説明

金属化されたポリマー基材を調製するための方法

本発明は、次の連続工程を含むを金属材料による、(コ)ポリマー製基材の表面をコーティングするための方法に関する:a)少なくとも1つのこの金属材料の前駆体の存在下で、フェントンタイプの化学反応によって、この表面を酸化処理に供する工程;およびb)この前駆体をこの金属材料に変換する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面コーティングの技術的分野、および、より詳細には表面の金属化の技術分野に属する。
故に、本発明は、ポリマー性基材に適用する簡易化された金属化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属化は、金属薄層により部品表面をコーティングすることで構成される。
プラスチック材料製の部品の金属化は、(コ)ポリマー製の特定の装備品がクロムでコーティングされるような自動車および船舶;電子産業、家庭用電気機器および照明器具類;化粧品およびファッションアクセサリー;光学および時計製造などのような分野に特に使用される。故に、プラスチック材料、および、より一般的にはポリマーの表面の金属化方法の開発は、非常に興味深いものである。
ポリマーの金属化は、50年以上にわたって開発されている方法である。これは、基材を伝導性にするために使用される技術の代替技術を含む。
【0003】
現在、ポリマーの金属化は、一般に3工程で行われる。
第1の工程は、表面を改質するための工程であり、まず最初に、機械的アンカーリングにより金属層の接着を改善するために表面に粗さを与える。
こうした改質によりまた、特に酸素原子または窒素原子を一般に組み込む親水性基を提供することによって、ポリマー表面の湿潤性を増大させることができ、これは表面の活性化を促進するためである。実際、ポリマーは、活性化金属剤の吸着を促進する基を有していなければならない。
例えば、金属剤がパラジウムである場合、その化学吸着は、窒素含有成分に対してのみ可能である[1](非特許文献1)。前処理に拘わらず、金属化されるべきポリマーの表面における粗さおよびC−Oおよび/またはC−N結合の提供は必須である。
【0004】
第2の工程は、表面を活性化するための工程であり、この工程は改質されたポリマーの表面に金属粒子を堆積させることにある。続いてこれらの粒子は、金属化のための触媒の役割を果たす。故に、続いて還元される金属カチオンが、ポリマー表面に維持されなければならない。
最終工程では、活性化されたポリマーを浸す金属化浴を適用する。この浴において、金属成長は、先行する工程で堆積した金属粒子によって触媒作用を受ける。金属化浴は、少なくとも1つの金属カチオンおよびその錯化剤、還元剤および安定化剤を含有する、一般にアルカリ性媒体中の安定溶液である。
【0005】
特に産業で使用される方法は、金属化されるべき表面を酸化し、次いでその上に、スズ/パラジウムコロイドを介してパラジウムを吸着させることにあり、これが活性化工程に対応する。これに続いて、加速工程を適用し、スズを除去でき、こうして、この場合はパラジウムである金属層の前駆体の活性を促進する。微量のスズは、実際、所望でない位置にて金属成長を誘導し得る。加速工程の後は、先に定義されるような金属化浴の存在下での工程が続く。
【0006】
この方法は、特に、特許文献1[2]に記載されている。しかし、この出願の主題である方法は、金属材料の前駆体の存在下、フェントンタイプの酸化を有していない。実際、それは、過酸化水素を適用する工程中に存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】カナダ特許出願公開第1,203,720号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Charbonnier, M., et al., Journal of the Electrochemical Society 1996, 143, (2), 472-480
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ポリマーおよび特にプラスチックの金属化が使用される分野の多様性および経済的な問題を考慮すると、現在使用される方法に比べて、簡易化された金属化方法、ひいては低コストでの方法が真に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、こうした期待に応え、最先端の金属化方法の技術的問題を解決することができる。
実際、本発明者らの研究によれば、本発明の方法が、表面の酸化と同時にポリマー表面にて金属カチオンを堆積および維持することからなるので、ポリマーの金属化のための従来の方法におけるいくつかの工程が削除される金属化方法を開発できた。
【0011】
より詳細には、本発明は、次の連続工程を含む金属材料による、(コ)ポリマー製基材の表面をコーティングするための方法に関する:
a)少なくとも1つのこの金属材料の前駆体の存在下で、フェントンタイプの化学反応によって、この表面を酸化処理に供する工程;
b)この前駆体をこの金属材料に変換する工程。
【0012】
「金属材料によるコーティング」とは、本発明の範囲内において、金属および/または金属酸化物の薄層(通常、数ナノメートルから数マイクロメートルを有する)でコーティングされた表面を有する基材を意味する。こうした薄層は、基材の表面のすべてまたは一部を覆っていてもよい。これによってコーティングされた基材は、「金属化基材」と呼ばれてもよい。
【0013】
金属化基材のうち、特に金属だけでまたは金属酸化物だけで金属化された基材と、両方のタイプの金属実体で金属化された基材とが区別され得る。
本発明に従う基材は、いかなるサイズおよび形状を有していてもよい。実際、本発明の範囲内にある適用された基材のサイズは、ナノメートル、マイクロメートル、ミリメートルまたはメートル単位であってもよい。故に、本発明は、非限定例として、ナノ粒子、マイクロ粒子、ボタン、化粧品製品のプラグ、電子素子、ドアハンドル、家庭用電化製品、眼鏡、ランプのような装飾品、車体素子などからなる群から選択されてもよい基材に適用される。
【0014】
「(コ)ポリマー製基材表面」とは、(コ)ポリマー製基材だけではなく、表面だけが(コ)ポリマーであって、基材の残りはいかなる材料であってもよい基材を意味する。
「(コ)ポリマー製」とは、本発明の範囲内において、単一(コ)ポリマーまたはいくつかの異なる(コ)ポリマーによって本質的に形成される基材または表面を意味する。
【0015】
「本質的に形成される」とは、本発明の範囲内において、重量によって表される少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%および/または少なくとも98%の構成要素が(コ)ポリマーである基材または表面を意味する。
有利なことには、基材または基材の表面は、1つまたはいくつかの(コ)ポリマーによってのみ形成される。
【0016】
あるいは、基材または基材の表面は、(コ)ポリマーに加えて、充填剤、可塑剤および添加剤からなる群から選択される少なくとも1つの要素を含む。この(これらの)追加要素は、有利なことには、ポリマー材料に組み込まれおよび/または分散される。
覚書として、プラスチックまたはプラスチック材料は、有利なことには3,000を超える重合度を有する少なくとも1つの(コ)ポリマーおよび少なくとも1つの添加剤を用いて形成される。故に、本発明の範囲内において適用されるポリマー製の基材または基材表面は、プラスチック製またはプラスチック材料製の基材または基材表面を含む。
【0017】
