説明

金属コロイド溶液の製造方法及び金属コロイド溶液

【課題】 所望の粒子径や粒子径分布を有する1種又は2種以上の金属からなる金属コロイド粒子を含み、固形分中の金属濃度が高い金属コロイド溶液を良好に得ることができる金属コロイド溶液の製造方法を提供する。
【解決手段】 金属コロイド粒子、数平均分子量7000〜500000の高分子量顔料分散剤及び数平均分子量180〜5000の低分子量顔料分散剤を含有する溶液を製造する工程(1)と、上記工程(1)で製造された溶液中の低分子量顔料分散剤の全部又は一部を除去する工程(2)とを含む金属コロイド溶液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コロイド溶液の製造方法及びそれにより得られる金属コロイド溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
数10nmの金属粒子が溶液中に均一に分散した状態で存在するいわゆる金属コロイド粒子溶液は、その特徴を活かして種々の分野で利用されてきている。例えば、貴金属のコロイド粒子及び高分子量顔料分散剤を含む貴金属コロイド粒子溶液及びその製造方法等が提案されており、着色剤として塗料等に使用されたり、その他の種々の用途に使用されている。
【0003】
種々の用途の1つとして、導電性皮膜の形成用のペーストが挙げられる。導電性皮膜は、コンデンサやチップ抵抗器の電極材料やセラミック基板上の導体回路等として、各種の電子機器、電子部品、電子回路等に用いられる。このような導電性皮膜は、通常、金属粒子を含有する導電性ペーストを塗布して製造される。この場合、高い導電性を得る点から、金属の含有率は高い方が望ましい。
【0004】
特許文献1には、高分子量顔料分散剤の存在下で金属化合物を還元して金属濃度が90質量%以上の金属コロイド溶液を製造し、それを限外濾過する金属コロイド粒子溶液の製造方法が開示されており、固形分中の金属濃度が93〜96質量%の溶液が得られている。
【0005】
ここで開示されている方法は、高分子量顔料分散剤のみを金属コロイド粒子の分散安定化剤として使用することによって、金属コロイド粒子の粒径調整やペーストの保存安定性の両機能を付与する方法であるが、この方法において、高分子量顔料分散剤の量を低減すると、金属粒子の粒径が大きくなり、粒径の制御が困難になる。従って、ここで開示されている方法は、上記両機能の確保のために、過剰の高分子量顔料分散剤が使用されている方法であって、得られた金属コロイド溶液には、多量の高分子量顔料分散剤が残存している。そしてその結果、得られた導電性皮膜の電気特性や成膜性が充分でない場合があるため、金属コロイド溶液中の金属濃度を更に増加させることによって、このような問題を解消することが望まれていた。
【0006】
一方、合金等の複合金属は、一般的に各成分の金属の性質とは異なる物理的、化学的性質を有するため、実用的価値が高いとされている。従って、複合金属コロイド粒子は、金属コロイドの特徴と複合金属の特徴とを生かすことが期待されており、種々の複合金属コロイド溶液を合成することも望まれている。
【0007】
特許文献2には、ナノ結晶複合合金の製造方法が開示されている。しかし、この製造方法により得られた金属コロイドでは分散安定性の確保が難しい。そのため、より安定性の良い金属コロイド粒子の製造方法が望まれている。
【0008】
更に、金属コロイド溶液は、用途に応じて、溶液中の金属コロイド粒子が特定の粒子径や粒子径分布を有することが要求される場合もある。このため、粒子径や粒子径分布を制御することができる金属コロイド溶液を提供することも望まれている。
【特許文献1】特開2003−103158号公報
【特許文献2】特開2005−68546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、所望の粒子径や粒子径分布を有する1種又は2種以上の金属からなる金属コロイド粒子を含み、固形分中の金属濃度が高い金属コロイド溶液を良好に得ることができる金属コロイド溶液の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、金属コロイド粒子、数平均分子量7000〜500000の高分子量顔料分散剤及び数平均分子量180〜5000の低分子量顔料分散剤を含有する溶液を製造する工程(1)と、上記工程(1)で製造された溶液中の低分子量顔料分散剤の全部又は一部を除去する工程(2)とを含むことを特徴とする金属コロイド溶液の製造方法である。
【0011】
上記工程(1)は、上記高分子量顔料分散剤及び上記低分子量顔料分散剤存在下で、金属化合物を還元することにより溶液を製造するものであることが好ましい。
上記工程(1)において、上記高分子量顔料分散剤の使用量は、上記金属化合物中の金属質量100質量部に対して1〜150質量部(固形分)であることが好ましい。
【0012】
上記工程(1)において、上記高分子量顔料分散剤の使用量/上記低分子量顔料分散剤の使用量(固形分質量比)は、1/20〜10/1であることが好ましい。
上記工程(2)は、上記溶液を限外濾過するものであることが好ましい。
【0013】
上記工程(2)は、上記工程(1)で製造された溶液中の高分子量顔料分散剤の一部も除去するものであることが好ましい。
上記金属コロイド粒子は、2種の金属M及びMからなる複合金属コロイド粒子であることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、上述の金属コロイド溶液の製造方法を用いることにより得られることを特徴とする金属コロイド溶液でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の金属コロイド溶液の製造方法を用いると、固形分中の金属濃度が高い金属コロイド溶液を得ることができる。従って、得られた金属コロイド溶液を塗布、焼成する際に、金属コロイド粒子間の融着を充分に進行させることができるため、良好な導電性皮膜を得ることができる。また、金属濃度が高いために、焼成の際に、加熱温度を低下させたり、加熱時間を短縮したりしても、良好な導電性皮膜を得ることができる。
【0016】
本発明において、固形分中の金属濃度が高い金属コロイド溶液が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。
工程(1)で溶液を製造する際、高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤の両分散剤が、生成したコロイド粒子を溶液中において分散安定化する機能を有している。そして、工程(2)では、溶液中の低分子量顔料分散剤の全部又は一部(大部分)と、必要に応じて高分子量顔料分散剤の一部とが除去される。このようにして得られた金属コロイド溶液においては、主として高分子量顔料分散剤が溶液中の金属コロイド粒子の保存安定性を確保する機能を発揮している。
【0017】
本発明では、高分子量顔料分散剤、低分子量顔料分散剤が、このような機能を発揮しているため、高分子量顔料分散剤の使用量を、得られた金属コロイド溶液の保存安定性を確保できる最小限の量まで低減させられる。また、本発明で使用する低分子量顔料分散剤は、工程(2)で大部分が除去されるため、工程(1)において生成したコロイド粒子を充分に分散安定化できる量(多量)を使用することが可能となる。
【0018】
以上のような作用・機能が発揮される結果、得られた金属コロイド溶液は、最小限の高分子量顔料分散剤を含むとともに、低分子量顔料分散剤の大部分を除去したものとなるため、溶液に含まれる固形分中の金属濃度を従来に比べて更に高めることができたと推察される。
【0019】
なお、本発明においては、低分子量顔料分散剤として数平均分子量180〜5000のものを使用し、高分子量顔料分散剤として数平均分子量7000〜500000のものを使用しているが、これらの2種類の分子量分布を有する顔料分散剤は、限外濾過等の周知の方法で容易に分離することができる通常の範囲であるとの観点から、このような数値範囲としたものである。
【0020】
また、本発明の製造方法を用いると、従来の方法では製造することが困難であった種々の複合金属コロイド粒子を得ることができる。例えば、従来のBi及びNiからなる複合金属コロイド粒子については、粒子中のNiの質量分率が高まると、ナノサイズで安定化した複合粒子を得ることが通常困難であった。また、多量の高分子量顔料分散剤を使用してこのような複合粒子を得たとしても、固形分中の金属濃度が低いため、高い導電性を有する皮膜を得ることが困難であった。これらは、Ni量が高まると、コロイド粒子の表面活性が増大することが原因であると推察されるが、本発明を用いることにより、Ni量の多いナノサイズで安定化したBi及びNiからなる複合金属コロイド粒子を含む金属コロイド溶液を製造することができる。
【0021】
更に、本発明の製造方法を用いると、得られる金属コロイド溶液中の金属コロイド粒子の粒子径や粒度分布の制御を行うことができる。このため、所望の粒子径を有する金属コロイド溶液や狭い粒度分布を有する金属コロイド溶液を提供することが可能となる。
【0022】
本発明の金属コロイド溶液の製造方法は、第一の工程として、金属コロイド粒子、数平均分子量7000〜500000の高分子量顔料分散剤及び数平均分子量180〜5000の低分子量顔料分散剤を含有する溶液を製造する工程(1)を行うものである。
【0023】
上記工程(1)において、上記溶液は、例えば、上記高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤存在下で、金属化合物を還元することにより得ることができる。
上記金属化合物は、溶媒に溶解することにより金属イオンを生じ、上記金属イオンが還元されて金属コロイド粒子を供給するものである。上記金属コロイド粒子となる金属としては特に限定されないが、優れた導電性皮膜や金属調皮膜を得る点から、貴金属又は銅が好ましい。上記貴金属としては特に限定されず、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。なかでも、金、銀、白金、パラジウムが好ましい。
【0024】
