説明

金属板の屋内への取付構造

【課題】金属板を屋内の水や湿気の多い場所に取り付けて使用する場合でも、金属板を水分から守ることができる取付構造を提供する。
【解決手段】 金属成形品2の裏面に吸水性を有する断熱材3を貼り付けた金属板1を、取付部材6により屋内の壁面4に取り付けるにあたって、取付部材6は、前記金属板1の端部に嵌合される断面溝型の嵌合部7と、前記壁面4に固定される固定部12とで構成され、前記金属板1の端部表面1bとこれに対向する前記嵌合部7の前面部分との隙間に、吸水時に膨張する樹脂材料よりなる水膨張性樹脂14を介在させるようにした金属板の屋内への取付構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板の屋内への取付構造に関し、詳しくは屋内の壁面に取り付けて使用される金属板に、水や湿気により錆やカビが発生するのを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属系サイディング材や窯業系サイディング材からなる外装材の目地部を、ジョイナを介して連結すると共に、ジョイナと外装材との隙間に、ポリウレタン等の軟質の合成樹脂発泡体からなるパッキング部を圧縮変形させた状態で挿入した目地構造が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
一方、屋内の壁面に取り付ける内装材として、金属成形品の裏面に断熱材を貼り付けた金属板を使用するケースが増えている。特に浴室のような水や湿気の多い場所に金属板を取り付けて使用する場合は、金属板の端部の金属切断面や断熱材に水や湿気が回り込まないように、金属板の端部を止水構造にする必要がある。この場合、従来の外壁材の目地構造をそのまま適用すると、圧縮変形させた軟質の合成樹脂発泡体が高湿度が毎日続く環境下に常に晒されて、長年使用することで合成樹脂発泡体が劣化し、防水効果が低下する。金属板の金属切断面と、裏面に貼り付けた吸水性を有する断熱材は、水や湿気と接すると、錆が発生したり、カビの原因になったりするおそれがある。そのため金属板の使用が制限されている。
【0004】
なお、目地部にシリコンコーキングを塗布して水の進入を防止する技術もあるが、コーキング劣化による水進入が発生する場合がある。このため屋内の特に浴室に使用することには適さない。
【0005】
そこで、浴室のような水や湿気の多い場所に金属板を取り付けて使用する場合に、金属板を水分から守ることが重要な課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−26168号公報
【特許文献2】特開平6−26167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、金属板を屋内の水や湿気の多い場所に取り付けて使用する場合でも、金属板を水分から守ることができる金属板の屋内への取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明は、金属成形品の裏面に吸水性を有する断熱材を貼り付けた金属板を、取付部材により屋内の壁面に取り付ける金属板の屋内への取付構造であって、前記取付部材は、前記金属板の端部に嵌合される断面溝型の嵌合部と、前記壁面に固定される固定部とで構成され、前記金属板の端部表面とこれに対向する前記嵌合部の前面部分との隙間に、吸水時に膨張する樹脂材料よりなる水膨張性樹脂を介在させたことを特徴とする。
【0009】
また、前記取付部材の嵌合部は、上下に隣合う一方の金属板の端部に嵌合される断面溝型の第1嵌合部と、該第1嵌合部と反対方向に開口して他方の金属板の端部に嵌合される断面溝型の第2嵌合部との少なくとも一方を備えると共に、金属板の端部裏面と対向する第1嵌合部の背面部分若しくは第2嵌合部の背面部分が、前記固定部を兼ねているのが好ましい。
【0010】
また、前記取付部材の固定部は、前記金属板の端部裏面と対向する前記嵌合部の背面部分から前記嵌合部の開口方向とは反対方向に突出した突出フランジ板で構成されているのが好ましい。
【0011】
