説明

金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた蛍光体およびその製造方法

【課題】PDP,ランプなどの表示素子に適用される場合、従来の蛍光体に比べて熱的安定性および輝度維持率(寿命特性)を向上できる蛍光体および蛍光体のコーティング時に初期輝度が低下せずにより簡素化した工程を通して原価を節減できる製造方法を提供する。
【解決手段】
金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた蛍光体およびその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた蛍光体およびその製造方法に関し、より詳細には、蛍光体表面に金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされることで、ランプなどに適用時に輝度を長時間維持できる蛍光体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物質が外部エネルギーを吸収して可視光を放出する現象を発光(Luminescene)といい、このような現象を起こすあらゆる物質を蛍光体(Phosphor)という。このような蛍光体は、蛍光ランプ(Florescent Lamp)、陰極線管(Cathode Ray Tube,CRT)、発光ダイオード(Light Emitting Diode,LED)、プラズマディスプレー板(Plasma Display Panel,PDP)、真空蛍光ディスプレー(Vacuum Fluorescent Display,VFD)、電解放出ディスプレー(Field Emission Display,FED)およびELディスプレー(Electro Luminescence Display,ELD)などの各種のディスプレーに必須的な要素である。同時に、蛍光体の効率は蛍光体を適用した製品の効率と直接的に連関される主要変数である。
【0003】
蛍光体の様々な応用分野において蛍光体の効率に関する研究が多方面で行われている。特に蛍光体の寿命と関連して、各種の分野の応用時に長期間輝度を維持できる蛍光体およびその製造方法に対する要求が続いている。
【0004】
たとえば、一般的に赤色、緑色、青色蛍光体を一定比率で混合して使用する三波長ランプ用蛍光体および様々な照明器具に使用される蛍光ランプ用蛍光体の場合、蛍光体の輝度を維持するために多様なアプローチが試みられている。特に、光効率および色純度に優れてランプ、PDPなどの蛍光膜製造用蛍光体として用いられているBaMgAl1017:Eu,Mn緑色蛍光体と関連しては、輝度を維持するために望ましい物質を蛍光体にコーティングする方法を通した接近が広く試みられている。BaMgAl1017:Eu,Mn蛍光体は、内部構造的な不安定性とランプに適用時に短波長UV(185nm)の浸透による蛍光体表面欠陥の発生および水銀イオンの浸透によるHg−Oなどの水銀化合物の生成によって、製造後の経過時間に応じて急激な輝度低下を示している。このような問題点を解決するための従来技術としては、主にランプに適用時に水銀化合物の生成を抑制する金属酸化物を蛍光体にコーティングする方法が挙げられる。しかし、従来の金属酸化物をコーティングする方法は、均一なコーティング粒子を得ることが難しく、熱処理工程を含んでいて蛍光体の初期輝度を低下させる問題点を持っている。さらに、コーティング物質が発光阻害物質として作用しうる問題点もある。
【特許文献1】特開2003−82345号公報
【特許文献2】特開2003−82344号公報
【特許文献3】特開2003−82343号公報
【特許文献4】韓国特許出願公開第2002−25483号明細書
【特許文献5】米国特許第676171号明細書
【特許文献6】特開2000−303065号公報
【特許文献7】特開2002−80843号公報
【特許文献8】特開2003−147350号公報
【特許文献9】韓国特許出願公開第2006−88244号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、本発明の一つの目的は、ランプなどに適用時に熱的安定性を有して長期間輝度を維持できる蛍光体を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、前記蛍光体を製造する方法として、初期輝度が低下せず、工程簡素化により工程処理費用を節減できる蛍光体のコーティング方法を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、前記蛍光体を採用した表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一つの態様は、金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子が表面にコーティングされた蛍光体に関する。
【0009】
本発明の他の態様は、(a)溶媒に金属前駆体および尿素(NHCONH)を溶解させて混合溶液を調製する段階;(b)前記混合溶液に蛍光物質を分散させる段階;(c)前記混合溶液のpHを金属のイオン状態を維持する範囲に調節する段階;および(d)前記混合溶液を加熱する段階を含む金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子をコーティングした蛍光体の製造方法に関する。
【0010】