上記金属化合物としては上述の金属を含むものであれば特に限定されず、例えば、テトラクロロ金(III)酸四水和物(塩化金酸)、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(塩化白金酸)、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)二水和物、酢酸銅(II)一水和物、硫酸銅(II)、塩化パラジウム(II)二水和物、三塩化ロジウム(III)三水和物等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上を使用することができる。
【0025】
上記金属化合物は、溶媒中の金属モル濃度が0.01mol/l以上となるように用いられることが好ましい。0.01mol/l未満であると、得られる金属コロイド溶液の金属モル濃度が低すぎて、効率的でない。好ましくは0.05mol/l以上、より好ましくは0.1mol/l以上である。
【0026】
上記溶媒としては、上記金属化合物を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、水、有機溶媒等を挙げることができる。上記有機溶媒等としては特に限定されず、例えば、エタノール、エチレングリコール等の炭素数1〜4のアルコール;アセトン等のケトン類;酢酸エチル;ホルムアミド等のアミド類等のエステル類等が挙げられる。上記溶媒としては1種又は2種以上を用いることができる。上記溶媒が水と有機溶媒との混合物である場合には、上記有機溶媒としては、水可溶性のものが好ましく、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコール等が挙げられる。本発明においては、工程(2)において、限外濾過等で低分子量顔料分散剤の全部又は一部(大部分)、必要に応じて高分子量顔料分散剤の一部を好適に除去できる点から、水、アルコール並びに水及びアルコールの混合溶液が好ましい。
【0027】
上記高分子量顔料分散剤は、高分子量の重合体に顔料表面に対する親和性の高い官能基が導入されているとともに、溶媒和部分を含む構造を有する両親媒性の共重合体であり、通常は顔料ペーストの製造時に顔料分散剤として使用されているものである。
【0028】
上記高分子量顔料分散剤は、上記金属コロイド粒子と共存しており、上記低分子量顔料分散剤とともに、金属コロイド粒子の生成及び生成後の溶媒中での分散をそれぞれ安定化する働きをしていると考えられる。特に本発明により得られた金属コロイド溶液においては、主として高分子量顔料分散剤が溶媒中の金属コロイド粒子を分散安定化する働きをしていると考えられる。
【0029】
上記高分子量顔料分散剤の数平均分子量は、7000〜500000である。7000未満であると、分散剤の除去工程後の分散安定性が充分ではないことがあり、500000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となる場合がある。好ましくは、8000〜200000である。
【0030】
上記数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定によるポリスチレン換算の測定値である。
上記GPC測定方法は定法に従って行われる。測定対象となる高分子量顔料分散剤の希薄テトラヒドロフラン溶液を調製し、流量条件0.6ml/minで東ソー社製GPC測定装置「HLC−8220GPC」を用いて測定した。カラムには、昭和電工社製「KF606M」と「KF603」を使用した。
【0031】
上記高分子量顔料分散剤は、分散対象物である顔料粒子との相互作用に基づいて、その機能を発揮する。上記分散対象物である顔料粒子は、一般に、粒径が100μm〜数100μmの金属酸化物や有機化合物である。すなわち、上記高分子量顔料分散剤は、このような顔料粒子の特性に適合した分散機能性高分子である。一方、金属コロイド粒子の粒径は、数nm〜数10nmであり、その粒径は、顔料粒子のそれの約1000分の1〜100分の1であって、その体積は、顔料粒子の10−9〜10−6倍程度である。
【0032】
上記高分子量顔料分散剤としては特に限定されないが、以下に説明するものを好適に使用することができる。すなわち;
(1)顔料親和性基を主鎖及び/又は複数の側鎖に有し、かつ、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を有する櫛形構造の高分子
(2)主鎖中に顔料親和性基からなる複数の顔料親和部分を有する高分子
(3)主鎖の片末端に顔料親和性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子
【0033】
ここで、上記顔料親和性基とは、顔料の表面に対して強い吸着力を有する官能基をいい、例えば、オルガノゾルにおいては、第3級アミノ基、第4級アンモニウム、塩基性窒素原子を有する複素環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基;ヒドロゾルにおいては、フェニル基、ラウリル基、ステアリル基、トリデシル基、オレイル基等を挙げることができる。本発明において、上記顔料親和性基は、金属表面に対して強い親和力を示す。上記高分子量顔料分散剤は、上記顔料親和性基を有することにより、金属コロイド粒子の保護コロイドとして充分な性能を発揮することができる。
【0034】
上記櫛形構造の高分子(1)は、上記顔料親和性基を有する複数の側鎖とともに、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を主鎖に結合した構造のものであり、これらの側鎖があたかも櫛の歯のように主鎖に結合されているものである。本明細書中、上述の構造を櫛形構造と称する。上記櫛形構造の高分子(1)において、上記顔料親和性基は、側鎖末端に限らず、側鎖の途中や主鎖中に複数存在していてもよい。なお、上記溶媒和部分は、溶媒に親和性を有する部分であって、親水性又は疎水性の構造をいう。上記溶媒和部分は、例えば、水溶性の重合鎖、親油性の重合鎖等から構成されている。
【0035】
上記櫛形構造の高分子(1)としては特に限定されず、例えば、特開平5−177123号公報に開示されている1個以上のポリ(カルボニル−C〜C−アルキレンオキシ)鎖を有し、これらの各鎖が3〜80個のカルボニル−C〜C−アルキレンオキシ基を有しかつアミド又は塩架橋基によってポリ(エチレンイミン)に結合されている構造のポリ(エチレンイミン)又はその酸塩からなるもの;特開昭54−37082号公報に開示されているポリ(低級アルキレン)イミンと、遊離のカルボン酸基を有するポリエステルとの反応生成物よりなり、各ポリ(低級アルキレン)イミン連鎖に少なくとも2つのポリエステル連鎖が結合されたもの;特公平7−24746号公報に開示されている末端にエポキシ基を有する高分子量のエポキシ化合物に、アミン化合物と数平均分子量300〜7000のカルボキシル基含有プレポリマーとを同時に又は任意順に反応させて得られる顔料分散剤等を挙げることができる。
【0036】
上記櫛形構造の高分子(1)は、顔料親和性基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなくなるおそれがある。3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがあり、また、金属コロイド粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。より好ましくは、25〜1500個である。
【0037】
上記櫛形構造の高分子(1)は、溶媒和部分を構成する側鎖が1分子中に2〜1000存在するものが好ましい。2未満であると、分散安定性が充分ではなくなるおそれがある。1000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがあり、また、金属コロイド粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。より好ましくは、5〜500である。
【0038】
上記主鎖中に顔料親和性基からなる複数の顔料親和部分を有する共重合体(2)は、複数の顔料親和性基が主鎖にそって配置されているものであり、上記顔料親和性基は、例えば、主鎖にペンダントしているものである。本明細書中、上記顔料親和部分は、上記顔料親和性基が1つ又は複数存在して、顔料表面に吸着するアンカーとして機能する部分をいう。
【0039】
上記共重合体(2)としては、例えば、特開平4−210220号公報に開示されているポリイソシアネートと、モノヒドロキシ化合物及びモノヒドロキシモノカルボン酸又はモノアミノモノカルボン酸化合物の混合物、並びに、少なくとも1つの塩基性環窒素とイソシアネート反応性基とを有する化合物との反応物;特開昭60−16631号公報、特開平2−612号公報、特開昭63−241018号公報に開示されているポリウレタン/ポリウレアよりなる主鎖に複数の第3級アミノ基又は塩基性環式窒素原子を有する基がペンダントした高分子;特開平1−279919号公報に開示されている水溶性ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する立体安定化単位、構造単位及びアミノ基含有単位からなる共重合体であって、アミン基含有単量単位が第3級アミノ基若しくはその酸付加塩の基又は第4級アンモニウムの基を含有しており、該共重合体1g当たり0.025〜0.5ミリ当量のアミノ基を含有する共重合体;特開平6−100642号公報に開示されている付加重合体からなる主鎖と、少なくとも1個のC〜Cアルコキシポリエチレン又はポリエチレン−コプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる安定化剤単位とからなる両親媒性共重合体であって、主鎖は、30質量%までの非官能性構造単位と、合計で70質量%までの安定化剤単位及び官能性単位を含有しており、上記官能性単位は、置換されているか又は置換されていないスチレン含有単位、ヒドロキシル基含有単位及びカルボキシル基含有単位であり、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とスチレン基及びヒドロキシル基とプロピレンオキシ基又はエチレンオキシ基との比率が、それぞれ、1:0.10〜26.1;1:0.28〜25.0;1:0.80〜66.1である両親媒性高分子等を挙げることができる。
【0040】
