して実質的な問題であった。サンプル1は、大気中で乾燥させただけで、熱を印加していない。このサンプルは、わずかに大きなブローオフを示すが、オーブンで乾燥させたサンプルと同程度の抵抗率を有していた。全体的に、このデータは、赤外線乾燥は必要とされる乾燥時間並びに抵抗率を減少させるが、ブローオフが問題となり得ることを示している。図19は、光焼結ステップ中のカプトンからの銅のブローオフのパーセンテージを示す。
【0082】
結論
サンプル#14は、銅導体の小さなブローオフ(30%)で6.24マイクロオーム・cmの低い抵抗率を有していた(図18及び19を参照)。
【0083】
マイクロ波乾燥の硬化:
溶媒ベースのインク
気流オーブン乾燥とは対照的な銅ナノ粒子インクのマイクロ波乾燥の効果を求める実験を行った。サンプルを超音波処理及び手動での撹拌で準備した。そして、サンプルを印刷及び乾燥させた。そして、マイクロ波オーブン(電子レンジ)を用いて、多様な時間に対してインクを乾燥させた。比較用に、気流オーブン環境で基準サンプルも用意した。最後に、全てのサンプルを光焼結させて、電気特性及び接着性を測定した。この実験で収集されたデータは、銅ナノ粒子インクのマイクロ波乾燥が、インク性能の顕著な増大を提供しないということを示している。
【0084】
実験は、多様な時間ではあるが一つの出力レベル(100%)において行われた。選択されたインクの乾燥時間は、気流オーブン内で焼成した基準サンプルと比較してマイクロ波乾燥によっては減少し得ないことがわかった。この実験から収集されたデータは、マイクロ波乾燥によっては乾燥時間が影響され得ないことを立証するのに十分なものであると考えられるが、この実験は、この実験を異なる出力レベル及びより長い乾燥時間を含むように拡張することもでき、データが更に強化される。
【0085】
使用された機材:
マイクロ波オーブン=General Electric社の家庭用電子レンジ(モデル#JES737WM01)
気流オーブン=Despatch(モデル#LCCL‐54)
ドローダウン=Gardco社のAuto‐DrawIII(モデル#DP‐1250)
【0086】
処方されたインク:
固体銅ナノ粒子をN2パージグローブボックス内の分散媒に加えて、小型のへらで塊を媒体中に分解させた。そして、インクを超音波処理及び手動で撹拌して、全ての凝集体を分解した。そのインクは数週間にわたって保存期間の研究に用いられ、この実験までシェルフに保存された。ドローダウン印刷の前に、インクを略30秒間にわたって手動で撹拌して、8分間にわたって超音波処理して、更に30秒間にわたって手動で撹拌した。
【0087】
使用された方法:
ドローダウン印刷
印刷は、#10ワイヤ被覆ロッドを用いたカプトン基板上のドローダウン印刷機を用いて行われた。ロッドはインクでコーティングされて、均一なコーティングを提供するために表面にわたって引き出された。複数のサンプルを同じ方法で印刷して、実験範囲を適正化した。印刷後に、サンプルをシェルフ上で空気乾燥させた。
【0088】
気流焼成
一つのサンプルを100℃で60分間にわたって気流オーブン内で焼成させた。そのサンプルは、真空焼成サンプルに対して後で比較するための標準プロセスの基準を提供するために作製された。
【0089】
真空焼成
残りのサンプルを、多様な時間に対してマイクロ波オーブンで乾燥させた。図20は各サンプルに対する乾燥パラメータを示す。各サンプルは、回転ガラスプレート上でマイクロ波オーブンの中心部に配置された。
【0090】
焼結前の準備
気流及びマイクロ波乾燥が完了すると、光焼結ステップ前の厚さのデータを提供するために、全てのサンプルをプロフィロメータ上で記録及び測定した。
【0091】
特性試験
光焼結が完了した後に、各サンプルの接着性及び電気特性を特性評価した。第一に、フィルムのシート抵抗を、4点プローブ法を用いて測定した。第二に、フィルムの厚さをプロフィロメータ上で測定した。最後に、接着力を、接着テープのストリップを加えてその後除去することによって試験した。全てのデータを収集した後に、抵抗率を、シート抵抗及び厚さのデータを用いて計算した。
【0092】
結果
図21を参照すると、サンプル2〜5では、サンプル1(この処方に対して標準的な焼成を用いて処理された)のものと比較して抵抗率が増大していた。ブローオフは、10%から80%の範囲のいずれかで全てのサンプルに対して問題である(図22を参照)。接着力は全てのサンプルに対してあまり良くなかった(10点満点中の3から8点)。このデータは、マイクロ波乾燥は、銅ナノ粒子インクの乾燥時間を短縮する実現可能な解決策とはなり得ないことを示している。
【0093】
結論
サンプル3及び4は、低抵抗率を有し、光焼結中にわずか20%のブローオフしか有さない(図22を参照)。
【0094】
水ベースのインク
本インクは水ベースの銅インクである。図23のデータは、図24のサンプルに対する電気特性を示す。サンプル1に対する焼結後の厚さには疑問があり、非現実的な低い抵抗率になっている。
【0095】
図25は、光焼結ステップ中のカプトンからの銅のブローオフのパーセンテージを示す。
【0096】
結論
これらの結果は、30秒間のマイクロ波放射を用いた水ベースのインクでコーティングされたサンプルを乾燥させることが低抵抗率を提供し得る(図23を参照)一方で、ブローオフがわずか10%(サンプル2)に保たれること(図25を参照)を示している。
【0097】
これらの結果は、マイクロオーム・cmの範囲の抵抗率が優れた接着力と共に、真空中で得られること、また、1気圧で100℃における60又は30分間にわたる乾燥と比較して同程度の抵抗率が、125℃で5分間にわたる真空乾燥で得られることを示している。
【0098】
本発明の多数の実施形態について説明してきた。しかしながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多様な修正を行うことができることは理解されたい。例えば、他の導電性金属を、銅の代わりに、又は、銅に加えて用いることができる。
【0099】
まとめ
まとめると、銅インクの光吸収は、多粒子の複雑系であり、個々の構造単位と、粒子間の相互作用による集団効果との両方によって決定されるものである。そのスペクトルは、個々の粒子のプラズモンバンドと、凝集した粒子鎖の軸に対して平行な(低エネルギーモード)及び垂直な(高エネルギーモード)電場での励起に起因する場合によってはより大きな極大との両方を含むことが多い。この場合、球形状への金属粒子の金属はもはや正しくなく、図5の計算を行ったように、長球を考える必要がある。実際、図5からわかるように、凝集体が楕円状になるにつれて、上述のように、スペクトルはスペクトル(b)からスペクトル(a)へと変化していく。
【0100】
以下のことが求められた:
(A) 乾燥状態での又は溶液中での金属銅ナノ粒子の色及びサイズ分布;
(B) バルク銅中の電子の平均自由行程が39ナノメートルであることは、50ナノメートル付近の粒子の経験的な選択の説明となり、粒子のサイズは、良く分散している場合、電子の平均自由行程と同レベルのものである;
(C) サイズの関数としてのナノ粒子の熱容量の振る舞いと、光硬化プロセス中に溶融及び優れた導電性の結果が得られることの理由;
(D) 銅の金属ナノ粒子の光学的振る舞い、また、優れた分散性つまりは光硬化プロセスにおけるより良い溶融とインクの色との相関関係;
(E) インクの品質及び光硬化プロセス後の抵抗率に直接関係している硬化プロセス中の銅酸化物から銅への変換;
(F) 光硬化に最適なランプ。可視光及び赤外線範囲に多くのエネルギーを有することは有用になり得ない。孤立した銅ナノ粒子の優れた分散は、400ナノメートル以下の波長のエネルギーを必要とし得る。このことは、適切なランプの有効性を単純化して、そのエネルギー消費を低下し得る。
(G) 特定の光硬化プロセスは、銅酸化物から銅への完全な変換を達成するためのより高いエネルギーを必要とし、このことは、特定の銅の金属ナノ粒子の製造業者及びインク中の銅ナノ粒子のサイズ分布との相関においてランプの最も有用なスペクトルを使用することによってランプの最適設計用のパラメータを提供する。
(H) インクからの揮発成分の急速な蒸発が、基板からの金属導体の除去につながるので、光硬化ステップの前にそうした成分を蒸発させることが有利である。
(I) 従来の蒸発には、空気中での30又は60分間にわたる加熱が含まれるが、これは、真空又はマイクロ波乾燥方法を用いることによって短縮可能である。
【符号の説明】
