説明

金属積層古紙の再生処理方法及び金属積層古紙再生パルプ

【課題】紙基材に金属箔が積層されている古紙から、紙と金属箔を効率よく分離し、夾雑物の混入が少なく、強度など劣化の少ないパルプを回収する金属積層古紙の再生処理方法および金属積層古紙再生パルプを提供する。
【解決手段】本方法においては、紙基材に少なくとも金属箔が積層されている古紙を予め、前記金属積層古紙を細片化して、再生処理することで、金属箔とパルプ繊維を効率よく分離することができ、夾雑物が少なく、強度劣化の少ないパルプを再生することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は古紙の再生方法および再生されたパルプに関するものであり、更に詳しくは紙基材に金属箔が積層されている古紙から、金属箔の混入が少なく、且つ夾雑物がすくなく、強度低下の少ないパルプを効率的に回収する金属積層古紙を再生処理する方法および金属積層古紙再生パルプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムなどの金属箔の特徴は、酸素バリアー性、水蒸気バリアー性、遮光性、充填機適性等の機能を有していることから、樹脂ラミネートに代わって、飲料紙容器や食品容器に広く使用されることに至っている。特に1977年から、アルミニウム金属箔を使用した酒用紙パックが出されてから、日本酒の紙パック率は30%を超えるまでに至っている。しかし、こうした金属積層古紙は、紙の原料として再生処理したパルプは、金属箔の細片された微小異物が、パルプ中に残存することになり、特に食品用途に使用する包装紙や紙器などに利用した場合、金属探知機等での検査工程において、頻繁に誤報として検知される問題が発生している。
よって、現在は有効に古紙原料として回収されていなく、殆どのアルミパック等の金属積層古紙は、地方自治体で焼却するゴミとして取り扱われているのが現状である。
【0003】
特許文献1には、紙基材にアルミニウム箔などの金属箔やプラスチックが積層されている古紙から、塵の混入が少なく、色相がよく、強度などの物性の劣化の少ない紙を簡便な方法により容易に回収する方法および回収した紙を提供することが開示されているが、これら古紙は、紙基材に少なくとも金属箔およびプラスチックが積層されている古紙から紙を回収する方法であり、金属およびプラスチックの比重の違いがある物質を効率的に除去するには、品質上の問題を未だ抱えている。
【0004】
また、特許文献2、3には、アルミニウムなどの金属箔を含んだ多層紙からパルプを取出す方法やそのためのスクリーン装置が開示しているが、アルミニウム以外の不要物も多く含まれているいため、アルミニウムだけを分離してパルプを取出すには、十分とは言えず、未だパルプの品質面で問題を抱えている。
【0005】
このような、品質上(夾雑物、強度劣化等)の問題をいまだ抱えており、紙に配合できるまでの良質な再生パルプを提供することができておらず、焼却または投棄処分されているのが現状である。従って、省資源、省エネルギーを図り、リサイクル再利用して地球環境に付加をかけないために、このような金属積層古紙から、良質なパルプ原料を回収することが強く求められている。
【特許文献1】特開平6−220784
【特許文献2】特開平5−93383
【特許文献3】特開平5−93386
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、紙基材に金属箔が積層されている古紙から、紙と金属箔を効率よく分離し、夾雑物の混入が少なく、強度など劣化の少ないパルプを回収する金属積層古紙の再生処理方法および金属積層古紙再生パルプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記の点に鑑み、鋭意研究した結果、以下に説明する金属積層古紙から良質なパルプ繊維を回収する金属積層古紙の再生処理方法(以下本方法)を発明したのである。
【0008】
本方法においては、紙基材に少なくとも金属箔が積層されている古紙を予め、前記金属積層古紙を細片化して、再生処理することで、金属箔とパルプ繊維を効率よく分離することができ、夾雑物が少なく、強度劣化の少ないパルプを再生することができる。
また、前記金属積層古紙を細片化する工程において、細片化された金属積層古紙の細片のうち80%以上の大きさが、25cm2〜200cm2になるように調整することで、金属箔を効率よく分離できるのである。
【0009】
さらには、前記金属積層古紙の再生処理方法において、
(1)金属積層古紙を細片化する工程、
(2)金属積層古紙を溶解する工程、