上記共重合体(2)は、顔料親和性基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなくなるおそれがある。3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがあり、また、金属コロイド粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。より好ましくは、25〜1500個である。
【0041】
上記主鎖の片末端に顔料親和性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子(3)は、主鎖の片末端のみに1つ又は複数の顔料親和性基からなる顔料親和部分を有しているが、顔料表面に対して充分な親和性を有するものである。
【0042】
上記直鎖状の高分子(3)としては特に限定されず、例えば、特開昭46−7294号公報に開示されている一方が塩基性であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4656226号明細書に開示されているAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子;米国特許第4032698号明細書に開示されている片末端が塩基性官能基であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4070388号明細書に開示されている片末端が酸性官能基であるA−Bブロック型高分子;特開平1−204914号公報に開示されている米国特許第4656226号明細書に記載のAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子の耐候黄変性を改良したもの等を挙げることができる。
【0043】
上記直鎖状の高分子(3)は、顔料親和性基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなくなるおそれがある。3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがあり、また、金属コロイド粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。より好ましくは、5〜1500個である。
【0044】
上記高分子量顔料分散剤としては、種々のものが利用できるが、市販されているものを使用することもできる。上記高分子量顔料分散剤は、製造しようとする金属コロイド粒子含有溶液の種類に適したものを選択することができる。溶媒が水系又は極性の高い有機溶媒系のものである場合には極性高分子量顔料分散剤が、溶媒が水と相溶しない非極性のものである場合には低極性高分子量顔料分散剤がそれぞれ選択される。
【0045】
上記極性高分子量顔料分散剤の市販されているものとしては、ディスパービックR、ディスパービック154、ディスパービック180、ディスパービック187、ディスパービック184、ディスパービック183、ディスパービック185、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192、ディスパービック194(以上ビックケミー社製)、ソルスパース20000、ソルスパース27000、ソルスパース12000、ソルスパース40000、ソルスパース41090、ソルスパース44000、ソルスパースHPA34(以上ルーブリゾール社製)、EFKA−4500、EFKA−4510、EFKA−4530、EFKA−4540、EFKA−4550、EFKA−4560、EFKA−4570、EFKA−4580、EFKA−1501、EFKA−1502(以上エフカ アディテブズ社製)、フローレンTG−720W、フローレンTG−730W、フローレンTG−740W、フローレンTG−745W、フローレンTG−750W、フローレンTG−760W、フローレンG−700DMEA、フローレンG−700AMP、フローレンG−WK−10、フローレンG−WK−13E(以上共栄社製)、ディスパーエイドW−30、ディスパーエイドW−39(エレメンティス社製)、K−SPERSE XM2311(キング社製)、ネオレッツBT−24、ネオレッツBT−175(以上ゼネカ社製)、SMA1440H(アトケム社製)、オロタン731DP、オロタン963(ローム・アンド・ハース社製)、ヨネリン(米山化学製)、サンスパールPS−2(三洋化成製)、トライトンCF−10(ユニオンカーバイド社製)、ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル683、ジョンクリル611、ジョンクリル680、ジョンクリル682、ジョンクリル52、ジョンクリル57、ジョンクリル60、ジョンクリル63、ジョンクリル70、ジョンクリルHPD−71、ジョンクリル62(ジョンソンポリマー社製)サーフィノールCT−111(エアプロダクツ社製)等を挙げることができる。
【0046】
一方、上記低極性高分子量顔料分散剤の市販されているものとして、ディスパービック110、ディスパービックLP−6347、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック160、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック161、ディスパービック166、ディスパービック168、ディスパービック182、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2050、ディスパービック2150、ディスパービック2070、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S(以上ビックケミー社製)、ソルスパース24000、ソルスパース28000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース32600、ソルスパース31845、ソルスパース26000、ソルスパース36600、ソルスパース37500、ソルスパース35100、ソルスパース38500(以上ルーブリゾール社製)、EFKA−1101、EFKA−1120、EFKA−1125、EFKA−4046、EFKA−4047、EFKA−4080、EFKA−4050、EFKA−4055、EFKA−4008、EFKA−4009、EFKA−4010、EFKA−4015、EFKA−4400、EFKA−4401、EFKA−4402、EFKA−4403、EFKA−4020(以上エフカ アディテブズ社製)、フローレンD−90、フローレンG−700、フローレンG−820、フローレンG−600、フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−17、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−33、フローレンDOPA−44、フローレンNC−500、フローレンTG−710(以上共栄社化学社製)、ディスパロン2150、ディスパロン1210(楠本化成製)、アジスパーPB711、アジスパーPA111、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPN411(味の素ファインテクノ社製)等を挙げることができる。上記高分子量顔料分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記高分子量顔料分散剤は、顔料親和性基が側鎖に存在し、溶媒和部分を構成する側鎖を有するグラフト構造のもの〔上記櫛形構造の高分子(1)〕;主鎖に、顔料親和性基を有するもの〔上記共重合体(2)及び上記直鎖状の高分子(3)〕であるので、金属コロイド粒子の分散性が良好であり、金属コロイド粒子に対する保護コロイドとして好適である。上記高分子量顔料分散剤を、後述する低分子量顔料分散剤とともに使用することにより、金属コロイド粒子を高い濃度で含有する金属コロイド粒子分散体を得ることができる。
【0048】
本発明において、上記高分子量顔料分散剤は、軟化温度が、30℃以上であることが好ましい。30℃未満であると、得られる金属コロイド粒子が得られないおそれがある。より好ましくは、40℃以上である。
【0049】
上記低分子量顔料分散剤は、疎水性部分及び親水性部分を含む共重合体であり、通常はインク用分散剤として使用されるものである。本発明の効果が好適に得られる観点から、アクリル系重合体や炭化水素により形成される疎水性構造の部分及びポリオキシアルキレン基(ポリオキシエチレン基等)により形成される親水性構造の部分を含む共重合体であることが好ましい。
上記低分子量顔料分散剤は、上記金属コロイド粒子と共存しており、高分子量顔料分散剤とともに、上記金属コロイド粒子が溶媒中で分散するのを安定化する働きをしていると考えられる。
【0050】
上記低分子量顔料分散剤の数平均分子量は、180〜5000である。180未満であると、分散安定性が充分ではないことがあり、5000を超えると、工程(2)において低分子量顔料分散剤を充分に除去できないおそれがある。好ましくは200〜4000、より好ましくは1000〜4000である。
上記数平均分子量は、分子式を特定できる場合は、分子式から分子量を算出することができる。ただし、分子式が特定されなかった場合は、上記高分子量顔料分散剤と同様の方法により得られる値である。
【0051】
上記低分子量顔料分散剤としては、上述の性質を有するものであれば特に限定されず、例えば、エチルへキシル基、ラウリル基、トリデシル基、オレイル基、ステアリル基等の官能基と、ポリオキシアルキレン鎖とが結合した化合物等を挙げることができる。これらの化合物は、ノニオン(非イオン)界面活性剤として公知の化合物であり、高級アルコールとポリアルキレングリコールとがエーテル結合したもの、高級脂肪酸とポリアルキレングリコールとがエステル化したもの、脂肪族性2級アミンの活性水素とポリアルキレングリコールの水酸基との脱水縮合反応で結合を形成したもの等を挙げることができる。
【0052】
