説明

金属帯の蛇行矯正装置

【課題】スイングロールおよびキャリアロールの蛇行矯正能力を向上させ、ループセクション内の金属帯の蛇行を抑制する。
【解決手段】この横型ルーパー設備1に用いられる金属帯Kの蛇行矯正装置は、金属帯Kの蛇行方向と蛇行量を検出する蛇行検出センサ22と、スイングロール5およびキャリアロール4を金属帯Kとの対向方向に揺動させてロール4,5にカント角度を付与可能なアクチュエータと、蛇行検出センサ22の検出量に基づいて前記アクチュエータを制御して、金属帯Kの蛇行を抑制するようにロール4,5にカント角度を付与する制御部20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯の連続処理ラインの横型ルーパー設備における、金属帯の蛇行を矯正するための蛇行矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属帯の連続処理ラインにおける横型ルーパー設備は、ループカーがループセクション内を走行することにより、ループセクション内の金属帯容量を増減させる装置である。ループセクションの入側または出側とループカー間の金属帯は、スイングロールおよびキャリアロールによって支持されている。通常これらのロールには、金属帯の蛇行を矯正するために、金属帯の進行方向とは直角方向に0°〜5°程度の「スキュー角度」が付けられている。
【0003】
しかし、連続処理ラインが、例えばライン速度が速い酸洗ラインの場合には、「スキュー角度」を付けるのみでは金属帯の蛇行を抑制しきれず、それ故、処理される金属帯が幅広材(例えば1700mm以上)の場合は、周辺設備までの余裕代が少ないこともあり、減速操業を行っている。
ここで、特許文献1には、隣接するロール間に磁石を配置し、その磁力により金属帯をロール側に強く引き付けることにより、ロールのスキュー角度による蛇行矯正能力を向上させ得るとする技術が提案されている。また、特許文献2には、スイングロールをシリンダによってステアリングさせてスキュー角度を変化させることにより、蛇行矯正能力を向上させ得るとする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−221609号公報
【特許文献2】実公平6−38562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるような、磁石による金属帯への押し付け力の増加では、例えば上記酸洗ラインにおいては、金属帯表面の形状が悪い圧延材を通すため、ロールの摩耗量の増大につながり、ロールの寿命が短くなるという問題がある。
また、特許文献2に示されるような、スイングロールをシリンダによりステアリングしてスキュー角度を変化させる技術は、ステアリング用のシリンダ、スイングロールおよびロール架台をスイングシリンダで動かす必要があり、既設設備を改造する場合、ステアリング用のシリンダの増設、スイングロールおよびロール架台の増設に加え、スイングシリンダの容量を増加する改造など、改造する範囲が大きくなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、スイングロールおよびキャリアロールの少なくとも一方の蛇行矯正能力を向上させることで、ループセクション内の金属帯の蛇行を抑制し得る金属帯の蛇行矯正装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る金属帯の蛇行矯正装置は、金属帯の連続処理ラインに用いられ、ループセクションの入側または出側とループカー間の金属帯がスイングロールおよびキャリアロールによって支持されるとともに、ループカーがループセクション内を走行することにより、ループセクション内の金属帯容量を増減させる横型ルーパー設備に装備され、搬送中の金属帯の蛇行を矯正する金属帯の蛇行矯正装置であって、前記スイングロールの出側での金属帯の蛇行方向と蛇行量を検出する蛇行検出センサと、前記スイングロールおよび前記キャリアロールの少なくとも一方を金属帯表面との対向方向にカント角度を付けるように揺動させるアクチュエータと、前記蛇行検出センサの検出情報を取得するとともに前記アクチュエータを制御可能な制御部とを備え、前記制御部は、前記蛇行検出センサの検出情報に基づいて、前記アクチュエータを制御して前記カント角度を金属帯の蛇行を抑止するように可変することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る金属帯の蛇行矯正装置によれば、スイングロールおよびキャリアロールの少なくとも一方のカント角度を可変させることができるので、当該ロールの蛇行矯正能力を向上させ、ループセクション内の金属帯の蛇行を抑制することができる。
