説明

金属原子を含有する廃液の処理方法及び吸着剤

【課題】海、湖、河川等の水域に流出した放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の金属原子又はそれらを含む放射性物質が、広く拡散するのを効率よく防止することのできる放射性物質の拡散防止膜を提供する。
【解決手段】浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、放射性金属及び/又は放射性物質の吸着剤を含有することを特徴とする拡散防止膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質の拡散防止膜に関するものであり、特に放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の金属原子の吸着剤を有することにより効率よく放射性物質の拡散を防止することのできる拡散防止膜に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の放射性物質を扱う施設に事故が発生すると、周辺の海、湖、河川等の水域に多量の放射性物質が放出される場合がある。これらの放射性物質の多くは長い半減期を有しており、生態系に取り込まれ蓄積された場合、人間の健康に重大な悪影響を及ぼす。
【0003】
海、湖、河川等の水域に流出した放射性物質が広く拡散してしまうのを防ぐために、オイルフェンス、シルトフェンス等の拡散防止膜を用いることが有用である。しかしながら、水中に放出された多量の放射性物質を全て処理するには膨大な時間がかかり、その間、単に流出を防止する機能のみを有する膜で放射性物質が拡散するのを完全に防ぐことは現実的には不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、海、湖、河川等の水域に流出した放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の金属原子又はそれらを含む放射性物質が、広く拡散するのを効率よく防止することのできる放射性物質の拡散防止膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、浮体部とカーテン部とからなる拡散防止膜のカーテン部に、放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の吸着剤として、ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブ、フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物、チタン及びリン酸を含有する塩等の材料又は化合物を含有させることにより、海、湖、河川等の水域に流出した前記放射性金属又はそれらを含む放射性物質が広域に拡散してしまうのを効率よく防止できることを見出し、本発明に想到した。
【0006】
すなわち、本発明の拡散防止膜は、浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブを含有することを特徴とする。
【0007】
本発明の他の拡散防止膜は、浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を含有することを特徴とする。
【0008】
本発明のさらに他の拡散防止膜は、浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、(a)ダイヤモンド微粒子にフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子、及び/又は(b)カーボンナノチューブにフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合カーボンナノチューブを含有することを特徴とする。
【0009】
本発明のさらに他の拡散防止膜は、浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、(a)チタン又はジルコニウムと、(b)リン酸化合物と、(c)アルカリ金属、アルカリ士類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属とからなる塩を含有することを特徴とする。
【0010】
本発明のさらに他の拡散防止膜は、浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、ダイヤモンド微粒子に、(a)チタン又はジルコニウムと、(b)リン酸化合物と、(c)アルカリ金属、アルカリ士類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属とからなる塩を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明のさらに他の拡散防止膜は、浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、カーボンナノチューブに、(a)チタン又はジルコニウムと、(b)リン酸化合物と、(c)アルカリ金属、アルカリ士類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属とからなる塩を担持してなる複合カーボンナノチューブを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明のさらに他の拡散防止膜は、浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属又は遷移金属とからなる塩を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明のさらに他の拡散防止膜は、浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属又は遷移金属とからなる塩を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明のさらに他の拡散防止膜は、浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属又は遷移金属とからなる塩を担持してなる複合カーボンナノチューブを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の拡散防止膜は、放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の放射性金属又はそれらを含む放射性物質を吸着する能力を有しているため、前記放射性金属又は放射性物質が海、湖、河川等の水域に流出してしまった場合、本発明の拡散防止膜を用いることにより、それらの放射性金属又は放射性物質が広域に拡散してしまうのを効率よく防止できる。
【0016】
そのため、原子力発電所等の放射性物質を扱う施設に事故が発生した場合に、周辺の海、湖、河川等の水域に放出された多量の放射性物質により前記水域が広く汚染されるのを防止し、生態系への影響を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の拡散防止膜の一例を示す模式図である。
【図2】爆射法によりダイヤモンド微粒子を合成する際に使用する氷の容器の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1]拡散防止膜
本発明で用いる拡散防止膜は、浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の放射性金属及びそれらを含む放射性物質の吸着剤を含有する。放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の放射性金属及びそれらを含む放射性物質が、海、湖、河川等の水域に流出したときに、この拡散防止膜を、前記放射性金属及び放射性物質の流出箇所を取り巻くように、前記水域に設置することにより、前記放射性金属及び放射性物質が、広域に拡散してしまうのを防止することができるとともに、前記カーテン部に含有させた吸着剤により、前記放射性金属及び放射性物質を高い効率で吸着することができるので、前記放射性金属及び放射性物質による汚染が広がるのを効率よく防止することができる。
【0019】
(1)構造
拡散防止膜1は、図1に示すように、浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部2と、前記浮体部2に取り付けられたカーテン部3とからなる。カーテン部3は、実質的に放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の放射性金属及びそれらを含む放射性物質の吸着剤を含有し、前記放射性金属及び放射性物質の拡散を防止するシートからなる。カーテン部3は、その上端部が前記浮体部2に取り付けられており、水中で水底まで垂れ下がるような長さに調節されている。カーテン部3の底部には、カーテン部3が波や水流によってはためき、汚染物質が漏れ出すのを防止するために、おもり4を設けるのが好ましい。このような構成にすることにより、前記放射性金属及び放射性物質が拡散防止膜で囲んだ領域の外に流出してしまうのを防止することができる。
【0020】
(2)浮体部
浮体部2は、合成樹脂発泡体(発泡スチロール、塩化ビニル発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、硬質ポリウレタンフォーム等)からなる浮力材、気体を封入することにより浮体として機能する袋体からなる浮体、中空の合成樹脂製(塩化ビニル等)又は金属製(鋼管等)の浮体、又はこれらの組合せからなる。特に、合成樹脂発泡体、袋体からなる浮体、又はそれらの組合せが好ましい。
