説明

金属ベース基板の製造方法

【目的】 ブラック処理面やボイドの残留及び回路の屈曲を生じない金属ベース基板の製造方法を提供する。
【構成】 金属板5を用いて放熱性等を向上させるスルーホール両面プリント配線板の製造に際し、両面銅張積層板の一方の面にパターン形成した後ブラック処理を施し、このパターン形成した一方の面に金属板を接着層6を介在して積層成形した後、両面銅張積層板の他方の面に機械的研摩を施し、上記他方の面にパターン形成した後ソルダーレジスト8を塗布することにより、機械的研摩時、強固な研摩を可能とし、かつ積層成形時、他方の面の機械的強度を高くする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パワーIC、パワートランジスタ、電源回路用基板として使用される金属ベース基板、特に金属板を用いて熱対策等を図るスルーホール両面プリント配線板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の金属ベース基板の製造方法としては、図3(a)〜(d)及び図4(a)〜(c)に示す方法が考えられている。前者の製造方法は、先ず、両面銅張積層板の両面にサブトラクティブ法により導体パターン31、32をパターン形成すると共に、基材(絶縁層)33に穴明けした貫通穴の内壁にめっきを施してスルーホール34とした後、後述する接着層の密着性を改善するために導体パターン31、32上にブラック処理35を施して銅表面を粗面化したブラック処理面35とする(図3(a)参照)。次いで、図3(b)に示すように、両面銅張積層板の一方の面にアルミニウムからなる金属板36を接着フィルム又はプリプレグ等の接着層37を介在して積層成形した後、スルーホール34からはみ出した接着層37の接着剤樹脂を機械的研摩により除去し(図3(c)参照)、しかる後、両面銅張積層板の他方の面にソルダーレジスト38を塗布(図3(d)参照)、することにより金属ベース基材を製造する。又、後者の製造方法は、先ず、両面銅張積層板の両面にサブトラクティブ法により導体パターン41、42をパターン形成すると共に、基材(絶縁層)43に穴明けした貫通穴の内壁にめっきを施してスルーホール44とした後(図4(a)参照)、両面銅張積層板の上面にソルダーレジスト45を塗布する(図4(b)参照)。次いで、図4(c)に示すように、両面銅張積層板の下面にアルミニウムからなる金属板46の接着フィルム又はプリプレグ等の接着層47を介在して積層成形することにより金属ベース基板を製造する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の前者の金属ベース基板の製造方法では、積層成形時、スルーホールより接着剤樹脂が表層へはみ出し、ブラック処理面を被覆してしまう。通常、これらは、機械的研摩により除去しなければならないものの、この面にすでに回路形成されているため、強い研摩を施すことができず(回路の脱落のおそれがあるため)、ブラック処理面を完全に除去できなく、スルーホールランド周囲に黒いリング状にブラック処理が残留してしまう不具合がある。又、後者の金属ベース基材の製造方法では、ソルダーレジストによるスルーホール内の穴埋性が困難なため、図4(c)に示すように、積層成形後に気泡(ボイド)48が残留するおそれがある。更に、従来のいずれかの金属ベース基板の製造方法でも、図5に示すように、両面銅張積層板の両面にサブトラクティブ法により導体パターン51、52をパターン形成すると共に、基材(絶縁層)53に穴明けした貫通穴の内壁にめっきを施してスルーホール54とした後、その一方の面にアルミニウムからなる金属板55を接着フィルム又はプリプレグ等の接着層56を介在して積層成形した場合、特にパターン銅厚が 105μm以上になると、上面側の導体パターンの凹凸の影響によって、内層となる下面の導体パターンの回路に屈曲が発生するおそれがある。更に又、金属板の非接着面に、後工程での酸、アルカリ薬品処理や熱負荷によって表面酸化を生じたり、ハンドリング時の接触等によって損傷を生じたりする不具合がある。そこで、本発明は、ブラック処理面やボイドの残留及び回路の屈曲を生じない金属ベース基板の製造方法を提供することを目的とする。又、金属板の非接触面に損傷等が生じない金属ベース基板の製造方法の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明の第1の金属ベース基板の製造方法は、金属板を用いて放熱性等を向上させるスルーホール両面プリント配線板の製造方法に際し、両面銅張積層板の一方の面にサブトラクティブ法によりパターン形成した後ブラック処理を施し、このパターン形成した一方の面に金属板を接着層を介在して積層成形した後、両面銅張積層板の他方の面に機械的研摩を施し、上記他方の面にサブトラクティブ法によりパターン形成した後ソルダーレジストを塗布することを特徴とする。