【0101】
800 デバイス
801 銅インク
802 分配器
803 インクフィルム
804 基板
806 光源
808 コンピュータ
809 導電性フィルム
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第61/053574号及び61/169618号の優先権を主張し、これらの出願は参照として本願に組み込まれるものである。
【0002】
本発明は、一般的に電子回路用の導電パスを形成するための金属インクに関する。
【背景技術】
【0003】
ナノテクノロジー及びナノサイエンスの目的は、数ナノメートルのサイズの対象物(オブジェクト)を理解し、制御し、操作することである。ナノオブジェクトは、単一原子と分子とバルク物質との中間体として振る舞うことが知られている。こうした性質は特有のものであり、バルク物質の性質と異なることが多々ある。特に、ナノオブジェクトは、サイズと共に劇的に変化する性質を示し得る。このことは、その処方プロセスを精密に制御することによって、その性質を制御する可能性を切り開く。
【0004】
ナノクラスタは、平均直径が100nm未満であり、構成要素の数が10から106の範囲の原子又は分子の凝集体である。ナノクラスタは決まったサイズや、構造、組成を有さない。結果として、ナノクラスタは多様な形態を示す。ナノクラスタは、一様であり得(一種類の原子又は分子のみから成ることを意味する)、又は、異種成分から成り得る。ナノクラスタ内の成分は、その成分に応じて、静電力、ファンデルワールス力、共有結合等の非常に多様な力によって結び付けられ得る。Cu(銅)等の金属原子の小クラスタは、バルク金属のニアリーフリーエレクトロンによる力というよりも、共有結合的な力によって結び付けられる。数百個程度の原子を含むクラスタは、略3〜5ナノメートルの直径となり、量子閉じ込めによる強いサイズ依存性を有する。クラスタが大きくなると(最大100ナノメートルの直径)、クラスタは、バルクサイズの極限に近づくなだらかな振る舞いの変化を示す。
【0005】
ナノクラスタは一般的に、バルクでのような結晶格子構造を有さない。有限個のクラスタは、多数の面を備えた多数のヘドロニック(hedronic)構造等の多数のナノ結晶構造を示し得る。一部のナノクラスタは結晶性固体であり得る。ナノクラスタを含む物理的プロセスを説明するためには、所定のサイズ及び組成に対して、結晶構造が主流なのか又は非結晶構造が主流であるのかを理解することが重要である。
【0006】
検討材料として興味深い問題は、ナノクラスタが存在する際の液体から固体への銅等の相転移の状況において何が起きるのかということである。この問題に対する答えは、熱力学的及び力学的なエネルギー安定性の影響を提供する。ナノクラスタは、非常に高い表面積対体積比を有し、高い表面エネルギーを有する。ナノクラスタの構造(ファセット(面)、エッジ(縁)、頂点を含む)は、この表面エネルギーに強い影響力を有し、ナノ粒子の振る舞いを支配する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T.L.Hill著、“Thermodynamics of Small Systems”、パートI及びII、Benjamin、アムステルダム、1964年
【非特許文献2】A.L.Mackay、Acta Crystallogr.、1962年、第15巻、p.916
【非特許文献3】T.P.Martin、Phys.Rep.、1996年、第273巻、p.199
【非特許文献4】J.A.Alonso、Chem.Rev.、(ワシントンD.C.)、2000年、第100巻、p.637
【非特許文献5】K.Jug、B.Zummerman、A.M.Kostler、Int.J.Quantum Chem.、2002年、第90巻、p.594
【非特許文献6】S.Darby、T.V.Mortimer‐Jones、R.L.Johnson、C.Roberts、J.Chem.Phys.、2002年、第116巻、p.1536
【非特許文献7】J.P.Doye、D.J.Wales、New J.Chem.、1998年、第22巻、p.733
【非特許文献8】P.Pawlow、Z.Phys.Chem.,Stoechiom.Verwandtschaftsl.、1909年、第65巻、p.1
【非特許文献9】R.Kofman、P.Cheyssac、A.Aouaj、Y.Lereah、G.Deutscher、T.Ben‐David、J.M.Pennison、A.Bourret、Surf.Sci.、1994年、第303巻、p.231
【非特許文献10】L.Wang、Y.Zhang、X.Bian、Y.Chen、Phys.Lett.A、2003年、第310巻、p.197
【非特許文献11】S.L.Lai、J.Y.Guo、V.Petrova、G.Ramanath、L.H.Allen、Phys.Rev.Lett.、1996年、第77巻、p.99
【非特許文献12】J.Westergren、H.Gronbeck、A.Rosen、S.Nordholm、J.Chem.Phys.、1998年、第109巻、p.9848
【非特許文献13】V.N.Likhachev外、“Anomalous heat capacity of nanoparticles”、Phys.Lett.A、第357巻、p.236
【非特許文献14】A.Proykova外、“Temperature induced phase transformations of molecular nanoclusters”、Vacuum、2003年、第68巻、p.87
【非特許文献15】H.Zhu、Philos.Mag.Lett.、1996年、第73巻、p.27
【非特許文献16】G.Mie、Ann.Phys.、1908年、第25巻、p.377
【非特許文献17】U.Kreibig、J.Phys.F、1974年、第4巻、p.999
【非特許文献18】J.A.Creighton、D.G.Eadon、J.Chem.Soc.,Faraday Trans.、1991年、第87巻、p.3881
【非特許文献19】A.Henglein、J.Phys.Chem.、1993年、第97巻、p.5457−5471
【非特許文献20】T.H.Fleisch外、J.App.Surf.Sci.、1982年、第10巻、p.50
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ナノクラスタの物理的振る舞いを完全に理解するために、複数の段階が行われる。第一に、ナノ粒子構造は、銅ナノクラスタの振る舞いを理解するための出発点である。構造‐性質の関係性の非常に複雑な理解を得るために、最小エネルギーの状態の深い研究が行われ、その結果が分析されている。そうした結果は非常に複雑で入り組んでいて、現在までにおいて、銅ナノクラスタに対しては、世界中の誰によっても行われていない。第二には、温度上昇の効果を求めることである。この問題に答えるためには、有限系の熱力学の専門家である必要があるが、そのような専門家は世界中においても非常に少ない。第三に、特に銅ナノクラスタの相転移に対して、実験設定における時間スケール対形態の相転移の時間スケールがどのようなものであるかを理解する必要がある。基本的に、この問題は、ナノクラスタの形成及び破壊における力学的効果の研究によって解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】結晶性クラスタ、二十面体(Icosahedron)クラスタ、十面体(Decahedron)クラスタについての過剰エネルギーに対する定性的振る舞いを示す。
【図2】固体コア及び周囲の液体シェルを備えた粒子を示す。
【図3】錫クラスタに対する理論及び実験の融点の比較である。
【図4】銅ナノクラスタに対する成長シミュレーションを示す。
【図5】水中の長球Rh及びPt粒子に対する双極子近似において計算された吸収スペクトルのグラフを示す。粒子の短径は10nmであり、アスペクト比は1.0(---)、2.0(---)、3.0(---)である。
【図6】入射光の電場ベクトルによる球状金属粒子の分極を示す。
【図7】水中のカドミウムとタリウムの凝集した粒子(a)と孤立した粒子(b)の吸収スペクトルを示す。
【図8】平均粒径と、粉末の色と、インクの色と、光硬化後の抵抗率との間の相関関係を示す。
【図9】亜酸化窒素に晒す前(0)と多様な時間で晒した後との古くなったCd溶液の吸収スペクトルを示す。
【図10】光硬化プロセスにおける銅酸化物から金属銅への還元の証拠を示す