本発明の別の態様は、前記蛍光体を採用した表示素子に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子が表面にコーティングされた蛍光体は、従来の蛍光体の構造的な問題である水分、ガス成分の吸着を阻害して蛍光体の構造的な安定性を増加させて、ランプなどに適用時に経過時間に応じた輝度の低下を減少させることで長寿命の蛍光体を提供することができる。また、本発明による蛍光体は、蛍光物質に対するコーティング粒子の付着特性が良好であり、優れた分散性を示してランプに適用時に物理的特性を向上させる。本発明の蛍光体の製造方法において、蛍光物質の表面に金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子をコーティングする方法は、蛍光体のコーティング時に初期輝度が低下せず、工程が簡素化されて原価を節減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明についてより詳細に説明する。
【0013】
本発明の一実施形態による態様は、金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子が表面にコーティングされた蛍光体に関する。
【0014】
本発明に係る蛍光体は、表面にヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされることで、従来の蛍光体に比べて熱的、構造的および物理的安定性を有することになる。蛍光物質表面にコーティングされるナノスケールの均一な金属ヒドロキシ炭酸塩粒子は、蛍光体の輝度低下の主要原因である水分、ガス成分の吸着を阻害し、紫外線、水銀などに対する立体的安定性を確保することで熱的、構造的および物理的安定性を増加させて長期間輝度を維持できるようにする。
【0015】
本発明に係る蛍光体は、溶媒に金属前駆体および尿素(NHCONH)を溶解させて混合溶液を調製し、前記混合溶液に蛍光物質を分散させた後、前記混合溶液のpHを調節し、前記混合溶液を加熱して製造することができる。
【0016】
このプロセスは、尿素の加水分解を通して蛍光物質表面に直接金属ヒドロキシ炭酸塩の核を生成、成長させるメカニズムであって、添加する金属前駆体の量を調節してコーティング粒子の大きさを調節できる。したがって、コーティング粒子の大きさ調節が容易であり、均一なコーティング粒子を得ることができる。
【0017】
すなわち、本発明に係る蛍光体は、蛍光物質の表面に金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた蛍光体である。
【0018】
本発明の金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた蛍光体に使用される蛍光物質としては、特に制限なく、蛍光材料であればすべて適用可能である。たとえば、通常的に蛍光ランプ用または真空紫外線励起用蛍光体を用いることができる。具体的に、前記金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子をコーティングすることができる蛍光成分の例としては、(Ba,Sr,Ca)(POCl:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaSiO,Sr(POCl:Eu2+、BaMgAl1627:Eu2+、ZnS:Ag,BaMgAl1017:Eu,Mn(Eu)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO12:Eu、(Ba,Sr)SiO:Eu、CaMg(SiOCl:Eu,Mn、BaMgAl1017:Eu,Mn、BaMgAl1627:Eu,Mn、SrGa:Eu、BaSiO:Eu2+;BaMgSi:Eu2+、BaZnSi:Eu2+;BaAl:Eu2+、SrAl:Eu2+、(Ca,Sr)S:Eu2+;CaLa:Ce3+、(Ca,Sr)S:Eu2+;(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu2+,Mn2+、およびMgO・CaF・GeO:Mn4+などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明に係る蛍光物質の形状は、特に制限されることはなく、球形、楕円形、板状形、粒状、膜状、フィラー状であればよく、当該蛍光物質が粒状の場合の粒子径は、0.1〜20μmが好ましい。
【0020】
本発明に係る金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の粒子径の測定方法は、特に制限されるものではなく公知の方法を使用することができるが、本発明では、SEMから代表サンプルについて数〜数10視野中に観察される粒子の粒径を測定する方法が挙げられる。なお、この測定方法では観察するサンプルや視野によって平均粒子径に有意差が生じる。
【0021】
本発明に係る蛍光体の表面にコーティングされる金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子は、一種または二種以上の化合物を含み、前記金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子は、アルカリ土類金属および希土類金属のうちの一種以上の金属を含むことが好ましい。前記金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子に含まれる金属の例としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
