金属成形方法及び金属成形設備
【課題】素材の金属組織を微細化することにより、高強度化あるいは高延性化が達成された金属成形品を連続的に効率よく製造する金属成形方法及び金属成形設備を提供する。
【解決手段】収容部に収容された素材M1を排出する排出口を有する第1の金型10を加熱する第1の加熱工程と、収容部に収容され且つ加熱されている素材M1を加圧して、排出口から排出させる加圧・排出工程と、排出口から排出された素材M2が供給される第2の金型20を加熱する第2の加熱工程と、第2の金型20に素材M2を供給する供給工程と、素材M2を第2の金型20で成形する成形工程を備え、前記加圧・排出工程では、素材M2の供給方向と交差する方向から素材M1を加圧して剪断変形させ、素材M1の金属組織を微細化する。
【解決手段】収容部に収容された素材M1を排出する排出口を有する第1の金型10を加熱する第1の加熱工程と、収容部に収容され且つ加熱されている素材M1を加圧して、排出口から排出させる加圧・排出工程と、排出口から排出された素材M2が供給される第2の金型20を加熱する第2の加熱工程と、第2の金型20に素材M2を供給する供給工程と、素材M2を第2の金型20で成形する成形工程を備え、前記加圧・排出工程では、素材M2の供給方向と交差する方向から素材M1を加圧して剪断変形させ、素材M1の金属組織を微細化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属組織を有する素材の金属組織を微細化することにより、高強度化あるいは高延性化、あるいは均質化が達成された金属成形品を製造する金属成形方法及び金属成形設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属体や金属含有セラミックス体等の素材は、金属組織を有しているが、ECAP(Equal-Channel Angular Pressing)法によって金属組織を微細化することにより、前記素材の強度の向上あるいは延性の向上が可能であることが知られている。このECAP法は、図21に示すように、ダイ100に所要の角度に屈曲させた挿通路200を設けておき、この挿通路200に所要の金属体300をプランジャ400によって押圧しながら挿通させることで、金属体300を挿通路200に沿って屈曲させ、この屈曲に伴って金属体300に剪断応力を生起させて金属組織を微細化するものである。
【0003】
このようなECAP法を利用した金属加工方法として、例えば、金属体に剪断応力が作用する挿通路の剪断変形領域を局部的に加熱して、この加熱によって金属体の剪断変形部分の変形抵抗を低減させることによりプランジャで金属体を押圧する力を小さくし、加工性を向上させることが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、金属体の一部分の金属組織のみを微細化する方法として、回転子の端部軸線上に設けたプローブを金属体の所要の位置に当接させて押圧し、回転子を回転させることによって金属体のプローブとの当接部分を摩擦攪拌する方法が知られている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
そしてまた、金属組織が微細化された金属体を大量に製造する方法として、所定組成の低炭素鋼または低炭素合金鋼において、所要の高温状態から冷却する過程で断面積減少率を60%以上とする加工方法も知られている。(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
さらにまた、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させて前記金属体の金属組織を微細化することにより、剪断変形を低変形抵抗領域の一部分に集中して生じさせ、その部分における金属組織を極めて微細化して、金属体の強度の向上あるいは延性の向上を図る金属加工方法も紹介されている。(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2001−321825号公報
【特許文献2】特開平11−51103号公報
【特許文献3】特開平11−323481号公報
【特許文献4】特許第4002273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1に開示されているように、剪断変形領域を加熱した場合には、剪断変形領域を通過した金属体は所定温度に加熱されたままとなっており、挿通路から押出された金属体は全体的に変形抵抗が低下している。したがって、金属体を連続して挿通路に挿通させて剪断応力を繰り返し作用させるためには、金属体が所定温度以下となり、変形抵抗が大きくなるまで冷却するための冷却時間が必要である。このため、金属体に対して冷却時間よりも短い時間で連続的にECAP法による処理を行うことができず、生産性が極めて低いというのが実状である。
【0008】
また、特許文献2に開示されているように、プローブとの摩擦を利用した方法は、処理の高速化が極めて困難であるため、ECAP法の場合と同様に量産性に乏しいという問題がある。
【0009】
そしてまた、特許文献3に開示されている方法が適用可能な金属体は、特殊組成の低炭素鋼または低炭素合金鋼であって、それ以外の組成の金属体にはこの方法を適用することができない。
【0010】
さらにまた、特許文献4に開示されている加工方法は、金属組織を微細化することにより高強度化あるいは高延性化を図った各種の金属体あるいは金属含有セラミックス体を連続的に形成することについて開示されているが、素材の金属組織を微細化しながら金属成形品を製造する方法については言及されていない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、素材の金属組織を微細化することにより、高強度化あるいは高延性化が達成された金属成形品を連続的に効率よく製造する金属成形方法及び金属成形設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため本発明は、金属組織を有する素材が収容される収容部と、当該収容部に収容された前記素材を外部に排出する排出口を有する第1の金型を加熱する第1の加熱工程と、前記収容部に収容され且つ加熱されている前記素材を加圧して、前記排出口から排出させる加圧・排出工程と、前記加熱された第2の金型に、前記排出口から排出され且つ加熱されている素材を供給する供給工程と、前記第2の金型に供給された素材を当該第2の金型で成形する成形工程と、を備え、前記加圧・排出工程では、前記第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向から前記素材を加圧し、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化する金属成形方法を提供するものである。
【0013】
この金属成形方法によれば、第1の加熱工程によって、前記素材の変形抵抗を低下させることができ、加圧・排出工程において、変形抵抗が低下している素材を、前記第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向から加圧するため、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化することができる。したがって、前記排出口から排出される素材の高強度化あるいは高延性化を行うことができる。また、成形工程において、第2の金型に供給される素材は、前記加圧・排出工程で高強度化あるいは高延性化がなされた素材であるため、高強度化あるいは高延性化が達成された金属成形品を連続的に効率よく得ることができる。
【0014】
また、本発明にかかる金属成形方法は、前記排出口から排出された素材が供給される第2の金型の温度を調整する温度調整工程をさらに備えることができる。この温度調整工程は、前記第2の金型を加熱する第2の加熱工程であってもよく、第1の金型により加熱された素材を冷却する工程であってもよい。すなわち、この温度調整工程は、素材の種類や最終的に得たい製品の品質等に応じて、第1の金型により加熱された素材をさらに加熱する、あるいは当該素材の温度を維持する、当該素材を冷却する等、任意に選択することができる。
【0015】
前記加圧・排出工程において、前記素材を加圧する方向は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向に対し、30度以上、80度以下の角度で交差する方向とすることが、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化するうえで、さらに好ましい。また、前記素材を加圧する方向は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向に対し、約45度の角度で交差する方向とすることが、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化するうえで、より一層好ましい。
【0016】
また、本発明にかかる金属成形方法は、前記第1の金型が、第1の上型と第1の下型を備えてなり、前記第1の上型と、第1の下型を当接させる第1の当接工程をさらに有し、前記第1の当接工程後、前記加圧・排出工程を行うことができる。この方法によれば、第1の当接工程で、第1の上型と第1の下型とが当接した際に形成される空間によって、前記排出口を画定することができる。
【0017】
そしてまた、本発明にかかる金属成形方法は、前記第1の金型の排出口に配設され、前記第2の金型に供給される素材の形状を画定する第3の金型をさらに備え、前記第3の金型を加熱する第3の加熱工程をさらに有することができる。この方法によれば、第2の金型に供給される素材の形状を第3の金型によって画定する際に、当該素材を加熱することができるため、当該素材の金属組織をさらに効率よく微細化することができる。
【0018】
また、本発明にかかる金属成形方法は、前記第3の金型が、前記第1の上型に配設される第3の上型と、前記第1の下型に配設される第3の下型を備えてなり、前記第1の当接工程では、前記第3の上型と第3の下型を、前記第1の上型及び第1の下型と共に当接させることができる。
【0019】
さらにまた、本発明にかかる金属成形方法は、前記第2の金型が、第2の上型と第2の下型を備えてなり、前記成形工程では、前記第2の上型と第2の下型との間に供給された素材を成形することができる。
【0020】
さらにまた、本発明にかかる金属成形方法は、加圧・排出工程において、収容部に収容された略柱状の素材を加圧し、前記排出口から略板状の素材を排出することができる。すなわち、本発明にかかる金属成形方法は、従来、困難とされていた略円柱状から略板状への加工を、簡単に行うことができる。
【0021】
また、前記目的を達成するため本発明は、金属組織を有する素材が収容される収容部、及び当該収容部に収容された前記素材を外部に排出する排出口が形成された第1の金型と、前記第1の金型を所定温度に加熱する第1の加熱装置と、前記前記収容部に収容された素材を加圧して、前記排出口から排出させる加圧装置と、前記排出口から排出された素材が供給される第2の金型と、を備え、前記収容部は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向に延設されており、前記加圧装置は、当該交差する方向から前記素材を加圧し、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化する金属成形設備を提供するものである。
【0022】
