説明

金属溶湯供給装置

【課題】ラドルの傾転角度を自由に設定可能な金属溶湯供給装置を提供する。
【解決手段】ラドル搬送用リンク機構2とラドル回転機構3とを有する金属溶湯供給装置において、ラドル回転機構3には、ラドル回転用モータ6によって駆動される平行リンク機構20を備える。該平行リンク機構20は、ラドル回転用モータ6によって回転される第1クランク軸21と、該第1クランク軸21の周りに一端が回転可能に保持された第1リンク部材11の他端側に回転可能に取り付けられた第2クランク軸23と、第1及び第2のクランク軸21,23に形成された2つの回転位相が異なる偏心軸45,46に両端が連結された2本のバー状リンク部材24A,24Bとから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドチャンバ式のダイカストマシンに用いられる金属溶湯供給装置に係り、特に、溶解炉から金属溶湯を汲み上げ、汲み上げられた金属溶湯をダイカストマシンに備えられた射出スリーブ内に注ぎ込むラドルの回転機構に関する。
【背景技術】
【0002】
溶解炉から所定量の金属溶湯をラドルにより汲み上げて、ラドルを射出スリーブの給湯口の上方まで搬送し、ラドル内の金属溶湯を給湯口から射出スリーブ内に注ぎ込む金属溶湯供給装置においては、ラドル搬送用リンク機構によってラドルを溶解炉から給湯口の上方まで搬送すると共に、ラドル回転機構によってラドル内の金属溶湯が給湯口に供給されるようにラドルを回転(傾転)させるという構成をとることが多い。
【0003】
本願出願人は先に、この種の金属溶湯供給装置として、図9に示すように、第1乃至第5のリンク部材101,102,103,104,105からなるラドル搬送用リンク機構106、並びに、ラドル搬送用リンク機構106を構成する第1リンク101内に保持されたベルト回転伝達系117と、ラドル搬送用リンク機構106を構成する第2リンク102内に保持され、ベルト回転伝達系117の出力側に連結された平行リンク回転伝達系118とからなるラドル回転伝達機構を備えたものを提案した。平行リンク回転伝達系118は、第2リンク102の一端部及び他端部に回転可能に保持された第1及び第2の回転体119,120と、これら第1及び第2の回転体119,120に両端部が回転可能に連結された1対のバー状リンク121,122とから構成されており、第2の回転体120には、ラドル123が一体に取り付けられる。なお、図中の符号131はラドル搬送用リンク機構106を駆動するためのラドル搬送用モータ、132はラドル回転伝達機構(ベルト回転伝達系117及び平行リンク回転伝達系118)を駆動するためのラドル回転用モータ、133はラドル搬送用モータ131の出力軸、134はラドル回転用モータ132の出力軸を示している。
【0004】
平行リンク回転伝達系118は、その構成要素が鋼材よりなるので、耐熱性や耐久性に優れると共に、その線膨張係数がラドル搬送用リンク機構106を構成するリンク部材と同じであることから、室温状態時(装置停止時)においても、高温状態時(装置稼働時)においても、平行リンク回転伝達系118とリンク部材との伸び状態及び縮み状態が同一となり、その動作機能が安定したものとなる。よって、本構成の金属溶湯供給装置は、ラドル回転用の回転伝達機構の全体が回転伝達精度に優れたものとなり、ラドル123の回転姿勢制御(傾転角制御)を精緻に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−110372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の金属溶湯供給装置は、第1及び第2の回転体119,120を任意の回転角度で回転駆動することができないため、ラドル123の傾転角を金属溶湯の粘度等に応じて任意に設定することができないという問題がある。
【0007】
即ち、図10に示すように、特許文献1に記載の金属溶湯供給装置は、平行リンク回転伝達系118を構成する第1回転体119が、第1支軸141の外周に一定ピッチで取り付けられた第1乃至第3の回転円板142,143,144と、第1回転円板142と第2回転円板143との間に橋架された第1偏心軸145と、第2回転円板143と第3回転円板144との間に橋架された第2偏心軸146とから構成されており、1対のバー状リンク121,122の一端が、それぞれ第1偏心軸145と第2偏心軸146とに連結されている。このため、第1支軸141を左方向(矢印Aの方向)に所定の回転角度だけ回転したときには、図11に実線で示すように、一方のバー状リンク121が第1支軸141に衝合し、第1支軸141を右方向(矢印Bの方向)に所定の回転角度だけ回転したときには、図11に鎖線で示すように、他方のバー状リンク122が第1支軸141に衝合する。