(3)溶解した金属積層古紙パルプをホールスクリーン、スリットスクリーンの順で、前記金属積層古紙パルプ中の異物、金属箔片を除去する工程、
(4)前記金属積層古紙パルプ中の異物、金属箔片をクリーナーを用いて除去する工程、
(5)前期金属積層古紙パルプを高濃度で離解処理した後、前記金属積層古紙パルプを洗浄する工程
の各工程順に金属積層古紙の再生処理を行うことで、金属箔を効率的に分離できるのである。
【0010】
また、前記金属積層古紙の再生処理方法の細片化する工程において、界面活性剤を噴霧することで、一層、金属箔を効率的に分離でき、良質な再生パルプを提供することができるのである。
前記金属積層古紙の再生処理方法によって、平均繊維長が0.8mm〜1.8mm、フリーネスが350cc〜500cc、パルプの総合強度が100以上からなるアルミニウム積層古紙再生パルプを得ることができる。
さらには、JISP8208(1998)パルプ−夾雑物測定方法において準じて測定した夾雑物が1,000mm2/m2以下の金属積層古紙再生パルプを得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙基材に金属箔が積層されている古紙から、金属箔、夾雑物の混入が少なく、強度低下の少ないパルプを効率的に回収することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の金属積層古紙の再生処理方法及び金属積層古紙再生パルプの詳細な説明においては、アルミニウム金属箔の金属積層古紙について説明するが、他の金属箔の金属積層古紙の再生処理についても同様な効果を示す。
【0013】
本発明において、紙基材にアルミニウム箔が積層されている古紙からアルミニウム金属箔とパルプ繊維を効率的に分離し、アルミニウム積層古紙再生パルプを製造するには、該アルミニウム積層古紙を細片化する工程において、細片化されたアルミニウム積層古紙の細片のうち80%以上の大きさが、25cm2〜200cm2の範囲になるように破砕機等を使用して細片化することが好ましい。より好ましくは、50cm2〜75cm2がよい。25cm2より小さくなると、細片化時に必要以上のせん断力をアルミニウム積層古紙にかけてしまうので、パルプ強度の低下をおよぼしてしまう恐れがある。また、100cm2を超える大きさになると、細片断面よりの水の浸透が、十分に行われず、十分に離解されない問題が発生し、アルミニウム金属箔とパルプを効率よく分離できない問題が発生する。
【0014】
さらには、細片化する工程で、金属箔浸透剥離促進剤として界面活性剤(以下本界面活性剤)を噴霧することで、界面活性剤が、細片断面より、アルミニウム金属箔の積層されている層に浸透することにより、より効率的にアルミニウム金属箔とパルプ繊維を分離することができる。
【0015】
一般に、溶解工程のパルパーなどに脱墨剤など界面活性剤を添加する場合があるが、これらは、インクとパルプを効率よく、分離、剥離させるものである。本発明における本界面活性剤は、特に、前述した特定大きさに細片を調整して、噴霧することでアルミニウム金属箔とパルプ繊維を効率よく、分離できるのである。また、噴霧する本界面活性剤は、分子内に少なくとも1つ以上のNを含むもの、大和化学工業(株)から市販されているメルカット40などを使用することができる。
【0016】
さらには、細片化した後、パルパーにて溶解する工程において、アルカリ性水溶液中で溶解処理することが好ましい。その際の加温は、20℃から80℃が好ましく、30℃から50℃がより好ましい。20℃未満であると、界面活性剤、水等の浸透速度が遅く、アルミニウム金属箔とパルプ繊維を効率よく、剥離させるのが難しい。また50℃を超えるとパルプ繊維を痛めてしまうので、パルプ強度の劣化が起きやすい問題がある。
【0017】
アルカリ性水溶液のpHは8〜12、好ましくは9〜11である。古紙を離解するためには攪拌溶解することが好ましい。攪拌溶解の手段は特に限定されるものではなく、公知の機械、装置、方法を使用することができる。理由は定かではないが本発明に使用する界面活性剤との組合せにおいて、PH8〜12において、薬液の浸透性が相乗的に良好な状態になるので好ましい。より好ましくはPH8〜9である。
【0018】
処理時間は古紙の離解が十分行われるまでの時間であり、適宜選定されるものであるが、風乾600kg当りのアルミ混入古紙に対して、30分から60分の離解時間がより好ましい。30分未満であると、界面活性剤、水等の浸透が不十分であると、離解時間が短く、未離解片が多く古紙処理の効率が劣る。また60分を超えると過剰に古紙を離解するので、所定のパルプ繊維長、強度を得ることができない。好ましくは、35分から45分である。PHが9を越えるとアルミニウムが水中に溶出しやすく、またアルカリにより、繊維が黄変化しやすい傾向にある。