前記蛍光体表面にコーティングされる金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の含有量は、本発明に係る蛍光体の全体の質量に対して約0.05〜15質量%の範囲に調整することが好ましく、0.1〜10質量%の範囲であることがより好ましく、0.5〜5質量%の範囲であることが特に好ましい。蛍光体表面にコーティングされる金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の含量が蛍光体に対して0.05質量%未満の場合、蛍光体表面上の含量が少なすぎて蛍光体の輝度維持効果を十分に発揮できなくなり、15質量%超過の場合、コーティング粒子の均一なコーティングが阻害されて蛍光体製造において初期輝度の減少をもたらす場合がある。
【0023】
図1は、本発明の実施形態による表面に金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた蛍光体の模式図である。本発明の前記蛍光体表面にコーティングされる金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の形態は、特に制限されないが、図1に示したように、一般的に球形または半円形などの任意の形状のナノ粒子は、蛍光体表面上に断続的に分布している。またその他の形態として、コーティング後の熱処理条件に応じてコーティング膜状の形態の合成も可能である。
【0024】
本発明の前記蛍光体表面にコーティングされる金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の粒子径は、約10nm〜1μmが好ましく、約50〜70nmがより好ましい。
【0025】
本発明に係る金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の粒子径の測定方法は、特に制限されるものではなく公知の方法を使用することができるが、本発明では、SEMから代表サンプルについて数〜数10視野中に観察される粒子の粒径を測定する方法が挙げられる。なお、この測定方法では観察するサンプルや視野によって平均粒子径に有意差が生じる。
【0026】
より簡易的にはX線回折プロファイルからある特定の反射ピークの半値幅から求められる結晶子径を当該ナノ粒子の平均粒子径として用いることも出来る。
【0027】
本発明の前記蛍光体の用途は、特に制限なく、蛍光体の様々な応用分野である蛍光ランプ(Florescent Lamp)、陰極線管(Cathode Ray Tube,CRT)、発光ダイオード(Light Emitting Diode,LED)、プラズマディスプレー板(Plasma Display Panel,PDP)、真空蛍光ディスプレー(Vacuum Fluorescent Display,VFD)、電解放出ディスプレー(Field Emission Display,FED)およびELディスプレー(Electro Luminescence Display,ELD)などの各種のディスプレーに用いられることができる。特に紫外線励起用または真空紫外線励起用蛍光体として用いられることができる。
【0028】
本発明に係る蛍光体は、金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子が表面にコーティングされており、当該蛍光体の製造方法は下記に詳細に説明する。
【0029】
本発明に係る蛍光体は、溶媒に金属前駆体および尿素(NHCONH)を溶解させて混合溶液を調製する段階と(a)、前記混合溶液に蛍光物質を分散させる段階と(b)、前記混合溶液のpHを金属のイオン状態を維持する範囲に調節する段階と(c)、前記混合溶液を加熱する段階と(d)を含むことで、蛍光体の表面に金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子をコーティングさせて製造することができる。
【0030】
このプロセスは、尿素の加水分解を通して蛍光物質表面に直接金属ヒドロキシ炭酸塩の核を生成、成長させるメカニズムであって、添加する金属前駆体の量を調節してコーティング粒子の大きさを調節できるため、コーティング粒子の大きさ調節が容易であり、均一なコーティング粒子を得ることができる。
【0031】
図2は、25℃における水酸化イットリウムの状態を示したグラフである。以下、図2を参照して本発明のメカニズムについて具体的に説明する。例えば、金属前駆体としてY(NO)を用いる場合、イットリウムの状態は、Y3+イオンの濃度およびpHに応じて二つの状態で存在することができる。Y3+イオン濃度が10−3M以下である場合、Y3+イオンは、pH7.6以下の区間でY(OH)の沈殿物を形成せずにY3+イオン状態で存在する。
【0032】
このように、本発明は、金属のイオン状態を維持する濃度およびpHを調節することで、金属がイオン状態を維持するようにする。次いで、温度を上げてイットリウムを尿素(NHCONH)と反応させると、尿素が分解されながらY3+イオンと反応してY(OH)COになる。したがって、金属前駆体の濃度またはpHの調節だけでコーティング粒子の大きさや形状の調節が容易である。
【0033】