【0021】
浮体部2としては、例えば、円柱状に成形した発泡ポリスチレン製の部材に塩化ビニル製のカバーを被せたものを長手方向に断続的に接続した構造のものを用いることができる。前記カバーに前記カーテン部3を縫着して拡散防止膜を構成する。
【0022】
浮体部2には、図1に示すように、水底に沈められたアンカー5との間をつなぐ係留索6が接続されているのが好ましい。これによって拡散防止膜1が、水域の所定の位置に係留される。係留索6は、浮体部2の近くに設置したブイ7を介して浮体部2とアンカー5とを接続するのが好ましい。
【0023】
(3)カーテン部
本発明の拡散防止膜は、前記カーテン部に、放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の放射性金属又はそれらを含む放射性物質の吸着剤を含有する。前記吸着剤を含有する拡散防止膜は、前記の遮蔽による流出防止効果に加えて、前記吸着剤による前記放射性金属及び/又は放射性物質の吸着除去効果を有するので、前記放射性金属及び/又は放射性物質の拡散をより効果的に防止することができる。
【0024】
カーテン部3は、従来の汚濁拡散防止膜で用いられている可撓性の材料からなるシート状又は布状の膜からなるものが好ましく、材質についても、特に限定されず、合成樹脂製のもの、化学繊維製のもの、ゴム製のもの等が使用できる。本発明においては、カーテン部に含有させた前記放射性金属及び/又は放射性物質の吸着除去効果を有する吸着剤に高い効果を発揮させるため、化学繊維等からなる布状のものを用いるのが好ましい。布状の膜としては、織物、編み物、不織布等が使用でき、特に織物が好ましい。
【0025】
カーテン部3を構成する化学繊維としては、6,6-ナイロン、6-ナイロン、4,6-ナイロン等のナイロン(登録商標)繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維等からなるものが挙げられる。これらの繊維は、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0026】
(4)吸着剤
前記カーテン部に含有させる、放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の放射性金属及びそれらを含む放射性物質の吸着剤としては、
(i)ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブ、
(ii)フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物(複合塩A)、
(iii)ダイヤモンド微粒子にフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子(複合ダイヤモンド微粒子A)、
(iv)カーボンナノチューブにフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合カーボンナノチューブ(複合カーボンナノチューブA)、
(v)チタン又はジルコニウムと、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属とからなる塩(複合塩B)、
(vi)ダイヤモンド微粒子に、チタン又はジルコニウムと、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属とからなる塩を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子(複合ダイヤモンド微粒子B)、
(vii)カーボンナノチューブに、チタン又はジルコニウムと、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属とからなる塩を担持してなる複合カーボンナノチューブ(複合カーボンナノチューブB)、
(viii)リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属又は遷移金属とからなる塩(複合塩C)、
(ix)ダイヤモンド微粒子に、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属又は遷移金属とからなる塩を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子(複合ダイヤモンド微粒子C)、
(x)カーボンナノチューブに、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属又は遷移金属とからなる塩を担持してなる複合カーボンナノチューブ(複合カーボンナノチューブC)、又はこれらの組合せを用いることができる。
【0027】
これらの吸着剤は、その種類、カーテン部を構成するシート又は布の材質、構造及び含有させる方法等にもよるが、前記シート又は布にできるだけ多く含有させるのが好ましい。具体的には、吸着剤の合計量が、シート又は布1m2当たり0.1 g以上であるのが好ましく、1 g以上であるのがより好ましく、10 g以上であるのが最も好ましい。0.1 g未満では、放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の放射性金属及びそれらを含む放射性物質の除去効率が不十分となる場合がある。
【0028】
カーテン部に吸着剤を含有させる方法としては、カーテン部を構成する材料を製造する際に混合する方法、繊維に付着させた後で布を形成する方法、シート状又は布状の膜に付着させる方法等が挙げられる。シート状又は布状の膜に付着させる場合、その両面に付着させるのが好ましい。
【0029】
(i) ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブ
ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブは、高い比表面積を有し、その表面にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基を有するため、金属原子、特にセシウム、ストロンチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属を選択的に吸着することができる。従って、放射性セシウム(134Cs、137Cs等)、放射性ストロンチウム等の放射性金属及びそれらを含む放射性物質の吸着剤として好適である。
【0030】
金属元素は、ダイヤモンド微粒子及びカーボンナノチューブ表面のカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基に吸着されるので、より多くの金属元素をダイヤモンド微粒子及びカーボンナノチューブ表面に吸着させるためには、酸化処理等の方法により表面をより多くのカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基で修飾(親水化)したダイヤモンド微粒子及びカーボンナノチューブを用いるのが好ましい。
【0031】
ダイヤモンド微粒子及びカーボンナノチューブは、それぞれ単独で使用しても良いし、混合して使用しても良い。また他の吸着剤と混合して使用しても良い。ダイヤモンド微粒子及びカーボンナノチューブを混合して使用する他の吸着剤は、ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブの吸着除去性能を阻害しないものであればどのようなものを使用してもよい。ダイヤモンド微粒子及びカーボンナノチューブを併用する場合は、それらの混合比率はどのような値でも良いが、ダイヤモンド微粒子を過剰にするのが好ましい。
【0032】
(a) ダイヤモンド微粒子
ダイヤモンド微粒子としては、表面積が大きいこと、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が粒子表面に比較的多く存在すること、及び前記化学修飾の容易さから、爆射法で得られたナノダイヤモンドを用いるのが好ましい。爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンドは、ナノサイズのダイヤモンド微粒子の表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有しており、このまま使用することも可能であるが、酸化処理を施すことにより粒子表面のグラファイトを一部除去するとともに、その表面をカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基で修飾して使用するのが好ましい。
【0033】
未精製のナノダイヤモンドは、約2.55 g/cm3の比重を有し、200〜250 nm程度のメジアン径(動的光散乱法)を有する。この未精製のナノダイヤモンドを酸化処理することにより、粒子表面のグラファイト系炭素が除去され、ダイヤモンド含率の高いダイヤモンド微粒子が得られる。酸化処理することにより精製したダイヤモンド微粒子は2〜10 nm程度のダイヤモンドの一次粒子からなるメジアン径150〜250 nm程度の二次粒子である。本発明で使用するダイヤモンド微粒子は、その表面積を大きくするため、さらにメディア分散等の方法によりできるだけ凝集を解いて使用するのが好ましく、そのメジアン径は10〜200 nmであるのが好ましく、20〜150 nmであるのがより好ましい。
【0034】