上記低分子量顔料分散剤としては、種々のものが利用できるが、市販されているものを使用することができる。上記市販品としては、例えば、ディスパービック193(ビックケミー社製)、エソファット0/20、エソミンC/15、エソミンC/25、エソミンT/15、エソミンT/25、エソミンS/25、エソミンSAJ−103、エソミンSA2Y−103(以上ライオン・アクゾ社製)、ニューコール1004、ニューコール1008、ニューコール1020、ニューコール2303、ニューコール2305、ニューコール2308HE、ニューコール2320、ニューコール2327、ニューコール2360、ニューコール1203、ニューコール1204、ニューコール1205、ニューコール1305、ニューコール1310、ニューコール1515、ニューコール1525、ニューコール1533、ニューコール1545、ニューコール1606、ニューコール1607、ニューコール1807、ニューコール1820、アントックスMS−60(以上日本乳化剤社製)を挙げることができる。上記低分子顔料分散剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても良い。
【0053】
上記工程(1)において、上記高分子量顔料分散剤の使用量は、上記金属化合物中の金属質量100質量部に対して、1〜150質量部(固形分)であることが好ましい。1質量部未満であると、得られる金属コロイド溶液中の金属コロイド粒子を分散安定化することができないおそれがある。150質量部を超えると、得られる金属コロイド溶液の金属濃度を高めることができないおそれがある。より好ましくは、1.5〜45質量部である。
【0054】
上記工程(1)において、上記高分子量顔料分散剤の使用量/上記低分子量顔料分散剤の使用量(固形分質量比)は、1/20〜10/1であることが好ましい。上記範囲より低分子量顔料分散剤の使用量が少ないと、還元時の分散安定性が低下するおそれがある。上記範囲より低分子量顔料分散剤の使用量が多くても、還元時の分散安定性の向上は見られないため、不経済となるおそれがある。より好ましくは、1/10〜2/1である。
【0055】
上記金属化合物は、上述の高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤存在下で、還元性化合物を用いて金属へ還元することができる。上記還元性化合物としては、アミンが好ましく、上記金属化合物、高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤の溶液にアミンを添加して攪拌、混合することによって、金属イオンが常温付近で金属に還元される。上記アミンを使用することにより、危険性や有害性の高い還元剤を使用する必要がなく、加熱や特別な光照射装置を使用することなしに、5〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度の反応温度で、金属化合物を還元することができる。
【0056】
上記アミンとしては特に限定されず、例えば、特開平11−80647号公報に例示されているものを使用することができ、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N′−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン;ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等を挙げることができる。また、上記アミンとして、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンも挙げることができる。これらのうち、アルカノールアミンが好ましく、ジメチルエタノールアミンがより好ましい。
【0057】
上記アミンの他に、従来より還元剤として使用されている水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩;ヒドラジン化合物;クエン酸;酒石酸;アスコルビン酸;ギ酸;ホルムアルデヒド;亜ニチオン酸塩、スルホキシル酸塩誘導体;二酸化チオ尿素等を使用することができる。入手容易なことから、クエン酸;酒石酸;アスコルビン酸が好ましい。これらは、単独又は上記アミンと組み合わせて使用することが可能であるが、アミンとクエン酸、酒石酸、アスコルビン酸を組み合わせる場合、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸はそれぞれ塩の形のものを用いることが好ましい。また、クエン酸やスルホキシル酸塩誘導体は、鉄(II)イオンと併用することによって、還元性の向上を図ることができる。
【0058】
上記還元性化合物の添加量は、上記金属化合物中の金属を還元するのに必要な量以上であることが好ましい。この量未満であると、還元が不充分となるおそれがある。また、上限は特に規定されないが、上記金属化合物中の金属を還元するのに必要な量の30倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましい。
また、これらの還元性化合物の添加により化学的に還元する方法以外に、高圧水銀灯を用いて光照射する方法を使用することも可能である。
【0059】
上記還元性化合物を添加する方法としては特に限定されず、例えば、上記高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤の添加後に行うことができ、この場合は、例えば、まず溶媒に上記高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤を溶解させ、更に、上記還元性化合物又は金属化合物の何れかを溶解させて得られる溶液に、還元性化合物又は金属化合物の残った方を加えることで、還元を進行させることができる。上記還元性化合物を添加する方法としては、また、先に高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤と上記還元性化合物とを混合しておき、この混合物を金属化合物の溶液に加える形態をとってもよい。
【0060】
上記還元により、平均粒子径が約5nm〜100nmである金属コロイド粒子を含む溶液が得られる。
上記還元後の溶液は、上記金属コロイド粒子、高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤を含むものであり、コロイド溶液となる。上記コロイド溶液とは、金属の微粒子が溶媒中に分散しており、溶液として視認できるような状態にあるものを意味している。
【0061】
本発明では、2種以上の金属からなる複合金属コロイド粒子を含む金属コロイド溶液を得ることも可能である。このうち、2種の金属M及びMからなる複合金属コロイド粒子(以下、「金属M・Mコロイド粒子」ともいう)を含む金属コロイド溶液を得る場合は、以下に述べる方法等で工程(1)を行うことができる。
【0062】
上記金属M・Mコロイド粒子とは、金属M及びMからなる合金等を挙げることができる。合金とは、2種類の金属が原子レベルから、層状、グラニュラー状、アモルファス状等のミクロなレベルで混合した状態になっていることを意味する。なお、上記混合は全体が同じ状態ではなく、ある部分は層状が支配的になっており、また、ある部分は、アモルファス状が支配的になっているといったように、部分部分でその構成が異なっているものと推察される。
【0063】
上記金属M・Mコロイド粒子を含む金属コロイド溶液を製造する場合、上記工程(1)では、上記高分子量顔料分散剤及び上記低分子量顔料分散剤存在下で、金属Mイオン及び金属Mイオンを含有する2種金属溶液から金属水酸化物類を析出させた後に、還元反応させることによって溶液を製造することができる。
【0064】
上記高分子量顔料分散剤、低分子量顔料分散剤は、上述したものと同様のものを用いることができ、金属M、Mの種類に応じて適宜選択して使用すればよい。
上記2種の金属M及びMとしては特に限定されず、例えば、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、銅、ニッケル、ビスマス、インジウム、コバルト、亜鉛、タングステン、クロム、鉄、モリブデン、タンタル、マンガン、スズ、チタン等を挙げることができる。
【0065】
上記2種金属溶液は、上記金属M又はMを含む金属化合物を、溶媒に溶解させて得られる。上記金属M又はMを含む金属化合物としては、上記溶媒に溶解して金属Mイオン又は金属Mイオンを生成するものであればよい。
上記金属化合物の例として、上記金属が金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、銅である場合は、上述した化合物を用いることができる。
【0066】
また、上記金属がニッケルである場合、上記金属化合物の例として、塩化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)六水和物、臭化ニッケル(II)、フッ化ニッケル(II)四水和物、ヨウ化ニッケル(II)n水和物等のハロゲン化物;硝酸ニッケル(II)六水和物、過塩素酸ニッケル(II)六水和物、硫酸ニッケル(II)六水和物、リン酸ニッケル(II)n水和物、塩基性炭酸ニッケル(II)等の鉱酸化合物;水酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(III)等のニッケル無機化合物;酢酸ニッケル(II)四水和物、乳酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)二水和物、酒石酸ニッケル(II)三水和物、クエン酸ニッケル(II)n水和物等のニッケル有機酸化合物等を挙げることができる。上記ニッケル有機酸化合物は、例えば、塩基性炭酸ニッケルと有機酸から調製することができる。なかでも、溶解性の高い酢酸ニッケル(II)四水和物、塩化ニッケル(II)六水和物、硝酸ニッケル(II)六水和物が好ましい。
【0067】
また、上記金属がビスマスである場合、上記金属化合物の例として、塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、臭化ビスマス、ケイ酸ビスマス、水酸化ビスマス、三酸化ビスマス、硝酸ビスマス、次硝酸ビスマス、オキシ炭酸ビスマス等の無機系ビスマス含有化合物;乳酸ビスマス、トリフェニルビスマス、没食子酸ビスマス、安息香酸ビスマス、クエン酸ビスマス、メトキシ酢酸ビスマス、酢酸ビスマス、ギ酸ビスマス、2,2−ジメチロールプロピオン酸ビスマス等の他、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス等の(塩基性)ビスマス化合物と有機酸とを水性媒体中で混合・分散することによって製造できるような有機酸変性ビスマス(国際公開WO99/31187号公報参照)等の有機系ビスマス含有化合物等を挙げることができる。なかでも、溶媒として水を含む場合には、水への溶解性の観点から、塩化ビスマスや硝酸ビスマスが好ましい。