そして、このような構成であれば、カント角度を可変させることができるので、蛇行が検出されないときには、例えばカント角度を零とすることもできるし、必要十分な最小限の角度にすることができる。そのため、例えば特許文献1に示されるような、磁石による金属帯への押し付け力を増すような構成とは蛇行抑制の作用機序が異なるため、例えば金属帯表面の形状が悪い圧延材を通す酸洗ラインにおいても、ロールの摩耗量の増大を抑制できる。
【0009】
また、スイングロールおよびキャリアロールの長さは900mm程度である。そのため、例えばカント角度を0°〜3°の範囲で可変する構成とすれば、3°のカント角度を付ける場合、ロール端を50mm程度上昇させる程度の設備で実施可能である。したがって、例えば上記特許文献2に開示されるような、ステアリング機構を設ける構成に比べて設備の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
上述のように、本発明によれば、スイングロールおよびキャリアロールの少なくとも一方の蛇行矯正能力を向上させ、ループセクション内の金属帯の蛇行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一態様に係る横型ルーパー設備の一実施形態を説明する模式図である。
【図2】図1のスイングロールによるガイド部を示す平面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図3のA矢視図である。
【図5】蛇行矯正処理を説明するフローチャートである。
【図6】スイングロールのカント角度を変更する動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
この例は、連続処理ライン(例えば酸洗ライン(不図示))に付設された横型ルーパー設備であり、図1に示すように、横型ルーパー設備1の入側から出側に向けて金属帯Kが同図左右につづら折り状に折り返されながら連続的に搬送される構成である。そして、ループカー3がループセクション2内を走行することにより、ループセクション2内の金属帯容量を増減させるものである。なお、この例は、同図の上下に二台のループカー3が走行する仕様である。
【0013】
詳しくは、図1に示すように、この横型ルーパー設備1は、ループセクション2の入側および出側とループカー3間の金属帯Kが、金属帯Kの幅方向でそれぞれが対をなすとともに所定の間隔をおいて搬送方向に並ぶ複数のキャリアロール4およびスイングロール5によって支持されている。同図では、ループカー3の車輪とは反対側のロール(同図でループカー3の上側の列に並ぶ黒塗りされたロール)がスイングロール5であり、ループカー3の車輪側のロール(同図でループカー3の下側の列に並ぶ白抜きされたロール)がキャリアロール4である。なお、スイングロール5およびキャリアロール4の長さは900mm程度である。
【0014】
これらスイングロール5およびキャリアロール4には、金属帯Kの蛇行を矯正するために、金属帯Kの進行方向とは直角方向に0°〜5°程度の「スキュー角度」が予めそれぞれに付けられている。そして、搬送方向の一端(同図の左端)が固定端支持ローラ9に巻回され、搬送方向の他端(同図の右端)がループカー3と一体に移動される移動端支持ローラ8に巻回され、金属帯Kを連続的に搬送可能になっている。
【0015】
また、この横型ルーパー設備1には、上下それぞれのスイングロール5列の出側に、金属帯Kの蛇行方向と蛇行量を検出する蛇行検出センサ22が配置されている。この蛇行検出センサ22は、例えば超音波センサや光センサであって、複数の検出子が金属帯Kの幅方向に沿って金属帯Kに対向配置されており、対向方向の金属帯K表面で反射された超音波や光を受信することで金属帯Kの蛇行方向と蛇行量を検出可能なものである。また、蛇行検出センサ22としてカメラを配置してもよい。この場合には、金属帯Kの両端にカメラをそれぞれ設置し、金属帯Kの両端の位置(ラインセンタ(金属帯Kの中央)からの距離差)を各カメラで撮像し、その撮像した情報を画像処理することで金属帯Kの蛇行を検知する構成としてもよい。そして、この蛇行検出センサ22によって取得された検出情報は、制御部20に入力されるように構成されている。
【0016】
そして、本実施形態の各キャリアロール4と各スイングロール5には、上記スキュー角度に加えて、金属帯K表面との対向方向の「カント角度」を変えられるアクチュエータが装備されており、上記制御部20は、そのアクチュエータを制御可能とされ、蛇行検出センサ22の検出情報に基づいてアクチュエータを制御して、金属帯Kの蛇行を抑止するようにカント角度を可変するようになっている。