ダイヤモンド微粒子は、2.55〜3.48 g/cm3の比重を有するのが好ましい。ダイヤモンド微粒子の比重は、ナノダイヤモンドの精製度(グラファイト系炭素の除去率)に伴って増加するので、比重から粒子中のダイヤモンド含率(粒子表面に存在するグラファイト系炭素の量)を求めることができる。すなわち、比重が2.55 g/cm3の場合のダイヤモンド含率は24体積%、比重が3.48 g/cm3の場合のダイヤモンド含率は98体積%である。
【0035】
ダイヤモンド微粒子の比重が2.55 g/cm3未満、すなわち酸化処理を行わない場合であっても、その表面にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基を有しているが、さらに酸化処理を施すことによって、それらの数を増加させることができる。また過剰に酸化処理を施した場合、ナノダイヤモンドのシェル部分のグラファイト系炭素がほとんど除去されるため、逆にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が少なくなってしまう。その結果、放射性金属及び放射性物質を吸着する能力が不十分となる。従って比重は3.48 g/cm3を越えない程度であるのが好ましい。前記比重は、3.0 g/cm3(ダイヤモンド84体積%)以上3.46 g/cm3(ダイヤモンド97体積%)以下であるのがより好ましく、3.38 g/cm3(ダイヤモンド90体積%)以上3.45 g/cm3(ダイヤモンド96体積%)以下であるのが最も好ましい。なおナノダイヤモンド中のダイヤモンドの体積%は、ダイヤモンドの比重3.50 g/cm3及びグラファイトの比重2.25 g/cm3を用いて、ナノダイヤモンドの比重から算出した値である。
【0036】
(b)カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは、グラファイトを筒状に巻いた形状で、1〜1500 nmの直径、及び数nmから1 mm程度の長さを有する炭素材料である。本発明で用いるカーボンナノチューブの形状は、特に限定されないが、直径1〜1000 nmが好ましく、5〜500 nmがより好ましく、10〜300 nmが最も好ましく、長さは10 nmから5 μmが好ましく、20 nmから1 μmがより好ましい。カーボンナノチューブには単層のもの、多層構造になったもの、カップスタック状のもの等があるが、本発明に使用するカーボンナノチューブは、表面積が大きいこと、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が粒子表面に比較的多く存在すること、及び前記化学修飾の容易さから、カップスタック型のものを用いるのが好ましい。
【0037】
カップスタック型カーボンナノチューブは、底のないカップ形状をなす炭素網層が数個〜数百個積層した炭素繊維であり、繊維の内外壁に炭素網層の端面が露出した構造を有している。炭素網層の端面はカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が多く活性度が高いと考えられるため、カップスタック型カーボンナノチューブは多くの放射性金属及び放射性物質を吸着することができる。
【0038】
(ii)複合塩A
フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物(複合塩A)は、金属原子に対して高い吸着能を有し、特にセシウムを選択的に吸着するので、放射性セシウムに対する吸着剤として好適である。フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物は、それぞれフェロシアン化物イオン([Fe(II)(CN)6]4-)と金属との塩及びフェリシアン化物イオン([Fe(III)(CN)6]3-)と金属との塩であり、前記金属としてはアルカリ土類金属以外の金属を含むのが好ましく、遷移金属又は典型金属を含むのが好ましい。遷移金属及び典型金属以外の金属としてアルカリ金属を含んでいてもよい。
【0039】
前記金属としては、Ag、Zn、Cd、Cu、Co、Ni、Mn、Fe、Ti、Zr、V、Mo、W、Uからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、特にCo、Ni、Zn、Cu、Cd、Fe、Ti及びZrからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。アルカリ金属としては、Li、K又はNaが好ましい。好ましいフェロシアン化金属化合物としては、K2Co[Fe(CN)6]、Na2Ni[Fe(CN)6]、K2Zn3[Fe(CN)6]2、K2Cu3[Fe(CN)6]2、Cu2[Fe(CN)6]、Zn2[Fe(CN)6]、Cd2[Fe(CN)6]、Ni2[Fe(CN)6]、Fe4[Fe(CN)6]3、Ti[Fe(CN)6]等を挙げることができ、好ましいフェリシアン化金属化合物としては、Zn3[Fe(CN)6]2、Fe[Fe(CN)6]、Ni3[Fe(CN)6]2、Cu3[Fe(CN)6]2等を挙げることができる。
【0040】
(iii)複合ダイヤモンド微粒子A
前記ダイヤモンド微粒子にフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物(複合塩A)を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子(複合ダイヤモンド微粒子A)は、金属原子に対して高い吸着能を有し、特にセシウムを選択的に吸着するので、放射性セシウムに対する吸着剤として好適である。
【0041】
ダイヤモンド微粒子に対するフェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物の合計の担持量は、ダイヤモンド微粒子1g当たり0.001 mmol以上であるのが好ましく、0.01 mmol以上であるのがより好ましい。0.001 mmol未満では、放射性セシウムを十分に吸着させることができず、十分な除去効率が得られない。
【0042】
(iv) 複合カーボンナノチューブA
カーボンナノチューブにフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物(複合塩A)を担持してなる複合カーボンナノチューブ(複合カーボンナノチューブA)は、金属原子に対して高い吸着能を有し、特にセシウムを選択的に吸着するので、放射性セシウムに対する吸着剤として好適である。
【0043】
カーボンナノチューブに対するフェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物の合計の担持量は、カーボンナノチューブ1g当たり0.001 mmol以上であるのが好ましく、0.01 mmol以上であるのがより好ましい。0.001 mmol未満では、放射性セシウムを十分に吸着させることができず、十分な除去効率が得られない。
【0044】
(v)複合塩B
チタン又はジルコニウムと、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属とからなる塩(複合塩B)は、金属原子、特にストロンチウム等のアルカリ土類金属を吸着するための吸着剤として高い効果を発揮する。
【0045】
複合塩Bは、水酸化チタン又は水酸化ジルコニウムと、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の水溶性金属塩とを混合することにより生成することができる。
【0046】
(a)水溶性金属塩
水溶性金属塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属のハロゲン化物、硝酸塩及び硫酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。前記アルカリ金属としては、ナトリウム又はカリウムが好ましく、前記アルカリ土類金属としては、バリウムが好ましく、前記遷移金属としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅又は亜鉛が好ましい。水溶性金属塩は、塩化バリウム、硝酸バリウム等のバリウム塩が最も好ましい。
【0047】
(b)リン酸化合物
リン酸化合物としては、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、リン酸アミノ塩、無水リン酸塩、三リン酸塩、四リン酸塩、縮合リン酸塩、フィチン酸塩及びその誘導体等が使用できるが、オルソリン酸塩、オルソリン酸水素塩、メタリン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、縮合リン酸塩が好ましく、特に縮合リン酸塩及び/又はメタリン酸塩、もしくはオルソリン酸塩及び/又はオルソリン酸水素塩を使用するのが好ましい。縮合リン酸塩とは、オルソリン酸(H3PO4)の脱水縮合によって得られた酸の塩であり、特に限定はしないが、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩及びテトラポリリン酸塩が好ましい。また、これらの縮合リン酸塩と、メタリン酸塩及び/又はフィチン酸塩との組合せが好ましい。
【0048】
リン酸化合物には金属を含んでいても良く、含まれる金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及びAl等が好ましい。アルカリ金属としては、Na及びKが好ましく、アルカリ土類金属としては、Mgが好ましく、遷移金属としては、Fe及びZnが好ましい。
【0049】
