説明

金属光沢熱転写用インクリボン

【課題】インモールド転写フィルムやホットスタンピング転写フィルムへ熱転写プリンターにて金属光沢パターンを形成し、転写フィルムから成型物へ金属パターンを転写した際の金属光沢パターンの離脱が無い加飾を可能とする。
【解決手段】金属光沢熱転写用インクリボンを基材上に、離型層、蒸着アンカー層、金属蒸着層、コロイダルシリカを主成分とする中間層、接着層の順に積層した構成とする。中間層はオルガノシリカゾルを塗布し乾燥して形成する。より好ましくは、中間層のコロイダルシリカの配合比率が70重量%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
成型同時加飾法(インモールド転写)、ホットスタンピング加飾法に使用される転写フィルムに金属光沢パターンを印刷するための金属光沢熱転写用インクリボンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコンなどの個人向け電子機器でデザインの差別化を図る傾向がある。これらデザインの加飾工法として、成型同時加飾法(インモールド転写)、ホットスタンピング加飾法が良く知られている。インモールド転写は、射出成型金型内に転写フィルムを送り込み、フィルムの接着側に溶融樹脂を注入することで樹脂の溶融温度と射出圧力を利用して成型と同時に絵柄を転写する技術である。成型と加飾の2つの工程を一括しておこなえるうえに成型後のトリミング等も不要であるなど生産性が高い特徴がある。また、ホットスタンピング加飾法は、樹脂成型完了物へ転写フィルムを重ね合わせ、ホットロール等にて加熱、加圧し、転写フィルムから絵柄層を樹脂成型物に転写する技術である。また、インモールド転写フィルムおよびホットスタンピング転写フィルムへの絵柄層の印刷は、従来グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等を用いていたが、デザインの差別化から小ロット印刷が可能な方法として、熱転写プリンターにより絵柄形成を行う方法が広がりを見せている。本発明は、熱転写プリンターにて絵柄パターンを形成する為に用いるインクリボンであって特に金属光沢パターンを形成する為に用いるインクリボンに関し、特に上述のインモールド転写フィルムおよびホットスタンピング転写フィルムに熱転写プリンターにて金属光沢パターンを形成する為に好ましく用いられるインクリボンに関する。
従来、熱転写プリンターにて金属光沢パターンを形成する為に用いるインクリボンは、裏面に耐熱処理を施したPETフィルム基材上に離型層、蒸着アンカー層、金属蒸着層、接着層からなる構成をとっている。(特許文献1、2)しかし、従来のインクリボンは、蒸着アンカー層と金属蒸着層との界面における層間強度が弱い為、特にインモールド転写フィルム、ホットスタンピング転写フィルムに熱転写プリンターで金属光沢パターンを熱転写して形成した転写フィルムで、成型物への加飾を行った際、金属光沢パターン部が剥離し、離脱しやすい問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−30288号公報
【特許文献2】特開平5−92672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インモールド転写フィルムやホットスタンピング転写フィルムへ熱転写プリンターにて金属光沢パターンを形成し、転写フィルムから成型物へ金属パターンを転写した際の金属光沢パターンの離脱が無い加飾を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
金属光沢熱転写用インクリボンを基材から、離型層、蒸着アンカー層、金属蒸着層、コロイダルシリカを主成分とする中間層、接着層の構成とする。
前記中間層がオルガノシリカゾルを塗布乾燥して形成する。
より好ましくは、中間層のコロイダルシリカの配合比率が70重量%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の金属光沢熱転写用インクリボンを用いることによって、インモールド転写フィルムやホットスタンピング転写フィルムへ熱転写プリンターにて金属光沢パターンを形成し、転写フィルムから成型物へ金属パターンを転写した際の金属光沢パターンの離脱が無い加飾が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の金属光沢熱転写用インクリボンは、その構成を少なくとも基材から、離型層、蒸着アンカー層、金属蒸着層、コロイダルシリカを主成分とする中間層、接着層とする。
基材としては、裏面に耐熱処理を施した基材を用いる。基材材料としては各種耐熱フィルムが使用できるが、コスト、強度のバランスからPETフィルムが好ましい。基材厚みとしては、2〜12μmの範囲のものが使用でき、特に2.5〜6μmが強度と熱伝導性から好ましい。
【0008】
次に離型層としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、或いは、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、等の変性オレフィン系樹脂、或いは、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂等のビニル系樹脂を、1種又は2種以上混合使用することができる。
なお、例えば上記アクリル系樹脂は、そのモノマーとして、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−アミル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸−2−クロルエチル、(メタ)アクリル酸−3−クロルプロピル等の(メタ)アクリル酸ハロゲン化アルキル、(メタ)アクルル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等の水酸基を持つ(メタ)アクリル酸エステル、α−クロル(メタ)アクリル酸メチル、α−クロル(メタ)アクリル酸エチルなどのハロゲン化(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクルル酸−1−クロル−2−ヒドロキシエチルなどの水酸基を持つα−アルキル(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーの1種又は2種以上からなる単独重合体又は共重合体である。なお、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを意味する。離型層の厚みとしては、0.1〜2μmの範囲が好ましい。
【0009】