【図11A】空気中100℃でのプレ硬化後のSangyo社の銅ナノ粒子(〜50nm)を示す;Cu/Cu2Oは2.6:1(28%Cu2O)である。
【図11B】光硬化プロセス後のSangyo社のナノ粒子を示す;Cu2Oピークの強度が顕著に減少していて、Cu/Cu2Oは13:1(7%Cu2O)である。
【図12A】空気中100℃でプレ硬化させたAmerican Elements社の銅ナノ粒子を示す。
【図12B】American Elements社の銅ナノ粒子が1300Vの電圧で光硬化されて、光硬化後に青みがかった色が観測される様を示す。
【図12C】American Elements社の銅ナノ粒子が1400Vの電圧で光硬化されて、光硬化後に赤みがかった色が観測される様を示す。
【図13】フラッシュキセノンランプからのスペクトルを示す。
【図14】本発明の実施形態による乾燥パラメータを示す。
【図15】サンプル3〜8に対する電気特性がサンプル2のものに非常に良く似ている様を示す。
【図16】光焼結ステップ中のカプトンからの銅のブローオフのパーセンテージを示す。
【図17】各サンプルに対する乾燥パラメータを示す。
【図18】サンプル5及び7〜10に対する電気特性がサンプル2のものよりも優れている様を示す。
【図19】光焼結ステップ中のカプトンからの銅のブローオフのパーセンテージを示す。
【図20】各サンプルに対する乾燥パラメータを示す。
【図21】サンプル2〜5の抵抗率がサンプル1のものと比較して増大していた様を示す。
【図22】サンプル3及び4が低い低効率を有しながらも、光焼結中にわずか20%のブローオフしか有していなかった様を示す。
【図23】サンプルに対する電気特性を示す。
【図24】乾燥時間を示す。
【図25】光焼結プロセス中のカプトンからの銅のブローオフのパーセンテージを示す。
【図26A】ナノ粒子金属フィルムのインクジェット印刷及び光硬化用のシステムを示す。
【図26B】ナノ粒子金属フィルムのインクジェット印刷及び光硬化用の方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
銅ナノクラスタの表面構造:
一般的に、所定の構造のサイズNのクラスタの結合エネルギー(Eb)を以下のように書くことができる:
Eb=aN+bN2/3+cN1/3+d (1)
ここで、第一項は、体積の寄与に対応し、他の項は、ファセット、エッジ、頂点からの表面の寄与を表す(非特許文献1を参照)。体積の寄与と表面の寄与とは競合する。低表面エネルギーのクラスタは、表面積対体積の比を最適化するために、一般的に準球形状と最密ファセットを有する。
【0011】
式(1)から、サイズNのクラスタの安定性を反映する有用なパラメータを求めることができる:
【数1】
ここで、εcohは、バルク固体における粒子当たりの凝集エネルギーであり、Δは、完全なバルク結晶におけるN個の原子に対する過剰エネルギーである。結晶構造のクラスタに対して、式(1)のパラメータaは単純にεcohであり、
limN→∞Δ=Eb (3)
となる。
【0012】
図1のグラフに示されるように、ナノ結晶構造の場合には、a>εcohで、サイズが大きくなると、Δは発散する。
【0013】
光硬化を利用して行われる溶融プロセスにおける固体から液体への、また、液体から固体への相転移を厳密に模倣しまた計算するためには、固体銅ナノクラスタの取ることのできる異なる複数のクラスタ形状がどのようなものであるのかを実験的及び理論的に理解することが重要である。
【0014】
二十面体(二十面のファセット)及び十面体(十面のファセット)等の可能な最低エネルギーを有する異なる複数の形状を構築する解法は、文献に与えられている(非特許文献2、非特許文献3を参照)。
【0015】
特に銅クラスタに対して、小銅ナノクラスタのエネルギー特性を理解するために、ある研究が行われた(非特許文献4を参照)。例えば、N≦10に対して、小さなNに対する平面状構造(フレーク)の可能性の証拠が存在し、略1015にNが大きくなると、二十面体が、立方体よりも好ましいものとなる。こうしたクラスタのエネルギー論を理解するためには、密度汎関数法(非特許文献5を参照)に基づいた、又は、半経験的ポテンシャル計算(非特許文献6、非特許文献7を参照)に基づいた、非常に複雑な計算及び研究を行わなければならない。いずれの場合でも、小数の実験結果と比較された全ての計算は、銅のナノクラスタに対して、二十面体、中間サイズの十面体、大きな面心立方(fcc)クラスタが主流であることを示している。
【0016】
銅ナノ粒子の融点のサイズ依存性:
重要な点は、融点のサイズ依存性を理解することである。所定の物質に対するナノクラスタの融点のサイズ依存性は通常、サイズの減少と共に単調減少し、また、不規則な変化も示し得る。
【0017】
簡単のため、所定の圧力pにおけるサイズNで球形状のクラスタを考える。その融点は、サイズの関数Tm(N)であると予想される。そして、Tm(N)とTm(∞)(バルク物質の融点)との比較を行う。銅ナノクラスタの光硬化の場合、そのナノクラスタの固体‐液体相転移を研究することが重要である。Tm(N)の解を求めるためには、固体及び液体の化学ポテンシャルを同等として以下の式を解く必要がある:
μs(p,T)=μl(p,T) (4)
【0018】
この式は、完全な固体と完全な液体クラスタの化学ポテンシャルが溶融において等しいことを意味している。複数の数学的操作(非特許文献8を参照)の後に、以下の式が得られる:
【数2】
ここで、Cは定数であり、粒子当たりの溶融潜熱、粒子の密度、固体気体界面や液体気体界面等における界面張力に依存する。
【0019】
このモデルは、光硬化プロセスの場合であると考えられる表面溶融の可能性を含ませることによって、改良可能である。この場合、図2に示されるように、溶融プロセスはナノクラスタの表面から始まると考えられる。
【0020】
溶融温度は、固体コア/液体シェル粒子に対する平衡条件を課すことによって、求められる。このモデルは、特に金属粒子に対して、更に複雑になり拡張される(非特許文献9を参照)。この場合、新たな変数ξが導入され、この変数は、固体液体界面及び液体気体界面の間の有効相互作用を考慮するのに加えて、原子と液体金属の間の相互作用の長さに対する指標である。この有効相互作用は反発性であり、図2に示されるように、固体コアと気体との間の液体シェルの形成を好む。その式ははるかに複雑であるが、極限ξ→0において、式(5)で表される単純な解に戻されることは興味深い。
【0021】
固体コア/液体シェルモデルはより正確であり、実験結果にはるかにフィットすると考えられる。実際、一部の研究者(非特許文献10)は、銅についてのN=500に対して、この固体コア/液体シェルモデルが非常に良くフィットすることを発見した。例えば、図3は、錫クラスタの理論及び実験の融点の比較を示すグラフであり(非特許文献11を参照)、この方法が、サイズに対する錫クラスタの溶融温度の低下を理論的に予言することができることを明示している。
【0022】
ナノクラスタ及び光硬化における溶融プロセス:
光硬化プロセスに対して、銅ナノクラスタの溶融プロセスと、液体銅ナノ小滴の凝固プロセスにおける銅ナノクラスタの形成との両方を考慮する。特に、力学的効果は、ナノクラスタの形成に強く影響し得る。重要な検討事項は、銅ナノクラスタ形成の時間スケールである。ナノクラスタ形成の時間スケールは、1ミリ秒未満から数ミリ秒にまで及び得る。この時間スケールに対して、力学的観点から、クラスタは、最小自由エネルギー構造に到達することができず、非常に長寿命の準安定状態に陥ったままであり得る。特に、本願で開示される光硬化プロセスの場合のように、クラスタが凝固の後に更に冷却される場合に非常に長寿命となる。
【0023】
本願で説明される光硬化プロセスにおける銅の固体クラスタの形成プロセスのモデルを構築し研究するために、熱浴に接触している固体クラスタを研究する。本発明の一実施形態においては、この浴は、基板及び基板周囲の環境を含むので、より複雑になる。
【0024】
ナノクラスタの形成を研究するためには二つのモデルがある。一つは、液体状態成長モデルと称され、固体化するまで液滴を凝固させることによってシミュレーションされ、通常はNが一定でTが減少する。銅金属の場合、原子の蒸発の効果をこのタイプの計算で考慮する必要はない。何故ならば、融点と沸点との間に非常に大きな差があり、結果として、気化冷却は無視できるからである。
【0025】