よって、バー状リンク121,122が衝合する回転角度以上に第1支軸141を回転することが不可能で、ラドル123の傾転角が制限され、例えば粘度の高い金属溶湯を高速度で射出スリーブ内に注ぎ込むことができないなどの不都合を生じやすい。なお、図示は省略するが、第2回転体120についても第1回転体119と同様に構成されており、第2支軸142を回転したときに、各バー状リンク121,122が第2支軸142に衝合する。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ラドルの傾転角度を自由に設定可能な金属溶湯供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するため、溶解炉から所定量の金属溶湯を汲み上げるラドルと、前記ラドルを前記溶解炉側の所定位置及びダイカストマシンに備えられた射出スリーブ側の所定位置に交互に搬送するラドル搬送用リンク機構と、前記ラドル搬送用リンク機構の動力源であるラドル搬送用モータと、前記ラドルが前記射出スリーブ側の所定位置まで搬送されたときに、前記ラドルを回転して、前記ラドル内に汲み上げられた金属溶湯を前記射出スリーブ内に注ぎ込むラドル回転機構と、前記ラドル回転機構の動力源であるラドル回転用モータとを備えた金属溶湯供給装置において、前記ラドル回転機構は、前記ラドル回転用モータにより駆動される平行リンク機構を有しており、該平行リンク機構は、前記ラドル回転用モータにより回転される第1クランク軸と、該第1クランク軸の周りに一端が回転可能に保持されたリンク部材の他端側に回転可能に取り付けられた第2クランク軸と、前記第1及び第2のクランク軸にそれぞれ形成された2つの回転位相が異なる偏心軸に両端が連結された2本のバー状リンク部材とからなるという構成にした。
【0010】
クランク軸は、少なくとも長さ方向の両端部に回転中心軸が形成され、その間に回転円板と偏心軸とが交互に形成されたもので、偏心軸の形成部分には回転中心軸が形成されていない屈曲構造を有する軸である。したがって、このクランク軸の偏心軸にバー状リンク部材の両端部を回転可能に連結すると、クランク軸の回転角度に関わりなく、クランク軸とバー状リンク部材とが衝合せず、クランク軸の回転角度、ひいてはラドルの傾転角度を任意に設定することが可能となって、金属溶湯の粘度に応じたラドルの傾転角度の設定が可能になる。
【0011】
また本発明は、前記構成において、前記第1及び第2のクランク軸に形成される2つの偏心軸の回転位相差を、90°とした。
【0012】
かかる構成によると、対をなすバー状リンクの回転位相差を90°とすることができるので、これら2本のバー状リンクの動作過程にデッドポイントが発生せず、平行リンク機構の動作を円滑にして信頼性の高いものとすることができる。
【0013】
また本発明は、前記構成において、前記第1クランク軸の周りに一端が回転可能に保持されるリンク部材は、前記ラドル搬送用リンク機構を構成する複数のリンク部材の1つであるという構成にした。
【0014】
かかる構成によると、ラドル搬送用リンク機構を構成する複数のリンク部材の1つに平行リンク機構を取り付けることができるので、平行リンク機構を取り付けるための特別なリンク部材を設ける必要がなく、金属溶湯供給装置の構成を簡略化することができる。
【0015】
また本発明は、前記構成において、前記第2クランク軸は、他端に前記ラドルが取り付けられたチェーン駆動機構の一端に連結されているという構成にした。
【0016】
かかる構成によると、第1クランク軸の回転を、一対のバー状リンク、第2クランク軸及びチェーン駆動機構を介してラドルに伝達することができるので、直列に接続された2つのリンク部材を有するラドル搬送用リンク機構への適用が可能になり、ラドルの搬送を容易なものにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、ラドル回転機構に備えられる平行リンク機構を、ラドル回転用モータにより回転される第1クランク軸と、該第1クランク軸の周りに一端が回転可能に保持されたリンク部材の他端側に回転可能に取り付けられた第2クランク軸と、これら第1及び第2のクランク軸にそれぞれ形成された2つの回転位相が異なる偏心軸に両端が連結された2本のバー状リンク部材とから構成するので、クランク軸の回転角度に関わりなく、クランク軸とバー状リンク部材との衝合を回避することができる。よって、ラドルの傾転角度を任意に設定することでき、金属溶湯の粘度等に応じたラドルの傾転角度の設定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る金属溶湯供給装置の斜視図である。
【図2】実施形態に係る金属溶湯供給装置の要部拡大斜視図である。