【0068】
更に、上記金属がそれぞれ下記の金属である場合についての金属化合物の例を挙げると、インジウムの場合、塩化インジウム(III)、硝酸インジウム(III)三水和物、ヨウ化インジウム(I);コバルトの場合、塩化コバルト(II)六水和物、酢酸コバルト(II)四水和物、過塩素酸コバルト(II)六水和物、硝酸コバルト(II)六水和物;亜鉛の場合、塩化亜鉛(II)、酢酸亜鉛(II)二水和物、硝酸亜鉛(II)六水和物;タングステンの場合、タングステン酸(VI)ナトリウム二水和物、無水タングステン酸、タングステン酸;クロムの場合、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)六水和物、硝酸クロム(III)九水和物;鉄の場合、塩化鉄(II)四水和物、塩化鉄(III)六水和物、硝酸鉄(III)九水和物、過塩素酸鉄(II)六水和物;モリブデンの場合、モリブデン(VI)酸ナトリウム二水和物、モリブデン酸、塩化モリブデン(V);タンタルの場合、タンタル酸(V)ナトリウム、塩化タンタル(V);マンガンの場合、塩化マンガン(II)四水和物、酢酸マンガン(II)四水和物、酢酸マンガン(III)二水和物、硝酸マンガン(II)六水和物;スズの場合、酢酸スズ(II)、塩化スズ(II)二水和物となる。
【0069】
上記金属M・Mコロイド粒子を含む金属コロイド溶液を製造する場合、任意に選択した2種類の金属を使用して複合金属コロイド粒子含有溶液を調製することができるわけではなく、適した組み合わせの金属を使用することによって複合金属コロイド粒子含有溶液を調製することができる。以下に、金属M及び金属Mとして選択することができる組み合わせについて述べる。
【0070】
上述した金属のうち、例えば、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、銅、ニッケル、ビスマス、スズのイオンは、高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤存在下で還元剤を使用することによって、金属水酸化物類を析出させた後、金属に還元される金属イオンである(以下、これらを単独還元性金属イオンという。)。このような金属イオンを金属Mイオンとする場合、金属Mイオンは、金属Mとは異なる単独還元性金属イオンである。
【0071】
上記単独還元性金属イオンのなかでも、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ニッケルのイオンは、還元された金属が、別の還元反応の触媒として機能する(以下、これらを単独還元性及び触媒作用性金属イオンという。)。単独還元性及び触媒作用性金属イオンのなかの銀、パラジウム、ニッケルのイオンは、還元反応の触媒能において特に優れている。
【0072】
上記金属Mイオンが上記単独還元性及び触媒作用性金属イオンである場合、金属Mイオンとしては、上記単独還元性金属イオンに加えて、インジウム、亜鉛、タングステン、クロム、鉄、モリブデン、タンタル、マンガン、チタンのイオン(以下、これらをその他の金属イオンという。)であってもよい。
【0073】
上記金属Mイオンが上記単独還元性及び触媒作用性金属イオンである場合の、金属Mイオンは、いずれも金属イオンから金属への還元反応の標準電位が−1.6V以上の値を示す金属イオンである。よって、例えばナトリウムやカリウム等のアルカリ金属やマグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属やセリウムやプラセオジムといったランタノイドやアルミニウムは、金属イオンから金属への還元反応の標準電位が−1.6Vよりも低いのでこれらを金属Mイオンとして使用することはできない。
【0074】
ここで、標準電位は酸化還元反応の方向性を判断する指標であって、イオン化傾向を定量化したものととらえることができる。すなわち、標準電位が高い値のイオンほど、還元反応が進行しやすいことを示す。標準電位はデータとして種々の書物に記載されているが、pH及びイオン価数により、その値は変化する。チタンはこれらの条件を選択することにより、標準電位が−1.6Vを超えることができるので、上記その他の金属に含まれる。
【0075】
上記2種金属溶液に含まれる金属Mイオン及び金属Mイオンの供給源となる金属化合物(上述した化合物)は、上記2種金属溶液中の金属モル濃度(金属M及びMの合計量)が0.01mol/l以上となるように用いられることが好ましい。0.01mol/l未満であると、得られる複合金属コロイド粒子含有溶液の金属モル濃度が低すぎて、効率的でない。好ましくは0.05mol/l以上、より好ましくは0.1mol/l以上である。
【0076】
上記2種金属溶液中の溶媒としては、上記金属化合物を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、上述した水、有機溶媒等を用いることができる。
【0077】
上記工程(1)において、上記2種金属溶液中での上記高分子量顔料分散剤の使用量は、上記金属化合物中の金属質量100質量部に対して、1〜150質量部(固形分)であることが好ましい。1質量部未満であると、得られる複合金属コロイド粒子含有溶液中の複合金属コロイド粒子を分散安定化することができないおそれがある。150質量部を超えると、得られる複合金属コロイド粒子含有コロイド溶液の金属濃度を高めることができないおそれがある。より好ましくは、1.5〜45質量部である。
【0078】
上記工程(1)において、上記2種金属溶液中での上記高分子量顔料分散剤の使用量/上記低分子量顔料分散剤の使用量(固形分質量比)は、1/20〜10/1であることが好ましい。上記範囲より低分子量顔料分散剤の使用量が少ないと、還元時の分散安定性が低下するおそれがある。上記範囲より低分子量顔料分散剤の使用量が多くても、還元時の分散安定性の向上は見られないため、不経済となるおそれがある。より好ましくは、1/10〜2/1である。
【0079】
上記金属M・Mコロイド粒子を含む金属コロイド溶液を製造する場合には、このようにして調製された上記2種金属溶液に沈殿剤を加えて、金属水酸化物類を析出させる。この金属水酸化物類とは、金属水酸化物、金属オキシ水酸化物、金属酸化物及びこれらの混合物を意味するものであり、用いる金属M及びMの種類によって、その構成は異なってくる。
【0080】
すなわち、上記金属Mイオン及び金属Mイオンがともに単独還元性金属イオンである場合、沈殿剤の添加により、金属M及び金属Mを含む金属水酸化物類が析出する。一方、上記金属Mイオンが単独還元性及び触媒作用性金属イオンであり、上記金属Mイオンがその他のイオンである場合には、金属Mのみを含む金属水酸化物類が析出する。このように、上記金属水酸化物類が2種の金属M及びMのうち1種のみを含むものであること、又は、上記金属水酸化物類が2種の金属M及びMを含む複合水酸化物又は複合酸化物であること、が好ましい。
【0081】
上記沈殿剤としては、塩基性化合物を用いることができる。系を塩基性にすることで、溶媒に溶けにくい金属水酸化物類が生成すると考えられる。具体的な沈殿剤としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の塩基性アルカリ金属塩やアミンやグアニジン、イミダゾール等の水溶性の有機塩基化合物等が挙げられる。これらは、用いている金属M及び金属Mにより適宜選択され得る。特に還元作用をも有する水溶性脂肪族アミンが好適に用いられる。なお、加えられる沈殿剤の量は、沈殿させる対象の金属塩の規定度に対して、0.1〜10倍量とすることができる。
【0082】
上記金属M・Mコロイド粒子を含む金属コロイド溶液を製造する場合には、この金属水酸化物類が析出した状態で還元を行う。還元は還元剤を系に添加することにより行なわれる。先に述べたように、析出物が金属M及び金属Mを含む金属水酸化物類である場合、これを還元することにより、複合金属コロイド粒子が得られる。一方、上記金属Mイオンが単独還元性及び触媒作用性金属イオンであって、金属Mのみを含む金属水酸化物類が析出した場合、金属Mのコロイド粒子が生成するとともに、この粒子表面における還元触媒作用によって、溶液中の金属Mイオンが還元され、その結果、金属M・Mコロイド粒子が得られる。これは、金属M・Mコロイド粒子が得られたのと同じ条件では、その他のイオンである金属Mイオン単独でコロイド粒子を得ることができないことから容易に類推される。
【0083】
また、上記金属Mイオンが単独還元性及び触媒作用性金属イオンであり、上記金属Mイオンが単独還元性イオンである場合にも、上記還元触媒作用が働いていることが予想される。このような例として、金属Mが銀、金属Mがニッケル又はビスマスという組み合わせ、金属Mがニッケル、金属Mがコバルト又はビスマスという組み合わせをそれぞれ挙げることができる。
【0084】
上記還元剤としては、例えば、上述したアミンを用いることができる。また、上記アミンの他に、上述した従来より還元剤として使用されているものを用いることもできる。必要に応じて、アミンよりも強い還元力有するものであることが好ましく、なかでも、安全性と反応効率の観点から、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(ロンガリット)、炭酸ヒドラジンが好ましい。これらの還元剤は適切なものを組み合わせて使用することができる。
【0085】
上記還元剤の添加量は、上記2種金属溶液に含まれる金属Mイオン及び金属Mイオンを還元するのに必要な量以上であることが好ましく、上述した量と同様の量であることが好ましい。
また、上述した還元剤の添加以外の方法によって還元を行うこともできる。
【0086】
上記還元剤を添加する方法として、2種の金属M及びMを含む金属水酸化物類が析出した後に、還元反応する場合には、例えば、金属Mを含む化合物及び金属Mを含む化合物と高分子量顔料分散剤と低分子量顔料分散剤とを溶解させて得られる溶液に、還元剤を加えることで行うことや、高分子量顔料分散剤、低分子量顔料分散剤及び還元剤を溶解させて得られる溶液に、金属Mを含む化合物及び金属Mを含む化合物を溶解した溶液を加えることで行うことができる。また、先に高分子量顔料分散剤と低分子量顔料分散剤と還元剤とを混合しておき、この混合物を、金属Mを含む化合物及び金属Mを含む化合物を溶解した溶液に加える形態をとってもよい。なお、金属M・Mコロイド粒子含有溶液の製造に際し、金属Mを含む化合物及び金属Mを含む化合物と高分子量顔料分散剤と低分子量顔料分散剤との混合液が濁っていてもよい。