なお、キャリアロール4とスイングロール5の構成は、スイングロール5が退避位置5bへの移動機構を有し(図3に示す)、キャリアロール4がこれを有しない点以外は同様なので、以下、主にスイングロール5について詳細に説明し、キャリアロール4についてはその図示および機構説明を適宜省略する。
【0017】
図2に示すように、上記スイングロール5(およびキャリアロール4)は、金属帯Kの幅方向両側に対称配置されて対をなしている。スイングロール5は、通常は搬送位置5aに位置しているが、ループカー3がループセクション2内を走行するときには、ループカー3との干渉を防止するために、図3に示す移動機構により揺動されて退避位置5bに退避されるようになっている。一方、ループカー3の車輪側のキャリアロール4は、ループカー3との干渉問題がないため、搬送位置5aに位置したままとされる。
【0018】
つまり、図3に一対のスイングロール5部分を拡大図示するように、各スイングロール5は、ロール架台11上に自身の軸線を中心に回転自在に枢支され、ロール架台11の基端側(同図において金属帯Kの幅方向外側の位置)が、水平揺動軸14によって枢支されている。さらに、ロール架台11基端部(同図において金属帯Kの幅方向外側の端部)が水平揺動用アーム13を介して水平揺動用シリンダ12のシリンダロッドに連結されている。これにより、水平揺動用シリンダ12の伸縮によって、ロール架台11が水平揺動軸14を中心に揺動され、水平揺動用シリンダ12を短縮したときには、搬送位置5aに位置し、水平揺動用シリンダ12を伸長したときには、退避位置5bに位置するようになっている。そして、搬送位置5aにおいては、各スイングロール5(および各キャリアロール4)は、スキュー角度αが、上記のように、金属帯Kの進行方向とは直角方向に0°〜5°程度与えられるように停止位置が設定されている。これにより、搬送される金属帯Kには、同図の符号Fに示すように、金属帯Kの幅方向中央側に向けて金属帯Kを押し出そうとする力がはたらくことにより、金属帯Kの蛇行が抑制される。
【0019】
ここで、上記各スイングロール5(および各キャリアロール4)は、各スイングロール5(および各キャリアロール4)を金属帯K表面との対向方向にカント角度を付けるように揺動させるアクチュエータを更に備えている。
詳しくは、図4に示すように、各スイングロール5(および各キャリアロール4)は、ロール5の両端に支軸6を有し、この支軸6が軸受7によって回転自在に枢支されるものであるが、金属帯Kの中央寄りの支軸7(同図の右側)は、軸線が搬送方向を向く上下揺動軸17を介してロール架台11先端上面に枢支されている。また、金属帯Kの端部寄りの支軸7(同図の左側)は、上下揺動用ジャッキ16を介してロール架台11基端上面に固定されている。この上下揺動用ジャッキ16は、ラック&ピニオン機構が内蔵されたジャッキ装置であって、上下を向くラックの上端部が支軸7下部に連結される一方、ピニオン側の入力軸が上下揺動用モータ15の出力軸に連結されている。この上下揺動用モータ15としてサーボモータが用いられ、上記制御部20の制御信号に応じ、所定量の正逆転および停止位置の保持が可能になっている。本実施形態では、カント角度を0°〜3°の範囲で可変する設定とされている。なお、上記アクチュエータとしてはこれら上下揺動用ジャッキ16および上下揺動用モータ15を含む機構が対応する。
【0020】
そして、連続処理ラインの搬送処理のプログラムが実行されると、制御部20では、図5に示す、蛇行矯正処理が実行されて、同図のステップS1に移行する。ステップS1では、上記蛇行検出センサ22からの検出情報を取得し、続くステップS2では、金属帯Kが「蛇行」しているか否かが判定される。つまり、上記蛇行検出センサ22からの検出情報に基づき、金属帯Kが「蛇行」している(Yes)との判定がされたときにはステップS3に移行し、そうでないとき(No)にはステップS1に処理を戻す。ステップS3では、一連のカント角補正処理が実行される。つまり、各スイングロール5(および各キャリアロール4)それぞれの上下揺動用モータ15を所定方向に所定量だけ駆動し、その駆動方向と駆動量に応じて上下揺動用ジャッキ16のラックを上下させることで金属帯Kの端部寄りの支軸7を上下し、これにより、各スイングロール5(および各キャリアロール4)のカント角βが、「蛇行」を抑制するカント角とされる。
【0021】
次に、この横型ルーパー設備1の蛇行矯正装置の動作およびその作用・効果について説明する。