また、前記取付部材の嵌合部は、前記金属板の端部表面と接する前面部分が折り曲げ可能な前側フランジ板で構成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、金属板を屋内の水や湿気の多い場所に取り付けて使用する場合でも、金属板を水分から守ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の金属板の屋内への取付構造の一実施形態を示し、(a)は浴室の壁面に金属板を取り付けた状態を示す斜視図であり、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図2】図1(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図3】図1(a)のC−C線に沿う断面図である。
【図4】図3の変形例を示す断面図である。
【図5】図4の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1(a)は、本発明の金属板の屋内への取付構造の一実施形態であり、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿う断面図、図2は図1(a)のB−B線に沿う断面図、図3は図1(a)のC−C線に沿う断面図である。
【0016】
以下において、内装材として、金属板材2の裏面に断熱材3を貼り付けた金属板1を例示する。金属板1が取り付けられる壁面4とは、浴室に既に構築されている壁パネル5の表面を指す。なお、壁面4には、壁パネル5の表面以外に壁下地の表面も含むものとする。
【0017】
金属板1の表面の金属成形品2は、例えば断面波形状に成形された薄肉金属板材で構成されている。断熱材3は吸水性を有する発泡性樹脂等で構成されている。
【0018】
金属板1を壁面4に取り付ける取付部材6は、金属板1の端部1aに嵌合される嵌合部7と、浴室の壁面4に固定される固定部12とで構成されている。
【0019】
本例の取付部材6は、第1取付部材6A、第2取付部材6B、第3取付部材6Cの3種類からなる。
【0020】
第1取付部材6Aは、上下方向Dに隣合う金属板1の端部1a,1aを壁面4に取り付けるために使用される。本例の第1取付部材6Aは、図1(b)に示すように、上下方向Dに隣合う一方の金属板1の端部1aに嵌合される断面溝型の第1嵌合部7Aと、該第1嵌合部7Aと反対方向に開口して他方の金属板1の端部1aに嵌合される断面溝型の第2嵌合部7Bとを一体に備えた長尺部材で構成される。この第1取付部材6は隣合う金属板1の端部1a同士を架橋する役物としての機能を有する。
【0021】
ここで、第1及び第2嵌合部7A,7Bは、それぞれ、金属板1の端部表面1bを覆う前面部分である前側フランジ板8と、金属板1の端部裏面1cを覆う背面部分である後側フランジ板9と、前側フランジ板8の中央部と後側フランジ板9の中央部とを連結する連結板10とからなる。前側フランジ板8の下半部と連結板10の下面と後側フランジ板9の下半部とで、下方に開口した断面溝型の第1嵌合部7Aが構成される。前側フランジ板8の上半部と連結板10の上面と後側フランジ板9の上半部とで、上方に開口した断面溝型の第2嵌合部7Bが構成される。また、各嵌合部7の後側フランジ板9は、それぞれ、壁面4に固定される固定部12を兼用している。
【0022】
第2取付部材6Bは、図3に示すように、最上部の金属板1の上側の端部1aを壁面4に取り付けるために使用される。本例の第2取付部材6Bは、前側フランジ板8と後側フランジ板9と連結板10とからなる断面溝型の嵌合部7と、突出フランジ板13とを一体に備えた長尺部材で構成される。突出フランジ板13は、後側フランジ板9と面一状に連なって嵌合部7の開口方向とは反対方向(図3の上方向)に突出している。この突出フランジ板13は、壁面4に固定される固定部12となる。
【0023】
第3取付部材6Cは、金属板1の側端部1dを壁面4に取り付けるために使用される。本例の第3取付部材6Cは、図2に示すように、前側フランジ板8と後側フランジ板9と連結板10とからなる断面溝型の嵌合部7のみを備えた長尺部材で構成される。嵌合部7の後側フランジ板9は壁面4に固定される固定部12を兼用している。
【0024】
上記第1〜第3取付部材6A〜6Cは、いずれも、各嵌合部7の前側フランジ板8が折り曲げ可能な材料で形成されている。前側フランジ板8を折り曲げることで、嵌合部7(7A,7B)の開口幅を可変させることができ、異なる金属板1の厚みに対応できるようになっている。
【0025】
上記取付部材6の嵌合部7内には、前側フランジ板8の内面と金属板1の端部表面1bとの隙間に、吸水時に膨張する樹脂材料よりなる水膨張性樹脂14が介在されている。水膨張性樹脂14は、金属板1の端部表面1bの全幅に亘って延びており、接着剤などを用いて動かないように貼着してある。この水膨張性樹脂14は、例えば水膨張性ポリエーテル型ポリウレタンエラストマーからなり、吸水時に膨張することで断熱材3内部に水や湿気が進入するのを防止する働きをする。