従来の蛍光物資のコーティング方法における金属酸化物をコーティングする手法としては、蛍光物質粒子とコーティング粒子とをバインダーを介して結合した後、焼成して最終的に金属酸化物がコーティングされた形態の蛍光体を得ていた。このような方法は、まず、コーティングしようとする粒子を事前に準備しなければならないため、ナノスケールの均一なコーティング粒子が準備されないと、ナノスケールの均一なコーティング粒子を得ることが難しい。また、金属酸化物と蛍光物質との結合にはバインダーを使用するため、バインダーの焼成工程が必須である。しかし、このような熱処理工程は、蛍光物質の初期輝度低下の原因になる問題点を持っている。上記方法以外にもゾル−ゲル(Sol−gel)方法により金属酸化物粒子を蛍光物質の表面に形成し、熱処理を通して結晶性の金属酸化物粒子を得る方法も研究されているが、この場合にも熱処理工程を避けることができなくて初期輝度が低下する問題点がある。その他に、蛍光物質表面に金属塩をコーティングすることで、ランプに適用時、立体的な効果により輝度が維持することが報告されているが、金属塩コーティングの場合、蛍光体の表面電荷特性の変化により輝度維持効果は期待することができなくて長寿命の蛍光体を得ることが難しい。また、金属塩の場合、UV光を遮断して蛍光体の輝度低下の原因になりうる。
【0034】
一方、本発明の製造方法は、別途準備されたコーティング粒子を蛍光物質と結合することではなく、尿素の加水分解反応過程を通して蛍光物質表面に直接金属ヒドロキシ炭酸塩の核を生成、成長させるメカニズムによる反応であって、従来の蛍光体コーティング方法に比べて工程が簡単であり、均一なコーティング粒子を得ることができる。また、従来の金属酸化物を直接付着する場合よりずっと付着特性に優れ、焼成工程がなくてコーティング時に初期輝度が低下する問題点がない。さらに、添加する金属前駆体の量またはpHを調節してコーティング粒子の大きさまたは形状を調節できるため、コーティング粒子の調節が容易である。
本発明に係る蛍光体の製造方法の段階(a)に使用される尿素(NHCONH2は、金属前駆体に対して1〜200倍(モル比)溶媒に添加することが好ましく、
前記本発明の製造方法で使用可能な溶媒としては、特に制限されないが、水または有機溶媒を用いることができる。取扱の便宜上、水を用いることが好ましいが、たとえば、メタノール、エタノールなどのアルコールまたはアセトンなどの有機溶媒を用いることもできる。
【0035】
前記本発明の製造方法で使用可能な金属前駆体としては、アルカリ土類金属および希土類金属を有する前駆体のうちの一種以上を用いることが好ましい。前記金属前駆体の例としては、金属の硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩および硫酸塩から選択される少なくとも一種が挙げられる。より具体的には、Y(NO、Y(Cl)、Y(CHCOO)、Y(SO、La(NO、La(Cl)、La(CHCOO)、La(SO、Eu(NO、Eu(Cl)、Eu(CHCOO)、Eu(SO、Mg(NO、Mg(Cl)、Mg(CHCOO)およびMg(SO)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明の製造方法で使用可能な蛍光物質としては、特に制限なく、蛍光物質であればすべて適用可能である。たとえば、通常的に蛍光ランプ用または真空紫外線励起用蛍光体を用いることができる。具体的に、前記金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子をコーティングすることができる蛍光物質の例としては、(Ba,Sr,Ca)(POCl:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaSiO,Sr(POCl:Eu2+、BaMgAl1627:Eu2+、ZnS:Ag,BaMgAl1017:Eu,Mn(Eu)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO12:Eu、(Ba,Sr)SiO:Eu、CaMg(SiOCl:Eu,Mn、BaMgAl1017:Eu,Mn、BaMgAl1627:Eu,Mn、SrGa:Eu、BaSiO:Eu2+;BaMgSi:Eu2+、BaZnSi:Eu2+;BaAl:Eu2+、SrAl:Eu2+、(Ca,Sr)S:Eu2+;CaLa:Ce3+、(Ca,Sr)S:Eu2+;(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu2+,Mn2+、およびMgO・CaF・GeO:Mn4+などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本発明の製造方法における混合溶液のpHは、金属前駆体の濃度に応じて金属がイオン状態で存在できる範囲内で決定される。一般的に三価の金属イオンを用いる場合には、pHは2〜9が好ましい。
【0038】
本発明の製造方法における混合溶液における金属前駆体の濃度は、0.001〜10Mが好ましく、0.01〜5Mが好ましい。
【0039】
本発明の製造方法において、蛍光物質表面に金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子が生成される際に、pHを調節した混合溶液の加熱は、好ましくは80℃以上、より好ましくは85〜95℃、さらに好ましくは90〜92℃で行われる。また、加熱時間は、40〜60分が好ましい。
【0040】