この構成を備えた金属成形設備は、第1の金型に収容されている素材を第1の加熱装置によって加熱することができるため、当該素材の変形抵抗を低下させることができ、この変形抵抗が低下した素材を前記加圧装置で加圧することにより、当該素材を排出口から排出させることができる。ここで、前記収容部は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向に延設されており、前記加圧装置は、当該交差する方向から前記素材を加圧するため、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化することができる。したがって、金属組織が微細化された素材を前記排出口から排出し、第2の金型に供給することができる。したがって、高強度化あるいは高延性化が達成された金属成形品を連続的に効率よく得ることができる。
【0023】
また、本発明にかかる金属成形設備は、前記第2の金型を所定温度に調整する温度調整装置をさらに備えることができる。この温度調整装置は、前記第2の金型を加熱する第2の加熱装置であってもよく、第1の金型により加熱された素材を冷却する冷却装置であってもよい。すなわち、この温度調整装置は、素材の種類や最終的に得たい製品の品質等に応じて、第1の金型により加熱された素材をさらに加熱する装置、あるいは当該素材の温度を維持す装置、当該素材を冷却する装置等、任意に選択することができる。
【0024】
そしてまた、前記加圧装置は、前記収容部に挿入され、前記素材を加圧する加圧部を備えることができる。
【0025】
また、本発明にかかる金属成形設備は、前記収容部が、前記第2の金型に供給される素材の供給方向に対し、30度以上、80度以下の角度で交差する方向に傾斜して配設され、前記加圧部は、前記収容部の傾斜方向に沿って前記素材を加圧するよう構成することもできる。このように、加圧方向を傾斜させることで、当該素材をより効率よく剪断変形させて金属組織の微細化することができ、高強度化あるいは高延性化が一層向上した金属成形品を得ることができる。また、前記素材を加圧する方向は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向に対し、約45度の角度で交差する方向とすることが、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化するうえで、より一層好ましい。
【0026】
そしてまた、本発明にかかる金属成形設備は、前記第1の金型が、第1の上型と第1の下型を備えており、前記排出口は、当該第1の上型と第1の下型とを当接した際に形成される空間によって画定されるよう構成することもできる。
【0027】
また、本発明にかかる金属成形設備は、前記第1の金型の排出口に配設され、前記第2の金型に供給される素材の形状を画定する第3の金型をさらに備えることもできる。
【0028】
さらにまた、本発明にかかる金属成形設備は、前記第1の金型が、第1の上型と第1の下型を備えており、前記第3の金型は、当該第1の上型に配設される第3の上型と、当該第1の下型に配設される第3の下型を備えてなり、前記第3の上型と第3の下型とを当接した際に形成される空間によって前記排出口を画定し、前記第2の金型に供給される素材の形状を画定するよう構成することもできる。
【0029】
また、本発明にかかる金属成形設備は、前記第3の金型を所定温度に加熱する第3の加熱装置をさらに備えることができる。このように構成することで、第2の金型に供給される素材の形状を第3の金型によって画定する際に、当該第3の金型を第3の加熱装置によって加熱することができるため、素材も加熱され、前記排出口から排出される素材の金属組織をさらに効率よく微細化することができる。
【0030】
そしてまた、本発明にかかる金属成形設備は、前記第2の金型は、第2の上型と、第2の下型を備えてなり、当該第2の上型と第2の下型との間に、前記排出口から供給された素材を受容するよう構成することもできる。
【0031】
また、前記収容部は、前記第1の金型の内壁によって画定される略柱状の中空部から構成することもできる。さらにまた、前記第3の金型は、前記素材を略板状に成形することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる金属成形方法及び金属成形設備によれば、変形抵抗を低下させた素材を、第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向から加圧するため、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化することができる。この結果、高強度化あるいは高延性化が達成された金属成形品を連続的に効率よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、本発明の好適な実施の形態にかかる金属成形方法及び金属成形設備について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施の形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0034】
図1は、本実施の形態にかかる金属成形方法を実施するための金属成形設備を模式的に示す断面図、図2〜図6は、図1に示す金属成形設備を使用して本実施の形態にかかる金属成形方法を実施する際の各工程を模式的に示す断面図である。なお、前記各図では、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載してある。また、本実施の形態では、上型が配設される方向を「上」、下型が配設される方向を「下」と定義してあるが、一対の型は、上下方向に限らず、左右方向等、任意の位置に配設することができる。
【0035】
図1に示すように、本実施の形態にかかる金属成形設備1は、金属組織を有する素材M1を収容する収容部13と、収容部13の下端に形成された排出口14を有する第1の金型10と、第1の金型10の排出口14から排出された素材M2が供給される第2の金型20と、第1の金型10に配設された第3の金型30と、第1の金型10を加熱する第1の加熱装置40と、収容部13に収容された素材M1を加圧する加圧装置50と、第2の金型20を加熱する第2の加熱装置60と、を備えて構成されている。
【0036】
第1の金型10は、上下一対の金型である第1の上型11と第1の下型12とを備えている。第1の上型11と第1の下型12の少なくとも一方には、図示しない金型駆動装置が接続されており、第1の上型11と第1の下型12は、この金型駆動装置により、互いに近づく方向(当接する方向)及び遠ざかる方向に相対移動可能となっている。また、第1の上型11と第1の下型12は、互いに当接した状態で、後に詳述する第2の金型20を配設するための空間18を形成するよう構成されている。
【0037】
第1の上型11には、金属組織を有する素材M1(図2〜図4参照)が収容される収容部13が形成されており、収容部13の下端には、収容部13に連通する排出口14が形成されている。収容部13は、第1の上型11の内壁によって画定される略円柱状の中空部から形成されており、この中空部は、第2の金型20に供給される素材M2(図2〜図6参照)の供給方向(図1に矢印Xで示す方向)に対し、図1に示す角度α(本実施の形態では約45度)で交差するよう傾斜している。また、収容部13の上部には、後に詳述する加圧装置50の構成要素であるプランジャ51が進退可能に挿入されており、収容部13に収容された素材M1を、収容部13の内壁に沿って所望の圧力で加圧するようになっている。さらにまた、第1の上型11には、後に詳述する第1の加熱装置40の構成要素であるヒータ41が配設されている。また、第1の上型11の第1の下型12と対向する面であって、後に詳述する第2の金型20寄りの先端には、後に詳述する第3の上型31が配設される配設部15が形成されている。
【0038】
第1の下型12には、後に詳述する第1の加熱装置40の構成要素であるヒータ42が配設されている。また、第1の下型12の第1の上型11と対向する面であって、後に詳述する第2の金型20の近傍には、後に詳述する第3の下型32が配設される配設部16が形成されている。この第1の下型12は、第1の上型11が当接した際に、第1の上型11と、収容部13の下端面と、第3の上型31と、第3の下型32とによって排出口14を画定する。
【0039】
第2の金型20は、第1の上型11と第1の下型12によって形成された空間18に配設されている。この第2の金型20は、上下一対の金型である第2の上型21と第2の下型22とを備えており、第2の上型21及び第2の下型22には、これらを互いに近づく方向(当接する方向)及び遠ざかる方向に移動させる金型駆動装置70のシャフト71及び72が各々接続されている。そして、第2の上型21及び第2の下型22は、金型駆動装置によって、互いに当接した際に、これらの間に供給されている素材M2を所望の形状にプレス加工して金属成型品(例えば、図9、図17〜図20参照)を製造する。また、第2の上型21には、後に詳述する第2の加熱装置60の構成要素であるヒータ61が配設されており、第2の下型22には、第2の加熱装置60の構成要素であるヒータ62が配設されている。
【0040】
第3の金型30は、上下一対の金型である第3の上型31と第3の下型32とを備えている。第3の上型31は、第1の上型11に形成された配設部15に着脱可能に取付けられており、第3の下型32は、第1の下型12に形成された配設部16に着脱可能に取付けられている。したがって、第3の上型31と第3の下型32は、第1の上型11及び第1の下型12が互いに相対移動する際に、これらと共に移動する。また、第3の上型31と第3の下型32は、前述したように、排出口14の形状を画定するため、第3の上型31と第3の下型32の形状によって、第2の金型20に供給される素材M2の形状が決定される。なお、本実施の形態では、素材M2の形状が略板状となる構成の第3の上型31と第3の下型32を選択した。
【0041】
ここで、第3の上型31及び第3の下型32は、第1の上型11及び第1の下型12に各々着脱可能に取付けられているため、第2の金型20に供給される素材M2の所望の形状にそれぞれ相補する形状を有する複数種の第3の上型31及び第3の下型32を用意しておけば、これらを取り替えるだけで簡単に所望の形状の素材M2を得ることができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、第3の上型31と第3の下型32は、第1の加熱装置40によって第1の上型11及び第1の下型12と同様に加熱されるが、第3の上型31と第3の下型32を加熱する第3の加熱装置をさらに配設してもよい。この場合は、第1の金型10と、第3の金型30の加熱温度を別々に制御することができる。
【0043】
第1の加熱装置40は、第1の上型11に配設され、第1の上型11を加熱するヒータ41と、第1の下型12に配設され、第1の下型12を加熱するヒータ42と、第1の上型11及び第1の下型12の温度をモニタし、加熱温度を制御する図示しない温度制御部を備えている。
【0044】
加圧装置50は、収容部13に進退可能に挿入され且つ収容部13に収容されている素材M1を加圧するプランジャ51と、プランジャ51を進退運動させる図示しない駆動部と、この駆動部に接続され、プランジャ51が素材M1を加圧する際の圧力を制御する図示しない圧力制御部を備えている。プランジャ51は、略円柱状を有しており、収容部13内を進退移動する程度の隙間を、収容部13を画定する内壁との間に形成するサイズを有している。このプランジャ51の軸心O(図1参照)は、素材M2の供給方向(図1に矢印Xで示す方向)に対し、角度α(本実施の形態では約45度)で交差するよう傾斜している。したがって、プランジャ51は、収容部13の傾斜方向に沿って素材M1を加圧することになる。