次に蒸着アンカー層は、耐熱性の高い樹脂が好ましく使用でき、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合物を主成分とすることが特に好ましく、熱硬化性樹脂としては、ポリイソシアネートを用いることが好ましく、樹脂中に反応基を有する熱可塑性樹脂とポリイソシアネートとの反応硬化物としても、反応基を有さない熱可塑性樹脂との混合物としてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、或いは、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、等の変性オレフィン系樹脂、或いは、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂等のビニル系樹脂を、1種又は2種以上混合使用することができる。
【0010】
なお、例えば上記アクリル系樹脂は、そのモノマーとして、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−アミル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸−2−クロルエチル、(メタ)アクリル酸−3−クロルプロピル等の(メタ)アクリル酸ハロゲン化アルキル、(メタ)アクルル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等の水酸基を持つ(メタ)アクリル酸エステル、α−クロル(メタ)アクリル酸メチル、α−クロル(メタ)アクリル酸エチルなどのハロゲン化(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクルル酸−1−クロル−2−ヒドロキシエチルなどの水酸基を持つα−アルキル(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーの1種又は2種以上からなる単独重合体又は共重合体である。なお、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを意味する。蒸着アンカー層の厚みとしては、0.1〜2μmの範囲が好ましい。
【0011】
次に金属蒸着層の金属としてはアルミニウム、亜鉛、錫、ニッケル、クロム、インジュウム、銅、金、銀、チタン、などが、単体、混合物、合金として使用できる。なかでアルミニウム、錫、銅、インジュウムが特に好ましく使用できる。金属蒸着層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や化学蒸着法により形成できる。金属蒸着層の厚みは、10〜1,000Åの範囲が好ましい。
【0012】
次に本発明の特徴である中間層について詳しく説明する。
中間層はコロイダルシリカを主成分とするものである。主成分とは、中間層中に50重量%含有することを意味する。好ましくは、70重量%以上とする。コロイダルシリカの粒子径は、5〜50nm特に好ましくは、5〜20nmの範囲とする。基材上にコロイダルシリカを溶液に分散されたシリカゾルを塗布、乾燥させて中間層を形成することができる。シリカゾルの溶液には、塗布適正の観点から、有機溶媒にコロイダルシリカが分散されたオルガノシリカゾルを用いることがより好ましい。
【0013】
オルガノシリカゾルとしては、有機溶剤の種類によりメタノールシリカゾル、イソプロパノールシリカゾル、nーブタノールシリカゾル、イソブタノールシリカゾル、エチレングリコールシリカゾル、キシレン・ブタノールシリカゾル、エチルセロソルブシリカゾル、ジメチルアセトアミドシリカゾル、メチルエチルケトンゾル等がある。
【0014】
中間層には、適宜熱可塑性樹脂を少量加え、塗膜強度、レベリング性、塗布適正を調整しても良い。熱可塑性樹脂の添加量は、50重量%未満とし、好ましくは30%未満とする。
【0015】
中間層の厚みとしては、0.05〜1.0μm程度が好ましい。0.05μm未満では、アンカー層と金属蒸着層との層間強度が得られにくく、1.0μmを超えると、感熱転写性が低下する。特に好ましい厚みとしては、0.05〜0.5μm範囲とする。ここで、金属蒸着層の上にコロイダルシリカを主成分とする中間層を設けることにより、蒸着アンカー層と金属蒸着層との界面の層間強度が高くなる理由は、定かでない。しかし、転写フィルムに金属光沢パターンを本発明のインクリボンを使用して熱転写で形成したものをホットスタンプ機で成型樹脂(被転写体)に転写フィルムをあてがって転写層を転写して、基材フィルムを剥がしたときに、従来のインクリボンでは、金属蒸着層が剥がれるものが、本発明のインクリボンをした場合は金属蒸着層が剥がれることがないものである。
【0016】
上記の説明では、問題視する剥がれは蒸着アンカー層と金属蒸着層の界面と述べたが、転写フィルムの層の構成や転写条件等によっては、剥がれる箇所が異なることがまれに出てくる。例えば、A:離型層と蒸着アンカー層間や、B:従来インクリボンにおける接着層と金属蒸着層間がある。Aの場合は、やはり金属蒸着層が剥がれる問題は、同じである。Bの場合は、金属蒸着層は、被転写体側に残るものの金属蒸着層の上に載っている層である接着層及び転写フィルムに元々備わっており、被転写体への転写時に転写された受像兼接着層、剥離保護層等の層が無くなり耐擦過性等が低下する問題が発生する。本発明のインクリボンを使用すればこのような問題が解消される。つまり、層間強度の向上は、蒸着アンカー層と金属蒸着層間のみならず他の層間強度の向上も可能とするものである。
本発明における接着層用の接着剤は、感熱接着剤であれば特に制限無く使用できる。たとえば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フェノール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどの樹脂やエラストマー類の1種又は2種以上を主成分とし、必要に応じてロジンやその誘導体、テルペン樹脂、石油系樹脂などのタッキファイヤー、可塑剤、酸化防止剤などを配合したものが使用できる。接着層のきれ向上や、耐ブロッキング性向上の為に、微粒子を配合しても良い。微粒子としては、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、カーボンブラック、酸化チタン等が使用できる。接着層の厚みとしては、0.05〜2.0μm程度が好ましい。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
1.金属光沢熱転写用インクリボンの作製
裏面に厚み0.1μmの耐熱層を形成した厚さ6μmのPETフィルムを基材として用いた。