このとき、前記蛍光体表面にコーティングされる金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の含有量は、蛍光物質に対して約0.05〜15質量%の範囲に調整することが好ましい。蛍光体表面にコーティングされる金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の含量が蛍光体に対して0.05重量%未満の場合、蛍光体表面上の含量が少なすぎて蛍光体の輝度維持効果を十分に発揮できなくなり、15重量%超過の場合、コーティング粒子の均一なコーティングが阻害されて蛍光体の製造において初期輝度の減少をもたらす場合がある。
【0041】
また、本発明に係る蛍光体の製造方法において、上記段階(d)の後、さらに前記混合溶液を濾過して蒸留水などで洗浄を行い、当該洗浄した後、本発明に係る蛍光体を30〜200℃で, 好ましくは50〜100℃で、3〜24時間, 好ましくは5〜15時間乾燥することが好ましい。 高温の場合、乾燥時に粒子の凝集が生じる場合があり、あまり低温の場合、乾燥時間が長く、十分な水分の蒸発が起こらない場合がある。
【0042】
本発明の別の態様は、前記蛍光体を採用した表示素子に関する。前記表示素子としては、蛍光ランプ(Florescent Lamp)、陰極線管(Cathode Ray Tube,CRT)、発光ダイオード(Light Emitting Diode,LED)、プラズマディスプレー板(Plasma Display Panel,PDP)、真空蛍光ディスプレー(Vacuum Fluorescent Display,VFD)、電解放出ディスプレー(Field Emission Display,FED)およびELディスプレー(Electro Luminescence Display,ELD)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
具体的な例として、本発明の蛍光体は、冷陰極蛍光ランプ(Cold Cathode Fluorescence Lamp)に採用されることができる。冷陰極蛍光ランプ(CCFL:Cold Cathode Fluorescence Lamp)は、ガラス管の中に蛍光体が塗布されており、その両端には電極が密封されており、ガラス管の内部には水銀、アルゴンおよびネオンなどの一定量の混合ガスが充填されている。両端電極に加わる高電圧電解により電子放出が起こる。電子放出が始まると、水銀が励起されて紫外線が発散され、この紫外線がガラス管壁の蛍光体と衝突しながら可視光線を発散させる。このような可視光線は、液晶表示装置のバックライトユニット、ファクス、スキャナー、複写機、フラットパネルディスプレー、装飾用または広告用光源として活用される。
【0044】
前記本発明の蛍光物質表面にコーティングされる金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子は、従来の蛍光体表面にコーティングされる金属酸化物より優れた付着特性を示して、冷陰極蛍光ランプの製造工程の中、蛍光体を塗布するためのスラリー製造工程で蛍光体からのコーティング粒子の離脱を防ぐ。それによって、スラリーの粘度を適正水準に維持させて蛍光体の物理的特性に対する安定性を確保することができる。前記金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた蛍光体は、流動性に優れて長尺型ランプ製造に有利に適用される。さらに、本発明の蛍光体表面にコーティングされる金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子は、ランプ製造工程中の焼成工程を通して一部または全部が結晶性の金属酸化物の形態に変換されて、表面粒子のコーティングによる紫外線と水銀などに対する立体的な安定性および蛍光体表面電荷の変化を通した電気的な安定性を確保することができる。
【0045】
本発明の蛍光体は、前記冷陰極蛍光ランプ以外に外部電極蛍光ランプ(EEFL:External Electrode Fluorescent Lamp)、平面光源ランプ(FFL:Flat Florescent Lamp)などにも用いられることができる。
以下、実施例を挙げてより詳しく本発明を説明するが、これら実施例は説明を目的としたものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0046】
実施例1
蒸留水100mLにイットリウム硝酸塩0.22g(0.5Wt%)、尿素(Urea)60gを溶解し、撹拌しながらBaMgAl1017:Eu,Mn 10gを混合した。混合した溶液を5分間十分撹拌した後、硝酸とアミン系塩基(モノ, ジ,トリエチルアミン)を用いてpHを5〜6に調節した。上記混合溶液を90℃で加熱して40分間撹拌した後、濾過して蒸留水洗浄を3回行った。洗浄が完了した蛍光体を60℃のオーブンで3時間乾燥した。 蛍光体の表面のナノ粒子の粒子径は約50nmであった。
【0047】
実施例2
蒸留水100mLにイットリウム硝酸塩1.52g(3.5Wt%)、尿素60gを溶解し、撹拌しながらBaMgAl1017:Eu,Mn 10gを混合した。混合した溶液から実施例1と同様の方法で蛍光体を製造した。 蛍光体の表面のナノ粒子の粒子径は約50nmであった。
【0048】
実施例3
蒸留水100mLにイットリウム硝酸塩3.04g(7Wt%)、尿素60gを溶解し、撹拌しながらBaMgAl1017:Eu,Mn 10gを混合した。混合した溶液から実施例1と同様の方法で蛍光体を製造した。 蛍光体の表面のナノ粒子の粒子径は約50nmであった。
【0049】