【0087】
上記還元剤を添加する方法としては、析出する金属水酸化物類が2種の金属M及びMのうちMのみを含むものである場合には、例えば、金属Mを含む化合物と高分子量顔料分散剤と低分子量顔料分散剤と還元剤とを溶解させて得られる溶液に、金属Mを含む化合物を溶解した溶液を加えることで行うことができる。
【0088】
上記金属M・Mコロイド粒子を含む金属コロイド溶液を製造する場合、上述したように工程(1)を行うことによって金属水酸化物類の析出、還元反応を進行させることにより、平均粒子径が約5nm〜100nmである、金属M・Mコロイド粒子を含む溶液が得られる。
【0089】
上記金属M・Mコロイド粒子を含む金属コロイド溶液を製造する場合、上述したように工程(1)を行えば、特にビスマス及びニッケルからなる2種金属コロイド粒子を含む金属コロイド溶液を好適に製造することができる。また、本発明を用いれば、ビスマス及びニッケルからなる金属コロイド粒子におけるニッケル量を良好に増加させることができるため、例えば、Bi/Ni(質量比)が70/30〜99.99/0.01であるビスマス及びニッケルからなる2種金属コロイド粒子を含む溶液を好適に得ることができる。
【0090】
本発明の金属コロイド溶液の製造方法は、上記工程(1)に続いて、第二の工程として、上記工程(1)で製造された溶液中の低分子量顔料分散剤の全部又は一部を除去する工程(2)を行うものである。上記工程(2)により、使用した低分子量顔料分散剤の大部分を除去できるため、得られる金属コロイド溶液の固形分中の金属濃度を更に高めることができる。
【0091】
上記還元後の溶液は、上記金属コロイド粒子、高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤のほかに、金属コロイド溶液の原料に由来する塩化物イオン等の雑イオン、還元で生じた塩や、場合によりアミンを含むものであり、これらの雑イオン、塩やアミンは、得られる金属コロイド溶液の安定性に悪影響を及ぼすおそれがあるので、除去しておくことが望ましい。これらの成分の除去には、電気透析、遠心分離、限外濾過、デカンテーション等の方法が用いられるが、使用した低分子量顔料分散剤の大部分を除去できること、過剰の高分子量顔料分散剤を除去できること、金属濃度を高めることが可能となることから、特に限外濾過の方法が特に好ましい。
【0092】
本発明の金属コロイド溶液の製造方法では、工程(2)において、上記低分子量顔料分散剤の全部又は一部(大部分)と、必要に応じて高分子量顔料分散剤の一部を除去することにより、金属濃度を高める。ここで、上記低分子量顔料分散剤の全部又は一部、上記高分子量顔料分散剤の一部を除去する対象となる金属コロイド溶液は、その金属コロイド粒子、高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤からなる固形分が質量基準で0.05〜50%であることが好ましい。0.05%未満であると、金属モル濃度が低すぎて非効率的であり、50%を超えると、低分子量顔料分散剤の全部又は一部や高分子量顔料分散剤の一部を除去するのが困難な場合がある。また、上記固形分中の金属濃度が85質量%以下であることが好ましい。
【0093】
上記工程(2)において、上記低分子量顔料分散剤は、上記工程での使用量100質量%中の90質量%以上が除去されることが好ましい。90質量%未満であると、得られる金属コロイド溶液の金属濃度を高めることができないおそれがある。95質量%以上除去されることがより好ましく、98質量%以上除去されることが更に好ましく、100質量%除去されることが特に好ましい。
【0094】
上記限外濾過(Ultrafiltration:UF)は、精密濾過(Microfiltration:MF)に用いられる濾過膜よりも更にふるいの目が小さいものである。限外濾過は、通常、高分子量物質やコロイド物質の分離を目的として用いられるものであるが、本発明においては、金属コロイド溶液の固形分中の金属濃度を高めるために用いる。
【0095】
上記限外濾過は、通常、分離対象となる物質の径が1nm〜5μmである。上記径を対象とすることにより、上記不要な雑イオン、塩やアミンとともに、上記低分子量顔料分散剤、高分子量顔料分散剤の一部を除去し、金属コロイド溶液の固形分中の金属濃度を高めることができる。1nm未満であると、不要な成分が濾過膜を通過せず排除できないことがあり、5μmを超えると、上記金属コロイド粒子の多くが濾過膜を通過し、求める金属コロイド高濃度溶液が得られない場合がある。
【0096】
上記限外濾過の濾過膜としては特に限定されないが、通常、例えば、ポリアクリロニトリル、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂製のものが用いられる。これらのうち、ポリアクリロニトリル、ポリサルフォンが好ましく、ポリアクリロニトリルがより好ましい。上記限外濾過の濾過膜は、また、上記限外濾過終了後に通常行われる濾過膜の洗浄を効率よく行う点から、逆洗浄が可能な濾過膜を用いることが好ましい。
【0097】
上記限外濾過の濾過膜としては、分画分子量が3000〜80000のものが好ましい。3000未満であると、低分子量顔料分散剤や不要な高分子量顔料分散剤等が充分に除去されにくく、80000を超えると、上記金属コロイド粒子が濾過膜を通過しやすくなるため、目的とする金属コロイド溶液が得られない場合がある。より好ましくは、10000〜60000である。上記分画分子量は、一般的に、高分子溶液を限外濾過膜に通す場合に限外濾過膜の孔内を通過して外に排除される高分子の分子量を指し、濾過膜の孔径を評価するために用いられる。上記分画分子量が大きな値を示す程、濾過膜の孔径は大きい。
【0098】
上記限外濾過の濾過モジュールの形態としては特に限定されず、例えば、濾過膜の形態によって中空糸型モジュール(キャピラリーモジュールとも呼ばれる)、スパイラルモジュール、チューブラーモジュール、プレート型モジュール等が挙げられ、何れも本発明に好適に用いられる。これらのうち、膜面積が大きいほど濾過に要する時間を短縮することができるので、濾過面積の割にコンパクトな形態を有する中空紙型モジュールが、効率の点から好ましい。また、処理を行う金属コロイド溶液の量が多い場合には、使用する限界濾過膜本数が多いものを使うことが好ましい。
【0099】
上記限外濾過の方法としては特に限定されず、例えば、従来公知の方法等が用いられ、通常、上記工程(1)により得られた金属コロイド粒子、高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤を含む溶液を限外濾過膜に通すことにより行われ、これにより、上述の雑イオン、塩、アミンや、低分子量顔料分散剤、高分子量顔料分散剤を含む濾液が排除される。上記限外濾過は、通常、濾液の上記雑イオンが所望の濃度以下に除去されるまで繰り返し行う。その際、処理する金属コロイド溶液の濃度を一定にするために排除された濾液の量と同じ量の溶剤を加えることが好ましい。このときに加える溶剤として、還元時に用いていたものと異なる種類のものを用いることで、金属コロイド溶液の溶剤を置換することが可能である。
【0100】
上記限外濾過は、通常の操作、例えば、いわゆるバッチ方式で行うことができる。このバッチ方式は、限外濾過が進んだ分、処理対象である金属コロイド溶液を加えていく方法である。なお、上記限外濾過は、上記雑イオンが所望の濃度以下に除去された後で、固形分濃度を高めるために更に行うことが可能である。
【0101】
このように限外濾過によって得られる金属コロイド溶液は、処理前の金属コロイド粒子、高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤を含む溶液における固形分中の金属濃度の値により具体的な値は異なるが、処理前に比べて、固形分中の金属濃度が増加している。
【0102】
上記工程(2)によって、固形分中の金属濃度が95質量%以上の金属コロイド溶液を好適に得ることができる。また、97質量%以上の金属コロイド溶液や98質量%以上の金属コロイド溶液を得ることもできる。
【0103】
なお、固形分中の金属濃度とは、金属コロイド溶液中に含まれる固形分100質量%中に占める金属の質量%を意味する。固形分量及び金属量は、100〜150℃及び数100℃でそれぞれ加熱して得られる残分を測定することにより求めることができる。具体的には、TG−DTAを用いて、140℃まで10℃/分で昇温した後、30分間、140℃を維持して、まず固形分量を求める。その後、500℃まで再び10℃/分で昇温した後、30分間、500℃を維持して金属量を求める。本明細書における金属濃度の測定は、特に断りのない限り、この方法を用いて行ったものである。
【0104】
上記工程(2)によって得られた金属コロイド溶液は、溶剤を加えて最終的には、固形分が1〜50質量%に調整されたものであることが好ましい。ここでも、加える溶剤として、還元時に用いていたものと異なる種類のものを用いることで、金属コロイド溶液の溶剤を置換することが可能である。
【0105】
このようにして得られる金属コロイド溶液は、上記低分子量顔料分散剤の大部分が除去され、上記高分子量顔料分散剤の使用量を最小限に抑えられたものとすることができるため、固形分中の金属濃度を更に高めることができる。このため、高い導電性を有する導電性皮膜を好適に得ることができる。また、本発明の製造方法は、金属コロイド粒子の粒子径や粒度分布の制御を好適に行うことができるため、所望の粒子径や粒度分布を有する金属コロイド溶液を得ることができる。更に、得られる金属コロイド溶液を用いることにより、金属光沢、着色性、熱伝導性等の金属の有する性質を充分に発揮させることもできる。上記金属コロイド溶液は、基材上に塗布して金属性皮膜を好適に形成することができる。上記基材への塗布の方法としては特に限定されず、例えば、従来公知の方法によることができる。
【0106】
本発明によって得られる金属コロイド溶液が適用される用途としては特に限定されず、例えば、半導体基板、プリント基板、サーマルヘッド、電子部品等における電極や配線等の導体回路の形成や電磁波シールド等の電子材料;化粧品、文具、インク、塗料等の色材;鏡やネクタイピン等の物品の表面にめっき調の金属光沢を付与するための工芸装飾材料;抗菌材料、触媒等を挙げることができる。特に、電極や配線等の導体回路の形成に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0107】
