説明

金属屑からの脱亜鉛方法

【課題】処理容器内に導入容易な還元剤を併用することにより、実用的で脱亜鉛効率に優れた金属屑からの脱亜鉛方法を提供する。
【解決手段】金属屑を収容した処理容器1の内部を減圧ポンプPで減圧排気した後、不活性ガス(例えば窒素ガス)を導入する。また、その処理容器1をガスバーナー4で加熱する。そして、加熱中且つ不活性ガス存在下の処理容器1内に流体導入路6を介してメタノールを導入する。メタノールの熱分解成分(一酸化炭素及び水素)によって処理容器1内を還元性雰囲気とすることで、金属屑に付着又は混入する酸化亜鉛を亜鉛に還元する。蒸発阻害因子としての酸化亜鉛の還元により、亜鉛の蒸発又は昇華が促進される。処理容器1内に生じた亜鉛蒸気を処理容器1から導出し、水冷式回収器12で捕捉回収することで、亜鉛をその他の金属から分離すること(即ち脱亜鉛)が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属屑(例えば亜鉛めっき鋼鈑屑や亜鉛混入金属塊など)から亜鉛を分離除去するための脱亜鉛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、亜鉛めっきされた鋼鈑屑から亜鉛を離脱させて非めっき状態の鋼鈑を再生することを目的とする亜鉛めっき鋼鈑屑の脱亜鉛方法を開示する。この方法では、亜鉛めっき鋼鈑屑を収容した外熱式ロータリーキルン(処理炉)の内部を窒素ガス雰囲気とした状態で所定の高温度に加熱することで、鋼鈑屑表面の亜鉛を蒸発又は逸散させて脱亜鉛処理を実現している。また、特許文献1は、使用する窒素ガス中に不可避的に介在又は混入する酸素成分が脱亜鉛処理の外乱となることを防止するために、酸素に対して等量より過剰となる水素ガスを窒素ガス中に添加することをも開示する。
【0003】
特許文献1における水素ガスの化学的役割については、その記載からは必ずしも明確ではないが、水素ガスの添加量を窒素ガス中に不可避的に介在する酸素の等量より過剰量としている点から推測するならば、気相中の酸素を水素と直接反応させて水蒸気化することにより、混入酸素が亜鉛に結合するのを未然防止することを意図したものと解される。つまり、水素ガスは窒素ガス中酸素の脱酸素剤として用いられていると推察される。
【0004】
しかしながら、生の水素ガスをロータリーキルン内に導入することを求める上記方法には、少なくとも実用上の問題がある。つまり、窒素ガスは不活性ガスであるからよいとしても、水素ガスは軽量で引火性が高いため、工場内での取り扱いや保管には危険が伴い相当の注意を要する。特に水素ガスの爆発限界を考慮すれば、水素ガスの添加量を窒素ガス体積の4%以下に抑える等の配慮が必要となろう。また、水素ガスは、ロータリーキルン内への導入量の管理・把握が難しい面もある。
【0005】
【特許文献1】特開平5−125459号公報(請求項1〜4、第0020段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、処理容器内に導入容易な還元剤を併用することにより、実用的で脱亜鉛効率に優れた金属屑からの脱亜鉛方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の金属屑からの脱亜鉛方法は、金属屑を収容した処理容器の内部を減圧排気した後に、当該処理容器を加熱した状況の下で処理容器内に少なくともメタノールを導入することを特徴とする。
【0008】