第2の金属ベース基板の製造方法は、第1の方法において、前記金属板の非接着面を予め耐熱フィルムによりマスキングすることを特徴とする。又、第3の金属ベース基板の製造方法は、第1又は2の方法において、前記金属板を両面銅張積層板の基材より小さくすることを特徴とする。前記金属板は、アルミニウム板とすることが好ましい。前記接着層は、接着フィルムとすることが好ましい。又、前記接着層は、プリプレグとしてもよい。一方、前記耐熱フィルムは、ポリイミドフィルムとすることが好ましい。
【0005】
【作用】本発明の第1の金属ベース基板の製造方法においては、機械的研摩時、他方の面がベタ銅面であるため、強固な研摩が可能となると共に、積層成形時、他方の面がベタ銅面であるため、その機械的強度が高くなっている。第2の金属ベース基板の製造方法においては、金属板の非接着面が予め耐熱フィルムによって被覆保護される。又、第3の金属ベース基板の製造方法においては、積層成形後に、金属板の断面部が接着層の接着剤樹脂によって被覆される。
【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1(a)〜(e)は本発明の金属ベース基板の製造方法の第1実施例の各工程を示す断面図である。先ず、図1(a)に示すように、両面銅張積層板の一報の面(図1(a)においては下面)にサブトラクティブ法により導体パターン1をパターン形成すると共に、基材(絶縁層)2に穴明けした貫通穴の内壁にめっきを施してスルーホール3とした後、後述する接着層の密着性を改善するために導体パターン1及び他方の銅箔等の上にブラック処理を施して銅表面を粗面化したブラック処理面4とする。次いで、図1(b)に示すように、両面銅張積層板の一報の面に、アルミニウムからなり、かつ、上記基材2より適宜に小さな金属板5を、接着フィルム又はプリプレグ等の接着層6を介在して積層成形する。この積層成形によって、接着層6の接着剤樹脂が金属板5の断面部を被覆する。次に図1(c)に示すように、両面銅張積層板の他方の面(図1(c)においては上面)に、ベルトサンダー等を用いた機械的研摩を施してスルホール3からはみ出した接着層6の接着剤樹脂及びブラック処理面4を完全に除去する。上記機械的研摩に際し、他方の面には導体パターンが形成されていないので、銅箔が脱落したりすることはない。そして、図1(d)に示すように、両面銅張積層板の他方の面に、サブトラクティブ法により導体パターン7をパターン形成した後、図1(e)に示すように、両面銅張積層板の他方の面にソルダーレジスト8を塗布することにより金属ベース基板を製造する。
【0007】上記製造方法によれば、機械的研摩時、他方の面がベタ銅面であるため、強固な研摩が可能となるので、はみ出し樹脂及びブラック処理面4を完全に除去できると共に、積層成形時、他方の面がベタ銅面であるため、その機械的強度が高くなっているので、パターン銅厚が 105μm以上であっても内層となる一方の面の導体パターン1が屈曲することはない。又、積層成形後に、金属板5の断面部が接着層6からはみ出した接着剤樹脂によって被覆されるので、金属板5の断面部が後工程での酸、アルカリ薬品処理や熱負荷によって表面酸化されたり、ハンドリング時の接触等によって損傷したりすることがない。
【0008】図2は本発明の金属ベース基板の製造方法の第2実施例の各工程を示す断面図である。この製造方法は、金属板5の非接着面(図2(b)〜(e))を予めポリイミドフィルムからなる耐熱フィルム9によりマスキングする点が、前述した第1実施例の方法と異なる。他の工程は、第1実施例の方法と同様であるので、図1(a)〜(e)と同一の構成部材等には同一の符号を付してその説明を省略する。上記製造方法によれば、第1実施例の方法の作用効果の他、金属板5の非接着面が予め耐熱フィルム9によって被覆保護されるので、非接着面に、後工程での酸、アルカリ薬品処理や熱負荷によって表面酸化を生じたり、ハンドリング時の接触等によって損傷を生じることがない。