【0019】
また、溶解工程における濃度としては、5%〜20%が好ましく、より好ましくは10%〜15%である。濃度が5%を下回ると、濃度が薄くなり、細片化したアルミニウム積層古紙を溶解するのに時間がかかる問題が発生するのと、攪拌機例えばローターからせん断力を受けやすく、アルミニウム金属箔が細片化しやすくなる問題が発生し、次工程での除塵効率が悪くなる問題が発生しやすい。
【0020】
次に前記の溶解工程を経たのち、溶解したアルミニウム積層古紙パルプをホールスクリーン、スリットスクリーンなる除塵設備を利用して、ホールスクリーン、スリットスクリーンの順で該溶解したアルミニウム積層古紙を0.5%〜1.5%の濃度で処理し、除塵するのが好ましい。またホールスクリーンの孔径は、1.0mmから2.5mmが好ましく、1.5mmから1.8mmがより好ましい。1.0mmより小さい場合は、アルミニウム積層古紙に使用されているパルプ繊維は、針葉樹系が多く含まれているため、繊維長が長く、孔部で繊維がよじれ易く、目詰まりを生じやすくなる。2.5mmを超えると、一部細片されて繊維状によじれたアルミニウム金属箔が通過してしまう恐れがある。スリットスクリーンのスリット巾は、0.15mmから0.35mmが好ましく、0.15mm〜0.2mmがより好ましい。0.1mmより狭くなると、パルプ繊維の通過率が低下するとともに、パルプ繊維のよじれが発生し、目詰まりしやすくなり、生産性を低下させる問題が発生する場合がある。また、0.35mmを超えると細片されたアルミニウム金属箔とパルプ繊維の分離が悪くなる問題が発生する。
【0021】
上述のスクリーン設備で処理したのち、パルプ繊維とアルミニウム金属箔の比重の差を利用した遠心分離ができるクリーナーなる設備にて該アルミニウム積層古紙パルプ中の異物を除去する。
【0022】
その際、処理濃度を0.5%〜1.5%の範囲にて、リジェクト率を25%〜30%の範囲に処理をすることが、好ましい。1.0%〜1.5%の処理濃度であるとより好ましい。細片されたアルミニウム金属箔とパルプ繊維を分離するには、この処理条件が好ましいことが分かった。
【0023】
さらには、このアルミニウム積層古紙パルプを15%〜30%にまで、濃縮し、離解機なる設備にて、機械的せん断力を与えることで、粘状離解し、パルプ繊維表面に微量ながら付着または吸着しているアルミニウム金属箔を剥離させることができる。より好ましくは、20%〜25%が本アルミニウム金属箔をパルプ繊維から剥離させるのに効果的であることを見出した。
【0024】
上述した本発明のアルミニウム積層古紙の再生処理方法を行うことで、平均繊維長が0.8mm〜1.8mmでフリーネスが350cc〜500ccからなり、総合強度が100以上からなるアルミニウム積層古紙再生パルプを得ることができるのである。
【0025】
また、上述の古紙パルプをバルブレスフィルター等の洗浄設備にて、洗浄を行う。さらには、JISP8208(1998)パルプ−夾雑物測定方法に準じて測定した夾雑物が1,000mm2/m2以下とするアルミニウム積層古紙再生パルプを得ることができる。
【0026】
(1)から(5)工程間に追加する処理工程が存在しても、特に問題がないが(1)から(5)の工程をこの工程順に構成されている処理フローであれば、本発明の課題とする再生古紙パルプを回収することができるのである。
【0027】
(界面活性剤)
本発明で使用する本界面活性剤は、好適には大和化学工業(株)から市販されているメルカット40などが使用される。
パルプ繊維と金属箔を効率よく分離させる本発明の課題を解決するためには、分子内に少なくとも1つ以上のNを含む界面活性剤又は(及び)分子内に少なくとも1つ以上のシロキサン構造を有する界面活性剤を浸透剥離促進剤として使用することにより、金属箔とパルプ繊維を効率よく分離でき、本発明の課題を解決できるのである。
【0028】
分子内に少なくとも1つ以上のNを含む界面活性剤又は(及び)分子内に少なくとも1つ以上のシロキサン構造を有する界面活性剤は、パルプ繊維と、アルミニウム金属箔の間に水を浸透させる浸透力が大きく、極めて優れた浸透作用により、アルミニウム金属箔のパルプ繊維からの剥離を促進させる。またパルプ繊維、アルミニウム金属箔を劣化させることなく、しかも塩、酸、アルカリに対し、安定であり、低起泡性である。従って、細片化工程において、本界面活性剤を添加することで、紙基材に少なくとも金属箔が積層されている古紙の廃棄物から、パルプ繊維と金属箔を効率よく剥離することができるのである。
【0029】