請求項2の金属屑からの脱亜鉛方法は、処理容器と、処理容器を外側から加熱するための外熱手段と、処理容器内を減圧排気するための減圧ポンプと、処理容器内に流体を導入するための流体導入路と、処理容器から導出された揮発成分を捕捉回収するための回収手段とを備えた脱亜鉛処理装置を用いて、金属屑から亜鉛を分離除去する方法であって、金属屑を収容した処理容器の内部を減圧ポンプで減圧排気する減圧排気工程と、減圧排気された処理容器内に流体導入路を介して不活性ガスを導入する不活性ガスパージ工程と、金属屑を収容した処理容器を外熱手段で外側から加熱する加熱工程と、加熱中且つ不活性ガス存在下の処理容器内に流体導入路を介してメタノールを導入し、メタノールの熱分解成分によって処理容器内を還元性雰囲気とすることで、金属屑に付着又は混入する酸化亜鉛を亜鉛に還元する還元処理工程と、処理容器内に生じた亜鉛蒸気を処理容器から導出し、回収手段で捕捉回収する亜鉛分離回収工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
なお、請求項2の金属屑からの脱亜鉛方法が、前記メタノール導入に始まる還元処理工程よりも前に、金属屑を収容した処理容器の加熱状態を所定時間(t3)だけ保持することにより、金属屑に付着又は混入するところの付着油その他の非金属不純物を蒸発させて除去するための不純物除去工程を更に備えることは好ましい。
【0010】
(作用):
本発明では、脱亜鉛処理の対象物たる金属屑を収容した処理容器の内部を減圧排気した後に、(好ましくは不活性ガスを導入して)所定の高温度に加熱した状況の下で、処理容器内にメタノールを導入する。酸素フリーの雰囲気且つ高温の環境下では、メタノールは一酸化炭素と水素とに熱分解する(CH3OH→CO+2H2)。これらの熱分解成分は金属酸化物に対する還元剤として作用し、金属屑に付着又は混入している酸化亜鉛を亜鉛に還元する。一般に酸化亜鉛は熱的及び化学的に極めて安定であり、空気中では亜鉛の表層部を覆う酸化皮膜として存在し、亜鉛の蒸発等を阻害する主要因となっている。この酸化亜鉛を亜鉛に還元することにより、処理容器を純亜鉛が蒸発又は昇華し得る程度の温度に加熱するだけで、金属屑に含まれる亜鉛(純亜鉛及び酸化亜鉛)の大半を亜鉛蒸気として分離蒸発させることが可能となる。処理容器内に生じた亜鉛蒸気を処理容器から導出すると共に、適切な回収手段(亜鉛蒸気を液化又は固化する装置等)で捕捉回収すれば、金属屑を亜鉛とそれ以外の金属とに分離すること(即ち脱亜鉛)が達成される。
【0011】
なお、前記メタノール導入に始まる還元処理工程よりも前に前記不純物除去工程を実行することで、金属屑に付着又は混入するところの付着油その他の非金属不純物を予め蒸発させて極力除去することができる。それ故、その後の還元処理工程において、メタノールの熱分解成分(CO,H2)が付着油その他の非金属不純物と化学反応等して無駄に消費される事態を防止でき、メタノール導入による酸化亜鉛の還元処理を効率的に行うことができる。
【0012】
また、本発明において、処理容器内に生じた亜鉛蒸気を処理容器から導出するために、減圧排気完了時から脱亜鉛処理終了に到るまでの間、処理容器内に不活性ガスを連続導入することは好ましい。この場合には、連続導入される不活性ガスが、亜鉛蒸気を処理容器から回収手段へと搬送する搬送ガスとして機能し、亜鉛の分離が円滑化する。
【0013】
この明細書において「金属屑」とは、脱亜鉛処理の対象となり得る亜鉛含有金属全般を指し、亜鉛めっきされた金属材はもちろんのこと、亜鉛と他の金属との混合物をも含む意味である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、メタノールを還元剤として併用することにより、金属屑の酸化亜鉛を亜鉛に還元することができるので、高い脱亜鉛効率での脱亜鉛処理を実現できる。また、還元剤としてのメタノールは液体状態で処理容器内に導入することもできるため、処理容器内への導入量管理がし易く、液体メタノールは水素ガスに比べて安全性が高く取り扱い易い。このため、本発明の脱亜鉛方法は工業的な実用性や実現性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1〜図4は、脱亜鉛処理装置の概略構造及び主な動作態様を示し、図5のグラフは処理操作の概略を示す。