【0009】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の第1の金属ベース基板の製造方法によれば、機械的研摩時、他方の面がベタ銅面であるため、強固な研摩が可能となるので、はみ出し樹脂及びブラック処理面を完全に除去できると共に、積層成形時、ボイドの生成もなく、又、他方の面がベタ銅面であるため、その機械的強度が高くなっているので、内層となる一方の面の回路が屈曲したりすることがない。又、第2の金属ベース基板の製造方法によれば、金属板の非接着面が予め耐熱フィルムによって被覆保護されるので、後工程での酸、アルカリ薬品処理や熱負荷によって表面酸化を生じたり、ハンドリング時の接触等によって損傷を生じることがない。更に、第3の金属ベース基板の製造方法によれば、積層成形後に金属板の断面部が接着層からはみ出した接着剤樹脂によって被覆されるので、第2の方法とほぼ同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の金属ベース基板の製造方法の第1実施例の各工程を示す断面図である。
【図1】(b)本発明の金属ベース基板の製造方法の第1実施例の各工程を示す断面図である。
【図1】(c)本発明の金属ベース基板の製造方法の第1実施例の各工程を示す断面図である。
【図1】(d)本発明の金属ベース基板の製造方法の第1実施例の各工程を示す断面図である。
【図2】(a)本発明の金属ベース基板の製造方法の第2実施例の各工程を示す断面図である。
【図2】(b)本発明の金属ベース基板の製造方法の第2実施例の各工程を示す断面図である。
【図2】(c)本発明の金属ベース基板の製造方法の第2実施例の各工程を示す断面図である。
【図2】(d)本発明の金属ベース基板の製造方法の第2実施例の各工程を示す断面図である。
【図3】(a)従来の金属ベース基板の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図3】(b)従来の金属ベース基板の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図3】(c)従来の金属ベース基板の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図3】(d)従来の金属ベース基板の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図4】(a)従来の他の金属ベース基板の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図4】(b)従来の他の金属ベース基板の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図4】(c)従来の他の金属ベース基板の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図5】従来の製造方法による金属ベース基板の断面図である。
【符号の説明】
1 導体パターン
2 基材(絶縁層)
3 スルーホール
5 金属板
6 接着層
7 導体パターン
8 ソルダーペースト
9 耐熱フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属板を用いて放熱性等を向上させるスルーホール両面プリント配線板の製造に際し、両面銅張積層板の一方の面にサブトラクティブ法によりパターン形成をした後ブラック処理を施し、このパターン形成した一方の面に金属板を接着層を介在して積層成形した後、両面銅張積層板の他方の面に機械的研摩を施し、上記他方の面にサブトラクティブ法によりパターン形成した後ソルダーレジストを塗布することを特徴とする金属ベース基板の製造方法。
【請求項2】 前記金属板の非接着面を予め耐熱フィルムによりマスキングすることを特徴とする請求項1記載の金属ベース基板の製造方法。
【請求項3】 前記金属板を両面銅張積層板の基材より小さくすることを特徴とする請求項1又は2記載の金属ベース基板の製造方法。
【請求項4】 前記金属板をアルミニウム板とすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の金属ベース基板の製造方法。
【請求項5】 前記接着層を接着フィルムとすることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の金属ベース基板の製造方法。
【請求項6】 前記接着層をプリプレグとすることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の金属ベース基板の製造方法。
【請求項7】 前記耐熱フィルムをポリイミドフィルムとすることを特徴とする請求項2、3、4、5又は6記載の金属ベース基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開平7−221447
【公開日】平成7年(1995)8月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−28889
【出願日】平成6年(1994)2月1日
【出願人】(000217228)田中貴金属工業株式会社 (146)