【図3】実施形態に係るラドル回転機構の斜視図である。
【図4】実施形態に係る平行リンク機構の斜視図である。
【図5】ラドルが溶解炉内に挿入された状態を示す一部省略した実施形態に係る金属溶湯供給装置の正面図である。
【図6】ラドルが溶解炉から引き上げられた状態を示す一部省略した実施形態に係る金属溶湯供給装置の正面図である。
【図7】ラドルが射出スリーブの上方の所定位置まで搬送された状態を示す一部省略した実施形態に係る金属溶湯供給装置の正面図である。
【図8】ラドルを回転して射出スリーブ内に金属溶湯を流し込む際の状態を示す一部省略した実施形態に係る金属溶湯供給装置の正面図である。
【図9】従来例に係る金属溶湯供給装置の構成図である。
【図10】従来例に係る金属溶湯供給装置に備えられる平行リンク回転伝達系の構成を示す要部斜視図である。
【図11】従来例に係る金属溶湯供給装置に備えられる平行リンク回転伝達系の問題点を示す要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る金属溶湯供給装置の実施形態につき、図面を用いて説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、本例の金属溶湯供給装置は、ダイカストマシンの設置現場に設置される支持フレーム1と、支持フレーム1に設けられた5節リンク機構よりなるラドル搬送用リンク機構2と、ラドル搬送用リンク機構2内に組み込まれたラドル回転機構3と、ラドル搬送用リンク機構2によって溶解炉側の所定位置及びダイカストマシンに備えられた射出スリーブ側の所定位置に交互に搬送されると共に、ラドル回転機構3によって回転駆動されるラドル4と、ラドル搬送用リンク機構2を駆動するために支持フレーム1に搭載されたラドル搬送用モータ5と、ラドル4を回転(傾転)するために支持フレーム1に搭載されたラドル回転用モータ6とから主に構成されている。支持フレーム1内には、ラドル搬送用モータ5の回転を減速してラドル搬送用出力軸7に出力する第1減速ギア機構(図示省略)と、ラドル回転用モータ6の回転を減速してラドル回転用出力軸8に出力する第2減速ギア機構(図示省略)とが備えられており、ラドル搬送用出力軸7及びラドル回転用出力軸8は、支持フレーム1の同一側面から平行に突出されている。
【0021】
ラドル搬送用リンク機構2は、一端部がラドル回転用出力軸7に回転可能に保持された第1リンク部材11と、第1リンク部材11の他端部に回転可能に連結された第2リンク部材12と、一端部がラドル搬送用出力軸7に固着された第3リンク部材13と、一端部が第2リンク部材12の中間部に回転可能に連結され、中間部に第3リンク部材13の他端部が回転可能に連結された第4リンク部材14と、一端部がラドル回転用出力軸8に回転可能に保持され、他端部が第4リンク部材14の他端部と回転可能に連結された第5リンク部材15とから構成されており、第2リンク12の他端部には、ラドル4の基端部が回転可能に保持されている。なお、第1乃至第5のリンク部材11〜15は、鋼板をもって中空の箱状に形成されており、各リンク部材の各連結部は、所要の支軸を介して回転可能に連結されている。
【0022】
このように構成された本例のラドル搬送用リンク機構2は、その原動節である第3リンク部材13をラドル搬送用モータ5の駆動力で回転駆動し、他の4つのリンク部材11,12,14,15を連携して運動させることにより、図5乃至図8に示すように、ラドル4の基端部(ラドル4の回転中心)を所定の移動軌跡に沿って移動させる。このラドル4の搬送動作については、後に説明する。
【0023】
ラドル回転機構3は、図3に示すように、第1リンク部材11内に内蔵された平行リンク機構20と、第2リンク部材12内に内蔵されたチェーン駆動機構30とからなる。このうち、平行リンク機構20は、ラドル回転用出力軸8に一端が固着された第1クランク軸21と、第1リンク部材11と第2リンク部材12とを回転可能に連結する第1支軸22と、該第1支軸22に一端が固着された第2クランク軸23と、これら第1及び第2のクランク軸21,23に両端部が連結された一対のバー状リンク24A,24Bとをもって構成される。一方、チェーン駆動機構30は、第1支軸22に第2クランク軸23と同心に固着された第1スプロケット31と、第2リンク部材12とラドル4とを連結する第2支軸32と、該第2支軸32に固着された第2スプロケット33と、これら第1及び第2のスプロケット31,33に巻回されたチェーン34とをもって構成されており、第2支軸32の一端部には、ラドル4が一体に取り付けられる。
【0024】