無機充填剤、例えば、シリカ、タルク、グラスファイバーまたはビーズ、もしくは、有機充填剤、例えば、穀粉またはセルロースペーストは、一般にコストを低減するために、および、特定の特性、例えば、ポリマー性材料の機械的特性を改善するために使用される。添加剤は、ポリマー性材料の特定の特性を改善するために主に使用され、この特性は、架橋、滑り性、劣化耐性、耐火性および/または細菌およびカビ攻撃耐性であってもよい。
任意の天然、人工、合成、熱可塑性、熱硬化性、熱安定性、エラストマー性、線状(すなわち、1次元、線状または分岐)および/または三次元ポリマーは、本発明の範囲内で使用されてもよい。天然ポリマーの非限定例として、糖を挙げることができる。
【0018】
有利なことには、本発明の範囲内に適用されるポリマーは、次からなる群から選択される熱可塑性(コ)ポリマーである:
−ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、エチレン/酢酸ビニルコポリマーおよびエチレン/ビニルアルコールコポリマー、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物、および、それらの組み合わせ;
−ポリエステル、例えば、場合によりグリコールによって変性されるポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリラクチド、ポリカーボネート、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物、および、それらの組み合わせ;
【0019】
−ポリエーテル、例えば、ポリ(オキシメチレン)、ポリ(オキシエチレン)、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(フェニレンエーテル)、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物、および、それらの組み合わせ;
−ビニルポリマー、例えば、場合により塩素化されたポリ塩化ビニル、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(塩化ビニル/酢酸ビニル)、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物、および、それらの組み合わせ;
【0020】
−ビニリデンポリマー、例えば、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物およびそれらの組み合わせ;
−スチレンポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリ(スチレン/ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)、ポリ(アクリロニトリル/スチレン)、ポリ(アクリロニトリル/エチレン/プロピレン/スチレン)、ポリ(アクリロニトリル/スチレン/アクリレート)、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物、および、それらの組み合わせ;
−(メタ)アクリル性ポリマー、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物、および、それらの組み合わせ;
【0021】
−ポリアミド、例えば、ポリ(カプロラクタム)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(ラウロアミド)、ポリ(エーテル−ブロック−アミド)、ポリ(メタキシリレンアジパミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物、および、それらの組み合わせ;
−フッ素化ポリマー(またはポリフルオロエテン)、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロ−エチレン、ペルフルオロ化ポリ(エチレン/プロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物およびそれらの組み合わせ;
【0022】
−セルロースポリマー、例えば、セルロースアセテート、ニトロセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物、およびそれらの組み合わせ;
−ポリ(アリーレンスルホン)、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物およびそれらの組み合わせ;
−ポリスルフィド、例えば、ポリ(フェニレンスルフィド);
【0023】
−ポリ(アリールエーテル)ケトン、例えば、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルケトンケトン)、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物およびそれらの組み合わせ;
−ポリアミド−イミド;
−ポリ(エーテル)イミド;
−ポリベンゾイミダゾール;
−ポリ(インデン/クマロン);
−ポリ(パラキシレン);
−それらのコポリマーの1つ、それらの混合物およびそれらの組み合わせの1つ。
【0024】
あるいは、本発明の範囲内において適用される(コ)ポリマーは、アミノプラスト、例えば、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド/ポリエステル、それらのコポリマーの1つ、それらの混合物、および、それらの組み合わせ;ポリウレタン;不飽和ポリエステル;ポリシロキサン;ギ酸フェノール(formophenolic)樹脂、エポキシド、アリルまたはビニルエステル樹脂;アルキド;ポリ尿素;ポリイソシアヌレート;ポリ(ビスマレイミド);ポリベンゾイミダゾール;ポリジシクロペンタジエン;それらのコポリマーの1つ、それらの混合物の1つおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される熱硬化性(コ)ポリマーである。
【0025】
本発明の範囲内で使用されてもよいポリマーにおける補足的情報は、Naudinの1995年の文献[3]を利用できる。
本発明の範囲内で使用されてもよい、この(コ)ポリマーの非限定例として、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)、ポリアミド(PA)、例えば、ナイロン、ポリアミン、ポリ(アクリル酸)、ポリアニリン、および、ポリエチレンテレフタレート(PET)を挙げることができる。
【0026】
本発明に従う方法の工程(a)の前では、金属化されるべき基材は、表面にて吸着される金属材料の前駆体を有していない。
「酸化処理」とは、本発明の範囲内において、適用された基材の表面の酸化を目的とする処理を意味する。この酸化は、酸素が豊富な基、および、特に極性および/または親水性基、例えば、カルボキシル(−COOH)、ヒドロキシル(−OH)、アルコキシル(−OR)(Rは以降に定義されている)、カルボニル(−C=O)、過炭酸(percarbonic)(−C−O−OH)、および、場合によりアミド(−CONH)タイプの基を結合および/または導入することによって特に、基材の表面を改質する。こうした酸化処理はまた、適用された基材の表面の親水性を増大させることができる。
【0027】