リン酸化合物の使用例としては、メタリン酸塩とポリリン酸塩との組合せが好ましく、特にピロリン酸ナトリウムとメタリン酸塩との組合せが好ましい。ピロリン酸塩及びメタリン酸塩の比率は、限定されないが、ピロリン酸/メタリン酸のモル比で、1/10〜10/1の範囲が好ましく、1/2〜5/1の範囲がより好ましい。
【0050】
リン酸化合物は、前記水溶性金属塩に対して、1/10当量以上使用するのが好ましく、1当量以上100当量以下で使用するのがより好ましく、10当量以上50当量以下で使用するのが最も好ましい。
【0051】
(c)水酸化チタン又は水酸化ジルコニウム
水酸化チタン又は水酸化ジルコニウムは、塩化チタン(IV)又は塩化ジルコニウム(IV)の水溶液に、アンモニア水又は水酸化ナトリウム水溶液を加えpH7以上にした状態で得られるものを使用するのが好ましい。
【0052】
水酸化チタン又は水酸化ジルコニウムは、前記リン酸化合物に対して、1/10当量以上使用するのが好ましく、1当量以上100当量以下で使用するのがより好ましく、10当量以上50当量以下で使用するのが最も好ましい。
【0053】
(vi)複合ダイヤモンド微粒子B
ダイヤモンド微粒子に、チタン又はジルコニウムと、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属とからなる塩(複合塩B)を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子(複合ダイヤモンド微粒子B)は、廃液中の金属原子、特にストロンチウムを吸着するための吸着剤として高い効果を発揮する。
【0054】
前記複合ダイヤモンド微粒子Bは、水酸化チタン又は水酸化ジルコニウムと、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の水溶性金属塩と、ダイヤモンド微粒子とを混合することにより得ることができる。前記水酸化チタン又は水酸化ジルコニウム、前記リン酸化合物、前記水溶性金属塩は、複合塩Bを作製するのに用いたものと同じであり、それらの使用量も複合塩Bと同様で良い。
【0055】
ダイヤモンド微粒子は、前述したものと同じものを使用することができ、前記水溶性金属塩に対して、1/1000倍(質量)以上添加するのが好ましく、1/100倍(質量)以上100倍(質量)以下で添加するのがより好ましく、1/10倍(質量)以上50倍(質量)以下で添加するのが最も好ましい。
【0056】
(vii)複合カーボンナノチューブB
カーボンナノチューブに、チタン又はジルコニウムと、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属とからなる塩(複合塩B)を担持してなる複合カーボンナノチューブ(複合カーボンナノチューブB)は、廃液中の金属原子、特にストロンチウムを吸着するための吸着剤として高い効果を発揮する。
【0057】
前記複合カーボンナノチューブBは、水酸化チタン又は水酸化ジルコニウムと、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の水溶性金属塩と、カーボンナノチューブとを混合することにより得ることができる。水酸化チタン又は水酸化ジルコニウム、リン酸化合物、前記水溶性金属塩は、複合塩Bを作製するのに用いたものと同じであり、それらの使用量も複合塩Bと同様で良い。
【0058】
カーボンナノチューブは、前述したものと同じものを使用することができ、前記水溶性金属塩に対して、1/1000倍(質量)以上添加するのが好ましく、1/100倍(質量)以上100倍(質量)以下で添加するのがより好ましく、1/10倍(質量)以上50倍(質量)以下で添加するのが最も好ましい。
【0059】
(viii) 複合塩C
リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属又は遷移金属とからなる塩(複合塩C)は、廃液中の金属原子、特にストロンチウム等のアルカリ土類金属を吸着するための吸着剤として高い効果を発揮する。
【0060】
前記吸着剤は、リン酸化合物と、前記アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の水溶性塩とを混合することにより生成することができる。
【0061】
(1)水溶性金属塩
水溶性金属塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属のハロゲン化物、硝酸塩及び硫酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましく、前記アルカリ金属としては、カリウム、ルビジウム又はセシウムが好ましく、前記アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムが好ましく、前記遷移金属としては、鉄、コバルト、ニッケル又は銅が好ましい。水溶性金属塩は、特にアルカリ土類金属の塩が好ましく、中でも塩化バリウム、硝酸バリウム等のバリウム塩が最も好ましい。
【0062】
(2)リン酸化合物
リン酸化合物としては、リン酸塩、リン酸アミノ塩、無水リン酸塩、三リン酸塩、四リン酸塩、縮合リン酸塩等が使用できるが、リン酸塩、リン酸水素塩及び縮合リン酸塩が好ましく、特に縮合リン酸塩を単独で、もしくはリン酸塩及び/又はリン酸水素塩と組み合わせて使用するのが好ましい。縮合リン酸塩とは、オルソリン酸(H3PO4)の脱水縮合によって得られた酸の塩であり、特に限定はしないが、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩及びメタリン酸塩が好ましい。メタリン酸塩[(PO3)n]の中でも、特に低級ポリリン酸塩(n=6以下)が好ましく、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩がより好ましく、特にトリポリリン酸塩が好ましい。
【0063】
リン酸化合物には金属を含んでいても良く、含まれる金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及びAl等が好ましい。アルカリ金属としては、Na及びKが好ましく、アルカリ土類金属としては、Mg及びCaが好ましく、遷移金属としては、Fe及びZnが好ましい。
【0064】
好ましいリン酸化合物の使用例としては、リン酸水素塩とポリリン酸との組合せが好ましく、特にリン酸水素二ナトリウムとトリポリリン酸との組合せが好ましい。リン酸水素塩及びポリリン酸の比率は、限定されないが、リン酸水素塩/ポリリン酸のモル比で、1/10〜10/1の範囲が好ましく、1/2〜5/1の範囲がより好ましい。
【0065】
リン酸化合物は、前記水溶性金属塩に対して、1/10当量以上使用するのが好ましく、1当量以上100当量以下で使用するのがより好ましく、10当量以上50当量以下で使用するのが最も好ましい。
【0066】
(ix) 複合ダイヤモンド微粒子C
ダイヤモンド微粒子に、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属又は遷移金属とからなる塩(複合塩C)を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子(複合ダイヤモンド微粒子C)は、廃液中の金属原子、特にストロンチウムを吸着するための吸着剤として高い効果を発揮する。
【0067】
複合ダイヤモンド微粒子Cは、リン酸化合物と、水溶性金属塩と、ダイヤモンド微粒子とを混合することにより生成することができる。前記リン酸化合物、前記水溶性金属塩は、複合塩Cを作製するのに用いたものと同じであり、それらの使用量も複合塩Cと同様で良い。
【0068】
ダイヤモンド微粒子は、前述したものと同じものを使用することができ、前記水溶性金属塩に対して、1/1000倍(質量)以上添加するのが好ましく、1/100倍(質量)以上100倍(質量)以下で添加するのがより好ましく、1/10倍(質量)以上50倍(質量)以下で添加するのが最も好ましい。
【0069】
(x) 複合カーボンナノチューブC
カーボンナノチューブに、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属又は遷移金属とからなる塩(複合塩C)を担持してなる複合カーボンナノチューブ(複合カーボンナノチューブC)は、廃液中の金属原子、特にストロンチウムを吸着するための吸着剤として高い効果を発揮する。
【0070】
複合カーボンナノチューブCは、リン酸化合物と、水溶性金属塩と、カーボンナノチューブとを混合することにより生成することができる。前記リン酸化合物、前記水溶性金属塩は、複合塩Cを作製するのに用いたものと同じであり、それらの使用量も複合塩Cと同様で良い。
【0071】
カーボンナノチューブは、前述したものと同じものを使用することができ、前記水溶性金属塩に対して、1/1000倍(質量)以上添加するのが好ましく、1/100倍(質量)以上100倍(質量)以下で添加するのがより好ましく、1/10倍(質量)以上50倍(質量)以下で添加するのが最も好ましい。
【0072】
[2]製造方法
(1)ダイヤモンド微粒子
(a) 爆射法
ダイヤモンド微粒子は公知の方法で作製することができる。特に、本発明の目的には爆射法によって得られたダイヤモンド微粒子が好ましい。爆射法によるダイヤモンド微粒子の合成は、水及び/又は氷の存在下で爆薬を爆発させて行うウエット法、水及び/又は氷を使用しないで空冷するドライ法等があるが、本発明ではどの方法を採用しても良い。
【0073】