【0016】
図2に示すように、本実施形態で使用する脱亜鉛処理装置は、内部に略円筒状の処理容器1を収容した略円筒状の断熱ケース2を中心として構成されている。略円筒状の処理容器1は、略円筒状の断熱ケース2に対してその軸線Lを中心として回転可能に支持されると共に、図示しない回転駆動機構により強制回転可能となっている。
【0017】
図2及び図4に示すように、処理容器1と断熱ケース2との間には、横断面(径方向断面)が環状の燃焼室3が確保されている。そして、断熱ケース2の壁部には、前記環状の燃焼室3内に向けてその接線方向を指向するように複数のガスバーナー4が設けられている。また、断熱ケース2の壁部には、燃焼室3から燃焼ガスを外部に導くための燃焼ガス排気装置5が設けられている。この燃焼ガス排気装置5は、燃焼ガスの持つ熱量が無駄に外部に持ち出されるのを防止するための熱交換機能を備える。
【0018】
断熱ケース2の後端壁(図2では右端壁)には、回転式の処理容器1の内部を断熱ケース2の外に連通させると共に、外から処理容器1内に流体を導入可能とするための流体導入路6が設けられている。この流体導入路6はその一端が処理容器1内に開口する一方で、他端がメタノール供給源7(例えばメタノール貯留タンク)及び窒素ガス供給源8(例えば窒素ガスボンベ)とつながっている。これらの供給源7,8と処理容器1とをつなぐ流体導入経路には、いくつかの開閉弁(9,10,11)が設けられている。
【0019】
処理容器1の前端部(図2では左端部)は先すぼまりな形状に形成され、断熱ケース2の前端壁(図2では左端壁)を貫通して断熱ケース2の前方に突出している。そして、処理容器1の前端部は、水冷式回収器12に連結可能となっている。水冷式回収器12の内部には、ほぼ垂直に延びる気相通路(図示略)が延びており、その気相通路の周囲を水冷ジャケット(図示略)が取り囲んで当該気相通路を強制冷却可能としている。水冷式回収器12の下端部には、密閉式の亜鉛回収容器13が設けられている。
【0020】
また、水冷式回収器12の上端部は、ガス吸引経路14を介して減圧ポンプP及び外気に連通可能となっている。ガス吸引経路14の途中には、三方弁又はそれと同等の機能を有する切替え弁機構15が設けられている。この切替え弁機構15は、水冷式回収器12の気相通路を、(1)減圧ポンプPにつなぐ、(2)外気につなぐ、(3)減圧ポンプP及び外気のいずれからも遮断する、という切替えパターンを択一的に実現する。
【0021】
図1及び図3に示すように、断熱ケース2は、図面の紙面と直交する方向に延びる傾動軸Aを中心として上下に傾動可能に構成されている。つまり、図2に示すように断熱ケース2(及び処理容器1)が水平配置された状態では、処理容器1の前端部が水冷式回収器12に連結される。これに対し、図1に示すように断熱ケース2がその前端部が左上方を向くように傾斜配置されたときには、処理容器1の前端部がホッパー16の下側供給口に連結される。他方、図3に示すように断熱ケース2がその前端部が左下方を向くように傾斜配置されたときには、処理容器1の前端部がコンベア17の一端部を指向する。尚、コンベア17の他端部近傍には、溶解炉18が配置されている。
【0022】
本実施形態において、断熱ケース2、燃焼室3及びガスバーナー4は、処理容器1を外側から加熱するための外熱手段を構成する。また、水冷式回収器12及び亜鉛回収容器13は、処理容器から導出された揮発成分を捕捉回収するための回収手段を構成する。