他のモデルは、固体状態成長モデルと称され、一定温度で小さな初期シードに個々の原子を追加することによってシミュレーションされる。銅ナノクラスタの光硬化においては、液体ナノ小滴の凝固の効果が存在するので、温度が一定とは考えられない。
【0026】
優れたモデルは、より冷たい周囲環境との熱接触を再現することである。こうした方法では、温度変化速度等の最も関連するパラメータを考慮することができる。この方法に従って(非特許文献12を参照)、温度変化がナノクラスタの半径Rに反比例する関係を得ることができる:
【数3】
【0027】
銅ナノクラスタの成長は、上述のようにポリ二十面体クラスタ構造によって支配されている。理論的には、ポリ二十面体構造が好むいくつかのマジックサイズ、つまりNの値が存在し、最も安定になることが確かめられていることは興味深い。例えば、図4は、400Kの温度におけるCu38の成長プロセスを示す。
【0028】
ナノ粒子の異常熱容量及び光硬化プロセス
光硬化プロセスを理解するために、ナノ粒子の異常熱容量を考慮する(非特許文献13を参照)。そもそも何故ナノクラスタ又はナノ粒子の異常熱容量の振る舞いを予測すべきなのかという疑問がある。大抵の状況では、こうした熱容量は、バルクのものと定性的には同様である。しかしながら、問題は、ナノクラスタの形成又はその溶融において、二つ以上の相の共存領域が存在する点である。このことは、熱容量の或る特異な振る舞いを生じさせ得る。光硬化プロセスにおいては、ナノクラスタの相変化という状況が存在する。このような小さな系の熱力学は、熱力学の標準的な教科書の範囲外である。
【0029】
理解のために、二つの相に対する平衡を考える。二つの相の間の平衡(バルク形態又はナノクラスタ形態)は、平衡定数によって説明可能である:
Keq(T)=exp(−ΔF/KT) (7)
ここで、ΔFは、固体と液体との間の自由エネルギーの差である。また、以下の関係が知られている:
ΔF=NΔμ (8)
【0030】
結果として、平衡定数を以下のように書くことができる:
Keq(T)=exp(−NΔμ/KT) (9)
ここで、Nは、系の中の粒子数であり、Δμは、二つの相の化学ポテンシャルの平均差である。
【0031】
従って、Δμ/kTが非常に小さい(略10−10)としても、Nが1020のオーダであると、熱力学的に好ましくない相は、あまりにも好ましくないものであるので、単純に観測不能である。しかしながら、Nが10や1000のオーダの場合には、各相が、そのようなものとして認識される一般的な特性を確立するのに十分長く存続する限りにおいて、二つ以上の相が熱力学的に平衡で共存し得る温度及び圧力範囲を見つけることは非常に簡単である。実際には、上述のように、銅ナノクラスタの溶融又は凝固の場合、異性体が共存可能な状況が存在し得て、これは、結果として、異常熱容量の振る舞いを誘起し得る。このことは、他の変数と共に、銅ナノクラスタの温度誘起相転移として光硬化をモデル化する際には、考慮される。このタイプのモデル化では、大規模な分子動力学(MD,molecular dynamics)及びジャンプ‐ウォーキング・モンテカルロ(MC,Monte Carlo)シミュレーションが用いられるが(非特許文献14を参照)、これには、固体‐固体変換、固体‐液体変換、凝固点以下での冷却現象を取り扱う必要がある。これは非常に複雑であり、数百万の構成を用いて、同じサイズの異なるクラスタに対してシミュレーションを平均化する。このタイプの計算及びモデル化は、光硬化実験の範囲外である。
【0032】
合体を考慮しようとすると、モデル化は、更に複雑になる。このプロセスは非常に複雑で、二つの固体クラスタ、液体と固体クラスタ、二つの液体クラスタの合体を考慮しなければならない。二つの液体クラスタの合体は急速に生じる一方で、二つの固体クラスタの合体プロセスははるかに時間がかかる。
【0033】
いずれにせよ、研究者は、二つの固体クラスタの合体は非常に複雑で、非常に遅い時間スケールで行われ、単一領域のクラスタ又は複数のグレインを示す複雑な構造のいずれかの形成が含まれ得ると結論付けている(非特許文献15を参照)。実際に何が生じるのかは、初期クラスタのサイズ及び構造に依存し、使用される銅ナノ粒子の初期サイズの光硬化における関数となり得る。
【0034】
ナノ粒子の吸収スペクトル
光硬化プロセスには、小金属粒子による光吸収の研究及び分析が含まれる。小粒子による光吸収の理論は、ミー方程式によって説明される(非特許文献16を参照)。粒子の吸収は、バルク金属自体のものとは大きく異なることが多いと認識されてはいるが、所定の溶媒中の粒子の吸収スペクトルは、バルク金属の光学定数から計算可能である。最も単純な場合は、粒子が球形で、そのサイズが光の波長に比べて小さい場合である。更に、簡単のため、粒子が溶液中で良く分離されていると仮定する。ミー理論によると、略3から20ナノメートルの間の粒径においては、粒径に対する吸収スペクトルの強い依存性は存在しない。これは、この非常に小さな粒径ではバルク金属の電子の平均自由行程がはるかに大きく、結果として、ミー方程式の最も顕著な項が双極子の項によるものであり、溶液中の全金属濃度のみに依存して、粒径には依存しないからである。この場合、mol−1・L・cm−1単位での吸収係数は、以下の関係式から計算される:
【数4】
ここで、
‐ λはnm単位での光の波長;
‐ Mは分子量;
‐ ρは金属の密度;
‐ n0は溶媒の屈折率;
‐ ε1、ε2は金属の誘電率の実部と虚部である。
【0035】
興味深い状況は、粒子のサイズが、電子の平均自由行程(銀に対して52ナノメートル、銅に対して39ナノメートル)よりも小さくなる場合である。この場合、吸収バンドが広がる。その理由は、サイズ補正が必要であり、式(10)が以下の関係によりサイズに依存し始めるからである(非特許文献17を参照):
ε2=ε2(バルク)+(ωp2/ω3)(νF/R) (11)
ここで、
‐ ωは光の周波数;
‐ ωpは特定の金属のプラズモン周波数;
‐ νFはフェルミ準位における電子の速度;
‐ Rは粒子の半径である。
【0036】
基本的には、比R/νFは、特定の金属粒子中の電子の自由移動の平均時間である。
【0037】
ミー方程式を用いた大規模なモデル化及び計算が、CreightonとEadonによって行われている(非特許文献18を参照)(図5を参照)。図5は、双極子近似を考慮して、400ナノメートルの波長以下での金属の吸収をうまく説明する様子を示す。吸収の全体像を完成させるためには、特定の金属における電子エネルギー準位及び許容される光学遷移を考慮する必要がある。第一に、バンド内遷移を取り扱う必要があり、これには場合によって光子の関与が必要とされる。この場合、こうしたバンド内遷移は、光の吸収に顕著には寄与しない。しかしながら、激しい吸収が一部の金属粒子では観測され、図6に示されるように、低光子エネルギーでのそのピークは、粒子中の自由電子の集団励起によって生じる。
【0038】
図6を参照すると、入射光の電場ベクトルの影響下における電子の移動は、粒子球面にわたる双極子励起につながる。そして、正の分極電荷は、電子を振動させる復元力として作用する。従って、数オングストローム(遮蔽距離に略等しい)の表面層内部の電子密度が振動する一方で、粒子内部は一定のままである。場合によっては(銀等)、集団振動の励起(プラズモン吸収)及びバンド内遷移が、分離された波長の形態において生じる。銅(並びに金)の場合、プラズモン共鳴が可視光において生じる。しかしながら、こうした共鳴は、バンド内遷移によって重ね合わせられる。
【0039】
金属粒子の吸収に対するプラズモン振動の寄与は、別に取り扱うことができる。例えば、吸収定数に対するミー方程式は以下のように書ける:
K=9πNVn03cλ2/σ[(λm2−λ2)2+λ2λm4/λa2] (12)
ここで、
‐ Kはcm−1単位での吸収定数であり、K=αcln10、ここでcはモル/リットル単位での金属の濃度;
‐ Nは粒子濃度;
‐ Vは粒子当たりの体積;
‐ λm2=λc2(ε0+2n02)は極大吸収の波長;
‐ ε0は金属の高周波誘電率;
‐ λcはプラズマ波長、λc2=(2πc)2m/4πNee2、また、代表的な特徴 である;
‐ Neは自由電子の密度;
‐ λaは吸収の半値におけるバンド幅に関する定数、
λm2/λa=(ε0+2n02)c/2σ
‐ σはDC伝導度、σ=Nee2{r}/mνF;
‐ Mは有効電子質量;
‐ {r}はコロイド中の電子の平均自由行程;
‐ 1/{r}=(1/r+1/r∞);
‐ r∞はバルク金属における平均自由行程。
