説明

金属構造物の保護構造

【課題】金属製部材を特に傷付けることなく、金属製部材の検査を簡便に行えるようにする。
【解決手段】金属製部材Aの外面に、検査予定部分2の外面を含む所定範囲Bを残して、保護塗膜4を形成し、粘着層9を設けてある樹脂フィルム6を、所定範囲の外面3と所定範囲に隣接する保護塗膜部分5とに亘って剥離自在に粘着させて、所定範囲の外面を保護してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属構造物の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、屋外に設置してあるプラント類の配管やタンクなどの金属構造物では、定期的に或いは必要に応じて、金属製部材の外面に対する目視検査や、金属製部材の溶接接続部分や金属製部材内側の浸食(減肉)が生じ易い部分などに対する磁気探傷や超音波探傷などによる非破壊検査を行う必要があるが、従来の金属構造物の保護構造では、金属製部材の外面に、検査予定部分の外面も含めて、略全面に亘って防錆用の保護塗膜を形成してある(周知慣用技術であり、先行技術文献情報を開示できない)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この為、検査を行うときには、予め、検査予定部分の外面を含む所定範囲の保護塗膜を取り除いて、所定範囲を外部に露出させておく必要があるので、金属製部材の検査に手間が掛かる欠点があり、保護塗膜を研磨して取り除くような場合は、金属製部材を傷付けるおそれもある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、金属製部材を特に傷付けることなく、金属製部材の検査を簡便に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1特徴構成は、金属製部材の外面に、検査予定部分の外面を含む所定範囲を残して、保護塗膜を形成し、粘着層を設けてある樹脂フィルムを、前記所定範囲の外面と前記所定範囲に隣接する保護塗膜部分とに亘って剥離自在に粘着させて、前記所定範囲の外面を保護してある点にある。
【0005】
〔作用及び効果〕
金属製部材の外面に、検査予定部分の外面を含む所定範囲を残して、保護塗膜を形成し、粘着層を設けてある樹脂フィルムを、所定範囲の外面と所定範囲に隣接する保護塗膜部分とに亘って剥離自在に粘着させて、所定範囲の外面を保護してあるので、検査を行う際には、検査予定部分の外面を含む所定範囲の外面と、所定範囲に隣接する保護塗膜部分とに亘って剥離自在に粘着させてある樹脂フィルムを金属製部材から剥離して、所定範囲を外部に露出させておけば良く、金属製部材を特に傷付けることなく、金属製部材の検査を簡便に行える。
尚、検査終了後も、所定範囲の外面と所定範囲に隣接する保護塗膜部分とに亘って樹脂フィルムを剥離自在に粘着させて、検査終了後の所定範囲の外面を保護しておけば、検査終了後の所定範囲に保護塗膜を形成するための塗装作業が特に不要で簡便に保護できるとともに、再度検査を行う際にも、金属製部材を特に傷付けることなく、その検査を簡便に行える。
【0006】
本発明の第2特徴構成は、前記樹脂フィルムと前記粘着層とを透明又は半透明材料で形成してある点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
樹脂フィルムと粘着層とを透明又は半透明材料で形成してあるので、樹脂フィルムを金属製部材側から特に剥離することなく、検査予定部分の外面に対する目視検査を簡便に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、原料の天然ガスから都市ガスを製造する都市ガス製造プラントにおいて、屋外に設置してある海水移送用の鋼製配管(金属構造物の一例)Aを示し、鋼管1どうしの溶接接続部分(検査予定部分)2を、定期的に或いは必要に応じて、外面側から簡便に検査できるように、所定範囲Bの配管Aの外面3を本発明による金属構造物の保護構造で保護してある。
【0009】
前記保護構造は、配管Aの外周面に、溶接接続部分2の外面を含む所定範囲B、つまり、溶接接続部分2を挟む左右両側の略一定幅範囲Bの外周面3を環状に残して、樹脂製保護塗膜4を形成し、その所定範囲Bの外面3とその所定範囲Bに隣接する保護塗膜部分5とに亘って、樹脂フィルム6を管周方向の端部どうしが所定長さに亘って重なるように巻き付けて、所定範囲Bの配管Aの外周面3及び保護塗膜部分5に対して全面に亘って剥離自在に粘着させてある。
【0010】
前記樹脂フィルム6は、図1(ロ)に示すように、外部に暴露させる透明なフッ素樹脂系フィルム7に感圧型接着剤からなる粘着剤層11を設けてあるオーバーラミネートフィルムを、着色塩化ビニル樹脂系フィルム8にポジショナブル感圧型粘着剤からなる粘着剤層9を設けてあるベースフィルムに積層して構成してあり、粘着剤層9を所定範囲Bの配管Aの外周面3及び保護塗膜部分5に対して剥離自在に粘着させてある。
【0011】
前記オーバーラミネートフィルムを構成するフィルム7としては、フッ素樹脂系フィルムの他に、ウレタン樹脂系フィルムやアクリル樹脂系フィルムであっても良い。
【0012】
前記ベースフィルムとしては、凹凸面に良く馴染むフィルム、例えば、塩化ビニル樹脂系フィルム層の裏に感圧型粘着剤を塗布した金属泊を有したフィルムであっても良く、ベースフィルムの粘着剤層9を、加熱によって剥離しやすくなる粘着剤で構成しても良い。
【0013】
そして、溶接接続部分2を検査するときには、図2に示すように、樹脂フィルム6の全部を所定範囲Bの配管Aの外周面3及び保護塗膜部分5から剥離して、溶接接続部分2を目視検査を行ったり、非破壊検査用の探触子10などを使用して非破壊検査を行い、検査終了後は、図1に示したように、所定範囲Bの配管Aの外面3と所定範囲Bに隣接する保護塗膜部分5とに亘って樹脂フィルム6を全面に亘って剥離自在に粘着させて、検査終了後の所定範囲Bの配管Aの外面3を保護しておく。
【0014】
〔第2実施形態〕
図示しないが、樹脂フィルム6と粘着層9とを透明又は半透明の材料で形成して、樹脂フィルム6を配管A側から特に剥離することなく、溶接接続部分2の外面に対する目視検査を簡便に行えるように構成しても良い。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0015】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による金属構造物の保護構造は、金属製タンクや金属製バルブなどの金属構造物、或いは、金属製床や階段,手摺などの金属構造物を保護するために設けてあっても良い。
2.本発明による金属構造物の保護構造は、屋内に設置してある金属構造物を保護するために設けてあっても良い。
3.本発明による金属構造物の保護構造は、検査予定部分が、異金属どうしの溶接部分や金属製部材内側の浸食(減肉)が生じ易い部分であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(イ)金属構造物の保護構造を示す斜視図,(ロ)要部の縦断面図
【図2】検査方法の説明図
【符号の説明】
【0017】
2 検査予定部分
3 所定範囲の外面
4 保護塗膜
5 保護塗膜部分
6 樹脂フィルム
9 粘着層
A 金属製部材
B 所定範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製部材の外面に、検査予定部分の外面を含む所定範囲を残して、保護塗膜を形成し、
粘着層を設けてある樹脂フィルムを、前記所定範囲の外面と前記所定範囲に隣接する保護塗膜部分とに亘って剥離自在に粘着させて、前記所定範囲の外面を保護してある金属構造物の保護構造。
【請求項2】
前記樹脂フィルムと前記粘着層とを透明又は半透明材料で形成してある請求項1記載の金属構造物の保護構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−63591(P2008−63591A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239131(P2006−239131)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】