実施例4
蒸留水100mLにイットリウム硝酸塩6.08g(14Wt%)、尿素60gを溶解し、撹拌しながらBaMgAl1017:Eu,Mn 10gを混合した。混合した溶液から実施例1と同様の方法で蛍光体を製造した。 蛍光体の表面のナノ粒子の粒子径は約50nmであった。
比較例1
BaMgAl1017:Eu,Mnをコーティングしないことを除いて、実施例1と同様の方法で蛍光体を製造した。
【0050】
比較例2
蒸留水100mLにイットリウム硝酸塩3.04g(7Wt%)を溶解し、撹拌しながらBaMgAl1017:Eu,Mn 10gを混合した。混合した溶液を5分間十分撹拌した後、アンモニア水を加えてpHを10〜11に調節した。上記混合溶液を40分間撹拌した後、濾過して蒸留水洗浄を3回行った。洗浄が完了した蛍光体を60℃のオーブンで3時間乾燥した。乾燥された蛍光体を600℃で1時間焼成して酸化イットリウムがコーティングされた蛍光体を製造した。
実験例1−分散安定性
上記実施例1〜4および比較例1,2により製造された蛍光体のゼータ電位(Zeta potential,mV)をZeta Potential Meterを用いて測定して(pH−8)その結果を下記表1に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
実験例2−コーティング後初期輝度の変化
上記実施例1〜4および比較例2の蛍光体をコーティングした後、初期輝度の変化を測定してその結果を下記表2に示した。
【0053】
【表2】

【0054】
実験例3−劣化特性
上記実施例1〜4および比較例1,2により製造された蛍光体の劣化特性を比較するために、610℃で10分間熱処理した後、輝度の変化を測定してその結果を下記表3に示した。
【0055】
【表3】

【0056】
実験例4−寿命維持率特性
上記実施例1および比較例1,2により製造された蛍光体の製造後の経過時間に応じた輝度を測定して寿命率を評価した。その結果を図3に示した。
【0057】
上記実施例および比較例を参照すると、本発明の蛍光体は、コーティングされていない蛍光体および金属酸化物がコーティングされた蛍光体に比べて、物理的および構造的に安定性を確保することを確認することができる。ゼータ電位は、せん断面の電位であって、微粒子やコロイドの場合、実験的に得られたゼータ電位の絶対値が増加すると、粒子間の反発力が強くなって粒子の安定性が高くなる反面、ゼータ電位が0に近づくと、粒子は凝集しやすくなる。したがって、上記表1を参照すると、実施例による蛍光体が比較例による蛍光体に比べて安定性が高いことを確認することができる。上記表2を参照すると、コーティング後の初期輝度の変化において、金属酸化物がコーティングされた蛍光体より本願発明の実施例1〜4の金属ヒドロキシ炭酸塩粒子をコーティングした蛍光体が初期輝度の低下が少ないことを確認することができる。劣化特性においても、金属ヒドロキシ炭酸塩粒子をコーティングした蛍光体が、比較例2の金属酸化物粒子をコーティングした蛍光体より優れた熱的安定性および輝度を示した。さらに、ランプに適用時、一部の金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子が金属酸化物に転換されることで、直接金属酸化物を蛍光体表面にコーティングする方法より簡単で効率的な工程を通して均一にコーティングすることができる。また、図3は、上記実施例1および比較例1,2により製造された蛍光体の製造後の経過時間に応じた輝度の変化を示したグラブであって、本願発明による金属ヒドロキシ炭酸塩粒子がコーティングされた蛍光体の場合、寿命維持率が増大することを確認することができる。
【0058】
図4は、実施例3で得られたイットリウムヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真であり、図5は、実施例3で得られたイットリウムヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた緑色BAM蛍光体の走査電子顕微鏡写真であり、図6は、実施例3で得られたイットリウムヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた緑色BAM蛍光体の焼成後、酸化イットリウムがコーティングされた蛍光体の走査電子顕微鏡写真であり、図7は、比較例1および実施例1,2,4で得られたイットリウムヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた緑色BAM蛍光体の波長に応じた強度および色座標を示したグラフである。図4を参照すると、均一な金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子を得たことを確認することができ、図5を参照すると、蛍光体表面にナノスケールのイットリウムヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子が均一にコーティングされていることを確認することができ、図6はランプに適用時の蛍光体を想定したものであって、蛍光体の焼成後にもコーティング粒子が均一に分布されていることを確認することができる。図7を参照すると、イットリウムヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた後にも蛍光体の発光特性は変わらないことを確認することができる。
【0059】