【0040】
上述の関係は、バンド位置が粒子のサイズに依存しないことを示している。粒子表面に電子を加えることによるNeの増加は、青方偏移及びバンド幅の減少につながり、結果として、吸収極大の増大につながる。
【0041】
吸収スペクトルに対するナノ粒子凝集の効果:
観測されるスペクトルの実験と計算との間の優れた比較は、限られた数の場合に対して、以前から可能であった。その主な理由は、金属は、コロイド溶液中において孤立粒子を形成せずに、数個又は多数の粒子の凝集体になることが多いからである。凝集体は、吸収スペクトルを劇的に変化させ得る。典型的な例が図7に示されていて、カドミウム及びタリウムコロイドの吸収スペクトルがグラフにされている。
【0042】
図7のスペクトル(a)は、凝集した粒子を含む溶液に対して得られたものである。一方、スペクトル(b)は、凝集が生じない条件下で作製された溶液に対して得られたものである。スペクトル(b)は、ミー方程式と良く一致し、図5の計算されたスペクトルとも良く一致する。
【0043】
上述の説明及び図7の結果を考慮すると、コロイド状金属物質は、スペクトルがスペクトル(a)と同様であると、黒色を呈する。一方、粒子が凝集していないと(つまり、良く分散して粒子間が良く分離されていると)、スペクトル(b)によって示されるより金属的な色が観測される。
【0044】
図8にまとめられているように、平均粒径と、粉末の色と、インクの色と、硬化後の抵抗率との間には結果としての相関関係が存在する。優れたインクは、粉末及びインクの色が赤褐色又は茶色の範囲内にある時に得られる。漆黒または非常に暗い見た目の粒子及びインクが存在する場合には、凝集が生じている。
【0045】
溶液が古くなると、スペクトル(b)からスペクトル(a)への吸収スペクトルの劇的な変化が生じる(図7を参照)。その理由は、初期段階において良く分散して孤立した銅ナノ粒子が存在する一方で、経時プロセスによって凝集体が段々大きくなるからである。結果として、銅コロイドの色が、金属的な赤褐色からより暗い色に変化し、最終的には黒色に移る。
【0046】
古くなったカドミウム(Cd)溶液のスペクトルにおいて非常に興味深い実験が説明されている(非特許文献19を参照)。古くなったカドミウム溶液を、亜酸化窒素に晒して、スペクトルを時間の関数として測定した。カドミウム粒子は、以下の式に従ってN2Oとゆっくり反応する:
Cd0+N2O+H2O→Cd+++N2+2OH− (13)
【0047】
図9に見て取れるように、この反応の間に吸収強度が低下するだけではなく、長波長ピークのスペクトル形状が急激に消失している。その効果は、凝集したコロイドの色の酸化還元反応において頻繁に生じる現象によるものである;つまり、凝集体の分解が、多かれ少なかれ孤立した粒子を生じさせる。このことは、粒子の帯電に寄与する:つまり、N2Oとの反応が進行すると、粒子は正に帯電して、互いに反発する。
【0048】
光硬化プロセス中の銅酸化物から銅への還元
Sangyo社(〜50nm)及びAmerican Elements社(80nm)製の銅ナノ粒子を、B1タイプインクと処方する(IPA、ヘキシルアミン及び銅ナノ粒子)。銅ナノ粒子の組は両方とも、銅酸化物を20%以上含む。図10に示される証拠は、光硬化が銅酸化物を金属銅に光還元することができることを示す。
【0049】
フラッシュランプでは、銅酸化物の光還元に対する閾値エネルギーが存在し得る。光硬化インクの個々のXRDを、Sangyo社及びAmerican Elements社のB1タイプインク処方剤の両方に対して行った。図11(a)は、空気中100℃でプレ硬化させた後のSangyo社の銅ナノ粒子のXRDを示し、図11(b)に示されるのは、光硬化プロセス後のXRDに対する変化である。
【0050】
この場合、Cu2Oは、完全に銅(200)に変化している。同じ現象がAmerican Elements社の銅ナノ粒子でも観測されたが、この場合、光硬化ランプの電圧に対する依存性が観測された(図12を参照)。図12Aは、空気中100℃でプレ硬化させたAmerican Elements社の銅ナノ粒子を示す;図12Bは、1300Vの電圧で光硬化させたAmerican Elements社の銅ナノ粒子を示し、青みがかった色が光硬化後に観測される;図12Cは、1400Vの電圧で光硬化させたAmerican Elements社の銅ナノ粒子を示し、赤みがかった色が光硬化後に観測される。
【0051】
映像及びXRDのデータは、銅酸化物から金属銅への還元が光硬化中に生じていることを示している。Fleischの仕事によると(非特許文献20を参照)、金属酸化物のバンドギャップが金属酸化物の生成エンタルピーよりも大きい場合、金属への光還元は、バンドギャップよりも高いエネルギーを有する金属酸化物を照射することによって達成可能である。Cu2OとCuOのバンドギャップはそれぞれ、1.9eV(188kJ/mol)、2.6eV(257kJ/mol)である。対応するCu2OとCuOの生成エンタルピーはそれぞれ、157kJ/mol、168kJ/molである。従って、100nmから400nmのUV放射によって、銅酸化物が金属銅に還元される。
【0052】
ナノ粒子の光吸収スペクトル及びフラッシュランプのスペクトル分布:
光吸収スペクトルの分析に基づくと、フラッシュランプのスペクトル分布が重要である。図13に示されるスペクトル分布はキセノンランプの典型的なものであり、使用される出力の略6%が380nm以下のUV放射として放出される。フォトニックエネルギーの大部分は実際には可視光から赤外線の波長の範囲である。電流フラッシュランプと比較して、UV範囲においてより高いエネルギー密度を有するUVランプが有用であり得る。
【0053】
他の考えられるUVランプは、崩壊性エキシマ錯体を含み、銅酸化物を同時に溶融及び光還元することができる改良されたフォトニック硬化ランプを提供し得る。エキシマランプは、多様なUV及びVUV波長において高強度でナローバンドの放射を提供する。エキシマランプは、電子の運動エネルギーをUV放射に変換する非常に効率的なエネルギーコンバータであり得る。エキシマシステムでは、自己吸収は観測されない。大抵の場合、エキシマ形成ガス混合物は、一つの主なナロー放出バンドを示す。エキシマシステムは、自然放出を制限するために、飽和効果が開始する前に非常に高い出力密度でポンピング可能である。従って、非常に明るいUV及びVUV源を構築して本発明の実施形態で使用することができる。
【0054】
また、この分析は、Optomec社のプリンタで結果を説明し、最高の硬化結果を達成するためのより良い選択肢又はレーザモノクロマティック放射へと更に向かい得る。
【0055】
上述のように、金属インクを光焼結させるプロセスにおいて、金属インクをプレ焼結させて、過剰なビヒクル及び溶媒を除去する。これは、オーブンを用いて空気中で行うことができるが、30〜60分間の乾燥時間が必要となり得る。製造プロセスにおいて、この時間は長過ぎるものとなり得る。以下の代替実施形態は、この乾燥時間を減少させる方法を説明する。
【0056】
図26Aを参照すると、ナノ粒子銅フィルム(又は他の適切な金属インク)を同時に又はほぼ同時にインクジェット印刷及び光硬化させるデバイス800が示されている。このデバイスは、基板804の表面上に銅インク801を分配するためのインクジェット分配器802を含む。また、このデバイス800は、インクジェット分配器802によって堆積されたインクフィルム803を硬化させるための光源806も含む。光源はレーザ源(パルス又は連続)、パルスランプ、又は焦点ビームであり得る。一部実施形態では、分配器802は、所定の経路に沿って基板上を自動で通過するように構成される。更に、分配器802は、基板804上に複数の所定の位置及び時間において銅インクを分配するように構成可能である。光源806は、インクジェット分配器802に取り付けられるか、又は、分配器802とは別に基板800上を移動するように構成可能である。光源806は、分配器802によってインクジェット印刷されたフィルムが堆積された後に直ちにフィルムを光硬化させるように構成可能である。代わりに、光源806は、フィルムの堆積に続いて所定の時間でフィルムを光硬化させるように構成可能である。光源806及び分配器802の動きは、コンピュータシステム/制御装置808によって制御可能である。使用者は、制御装置が自動的に所定の経路で分配器802及び光源806を並進移動させるようにコンピュータ808をプログラムし得る。一部実施形態では、光源806及び分配器802が固定されて、基板が、コンピュータ/制御装置808によって制御される可動プラットフォーム上に配置される。