本発明の製造方法は、上記工程(1)及び工程(2)を含むものであるため、固形分中の金属濃度が高い金属コロイド溶液を得ることができる。また、従来の方法では製造することが困難であった種々の複合金属コロイド粒子を含む金属コロイド溶液を得ることもできる。また、得られる金属コロイド溶液中の金属コロイド粒子の粒子径や粒度分布の制御を行うことができる。更に、安定な金属コロイド溶液を、大がかりな装置を用いず、簡便に製造することができる。
【実施例】
【0108】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0109】
実施例1 銀コロイドのエタノール溶液の製造
5リットルのコルベンにディスパービック190(有効成分40%の水溶液・ビックケミー社製、数平均分子量12000)0.83g、ディスパービック193(有効成分40%の水溶液・ビックケミー社製、数平均分子量3000)1000.0g、及び、イオン交換水1000.0gを入れて撹拌した。別個の容器に硝酸銀315.0g及びイオン交換水1250.0gを入れて湯浴中で50℃に加熱しながら撹拌し、硝酸銀を溶解した。この硝酸銀水溶液をディスパービック190及びディスパービック193の溶解した水溶液を有するコルベンの中に加えた。この混合水溶液を撹拌しながら湯浴中で50℃になるまで加熱した。次に、コルベン中の液温が50℃に保った状態で撹拌しながら、これに2−ジメチルアミノエタノール826.5gを瞬時に加えた。2−ジメチルアミノエタノールを加えたところ反応温度が59℃に昇温し、液が瞬時に褐色に変化し、その後3分後に黒色に変化した。反応温度が50℃まで下がったところで、この50℃を保ちながら2時間撹拌を続けた。緑みを帯びた灰色を呈した銀コロイドを含んだ水溶液を得た。
【0110】
次に、限外ろ過モジュールであるAHP−1010(旭化成社製;分画分子量50000、使用膜本数400本)、マグネットポンプ、下部にチューブ接続口のある5リットルのフッ素系ポリマー製容器をシリコンチューブで接続して限外ろ過処理した。上述の反応で得られた、銀コロイドを含んだ水溶液をフッ素ポリマー製容器に入れて、マグネットポンプにより循環を行った。限外ろ過モジュールから、雑イオンや低分子保護剤であるディスパービック193等を含んだ、無色透明の水溶液から、ろ液が系外に排出されることを確認できた。限外ろ過により、フッ素ポリマー製容器内の母液量が1リットルにまで減少したら、2リットルのイオン交換水を加えて、更にマグネットポンプによる循環を続け、限外ろ過を続行した。フッ素ポリマー製容器内の母液量が1リットルにまで減少したら、今度は2リットルのエタノールを添加し、更に同様に限外ろ過処理を続けた。この後も同様にエタノールによる限外ろ過作業を繰り返し、ろ液の伝導度が1μS/cm以下となったことを確認し、母液量が1リットルになった時点で限外ろ過処理を終了させ、銀コロイドのエタノール溶液を得た。
【0111】
続いて1リットルのガラス容器、限外ろ過モジュールAHP−0013(旭化成社製;分画分子量50000、使用膜本数100本)、チューブポンプ、及び、アスピレーターからなる限外ろ過装置を組んだ。このガラス容器に、先の銀コロイドのエタノール溶液を、あふれさせないように添加し、チューブポンプによる循環をはじめ、限外ろ過による濃縮を開始した。限外ろ過の進行により、ガラス容器内の母液量の減少にしたがって、上述の工程で得られた銀コロイドのエタノール溶液全てを、ガラス容器内に添加した。母液量が650ミリリットルになった時点でポンプを停止し、限外ろ過による濃縮を終了した。その結果、固形分濃度が30.7質量%の銀コロイドのエタノール溶液を得た。
【0112】
銀コロイドのエタノール溶液のTG−DTA測定を行ったところ、固形分中の銀含有率は97.6質量%であった。すなわち、この銀コロイドのエタノール溶液の組成は30.0質量%、樹脂成分が0.7質量%、エタノールが69.3質量%であることがわかった。
【0113】
実施例1にしたがって得られた銀コロイドのエタノール溶液を硝子板にスピンコート法を用いて塗布し、120℃で30分加熱することにより、膜厚が0.3μmの銀色の金属光沢を有する薄膜を得た。
この銀薄膜の比抵抗を測定したところ、2.0×10−5Ω・cmであり、良好な導電性を有することがわかった。測定方法は以下のとおりである。
【0114】
実施例2 銀コロイドのエタノール溶液の製造
ディスパービック190の添加量を31.91gとする以外は実施例1にしたがって、固形分濃度が31.3質量%の銀コロイドのエタノール溶液を得た。
銀コロイドのエタノール溶液のTG−DTA測定を行ったところ、固形分中の銀含有率は95.9質量%であった。すなわち、この銀コロイドのエタノール溶液の組成は30.0質量%、樹脂成分が1.3質量%、エタノールが68.7質量%であることがわかった。
【0115】
比較例1 銀コロイドのエタノール溶液の製造
ディスパービック193の添加を行わないこと以外は、実施例1にしたがって銀コロイドのエタノール溶液の合成を試みた。しかし反応により生成した銀が凝集し、沈殿となったため銀コロイドのエタノール溶液を得ることができなかった。
【0116】
比較例2 銀コロイドのエタノール溶液の製造
ディスパービック193の添加を行わないこと以外は、実施例2にしたがって銀コロイドのエタノール溶液の合成を試みた。しかし反応により生成した銀が凝集し、沈殿となったため銀コロイドのエタノール溶液を得ることができなかった。
【0117】
実施例2にしたがって得られた銀コロイドのエタノール溶液を硝子板にスピンコート法を用いて塗布し、120℃で30分加熱することにより、膜厚が0.3μmの銀色の金属光沢を有する薄膜を得た。
この銀薄膜の比抵抗を測定したところ、2.7×10−5Ω・cmであり、良好な導電性を有することがわかった。
【0118】
比較例3 銀コロイドのエタノール溶液の製造
ディスパービック190の添加量を37.63gとし、ディスパービック193を添加しないこと以外は実施例1にしたがって、固形分濃度が31.85質量%の銀コロイドのエタノール溶液を得た。
銀コロイドのエタノール溶液のTG−DTA測定を行ったところ、固形分中の銀含有率は94.2質量%であった。すなわち、この銀コロイドのエタノール溶液の組成は30.0質量%、樹脂成分が1.85質量%、エタノールが68.15質量%であることがわかった。
【0119】
比較例3にしたがって得られた銀コロイドのエタノール溶液を硝子板にスピンコート法を用いて塗布し、120℃で30分加熱することにより、膜厚が0.3μmの銀色の金属光沢を有する薄膜を得た。
この銀薄膜の比抵抗を制定したところ、1.2×10−4Ω・cmであり、実施例1及び2に比べて抵抗値が4〜6倍ほど高いことがわかった。
【0120】
実施例3 銀コロイドのエタノール溶液の製造
ディスパービック190の添加量を10.20gとする以外は実施例1にしたがって、固形分濃度が30.35質量%の銀コロイドのエタノール溶液を得た。
銀コロイドのエタノール溶液のTG−DTA測定を行ったところ、固形分中の銀含有率は98.8質量%であった。すなわち、この銀コロイドのエタノール溶液の組成は30.0質量%、樹脂成分が0.35質量%、エタノールが69.65質量%であることがわかった。
【0121】
実施例4 ビスマス/ニッケル(=91/9(質量比))複合コロイドのエタノール溶液の製造
5リットルのコルベンにEFKA−4550(有効成分50%の水溶液・EFKAアディティブズ社製、数平均分子量20000)13.44g、ディスパービック191(有効成分100%・ビックケミー社製、数平均分子量20000)6.72g、ディスパービック193(有効成分40%の水溶液・ビックケミー社製、数平均分子量3000)169.75g、2−ジメチルアミノエタノール166.78g及びイオン交換水960.0gを加えて撹拌した。
別個の容器にナトリウム・ホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物120.03gとイオン交換水600gを加えて湯浴中で50℃に加熱しながら撹拌し、ナトリウム・ホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物を溶解させた。その後、加熱を取り止めた。ナトリウム・ホルムアルデヒドルホキシレート二水和物水溶液が室温になった後に、先のコルベンに加えた。
更に別個の容器に、塩化ビスマス43.05gと塩化ニッケル六水和物11.43g及び2mol/l(リットル)の塩酸水溶液682.50gを採り、50℃の湯浴中で加熱しながら撹拌し、塩化ビスマス及び塩化ニッケル六水和物を溶解させた。その後、加熱を取り止めた。
コルベンの混合物水溶液を湯浴中で40℃に加熱しながら撹拌し、これに塩化ビスマス及び塩化ニッケル6水和物の溶液を瞬時に加えたところ、液は瞬時に白灰色に変化した。反応時間の経過とともに液は黒味を帯びだして、30分後には黒色となった。塩化ビスマス及び塩化ニッケル6水和物の溶液を加えた時点から2時間ほど40℃に保持し、撹拌を続けた。2時間を経過したら、コルベンを水冷し、黒色のビスマス/ニッケル複合コロイドを含んだ水溶液を得た。
【0122】
次に、限外ろ過モジュールであるAHP−1010(旭化成社製;分画分子量50000、使用膜本数400本)、マグネットポンプ、下部にチューブ接続口のある5リットルのフッ素系ポリマー製容器をシリコンチューブで接続して限外ろ過装置とした。上述の反応で得られた、ビスマス/ニッケル複合コロイドを含んだ水溶液をフッ素ポリマー製容器に入れて、マグネットポンプにより循環を行った。限外ろ過モジュールから、雑イオンや低分子保護剤であるディスパービック193等を含んだ、無色透明の水溶液から、ろ液が系外に排出されることを確認できた。限外ろ過により、フッ素ポリマー製容器内の母液量が0.5リットルにまで減少したら、1.5リットルのイオン交換水を加えて、更にマグネットポンプによる循環を続け、限外ろ過を続行した。フッ素ポリマー製容器内の母液量が0.5リットルにまで減少したら、今度は1.5リットルのエタノールを添加し、更に同様に限外ろ過処理を続けた。この後も同様にエタノールによる限外ろ過作業を繰り返し、ろ液の伝導度が3μS/cm以下となったことを確認し、母液量が0.5リットルになった時点で限外ろ過処理を終了させ、ビスマス/ニッケル複合コロイドのエタノール溶液を得た。