【0045】
第2の加熱装置60は、第2の上型21に配設され、第2の上型21を加熱するヒータ61と、第2の下型22に配設され、第2の下型22を加熱するヒータ62と、第2の上型21及び第2の下型22の温度をモニタし、加熱温度を制御する図示しない温度制御部を備えている。
【0046】
次に、本実施の形態にかかる金属成形設備1を使用した金属成形方法について詳細に説明する。
【0047】
先ず、第1の加熱装置40を作動させ、第1の上型11及び第1の下型12、第3の上型31及び第3の下型32を約200℃に加熱する。また、第2の加熱装置60を作動させ、第2の上型21及び第2の下型22を約200℃に加熱する。
【0048】
次に、約200℃に加熱されている第1の上型11に形成された収容部13内に略円柱形の素材M1を収容させる。(図2参照)。この時、第1の上型11及び第1の下型12の温度は、前述した図示しない温度制御部によりモニタされており、第1の上型11及び第1の下型12は、約200℃に保持されることになる。その後、加圧装置50のプランジャ51を収容部13の上部に挿入する。(図2参照)。
【0049】
素材M1は、1種類の金属元素からなる単一金属で構成することができる。また、素材M1は、2種類以上の金属元素からなる合金で構成してもよいし、金属元素と非金属元素とからなる金属間化合物で構成してもよい。さらに、素材M1は、一様の組成となっている必要はなく、例えば、図13に断面模式図として示すように、第1金属層101と、第2金属層102と、第3金属層103を積層した積層体であってもよい。この時、第1金属層101、第2金属層102、第3金属層103は、それぞれ所要の金属あるいは合金であればよい。第1金属層101と、第2金属層102と、第3金属層103とは、単に重合することにより積層体としてもよいし、めっき処理、蒸着処理あるいは圧着処理等によって積層してもよい。ここで、積層体は、3層に限定するものではなく、適宜の数だけ重合して積層体を構成してよい。
【0050】
また、素材M1は、例えば、図14に断面模式図として示すように、第1金属粉体104と、第2金属粉体105とを混合した混合体を所定形状に仮焼成形した仮焼体であってもよい。この時、第1金属粉体104と第2金属粉体105の2種類の粉体で仮焼体を構成するだけでなく、さらに多種の粉体を混合して仮焼体を形成してもよく、金属の粉体だけでなく非金属の粉体を混合して仮焼体を形成してもよい。
【0051】
そしてまた、素材M1は、例えば、図15に断面模式図として示すように、所定形状とした多孔質体106の孔部に金属粉体107を充填して形成した充填体であってもよい。なお、多孔質体には、金属粉体107を充填する場合だけでなく非金属粉体を充填してもよい。
【0052】
さらにまた、素材M1は、例えば、図16に断面模式図として示すように、複数本の第1金属線材108と、複数本の第2金属線材109とを束ねて形成した金属線束であってもよい。このとき、第1金属線材108と第2金属線材109の2種類の金属線材で金属線束を構成するだけでなく、さらに多種の金属線材を束ねて金属線束を形成してもよい。
【0053】
このように、素材M1は、様々な形態が可能であって、後述するように剪断変形によって金属組織が微細化するのであればどのような形態であってもよい。
【0054】
なお、本実施の形態では、素材M1は、収容部13に好適に収容されるよう、収容部13の形状に合った略円柱形状を有するアルミニウムを使用した。
【0055】
次に、図示しない金型駆動装置により、第1の上型11と第1の下型12を互いに近づく方向(当接する方向)に相対移動させる。(図3参照)。この時、例えば、第1の下型12を固定しておき、第1の上型11を第1の下型12に向けて移動させてもよく、第1の上型11を固定しておき、第1の下型12を第1の上型11に向けて移動させてもよい。または、第1の上型11と第1の下型12の両者を移動させてもよい。このようにして、第1の上型11と第1の下型12を当接させることで、図3に示すように、第1の上型11と、第1の下型12と、収容部13の下端面と、第3の上型31と、第3の下型32とにより排出口14が画定される。
【0056】
次に、この状態で加圧装置50を駆動させ、プランジャ51を斜め下方向に移動させて収容部13に収容されている素材M1を、200℃の加工温度にて、アルミニウム合金においては約870(N/mm2)の圧力で、マグネシウム合金においては約630(N/mm2)の圧力で加圧する。(図4参照)。この時、素材M1は、約200℃に加熱されているため、変形抵抗が低下しており、加熱されていない場合に比べ、外力の作用に伴って変形を生じやすくなっている。そして、この変形抵抗が低下した素材M1に圧力が加えられることになるが、この圧力が加えられた素材M1は、排出口14において、斜めの方向(図1に示す軸心O方向)から水平な方向(図1に示す矢印X方向)に曲げられながら略板状(図7参照)に剪断変形され、この時かかる剪断応力により金属組織が微細化される。ここで、この略板状の素材M2は、図7に示すように、略円柱状の素材M1の直径W1よりも広い幅W2を備えている。次いで、この金属組織が微細化された素材M2が第2の上型21と、第2の下型22との間に供給される。(図4参照)。なお、本実施の形態では、素材M1の押出速度を17.30mm/secに設定した。
【0057】
次に、金型駆動装置70を駆動してシャフト71及び72を動かし、第2の上型21と第2の下型22を互いに近づく方向(当接する方向)に移動させ、素材M2を成形する。(図5参照)。この時、第2の上型21及び第2の下型22は、約200℃に加熱されており、素材M2は、第2の上型21及び第2の下型22によってプレス成形されるため、さらに金属組織が微細化される。
【0058】
次いで、冷却後、金型駆動装置70により、第2の上型21及び第2の下型22を互いに遠ざかる方向に移動させ、プレス成形された成型品M3(図8参照)を取り出す。この成型品M3は、図8に示すように、製品となる製品部分m1と、不要部分(バリ部分)m2から構成されている。次に、製品部分m1から不要部分m2を取り除き(仕上げ工程)、金属組織が微細化され、高強度化あるいは高延性化が達成された金属成形品(発明品)を得た。(図9参照)。
【0059】
次に、比較として、素材M1と同様の成分からなる素材を、約200℃で加熱した第2の上型21及び第2の下型22に直接供給してプレス成形を行い、金属成形品(比較品)を得た。
【0060】
次に、このようにして得られた発明品と比較品の金属組織を電子顕微鏡にて観察した。図10は、本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた金属成型品(発明品)の金属組織の光学顕微鏡写真であり、図11は、従来の金属成形方法で得られた金属成型品(比較品)の金属組織の光学顕微鏡写真である。また、図22は、素材M1の金属組織の光学顕微鏡写真であり、その平均結晶粒径は、約20μmである。図10に示す発明品は、素材M1(マグネシウム合金)を剪断変形させた後、プレス成形することにより、金属組織の平均結晶粒径が、約5μmとなり、図22に示す素材M1に比べ、平均結晶粒径が、1/4程度に微細化され、且つ図11に示す従来品の金属組織の結晶粒よりも、平均結晶粒径が、1/5程度に微細化されたことが判る。
【0061】
次に、発明品と比較品との耐力、引張り強度、均一延びを比較した。この結果を図12に示す。図12から、発明品は、均一延びを増加させることなく耐力及び引張り強度を向上させることができることが判る。
【0062】
なお、本実施の形態では、加圧装置50によって素材M1を加圧する工程で、素材M1を約200℃に加熱した場合について説明したが、これに限らず、素材M1を加熱する温度は、素材M1の変形抵抗を低下させることが可能な温度であれば、特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。例えば、素材M1がアルミニウムであれば、150〜300℃程度が好ましい。また、素材M1がマグネシウムの場合は、170〜250℃程度が好ましい。そしてまた、素材M1が、銅合金(例えば、Cu−Zn)の場合は、250〜500℃程度が好ましい。
【0063】
また、本実施の形態では、素材M1と素材M2を、ほぼ同一の温度で加熱した場合について説明したが、これに限らず、素材M1と素材M2を加熱する温度は、素材M1の種類や特性、得られる金属成型品に必要な特性値(強度や延性等)等によって、任意に選択することができる。例えば、素材M1を素材M2よりも高い温度で加熱した場合、焼き入れのような材料の急冷強化される効果が得られるなる傾向があり、素材M1を素材M2よりも低い温度で加熱した場合、結晶粒は微細化する傾向がある。
【0064】
また、素材M1の種類や特性、得られる金属成型品に必要な特性値(強度や延性等)等によっては、第2の加熱装置60の代わりに、素材M2を冷却する冷却装置を配設してもよい。具体的には、素材M2を冷却してもよい。例えば、素材M1の押出速度が速い場合、摩擦熱が生じることがあるが、このような場合、素材M2を所望の温度に冷却することで摩擦熱による影響を受けることを抑制することができる。なお、素材M1の押出速度が遅いほど、金属の結晶組織が安定し、均一で微細な結晶粒径が得られるが、押出速度を遅くすると、金属成形に時間がかるため、生産性の観点からすると押出速度をなるべく速くすることが望まれる。したがって、素材M1の種類や特性、得られる金属成型品に必要な特性値(強度や延性等)等によって押出速度を選択することで、生産性と金属成型品の品質とのバランスを最適にすることができる。
【0065】
なお、一例として、素材M1の押出速度を0.07mm/secにした際の金属組織の光学顕微鏡写真を図23に示す。遅い押出速度で得られた発明品(図23)の平均結晶粒径は、約1μmであり、図10と図23を比較すると、発明品(図23)の方が、速い押出速度で得られた発明品(図10)よりも金属の結晶組織が安定し、均一で微細な結晶粒径が得られていることが判る。
【0066】
そしてまた、本実施の形態では、略円柱状の素材M1を使用した場合について説明したが、これに限らず、素材M1の形状は、例えば、軸線に垂直な断面が楕円形の略円柱状、前記断面が矩形の略円柱状、前記断面が多角形の略円柱状等、特に限定されるものではない。
【0067】
そしてまた、例えば、最終製品として、図17〜図20に示すような複雑な形状の金属成型品を製造する場合は、素材M2を成形する際の成形荷重を大きくして、板厚方向の形状も成形する鍛造加工を行うこともできる。
【0068】
また、本実施の形態では、収容部13を、第2の金型20に供給される素材M2の供給方向(図1に矢印Xで示す方向)に対し約45度傾斜させ、収容部13に収容された素材M1を、素材M2の供給方向に対し約45度で交差する(傾斜する)方向から加圧した場合について説明したが、これに限らず、収容部13に収容された素材M1を、素材M2の供給方向に対し交差する方向から加圧して排出口14から排出させることが可能であれば、前記交差する角度αは、例えば、0<α≦90等、所望により決定することができる。
【0069】