ウエット法としては、例えば、氷でできた容器中に充填した爆薬[例えば、TNT(トリニトロトルエン)/HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)=50/50]を、耐圧容器のほぼ中央部に配置し、前記耐圧容器の壁面に水を流しながら爆裂させる方法を挙げることができる。この方法において、反応生成物としての未精製のダイヤモンドは容器中の水中から回収する。ウエット法においては、水及び/又は氷中にあらかじめ水溶性の還元剤(酸化防止剤)を含有させて爆発を行うのが好ましい。前記水溶性の還元剤としては、ヒドラジン類、ヘキサメチレンテトラアミン、尿素、アンモニア、アセトニトリル、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、ハイドロキノン、エリソルビン酸ナトリウム、カテキン、ヒドラジン、シュウ酸、ギ酸等が挙げられる。
【0074】
爆薬としては公知の有機系爆薬を用いることができる。有機系爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)、トリニトロベンゼン(TNB)、シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、テトラニトロメチルアニリン(テトリル)、トリアミノトリニトロベンゼン(TATB)、ジアミノトリニトロベンゼン(DATB)、ヘキサニトロスチルベン(HNS)、ヘキサニトロアゾベンゼン(HNAB)、ヘキサニトロジフェニルアミン(HNDP)、ピクリン酸、ピクリン酸アンモニウム、ベンゾトリアゾール(TACOT)、エチレンジニトラミン(EDNA)、ニトログアニジン(NQ)、ペンタエリスリトールテトラナイトレート(ペンスリット)、ベンゾトリフルオキサン(BTF)等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用する。特に、RDX(60%)とTNT(40%)との混合爆薬として知られているコンポジションB等を使用するのが好ましい。
【0075】
これらの有機系爆薬は、炭素原子含有率が15質量%以上、好ましくは20〜35質量%、密度が1.5 g/cc以上、好ましくは1.6 g/cc以上、爆速は7000 m/s以上、好ましくは7500 m/s以上であり、酸素バランスが負、好ましくは-0.2〜-0.6であり、爆射圧が18 GPa以上、好ましくは20〜30 GPa、爆射温度が3000 K以上、好ましくは3000〜4000 Kである。そのため、爆薬中の炭素原子を効率よくダイヤモンドに転換することができ、また酸素バランスが負であることから爆発時にダイヤモンドが酸化されて収率を低下させることがない。
【0076】
前記爆射法は、Science, Vol. 133, No.3467(1961), pp1821-1822、特開平1-234311号、特開平2-141414号、Bull. Soc. Chem. Fr. Vol. 134(1997), pp. 875-890、Diamond and Related materials Vol. 9(2000), pp861-865、Chemical Physics Letters, 222(1994), pp. 343-346、Carbon, Vol. 33, No. 12(1995), pp. 1663-1671、Physics of the Solid State, Vol. 42, No. 8 (2000), pp. 1575-1578、K. Xu. Z. Jin, F. Wei and T. Jiang, Energetic Materials, 1, 19(1993)、特開昭63-303806号、特開昭56-26711報、英国特許第1154633号、特開平3-271109号、特表平6-505694号(WO93/13016号)、炭素, 第22巻, No. 2, 189〜191頁(1984)、Van Thiei. M. & Rec., F. H., J. Appl. Phys. 62, pp. 1761〜1767 (1987)、特表平7-505831号 (WO94/18123号)、米国特許第5861349号、特開2006-239511号及び特開2003-146637号等に記載の方法を用いることができる。
【0077】
(b)酸化処理
未精製のダイヤモンドの酸化処理方法としては、(i) 過塩素酸、重クロム酸、硝酸等の酸化剤共存下で高温高圧処理する方法(酸化処理A)、(ii)水及び/又はアルコールからなる超臨界流体中で処理する方法(酸化処理B)、(iii)水及び/又はアルコールからなる溶媒に酸素を共存させて、前記溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力で処理する方法(酸化処理C)、又は(iv)375〜630℃で酸素を含む気体により処理する方法(酸化処理D)が挙げられる。これらの酸化処理は、単独で行ってもよいし、組み合わせて行っても良い。酸化処理を組み合わせる場合は、爆射法で得られた未精製のダイヤモンドにまず酸化処理Aを施し、さらに酸化処理B〜Cのいずれかを施すのが好ましい。
【0078】
爆射法で得られた未精製のダイヤモンドに酸化処理Aを施すことによりグラファイト相の一部が除去されたナノダイヤモンド(グラファイト-ダイヤモンド微粒子)が得られ、このグラファイト-ダイヤモンド微粒子に酸化処理B〜Cのいずれかの処理を施すことにより前記グラファイト相をさらに除去することができる。粒子表面をカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基で修飾するために、酸化処理Aで使用する酸化剤としては高い酸化力を有するものが好ましい。具体的には、過塩素酸、重クロム酸又は硝酸が好ましい。
【0079】
(c)メディア分散処理
爆射法により得られた未精製のダイヤモンド、及び前記酸化処理を施したナノダイヤモンドの動的光散乱法で求めたメジアン径は150〜250 nmである。これらの粒子は、前述したように、メジアン径2〜10 nm程度のダイヤモンド一次粒子が強固に凝集した凝集体である。凝集がより少ないダイヤモンド微粒子を得るために、未精製又は前記酸化処理を施したダイヤモンド微粒子をビーズミル等の公知のメディア分散法により粉砕するのが好ましい。ビーズミルによる分散は、ジルコニアビーズを使用するのが好ましい。未精製又は前記酸化処理を施したダイヤモンド微粒子をメディア分散することにより、メジアン径を100 nm以下にするのが好ましく、50 nm以下にするのがより好ましく、30 nm以下にするのが最も好ましい。
【0080】
ビーズミルによる分散は市販の装置を用いて行うことができる。連続的に分散液を供給しながら、ビーズによる粉砕を行うことができる装置を使用するのが好ましく、例えば0.1 mm径のジルコニアビーズを0.15 Lのベッセルに充填し、10 m/s程度の周速で回転子を回転させながら、5%程度の前記ダイヤモンド微粒子の水分散物を0.12 L/minで供給し粉砕する。さらに細かく分散させたいときは、0.05 mm径のジルコニアビーズを用いてもよい。
【0081】
(2)カーボンナノチューブ
カップスタック型カーボンナノチューブは、市販のもの、国際公開第2008/004347号、特開2003-147644号、Qingfeng Liu et al. “Synthesis, Purification and Opening of Short Cup-Stacked Carbon Nanotubes”, Journal of Nanoscience and Nanotechnology, vol. 9, 4554-4560, 2009等に記載のものを用いることができる。カップスタック型カーボンナノチューブの製造法の一例を以下に説明するが、本発明はこの方法に限定されるものではない。
【0082】
カップスタック型カーボンナノチューブは、CoO-A1203系の触媒を用いて合成することができる。CoO-A1203系の触媒は、硝酸コバルトと硝酸アルミニウムとを加熱して熱分解し、得られた反応物を粉砕して作製する。合成触媒の組成はCoO:A1203=80:20〜40:60(質量比)であるのが好ましい。カップスタック型カーボンナノチューブは、前記合成触媒を銅製の容器に配置し、約650℃で、触媒に向けてプロパン/ブタンの混合ガスを流すことによって合成することができる。得られたカップスタック型カーボンナノチューブは、塩酸処理によってアモルファスカーボン及び合成触媒を溶解除去し、さらに前述のダイヤモンド微粒子と同様にして酸化処理を施し、その表面に親水基を修飾するのが好ましい。
【0083】
(3) 複合ダイヤモンド微粒子A及び複合カーボンナノチューブAの製造
フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物が担持してなる複合ダイヤモンド微粒子Aは、ダイヤモンド微粒子を分散した分散液に、水溶性の金属塩(例えば、FeCl3等の金属の塩化物)を混合し、ダイヤモンド微粒子と金属との塩を形成した後、水溶性フェロシアン化物及び/又は水溶性フェリシアン化物を添加することによって得ることができる。
【0084】
フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物が担持してなる複合カーボンナノチューブAは、カーボンナノチューブを分散した分散液に、水溶性の金属塩(例えば、FeCl3等の金属の塩化物)を混合し、カーボンナノチューブと金属との塩を形成した後、水溶性フェロシアン化物及び/又は水溶性フェリシアン化物を添加することによって、を得ることができる。
【0085】
これらの方法により、ダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブ表面のカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基に金属を介してフェロシアン化物及び/又はフェリシアン化物が担持される。