【0123】
続いて0.2リットルのガラス容器、限外ろ過モジュールAHP−0013(旭化成社製;分画分子量50000、使用膜本数100本)、チューブポンプ、及び、アスピレーターからなる限外ろ過装置を組んだ。このガラス容器に、先のビスマス/ニッケル複合コロイドのエタノール溶液を、あふれさせないように添加し、チューブポンプによる循環をはじめ、限外ろ過による濃縮を開始した。限外ろ過の進行により、ガラス容器内の母液量の減少にしたがって、上述の行程で得られたビスマス/ニッケル複合コロイドのエタノール溶液全てを、ガラス容器内に添加した。母液量が150ミリリットルになった時点でポンプを停止し、限外ろ過による濃縮を終了した。その結果、固形分濃度が23.25質量%のビスマス/ニッケル複合コロイドのエタノール溶液を得た。
【0124】
透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、ビスマス/ニッケル複合ナノ粒子の粒子経は、約15nmであった。
ビスマス/ニッケル複合コロイドのエタノール溶液のTG−DTA測定を行ったところ、固形分中のビスマス/ニッケル含有率は86.0質量%であった。したがってビスマス/ニッケル複合コロイドのエタノール溶液の組成はビスマス/ニッケル複合ナノ粒子が20.0質量%、樹脂成分が3.25質量%、エタノールが78.75質量%であることがわかった。
【0125】
実施例5 ビスマス/ニッケル(=91/9(質量比))複合コロイドのエタノール溶液の製造
ナトリウム・ホルムアルデヒドスルホキシレート二ニ水和物の代わりにデクロリン(BASF社製の亜鉛ホルムアルデヒドスルホキレート)110.7gを使用する以外は実施例4にしたがって、固形分濃度が23.3質量%のビスマス/ニッケル複合コロイドのエタノール溶液を得た。
【0126】
透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、ビスマス/ニッケル複合ナノ粒子の粒子径は、約15nmであった。
ビスマス/ニッケル複合コロイドのエタノール溶液のTG−DTA測定を行ったところ、固形分中のビスマス/ニッケル含有率は85.8質量%であった。したがってビスマス/ニッケル複合コロイドのエタノール溶液の組成はビスマス/ニッケル複合ナノ粒子が20.0質量%、樹脂成分が3.3質量%、エタノールが78.7質量%であることがわかった。
【0127】
比較例4 ビスマス/ニッケル(=91/9(質量比))複合コロイドのエタノール溶液の製造
ディスパービック193の添加を行わないこと以外は、実施例4にしたがってビスマス/ニッケル複合コロイドのエタノール溶液の合成を試みた。しかし反応中に生成したビスマス/ニッケルが凝集し、黒色の沈殿となったため、ビスマス/ニッケル複合コロイドのエタノール溶液を得ることができなかった。
【0128】
上記の結果から、本発明の製造方法を用いれば固形分中の銀含有率が100%に近い銀コロイド溶液の製造が可能になることが明らかとなった。また、ニッケル含有率が比較的高い(ビスマス/ニッケル=91/9)ビスマス/ニッケル複合コロイド溶液を製造が可能になることも明らかとなった。
【0129】
実施例6 ビスマスコロイドのエタノール溶液の製造
5リットルのコルベンにEFKA−4550(有効成分50%の水溶液・EFKAアディティブズ社製、数平均分子量20000)13.44g、ディスパービック191(有効成分100%・ビックケミー社製、数平均分子量20000)6.72g、ディスパービック193(有効成分40%の水溶液・ビックケミー社製、数平均分子量3000)83.97g及びイオン交換水1200.0gを加えて撹拌した。
別個の容器にナトリウム・ホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物115.59gとイオン交換水600gを加えて湯浴中で50℃に加熱しながら撹拌し、ナトリウム・ホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物を溶解させた。その後、加熱を取り止めた。ナトリウム・ホルムアルデヒドルホキシレート二水和物水溶液が室温になった後に、先のコルベンに加えた。
更に別個の容器に、塩化ビスマス47.30g及び2mol/L(リットル)の塩酸水溶液750.0gを採り、50℃の湯浴中で加熱しながら撹拌し、塩化ビスマスを溶解させた。その後、加熱を取り止めた。
コルベンの混合物水溶液を室温下で撹拌し、これに塩化ビスマスの溶液を瞬時に加えたところ、液は瞬時に黒色に変化した。塩化ビスマスの溶液を加えた時点から2時間ほど撹拌を続けた。2時間を経過したら、コルベンを水冷し、黒色のビスマスコロイドを含んだ水溶液を得た。
【0130】
次に、限外ろ過モジュールであるAHP−1010(旭化成社製;分画分子量50000、使用膜本数400本)、マグネットポンプ、下部にチューブ接続口のある5リットルのフッ素系ポリマー製容器をシリコンチューブで接続して限外ろ過装置とした。上述の反応で得られた、ビスマスコロイドを含んだ水溶液をフッ素ポリマー製容器に入れて、マグネットポンプにより循環を行った。限外ろ過モジュールから、雑イオンや低分子保護剤であるディスパービック193等を含んだ、無色透明の水溶液から、ろ液が系外に排出されることを確認できた。限外ろ過により、フッ素ポリマー製容器内の母液量が0.5リットルにまで減少したら、1.5リットルのイオン交換水を加えて、更にマグネットポンプによる循環を続け、限外ろ過を続行した。フッ素ポリマー製容器内の母液量が0.5リットルにまで減少したら、今度は1.5リットルのエタノールを添加し、更に同様に限外ろ過処理を続けた。この後も同様にエタノールによる限外ろ過作業を繰り返し、ろ液の伝導度が3μS/cm以下となったことを確認し、母液量が0.5リットルになった時点で限外ろ過処理を終了させ、ビスマスコロイドのエタノール溶液を得た。
【0131】
続いて0.2リットルのガラス容器、限外ろ過モジュールAHP−0013(旭化成社製;分画分子量50000、使用膜本数100本)、チューブポンプ、及び、アスピレーターからなる限外ろ過装置を組んだ。このガラス容器に、先のビスマスコロイドのエタノール溶液を、あふれさせないように添加し、チューブポンプによる循環をはじめ、限外ろ過による濃縮を開始した。限外ろ過の進行により、ガラス容器内の母液量の減少にしたがって、上述の行程で得られたビスマスコロイドのエタノール溶液全てを、ガラス容器内に添加した。母液量が150ミリリットルになった時点でポンプを停止し、限外ろ過による濃縮を終了した。その結果、固形分濃度が23.25質量%のビスマスコロイドのエタノール溶液を得た。
【0132】
透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、ビスマスのコロイド粒子の粒子経は、約10nmの粒子のみからなる、きわめて粒度分布のせまいナノ粒子であることを確認できた。
ビスマスコロイドのエタノール溶液のTG−DTA測定を行ったところ、固形分中のビスマス含有率は85.5質量%であった。したがってビスマスコロイドのエタノール溶液の組成はビスマスナノ粒子が20.0質量%、樹脂成分が3.39質量%、エタノールが76.61質量%であることがわかった。
【0133】
比較例5 ビスマスコロイドのエタノール溶液の製造
ディスパービック193の添加を行わないこと以外は実施例7にしたがって、ビスマスコロイドのエタノール溶液を合成した。
透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、ビスマスのコロイド粒子の平均粒子経は、約15nm程度であったが、5〜30nmの範囲のナノ粒子を観察することができ、粒度分布が広いことを確認できた。
ビスマスコロイドのエタノール溶液のTG−DTA測定を行ったところ、固形分中のビスマス含有率は84.8質量%であった。したがって、ビスマスコロイドのエタノール溶液の組成はビスマスナノ粒子が20.0質量%、樹脂成分が3.53質量%、エタノールが76.47質量%であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明によって得られる金属コロイド溶液は、電極や配線等の導体回路の形成や電子材料、化色材、工芸装飾材料、抗菌材料、触媒等に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コロイド粒子、数平均分子量7000〜500000の高分子量顔料分散剤及び数平均分子量180〜5000の低分子量顔料分散剤を含有する溶液を製造する工程(1)と、前記工程(1)で製造された溶液中の低分子量顔料分散剤の全部又は一部を除去する工程(2)とを含むことを特徴とする金属コロイド溶液の製造方法。
【請求項2】
工程(1)は、高分子量顔料分散剤及び低分子量顔料分散剤存在下で、金属化合物を還元することにより溶液を製造するものである請求項1記載の金属コロイド溶液の製造方法。
【請求項3】
工程(1)において、高分子量顔料分散剤の使用量は、金属化合物中の金属質量100質量部に対して、1〜150質量部(固形分)である請求項2記載の金属コロイド溶液の製造方法。
【請求項4】
工程(1)において、高分子量顔料分散剤の使用量/低分子量顔料分散剤の使用量(固形分質量比)は、1/20〜10/1である請求項2又は3記載の金属コロイド溶液の製造方法。
【請求項5】
工程(2)は、溶液を限外濾過するものである請求項1、2、3又は4記載の金属コロイド溶液の製造方法。
【請求項6】
工程(2)は、工程(1)で製造された溶液中の高分子量顔料分散剤の一部も除去するものである請求項1、2、3、4又は5記載の金属コロイド溶液の製造方法。
【請求項7】
金属コロイド粒子は、2種の金属M及びMからなる複合金属コロイド粒子である請求項1、2、3、4、5又は6記載の金属コロイド溶液の製造方法。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の金属コロイド溶液の製造方法を用いることにより得られることを特徴とする金属コロイド溶液。

【公開番号】特開2007−301461(P2007−301461A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131777(P2006−131777)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】