本発明において分子内に少なくとも1つ以上のNを含む界面活性剤としては次のものを挙げる事ができる。
(1)アニオン界面活性剤
(イ)脂肪族又は芳香族アルキルアミン、脂肪族或いは芳香族アマイド、脂肪族或いは芳香族スルホンアマイドの、硫酸エステル又はその塩。
(ロ)脂肪族又は芳香族アルキルアミン、脂肪族或いは芳香族アマイド、脂肪族或いは芳香族スルホンアマイドのスルホン化物又はその塩。
(ハ)脂肪族又は芳香族アルキルアミン、脂肪族或いは芳香族アマイド、脂肪族或いは芳香族スルホンアマイドのカルボキシメチル化物又はその塩。
(ニ)脂肪族又は芳香族アルキルアミン、脂肪族或いは芳香族アマイド、脂肪族或いは芳香族スルホンアマイドのリン酸エステル又はその塩。
(ホ)ポリオキシアルキレン脂肪族アミノエーテル、ポリオキシアルキレン芳香族アルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪族アミドエーテル、ポリオキシアルキレン芳香族アルキルアミドエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪族スルホンアミドエーテル又はポリオキシアルキレン芳香族アルキルスルホンアミドエーテルの夫々の硫酸エステル又はその塩。
(ヘ)ポリオキシアルキレン脂肪族アミノエーテル、ポリオキシアルキレン芳香族アルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪族アミドエーテル、ポリオキシアルキレン芳香族アルキルアミドエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪族スルホンアミドエーテル又はポリオキシアルキレン芳香族アルキルスルホンアミドエーテルのスルホン化物又はその塩。
(ト)ポリオキシアルキレン脂肪族アミノエーテル、ポリオキシアルキレン芳香族アルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪族アミドエーテル、ポリオキシアルキレン芳香族アルキルアミドエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪族スルホンアミドエーテル又はポリオキシアルキレン芳香族アルキルスルホンアミドエーテルのカルボキシメチル化物又はその塩。
(チ)ポリオキシアルキレン脂肪族アミノエーテル、ポリオキシアルキレン芳香族アルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪族アミドエーテル、ポリオキシアルキレン芳香族アルキルアミドエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪族スルホンアミドエーテル又はポリオキシアルキレン芳香族アルキルスルホンアミドエーテルのリン酸エステル又はその塩。
(リ)高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物又はその塩、例えば高級脂肪酸とN−メチルグリシンとの縮合物又はその塩。L−グルタミン酸と高級脂肪酸との縮合物又はその塩。
(ヌ)高級脂肪酸とアミノスルホン酸との縮合物又はその塩、例えば高級脂肪酸とメチルタウリンとの縮合物又はその塩。
(ル)高級脂肪酸とアルカノールアミンの縮合物(アルカノールアマイド)の硫酸エステル又はその塩。該縮合物のスルホン化物又はその塩、同カルボキシメチル化物又はその塩、同リン酸エステル又はその塩。例えば、ラウリン酸とジエタノールアミンの縮合物の硫酸エステル又はその塩。
【0030】
(2)カチオン界面活性剤
(イ)脂肪族第1、2又は3級アミン、又は芳香族アルキル第1、2又は3級アミンの無機酸及び有機酸の中和物、例えばラウリルアミン塩酸塩、オクチルアミン酢酸塩等がある。
(ロ)高級脂肪酸とトリアルカノールアミンの縮合物の無機酸又は有機酸との塩(アミノアルコールエステル)。例えばステアリン酸とトリエタノールアミンの縮合物のギ酸塩等がある。
(ハ)高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物の無機酸又は有機酸塩。例えば、ステアリン酸とN、N−ジアルキルエチレンジアミンとの縮合物の酢酸塩等がある。
(ニ)アルキル第4級アンモニウム塩、アルキルベンジル第4級アンモニウム塩例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等がある。
(ホ)環式4級アンモニウム塩
トデシルピリジニウムクロライド等のアルキルピリジニウム塩。セチルイソキノリニウムブロマイド等のアルキルイソキノリニウム塩。N、N−エチルラウリルモルホリニウムクロライド等のN、N−ジアルキルモルホリニウム塩。