【0086】
前記水溶性の金属塩と水溶性フェロシアン化物及び/又は水溶性フェリシアン化物との添加順は逆であっても同様に、複合ダイヤモンド微粒子A又は複合カーボンナノチューブAを得ることができるが、水溶性の金属塩を先に添加する方が効率よく反応が進むので好ましい。
【0087】
水溶性の金属塩は、遷移金属又は典型金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の化合物であり、特に塩化物が好ましい。これらの水溶性の金属塩を添加することにより、ダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブ表面のカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基と遷移金属又は典型金属との塩を形成する。遷移金属又は典型金属としては、Ag、Zn、Cd、Cu、Co、Ni、Mn、Fe、Ti、Zr、V、Mo、W、U等が好ましく、特にCo、Ni、Zn、Cu、Cd、Fe、Ti及びZrが好ましい。水溶性の金属塩としては、FeCl3、CoCl2、ZnCl2、CuCl2、NiCl2等が好ましい。
【0088】
水溶性フェロシアン化物としては、フェロシアン化リチウム(Li4[Fe(CN)6])、フェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])、フェロシアン化ナトリウム(Na4[Fe(CN)6])等を用いるのが好ましく、水溶性フェリシアン化物としては、フェリシアン化リチウム(Li3[Fe(CN)6])、フェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])、フェリシアン化ナトリウム(Na3[Fe(CN)6])等を用いるのが好ましい。
【0089】
複合ダイヤモンド微粒子A及び複合カーボンナノチューブAに、さらに前述のメディア分散処理を施すのが好ましい。メディア分散処理により、フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持する処理によって凝集したダイヤモンド微粒子又はカーボンナノチューブを再分散させ、その表面積を増やし、セシウムの吸着能を増加させることができる。さらに超音波による分散、ホモジナイザー、アトライター、ボールミル等を併用しても良い。
【実施例】
【0090】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0091】
実施例1
(1)ナノダイヤモンドの作製
TNT(トリニトロトルエン)とRDX(シクロトリメチレントリニトラミン)を40/60の比で含む0.65 kgの爆薬10を、脱気した水を凍らせて形成した氷の容器12aに充填し(図2(a))、同じく脱気した水を凍らせて形成した氷の容器12bで蓋をした(図2(b))。前記爆薬10には、起爆用爆薬及び電気雷管を取り付けた。氷の重さは容器12a,12b合わせて15 kgであった。
【0092】
この爆薬10を充填した氷の容器12a,12bを、3 m3の耐圧性容器内に銅線で吊り下げ、耐圧性容器内の空気を窒素と置換した。爆薬を起爆するための電気雷管への電流は前記銅線を通して供給した。耐圧性容器内は1気圧であり、酸素濃度は4容量%であった。耐圧性容器の上部から内壁全体に水をかけながら氷の容器12a,12bに充填した爆薬10を爆発させた。
【0093】
5分間静置した後、前記氷の容器12a,12bに充填した爆薬10を再度同様にして設置し、耐圧性容器内の窒素置換の操作は行わないで二度目の爆発を行った。ただし、氷の容器12a,12bに充填した爆薬10を設置する際には、窒素を耐圧性容器に供給しながら素早く作業を行った。
【0094】
二度目の爆発後、耐圧性容器の上蓋を開け、水で耐圧性容器の内壁面を洗浄しながら黒色液状の爆発生成物(未精製のナノダイヤモンド)を回収し、加熱乾燥し、未精製のナノダイヤモンド粉末を得た。この未精製のナノダイヤモンドの収率は使用した爆薬量に対して11質量%であり、比重は2.55 g/cm3、メジアン径(動的光散乱法)は220 nmであった。この未精製のナノダイヤモンドは、比重から計算して、76体積%のグラファイト系炭素と24体積%のダイヤモンドからなっていると推定された。この未精製のナノダイヤモンドは、ラマンスペクトルにおける1,330±10 cm-1のピーク強度Iaと、1,610±100 cm-1のピーク強度Ibとの比が0.86であった。
【0095】
得られた未精製のナノダイヤモンドを60質量%硝酸水溶液と混合し、160℃、14気圧、20分の条件で酸化性分解処理を行った後、130℃、13気圧、1時間で酸化性エッチング処理を行った。酸化性エッチング処理により、未精製のナノダイヤモンドからグラファイトが一部除去された粒子が得られた。この粒子を、アンモニアを用いて、210℃、20気圧、20分還流し中和処理した後、自然沈降させデカンテーションにより35質量%硝酸での洗浄を行い、さらにデカンテーションにより3回水洗し、遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、酸化処理したナノダイヤモンドの粉末を得た。この酸化処理したナノダイヤモンドの粉末の比重は3.38 g/cm3であり、メジアン径は130 nm(動的光散乱法)であった。比重から計算して、90体積%のダイヤモンドと10体積%のグラファイト系炭素からなっていると推定された。
【0096】
(2)不織布の作製
メルトブロー法(メルトフローレート(MFR)が15g/10分の条件)により、ポリプロピレンの溶融樹脂及び高温ジェット気流を水平方向に吹き出し、ドラムコンベアーの上方で繊維を捕集するようドラムコンベアーの高さを設定し、片面部の充填率が17%で、他の片面部の充填率が8%、目付120 g/m2、厚み1.1 mm、通気度65 cc/cm2/sec、平均繊維径15μmの不織布を得た。
【0097】
(3)ダイヤモンドを含有する不織布の作製
得られた不織布を、3質量%の前記酸化処理したナノダイヤモンドの水分散液中(35℃)に10分間浸漬し80℃で乾燥することにより、ダイヤモンド微粒子を不織布に吸着させた。得られたダイヤモンド微粒子含有不織布は、不織布1 m2あたり0.3 gのダイヤモンド微粒子が付着していた。
【0098】
(4)セシウム吸着除去
作製したダイヤモンド微粒子含有不織布(20 cm×20 cm)を、500 ppmの塩化セシウムを含有する水溶液1000 mlに浸漬し、不織布が丸まらないようにゆっくり攪拌し、24時間後の濾過後の水に含まれるセシウムを原子吸光により定量したところ、99%以上のセシウムが除去されていた。
【0099】
ダイヤモンド微粒子含有不織布を用いることにより、放射性金属等を除去する能力を有する拡散防止膜が得られることが分かる。
【0100】
実施例2
(1)ダイヤモンド微粒子を含有するポリエステル布の作製
水分量100 ppm以下に乾燥したポリエチレンテレフタレートのペレット1800 gと、実施例1で作製した酸化処理したナノダイヤモンド粉末を36 gとを二軸押し出し機を用いて設定温度230〜300℃で溶融混練し、ペレット化したのち、ノーベント式30 mm単軸押し出し機に投入し,250〜300℃で溶融させ、ノズル径0.5 mmの丸断面孔100孔を有する紡糸口金を用いて溶融ポリマーを吐出し、口金下2 mの位置で300 m/分の速度で巻き取り未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を80℃の温水浴中で4.5倍に延伸し、次いで150℃に加熱したヒートロールを用いて10秒間熱処理し、単糸繊度1.7 dtexのポリエステル繊維を得た。
【0101】
得られたポリエステル繊維を用いて、1 m2あたり2 gのナノダイヤモンドを含有する織物からなる布を作製した。
【0102】
(2)セシウム吸着除去
作製したダイヤモンド微粒子を含有するポリエステル布(20 cm×20 cm)を、500 ppmの塩化セシウムを含有する水溶液1000 mlに浸漬し、布が丸まらないようにゆっくり攪拌し、24時間後の濾過後の水に含まれるセシウムを原子吸光により定量したところ、99%以上のセシウムが除去されていた。
【0103】
ダイヤモンド微粒子を含有するポリエステル布を用いることにより、放射性金属等を除去する能力を有する拡散防止膜が得られることが分かる。
【0104】
実施例3
(1) カーボンナノチューブの合成
24gの蒸留水に溶解した14.6 gの硝酸コバルト6水和物と9.4 gの硝酸アルミニウム9水和物とを650℃±10℃に維持したマッフル炉内で加熱して1時間熱分解させ、空気中で放冷し、得られた樹枝状の生成物を粉砕してカップスタック型カーボンナノチューブを合成するためのCoO-A1203系触媒を得た。得られた触媒の組成はCoO:A1203=60:40(質量比)であった。
【0105】
この合成触媒O.4 gを直径60 mmの銅製皿上に均等に配置し、650±5℃に維持したパイロット炉中で、上方から触媒に向けてプロパン:ブタン=1:1の混合ガスを120 L/hrの流量で供給し、30分間反応させ39%の収率でグラファイト化合物を得た。得られたグラファイト化合物は、走査型電子顕微鏡での観測から、カップスタック型カーボンナノチューブを含有することが確認できた。X線回折により、このカーボンナノチューブは74%の結晶化炭素を含有していることが分かった。このようにして作製したカップスタック型カーボンナノチューブを含むグラファイト化合物を塩酸処理し、アモルファスカーボン及び合成触媒を溶解除去した後、60質量%硝酸水溶液と混合し酸化処理を施し、粒子表面をカルボキシル基、水酸基等の官能基で修飾した。