この処理は、基材および/または基材の表面に形成する(コ)ポリマーが表面で生じるように種々の試薬の使用に基づき、表面酸化により、基材の表面、酸化処理中に存在する金属材料の前駆体の表面において良好な接着および/または良好な保持を可能にする。この接着および/またはこの保持は、金属材料の前駆体と酸化された表面に存在する基との間のキレート化(または錯化)を利用する。金属材料の前駆体のすべてまたは一部は、特に、(コ)ポリマーの表面に留まり、続いて還元されてもよい。
【0028】
有利なことには、本発明に従う方法の工程(a)は、60℃未満の温度、特に5℃〜50℃、および、とりわけ10℃〜40℃を含む温度にて適用される。本発明に従う工程(a)は、より詳細な実施形態では室温にて到達される。「室温」とは、20℃±5℃の温度を意味する。
工程(a)中に適用される酸化処理は、Fenton(1894)の化学反応に基づく。そのため、この酸化処理は、フェントンタイプの化学反応による酸化処理として指定されてもよい。覚書として、フェントンの化学反応は、次の反応スキームによって表される第一鉄イオンによる酸性媒体中での過酸化水素の酸化で構成される:
Fe2++H→Fe3++・OH+OH
【0029】
この反応は、ヒドロキシルラジカル(・OH)を生じ、これがプラスチック表面に対して特に高い反応性を有し、第一鉄イオンは、金属材料の前駆体の役割を果たす。
本発明の方法の工程(a)の酸化処理に適用される一般化されたフェントン化学反応は、基材表面を、少なくとも1つの金属材料の前駆体および式ROORの化合物を含有する溶液と接触させることで構成され、式中Rは、水素、1〜15個の炭素原子を含むアルキル基、アシル基−COR’(R’は、1〜15個の炭素原子を含むアルキル基を表す)またはアロイル基−COAr(Arは、6〜15個の炭素原子を含む芳香族基を表す)を表す。
【0030】
「1〜15個の炭素原子を含むアルキル基」とは、1〜15個の炭素原子、特に1〜10個の炭素原子、および、とりわけ2〜6個の炭素原子、および、場合によりN、O、F、Cl、P、Si、BrまたはSのようなヘテロ原子を含む、場合により置換された線状、分岐状または環状アルキル基を意味する。
「6〜15個の炭素原子を含む芳香族基」とは、本発明の範囲内において、それぞれ3〜10個の原子を含む1つまたはいくつかの芳香族またはヘテロ芳香族基からなる、場合により置換された、芳香族またはヘテロ芳香族基を意味し、このヘテロ原子はN、O、PまたはSであってもよい。
【0031】
「置換された」とは、本発明の範囲内において、1〜4個の炭素原子を含む線状または分岐アルキル基、アミン基、カルボキシル基および/またはニトロ基で一置換または多置換された、アルキルまたは芳香族基を意味する。
ラジカル・OR(Rは先に定義されている通り)は、金属材料の前駆体により過酸化物ROORを開裂することによって得られる。本発明の方法の工程(a)中の反応は、次の反応スキームによって表されてもよい:
n++ROOR→Z(n+1)++・OR+OR
Zは金属材料の前駆体を表し、nは1から7、特に1から5の整数を表す。整数nは、有利なことには1、2、3、4および5からなる群から選択される。
【0032】
本発明に従う方法の工程(a)中に適用される金属材料の前駆体は、金属成長、ひいては基材表面の金属化の触媒の役割を果たす。金属材料の前駆体は、有利なことには、特にIB族またはVIII族の貴金属から選択される金属カチオンである。より詳細には、金属材料の前駆体は、銅、銀、金、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムおよび白金イオンからなる群から選択される。
【0033】
金属材料の前駆体は、少なくとも1つの金属材料の前駆体および式ROORの化合物を含む溶液中に、0.05M〜5M、特に0.1〜3M、とりわけ0.5〜2.5Mを含む濃度にて存在する。少なくとも1つの金属材料の前駆体および式ROORの化合物を含む溶液は、さらに対イオン、例えば、テトラフルオロボレート、スルフェート、ブロミド、フロリド、ヨード、ニトレート、ホスフェートまたはクロリドイオンを含む。
式ROORの化合物は、少なくとも1つの金属材料の前駆体および式ROORの化合物を含む溶液中に、5×10−4M〜5M、特に0.1〜3M、とりわけ0.5〜2.5Mを含む濃度にて存在する。
【0034】
少なくとも1つの金属材料の前駆体および式ROORの化合物を含む溶液は、有利なことには酸溶液である。「酸溶液」とは、pHが7未満、特に2〜4を含む、とりわけ3のオーダー(すなわち、3±0.5)である溶液を意味する。この溶液はさらに、硫酸を、特に0.05〜50mM、とりわけ0.1〜10mM、より詳細には1mMのオーダー(すなわち、1±0.25mM)を含む濃度にて含む。
フェントンタイプの化学反応を用いる処理の時間は、変動可能であってもよい。非限定例として、この時間は、有利なことには、5分〜5時間、特に10分〜3時間、とりわけ15分〜2時間、および、より詳細には25分のオーダー(すなわち、25±5分)が含まれる。
【0035】
フェントンタイプの化学反応による酸化処理の後、他の金属材料の前駆体を提供することが必要とされる場合があり、これは、基材の表面および/または基材を、当業者に周知の条件下でキレート化浴と接触させることによる。
あるいは、金属材料の前駆体は、フェントン反応中に使用される溶液、すなわち本発明の方法の工程(a)中に適用される溶液によってのみ提供される。
本発明の範囲内において、フェントン反応は、金属化されるべき基材の表面を酸化するために使用されるだけでなく、無電解メッキによって堆積される金属層の前駆体として後に作用する金属カチオンを吸着させるために使用される。
【0036】
本発明に従う方法の工程(b)は、金属材料の前駆体をこの金属材料に変換することにあるので、材料の金属化を専門とする当業者に周知の工程である。
こうした変換を可能にする任意の技術が、本発明の範囲内で使用されてもよい。
有利なことには、この変換工程は、次の連続サブ工程を有する
)場合により、上記基材表面に存在する上記金属材料の前駆体を還元する工程;
)少なくとも1つの金属材料のイオンを含有する溶液中にて、場合により工程(b)後に還元された上記前駆体と接触させる工程。
【0037】
金属材料の前駆体の還元を可能にする任意の技術が、本発明に従う方法の工程(b)の範囲内で使用されてもよい。
有利なことには、この還元工程は、単一工程における化学還元である。この好ましい選択肢は、金属材料の前駆体が見出される基材表面を、還元溶液Sと接触させることにある。
有利なことには、還元溶液Sは塩基性である。還元溶液Sは、還元剤、特に水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、ジメチルアミンボラン(DMAB−H(CHNBH)およびヒドラジン(N)からなる群から選択される還元剤を含む。
【0038】
還元剤がNaBHである場合、還元溶液SのpHは中性または塩基性であるが、DMABについては溶液SのpHは塩基性である。溶液Sが塩基性である場合、有利なことには使用される溶媒は、NaOHであり、特に、10−4M〜5M、特に0.05〜1M、および、とりわけ0.1Mのオーダー(すなわち、0.1M±0.01M)の濃度である。
還元剤は、還元溶液Sにおいて、10−4〜5M、特に0.01〜1M、とりわけ0.3Mのオーダー(すなわち、0.3M±0.05M)の濃度で存在する。
【0039】
還元工程(b)は、20℃〜100℃、特に30℃〜70℃、とりわけ50℃のオーダー(すなわち50℃±5℃)を含む温度にて行われてもよい。
さらに、還元工程(b)は、30秒〜1時間、特に1〜30分、とりわけ2〜20分間継続させてもよい。
【0040】
本発明に従う方法の工程(b)の後に還元された金属材料の前駆体は、主に、0の酸化度を有する。故に、次いで金属化は、0の酸化度での前駆体粒子に対して、金属化および成長浴に浸すことによって行うことができる。