ここで、例えば、圧力や素材M1の形状、サイズ等、諸条件が同一の場合、角度αが90度に近いほど、素材M1の押出速度が遅くなり、角度αが0度に近いほど、素材M1の押出速度が速くなる。したがって、素材M1の種類や特性、得られる金属成型品に必要な特性値(強度や延性等)等によって収容部13の傾斜角度を選択することで、生産性と金属成型品の品質とのバランスを最適にすることができる。
【0070】
さらにまた、本実施の形態では、第1の上型11と第1の下型12を備えた第1の金型10について説明したが、これに限らず、第1の金型10は、収容部13に収容した素材M1を、素材M2の供給方向に対し交差する方向から加圧して、素材M1の金属組織を微細化して排出口14から排出し、第2の金型20に供給することが可能であれば、例えば、第1の上型11と第1の下型12を一体化した構造等、他の構成を備えていてもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、第1の上型11と第1の下型12に、第3の上型31及び第3の下型32を各々配設した場合について説明したが、これに限らず、第1の金型10に第3の金型30の機能を持たせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施の形態にかかる金属成形方法を実施するための金属成形設備を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す金属成形設備を使用して本実施の形態にかかる金属成形方法を実施する際の工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図3】図1に示す金属成形設備を使用して本実施の形態にかかる金属成形方法を実施する際の工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図4】図1に示す金属成形設備を使用して本実施の形態にかかる金属成形方法を実施する際の工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図5】図1に示す金属成形設備を使用して本実施の形態にかかる金属成形方法を実施する際の工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図6】図1に示す金属成形設備を使用して本実施の形態にかかる金属成形方法を実施する際の工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図7】図4に示す工程の際に、素材M2を平面視した状態を示す図である。
【図8】図6に示す工程で得た成型品の斜視図である。
【図9】図6に示す工程で得た成型品を仕上げ加工して製品とした金属成型品の斜視図である。
【図10】本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた金属成型品(発明品)の金属組織の光学顕微鏡写真である。
【図11】従来の金属成形方法で得られた金属成型品(比較品)の金属組織の光学顕微鏡写真である。
【図12】本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた金属成型品(発明品)の物性と、従来の金属成形方法で得られた金属成型品(比較品)の物性を示す図である。
【図13】素材M1の一例を示す断面模式図である。
【図14】素材M1の一例を示す断面模式図である。
【図15】素材M1の一例を示す断面模式図である。
【図16】素材M1の一例を示す断面模式図である。
【図17】本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた他の形状を有する金属成型品(製品)の斜視図である。
【図18】本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた他の形状を有する金属成型品(製品)の斜視図である。
【図19】本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた他の形状を有する金属成型品(製品)の斜視図である。
【図20】本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた他の形状を有する金属成型品(製品)の斜視図である。
【図21】従来のECAP法を説明するための断面図である。
【図22】素材M1の金属組織の光学顕微鏡写真である。
【図23】本発明の他の本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた金属成型品(発明品)の金属組織の光学顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0073】
1…金属成形設備、 10…第1の金型、 11…第1の上型、 12…第1の下型、 13…収容部、 14…排出口、 20…第2の金型、 21…第2の上型、 22…第2の下型、 30…第3の金型、 31…第3の上型、 32…第3の下型、 40…第1の加熱装置、 50…加圧装置、 51…プランジャ、 60…第2の加熱装置、 70…金型駆動装置、 M1、M2…素材
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属組織を有する素材の金属組織を微細化することにより、高強度化あるいは高延性化、あるいは均質化が達成された金属成形品を製造する金属成形方法及び金属成形設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属体や金属含有セラミックス体等の素材は、金属組織を有しているが、ECAP(Equal-Channel Angular Pressing)法によって金属組織を微細化することにより、前記素材の強度の向上あるいは延性の向上が可能であることが知られている。このECAP法は、図21に示すように、ダイ100に所要の角度に屈曲させた挿通路200を設けておき、この挿通路200に所要の金属体300をプランジャ400によって押圧しながら挿通させることで、金属体300を挿通路200に沿って屈曲させ、この屈曲に伴って金属体300に剪断応力を生起させて金属組織を微細化するものである。
【0003】
このようなECAP法を利用した金属加工方法として、例えば、金属体に剪断応力が作用する挿通路の剪断変形領域を局部的に加熱して、この加熱によって金属体の剪断変形部分の変形抵抗を低減させることによりプランジャで金属体を押圧する力を小さくし、加工性を向上させることが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、金属体の一部分の金属組織のみを微細化する方法として、回転子の端部軸線上に設けたプローブを金属体の所要の位置に当接させて押圧し、回転子を回転させることによって金属体のプローブとの当接部分を摩擦攪拌する方法が知られている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
そしてまた、金属組織が微細化された金属体を大量に製造する方法として、所定組成の低炭素鋼または低炭素合金鋼において、所要の高温状態から冷却する過程で断面積減少率を60%以上とする加工方法も知られている。(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
さらにまた、金属体に変形抵抗を局部的に低下させた低変形抵抗領域を形成し、この低変形抵抗領域の一部分を剪断変形させて前記金属体の金属組織を微細化することにより、剪断変形を低変形抵抗領域の一部分に集中して生じさせ、その部分における金属組織を極めて微細化して、金属体の強度の向上あるいは延性の向上を図る金属加工方法も紹介されている。(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2001−321825号公報
【特許文献2】特開平11−51103号公報
【特許文献3】特開平11−323481号公報
【特許文献4】特許第4002273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1に開示されているように、剪断変形領域を加熱した場合には、剪断変形領域を通過した金属体は所定温度に加熱されたままとなっており、挿通路から押出された金属体は全体的に変形抵抗が低下している。したがって、金属体を連続して挿通路に挿通させて剪断応力を繰り返し作用させるためには、金属体が所定温度以下となり、変形抵抗が大きくなるまで冷却するための冷却時間が必要である。このため、金属体に対して冷却時間よりも短い時間で連続的にECAP法による処理を行うことができず、生産性が極めて低いというのが実状である。
【0008】
また、特許文献2に開示されているように、プローブとの摩擦を利用した方法は、処理の高速化が極めて困難であるため、ECAP法の場合と同様に量産性に乏しいという問題がある。
【0009】
そしてまた、特許文献3に開示されている方法が適用可能な金属体は、特殊組成の低炭素鋼または低炭素合金鋼であって、それ以外の組成の金属体にはこの方法を適用することができない。
【0010】
さらにまた、特許文献4に開示されている加工方法は、金属組織を微細化することにより高強度化あるいは高延性化を図った各種の金属体あるいは金属含有セラミックス体を連続的に形成することについて開示されているが、素材の金属組織を微細化しながら金属成形品を製造する方法については言及されていない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、素材の金属組織を微細化することにより、高強度化あるいは高延性化が達成された金属成形品を連続的に効率よく製造する金属成形方法及び金属成形設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため本発明は、金属組織を有する素材が収容される収容部と、当該収容部に収容された前記素材を外部に排出する排出口を有する第1の金型を加熱する第1の加熱工程と、前記収容部に収容され且つ加熱されている前記素材を加圧して、前記排出口から排出させる加圧・排出工程と、前記加熱された第2の金型に、前記排出口から排出され且つ加熱されている素材を供給する供給工程と、前記第2の金型に供給された素材を当該第2の金型で成形する成形工程と、を備え、前記加圧・排出工程では、前記第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向から前記素材を加圧し、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化する金属成形方法を提供するものである。
【0013】
この金属成形方法によれば、第1の加熱工程によって、前記素材の変形抵抗を低下させることができ、加圧・排出工程において、変形抵抗が低下している素材を、前記第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向から加圧するため、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化することができる。したがって、前記排出口から排出される素材の高強度化あるいは高延性化を行うことができる。また、成形工程において、第2の金型に供給される素材は、前記加圧・排出工程で高強度化あるいは高延性化がなされた素材であるため、高強度化あるいは高延性化が達成された金属成形品を連続的に効率よく得ることができる。
【0014】