(ヘ)OH基、エーテル結合、アマイド結合の夫々を有する4級アンモニウム塩。
例えばヒドロキシアルキルジメチルアンモニウムクロライド。N、N、N、N−ジエトキシメチルステアリルアンモニウムクロライド。塩化ベンゼトニウム。
ステアリン酸とN、N−ジアルキルエチレンジアミンとの縮合物のメチルクロライドによる第4級化物等がある。
【0031】
(3)両性界面活性剤。
(イ)酢酸ベタイン、イミダゾリウムベタイン。例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等がある。
(ロ)レシチン等、リン脂質誘導体及びそれらの類似物質。
【0032】
(4)非イオン界面活性剤
(イ)高級脂肪族アミン、ポリアルキレンポリアミン、芳香族アルキルアミンのポリオキシアルキレン誘導体。例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレンN−ステアリルプロピレンジアミノエーテル等がある。
(ロ)高級脂肪酸アマイド、芳香族アルキルアマイドのポリオキシアルキレン誘導体。例えばポリオキシエチレンオレイン酸アミド等がある。
(ハ)高級脂肪酸と、アルカノールアミンとの縮合物及びそれらのポリオキシアルキレン誘導体。例えばラウリン酸と、ジエタノールアミンとの縮合物からなるラウリン酸ジエタノールアマイド、ラウリン酸ジエタノールアマイドポリオキシエチレン誘導体等がある。
(ニ)ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド。
(ホ)ポリエチレンイミン誘導体。
特に、本発明の目的には、分子中に少なくとも1つ以上のNを含む有機アミンのポリオキシアルキレン誘導体系非イオン界面活性剤が特に有効である。
【0033】
本発明に於いて使用される分子中に少なくとも1つ以上のNを含む有機アミンとしては、以下のものがある。
(イ)ヘキシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン等の脂肪族アミン類及びそれらのアルキル、アルケニル又は2−ヒドロキシアルキル等の置換体。
(ロ)エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類及びそれらのアルキル、アルケニル又は2−ヒドロキシアルキル等の置換体。
(ハ)ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンポリアミン類及びそれらのアルキル、アルケニル又は2−ヒドロキシアルキル等の置換体。
(ニ)アニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、フェニルアミン、フェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、キシレンジアミン等の芳香族アミン類及びそれらのアルキル、アルケニル、2−ヒドロキシアルキル又はN−モノアルキル置換体等。
【0034】
これらの有機アミン類はエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドと、公知の方法で付加させる事ができ、ポリオキシアルキレン誘導体として得る事ができる。その際のアルキレンオキサイドの付加モル数は、有機アミンの1モルに対し、0.1〜100モル、好ましくは1.0〜50モル、更に好ましくは1.0〜30モルであり、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド等の任意の1つ以上を任意の組み合わせで付加させる事ができ、得られた誘導体は水に白濁分散する物から透明に水に溶解する物まで、任意の水溶性の物を得る事ができる。
【0035】
特に本発明に於いては[化1]で表される有機アミンが特に好ましい。この有機アミンとしては以下のものを例示できる。
【0036】
【化1】

【0037】
(イ)aが0の場合
プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン等の脂肪族アミン類及びそれらのアルキル、アルケニル又は2−ヒドロキシアルキル等の置換体。
(ロ)aが1の場合
エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類及びそれらのアルキル、アルケニル又は2−ヒドロキシアルキル等の置換体。
【0038】
本発明に於いて分子内に少なくとも1つ以上のシロキサン構造を含む界面活性剤としては以下のものが例示できる。
(1)ジメチルポリシロキサン等アルキルポリシロキサンのスルホン酸塩変性等のアニオン界面活性剤。