【0023】
次に、上記脱亜鉛処理装置を用いて、金属屑としての亜鉛めっき鋼鈑屑(一般に廃材として取引きされる)を脱亜鉛処理する方法の一例を説明する。
【0024】
先ず図1に示すように、処理容器1及び断熱ケース2を上向き傾動させて処理容器1の前端部をホッパー16の下側供給口に連結すると共に、ホッパー16から処理容器1内に所定量の亜鉛めっき鋼鈑屑を移す。続いて図2に示すように、処理容器1及び断熱ケース2を水平配置して処理容器1の前端部を水冷式回収器12に連結する。
【0025】
脱亜鉛処理の準備が整ったら、流体導入路6上の開閉弁9を閉じた状況下で、切替え弁機構15により、処理容器1、水冷式回収器12及び亜鉛回収容器13を減圧ポンプPに連結し、減圧ポンプPによってこれらの減圧排気を開始する。そして、開始から5〜20分程(図5の時間t1)で、処理容器1の内圧を開始時の1気圧(約100kPa)から0.1気圧(約10kPa)にまで減圧する。
【0026】
続いて、開閉弁9及び11を開いて、窒素ガス供給源8から流体導入路6を介して、減圧排気された処理容器1、水冷式回収器12及び亜鉛回収容器13内に窒素ガスを導入することにより、処理容器1等の内圧を常圧(約100kPa)にまで戻す。処理容器1等の内圧がほぼ常圧に戻るタイミングで切替え弁機構15を操作し、処理容器1等を減圧ポンプPから切り離すと共に外気に連通させる。これにより処理容器1等の内部は外気に連通可能となるが、その後も窒素ガス供給源8から処理容器1等への窒素ガス供給が続けられるため、処理容器1等の内部は常圧窒素パージされた環境に保たれる。
【0027】
常圧窒素パージの態勢に入ったら、処理容器1の回転を開始すると共に、各バーナー4から燃焼室3内に高温の燃焼ガスを吹き込んで処理容器1の加熱を開始する。10〜20分程度(図5の時間t2)で処理容器1の温度が約460℃に達したら、ガスバーナー4の火力を調節してその温度を20〜30分程度(図5の時間t3)保持する。これは、廃材である亜鉛めっき鋼鈑屑に付着している油(いわゆる付着油)を無酸素状況下で蒸発させ、鋼鈑屑の表面から分離除去するためである。
【0028】
その後再び温度を上昇させ、処理容器1の温度が約600℃に達したときに、開閉弁10を開き、メタノール供給源7から流体導入路6を介して、窒素パージされた処理容器1内に液体メタノールの導入を開始する。そして、処理容器1の温度が約950℃に達したら、その温度を維持するようにガスバーナー4の火力を調節する。この間、処理容器1の温度が460℃から950℃に達するまでの時間は10〜20分程度(図5の時間t4)であり、950℃での保持時間は60〜90分程度(図5の時間t5)とした。950℃で所定時間t5だけ保持したら、開閉弁10を閉じてメタノール導入を終了する。
【0029】
処理容器1の高温化に伴い、亜鉛めっき鋼鈑屑の表面に付着している亜鉛(Zn)は蒸発を開始する。但し実際には、亜鉛めっき鋼鈑屑に付着している亜鉛の表層は酸化されて酸化亜鉛(ZnO)の皮膜が形成されている。亜鉛(融点420℃、沸点930℃)そのものに比べて酸化亜鉛(常圧下昇華点1720℃)は熱的及び化学的に非常に安定であり、酸化亜鉛皮膜が表層に存在する限り、内部の亜鉛を蒸発させることは難しい。この点、本実施形態では、常圧窒素パージされた処理容器1の温度が約600℃に達した時点で処理容器1内に液体メタノールを導入することにより、酸化亜鉛皮膜を亜鉛に還元し、めっき亜鉛の蒸発を促進している。
【0030】