以上、好適な実施例を参考として本発明を詳細に説明したが、これらの実施例は例示的なものに過ぎない。本発明に属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、各種の変更例または均等な他の実施例に想到し得ることは明らかである。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた蛍光体の模式図であり、
【図2】図2は、25℃での水酸化イットリウムの状態を示したグラフであり、
【図3】図3は、実施例および比較例に係る蛍光体において製造後の経過時間に応じた輝度を示したグラフであり、
【図4】図4は、イットリウムヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真であり、
【図5】図5は、イットリウムヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた緑色BAM蛍光体の走査電子顕微鏡写真であり、
【図6】図6は、イットリウムヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた緑色BAM蛍光体の焼成後、酸化イットリウムでコーティングした蛍光体の走査電子顕微鏡写真であり、
【図7】図7は、イットリウムヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子がコーティングされた緑色BAM蛍光体の波長に応じた強度および色座標を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子が表面にコーティングされた蛍光体。
【請求項2】
前記金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子は、アルカリ土類金属および希土類金属のうちの少なくとも一種の金属を含むことを特徴とする、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の含有量は、蛍光物質の質量に対して0.05〜15質量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の粒子径は、10nm〜1μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項5】
前記蛍光体が、紫外線励起用または真空紫外線励起用蛍光体であることを特徴とする、請求項1〜4にいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項6】
(a)溶媒に金属前駆体および尿素(NHCONH)を溶解させて混合溶液を調製する段階;
(b)前記混合溶液に蛍光物質を分散させる段階;
(c)前記混合溶液のpHを金属のイオン状態を維持する範囲に調節する段階;および
(d)前記混合溶液を加熱する段階を含む、金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子をコーティングした蛍光体の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒は、水または有機溶媒であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属前駆体は、金属の硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩および硫酸塩からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属前駆体は、Y(NO、Y(Cl)、Y(CHCOO)、Y(SO、La(NO、La(Cl)、La(CHCOO)、La(SO、Eu(NO、Eu(Cl)、Eu(CHCOO)、Eu(SO、Mg(NO、Mg(Cl)、Mg(CHCOO)およびMg(SO)からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合溶液のpH調節範囲は、2〜9であることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合溶液の加熱する条件は、80℃以上で40〜60分間行われることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記蛍光物質の表面にコーティングされる金属ヒドロキシ炭酸塩ナノ粒子の含有量は、蛍光物質に対して0.05〜15質量%であることを特徴とする、請求項6〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記蛍光体は、紫外線励起用または真空紫外線励起用蛍光体であることを特徴とする、請求項6〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13に係る蛍光体を採用する表示素子。
【請求項15】
前記表示素子は、冷陰極蛍光ランプ(Cold Cathode Fluorescence Lamp)であることを特徴とする、請求項14に記載の表示素子。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−46683(P2009−46683A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213175(P2008−213175)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】