(2)第2級アミン変性アルキルポリシロキサンとアルキルハライドとの4級化反応よりなる、4級アンモニウム塩変性アルキルポリシロキサン等のカチオン界面活性剤。
(3)第2級アミン変性アルキルポリシロキサンとモノクロル酢酸ソーダ等を反応させた、ベタイン変性アルキルポリシロキサン等の両性界面活性剤。
(4)ポリオキシアルキレン基を有するポリエーテル変性アルキルポリシロキサン系非イオン界面活性剤。
(5)アクリル酸、メタクリル酸等の親水基をもつ重合可能な単量体とアルキルポリシロキサンとのランダム又はブロック共重合物。
【0039】
本発明の目的には、親水基がポリオキシアルキレン基である分子内に少なくとも1つ以上のシロキサン構造を含む界面活性剤が特に有効である。これらの物は、アルキルハイドロジェンポリシロキサンと、ポリオキシアルキレンアリルエーテル、ポリオキシアルキレンプロペニルエーテル等の末端に2重結合をもつ、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルとの反応により、公知の反応で得ることができる。
【0040】
又、アルキルハイドロジェンポリシロキサンに直接、アルキレンオキサイドを付加させる方法でも差し支えない。生成物の好ましいHLBとしては3.0〜20.0°、更に好ましくは5.0〜18.0°である。
【0041】
又、ビニルアルコール等のOH基をもち、重合可能な単量体モノマーとアルキルポリシロキサンとのランダム又はブロック共重合により得られた生成物にアルキレンオキサイドを付加させても得ることができる。ここで言う、ポリオキシアルキレン基とは、ポリオキシエチエレンポリオキシプロピレン、ポリオキシスチレン等の任意の物で良い。
【0042】
本発明に於いてはその分子内に少なくとも1つ以上のNと少なくとも1つ以上のシロキサン構造との両方を有する界面活性剤も当然に使用できる。本発明に於いては、N及びシロキサン構造を含まないアニオン及び非イオン界面活性剤の少なくとも1種を更に併用することができる。これにより離解作用が著しく向上する。
【0043】
上記アニオン界面活性剤としては以下のものを例示できる。
ラウリン酸ソーダ、オレイン酸ソーダ等の石鹸類。
ポリオキシエチレンラウリルエーテルのカルボキシメチル化物又はその塩等のエーテルカルボン酸類又はその塩。
アルカン(C12〜18)スルホン酸ソーダ、α−オレフィン(C数12〜18)スルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のスルホン酸塩類又はその遊離酸。
ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ソーダ等のアルキルスルホコハク酸塩類。
ラウリル硫酸エステルソーダ、ポリオキシエチレンラウリル硫酸エステルソーダ等の高級アルコール硫酸エステル又はその塩。
ロート油等の硫酸化油。
ラウリルリン酸エステルソーダ、ポリオキシエチレンラウリルリン酸エステルソーダ等のアルキルリン酸エステル又はその塩。
【0044】
また上記非イオン界面活性剤としては、以下のものを例示できる。ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(C12〜14)分岐合成アルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル。
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合物。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルブロック共重合物。
【0045】
これ等N及びシロキサン構造を有しない界面活性剤の使用量はN(又は)及びシロキサン構造を有する界面活性剤を[A]重量部、上記N及びシロキサン構造を有しない界面活性剤を[B]重量部とすると、[A]/[B]=99/1〜1/99好ましくは99/1〜10/90、より好ましくは99/1〜50/50である。
【0046】
本発明の離解促進剤を使用するに際しては、パルプを含む複合材のパルプ分100重量部に対し、該促進剤0.2〜1.0好ましくは0.2〜0.8重量部使用する。この本発明促進剤を用いてパルプを離解する装置としては例えば撹拌羽根を備えたタンクをもち、一般にはパルパーと呼ばれる装置等である。
【0047】