すなわち、内部が窒素置換された高温の処理容器1内に液体メタノールを導入すると、気相中に酸素がほとんどない環境下ではメタノールは燃焼せず、1分子のメタノールは、1分子の一酸化炭素と2分子の水素とに熱分解する。そして、これらの熱分解成分は、金属酸化物たる酸化亜鉛に対しては還元剤として作用する。つまり、気相中に酸素がほとんどない不活性ガス環境下では、一酸化炭素及び水素は固相である酸化亜鉛から酸素を奪い取る。その結果、一酸化炭素及び水素がそれぞれ二酸化炭素及び水蒸気に変化(酸化)する一方で、一酸化炭素及び水素の接触を受けた酸化亜鉛は亜鉛に還元される。表層の酸化亜鉛が亜鉛に還元されると、その亜鉛は容易に蒸発し、下層の酸化亜鉛が新たに露出され、それが同様に還元されて蒸発するということが繰り返される。こうして、液体メタノールの熱分解成分により、亜鉛めっき層表層の酸化亜鉛皮膜が完全に還元・除去され、めっき層を構成する亜鉛の分離蒸発が促進される。
【0031】
なお、窒素置換された高温の処理容器1内を還元性雰囲気に保つべく、メタノールの導入量を、例えば、窒素分圧が約67%となり、メタノールの熱分解成分たる一酸化炭素及び水素の各分圧がそれぞれ11%と22%となるように調節することは好ましい。
【0032】
処理容器1内に生じた亜鉛蒸気は、減圧時の排気作用あるいは常圧時に連続供給される窒素ガスの搬送作用により、処理容器1の前端部から出されて水冷式回収器12内に誘導される。水冷式回収器12内に進入した亜鉛蒸気は冷却され、凝縮、凝固又は昇華(この場合は蒸気からの直接固化)する。水冷式回収器12内で液化又は固化した亜鉛は、重力により下方に移動し、亜鉛回収容器13に回収される。水冷式回収器12及び亜鉛回収容器13の内部は窒素雰囲気となっているので、亜鉛回収容器13に回収された亜鉛は酸化されること無く高純度に保たれる。なお、処理容器1内に生じた水蒸気も水冷式回収器12で冷却され、水として亜鉛回収容器13側に回収される。
【0033】
他方、二酸化炭素は過剰の窒素ガスと共に、ガス吸引経路14及び切替え弁機構15を経由して外気中に放出される。なお、切替え弁機構15よりも下流側の外気への放出経路に、残余の一酸化炭素及び水素を除去するための装置を設け、一酸化炭素及び水素が大気中に放出されるのを防止することは好ましい。
【0034】
液体メタノールの導入開始から導入終了までの間、処理容器1内を高温の還元性雰囲気とすることで、酸化亜鉛の還元及び亜鉛の分離蒸発が確実に行われる。脱亜鉛処理の終了後、処理容器1の回転を停止し、図3に示すように処理容器1及び断熱ケース2を下向き傾動させて、処理容器1の前端部から脱亜鉛済みの鋼鈑屑をコンベア17上に排出する。そして直ちに、排出された鋼鈑屑をコンベア17で搬送し、溶解炉18中に投入する。脱亜鉛処理した鋼鈑屑は数百度の高温状態のままで溶解炉18に投入されるため、熱を有効利用することができる。
【0035】
なお、コンベア17を例えばメッシュベルト式コンベアで構成し、コンベア17での搬送中に非鉄分(例えば、亜鉛や酸化亜鉛など)がメッシュベルトを通過してコンベア17の下側に落下分離されるようにしてもよい。
【0036】
以上説明したように本実施形態によれば、メタノールを還元剤として併用することにより、亜鉛めっき鋼鈑のめっき層の表面に存在する酸化亜鉛を亜鉛に還元することができるので、高い脱亜鉛効率での脱亜鉛を達成することができる。また、還元剤としてのメタノールは液体状態で処理容器1内に導入できるため、処理容器1内への導入量の管理・把握がし易い。更に液体メタノールは水素ガスに比べて安全性が高く取り扱い易い。それ故、本実施形態の脱亜鉛方法は工業的な実用性や実現性に優れている。
【0037】