この還元工程(工程(b))が任意であってもよいことに留意すべきである。実際、特定の場合、金属材料の前駆体は、予備還元工程を必要とせずに、工程(b)中の少なくとも1つの金属材料のイオンを含有する溶液と接触させる間に還元されてもよい。実際、金属材料の前駆体は、無電解メッキによって堆積された金属の場合よりも大きい酸化/還元電位を有し、金属材料の前駆体は、第1段階において、金属成長が開始される前に金属材料のイオンと接触させる間に還元されてもよい。
【0041】
そのため、工程(b)は、少なくとも1つの金属材料のイオンを含有する溶液中に、工程(b)の後に還元された上記前駆体を接触させることで構成される。以降、Sという1つの金属材料のイオンを含有する溶液は、当業者に周知の金属化浴に対応し、その構成要素と同様である。
例として、工程(b)に適用される少なくとも1つの金属材料のイオンを含有する溶液Sは、金属材料のイオン、この金属材料のイオンを錯化する試薬、還元剤およびpH調製剤を含む。有利なことには、この溶液Sは水溶液である。さらに、いくつかの金属化溶液が市販されている。
【0042】
本発明の範囲内で適用される金属材料のイオンは、金属材料のいずれかのイオンであってもよい。本発明は、より詳細には、遷移金属のイオンに関する。有利なことには、本発明に従う金属材料のイオンは、Ag、Ag2+、Ag3+、Au、Au3+、Co2+、Cu、Cu2+、Fe2+、Ni2+、Pd、および、Ptからなる群から選択される。
溶液Sにおいて、金属材料のイオンは、アニオン性の対イオンと会合する。使用されてもよいアニオン性の対イオンとしては、クロリド、ブロミド、フロリド、アイオダイド、スルフェート、ニトレート、ホスフェート、アセテートイオンおよび任意の有機または無機酸塩イオンを挙げることができる。
【0043】
金属材料のイオンを錯化する試薬は、使用される塩基性条件下での、これらのイオンの溶解性の喪失を埋め合わせるために、および、それらの沈殿を回避するために必要である。こうした錯化剤は、特に、有機酸およびそれらの塩、例えば酒石酸、EDTAまたはEDTPのような塩から選択される。
有利なことには適用される還元剤は、特に、ホルムアルデヒド、DMABまたはHPOであってもよい。当業者は、本発明の範囲内で使用されてもよい金属材料/還元剤の異なるイオン対を認識している。また、特定の選択された対に依存して、当業者は、適用されるべき溶液SのpHおよび温度条件を認識している。
【0044】
銅イオンを含有する溶液Sにおける例として、有利なことには塩基性条件下で適用される還元剤は、溶液Sの総体積に対して0.1〜5%(v/v)を含む量でのホルムアルデヒドである。「塩基性条件」とは、pHが10〜14、特に12〜13を含むような溶液を意味し、こうしたpHはpH調整剤としてNaOHを用いることによって得られる。
銅イオンを含有する溶液Sにおける例として、金属化工程(b)は、20℃〜80℃、特に30℃〜60℃、および、とりわけ40℃のオーダー(すなわち、40℃±5℃)での温度にて行われてもよい。
さらに、金属化工程(b)は、1分から1時間、特に5〜45分間、および、とりわけ10〜30分間継続し得る。
【0045】
基材の表面の金属化、すなわち基材表面における金属材料の薄層の存在は、通常視覚的に、特に裸眼で容易に確かめることができる。
本発明の範囲内において、方法の工程(a)に先行して、金属化されるべき基材表面について、場合により様々な前処理を行ってもよい。これらの前処理は、表面の金属化分野に基づく従来の処理、例えば、脱脂または研磨であってもよい。
【0046】
あるいは、基材表面は、場合により、本発明に従う方法の工程(a)の前に、その親水性および/またはその粗さを増大できる処理に供されてもよく、この処理は、研磨、摩耗、ピックリング浴を用いる化学処理、火炎処理、コロナ効果処理、および、プラズマ処理、ならびに、それらの組み合わせによって形成される群から選択される。
実際、工程(a)中に適用される処理は、基材の表面に追加の粗さを与えず、これはAFM測定によって確認できる。また、基材表面または基材を形成する(コ)ポリマーの初期粗さに依存して、表面粗さを与えるために工程(a)に先行する前処理が行われなければならない。
【0047】
さらに、処理されるべき基材表面または基材を形成する(コ)ポリマーの親水性を増大させることが必要な場合がある。特定の(コ)ポリマーは、既に窒素含有基または酸素含有基、例えば、ポリアクリル酸、ポリアニリンおよびポリアミドを有する。これらの酸素または窒素が金属化されるべき基材表面にて利用可能である場合、親水性を与える工程は必須ではない。
故に、ポリマーに依存して、親水性機能が与えられたまたは与えられていない表面粗さは、機械的、化学的前処理によって、または乾燥経路によって与えられてもよく、特定の場合に表面酸化を伴う。
【0048】
処理されるべき表面の機械的前処理は、より小さいまたはより大きい粒子(grain)を有するサンドペーパーによる研磨または摩耗である。それは、表面の化学組成を変化させないので、処理されるべき基材表面または基材を形成する(コ)ポリマーの表面を酸化しない。さらに、それは必ずしも効率的ではなく、大きな平坦部品として現れる基材のように好適なサイズを有する基材の場合にのみ可能である。
【0049】
化学(酸/塩基)前処理(またはピックリング浴を用いた化学処理)は、処理されるべき表面を酸または塩基性ピックリング浴と接触させることに基づき、金属化されるべき(コ)ポリマーに特異である。それが、表面粗さおよび非常に一般的な表面酸化を与える。いずれの場合でも、「サテン仕上げ」とも呼ばれるピックリングは、化学エッチングによって処理されるべき基材表面または基材を構成する(コ)ポリマー表面において分解する。このピックリングは、ポリマー性鎖の化学反応性の法則に従う。
実際、この分解は、表面での(コ)ポリマー鎖の破断を生じ、結果としてそれらを溶解させて(コ)ポリマーの表面での粗さを発生させるようになる。例として、ポリアミドタイプのポリマーにおける酸エッチングは、有機材料の分解を生じ得る。同様にして、塩基性エッチングは分解を生じることができ、ABS−PC製の表面に含有されるポリカーボネートの分解および溶解が可能であり、表面粗さを増大させる。そのため、これらの酸−塩基性処理は、粗さおよび酸化を提供する。
【0050】
ピックリング浴の例として、少なくとも1つの無機酸を含む酸水溶液を挙げることができる。この無機酸は、特に、クロム酸、硫酸、硝酸、次亜塩素酸、および、これらの混合物からなる群から選択される。「混合物」とは、少なくとも2つの異なる無機酸の混合物、例えば、クロム酸および硫酸の混合物、または、少なくとも3つの異なる無機酸の混合物、例えば、硝酸、次亜塩素酸および硫酸の混合物を意味する。
【0051】
化学前処理は、有利なことには、1〜60分、特に2〜30分、とりわけ5〜20分を含む時間にわたって、20〜120℃、特に40〜110℃、とりわけ60〜100℃の温度で行われる。
処理されるべき表面はまた、乾燥経路を介する前処理に供されてもよい。火炎処理、コロナ効果処理およびプラズマ処理を含むこうした物理化学処理はまた、二重の効果;i)表面での化学結合の酸化およびii)粗さの増大を有する。
【0052】