【0026】
なお断熱材3の裏面には全面に亘ってアルミシート15が貼り付けてあり、裏面からの水や湿気の進入が防がれている。
【0027】
次に、上記金属板1の施工手順の一例を説明する。
【0028】
金属板1の表面を浴室空間16に向けた状態で、複数の金属板1を壁面4の下から上に順に取り付けていく。
【0029】
このとき、上下に隣合う金属板1の端部1a同士の取り付けは、図1(b)に示す第1取付部材6Aを用いて行う。つまり、第1取付部材6Aの後側フランジ板9を釘11で壁面4に固定してから、下向きに開口した第1嵌合部7Aに下段の金属板1の上側の端部1aを嵌合させ、上向きに開口した第2嵌合部7Bに上方から上段の金属板1の下側の端部1aを嵌合させる。さらに、金属板1の端部表面1bと嵌合部7の前側フランジ板8との隙間に水膨張性樹脂14を介在させる。これにより、上下に隣合う金属板1の端部1aをそれぞれ止水した状態で壁面4に効率良く取り付けることができる。しかも釘11は金属板1の背後に隠れて前方から見えないため、取付部材6を含む金属板1の表面全体の外観意匠性が良好となる。
【0030】
また、最上部に位置する金属板1の上側の端部1aの取り付けは、図3に示す第2取付部材6Bを用いて行う。例えば、窓開口部等によって最上部の金属板1は採寸して切断する必要が生じる場合がある。この場合、金属板1の切断された端部1aを、仮りに釘やビスで壁面4に固定し、その表面を補修用の塗料やコーキング材で埋めたりすると、他の金属板1との間で外観意匠の均一性が保たれなくなる。しかも金属板1の端部1aと天井面17との間に隙間が生じることになる。そこで、本例では、第2取付部材6Bの嵌合部7を最上部の金属板1の端部1aに嵌め込み、水膨張性樹脂14を介在させると共に、嵌合部7から上方に突出している突出フランジ板13を壁面4に釘11で固定する。その後、嵌合部7と天井面17間の隙間をシリコンコーキング(図示せず)で塞ぐ。これにより、最上部に位置する金属板1は、他の金属板1と同様、釘11が露出せず且つ隙間も生じない良好な表面意匠を有するものとなる。
【0031】
一方、壁コーナー部19における金属板1の側端部1dの取り付けは、図2に示す第3取付部材6Cを用いて行う。第3取付部材6Cの嵌合部7の後側フランジ板9を壁面4に固定し、嵌合部7に金属板1の側端部1dを嵌合させると共に、水膨張性樹脂14を介在させる。さらに、嵌合部7と壁コーナー部19間の隙間は、バックアップ材20を介してシリコンコーキング21で塞ぐ。これにより、壁コーナー部19に沿って金属板1の横方向Eの側端部1dを、止水した状態で外観良く取り付けることができる。
【0032】
しかして、上記構成の金属板1の上下の両端部1a及び左右の側端部1dの全周を、取付部材6(6A,6B,6C)と水膨張性樹脂14とを用いて、止水状態で壁面4に確実に固定可能となる。これにより、施工後は、取付部材6の嵌合部7内に進入した水や湿気は、金属板1の端部表面1bと前側フランジ板8との隙間に設けた水膨張性樹脂14により吸い取られ、このとき水膨張性樹脂14が吸水によって膨張することで、当該隙間が完全に塞がれることで止水効果が増大する。これにより、金属板1の金属切断面2aで錆が生じなくなり、また断熱材3の端面側から水や湿気が染み込むことがなくなり、カビの原因をなくすことができる。この結果、常に水や湿気に晒される環境下であっても、金属板1を内装材として最適に使用できるものとなる。
【0033】
また本例では、取付部材6の嵌合部7の前側フランジ板8を折り曲げ可能な材料で構成しているので、前側フランジ板8を折り曲げて嵌合部7の開口幅を可変させることができる。これにより、取付部材6は異なる金属板1の厚みに容易に対応できるようになる。
【0034】
さらに、第1取付部材6A及び第2取付部材6Bにおいては、嵌合部7の後側フランジ板9が、壁面4に固定される固定部12を兼用している。従って、固定部12を別途設ける必要がなくなり、取付部材6A,6Bの構造を簡素化できる利点もある。
【0035】