【0057】
光硬化プロセスのフローチャートが図26Bに示されている。金属インクの溶液が、混合されて(810)、分配器802を用いて基板804上に印刷又は分配される(812)。フィルムの堆積は、明確なパターンが形成されるように厳しく制御される。そして、フィルムを乾燥させて(814)、水や溶媒を除去する。
【0058】
場合によっては、熱硬化ステップを、フィルムの堆積に続いて、光硬化ステップの前に導入することができる。基板及び堆積フィルムを、オーブンを用いて、又はホットプレート等のヒータの表面上に基板を配置することによって硬化させることができる。例えば、一部実施形態では、光硬化の前に、フィルムを空気中100℃で30分間にわたってプレ硬化させる。代わりに、熱硬化を、レーザをフィルム表面上に向けることによって行うことができる。乾燥及び/又は熱硬化ステップに続いて、直接書き込みとして知られているプロセスで、光源からのレーザビーム又は焦点光を、フィルムの表面上に向ける(816)。光は、低抵抗を有するようにフィルムを光硬化させる機能を果たす。一般的に、印刷/分配ステップ及び乾燥ステップの後において、金属フィルムは絶縁性である。しかしながら、光硬化プロセスの後では、その絶縁性フィルムが導電性フィルム809となる(図26Aを参照)。
【0059】
一部実施形態では、分配器802を用いて、パターンのおおまかなアウトライン又はブランケットフィルムを堆積させる。典型的には、印刷方法で、25〜50マイクロメートル又はそれ以上のオーダのフィーチャサイズを達成することができる。より微細なフィーチャが必要な場合、パターン/ブランケットフィルムを、光の焦点ビーム又はレーザを用いて精緻に又は小さくすることができるが、この場合、フィーチャは、レーザのスポットサイズによって、又は光ビームの焦点によって定義される。典型的には、光は1マイクロメートル以下に合焦可能である。従って、サブミクロンのフィーチャが可能である。究極的には、フィーチャサイズは、導電性フィルムに使用されるナノ粒子のサイズによって限定され得る。金属粒子を、1〜5nmのオーダのフィーチャを有するように形成可能である。
【0060】
銅ナノ粒子インクに対する真空乾燥の効果:
気流環境とは対照的な真空環境における銅ナノ粒子インクの乾燥の効果を求める実験を行った。サンプルを超音波処理及び手動での撹拌で準備した。そして、サンプルを印刷及び乾燥させた。そして、真空オーブンを用いて、多様な温度でインクを乾燥させた。比較用に、大気中の気流環境下で基準サンプルも用意した。全てのサンプルを光焼結させて、電気特性及び接着性を測定した。結果は、真空環境において乾燥が行われると、選択されたインクに対する乾燥時間が、顕著に減少するというものであった。
【0061】
上述のプロセスは、インクの処方に依存して、30〜60分間にわたって大気圧で気流環境において乾燥させた銅インクサンプルを説明する。この乾燥は、印刷後にインクに残っている溶媒を蒸発によって除去するために行われる。溶媒の蒸発は、続く光焼結プロセスを補助する。インクが過剰量の溶媒を含む場合、結果は、“ブローオフ(吹き飛ばし)”と呼ばれるものであり、溶媒が急速に(実際にはほぼ瞬時に)蒸発して、銅ナノ粒子が基板から周囲環境に吹き飛ばされるという状態である。
【0062】
溶媒をより急速に除去することによって、高スループット製造システムに対して、プロセスがよりコスト効率の良いものとなり得る。多様な温度ではあるが一つの真空レベルにおいて実験を行った。選択されたインクに対する乾燥時間が、気流環境で乾燥させた基準サンプルと比較して導電性又は接着性に顕著に影響することなく、100℃又は125℃で乾燥させた際に減少することがわかった。しかしながら、150℃では、導電性が低下する傾向がある。この実験から収集されたデータは、乾燥時間が真空乾燥によって短縮可能であることを証明するものであるが、このプロセスは、より低い温度及びより短い乾燥時間を有するように拡張可能でもあり、大量生産に向けた銅インクの実行可能性を更に強化し得る。
【0063】
そして、処方されたインクを超音波処理及び手動で撹拌して、凝集体を分解した。インクは数週間にわたって保存期間の研究に用いられ、この実験までシェルフに保存されていた。ドローダウン印刷の前に、インクを略30秒間にわたって手動で撹拌して、16分間にわたって超音波処理して、更に30秒間にわたって手動で撹拌した。
【0064】
使用された方法:
ドローダウン印刷
印刷は、#10ワイヤ被覆ロッドを用いたカプトン基板上のドローダウン印刷機を用いて行われた。ロッドはインクでコーティングされて、均一なコーティングを提供するために表面にわたって引き出された。複数のサンプルを同じ方法で印刷して、実験範囲を適正化した。印刷後に、サンプルをシェルフ上で空気乾燥させた。
【0065】
気流乾燥
二つのサンプルを気流オーブン中100℃で乾燥させたが、一つは30分間、他方は60分間乾燥させた。これらのサンプルは、真空乾燥サンプルとの後での比較用の標準的なプロセスの基準を提供するために作製された。
【0066】
真空乾燥
残りのサンプルは、真空オーブンで多様な温度及び多様な長さの時間で乾燥させた。図14は、各サンプルに対する乾燥パラメータを示す。加熱して、脱ガス用に空の真空オーブンをポンピングして、汚染物を除去した後に、オーブンを通気して、各サンプルに対して以下の手順を行った:
・ 赤外線(IR)温度計によるプラットフォームの温度のチェック及び記録
・ プラットフォームの中心にサンプルを配置
・ 真空ポンピングを開始
・ 圧力が略‐25水銀柱インチに達すると(平均で93秒)、タイマーを始動
・ 時間が切れると、オーブンの圧力(全てのサンプルに対して略‐29.5水銀柱インチ)を記録
・ 直ちにオーブンを通気
・ オーブンが通気されると、IR温度計でプラットフォームの温度をチェック及び記録
・ 全てのサンプルに対して繰り返す
【0067】
焼結前の準備
気流及び真空乾燥が完了すると、接着テストパターンを提供するために、全てのサンプルを記録した。また、光焼結ステップの前の厚さのデータを提供するために、サンプルに番号を付けてプロフィロメータ上で測定した。
【0068】
光焼結
光焼結は、インクを導電性銅フィルムに硬化させるのに用いられる上述の方法である。これには、インクを高集中UV光の短パルスに晒すことが含まれる。全てのサンプルを、各ショットに対して同じ出力及びパルス幅で光焼結させた。用いられた出力は1200Vであり、パルス幅は400、500、600、700、800マイクロ秒であった。
【0069】
特性試験
光焼結が完了した後に、各サンプルの接着性及び電気特性を特性評価した。第一に、4点プローブ法を用いて、フィルムのシート抵抗を測定した。第二に、フィルムの厚さをプロフィロメータ上で測定した。最後に、接着性を、ASTM Standard Test Method for Measuring Adhesion by Tape Test(テープテストによる接着力測定用のASTM標準試験方法)を用いて試験した。全てのデータを収集した後、シート抵抗及び厚さのデータを用いて、抵抗率を計算した。
【0070】
結果
図15を参照すると、サンプル3〜8に対する電気特性は、この処方に対して標準的な熱プロセスで処理されたサンプル2のものに非常によく似ている。しかしながら、真空下150℃で乾燥させたサンプル9及び10では、顕著に抵抗率が増大している。この実験では、全てのサンプルに対して接着性は優れていた(1〜10点中の10点)。これらのデータは、真空乾燥が銅ナノ粒子インクの乾燥時間を短縮する実行可能な解決策であることを示している。図16は、光焼結ステップ中のカプトンからの銅のブローオフのパーセンテージを示す。これらの結果は、マイクロオーム・cmの範囲での抵抗率が、優れた接着力と共に真空中で達成されていることを示し、また、1気圧で100℃で60又は30分間にわたる乾燥と比較して、同程度の抵抗が125℃で5分間の真空乾燥(サンプル#6)で得られることを示している。サンプル#6では、銅のブローオフはわずか5%である。
【0071】
銅ナノ粒子インクに対する赤外線乾燥の効果:
気流オーブン環境(標準的な乾燥プロセス)とは対照的な赤外線ランプ下で銅ナノ粒子インクを乾燥させることの効果を求める実験を行った。サンプルを、超音波処理及び手動での撹拌で準備した。そして、サンプルを印刷及び空気乾燥させた。そして、赤外線ランプを多様な距離で用いて、インクを更に乾燥させた。比較用に、一つのサンプルを乾燥プロセス無しで硬化させて、もう一つのサンプルを気流オーブン環境で乾燥させた。全てのサンプルを光焼結させて、電気特性及び接着性を測定した。この実験で収集されたデータは、赤外線ランプによる乾燥は、気流オーブン乾燥と比較して必要な乾燥時間を減少させることを示している。興味深いことに、何ら乾燥プロセスに晒さなかったサンプルが、気流オーブンで乾燥させたサンプルと同様の電気特性を示した。
【0072】
実験は、市販の赤外線ランプを用いて行われ、大気中でランプまでの多様な距離でサンプルを乾燥させた。適切な長さの時間にわたって短距離で、また、長時間にわたって中程度の距離でサンプルを乾燥させると、インクに顕著な損傷が生じ、結果として光焼結中にインクが吹き飛ばされる。中程度から長距離ではあらゆる長さの時間にわたって乾燥させたサンプルが、ほとんど変化を示さず、場合によっては、気流オーブンで乾燥させたサンプルと比較して僅かな改善を示した。
【0073】
この実験から収集されたデータは乾燥時間が赤外線乾燥で短縮されることを示すのに十分なものであるが、この実験は、より多様なパラメータ(距離及び時間)を含むように拡張可能でもあり、大量生産に向けての銅インクの実現可能性が更に強化される。
この実験で使用された機材:
赤外線ランプ=Phillips社の250W赤熱ランプであり、クランプオンスタイルの反射ソケットに取り付けられている
気流オーブン=Despatch(モデル#LCCL‐54)
ドローダウン=Gardco社のAuto‐DrawIII(モデル#DP‐1250)
【0074】
固体銅ナノ粒子をN2パージグローブボックス内の分散媒に加えて、小型のへらで塊を媒体中に分解させた。そして、インクを超音波処理及び手動で撹拌して、全ての凝集体を分解した。そのインクは数週間にわたって保存期間の研究に用いられ、シェルフに保存された。ドローダウン印刷の直前に、インクを略30秒間にわたって手動で撹拌して、8分間にわたって超音波処理して、更に30秒間にわたって手動で撹拌した。
【0075】
使用された方法:
ドローダウン印刷
印刷は、#10ワイヤ被覆ロッドを用いたカプトン基板上のドローダウン印刷機を用いて行われた。ロッドはインクでコーティングされて、均一なコーティングを提供するために表面にわたって引き出された。複数のサンプルを同じ方法で印刷して、実験範囲を適正化した。印刷後に、サンプルをシェルフ上で空気乾燥させた。一つのサンプルを硬化前のこの状態のままにした。
【0076】
気流焼成
一つのサンプルを100℃で30分間にわたって気流オーブン内で乾燥させた。このサンプルは、赤外線乾燥サンプルに対して後で比較するための標準プロセスの基準を提供するために作製された。
【0077】
赤外線乾燥
残りのサンプルを赤外線ランプの下で、ランプまでの多様な距離で多様な長さの時間に対して乾燥させた。図17は、各サンプルに対する乾燥パラメータを示す。サンプルを、絶縁性セラミックプラットフォーム上で乾燥させて、サンプルからプラットフォームへの及びその逆の熱伝達を最小化した。
【0078】
焼結前の準備
サンプルの乾燥が完了すると、フィルムの厚さを測定する手段を提供するために、全てのサンプルを記録した。そして、光焼結ステップ前の厚さのデータを提供するために、サンプルをプロフィロメータ上で測定した。
【0079】
光焼結
全てのサンプルを、各ショットに対して同じ出力及びパルス幅で光焼結させた。使用された出力は1200Vであり、パルス幅は500、600、700μ秒であった。これは、実験時に用いられる標準的な方法の簡略版である。
【0080】
特性試験
光焼結が完了した後に、各サンプルの接着性及び電気特性を特性評価した。第一に、フィルムのシート抵抗を、4点プローブ法を用いて測定した。第二に、フィルムの厚さをプロフィロメータ上で測定した。最後に、接着力を、接着テープのストリップを加えてその後除去することによって試験した。全てのデータを収集した後に、抵抗率を、シート抵抗及び厚さの結果を用いて計算した。
【0081】
結果
図18を参照すると、サンプル5及び7〜10に対する電気特性は、この処方に対して標準的な焼成を用いて処理されたサンプル2のものよりも優れている。しかしながら、近い範囲で乾燥させたサンプル3及び4は、硬化プロセス中にフィルムが完全に吹き飛んでしまったために無限の抵抗率を示した。6インチで30分間にわたって乾燥させたサンプル6でも抵抗率が増大した。この実験では大抵のサンプルに対して、接着力は許容可能なものであった。ブローオフは、乾燥パラメータに依存して10%から100%の範囲のいずれかで全てのサンプルに対して実質的な問題であった。サンプル1は、大気中で乾燥させただけで、熱を印加していない。このサンプルは、わずかに大きなブローオフを示すが、オーブンで乾燥させたサンプルと同程度の抵抗率を有していた。全体的に、このデータは、赤外線乾燥は必要とされる乾燥時間並びに抵抗率を減少させるが、ブローオフが問題となり得ることを示している。図19は、光焼結ステップ中のカプトンからの銅のブローオフのパーセンテージを示す。
【0082】
結論
サンプル#14は、銅導体の小さなブローオフ(30%)で6.24マイクロオーム・cmの低い抵抗率を有していた(図18及び19を参照)。
【0083】
マイクロ波乾燥の硬化:
溶媒ベースのインク
気流オーブン乾燥とは対照的な銅ナノ粒子インクのマイクロ波乾燥の効果を求める実験を行った。サンプルを超音波処理及び手動での撹拌で準備した。そして、サンプルを印刷及び乾燥させた。そして、マイクロ波オーブン(電子レンジ)を用いて、多様な時間に対してインクを乾燥させた。比較用に、気流オーブン環境で基準サンプルも用意した。最後に、全てのサンプルを光焼結させて、電気特性及び接着性を測定した。この実験で収集されたデータは、銅ナノ粒子インクのマイクロ波乾燥が、インク性能の顕著な増大を提供しないということを示している。
【0084】
実験は、多様な時間ではあるが一つの出力レベル(100%)において行われた。選択されたインクの乾燥時間は、気流オーブン内で焼成した基準サンプルと比較してマイクロ波乾燥によっては減少し得ないことがわかった。この実験から収集されたデータは、マイクロ波乾燥によっては乾燥時間が影響され得ないことを立証するのに十分なものであると考えられるが、この実験は、この実験を異なる出力レベル及びより長い乾燥時間を含むように拡張することもでき、データが更に強化される。
【0085】
使用された機材:
マイクロ波オーブン=General Electric社の家庭用電子レンジ(モデル#JES737WM01)
気流オーブン=Despatch(モデル#LCCL‐54)
ドローダウン=Gardco社のAuto‐DrawIII(モデル#DP‐1250)
【0086】
処方されたインク:
固体銅ナノ粒子をN2パージグローブボックス内の分散媒に加えて、小型のへらで塊を媒体中に分解させた。そして、インクを超音波処理及び手動で撹拌して、全ての凝集体を分解した。そのインクは数週間にわたって保存期間の研究に用いられ、この実験までシェルフに保存された。ドローダウン印刷の前に、インクを略30秒間にわたって手動で撹拌して、8分間にわたって超音波処理して、更に30秒間にわたって手動で撹拌した。
【0087】
使用された方法:
ドローダウン印刷
印刷は、#10ワイヤ被覆ロッドを用いたカプトン基板上のドローダウン印刷機を用いて行われた。ロッドはインクでコーティングされて、均一なコーティングを提供するために表面にわたって引き出された。複数のサンプルを同じ方法で印刷して、実験範囲を適正化した。印刷後に、サンプルをシェルフ上で空気乾燥させた。
【0088】
気流焼成
一つのサンプルを100℃で60分間にわたって気流オーブン内で焼成させた。そのサンプルは、真空焼成サンプルに対して後で比較するための標準プロセスの基準を提供するために作製された。
【0089】
真空焼成
残りのサンプルを、多様な時間に対してマイクロ波オーブンで乾燥させた。図20は各サンプルに対する乾燥パラメータを示す。各サンプルは、回転ガラスプレート上でマイクロ波オーブンの中心部に配置された。
【0090】
焼結前の準備
気流及びマイクロ波乾燥が完了すると、光焼結ステップ前の厚さのデータを提供するために、全てのサンプルをプロフィロメータ上で記録及び測定した。
【0091】
特性試験
