説明

金属物体検知用ループコイルの設置構造

【課題】 ループコイルの巻き数を増やすことなしに、自転車や自動二輪車等の小車両の検知感度を高めることができる金属物体検知用ループコイルの設置構造の提供。
【解決手段】 ループコイル1の形状が車両の長手方向にむけて長い略長方形状であり、該略長方形の各辺が路面2に埋設された鉄筋3、4に対し所定の傾斜角度を持って埋設配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属物体検知用ループコイルの設置構造に関し、特に、ループコイルによる検知感度を向上させた金属物体検知用ループコイルの設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属物体検知用ループコイルの設置構造として特許文献1に記載の車両検知技術が公知になっている。
通常、このような金属物体検知用ループコイルの設置構造は、ループコイルを車両が停止若しくは通過する路面に対し、車両の幅方向に長い略長方形の状態で埋設されている。
ところが、路面がコンクリートで、内部に縦横格子状に鉄筋が埋め込まれていると、この鉄筋にループコイルの磁界が吸収され、検知感度が悪くなるという問題があった。
そこで、従来では、図4に示すように、ループコイル1における車両の進行方向に沿う左右両辺11、11が、車両の進行方向に沿う鉄筋3のライン上に沿わないように埋設配置することにより、鉄筋3、4への磁界の吸収を抑制するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−249669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、普通自動車のように4輪車両の場合は、検知する金属部分が前後左右方向に広いため、ほとんど問題はないが、検知する金属部分の幅方向が狭い自転車や自動二輪車等の小車両の場合、車両の進行方向と直交するループコイル1の前後両辺12、12部分では、小車両の磁界を吸収できる面積が狭いため、検知感度が極めて悪く、このため、停止又は通過する位置によっても、検知感度に差が生じるという問題があった。
もっとも、ループコイル1の巻き数を増やすことで、ある程度解決可能であるが、コストが高く付くだけでなく、設置のための埋設作業が困難になるという問題がある。
すなわち、このような多数回巻いたループコイルでは、コイル径が太くなり、コイルの設置作業に数日が必要となる。例えば、4巻以上の巻線のループコイルでは、保護管等も含めコイル径が数cmにもなる。このようなコイルを設置するためには、1m四方に5〜10cm幅の配設溝を掘る必要があり、路面カッターによる切断作業、設置後の埋め戻し作業に手間を要するという問題があった。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、ループコイルの巻き数を増やすことなしに、自転車や自動二輪車等の小車両の検知感度を高めることができる金属物体検知用ループコイルの設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の金属物体検知用ループコイルの設置構造は、路面に埋め込まれた鉄筋に対し所定の角度で傾斜する略直線部分を含む状態でループコイルが埋設設置されていることを特徴とする手段とした。
【0007】
また、請求項2記載の金属物体検知用ループコイルの設置構造は、請求項1記載の金属物体検知用ループコイルの設置構造において、
前記ループコイルの形状が略方形であり、該略方形の各辺が鉄筋に対し所定の傾斜角度を持って埋設配置されていることを特徴とする手段とした。
【0008】
また、請求項3記載の金属物体検知用ループコイルの設置構造は、請求項1又は請求項2記載の金属物体検知用ループコイルの設置構造において、
前記ループコイルの形状が車両の長手方向にむけて長い略長方形状であり、該略長方形の各辺が鉄筋に対し所定の傾斜角度を持って埋設配置されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明では、上述のように、路面に埋め込まれた鉄筋に対し所定の角度で傾斜する略直線部分を含む状態でループコイルが埋設設置されることで、鉄筋にぴったり沿わせた場合よりも鉄筋への磁界の吸収を抑制することができる。
これにより、ループコイルの巻き数を増やすことなしに、自転車や自動二輪車等の小車両の検知感度を高めることができるようになるという効果が得られる。
【0010】
請求項2記載の発明では、上述のように、ループコイルの形状が略方形であり、該略方形の各辺が鉄筋に対し所定の傾斜角度を持って埋設配置されることで、ループコイルの左右両辺部分では一方の鉄筋に沿わせた場合よりも鉄筋への磁界の吸収が抑制されるため、ループコイルの左右両辺部分における検知感度が高くなり、また、ループコイルの前後両辺部分では小車両の進行方向に対する直交配置状態が解消され、小車両の磁界を吸収できる面積が拡がるため、ループコイルの前後両辺部分検知感度が高くなる。
これにより、ループコイル全体的な検知感度を高めることができる
【0011】
請求項3記載の発明では、上述のように、ループコイルの形状が車両の長手方向にむけて長い略長方形状であり、該略長方形の各辺が鉄筋に対し所定の傾斜角度を持って埋設配置されることで、上記請求項2と同様の効果が得られる他に、自転車や自動二輪車のように横幅が狭く進行方向に長い小車両の検知感度を高めることができるようになるという追加の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の金属物体検知用ループコイルの設置構造を示す平面図である。
【図2】実施例2の金属物体検知用ループコイルの設置構造を示す平面図である。
【図3】実施例3の金属物体検知用ループコイルの設置構造を示す平面図である。
【図4】従来例の金属物体検知用ループコイルの設置構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
なお、この実施例では、自転車や自動二輪車の駐車場入り口の発券機5横の路面2に設置した場合について説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、この実施例1の金属物体検知用ループコイルの設置構造を図面に基づいて説明する。
