説明

金属溶融浴のためのガイドロール回転支承部

金属溶融浴(3)のためのガイドロール回転支承部において、金属溶融物内で軸受装置内に回転可能に支承される軸(6)を備え、軸受装置(7,7)が、旋回アーム(5,5)に配置されており、軸端部(6)が、両軸方向で移動可能に転がり軸受装置(7)内に支承されている軸端部(6)の材料より耐磨耗性の材料からなる保護カバー(9)を備え、転がり軸受装置(7)が、旋回アーム(5)に固定された外輪(11)と、転動体としての円筒ころ(19)と、内輪(15)とを備え、円筒ころ(19)が、内輪(15)及び外輪(11)に設けられたフランジ部材(13,14)により両軸方向で固定されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶融浴のためのガイドロール回転支承部であって、金属溶融物内で軸端部により転がり軸受装置内に回転可能に支承される軸を備え、前記軸端部が、両軸方向で移動可能に前記転がり軸受装置内に支承されており、該転がり軸受装置が、旋回アームに配置されており、該旋回アームに固定された外輪と、転動体としての円筒ころと、内輪とを備え、前記円筒ころが、前記内輪に設けられたフランジ部材により両軸方向で固定されている形式のものに関する。
【0002】
この種のガイドロール回転支承部は、コーティング金属の溶融物中で金属帯材をコーティングするためのコーティング装置で使用される。その際、コーティング装置は、亜鉛、すず、鉛、アルミニウム、ガルバリウム又はガルファンからなる耐食性の層で金属帯材をコーティングするために使用される。金属帯材は、該当するコーティング金属の、数100℃の高温の金属溶融物を通して引っ張られる。安定化のためにかつ変向のために、金属溶融物中に、ガイドロールとして回転する軸が配置されている。その際、金属溶融浴内での回転する変向軸の支承は、磨耗軸受(Verschleisslager)として設計される軸受装置内で行われる。DE10236113B3号明細書において、この種の軸受装置を滑り軸受装置として形成することが公知である。この滑り軸受装置は、比較的高い磨損及び材料除去を示す。このことは、軸受部品の頻繁な交換を惹起し、高いコストにつながる。
【0003】
特開平01−159359号公報には、上述の形態の転がり軸受装置を備えるガイドロール回転支承部が記載されている。しかし、このガイドロール回転支承部は、軸の比較的高い磨耗を特徴とし、かつその転がり軸受は、多大な手間をもってしてのみ交換可能である。
【0004】
それゆえ本発明の課題は、上述の欠点を取り除いたガイドロール回転支承部を提供することである。
【0005】
上述の課題は、本発明により、請求項1の特徴、すなわち、金属溶融浴のためのガイドロール回転支承部であって、金属溶融物内で軸端部により転がり軸受装置内に回転可能に支承される軸を備え、前記軸端部が、両軸方向で移動可能に前記転がり軸受装置内に支承されており、該転がり軸受装置が、旋回アームに配置されており、該旋回アームに固定された外輪と、転動体としての円筒ころと、内輪とを備え、前記円筒ころが、前記内輪に設けられたフランジ部材により両軸方向で固定されている形式のものにおいて、前記軸端部が、前記軸端部の材料より耐磨耗性の材料からなる保護カバーを備え、かつ前記外輪が、前記内輪に設けられたフランジ部材とともに前記円筒ころを両軸方向で固定するフランジ部材を備えることにより解決される。好ましくは、前記内輪の、前記保護カバーに面した表面が、縦断面図で見て凸面状に形成されている。好ましくは、前記内輪、前記円筒ころ及び/又は前記外輪が、セラミック材料からなる。好ましくは、前記保護カバーが、コバルトクロム基硬質合金である。好ましくは、前記保護カバーがコーティングである。好ましくは、前記保護カバーが、相対回動不能に配置されるブシュである。好ましくは、前記ブシュがクランプ部材により前記軸端部に保持されている。好ましくは、軸方向で前記軸端部に対向して、セラミック材料からなる当接ディスクが設けられている。好ましくは、一フランジ部材が、ルーズなフランジエレメントとして形成されており、リテーナリングとして前記外輪に設けられている。好ましくは、両軸方向での前記軸端部の移動可能性を保証する間隔が、前記内輪と前記保護カバーとの間に設けられている。
【0006】
本発明に係るガイドロール回転支承部では、軸端部が、軸端部の材料より耐磨耗性の材料からなる保護カバーを備え、軸端部が、両軸方向で移動可能に転がり軸受装置内に支承されている。転がり軸受装置は、旋回アームに固定された外輪と、転動体としての円筒ころと、内輪とを備える。円筒ころは、内輪及び外輪に設けられたフランジ部材により両軸方向で固定されている。