火炎処理はまた「フレーミング(flaming)」とも呼ばれ、基材表面および/または基材を火炎に曝すこと、特に安定およびわずかに酸化性の火炎に曝すことである。この処理の高温が、ラジカル、イオンまたは励起分子に対応し得る活性種を生じる。基材の表面および/または基材を構成する(コ)ポリマーは、4〜9mmのオーダーの厚さにわたって酸化される。表面にて、官能基がカルボキシル(−COOH)、ヒドロキシル(−OH)、カルボニル(−C=O)、アミン(−NH)、ニトリル(−CN)および場合によりアミド(−CONH)タイプの基に固定される。その分解に起因するポリマー内部における化学種の拡散現象が認められる。表面の真の再構造化がある。これらの改質は、コーティングされるべき表面の湿潤性および粗さを改善することによって表される。
【0053】
火炎は、特に、基材表面および/または基材からの距離が0.1〜20cm、とりわけ0.3〜10cm、より詳細には0.5〜5cmを含むように位置する。
この火炎は、有利なことには、少なくとも2つのガスの混合物によって生じ、第1および第2のガスは、それぞれ、水素、メタン、エタンおよびプロパンからなる群、および、空気、オゾンおよび酸素からなる群から選択される。それによって得られた火炎の温度は、500〜1,600℃、特に800〜1,400℃、および、とりわけ1,200℃(すなわち、1,200±100℃)のオーダーを含む。
火炎処理の時間は、0.01〜10秒、特に0.015〜1秒、とりわけ0.02〜0.1秒を含む。
【0054】
コロナ効果処理はまた、「コロナ効果による処理」または「コロナ放電による処理」と呼ばれ、高電圧AC電流を数ミリメートル、特に1〜2mm離れた2つの電極間に通すことによって生じるイオン化フィールドに基材表面および/または基材を曝すことである。故に、コンダクタを取り囲む媒体のイオン化によって生じる放電は、電位が臨界値を超える場合、および、条件がアークの形成を許容できない場合に生じる。
このイオン化の間、放出される電子は、電界に降下し、それらのエネルギーが基材表面および/または基材を取り囲む媒体(有利なことには場合により酸素が豊富な空気または不活性ガスである)の分子に移る。これにより、脱水素化および基材の(コ)ポリマー鎖の破断、ならびに媒体中に存在する化学種との自発反応を生じる。基材表面および/または基材を形成する(コ)ポリマーの表面が酸化される。
【0055】
コロナ放電の密度は、有利なことには、10〜500W.分/m、特に20〜400W.分/m、とりわけ30〜300W.分/mを含む。
コロナ効果による処理時間は、0.1〜600秒、特に1〜120秒、とりわけ10〜50秒を含む。
プラズマ処理については、固体支持体の表面および/または固体支持体をプラズマに曝すことで構成される。
【0056】
覚書として、プラズマはイオン化された状態のガスであり、通常、物体の第4の状態と考えられる。ガスのイオン化に必要なエネルギーは、電磁波(高周波またはマイクロ波)によってもたらされる。プラズマは、中性分子、イオン、電子、ラジカル種(化学的高活性)および材料表面と反応する励起種からなる。プラズマ(plasmagen)ガスが酸素または窒素を含有する場合、これらの原子は、(コ)ポリマー表面と即座に反応し、これらに活性サイトを生じさせる。プラズマによる(コ)ポリマーの改質は、表面の架橋および機能化による、ラジカルおよび二重結合の形成によって表される。プラズマ処理は、普通は最外表面に限定され、与えられる表面粗さは制限される。
【0057】
いわゆる「コールド」プラズマおよびいわゆる「ホット」プラズマとの区別があり、これらはプラズマ中に含有される種のイオン化状態に関して互いに区別される。いわゆる「コールド」プラズマに関して、反応種のイオン化率は10−4未満であるが、いわゆる「ホット」プラズマに関しては10−4を超える。「ホット」および「コールド」という用語は、いわゆる「ホット」プラズマがいわゆる「コールド」プラズマよりもエネルギーが高いという事実による。本発明に従う方法の範囲内の前処理の場合、いわゆる「コールド」プラズマがより好適である。プラズマは、有利なことには、1つまたはいくつかのプラズマ(plasmagen)ガスによって生じる。プラズマ(plasmagen)ガスが少なくとも2つのガス混合物である場合、第1および第2のガスはそれぞれ、不活性ガスからなる群、および、空気および酸素からなる群から選択される。
【0058】
プラズマ処理の時間は、1秒〜5分、特に10〜60秒、とりわけ20〜40秒を含む。
本発明に従う方法の範囲内において、2つの処理工程間;工程(a)の前;工程(a)と(b)との間または工程(b)と(b)との間に、基材表面および/または基材を、同一または異なるすすぎ溶液を利用するすすぎまたは数回のすすぎに供する必要がある場合がある。
当業者に既知の任意のすすぎ溶液が使用されてもよい。有利なことには、このすすぎ溶液は、水、蒸留水、脱イオン水、ミリQ水、TDF4または水酸化ナトリウム、特に水酸化ナトリウムのような洗剤を0.01〜1Mを含む濃度で含有する水溶液から選択される。すすぎ溶液は、基材表面または基材と接触する場合、特に、撹拌器、磁性棒、超音波浴またはホモジナイザーを用いることによって撹拌されてもよい。各すすぎ工程は、1〜30分間、特に5〜20分間継続され得る。
【0059】
最後に、本発明は、基材の表面が、先に定義されるような本発明の方法によって得ることができる金属材料でコーティングされた基材に関する。
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、限定としてではなく例示として与えられる実施例を読むことにより、当業者にとってさらに明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の方法に従う無電解方法にて銅で金属化されたABSプレートにおけるサイクリックボルタンメトリーの図を示す。
【図2】本発明の方法に従う無電解方法にて銅で金属化されたABS−PCプレートにおけるサイクリックボルタンメトリーの図を示す。
【図3】本発明の方法に従う無電解方法にて銅で金属化されたPAプレートにおけるサイクリックボルタンメトリーの図を示す。
【図4】本発明の方法に従う無電解方法にて銅で金属化されたABSプレートにおけるサイクリックボルタンメトリーの図を示す(以降実施例II)。
【図5】本発明の方法に従う無電解方法にて銅で金属化されたABS−PCプレートにおけるサイクリックボルタンメトリーの図を示す(以降実施例III)。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0061】
I.アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)およびポリアミド(PA)のフェントン処理を介する金属化
この金属化方法は、3工程(フェントン処理/還元/無電解金属化)にて行われ、ポリマーを処理する前に、調製され、脱脂され、洗浄されるべきである。
【0062】
I.1.研磨
第1段階において、プレートは、エッジ効果、および、プレートの切断中に与えられる他のキズを最小限にするために、研磨に供される。
【0063】
I.2.すすぎ
第2段階において、プレートは、水と混合された産業用石鹸溶液TDF4(4mLのミリQ水について1mLのTDF4)を用いて、10分間超音波を用いてすすぐ。プレートは、次いでミリQ水を用いて、10分間超音波を用いてすすぐ。
【0064】
I.3.フェントン前処理
硫酸鉄(II)(6.961g,0.1mol)は、水中の50mLの10−3M硫酸に溶解させた。ポリマーのプレートは、この溶液中に浸す。次いで、水中の35%過酸化水素10mL(0.124mol)を滴下した。25分後、サンプルは、乾燥前にミリQ水ですすいだ。
【0065】
フェントン処理に従って処理された(「後」)または処理なしで(「未処理」)サンプル上に置いた2μlの水滴の接触角測定について得られた結果を、以降の表1に示す。
【表1】