図4に示すように、第1及び第2のクランク軸21,23は、同一物であって、ラドル回転用出力軸8又は第1支軸22の挿入孔41を有する第1及び第2のウェブ42,43と、第1ウェブ42と第2ウェブ43との間にバー状リンク24A,24Bを内挿可能な所定の間隔を隔てて相平行に配列された第3ウェブ44と、第1ウェブ42と第3ウェブ44との間に橋架された第1偏心軸45と、第3ウェブ44と第2ウェブ43との間に橋架された第2偏心軸46とから構成されている。このように、第1及び第2のクランク軸21,23として同一物を用いると、部品を共用化できて、部品の製造や管理、それに金属溶湯供給装置の組立を容易化することができるので、金属溶湯供給装置の低コスト化を図ることができる。
【0025】
挿入孔41に対する第1偏心軸45と第2偏心軸46との回転位相差は、バー状リンク24A,24Bの動作過程にデッドポイントを発生させないため、90°に設定される。これにより、平行リンク機構20の動作を円滑なものにすることができて、金属溶湯供給装置の動作信頼性を高めることができる。
【0026】
第1及び第2のウェブ42,43は、第1及び第2のクランク軸21,23をラドル回転用出力軸8又は第1支軸22に固着するためのクランパを兼ねており、挿入孔41の一部からは、第1及び第2のウェブ42,43の外面に達するスリット47が形成されると共に、これら第1及び第2のウェブ42,43の外面には、スリット47を開閉する締め付けボルト48が螺合されている。したがって、第1及び第2のクランク軸21,23は、第1又は第2のウェブ42,43に開設された挿入孔41内にラドル回転用出力軸8又は第1支軸22を挿入した後、締め付けボルト48を締め付けることによって、ラドル回転用出力軸8又は第1支軸22に固着することができる。
【0027】
本例のラドル回転機構3は、上記のように構成されているので、ラドル回転用モータ6を回転駆動すると、その回転が図示しない第2減速ギア機構を介してラドル回転用出力軸8に伝達され、該出力軸8に固着された第1クランク軸21が回転駆動される。第1クランク軸21の回転は、第1偏心軸45及び第2偏心軸46に回転可能に連結された一対のバー状リンク24A,24Bを介して第2クランク軸23に伝達され、第2クランク軸23と、第2クランク軸23に固着された第1支軸22と、第1支軸22に固着された第1スプロケット31とが一体に回転駆動される。この第1スプロケット31の回転は、チェーン34を介して第2スプロケット33に伝達され、第2スプロケット33と、第2スプロケット33が固着された第2支軸32と、第2支軸32の一端に固着されたラドル4とが一体に回転駆動される。
【0028】
上述のように、第1及び第2のクランク軸21,23は、第1又は第2のウェブ42,43に開設された挿入孔41内にラドル回転用出力軸8又は第1支軸22を挿入した状態で、ラドル回転用出力軸8又は第1支軸22に固着されるので、第1ウェブ42と第3ウェブ44との間、及び第3ウェブ44と第2ウェブ43との間にはラドル回転用出力軸8又は第1支軸22が配置されることがない。よって、第1及び第2のクランク軸21,23をいかなる角度範囲で回転駆動しても、ラドル回転用出力軸8又は第1支軸22がバー状リンク24A,24Bに衝合するということがなく、ラドル4を任意の角度で傾転させることができて、高粘度の金属溶湯についても迅速に射出スリーブ内に供給することができる。
【0029】
以下、ラドル搬送用リンク機構2とラドル回転機構3とを協同的に駆動することにより実行される金属溶湯供給装置の動作を、図5乃至図8を用いて説明する。なお、これらの各図においては、ラドル搬送用リンク機構2を構成する第1リンク部材11が省略されている。
【0030】
図5はラドル4を溶解炉内に挿入した状態の図であり、ラドル4は金属溶湯注入口4aを水平位置よりも下げた状態で溶解炉内に挿入される。ラドル4内に金属溶湯を注入した後、金属溶湯注入口4aの傾斜角度をそのままの状態に保ったまま、ラドル4を溶解炉よりも上方に引き上げれば、金属溶湯注入口4aの傾斜角度αに応じた一定量の金属溶湯をラドル4内に汲み上げることができる。勿論、金属溶湯注入口4aの傾斜角度αを変更すれば、ラドル4内に汲み上げられる金属溶湯の量を増減できる。
【0031】
ラドル4を溶解炉よりも上方に引き上げた後、ラドル回転用モータ6を駆動して、図6に示すように、ラドル4の金属溶湯注入口4aを水平状態にする。これにより、搬送中にラドル4内の金属溶湯がこぼれ出すことを防止することができる。
【0032】
この状態から、ラドル搬送用モータ5を駆動して、図7に示すように、ラドル4を図示しない射出スリーブの上方の所定位置、より詳細には、射出スリーブに開設された給湯口の上方まで搬送する。この搬送過程においては、ラドル4の金属溶湯注入口4aが常に水平に保たれるようにラドル回転用モータ6を協同的に駆動する。
【0033】