本実施形態によれば、減圧ポンプPで処理容器1内を減圧排気した後に窒素ガスをパージすると共にその後も窒素ガスを連続供給することで、処理容器1の内から外へ向かう流れを常に維持できる。このため、減圧ポンプPで最初に減圧排気する際の減圧レベルを極度に低くしなくとも、連続処理する過程で処理容器1内の酸素濃度は限りなくゼロに近づけることができる。それ故、処理容器1自体には、高気密レベルの完全なシール構造を必要とせず、ほどほどのレベルのシール構造で足りる。また、減圧ポンプPの吸引減圧能力もほどほどのレベルで足りる。このため、脱亜鉛処理装置の製造コスト及び保守管理費用が少なくて済む。
【0038】
(変更例)本発明の実施形態を以下のように変更してもよい。
上記実施形態において、不活性ガスは窒素ガスに限定されず、アルゴンガス等の希ガスが用いられてもよい。
【0039】
上記実施形態では、減圧ポンプPによる減圧排気後に処理容器1内を窒素ガスで常圧にまで戻したが、減圧ポンプPをそのまま継続運転し処理容器1内を所定の減圧状態としたまま、メタノール導入等の操作を行ってもよい。但し、常圧の窒素ガス下で操作する方が安全性が高く、水冷式回収器12での亜鉛蒸気の回収もれの心配も少ないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】脱亜鉛処理装置の概略断面図(金属屑の受容時)。
【図2】脱亜鉛処理装置の概略断面図(金属屑の脱亜鉛処理時)。
【図3】脱亜鉛処理装置の概略断面図(金属屑の排出移送時)。
【図4】脱亜鉛処理装置の処理容器及びその周辺構造の径方向概略断面図。
【図5】一処理事例における処理開始からの時間と温度との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0041】
1…処理容器、2…断熱ケース、3…燃焼室、4…ガスバーナー(2,3及び4は外熱手段を構成する)、6…流体導入路、7…メタノール供給源、8…窒素ガス供給源、12…水冷式回収器、13…亜鉛回収容器(12及び13は回収手段を構成する)、15…切替え弁機構、P…減圧ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属屑を収容した処理容器の内部を減圧排気した後に、当該処理容器を加熱した状況の下で処理容器内に少なくともメタノールを導入することを特徴とする金属屑からの脱亜鉛方法。
【請求項2】
処理容器と、処理容器を外側から加熱するための外熱手段と、処理容器内を減圧排気するための減圧ポンプと、処理容器内に流体を導入するための流体導入路と、処理容器から導出された揮発成分を捕捉回収するための回収手段とを備えた脱亜鉛処理装置を用いて、金属屑から亜鉛を分離除去する方法であって、
金属屑を収容した処理容器の内部を減圧ポンプで減圧排気する減圧排気工程と、
減圧排気された処理容器内に流体導入路を介して不活性ガスを導入する不活性ガスパージ工程と、
金属屑を収容した処理容器を外熱手段で外側から加熱する加熱工程と、
加熱中且つ不活性ガス存在下の処理容器内に流体導入路を介してメタノールを導入し、メタノールの熱分解成分によって処理容器内を還元性雰囲気とすることで、金属屑に付着又は混入する酸化亜鉛を亜鉛に還元する還元処理工程と、
処理容器内に生じた亜鉛蒸気を処理容器から導出し、回収手段で捕捉回収する亜鉛分離回収工程と
を備えることを特徴とする金属屑からの脱亜鉛方法。
【請求項3】
前記メタノール導入に始まる還元処理工程よりも前に、金属屑を収容した処理容器の加熱状態を所定時間(t3)だけ保持することにより、金属屑に付着又は混入するところの付着油その他の非金属不純物を蒸発させて除去するための不純物除去工程を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の金属屑からの脱亜鉛方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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