接触角は明らかに低下する。表面は、その酸化のために高い親水性になっている。
IRスペクトルの分析を以降の表2に示す。
【表2】

【0066】
3600〜3200cm−1および1150〜1100cm−1でのバンドの出現は、C−OH結合の提供に特有である。ABSおよびABS−PCに関して、1700〜1640cm−1バンドは、ポリアクリロニトリルのニトリル基の酸化からのアミド基の出現を意味し得る。ポリアミドの範囲内において、1150〜1100および1700バンドは、未処理のポリマーのバンドと一致する。
フェントン処理前/後のABSプレートのXPS分析は、Fe2+/Fe3+の提供および酸素の提供による表面の強い酸化を示す。炭素シグナルに関連する原子比を以降の表3に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
I.4.第二鉄/第一鉄イオンの還元
ホウ化水素ナトリウムNaBH(0.316g,0.8×10−2mol)を、0.1Mの水酸化ナトリウム(NaOH)溶液25mL中に溶解する。この溶液は、水浴により80℃に加熱し、サンプルをそこに浸す。12分後、乾燥前にサンプルをミリQ水ですすいだ。
IR分析により、ポリマーに拘わらず、3600〜3100cm−1バンドおよび1700〜1640cm−1を有するフェントン後に得られる酸化の保護が明らかである。
【0069】
還元前/還元後のABSプレートのXPS分析はホウ素発生を除いて、すべての元素についてわずかな減少がみられた。XPSスペクトルによれば、これは酸化形態であり、ホウ化水素BH4−によるFe2+/Fe3+イオンの還元を確認する。これについて鉄は、XPS分析の前に空気および水中で酸化され、酸化形態で現れる。炭素シグナルに対する原子比を以降の表4に示す。
【表4】

【0070】
I.5.無電解銅金属化浴
サンプルは、以降の表5に記載される溶液中に浸され、水浴中にて40℃に加熱される:
【表5】

【0071】
15分後、サンプルを乾燥させる前に10分間超音波を用いてミリQ水ですすいだ。
赤外線分析により、異なるポリマーのピークの消失が明らかになる。
XPS分析は、金属銅層(その還元形態Cu)の存在を確認する。炭素シグナルに対する原子比を、以降の表6に示す。
【表6】

銅層はまた、裸眼で視認可能である。金属化後の炭素、窒素および酸素の存在は、金属化基材の最外表面における有機不純物の存在による。酸素はまた、分析前の銅層の空気を用いる酸化に起因し得る。
【0072】
I.6.電着による銅の堆積
金属層の存在を確認するために、銅を電着によって堆積させる。この技術は、導電性基材の存在下でのみ可能である。
故に、銅を用いる金属化に供されたABS、ABS−PCおよびPAプレートは、順に測定電極として使用した。電気化学システムは、飽和KClを用いるカロメル参照電極およびグラファイト製の対電極からなるように設置する。
【0073】
電極は10g/lのCuSO溶液中に浸漬させ、初期電位は約0.1Vであった。
30秒以内に−0.6Vまでの範囲のボルタンメトリーサイクルをシステムに課した。電圧が上昇する間、実験は約−0.45Vで停止した(図1、2および3)。
このサイクルは、測定電極にて銅の堆積を実証していた。事実、電圧が低下した場合に電流が増大し、銅が測定電極として作用するプレート上に堆積した。測定電極にて銅の還元が生じた。
銅堆積の確認はまた、視覚的な確認である。実際、電気化学によって堆積した銅層は、わずかにより均質な様相を有する。
【0074】
II.ABSプレートのフェントン処理によって達成される前処理を介する金属化。
この金属化方法を、4工程(酸化処理/フェントン処理/還元/無電解金属化)にて行い、ポリマーを処理する前に、調製され、脱脂され、洗浄されるべきである。
【0075】
II.1.研磨
第1の段階において、プレートは、エッジ効果およびプレートの切断中に提供される他のキズを最小限にするために研磨に供される。
【0076】
II.2.すすぎ
第2の期間において、プレートは、水と混合された産業用石鹸溶液TDF4(4mLのミリQ水について1mLのTDF4)を用いて、10分間超音波を用いてすすぐ。プレートは、次いでミリQ水を用いて、10分間超音波を用いてすすぐ。
【0077】
II.3.酸前処理
プレートは、60℃の温度にて、60%の硝酸溶液中に10分間、浸される。次いでプレートは、10分間超音波を用いて、(0.1M)NaOH溶液中ですすぎ、次いで10分間超音波を用いて、ミリQ水ですすぐ。
フェントン処理に従って処理された(「後」)または処理されていない(「未処理」)のサンプルに置いた2μlの水滴の接触角測定で得られた結果を、以降の表7に示す。
【表7】