また、本発明にかかる金属成形方法は、前記排出口から排出された素材が供給される第2の金型の温度を調整する温度調整工程をさらに備えることができる。この温度調整工程は、前記第2の金型を加熱する第2の加熱工程であってもよく、第1の金型により加熱された素材を冷却する工程であってもよい。すなわち、この温度調整工程は、素材の種類や最終的に得たい製品の品質等に応じて、第1の金型により加熱された素材をさらに加熱する、あるいは当該素材の温度を維持する、当該素材を冷却する等、任意に選択することができる。
【0015】
前記加圧・排出工程において、前記素材を加圧する方向は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向に対し、30度以上、80度以下の角度で交差する方向とすることが、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化するうえで、さらに好ましい。また、前記素材を加圧する方向は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向に対し、約45度の角度で交差する方向とすることが、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化するうえで、より一層好ましい。
【0016】
また、本発明にかかる金属成形方法は、前記第1の金型が、第1の上型と第1の下型を備えてなり、前記第1の上型と、第1の下型を当接させる第1の当接工程をさらに有し、前記第1の当接工程後、前記加圧・排出工程を行うことができる。この方法によれば、第1の当接工程で、第1の上型と第1の下型とが当接した際に形成される空間によって、前記排出口を画定することができる。
【0017】
そしてまた、本発明にかかる金属成形方法は、前記第1の金型の排出口に配設され、前記第2の金型に供給される素材の形状を画定する第3の金型をさらに備え、前記第3の金型を加熱する第3の加熱工程をさらに有することができる。この方法によれば、第2の金型に供給される素材の形状を第3の金型によって画定する際に、当該素材を加熱することができるため、当該素材の金属組織をさらに効率よく微細化することができる。
【0018】
また、本発明にかかる金属成形方法は、前記第3の金型が、前記第1の上型に配設される第3の上型と、前記第1の下型に配設される第3の下型を備えてなり、前記第1の当接工程では、前記第3の上型と第3の下型を、前記第1の上型及び第1の下型と共に当接させることができる。
【0019】
さらにまた、本発明にかかる金属成形方法は、前記第2の金型が、第2の上型と第2の下型を備えてなり、前記成形工程では、前記第2の上型と第2の下型との間に供給された素材を成形することができる。
【0020】
さらにまた、本発明にかかる金属成形方法は、加圧・排出工程において、収容部に収容された略柱状の素材を加圧し、前記排出口から略板状の素材を排出することができる。すなわち、本発明にかかる金属成形方法は、従来、困難とされていた略円柱状から略板状への加工を、簡単に行うことができる。
【0021】
また、前記目的を達成するため本発明は、金属組織を有する素材が収容される収容部、及び当該収容部に収容された前記素材を外部に排出する排出口が形成された第1の金型と、前記第1の金型を所定温度に加熱する第1の加熱装置と、前記前記収容部に収容された素材を加圧して、前記排出口から排出させる加圧装置と、前記排出口から排出された素材が供給される第2の金型と、を備え、前記収容部は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向に延設されており、前記加圧装置は、当該交差する方向から前記素材を加圧し、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化する金属成形設備を提供するものである。
【0022】
この構成を備えた金属成形設備は、第1の金型に収容されている素材を第1の加熱装置によって加熱することができるため、当該素材の変形抵抗を低下させることができ、この変形抵抗が低下した素材を前記加圧装置で加圧することにより、当該素材を排出口から排出させることができる。ここで、前記収容部は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向に延設されており、前記加圧装置は、当該交差する方向から前記素材を加圧するため、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化することができる。したがって、金属組織が微細化された素材を前記排出口から排出し、第2の金型に供給することができる。したがって、高強度化あるいは高延性化が達成された金属成形品を連続的に効率よく得ることができる。
【0023】
また、本発明にかかる金属成形設備は、前記第2の金型を所定温度に調整する温度調整装置をさらに備えることができる。この温度調整装置は、前記第2の金型を加熱する第2の加熱装置であってもよく、第1の金型により加熱された素材を冷却する冷却装置であってもよい。すなわち、この温度調整装置は、素材の種類や最終的に得たい製品の品質等に応じて、第1の金型により加熱された素材をさらに加熱する装置、あるいは当該素材の温度を維持す装置、当該素材を冷却する装置等、任意に選択することができる。
【0024】
そしてまた、前記加圧装置は、前記収容部に挿入され、前記素材を加圧する加圧部を備えることができる。
【0025】
また、本発明にかかる金属成形設備は、前記収容部が、前記第2の金型に供給される素材の供給方向に対し、30度以上、80度以下の角度で交差する方向に傾斜して配設され、前記加圧部は、前記収容部の傾斜方向に沿って前記素材を加圧するよう構成することもできる。このように、加圧方向を傾斜させることで、当該素材をより効率よく剪断変形させて金属組織の微細化することができ、高強度化あるいは高延性化が一層向上した金属成形品を得ることができる。また、前記素材を加圧する方向は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向に対し、約45度の角度で交差する方向とすることが、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化するうえで、より一層好ましい。
【0026】
そしてまた、本発明にかかる金属成形設備は、前記第1の金型が、第1の上型と第1の下型を備えており、前記排出口は、当該第1の上型と第1の下型とを当接した際に形成される空間によって画定されるよう構成することもできる。
【0027】
また、本発明にかかる金属成形設備は、前記第1の金型の排出口に配設され、前記第2の金型に供給される素材の形状を画定する第3の金型をさらに備えることもできる。
【0028】
さらにまた、本発明にかかる金属成形設備は、前記第1の金型が、第1の上型と第1の下型を備えており、前記第3の金型は、当該第1の上型に配設される第3の上型と、当該第1の下型に配設される第3の下型を備えてなり、前記第3の上型と第3の下型とを当接した際に形成される空間によって前記排出口を画定し、前記第2の金型に供給される素材の形状を画定するよう構成することもできる。
【0029】
また、本発明にかかる金属成形設備は、前記第3の金型を所定温度に加熱する第3の加熱装置をさらに備えることができる。このように構成することで、第2の金型に供給される素材の形状を第3の金型によって画定する際に、当該第3の金型を第3の加熱装置によって加熱することができるため、素材も加熱され、前記排出口から排出される素材の金属組織をさらに効率よく微細化することができる。
【0030】
そしてまた、本発明にかかる金属成形設備は、前記第2の金型は、第2の上型と、第2の下型を備えてなり、当該第2の上型と第2の下型との間に、前記排出口から供給された素材を受容するよう構成することもできる。
【0031】
また、前記収容部は、前記第1の金型の内壁によって画定される略柱状の中空部から構成することもできる。さらにまた、前記第3の金型は、前記素材を略板状に成形することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる金属成形方法及び金属成形設備によれば、変形抵抗を低下させた素材を、第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向から加圧するため、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化することができる。この結果、高強度化あるいは高延性化が達成された金属成形品を連続的に効率よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、本発明の好適な実施の形態にかかる金属成形方法及び金属成形設備について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施の形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0034】
図1は、本実施の形態にかかる金属成形方法を実施するための金属成形設備を模式的に示す断面図、図2〜図6は、図1に示す金属成形設備を使用して本実施の形態にかかる金属成形方法を実施する際の各工程を模式的に示す断面図である。なお、前記各図では、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載してある。また、本実施の形態では、上型が配設される方向を「上」、下型が配設される方向を「下」と定義してあるが、一対の型は、上下方向に限らず、左右方向等、任意の位置に配設することができる。
【0035】
図1に示すように、本実施の形態にかかる金属成形設備1は、金属組織を有する素材M1を収容する収容部13と、収容部13の下端に形成された排出口14を有する第1の金型10と、第1の金型10の排出口14から排出された素材M2が供給される第2の金型20と、第1の金型10に配設された第3の金型30と、第1の金型10を加熱する第1の加熱装置40と、収容部13に収容された素材M1を加圧する加圧装置50と、第2の金型20を加熱する第2の加熱装置60と、を備えて構成されている。
【0036】
第1の金型10は、上下一対の金型である第1の上型11と第1の下型12とを備えている。第1の上型11と第1の下型12の少なくとも一方には、図示しない金型駆動装置が接続されており、第1の上型11と第1の下型12は、この金型駆動装置により、互いに近づく方向(当接する方向)及び遠ざかる方向に相対移動可能となっている。また、第1の上型11と第1の下型12は、互いに当接した状態で、後に詳述する第2の金型20を配設するための空間18を形成するよう構成されている。
【0037】
第1の上型11には、金属組織を有する素材M1(図2〜図4参照)が収容される収容部13が形成されており、収容部13の下端には、収容部13に連通する排出口14が形成されている。収容部13は、第1の上型11の内壁によって画定される略円柱状の中空部から形成されており、この中空部は、第2の金型20に供給される素材M2(図2〜図6参照)の供給方向(図1に矢印Xで示す方向)に対し、図1に示す角度α(本実施の形態では約45度)で交差するよう傾斜している。また、収容部13の上部には、後に詳述する加圧装置50の構成要素であるプランジャ51が進退可能に挿入されており、収容部13に収容された素材M1を、収容部13の内壁に沿って所望の圧力で加圧するようになっている。さらにまた、第1の上型11には、後に詳述する第1の加熱装置40の構成要素であるヒータ41が配設されている。また、第1の上型11の第1の下型12と対向する面であって、後に詳述する第2の金型20寄りの先端には、後に詳述する第3の上型31が配設される配設部15が形成されている。