【0106】
(2) カーボンナノチューブを含有するポリエステル布の作製
ナノダイヤモンド粉末の代わりに、作製したカーボンナノチューブを使用した以外実施例2と同様にして、カーボンナノチューブを含有するポリエステル繊維からなる布を作製した。
【0107】
(3)セシウム吸着除去
作製したカーボンナノチューブを含有するポリエステル布(20 cm×20 cm)を、500 ppmの塩化セシウムを含有する水溶液1000 mlに浸漬し、布が丸まらないようにゆっくり攪拌し、24時間後の濾過後の水に含まれるセシウムを原子吸光により定量したところ、99%以上のセシウムが除去されていた。
【0108】
カーボンナノチューブを含有するポリエステル布を用いることにより、放射性金属等を除去する能力を有する拡散防止膜が得られることが分かる。
【0109】
実施例4
(1) フェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物(複合塩A)
100 mmol/LのFeCl3水溶液に、50 mmol/Lのフェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])及び50 mmol/Lのフェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])を添加し、フェロシアン化鉄及びフェリシアン化鉄を作製した。
【0110】
(2)セシウム吸着除去
酸化処理したナノダイヤモンドの代わりに、前記得られた複合塩Aを用いた以外は実施例2と同様にして、フェロシアン化鉄及びフェリシアン化鉄を含有するポリエステル布を作製した。
【0111】
このフェロシアン化鉄及びフェリシアン化鉄を含有するポリエステル布(20 cm×20 cm)を、500 ppmの塩化セシウムを含有する水溶液1000 mlに浸漬し、布が丸まらないようにゆっくり攪拌し、24時間後の濾過後の水に含まれるセシウムを原子吸光により定量したところ、99%以上のセシウムが除去されていた。
【0112】
フェロシアン化鉄及びフェリシアン化鉄を含有するポリエステル布を用いることにより、放射性金属等を除去する能力を有する拡散防止膜が得られることが分かる。
【0113】
実施例5
(1) フェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物を担持したダイヤモンド微粒子の作製
実施例1で作製した酸化処理したナノダイヤモンドの水分散液(5質量%)に、ナノダイヤモンド1g当たり1 mmolのFeCl3を添加し、ナノダイヤモンドと鉄との塩を形成した。このナノダイヤモンドと鉄との塩の分散液に、ナノダイヤモンド1g当たり0.5 mmolのフェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])及び0.5 mmolのフェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])を添加し、ナノダイヤモンド表面にフェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物を担持させた。得られた分散物に対してビーズミルによる分散処理を行い、遠心分離によりフェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子を得た。ビーズミルによる分散は、アシザワファインテック株式会社製スターミルLMZを用いて、0.1 mm径のジルコニアビーズを0.15 Lのベッセルに充填し、10 m/sの周速で回転子を回転させながら、前記複合ダイヤモンド微粒子の分散液を0.12 L/minで供給し、連続的に行った。約2時間分散処理した後の複合ダイヤモンド微粒子のメジアン径は25 nmであった。
【0114】
(2)セシウム吸着除去
酸化処理したナノダイヤモンドの代わりに、作製した複合ダイヤモンド微粒子を用いた以外は実施例2と同様にして、複合ダイヤモンド微粒子を含有するポリエステル布を作製した。
【0115】
この複合ダイヤモンド微粒子を含有するポリエステル布(20 cm×20 cm)を、500 ppmの塩化セシウムを含有する水溶液1000 mlに浸漬し、布が丸まらないようにゆっくり攪拌し、24時間後の濾過後の水に含まれるセシウムを原子吸光により定量したところ、99%以上のセシウムが除去されていた。
【0116】
複合ダイヤモンド微粒子を含有するポリエステル布を用いることにより、放射性金属等を除去する能力を有する拡散防止膜が得られることが分かる。
【0117】
実施例6
(1) フェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物を担持したカーボンナノチューブ
実施例3で作製した酸化処理したカーボンナノチューブの水分散液(3質量%)に、カーボンナノチューブ1g当たり1 mmolのFeCl3を添加し、カーボンナノチューブと鉄との塩を形成した。カーボンナノチューブと鉄との塩の分散液に、カーボンナノチューブ1g当たり0.5 mmolのフェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])及び0.5 mmolのフェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])を添加し、カーボンナノチューブ表面にフェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物を形成した。得られた分散物に対して実施例1と同様にしてビーズミルによる分散処理を行い、遠心分離によりフェロシアン化金属化合物及びフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合カーボンナノチューブを得た。
【0118】
(2)セシウム吸着除去
酸化処理したナノダイヤモンドの代わりに、作製した複合カーボンナノチューブを用いた以外は実施例2と同様にして、複合カーボンナノチューブを含有するポリエステル布を作製した。
【0119】
この複合カーボンナノチューブを含有するポリエステル布(20 cm×20 cm)を、500 ppmの塩化セシウムを含有する水溶液1000 mlに浸漬し、布が丸まらないようにゆっくり攪拌し、24時間後の濾過後の水に含まれるセシウムを原子吸光により定量したところ、99%以上のセシウムが除去されていた。
【0120】
複合カーボンナノチューブを含有するポリエステル布を用いることにより、放射性金属等を除去する能力を有する拡散防止膜が得られることが分かる。
【0121】
実施例7
(1) 水酸化チタン、リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤の作製
3Mの塩化チタン(IV)水溶液100 gに、2.5 N水酸化ナトリウム水溶液125 gを加えてpHを7にした。水を加えて全量を300 gとし、1 M水酸化チタン水溶液を得た
【0122】
得られた1 Mの水酸化チタン水溶液4 gに、1 M塩化バリウム4 g、0.6 Mリン酸水素二ナトリウム水溶液4 g、及び100 g/Lトリポリリン酸ナトリウム水溶液8 gを攪拌しながら1分間のインターバルをおいて順次加えたところ、白色の沈殿が生成した。デカンテーションで上澄み液を除き、水酸化チタン、リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤を得た。
【0123】
(2) ストロンチウム吸着除去試験
酸化処理したナノダイヤモンドの代わりに、作製した水酸化チタン、リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤を用いた以外は実施例2と同様にして、水酸化チタン、リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤を含有するポリエステル布を作製した。
【0124】
この水酸化チタン、リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤を含有するポリエステル布(20 cm×20 cm)を、6.5 ppmの塩化ストロンチウム水溶液1000 mlに浸漬し、布が丸まらないようにゆっくり攪拌し、24時間後の濾過後の水に含まれるストロンチウムをICP-AESにより定量したところ、90%以上のストロンチウムが除去されていた。
【0125】
水酸化チタン、リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤を含有するポリエステル布を用いることにより、放射性金属等を除去する能力を有する拡散防止膜が得られることが分かる。
【0126】
実施例8
(1)複合ナノダイヤモンドの作製
実施例7で得られた水酸化チタン18 gを100gの水に分散し、1 M塩化バリウム4 g、実施例1で作製した酸化処理したナノダイヤモンド粉末の1%分散液4 g、0.6 Mリン酸水素二ナトリウム水溶液4 g、及び100 g/Lトリポリリン酸ナトリウム水溶液8 gを攪拌しながら順次加えたところ、白色の沈殿が生成した。デカンテーションで上澄み液を除き、チタン、リン酸化合物及びバリウムを含む塩を担持してなる複合ナノダイヤモンドを得た。
【0127】
(2) ストロンチウム吸着除去試験
酸化処理したナノダイヤモンドの代わりに、作製した複合ナノダイヤモンドを用いた以外は実施例2と同様にして、複合ナノダイヤモンドを含有するポリエステル布を作製した。
【0128】