この横型ルーパー設備1は、制御部20が、上記蛇行検出センサ22からの検出情報に基づき(ステップS1)、金属帯Kが「蛇行」しているとの判定をすると(ステップS2のYes)、各スイングロール5(および各キャリアロール4)それぞれの上下揺動用モータ15を駆動し、その駆動方向と駆動量に応じて上下揺動用ジャッキ16のラックを所定量上下させ、金属帯Kの端部寄りの支軸7が上下して、カント角βが可変される(ステップS3)。このときの制御は、例えば、検出された「蛇行」が小さければ、図6(a)に示すように、小さなカント角β1とされ、検出された「蛇行」が大きければ、図6(b)に示すように、大きなカント角β2とされることで、各スイングロール5(および各キャリアロール4)のカント角βが、「蛇行」を抑制するように設定されたカント角となる。これにより、設定されたカント角β1、β2に応じて、搬送される金属帯Kには、同図の符号F1およびF2にそれぞれ示すように、金属帯Kの幅方向中央側に向けて金属帯Kを押し出そうとする力がはたらくため、金属帯Kの蛇行を抑制することができる。
【0022】
このように、この横型ルーパー設備1によれば、金属帯Kの蛇行を矯正する装置として、金属帯Kの蛇行方向と蛇行量を検出する蛇行検出センサ22と、スイングロール5およびキャリアロール4を金属帯Kとの対向方向に揺動させてロール4,5にカント角度βを付与可能なアクチュエータと、蛇行検出センサ22の検出情報に基づいて、金属帯Kの蛇行を抑制するようにカント角度βを付与する制御部20とを有するので、スイングロール5またはキャリアロール4のカント角度βを可変させ、これにより、当該ロールの蛇行矯正能力を向上させて、ループセクション2内の金属帯Kの蛇行を抑制することができる。
【0023】
そして、このような構成であれば、カント角度を可変させることができるので、蛇行が検出されないときには、例えばカント角度を零とすることもできるし、必要十分な最小限の角度にすることができる。よって、例えば特許文献1に示されるような、磁石による金属帯への押し付け力を増すような構成とは蛇行抑制の作用機序が異なるため、この例のように、金属帯Kの表面の形状が悪い圧延材を通す酸洗ラインにおいても、ロールの摩耗量の増大を抑制できる。
【0024】
また、上記スイングロール5およびキャリアロール4の長さは900mm程度であり、本実施形態では、カント角度を0°〜3°の範囲で可変する設定とされているため、例えば3°のカント角度を付ける場合、ロール端を50mm程度上昇させる程度の設備で実施可能なので、例えば上記特許文献2に開示されるような、ステアリング機構を設ける構成よりも設備の小型化を図る上で好適である。
なお、本発明に係る金属帯の蛇行矯正装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
例えば、上記実施形態では、キャリアロール4を主に説明しつつ、キャリアロール4およびスイングロール5それぞれに「カント角度」を変えられる機構を備える例を説明したが、これに限らず、「カント角度」を変えられる機構は、キャリアロール4およびスイングロール5の少なくとも一方に装備されていれば、金属帯Kの蛇行を抑制することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 横型ルーパー設備
2 ループセクション
3 ループカー
4 キャリアロール
5 スイングロール
6 支軸
7 軸受
8 移動端支持ローラ
9 固定端支持ローラ
11 ロール架台
12 水平揺動用シリンダ
13 水平揺動用アーム
14 水平揺動軸
15 上下揺動用モータ
16 上下揺動用ジャッキ
17 上下揺動軸
20 制御部
22 蛇行検出センサ
H 搬送方向
K 金属帯
α スキュー角度
β カント角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯の連続処理ラインに用いられ、ループセクションの入側または出側とループカー間の金属帯がスイングロールおよびキャリアロールによって支持されるとともに、ループカーがループセクション内を走行することにより、ループセクション内の金属帯容量を増減させる横型ルーパー設備に装備され、搬送中の金属帯の蛇行を矯正する金属帯の蛇行矯正装置であって、
前記スイングロールの出側での金属帯の蛇行方向と蛇行量を検出する蛇行検出センサと、前記スイングロールおよび前記キャリアロールの少なくとも一方を金属帯表面との対向方向にカント角度を付けるように揺動させるアクチュエータと、前記蛇行検出センサの検出情報を取得するとともに前記アクチュエータを制御可能な制御部とを備え、前記制御部は、前記蛇行検出センサの検出情報に基づいて、前記アクチュエータを制御して前記カント角度を金属帯の蛇行を抑止するように可変することを特徴とする金属帯の蛇行矯正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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