【0007】
このように形成された軸受装置は、特に高い静粛性と低い磨耗とを保証する。磨耗部品の除去は、特に簡単に、ひいては安価に可能である。
【0008】
軸方向運動の補償と同時に、変向軸の軸端部の角度オフセットを保証するために、内輪の、保護カバーに面した表面が、縦断面図で見て凸面状に形成されている。略点接触状の接触及び内輪の回転可能性により、滑り軸受の滑り効果と類似の作用が達成可能である。もちろん、転がり軸受の利点についても考慮されている。
【0009】
内輪、円筒ころ及び/又は外輪が、セラミック材料からなることにより、ガイドロール回転支承部の特に高い耐磨耗性が生じる。
【0010】
保護カバーが、コバルトクロム基硬質合金であると、特に有利である。この場合、保護カバーは、コーティングであってよい。しかし、相対回動不能に配置されるブシュとして形成されていると有利である。このブシュは、クランプ部材により軸端部に保持可能である。
【0011】
スラスト軸受として、軸方向で軸端部に対向して、セラミック材料からなる当接ディスクが設けられていてよい。
【0012】
また、フランジ部材が、ルーズな(分離可能な)フランジエレメントとして形成されており、リテーナリングとして外輪に設けられていると、有利である。こうして、磨耗部品の交換は、大幅に簡単になる。
【0013】
以下に、図面を参照しながら本発明の一実施の形態について詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】金属溶融浴内の本発明に係るガイドロール回転支承部を備えるコーティング装置の側面図である。
【図2】図1に係る軸受装置の縦断面図である。
【0015】
図1には、側面図で、金属溶融浴3内で金属帯材2をコーティングするためのコーティング装置1が概略的に示されている。金属帯材2は、金属帯材2の表面に薄い金属コーティングを施すために、金属溶融浴3を通して案内される。
【0016】
金属帯材2は、金属溶融浴3内に導入され、金属溶融浴3において、回転可能な変向軸あるいは転回軸4として形成されるガイドロールにより垂直に上方に、金属溶融浴3から再び導出される。金属帯材2の引張力は、0.8〜6.5tである。金属溶融浴3は、液状の亜鉛、すず、鉛、アルミニウム、ガルバリウム、ガルファン、又は金属コーティングのために適したその他の金属からなる。溶融金属の選択次第で、金属溶融浴2は、400℃〜700℃の温度を有する。その際、コーティングプロセスは、250m毎分までの帯材速度で実施される。
【0017】
変向軸4は、2つの旋回アーム5,5により金属溶融浴3内に保持される。変向軸4は、保守及び修理の目的で金属溶融浴3から持ち上げ可能である。
【0018】
旋回アーム5,5の浸漬された両端部には、それぞれ1つの転がり軸受装置7,7が設けられている。転がり軸受装置7,7内で、変向軸4のそれぞれの軸端部6が回転可能に支承されている。
【0019】
両転がり軸受装置7,7の構造は、詳細に図2に示されている。軸端部6には、クランプ部材8により、ブシュ9が相対回動不能に固定されている。このブシュ9は、本実施の形態では、軸端部6のための保護カバーとして役立ち、軸端部6を転がり軸受装置7との協働に基づいてアブレシブ摩耗から保護する。このために、ブシュ9は、本実施の形態では、コバルトクロム基硬質合金からなる。
【0020】
このようにブシュ9が設けられた軸端部6は、両軸方向で移動可能に転がり軸受装置7内に支承されている。このために、旋回アーム5には、2つの部分からなる旋回アームブシュ10が設けられている。旋回アームブシュ10内には、外輪11と、この外輪11に対応するリテーナリング12とが、プレスばめにより固定されている。外輪11は、第1のフランジ部材13を備え、リテーナリング12は、第2のフランジ部材14をルーズなあるいは別体のフランジエレメントとして形成する。さらに転がり軸受装置7は、内輪15を備える。内輪15は、両軸方向での軸端部の移動を可能にする。また、軸端部6の角度オフセットも可能とするために、内輪15の、ブシュ9に面した表面16は、長手方向で凸面状に形成されている。こうして、点接触をブシュ9と内輪15との間に形成可能である。また内輪15は、外輪11に面した表面に2つのフランジ部材17,18を備える。円筒ころ19は、これに応じて、フランジ部材13,14,17,18により両軸方向で固定に、内輪15と外輪11との間に配置されている。
【0021】