離型層塗工液(重量%)

【0018】
上記塗工液を基材に乾燥後塗布厚み0.6μmにて塗布した。

蒸着アンカー層塗工液(重量%)

【0019】
蒸着アンカー層塗工液を離型層上にメイヤバーにて乾燥後塗布厚み0.6μmにて塗布し、100℃のオーブンにて1分間加熱し熱硬化させた。

次に真空蒸着法にてアルミニウムをその上に蒸着した。(蒸着厚み500Å)
中間層塗工液1:オルガノシリカゾル(固形分20%MEK分散液)(日産化学工業製、MEK−ST、以下で使用のオルガノシリカゾルも同じものを使用した。)
中間層塗工液1をアルミ蒸着層の上にメイヤバーにて乾燥後塗布厚み0.2μmとなるように塗布し、中間層を形成した。

接着層塗工液(重量%)

【0020】
さらにその上に接着層塗工液をメイヤバーにて乾燥後塗布厚み0.2μmとなるように塗布し、金属光沢熱転写用インクリボン(1)を完成した。

2.転写フィルムの作製(ホットスタンプ加飾用)
厚さ20μmのPETフィルムを基材フィルムとして用いた。

離型保護層塗工液(重量%)

【0021】
上記塗工液を基材に乾燥後塗布厚み2.0μmにて塗布した。

受像兼接着層塗工液(重量%)

【0022】
その上に受像兼接着層塗工液をメイヤバーにて乾燥後塗布厚み0.2μmなるように塗布し、転写フィルムを完成した。

(実施例2)
実施例1で中間層塗工液を中間層塗工液2とした以外は実施例1と同じ構成した。
中間層塗工液2(重量%)

【0023】

(比較例1)
実施例1で中間層の形成を除外した以外は、実施例1と同様のものとした。

(比較例2)
実施例1で中間層塗工液を中間層塗工液3とした以外は実施例1と同じ構成した。
中間層塗工液3(重量%)

【0024】

金属光沢熱転写用インクリボンの評価
熱転写プリンター解像度600dpiのテストプリンターにて前記の転写フィルム上に上記熱転写用インクリボンをもちいて金属光沢パターンを形成した。
金属光沢がパターンニングされた転写フィルムを、ホットスタンプ機を用いて厚み3mmの透明アクリルプレートにパターンを転写させた。(転写温度240℃、転写速度80mm/sec)
以上により、アクリルプレートに金属光沢パターンを形成した評価用サンプルを作製した。

評価項目
1)密着性
転写した被転写体の表面をカッターナイフにて1.5mm角の碁盤目を100マス刻み、セロテープ(ニチバンCT−24、セロテープのニチバンの登録商標)にて剥離テストを実施して、碁盤目の残個数を数えた。
2)光沢感
○:良好な金属光沢、△:ややくもりが見られる、×:くもりが見られる
3)印刷適正
2dotのへアーラインの印字性能にて評価
○:良好なヘアーラインが得られた、△:ややかすれ部が見られる、×:かすれる

評価結果


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、離型層、蒸着アンカー層、金属蒸着層、コロイダルシリカを主成分とする中間層、接着層をこの順に積層したことを特徴とする金属光沢熱転写用インクリボン。
【請求項2】
前記中間層がオルガノシリカゾルを塗布乾燥して形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の金属光沢熱転写用インクリボン。
【請求項3】
前記中間層のコロイダルシリカの配合比率が70重量%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の金属光沢熱転写用インクリボン。

【公開番号】特開2010−5969(P2010−5969A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169730(P2008−169730)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】