図4は、図3の変形例である。本例では、断熱材3の裏面と壁面4との間にスペーサ部材23を介在させることによって所定幅の裏側空間22を形成し、この裏側空間22を外気に開放している。また第2取付部材6Bの後側フランジ板9と突出フランジ板13とを段差状に形成することで、スペーサ部材23を設置可能としている。他の構成は図3と同様であり、対応する部位には同一符号を付しておく。本例では、嵌合部7と水膨張性樹脂14とにより金属板1の端面側から水や湿気が進入しなくなり、金属切断面2aで錆が生じたり、断熱材3にカビが発生するおそれがない。そのうえ、裏側空間22の水や湿気は裏側空間22から外部に放出可能となるので、金属板1の裏側での結露防止に効果的となる。
【0036】
図5は、図4の変形例である。本例では、図4の金属板1に代えて、セメント硬化物25の表面を防水被膜26で覆った窯業系内装材27を用いた場合を示している。セメント硬化物25の裏面は、表面の防水被膜26よりも防水強度の低い防水被膜(図示せず)が覆われており、表裏両面からの水や湿気の進入も防がれている。他の構成は図4と同様であり、対応する部位には同一符号を付しておく。本例では、嵌合部7と水膨張性樹脂14とによってセメント硬化物25の端面側からの水や湿気が染み込むことが防がれるので、セメント硬化物25の吸水による反り発生を防止できる。
【0037】
前記実施形態では、図1(a)のように金属板1を壁コーナー部19を挟んで直交する2つの壁面4,4aの一方のみに取り付けたが、これに限らず、2つの壁面4,4aにそれぞれ金属板1を取り付けてもよいものである。また、金属板1を壁面4の全体に取り付ける場合に限らず、壁面4の一部に部分的に取り付けてもよく、いずれの場合も、金属板1が浴室のインテリア、仕上げ用の飾り壁として機能するようになる。このことは、図5のセメント硬化物25の板を取り付ける場合も同様である。
【0038】
また、金属板1を取り付ける壁面4として、既に構築されている壁パネル5の壁面4を例示したが、これに限らず、壁下地の表面であってもよい。つまり、壁下地に取付部材6を用いて金属板1を取り付け、この金属板1で壁パネル5を構成してもよい。
【0039】
また、水や湿気の多い場所として浴室空間16を例示したが、浴室以外の洗面室などの水廻り設備にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 金属板
1b 端部表面
2 金属成形品
3 断熱材
4 壁面
6 取付部材
7 嵌合部
7A 第1嵌合部
7B 第2嵌合部
8 前側フランジ板
9 後側フランジ板
10 連結板
12 固定部
13 突出フランジ板
14 水膨張性樹脂
19 壁コーナー部
25 セメント硬化物
26 防水被膜
D 上下方向
E 横方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属成形品の裏面に吸水性を有する断熱材を貼り付けた金属板を、取付部材により屋内の壁面に取り付けるようにした金属板の屋内への取付構造であって、前記取付部材は、前記金属板の端部に嵌合される断面溝型の嵌合部と、前記壁面に固定される固定部とで構成され、前記金属板の端部表面とこれに対向する前記嵌合部の前面部分との隙間に、吸水時に膨張する樹脂材料よりなる水膨張性樹脂を介在させたことを特徴とする金属板の屋内への取付構造。
【請求項2】
前記取付部材の嵌合部は、壁面に沿って平面状に並設される複数の前記金属板のうち隣合う一方の金属板の端部に嵌合される第1嵌合部と、該第1嵌合部と反対方向に開口して隣合う他方の金属板の端部に嵌合される第2嵌合部との少なくとも一方を備えると共に、前記金属板の端部裏面と対向する第1嵌合部の背面部分若しくは第2嵌合部の背面部分が、前記固定部を兼ねることを特徴とする請求項1記載の金属板の屋内への取付構造。
【請求項3】
前記取付部材の固定部は、前記金属板の端部裏面と対向する前記嵌合部の背面部分から前記嵌合部の開口方向とは反対方向に突出した突出フランジ板で構成されていることを特徴とする請求項1記載の金属板の屋内への取付構造。
【請求項4】
前記取付部材の嵌合部は、前記金属板の端部表面と接する前面部分が折り曲げ可能な前側フランジ板で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金属板の屋内への取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−46958(P2012−46958A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190019(P2010−190019)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】