この実施例1は、ループコイル1が車両進行方向に長い略長方形状であり、かつ、ループコイル1の埋設設置路面2に埋め込まれた縦横格子状の鉄筋3、4の一方の鉄筋3が車両の進行方向とほぼ平行する状態で埋設配置され、もう一方の鉄筋4が車両の進行方向とほぼ直交する状態で路面に埋設設置されている一般的なケースである。
そして、この実施例1のループコイル1は、その略長方形の各辺が鉄筋3、4に対し所定の傾斜角度を持って埋設配置されている。
【0015】
なお、鉄筋3、4に対するループコイル1の傾斜角度の値は任意であるが、実験の結果、30±5度で最も全体的な感度が良好であった。
【0016】
次に、この実施例1の作用を説明する。
この実施例1の金属物体検知用ループコイルの設置構造では、上述のように構成されるため、自転車や自動二輪車などの小車両が駐車場入口の発券機5の前で停止すると、停止路面2に埋設されたループコイル1が発する磁界を、図外の検知装置で検知する。
【0017】
次に、この実施例1の効果を説明する。
この実施例1の金属物体検知用ループコイルの設置構造では、上述のように、ループコイル1の形状が車両の長手方向にむけて長い略長方形状であり、該略長方形の各辺が鉄筋3、4に対し所定の傾斜角度を持って埋設配置される。
このように、ループコイルの左右両辺11、11部分では一方の鉄筋3、3に沿わせた場合よりも鉄筋3、3への磁界の吸収が抑制されるため、ループコイル1の左右両辺11、11部分における車両の検知感度が高くなる。
また、ループコイル1の前後両辺12、12部分では小車両の進行方向に対する直交配置状態が解消され、小車両の磁界を吸収できる面積が拡がるため、ループコイル1の前後両辺12、12部分の検知感度が高くなる。
これにより、ループコイル1全体的な検知感度を高めることができる。
【0018】
また、以上のように、ループコイル1の形状を略方形状とすることで、ループコイル1の各辺11、11、12、12の全てにおいて鉄筋3、4への磁界の吸収を抑制できると共に、ループコイル1のコイルを中心にして半径rの磁界が発生するので、コイル上の磁界を自転車や自動二輪車の金属部分が多く接するような形状のループコイル1を形成することで、全体的な検知感度を高めることができる。
さらに、ループコイル1の形状が車両の長手方向に向けて長い略長方形状とすることで、特に、自転車や自動二輪車のように横幅が狭く進行方向に長い小車両の検知感度を高めることができるようになる。
したがって、ループコイル1の巻き数を増やすことなしに、自転車や自動二輪車等の小車両の検知感度を高めることができるようになるという効果が得られる。
【0019】
次に、他の実施例について説明する。この他の実施例の説明にあたっては、前記実施例1と同様の構成部分については図示を省略し、もしくは同一の符号を付けてその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【実施例2】
【0020】
この実施例2は、実施例1における金属物体検知用ループコイルの設置構造の変形例を示すものである。
すなわち、この実施例2では、図2に示すように、ループコイル1の4つの辺11、11、12、12の全てが鉄筋3、4に対し所定の角度で傾斜する略菱形に埋設設置された例である。
【0021】
したがって、この実施例2においても、上記実施例1とほぼ同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0022】
この実施例3は、実施例1における金属物体検知用ループコイルの設置構造の変形例を示すものである。
すなわち、この実施例3では、図3に示すように、ループコイル1の4つの辺11、11、12、12のうち、左右両辺11、11は鉄筋3に沿うが、前後両辺12、12は鉄筋3、4に対し所定の角度で傾斜する方形状に埋設設置された例である。
したがって、この実施例3では、左右両辺11、11部分が車両の進行方向と平行になるため、ループコイル1の左右両辺11、11部分における車両の検知感度が高くなる。
また、ループコイル1の前後両辺12、12部分では小車両の進行方向に対する直交配置状態が解消され、小車両の磁界を吸収できる面積が拡がるため、ループコイル1の前後両辺12、12部分の検知感度が高くなる。
これにより、ループコイル1の全体的な検知感度を高めることができる。
【0023】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0024】
例えば、実施例では、ループコイルの形状を方形又は長方形とした例を示したが、ループコイルの少なくとも一部が鉄筋に対し所定の角度で傾斜していれば、その形状は任意であり、トラック状や、三角形状などであってもよい。
また、実施例では、鉄筋に対し所定の角度で傾斜する略直線部分を含むとしたが、完全な直線でなくても、僅かにカーブしていても含まれる。
【符号の説明】
【0025】
1 ループコイル
11 ループコイルの左右辺
12 ループコイルの前後辺
2 路面
3 鉄筋
4 鉄筋
5 発券機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に埋め込まれた鉄筋に対し所定の角度で傾斜する略直線部分を含む状態でループコイルが埋設設置されていることを特徴とする金属物体検知用ループコイルの設置構造。
【請求項2】
請求項1に記載の金属物体検知用ループコイルの設置構造において、
前記ループコイルの形状が略方形であり、該略方形の各辺が鉄筋に対し所定の傾斜角度を持って埋設配置されていることを特徴とする金属物体検知用ループコイルの設置構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の金属物体検知用ループコイルの設置構造において、
前記ループコイルの形状が車両の長手方向にむけて長い略長方形状であり、該略長方形の各辺が鉄筋に対し所定の傾斜角度を持って埋設配置されていることを特徴とする金属物体検知用ループコイルの設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−92410(P2013−92410A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233652(P2011−233652)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(501202107)株式会社未来技研 (5)