その際、メタノール、エタノール等の低級アルコール、ブチルカービトール、ブチルセロソルブ等のカービトール/セロソルブ類、ブタノール、イソオクタノール等の中級アルコール、トリブチルホスフェート等のトリホスフェート類、n−ヘキサン、燈油等の炭化水素類、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類等を任意に加える事ができる。又モノエタノールアミン等の有機アルカリEDTA4ソーダ等の有機キレート剤、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト等の無機ビルダー、ポリアクリル酸ソーダ等の有機ビルダー等を任意に加えることもできる。
【0048】
特に、分子内に少なくとも1つ以上のNを含む界面活性剤又は(及び)分子内に少なくとも1つ以上のシロキサン構造を有する界面活性剤をアルミニウム積層古紙の剥離促進剤として使用することが好ましい。
【0049】
また、大和化学工業(株)から市販されているメルカット40(含有成分:塩素化イソシアヌル酸塩、外観:白色顆粒、溶解性:冷水に易溶、pH:7.0±0.5(1.0%溶解))等は、エポキシ樹脂、尿素、メラミン樹脂を紙に添加して紙の強度、耐水性を向上させた状態の損紙への離解促進性があり、優れた脱樹脂性をもつ離解促進剤で、離解のスピードアップ、電力節約、損紙の有効利用に大きな効果が得られる。メルカット40は、紙の仕込み重量に対して0.2〜3質量%加えて常温で離解するのが好ましい。また、樹脂分が多い場合は処理温度を上げるとより効果的である。
【0050】
本発明で使用する破砕機およびパルパー、クリーナー(特重量クリーナーおよび中濃度クリーナー、軽量クリーナー)、ホールスクリーン、スリットスクリーン、高濃度離解機、洗浄機その他の装置は特に限定されず、例えば、市販のものを使用することができる。破砕機は既に開発されているもの、例えば、ダイオーエンジニアリング社製の型番:25HPなどが用いられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の金属積層古紙の再生処理方法を実施例により詳細に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り実施例によって限定されるものではない。
【0052】
図1は本発明の方法により、金属積層古紙から良質のパルプ繊維を回収するシステムを示すものであり、図1により本発明の方法を説明する。アルミニウム積層古紙をコンベアー1に投入する。
コンベアベルトで破砕機2に送り、界面活性剤(商品名:メルカット−40、大和化学工業株式会社)を古紙に対して1重量%の割合で、噴霧添加しながら、8.7cm×8.7cmに細片化する。細片化した古紙(風乾600kg)をパルパー3に入れる。
パルパー3では、古紙濃度約15重量%、紙に対して界面活性剤(商品名:メルカット−40、大和化学工業株式会社)1重量%、苛性を1.7重量%、pH9、温度50℃の加温された水溶液が回転数500rpmで攪拌されており、滞留時間40分で古紙の溶解を行う。パルパーで離解され、分離されたアルミニウム金属箔などの異物は水溶液とともに、ジャンクボックスにためる。溶解したパルプ水溶液は、5mm径のエキストラクションプレートを通して、パルパー後チェスト4へ送る。パルパータブ内に残留したアルミ金属箔などは、セレクトパージ分離し、水溶液はパルパー3へリサイクルする。
【0053】
古紙スラリーをパルパー後チェスト4で古紙パルプ濃度を0.9%に調製する。古紙パルプスラリーを1次クリーナー5に送り、さらに、ホールスクリーン6へ、さらにスリットスクリーン7へ送る。そして更に2次クリーナー、3次クリーナーへと連続的に流送し、脱水機10で濃度25%まで濃縮する。その後離解機11で分散処理を行い、洗浄機12にて洗浄を行った。
【0054】
(実施例1〜20、比較例1〜10、引用例)
図1のシステムにより、アルミニウム積層古紙を、表1に示した界面活性剤、パルパーなどの処理条件で再生処理を行い、アルミニウム積層古紙再生パルプを作製した。実施例1〜20、比較例1〜10において回収したパルプについて下記の方法により夾雑物の測定を行い、結果を合わせて表1に示す。引用例は引用文献1に基づいて、実験的に行なった結果について評価、測定したものである。
【0055】
(評価した試験方法)
(再生パルプの塵の測定方法)JIS P9208(きょう雑物計測図表による測定法)に準じる。
【0056】
(再生パルプの平均繊維長)
バルメット・オートメーション社のカヤニー繊維長測定機(FS−2000)を用いて測定することが可能である。測定した繊維数に対する平均繊維長として算出した。
【0057】
(再生パルプのフリーネス)
JISP8121(1995)に準じて、再生パルプのフリーネスを測定した。
【0058】
(再生パルプの強度試験用手すき紙の調整方法)