本実施の形態では、転がり軸受装置7のすべての部材、つまり外輪11、リテーナリング12、内輪15及び円筒ころ19が、セラミック材料から製造されている。
【0022】
軸方向で軸端部6に対向して、セラミック材料から製造される当接ディスク20が設けられている。当接ディスク20は、スラスト軸受として役立つ。当接ディスク20は、固定部材21を介して図示しない形式で旋回アーム5に結合されている。
【0023】
磨耗した転がり軸受部品又はブシュ9を交換するために、旋回アーム5,5は、転がり軸受装置7,7を変向軸4とともに金属溶融浴3の外に旋回させる。転がり軸受装置7,7の冷却後、2つの部分からなる旋回アームブシュ10を解離して、相応の部品を交換及び置換することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶融浴(3)のためのガイドロール回転支承部であって、金属溶融物内で軸端部(6)により転がり軸受装置(7,7)内に回転可能に支承される軸(4)を備え、前記軸端部(6)が、両軸方向で移動可能に前記転がり軸受装置(7,7)内に支承されており、該転がり軸受装置(7,7)が、旋回アーム(5,5)に配置されており、該旋回アーム(5,5)に固定された外輪(11)と、転動体としての円筒ころ(19)と、内輪(15)とを備え、前記円筒ころ(19)が、前記内輪(15)に設けられたフランジ部材(17,18)により両軸方向で固定されている形式のものにおいて、前記軸端部(6)が、前記軸端部(6)の材料より耐磨耗性の材料からなる保護カバー(9)を備え、かつ前記外輪(11)が、前記内輪(15)に設けられたフランジ部材(17,18)とともに前記円筒ころ(19)を両軸方向で固定するフランジ部材(13,14)を備えることを特徴とする、金属溶融浴のためのガイドロール回転支承部。
【請求項2】
前記内輪(15)の、前記保護カバー(9)に面した表面(16)が、縦断面図で見て凸面状に形成されている、請求項1記載のガイドロール回転支承部。
【請求項3】
前記内輪(15)、前記円筒ころ(19)及び/又は前記外輪(11)が、セラミック材料からなる、請求項1又は2記載のガイドロール回転支承部。
【請求項4】
前記保護カバー(9)が、コバルトクロム基硬質合金である、請求項1から3までのいずれか1項記載のガイドロール回転支承部。
【請求項5】
前記保護カバー(9)がコーティングである、請求項1から4までのいずれか1項記載のガイドロール回転支承部。
【請求項6】
前記保護カバー(9)が、相対回動不能に配置されるブシュである、請求項1から4までのいずれか1項記載のガイドロール回転支承部。
【請求項7】
前記ブシュ(9)がクランプ部材(8)により前記軸端部(6)に保持されている、請求項6記載のガイドロール回転支承部。
【請求項8】
軸方向で前記軸端部(6)に対向して、セラミック材料からなる当接ディスク(20)が設けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載のガイドロール回転支承部。
【請求項9】
一フランジ部材(14)が、ルーズなフランジエレメントとして形成されており、リテーナリング(12)として前記外輪(11)に設けられている、請求項1から8までのいずれか1項記載のガイドロール回転支承部。
【請求項10】
両軸方向での前記軸端部の移動可能性を保証する間隔が、前記内輪(15)と前記保護カバー(9)との間に設けられている、請求項1から9までのいずれか1項記載のガイドロール回転支承部。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−501382(P2012−501382A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524378(P2011−524378)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061044
【国際公開番号】WO2010/023239
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(511054477)バント−ツィンク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】BAND−ZINK GMBH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 59, D−40764 Langenfeld, Germany
【Fターム(参考)】