【0038】
第1の下型12には、後に詳述する第1の加熱装置40の構成要素であるヒータ42が配設されている。また、第1の下型12の第1の上型11と対向する面であって、後に詳述する第2の金型20の近傍には、後に詳述する第3の下型32が配設される配設部16が形成されている。この第1の下型12は、第1の上型11が当接した際に、第1の上型11と、収容部13の下端面と、第3の上型31と、第3の下型32とによって排出口14を画定する。
【0039】
第2の金型20は、第1の上型11と第1の下型12によって形成された空間18に配設されている。この第2の金型20は、上下一対の金型である第2の上型21と第2の下型22とを備えており、第2の上型21及び第2の下型22には、これらを互いに近づく方向(当接する方向)及び遠ざかる方向に移動させる金型駆動装置70のシャフト71及び72が各々接続されている。そして、第2の上型21及び第2の下型22は、金型駆動装置によって、互いに当接した際に、これらの間に供給されている素材M2を所望の形状にプレス加工して金属成型品(例えば、図9、図17〜図20参照)を製造する。また、第2の上型21には、後に詳述する第2の加熱装置60の構成要素であるヒータ61が配設されており、第2の下型22には、第2の加熱装置60の構成要素であるヒータ62が配設されている。
【0040】
第3の金型30は、上下一対の金型である第3の上型31と第3の下型32とを備えている。第3の上型31は、第1の上型11に形成された配設部15に着脱可能に取付けられており、第3の下型32は、第1の下型12に形成された配設部16に着脱可能に取付けられている。したがって、第3の上型31と第3の下型32は、第1の上型11及び第1の下型12が互いに相対移動する際に、これらと共に移動する。また、第3の上型31と第3の下型32は、前述したように、排出口14の形状を画定するため、第3の上型31と第3の下型32の形状によって、第2の金型20に供給される素材M2の形状が決定される。なお、本実施の形態では、素材M2の形状が略板状となる構成の第3の上型31と第3の下型32を選択した。
【0041】
ここで、第3の上型31及び第3の下型32は、第1の上型11及び第1の下型12に各々着脱可能に取付けられているため、第2の金型20に供給される素材M2の所望の形状にそれぞれ相補する形状を有する複数種の第3の上型31及び第3の下型32を用意しておけば、これらを取り替えるだけで簡単に所望の形状の素材M2を得ることができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、第3の上型31と第3の下型32は、第1の加熱装置40によって第1の上型11及び第1の下型12と同様に加熱されるが、第3の上型31と第3の下型32を加熱する第3の加熱装置をさらに配設してもよい。この場合は、第1の金型10と、第3の金型30の加熱温度を別々に制御することができる。
【0043】
第1の加熱装置40は、第1の上型11に配設され、第1の上型11を加熱するヒータ41と、第1の下型12に配設され、第1の下型12を加熱するヒータ42と、第1の上型11及び第1の下型12の温度をモニタし、加熱温度を制御する図示しない温度制御部を備えている。
【0044】
加圧装置50は、収容部13に進退可能に挿入され且つ収容部13に収容されている素材M1を加圧するプランジャ51と、プランジャ51を進退運動させる図示しない駆動部と、この駆動部に接続され、プランジャ51が素材M1を加圧する際の圧力を制御する図示しない圧力制御部を備えている。プランジャ51は、略円柱状を有しており、収容部13内を進退移動する程度の隙間を、収容部13を画定する内壁との間に形成するサイズを有している。このプランジャ51の軸心O(図1参照)は、素材M2の供給方向(図1に矢印Xで示す方向)に対し、角度α(本実施の形態では約45度)で交差するよう傾斜している。したがって、プランジャ51は、収容部13の傾斜方向に沿って素材M1を加圧することになる。
【0045】
第2の加熱装置60は、第2の上型21に配設され、第2の上型21を加熱するヒータ61と、第2の下型22に配設され、第2の下型22を加熱するヒータ62と、第2の上型21及び第2の下型22の温度をモニタし、加熱温度を制御する図示しない温度制御部を備えている。
【0046】
次に、本実施の形態にかかる金属成形設備1を使用した金属成形方法について詳細に説明する。
【0047】
先ず、第1の加熱装置40を作動させ、第1の上型11及び第1の下型12、第3の上型31及び第3の下型32を約200℃に加熱する。また、第2の加熱装置60を作動させ、第2の上型21及び第2の下型22を約200℃に加熱する。
【0048】
次に、約200℃に加熱されている第1の上型11に形成された収容部13内に略円柱形の素材M1を収容させる。(図2参照)。この時、第1の上型11及び第1の下型12の温度は、前述した図示しない温度制御部によりモニタされており、第1の上型11及び第1の下型12は、約200℃に保持されることになる。その後、加圧装置50のプランジャ51を収容部13の上部に挿入する。(図2参照)。
【0049】
素材M1は、1種類の金属元素からなる単一金属で構成することができる。また、素材M1は、2種類以上の金属元素からなる合金で構成してもよいし、金属元素と非金属元素とからなる金属間化合物で構成してもよい。さらに、素材M1は、一様の組成となっている必要はなく、例えば、図13に断面模式図として示すように、第1金属層101と、第2金属層102と、第3金属層103を積層した積層体であってもよい。この時、第1金属層101、第2金属層102、第3金属層103は、それぞれ所要の金属あるいは合金であればよい。第1金属層101と、第2金属層102と、第3金属層103とは、単に重合することにより積層体としてもよいし、めっき処理、蒸着処理あるいは圧着処理等によって積層してもよい。ここで、積層体は、3層に限定するものではなく、適宜の数だけ重合して積層体を構成してよい。
【0050】
また、素材M1は、例えば、図14に断面模式図として示すように、第1金属粉体104と、第2金属粉体105とを混合した混合体を所定形状に仮焼成形した仮焼体であってもよい。この時、第1金属粉体104と第2金属粉体105の2種類の粉体で仮焼体を構成するだけでなく、さらに多種の粉体を混合して仮焼体を形成してもよく、金属の粉体だけでなく非金属の粉体を混合して仮焼体を形成してもよい。
【0051】
そしてまた、素材M1は、例えば、図15に断面模式図として示すように、所定形状とした多孔質体106の孔部に金属粉体107を充填して形成した充填体であってもよい。なお、多孔質体には、金属粉体107を充填する場合だけでなく非金属粉体を充填してもよい。
【0052】
さらにまた、素材M1は、例えば、図16に断面模式図として示すように、複数本の第1金属線材108と、複数本の第2金属線材109とを束ねて形成した金属線束であってもよい。このとき、第1金属線材108と第2金属線材109の2種類の金属線材で金属線束を構成するだけでなく、さらに多種の金属線材を束ねて金属線束を形成してもよい。
【0053】
このように、素材M1は、様々な形態が可能であって、後述するように剪断変形によって金属組織が微細化するのであればどのような形態であってもよい。
【0054】
なお、本実施の形態では、素材M1は、収容部13に好適に収容されるよう、収容部13の形状に合った略円柱形状を有するアルミニウムを使用した。
【0055】
次に、図示しない金型駆動装置により、第1の上型11と第1の下型12を互いに近づく方向(当接する方向)に相対移動させる。(図3参照)。この時、例えば、第1の下型12を固定しておき、第1の上型11を第1の下型12に向けて移動させてもよく、第1の上型11を固定しておき、第1の下型12を第1の上型11に向けて移動させてもよい。または、第1の上型11と第1の下型12の両者を移動させてもよい。このようにして、第1の上型11と第1の下型12を当接させることで、図3に示すように、第1の上型11と、第1の下型12と、収容部13の下端面と、第3の上型31と、第3の下型32とにより排出口14が画定される。
【0056】
次に、この状態で加圧装置50を駆動させ、プランジャ51を斜め下方向に移動させて収容部13に収容されている素材M1を、200℃の加工温度にて、アルミニウム合金においては約870(N/mm2)の圧力で、マグネシウム合金においては約630(N/mm2)の圧力で加圧する。(図4参照)。この時、素材M1は、約200℃に加熱されているため、変形抵抗が低下しており、加熱されていない場合に比べ、外力の作用に伴って変形を生じやすくなっている。そして、この変形抵抗が低下した素材M1に圧力が加えられることになるが、この圧力が加えられた素材M1は、排出口14において、斜めの方向(図1に示す軸心O方向)から水平な方向(図1に示す矢印X方向)に曲げられながら略板状(図7参照)に剪断変形され、この時かかる剪断応力により金属組織が微細化される。ここで、この略板状の素材M2は、図7に示すように、略円柱状の素材M1の直径W1よりも広い幅W2を備えている。次いで、この金属組織が微細化された素材M2が第2の上型21と、第2の下型22との間に供給される。(図4参照)。なお、本実施の形態では、素材M1の押出速度を17.30mm/secに設定した。
【0057】
次に、金型駆動装置70を駆動してシャフト71及び72を動かし、第2の上型21と第2の下型22を互いに近づく方向(当接する方向)に移動させ、素材M2を成形する。(図5参照)。この時、第2の上型21及び第2の下型22は、約200℃に加熱されており、素材M2は、第2の上型21及び第2の下型22によってプレス成形されるため、さらに金属組織が微細化される。
【0058】
次いで、冷却後、金型駆動装置70により、第2の上型21及び第2の下型22を互いに遠ざかる方向に移動させ、プレス成形された成型品M3(図8参照)を取り出す。この成型品M3は、図8に示すように、製品となる製品部分m1と、不要部分(バリ部分)m2から構成されている。次に、製品部分m1から不要部分m2を取り除き(仕上げ工程)、金属組織が微細化され、高強度化あるいは高延性化が達成された金属成形品(発明品)を得た。(図9参照)。
【0059】
次に、比較として、素材M1と同様の成分からなる素材を、約200℃で加熱した第2の上型21及び第2の下型22に直接供給してプレス成形を行い、金属成形品(比較品)を得た。
【0060】
次に、このようにして得られた発明品と比較品の金属組織を電子顕微鏡にて観察した。図10は、本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた金属成型品(発明品)の金属組織の光学顕微鏡写真であり、図11は、従来の金属成形方法で得られた金属成型品(比較品)の金属組織の光学顕微鏡写真である。また、図22は、素材M1の金属組織の光学顕微鏡写真であり、その平均結晶粒径は、約20μmである。図10に示す発明品は、素材M1(マグネシウム合金)を剪断変形させた後、プレス成形することにより、金属組織の平均結晶粒径が、約5μmとなり、図22に示す素材M1に比べ、平均結晶粒径が、1/4程度に微細化され、且つ図11に示す従来品の金属組織の結晶粒よりも、平均結晶粒径が、1/5程度に微細化されたことが判る。
【0061】
次に、発明品と比較品との耐力、引張り強度、均一延びを比較した。この結果を図12に示す。図12から、発明品は、均一延びを増加させることなく耐力及び引張り強度を向上させることができることが判る。
【0062】