ラドル4が射出スリーブに開設された給湯口の上方の所定位置に達した段階で、ラドル搬送用モータ5の駆動を停止する。また、ラドル回転用モータ6を駆動し、図8に示すように、金属溶湯排出口4bが下向きになるようにラドル4を回転する。これにより、ラドル4内の金属溶湯を射出スリーブの給湯口内に注ぎ込むことができる。給湯口内への金属溶湯の注入速度は、ラドル4の回転角度βを変更することによって調整でき、高粘度の金属溶湯についてはラドル4の回転角度βを大きくし、低粘度の金属溶湯についてはラドル4の回転角度βを小さくすることによって、給湯口内への金属溶湯の注入速度を一定とすることができる。本例の金属溶湯供給装置は、第1及び第2のクランク軸21,23に形成された第1及び第2偏心軸45,46にバー状リンク24A,24Bを回転可能に連結するので、第1及び第2のクランク軸21,23をいかなる角度範囲で回転駆動しても、ラドル回転用出力軸8又は第1支軸22がバー状リンク24A,24Bに衝合するということがなく、ラドル4を任意の角度で傾転させることができる。
【0034】
なお、前記実施形態においては、ラドル搬送用リンク機構2を5節リンク機構をもって構成したが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、他の任意のリンク機構を利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、コールドチャンバー式のダイカストマシンに用いられる金属溶湯供給装置に利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 支持フレーム
2 ラドル搬送用リンク機構
3 ラドル回転機構
4 ラドル
5 ラドル搬送用モータ
6 ラドル回転用モータ
7 ラドル搬送用出力軸
8 ラドル回転用出力軸
11 第1リンク部材
12 第2リンク部材
13 第3リンク部材
14 第4リンク部材
15 第5リンク部材
20 平行リンク機構
21 第1クランク軸
22 第1支軸
23 第2クランク軸
24A,24B 一対のバー状リンク
30 チェーン駆動機構
31 第1スプロケット
32 第2支軸
33 第2スプロケット
34 チェーン
41 挿入孔
42 第1ウェブ
43 第2ウェブ
44 第3ウェブ
45 第1偏心軸
46 第2偏心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解炉から所定量の金属溶湯を汲み上げるラドルと、前記ラドルを前記溶解炉側の所定位置及びダイカストマシンに備えられた射出スリーブ側の所定位置に交互に搬送するラドル搬送用リンク機構と、前記ラドル搬送用リンク機構の動力源であるラドル搬送用モータと、前記ラドルが前記射出スリーブ側の所定位置まで搬送されたときに、前記ラドルを回転して、前記ラドル内に汲み上げられた金属溶湯を前記射出スリーブ内に注ぎ込むラドル回転機構と、前記ラドル回転機構の動力源であるラドル回転用モータとを備えた金属溶湯供給装置において、
前記ラドル回転機構は、前記ラドル回転用モータにより駆動される平行リンク機構を有しており、該平行リンク機構は、前記ラドル回転用モータにより回転される第1クランク軸と、該第1クランク軸の周りに一端が回転可能に保持されたリンク部材の他端側に回転可能に取り付けられた第2クランク軸と、前記第1及び第2のクランク軸にそれぞれ形成された2つの回転位相が異なる偏心軸に両端が連結された2本のバー状リンク部材とからなることを特徴とする金属溶湯供給装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のクランク軸に形成される2つの偏心軸の回転位相差を、90°としたことを特徴とする請求項1に記載の金属溶湯供給装置。
【請求項3】
前記第1クランク軸の周りに一端が回転可能に保持されるリンク部材は、前記ラドル搬送用リンク機構を構成する複数のリンク部材の1つであることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の金属溶湯供給装置。
【請求項4】
前記第2クランク軸は、他端に前記ラドルが取り付けられたチェーン駆動機構の一端に連結されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の金属溶湯供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−161497(P2011−161497A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29147(P2010−29147)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)