この複合ナノダイヤモンドを含有するポリエステル布(20 cm×20 cm)を、6.5 ppmの塩化ストロンチウム水溶液1000 mlに浸漬し、布が丸まらないようにゆっくり攪拌し、24時間後の濾過後の水に含まれるストロンチウムをICP-AESにより定量したところ、90%以上のストロンチウムが除去されていた。
【0129】
複合ナノダイヤモンドを含有するポリエステル布を用いることにより、放射性金属等を除去する能力を有する拡散防止膜が得られることが分かる。
【0130】
実施例9
(1)複合カーボンナノチューブの作製
酸化処理したナノダイヤモンドの代わりに、実施例3で得られたカーボンナノチューブを用いた以外実施例8と同様にして、チタン、リン酸化合物及びバリウムを含む塩を担持してなる複合カーボンナノチューブを作製した。
【0131】
(2) ストロンチウム吸着除去試験
酸化処理したナノダイヤモンドの代わりに、作製した複合カーボンナノチューブを用いた以外は実施例2と同様にして、複合カーボンナノチューブを含有するポリエステル布を作製した。
【0132】
この複合カーボンナノチューブを含有するポリエステル布(20 cm×20 cm)を、6.5 ppmの塩化ストロンチウム水溶液1000 mlに浸漬し、布が丸まらないようにゆっくり攪拌し、24時間後の濾過後の水に含まれるストロンチウムをICP-AESにより定量したところ、90%以上のストロンチウムが除去されていた。
【0133】
複合カーボンナノチューブを含有するポリエステル布を用いることにより、放射性金属等を除去する能力を有する拡散防止膜が得られることが分かる。
【0134】
実施例10
(1)リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤の作製
1 M塩化バリウム4 gを攪拌しながら、0.6 Mリン酸水素二ナトリウム水溶液4 g、及び100 g/Lトリポリリン酸ナトリウム水溶液8 gを順次加えたところ、白色の沈殿が生成した。デカンテーションで上澄み液を除き、リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤を得た。
【0135】
(2) ストロンチウム吸着除去試験
酸化処理したナノダイヤモンドの代わりに、リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤を用いた以外は実施例2と同様にして、リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤を含有するポリエステル布を作製した。
【0136】
このリン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤を含有するポリエステル布(20 cm×20 cm)を、6.5 ppmの塩化ストロンチウム水溶液1000 mlに浸漬し、布が丸まらないようにゆっくり攪拌し、24時間後の濾過後の水に含まれるストロンチウムをICP-AESにより定量したところ、90%以上のストロンチウムが除去されていた。
【0137】
リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤を含有するポリエステル布を用いることにより、放射性金属等を除去する能力を有する拡散防止膜が得られることが分かる。
【0138】
実施例11
(1)複合ナノダイヤモンドの作製
1 M塩化バリウム4 gを攪拌しながら、実施例1で作製した酸化処理したナノダイヤモンド粉末の1%分散液4g、0.6 Mリン酸水素二ナトリウム水溶液4 g、及び100 g/Lトリポリリン酸ナトリウム水溶液8 gを順次加えたところ、灰白色の沈殿が生成した。デカンテーションで上澄み液を除き、ポリリン酸塩で修飾してなる複合ナノダイヤモンドを得た。
【0139】
(2) ストロンチウム吸着除去試験
酸化処理したナノダイヤモンドの代わりに、得られた複合ナノダイヤモンドを用いた以外は実施例2と同様にして、複合ナノダイヤモンドを含有するポリエステル布を作製した。
【0140】
この複合ナノダイヤモンドを含有するポリエステル布(20 cm×20 cm)を、6.5 ppmの塩化ストロンチウム水溶液1000 mlに浸漬し、布が丸まらないようにゆっくり攪拌し、24時間後の濾過後の水に含まれるストロンチウムをICP-AESにより定量したところ、90%以上のストロンチウムが除去されていた。
【0141】
複合ナノダイヤモンドを含有するポリエステル布を用いることにより、放射性金属等を除去する能力を有する拡散防止膜が得られることが分かる。
【0142】
実施例12
(1)複合カーボンナノチューブの作製
酸化処理したナノダイヤモンドの代わりに、実施例3で得られたカーボンナノチューブを用いた以外実施例11と同様にして、ポリリン酸塩で修飾してなる複合カーボンナノチューブを得た。
【0143】
(2) ストロンチウム吸着除去試験
酸化処理したナノダイヤモンドの代わりに、作製した複合カーボンナノチューブを用いた以外は実施例2と同様にして、複合カーボンナノチューブを含有するポリエステル布を作製した。
【0144】
この複合カーボンナノチューブを含有するポリエステル布(20 cm×20 cm)を、6.5 ppmの塩化ストロンチウム水溶液1000 mlに浸漬し、布が丸まらないようにゆっくり攪拌し、24時間後の濾過後の水に含まれるストロンチウムをICP-AESにより定量したところ、90%以上のストロンチウムが除去されていた。
【0145】
複合カーボンナノチューブを含有するポリエステル布を用いることにより、放射性金属等を除去する能力を有する拡散防止膜が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0146】
1・・・拡散防止膜
2・・・浮体部
3・・・カーテン部
4・・・おもり
5・・・アンカー
6・・・係留索
7・・・ブイ
10・・・爆薬
12a,12b・・・容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブを含有することを特徴とする拡散防止膜。
【請求項2】
浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、フェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を含有することを特徴とする拡散防止膜。
【請求項3】
浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、(a)ダイヤモンド微粒子にフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子、及び/又は(b)カーボンナノチューブにフェロシアン化金属化合物及び/又はフェリシアン化金属化合物を担持してなる複合カーボンナノチューブを含有することを特徴とする拡散防止膜。
【請求項4】
浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、(a)チタン又はジルコニウムと、(b)リン酸化合物と、(c)アルカリ金属、アルカリ士類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属とからなる塩を含有することを特徴とする拡散防止膜。
【請求項5】
浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、ダイヤモンド微粒子に、(a)チタン又はジルコニウムと、(b)リン酸化合物と、(c)アルカリ金属、アルカリ士類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属とからなる塩を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子を含有することを特徴とする拡散防止膜。
【請求項6】
浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、カーボンナノチューブに、(a)チタン又はジルコニウムと、(b)リン酸化合物と、(c)アルカリ金属、アルカリ士類金属、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属とからなる塩を担持してなる複合カーボンナノチューブを含有することを特徴とする拡散防止膜。
【請求項7】
浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属又は遷移金属とからなる塩を含有することを特徴とする拡散防止膜。
【請求項8】
浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属又は遷移金属とからなる塩を担持してなる複合ダイヤモンド微粒子を含有することを特徴とする拡散防止膜。
【請求項9】
浮力材又は気体を封入可能な袋体からなる浮体部と、前記浮体に取り付けられたカーテン部とからなる拡散防止膜であって、前記カーテン部に、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ士類金属又は遷移金属とからなる塩を担持してなる複合カーボンナノチューブを含有することを特徴とする拡散防止膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−113659(P2013−113659A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258793(P2011−258793)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(500462834)ビジョン開発株式会社 (51)
【Fターム(参考)】