【0078】
接触角は低下する。表面は、その酸化のため、より親水性になっており、表面粗さが増大している。
IRスペクトルの分析を以降の表8に示す。
【表8】

【0079】
3600〜3200cm−1および1660〜1610cm−1バンドの出現は、微量の水の存在によるものであり得る。
一方、1570〜1530cm−1および1320〜1280cm−1バンドは、カルボニル基、カルボキシレートタイプCOOの特徴を有する。これにより、表面酸化が確認される。
【0080】
II.4.フェントン前処理
硫酸鉄(II)(6.961g,0.1mol)を、水中の10−3M硫酸50mL中に溶解させた。ポリマーのプレートを、この溶液中に浸した。水中の10mL(0.124mol)の35%過酸化水素を、次いで滴下した。25分後、サンプルを乾燥する前にミリQ水ですすいだ。
フェントン処理に従って処理された(「フェントン後」)または処理前(「酸処理後」)のサンプル上に置いた2μlの水滴の接触角測定について得られた結果を、以降の表9に示す。
【0081】
【表9】

【0082】
接触角は明確に低下する。表面は、その酸化のために極めて親水性になっている。
IRスペクトルの分析を以降の表10に示す。
【表10】

【0083】
フェントン処理後の3600〜3200cm−1バンドの増幅および1150〜1100cm−1のバンドの出現は、C−OH結合の提供に特有である。1700〜1600cm−1でのバンドの出現および1320〜1280cm−1バンドの増幅は、ABSプレートの表面でのカルボニル基の存在を確認した。
【0084】
II.5.第一鉄/第二鉄イオンの還元
ホウ化水素ナトリウムNaBH(0.316g,0.8×10−2mol)は、0.1Mの水酸化ナトリウム(NaOH)溶液25mL中に溶解する。この溶液は、水浴により80℃に加熱し、サンプルをそこに浸す。12分後、サンプルは、乾燥前にミリQ水ですすいだ。
IR分析は、3600〜3200cm−1バンドおよび1700〜1640cm−1バンドを有するフェントン後に得られる酸化の保護が明らかである。
【0085】
II.6.銅無電解金属化浴
このサンプルを、還元剤としてホルムアルデヒドを用いる、市販の無電解金属化浴(MCopper 85,MacDermid)中に浸す。それでもなお、プレートをその中に48℃で10分間浸す。
10分後、サンプルを、乾燥前に10分間超音波を使用してミリQ水ですすぐ。
赤外線分析により、異なるポリマーのピークの消失が明らかになる。
銅層は裸眼で視認可能である。
【0086】
II.7.Scotch(登録商標)テープテスト
先にグラフトされた層の機械的強度を確認するために、接着テープを用いた試験を行った。それは、層への接着テープ片の接着、および、その層からの取り除きからなる。
堆積された層が接着剤で取り除かれる場合、機械的強度は不十分とみなされる。層は、接着剤に対して無反応のままである場合、機械的強度は良好であるとみなされる。
【0087】
使用された接着テープは、PROGRESSブランドの高性能の不可視の接着テープである。
この試験は、酸で前処理された部分および前処理されていない部分を金属化した後にABSプレートについて毎回行った。金属化は均質である。この試験の結果は、前処理された部分において良好な強度を示す。
【0088】
II.8.電着による銅の堆積
金属層の存在を確認するために、銅を電着によって堆積させた。この技術は、導電性基材の存在下でのみ可能である。
故に、銅金属化されたABSプレートを、測定電極として使用した。設置された電気化学システムは、飽和KClを有するカロメル参照電極およびグラファイト製対電極からなっていた。
【0089】
電極は10g/LのCuSO溶液中に浸し、初期電位は約0Vであった。
30秒以内で−1Vまでの範囲のボルタンメトリーサイクルをシステムに課した。電圧が上昇する間、実験は約−0.75Vで停止した(図4)。
このサイクルは、測定電極にて銅の堆積を実証していた。事実、電圧が低下した場合に電流が増大し、銅が測定電極として作用するプレート上に堆積した。測定電極で銅の還元が生じた。
銅堆積の確認はまた、視覚的な確認である。実際、電気化学によって堆積した銅層は、わずかにより均質な様相を有する。
【0090】
III.ABS−PCのフェントン処理を伴う前処理を介した金属化
この金属化方法を、4工程(酸化前処理/フェントン処理/還元/無電解金属化)にて行い、ポリマーを処理する前に、調製され、脱脂され、洗浄されるべきである。
【0091】
III.1.研磨
第1の段階において、プレートは、エッジ効果およびプレートの切断中に提供される他のキズを最小限にするために研磨に供される。
【0092】
III.2.すすぎ
第2の段階において、プレートは、水と混合された産業用石鹸溶液TDF4(4mLのミリQ水について1mLのTDF4)を用いて、10分間超音波を用いてすすぐ。プレートは、次いでミリQ水を用いて、10分間超音波を用いてすすぐ。
【0093】
III.3.酸前処理
プレートは、90℃の温度にて、30質量%のNaOH溶液中に10分間浸す。次いで、プレートは、10分間超音波を用いて、0.5MのHCl溶液中ですすぎ、次いで10分間超音波を用いてミリQ水ですすぐ。
フェントン処理に従って処理された(「後」)または処理されていない(「未処理」)のサンプルに置いた2μlの水滴の接触角測定で得られた結果を、以降の表11に示す。
【表11】