JISP8222(1998)に準じて、強度試験用手すき紙を調整した。
【0059】
(再生パルプの試験用手すき紙の物理的特性の試験方法)
JISP8223(2006)に準じて、試験片の調整を行ない坪量、引張強さ、引裂強さを測定した。
【0060】
(坪量、引張強度、引裂強度の測定方法)
坪量:JIS P8111に準じる。
引張強さ:JIS P8113に準じる。
引裂強さ:JIS P8116に準じる。
【0061】
(再生パルプの総合強度)
引張強度×10+引裂強度
【0062】
(総合評価)
上記試験による評価に加え、上記強度試験用に手すきした紙を目視による外観検査(夾雑物評価)を行ない総合評価とした。
◎見映えも良く、強度も満足できる。
○見映えは良いが、強度が満足できない。
△見映えは劣るが、強度はやや満足できる。
×見映えも悪く、強度も劣る。
【0063】
表1に示した結果から、実施例1〜20においては、アルミニウム積層古紙から、夾雑物の混入が少なく、強度などの物性の劣化の少ない再生パルプであって、引用例の方法で回収したパルプより夾雑物の混入が少ないことが判る。これに対して、比較例1〜10において回収された紙は塵の評価結果が悪く、不十分である。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の方法により、紙基材に金属箔が積層されている古紙から夾雑物の混入が少なく、強度などの物性の劣化の少ないパルプを効率よく再生処理することができる。現在、省資源、省エネルギーを計り、リサイクル再利用して地球環境に負荷をかけないために、このような古紙から塵の混入が少なく、強度などの物性の劣化の少ないパルプを回収することが強く求められており、それに対して本発明は大いに貢献するものと期待できるので、その産業上の利用価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の方法により金属積層古紙から紙を回収するシステムを示すフローシートである。
【符号の説明】
【0068】
1…コンベアー
2…破砕機
3…パルパー
4…パルパー後チェスト
5…1次クリーナー
6…ホールスクリーン
7…スリットスクリーン
8…2次クリーナー
9…3次クリーナー
10…脱水機
11…離解機
12…洗浄機
13…完成チェスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材に少なくとも金属箔が積層されている金属積層古紙より、パルプ繊維を回収する金属積層古紙の再生処理方法において、予め前記金属積層古紙を物理的に細片化することを特徴とする金属積層古紙の再生処理方法。
【請求項2】
前記金属積層古紙を細片化する工程において、細片化された金属積層古紙の細片のうち80%以上が25cm2〜200cm2である請求項1記載の金属積層古紙の再生処理方法。
【請求項3】
前記金属積層古紙の再生処理方法において、下記の工程順に金属積層古紙を再生処理する請求項1または2に記載の金属積層古紙の再生処理方法。
(1)金属積層古紙を細片化する工程、
(2)金属積層古紙を溶解する工程、
(3)溶解した金属積層古紙パルプをホールスクリーン、スリットスクリーンの順で、前記金属積層古紙パルプ中の異物を除去する工程、
(4)前記金属積層古紙パルプ中の異物をクリーナーを用いて除去する工程、
(5)前記金属積層古紙パルプを高濃度で離解処理した後、洗浄する工程。
【請求項4】
前記金属積層古紙を細片化する工程において、界面活性剤を噴霧する請求項1ないし3記載の金属積層古紙の再生処理方法。
【請求項5】
紙基材に少なくとも金属箔が積層されている金属積層古紙より、パルプ繊維を回収する金属積層古紙の再生処理方法において、予め前記金属積層古紙を物理的に細片化することを特徴とする金属積層古紙の再生処理方法にて再生処理された、パルプの平均繊維長が0.8〜1.8mm、フリーネスが350〜500cc、パルプの総合強度が100以上からなることを特徴とする金属積層古紙再生パルプ。
【請求項6】
前記金属積層古紙再生パルプがJISP8208(1998)パルプ−夾雑物測定方法に準じて測定した夾雑物(残カーボン率)が1,000mm2/m2以下である請求項5に記載された金属積層古紙再生パルプ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−43368(P2010−43368A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207211(P2008−207211)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】