なお、本実施の形態では、加圧装置50によって素材M1を加圧する工程で、素材M1を約200℃に加熱した場合について説明したが、これに限らず、素材M1を加熱する温度は、素材M1の変形抵抗を低下させることが可能な温度であれば、特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。例えば、素材M1がアルミニウムであれば、150〜300℃程度が好ましい。また、素材M1がマグネシウムの場合は、170〜250℃程度が好ましい。そしてまた、素材M1が、銅合金(例えば、Cu−Zn)の場合は、250〜500℃程度が好ましい。
【0063】
また、本実施の形態では、素材M1と素材M2を、ほぼ同一の温度で加熱した場合について説明したが、これに限らず、素材M1と素材M2を加熱する温度は、素材M1の種類や特性、得られる金属成型品に必要な特性値(強度や延性等)等によって、任意に選択することができる。例えば、素材M1を素材M2よりも高い温度で加熱した場合、焼き入れのような材料の急冷強化される効果が得られるなる傾向があり、素材M1を素材M2よりも低い温度で加熱した場合、結晶粒は微細化する傾向がある。
【0064】
また、素材M1の種類や特性、得られる金属成型品に必要な特性値(強度や延性等)等によっては、第2の加熱装置60の代わりに、素材M2を冷却する冷却装置を配設してもよい。具体的には、素材M2を冷却してもよい。例えば、素材M1の押出速度が速い場合、摩擦熱が生じることがあるが、このような場合、素材M2を所望の温度に冷却することで摩擦熱による影響を受けることを抑制することができる。なお、素材M1の押出速度が遅いほど、金属の結晶組織が安定し、均一で微細な結晶粒径が得られるが、押出速度を遅くすると、金属成形に時間がかるため、生産性の観点からすると押出速度をなるべく速くすることが望まれる。したがって、素材M1の種類や特性、得られる金属成型品に必要な特性値(強度や延性等)等によって押出速度を選択することで、生産性と金属成型品の品質とのバランスを最適にすることができる。
【0065】
なお、一例として、素材M1の押出速度を0.07mm/secにした際の金属組織の光学顕微鏡写真を図23に示す。遅い押出速度で得られた発明品(図23)の平均結晶粒径は、約1μmであり、図10と図23を比較すると、発明品(図23)の方が、速い押出速度で得られた発明品(図10)よりも金属の結晶組織が安定し、均一で微細な結晶粒径が得られていることが判る。
【0066】
そしてまた、本実施の形態では、略円柱状の素材M1を使用した場合について説明したが、これに限らず、素材M1の形状は、例えば、軸線に垂直な断面が楕円形の略円柱状、前記断面が矩形の略円柱状、前記断面が多角形の略円柱状等、特に限定されるものではない。
【0067】
そしてまた、例えば、最終製品として、図17〜図20に示すような複雑な形状の金属成型品を製造する場合は、素材M2を成形する際の成形荷重を大きくして、板厚方向の形状も成形する鍛造加工を行うこともできる。
【0068】
また、本実施の形態では、収容部13を、第2の金型20に供給される素材M2の供給方向(図1に矢印Xで示す方向)に対し約45度傾斜させ、収容部13に収容された素材M1を、素材M2の供給方向に対し約45度で交差する(傾斜する)方向から加圧した場合について説明したが、これに限らず、収容部13に収容された素材M1を、素材M2の供給方向に対し交差する方向から加圧して排出口14から排出させることが可能であれば、前記交差する角度αは、例えば、0<α≦90等、所望により決定することができる。
【0069】
ここで、例えば、圧力や素材M1の形状、サイズ等、諸条件が同一の場合、角度αが90度に近いほど、素材M1の押出速度が遅くなり、角度αが0度に近いほど、素材M1の押出速度が速くなる。したがって、素材M1の種類や特性、得られる金属成型品に必要な特性値(強度や延性等)等によって収容部13の傾斜角度を選択することで、生産性と金属成型品の品質とのバランスを最適にすることができる。
【0070】
さらにまた、本実施の形態では、第1の上型11と第1の下型12を備えた第1の金型10について説明したが、これに限らず、第1の金型10は、収容部13に収容した素材M1を、素材M2の供給方向に対し交差する方向から加圧して、素材M1の金属組織を微細化して排出口14から排出し、第2の金型20に供給することが可能であれば、例えば、第1の上型11と第1の下型12を一体化した構造等、他の構成を備えていてもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、第1の上型11と第1の下型12に、第3の上型31及び第3の下型32を各々配設した場合について説明したが、これに限らず、第1の金型10に第3の金型30の機能を持たせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施の形態にかかる金属成形方法を実施するための金属成形設備を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す金属成形設備を使用して本実施の形態にかかる金属成形方法を実施する際の工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図3】図1に示す金属成形設備を使用して本実施の形態にかかる金属成形方法を実施する際の工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図4】図1に示す金属成形設備を使用して本実施の形態にかかる金属成形方法を実施する際の工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図5】図1に示す金属成形設備を使用して本実施の形態にかかる金属成形方法を実施する際の工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図6】図1に示す金属成形設備を使用して本実施の形態にかかる金属成形方法を実施する際の工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図7】図4に示す工程の際に、素材M2を平面視した状態を示す図である。
【図8】図6に示す工程で得た成型品の斜視図である。
【図9】図6に示す工程で得た成型品を仕上げ加工して製品とした金属成型品の斜視図である。
【図10】本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた金属成型品(発明品)の金属組織の光学顕微鏡写真である。
【図11】従来の金属成形方法で得られた金属成型品(比較品)の金属組織の光学顕微鏡写真である。
【図12】本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた金属成型品(発明品)の物性と、従来の金属成形方法で得られた金属成型品(比較品)の物性を示す図である。
【図13】素材M1の一例を示す断面模式図である。
【図14】素材M1の一例を示す断面模式図である。
【図15】素材M1の一例を示す断面模式図である。
【図16】素材M1の一例を示す断面模式図である。
【図17】本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた他の形状を有する金属成型品(製品)の斜視図である。
【図18】本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた他の形状を有する金属成型品(製品)の斜視図である。
【図19】本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた他の形状を有する金属成型品(製品)の斜視図である。
【図20】本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた他の形状を有する金属成型品(製品)の斜視図である。
【図21】従来のECAP法を説明するための断面図である。
【図22】素材M1の金属組織の光学顕微鏡写真である。
【図23】本発明の他の本実施の形態にかかる金属成形方法で得られた金属成型品(発明品)の金属組織の光学顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0073】
1…金属成形設備、 10…第1の金型、 11…第1の上型、 12…第1の下型、 13…収容部、 14…排出口、 20…第2の金型、 21…第2の上型、 22…第2の下型、 30…第3の金型、 31…第3の上型、 32…第3の下型、 40…第1の加熱装置、 50…加圧装置、 51…プランジャ、 60…第2の加熱装置、 70…金型駆動装置、 M1、M2…素材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属組織を有する素材が収容される収容部と、当該収容部に収容された前記素材を外部に排出する排出口を有する第1の金型を加熱する第1の加熱工程と、
前記収容部に収容され且つ加熱されている前記素材を加圧して、前記排出口から排出させる加圧・排出工程と、
前記加熱された第2の金型に、前記排出口から排出され且つ加熱されている素材を供給する供給工程と、
前記第2の金型に供給された素材を当該第2の金型で成形する成形工程と、
を備え、
前記加圧・排出工程では、前記第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向から前記素材を加圧し、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化する金属成形方法。
【請求項2】
前記排出口から排出された素材が供給される第2の金型の温度を調整する温度調整工程をさらに備えた請求項1記載の金属成形方法。
【請求項3】
前記温度調整工程は、前記第2の金型を加熱する第2の加熱工程である請求項2記載の金属成形方法。
【請求項4】
前記加圧・排出工程では、前記第2の金型に供給される素材の供給方向に対し、30度以上、80度以下の角度で交差する方向に前記素材を加圧する請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の金属成形方法。
【請求項5】
前記第1の金型は、第1の上型と、第1の下型を備え、
前記第1の上型と、第1の下型を当接させる第1の当接工程をさらに備え、
前記第1の当接工程後、前記加圧・排出工程を行う請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の金属成形方法。
【請求項6】
前記第1の金型の排出口に配設され、前記第2の金型に供給される素材の形状を画定する第3の金型をさらに備え、
前記第3の金型を加熱する第3の加熱工程をさらに備えた請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の金属成形方法。
【請求項7】
前記第3の金型は、前記第1の上型に配設される第3の上型と、前記第1の下型に配設される第3の下型を備え、
前記第1の当接工程は、前記第3の上型と第3の下型を、前記第1の上型及び第1の下型と共に当接させる請求項6記載の金属成形方法。
【請求項8】
前記第2の金型は、第2の上型と、第2の下型を備え、
前記成形工程では、前記第2の上型と第2の下型との間に供給された素材を成形する請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の金属成形方法。
【請求項9】