【0094】
接触角は低下する。表面は、その酸化のためにより親水性になっており、表面粗さが増大している。
IRスペクトルの分析を以降の表12に示す。
【表12】

【0095】
3600〜3200cm−1および1660〜1610cm−1バンドの出現は、微量の水の存在下によるものであり得る。一方、1740〜1700cm−1および1320〜1280cm−1バンドは、カルボニル基、カルボキシルCOOHタイプの特徴を有する。これにより表面酸化が確認された。一方、ポリカーボネートの特徴である1772cm−1のエステルバンドの消失が認められる。
【0096】
III.4.フェントン前処理
硫酸鉄(II)(6.961g,0.1mol)を、水中の10−3M硫酸50mL中に溶解させた。ポリマーのプレートは、この溶液中に浸した。水中の10mL(0.124mol)の35%過酸化水素を、次いで滴下した。25分後、サンプルを乾燥する前にミリQ水ですすいだ。
フェントン処理に従って処理された(「フェントン後」)または処理前(「塩基性処理後」)のサンプル上に置いた2μlの水滴の接触角測定で得られた結果を、以降の表13に示す。
【表13】

【0097】
接触角は明確に低下する。表面は、その酸化のために極めて親水性になっている。
IRスペクトルの分析を以降の表14に示す。
【表14】

【0098】
フェントン処理後の3600〜3200cm−1バンドの増幅および1150〜1100cm−1のバンドの出現は、C−OH結合の提供に特有である。1700〜1600cm−1でのバンドの出現および1320〜1280cm−1バンドの増幅は、ABS−PCプレートの表面でのカルボニル基の存在を確認した。
【0099】
III.5.第一鉄/第二鉄イオンの還元
ホウ化水素ナトリウムNaBH(0.316g,0.8×10−2mol)は、0.1Mの水酸化ナトリウム(NaOH)溶液25mL中に溶解する。この溶液は、水浴により80℃に加熱し、サンプルをそこに浸す。12分後、サンプルを、乾燥前にミリQ水ですすいだ。
IR分析により、3600〜3200cm−1バンドおよび1700〜1640cm−1バンドを有するフェントン後に得られる酸化の保護が明らかである。
【0100】
III.6.銅無電解金属化浴
このサンプルを、還元剤としてホルムアルデヒドを用いる、市販の無電解金属化浴(MCopper 85,MacDermid)中に浸す。銅浴の正確な組成は未知である。それでもなお、プレートをその中に48℃で10分間浸す。
10分後、サンプルを、乾燥前に10分間超音波を使用してミリQ水ですすいだ。
赤外線分析により、異なるポリマーのピークの消失が明らかになる。
銅層は裸眼で視認可能である。
【0101】
III.7.電着による銅の堆積
金属層の存在を確認するために、銅を電着によって堆積させる。この技術は、導電性基材の存在下でのみ可能である。
故に、銅を用いた金属化に供したABS−PCプレートは、測定電極として使用した。電気化学システムは、飽和KClを用いるカロメル参照電極およびグラファイト製の対電極からなるように設置した。
【0102】
電極は、10g/LのCuSO溶液中に浸漬させ、初期電位は約0Vであった。
30秒以内に−1Vまでの範囲のボルタンメトリーサイクルをシステムに課した。電圧が上昇する間、実験は約−0.75Vで停止した(図5)。
このサイクルは、測定電極での銅の堆積を実証していた。事実、電圧が低下した場合に電流が増大し、銅が測定電極として作用するプレート上に堆積した。測定電極にて銅の還元が生じた。
銅堆積の確認はまた、視覚的な確認である。実際、電気化学によって堆積した銅層は、わずかにより均質な様相を有する。
【0103】
[引用文献]
[1] Charbonnier, M., et al., “Plasma treatment process for palladium chemisorption onto polymers before electroless deposition”, Journal of the Electrochemical Society 1996, 143, (2), 472-480.

[2] Patent application CA 1 203 720 in the name of OMI Int. Corp. published on April 29 1986.

[3] Naudin, <<Nomenclature, classification et formules chimiques des polymeres>> Techniques de l’Ingenieur 1995: A3035.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の連続工程を含む金属材料による、(コ)ポリマー製基材の表面をコーティングするための方法:
a)少なくとも1つの該金属材料の前駆体の存在下で、フェントンタイプの化学反応によって、該表面を酸化処理に供する工程;
b)該前駆体を該金属材料に変換する工程。
【請求項2】
前記基材が、ナノ粒子、マイクロ粒子、ボタン、化粧品製品のプラグ、電子素子、ドアハンドル、家庭用電化製品、眼鏡、装飾品、車体素子からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(コ)ポリマーが、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)、ポリアミド(PA)、ポリアミン、ポリ(アクリル酸)、ポリアニリンおよびポリエチレンテレフタレート(PET)によって形成される群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(a)の酸化処理が、前記基材表面を、少なくとも1つの金属材料の前駆体および式ROORの化合物を含有する溶液と接触させることで構成され、式中Rは、水素、1〜15個の炭素原子を含むアルキル基、アシル基−COR’(R’は、1〜15個の炭素原子を含むアルキル基を表す)またはアロイル基−COAr(Arは、6〜15個の炭素原子を含む芳香族基を表す)を表すことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの金属材料の前駆体および式ROORの化合物を含む前記溶液が、酸溶液であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記金属材料の前駆体が、銅、銀、金、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムおよび白金イオンからなる群から選択されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(b)が、次で構成される連続サブ工程を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法:
)場合により、前記基材表面に存在する前記金属材料の前駆体を還元する工程;
)少なくとも1つの金属材料のイオンを含有する溶液中にて、場合により工程(b)後に還元された前記前駆体と接触させる工程。
【請求項8】
前記金属材料のイオンが、Ag、Ag2+、Ag3+、Au、Au3+、Co2+、Cu、Cu2+、Fe2+、Ni2+、Pd、および、Ptからなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基材の表面を、方法の前記工程(a)の前に、その親水性および/またはその粗さを増大できる処理に供し、該処理が研磨、摩耗、ピックリング浴を用いる化学処理、火炎処理、コロナ効果処理、および、プラズマ処理、ならびに、それらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ピックリング浴が、少なくとも1つの無機酸を含む酸水溶液、特にこの無機酸がクロム酸、硫酸、硝酸、次亜塩素酸、および、これらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−513726(P2013−513726A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542566(P2012−542566)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069411
【国際公開番号】WO2011/070167
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(510097644)コミッサリア ア ロンネルジー アトミック エ オ ゾンネルジー ザルテルナティーフ (33)
【Fターム(参考)】