光焼結が完了した後に、各サンプルの接着性及び電気特性を特性評価した。第一に、フィルムのシート抵抗を、4点プローブ法を用いて測定した。第二に、フィルムの厚さをプロフィロメータ上で測定した。最後に、接着力を、接着テープのストリップを加えてその後除去することによって試験した。全てのデータを収集した後に、抵抗率を、シート抵抗及び厚さのデータを用いて計算した。
【0092】
結果
図21を参照すると、サンプル2〜5では、サンプル1(この処方に対して標準的な焼成を用いて処理された)のものと比較して抵抗率が増大していた。ブローオフは、10%から80%の範囲のいずれかで全てのサンプルに対して問題である(図22を参照)。接着力は全てのサンプルに対してあまり良くなかった(10点満点中の3から8点)。このデータは、マイクロ波乾燥は、銅ナノ粒子インクの乾燥時間を短縮する実現可能な解決策とはなり得ないことを示している。
【0093】
結論
サンプル3及び4は、低抵抗率を有し、光焼結中にわずか20%のブローオフしか有さない(図22を参照)。
【0094】
水ベースのインク
本インクは水ベースの銅インクである。図23のデータは、図24のサンプルに対する電気特性を示す。サンプル1に対する焼結後の厚さには疑問があり、非現実的な低い抵抗率になっている。
【0095】
図25は、光焼結ステップ中のカプトンからの銅のブローオフのパーセンテージを示す。
【0096】
結論
これらの結果は、30秒間のマイクロ波放射を用いた水ベースのインクでコーティングされたサンプルを乾燥させることが低抵抗率を提供し得る(図23を参照)一方で、ブローオフがわずか10%(サンプル2)に保たれること(図25を参照)を示している。
【0097】
これらの結果は、マイクロオーム・cmの範囲の抵抗率が優れた接着力と共に、真空中で得られること、また、1気圧で100℃における60又は30分間にわたる乾燥と比較して同程度の抵抗率が、125℃で5分間にわたる真空乾燥で得られることを示している。
【0098】
本発明の多数の実施形態について説明してきた。しかしながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多様な修正を行うことができることは理解されたい。例えば、他の導電性金属を、銅の代わりに、又は、銅に加えて用いることができる。
【0099】
まとめ
まとめると、銅インクの光吸収は、多粒子の複雑系であり、個々の構造単位と、粒子間の相互作用による集団効果との両方によって決定されるものである。そのスペクトルは、個々の粒子のプラズモンバンドと、凝集した粒子鎖の軸に対して平行な(低エネルギーモード)及び垂直な(高エネルギーモード)電場での励起に起因する場合によってはより大きな極大との両方を含むことが多い。この場合、球形状への金属粒子の金属はもはや正しくなく、図5の計算を行ったように、長球を考える必要がある。実際、図5からわかるように、凝集体が楕円状になるにつれて、上述のように、スペクトルはスペクトル(b)からスペクトル(a)へと変化していく。
【0100】
以下のことが求められた:
(A) 乾燥状態での又は溶液中での金属銅ナノ粒子の色及びサイズ分布;
(B) バルク銅中の電子の平均自由行程が39ナノメートルであることは、50ナノメートル付近の粒子の経験的な選択の説明となり、粒子のサイズは、良く分散している場合、電子の平均自由行程と同レベルのものである;
(C) サイズの関数としてのナノ粒子の熱容量の振る舞いと、光硬化プロセス中に溶融及び優れた導電性の結果が得られることの理由;
(D) 銅の金属ナノ粒子の光学的振る舞い、また、優れた分散性つまりは光硬化プロセスにおけるより良い溶融とインクの色との相関関係;
(E) インクの品質及び光硬化プロセス後の抵抗率に直接関係している硬化プロセス中の銅酸化物から銅への変換;
(F) 光硬化に最適なランプ。可視光及び赤外線範囲に多くのエネルギーを有することは有用になり得ない。孤立した銅ナノ粒子の優れた分散は、400ナノメートル以下の波長のエネルギーを必要とし得る。このことは、適切なランプの有効性を単純化して、そのエネルギー消費を低下し得る。
(G) 特定の光硬化プロセスは、銅酸化物から銅への完全な変換を達成するためのより高いエネルギーを必要とし、このことは、特定の銅の金属ナノ粒子の製造業者及びインク中の銅ナノ粒子のサイズ分布との相関においてランプの最も有用なスペクトルを使用することによってランプの最適設計用のパラメータを提供する。
(H) インクからの揮発成分の急速な蒸発が、基板からの金属導体の除去につながるので、光硬化ステップの前にそうした成分を蒸発させることが有利である。
(I) 従来の蒸発には、空気中での30又は60分間にわたる加熱が含まれるが、これは、真空又はマイクロ波乾燥方法を用いることによって短縮可能である。
【符号の説明】
【0101】
800 デバイス
801 銅インク
802 分配器
803 インクフィルム
804 基板
806 光源
808 コンピュータ
809 導電性フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ナノ粒子のクラスタを備えた導電性インクのパターンを堆積させる段階と、
前記導電性インクを光焼結させる段階と、を備えた方法。
【請求項2】
前記堆積させる段階と前記光焼結させる段階との間に、前記導電性インクを乾燥させる段階を更に備えた請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥させる段階が真空チャンバ内で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥させる段階が人工的な赤外線ヒータによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記乾燥させる段階がマイクロ波エネルギーを用いて行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項1】
導電性ナノ粒子のクラスタを備えた導電性インクのパターンを堆積させる段階と、
前記導電性インクを光焼結させる段階と、を備えた方法。
【請求項2】
前記堆積させる段階と前記光焼結させる段階との間に、前記導電性インクを乾燥させる段階を更に備えた請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥させる段階が真空チャンバ内で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥させる段階が人工的な赤外線ヒータによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記乾燥させる段階がマイクロ波エネルギーを用いて行われる、請求項2に記載の方法。
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図10】
【図14】
【図17】
【図20】
【図24】
【図26A】
【図26B】
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図25】
【図4】
【図7】
【図8】
【図10】
【図14】
【図17】
【図20】
【図24】
【図26A】
【図26B】
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図25】
【公表番号】特表2011−521055(P2011−521055A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509765(P2011−509765)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/044195
【国際公開番号】WO2009/140628
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(505131522)アプライド・ナノテック・ホールディングス・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/044195
【国際公開番号】WO2009/140628
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(505131522)アプライド・ナノテック・ホールディングス・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】
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