前記加圧・排出工程では、前記収容部に収容された略柱状の素材を加圧し、前記排出口から略板状の素材を排出する請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の金属成形方法。
【請求項10】
金属組織を有する素材が収容される収容部と、当該収容部に収容された前記素材を外部に排出する排出口が形成された第1の金型と、
前記第1の金型を所定温度に加熱する第1の加熱装置と、
前記前記収容部に収容された素材を加圧して、前記排出口から排出させる加圧装置と、
前記排出口から排出された素材が供給される第2の金型と、
を備え、
前記収容部は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向に延設されており、前記加圧装置は、当該交差する方向から前記素材を加圧し、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化する金属成形設備。
【請求項11】
前記第2の金型を所定温度に調整する温度調整装置をさらに備えてなる請求項10記載の金属成形設備。
【請求項12】
前記温度調整装置が、前記第2の金型を加熱する第2の加熱装置である請求項11記載の金属成形設備。
【請求項13】
前記加圧装置は、前記収容部に挿入され、前記素材を加圧する加圧部を備えてなる請求項10ないし請求項12のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項14】
前記収容部は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向に対し、30度以上、80度以下の角度で交差する方向に傾斜して配設されてなり、
前記加圧部は、前記収容部の傾斜方向に沿って前記素材を加圧する請求項13記載の金属成形設備。
【請求項15】
前記第1の金型は、第1の上型と第1の下型を備えてなり、前記排出口は、当該第1の上型と第1の下型とを当接した際に形成される空間によって画定されてなる請求項10ないし請求項14のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項16】
前記第1の金型の排出口に配設され、前記第2の金型に供給される素材の形状を画定する第3の金型をさらに備えてなる請求項10ないし請求項15のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項17】
前記第1の金型は、第1の上型と第1の下型を備えてなり、
前記第3の金型は、当該第1の上型に配設される第3の上型と、当該第1の下型に配設される第3の下型を備えてなり、前記第3の上型と第3の下型とを当接した際に形成される空間によって前記排出口を画定し、前記第2の金型に供給される素材の形状を画定する請求項10ないし請求項16のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項18】
前記第3の金型を所定温度に加熱する第3の加熱装置をさらに備えた請求項16または請求項17記載の金属成形設備。
【請求項19】
前記第2の金型は、第2の上型と、第2の下型を備えてなり、当該第2の上型と第2の下型との間に、前記排出口から供給された素材を受容する請求項10ないし請求項18のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項20】
前記収容部は、前記第1の金型の内壁によって画定される略柱状の中空部からなる請求項10ないし請求項19のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項21】
前記第3の金型は、前記素材を略板状に成形する請求項16ないし請求項20のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項1】
金属組織を有する素材が収容される収容部と、当該収容部に収容された前記素材を外部に排出する排出口を有する第1の金型を加熱する第1の加熱工程と、
前記収容部に収容され且つ加熱されている前記素材を加圧して、前記排出口から排出させる加圧・排出工程と、
前記加熱された第2の金型に、前記排出口から排出され且つ加熱されている素材を供給する供給工程と、
前記第2の金型に供給された素材を当該第2の金型で成形する成形工程と、
を備え、
前記加圧・排出工程では、前記第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向から前記素材を加圧し、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化する金属成形方法。
【請求項2】
前記排出口から排出された素材が供給される第2の金型の温度を調整する温度調整工程をさらに備えた請求項1記載の金属成形方法。
【請求項3】
前記温度調整工程は、前記第2の金型を加熱する第2の加熱工程である請求項2記載の金属成形方法。
【請求項4】
前記加圧・排出工程では、前記第2の金型に供給される素材の供給方向に対し、30度以上、80度以下の角度で交差する方向に前記素材を加圧する請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の金属成形方法。
【請求項5】
前記第1の金型は、第1の上型と、第1の下型を備え、
前記第1の上型と、第1の下型を当接させる第1の当接工程をさらに備え、
前記第1の当接工程後、前記加圧・排出工程を行う請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の金属成形方法。
【請求項6】
前記第1の金型の排出口に配設され、前記第2の金型に供給される素材の形状を画定する第3の金型をさらに備え、
前記第3の金型を加熱する第3の加熱工程をさらに備えた請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の金属成形方法。
【請求項7】
前記第3の金型は、前記第1の上型に配設される第3の上型と、前記第1の下型に配設される第3の下型を備え、
前記第1の当接工程は、前記第3の上型と第3の下型を、前記第1の上型及び第1の下型と共に当接させる請求項6記載の金属成形方法。
【請求項8】
前記第2の金型は、第2の上型と、第2の下型を備え、
前記成形工程では、前記第2の上型と第2の下型との間に供給された素材を成形する請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の金属成形方法。
【請求項9】
前記加圧・排出工程では、前記収容部に収容された略柱状の素材を加圧し、前記排出口から略板状の素材を排出する請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の金属成形方法。
【請求項10】
金属組織を有する素材が収容される収容部と、当該収容部に収容された前記素材を外部に排出する排出口が形成された第1の金型と、
前記第1の金型を所定温度に加熱する第1の加熱装置と、
前記前記収容部に収容された素材を加圧して、前記排出口から排出させる加圧装置と、
前記排出口から排出された素材が供給される第2の金型と、
を備え、
前記収容部は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向と交差する方向に延設されており、前記加圧装置は、当該交差する方向から前記素材を加圧し、当該素材を剪断変形させて前記金属組織を微細化する金属成形設備。
【請求項11】
前記第2の金型を所定温度に調整する温度調整装置をさらに備えてなる請求項10記載の金属成形設備。
【請求項12】
前記温度調整装置が、前記第2の金型を加熱する第2の加熱装置である請求項11記載の金属成形設備。
【請求項13】
前記加圧装置は、前記収容部に挿入され、前記素材を加圧する加圧部を備えてなる請求項10ないし請求項12のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項14】
前記収容部は、前記第2の金型に供給される素材の供給方向に対し、30度以上、80度以下の角度で交差する方向に傾斜して配設されてなり、
前記加圧部は、前記収容部の傾斜方向に沿って前記素材を加圧する請求項13記載の金属成形設備。
【請求項15】
前記第1の金型は、第1の上型と第1の下型を備えてなり、前記排出口は、当該第1の上型と第1の下型とを当接した際に形成される空間によって画定されてなる請求項10ないし請求項14のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項16】
前記第1の金型の排出口に配設され、前記第2の金型に供給される素材の形状を画定する第3の金型をさらに備えてなる請求項10ないし請求項15のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項17】
前記第1の金型は、第1の上型と第1の下型を備えてなり、
前記第3の金型は、当該第1の上型に配設される第3の上型と、当該第1の下型に配設される第3の下型を備えてなり、前記第3の上型と第3の下型とを当接した際に形成される空間によって前記排出口を画定し、前記第2の金型に供給される素材の形状を画定する請求項10ないし請求項16のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項18】
前記第3の金型を所定温度に加熱する第3の加熱装置をさらに備えた請求項16または請求項17記載の金属成形設備。
【請求項19】
前記第2の金型は、第2の上型と、第2の下型を備えてなり、当該第2の上型と第2の下型との間に、前記排出口から供給された素材を受容する請求項10ないし請求項18のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項20】
前記収容部は、前記第1の金型の内壁によって画定される略柱状の中空部からなる請求項10ないし請求項19のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【請求項21】
前記第3の金型は、前記素材を略板状に成形する請求項16ないし請求項20のいずれか一項に記載の金属成形設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図10】
【図11】
【図22】
【図23】
【図2】
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【図7】
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【図19】
【図20】
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【図10】
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【図22】
【図23】
【公開番号】特開2009−274126(P2009−274126A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130048(P2008−130048)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(506253067)有限会社リナシメタリ (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(506253067)有限会社リナシメタリ (8)
【Fターム(参考)】
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