説明

金属空気電池

【課題】サイクル特性を向上させることが可能な金属空気電池を提供する。
【解決手段】正極、負極、及び、正極と負極との間に充填された水溶液電解質を少なくとも収容する第1の筺体、並びに、水溶液電解質を収容する第2の筺体を有し、水溶液電解質が流通する接合部を介して、第1の筺体と第2の筺体とが接続されている、金属空気電池とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液電解質を用いた金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
空気電池は、酸素を正極活物質とする電池であり、放電時には酸素含有ガスを外部から取り込んで用いる。そのため、正極及び負極の活物質を電池内に有する他の電池に比べ、電池容器内に占める負極活物質の割合を大きくすることが可能になる。したがって、原理的に放電できる電気容量が大きく、小型化や軽量化が容易という特徴を有している。また、正極活物質として用いる酸素の酸化力は強力であるため、電池の起電力が比較的高い。さらに、酸素は資源的な制約がなくクリーンな材料であるという特徴も有するため、空気電池は環境負荷が小さい。このように、多くの利点を有する空気電池は、ハイブリッド車用電池や携帯機器用電池等への利用が期待されており、近年、空気電池の高性能化が求められている。
【0003】
空気電池に関する技術として、例えば非特許文献1には、Li−Al/Li3−xPO4−y(LiPON)/Li1+x+yAlTi2−xSi3−y12(LATP)/1M LiCl水溶液/Ptによって表されるセルは、室温25℃で開回路電圧が3.64Vであり、1週間放置してもセル定数に変化が見られない旨、記載されている。また、非特許文献1には、水に対して安定なLi/LiPON/LATP系は、水溶液を用いたLi空気二次電池に利用可能である旨、記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S. Hasegawa et al., "Study on lithium/air secondary batteries-Stability of NASICON-type lithium ion conducting glass-ceramics with water", J. Power Sources, (米国), 2009, 189, p.371-377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に開示されているような、水溶液電解質(以下において、「電解液」ということがある。)を用いたLi空気二次電池では、放電時に放電生成物(Li及びOH)を電解液中に貯蔵し、貯蔵した放電生成物を充電時に消費して、Li及び酸素を発生させる。このような電池では、電解液中に放電生成物をイオンの形態で貯蔵することができるので、イオンの飽和溶解度を超えても放電が可能である。ところが、飽和溶解度を超えると、放電生成物はイオン結晶(LiOH)となって析出し、このイオン結晶は、正極(空気極)の表面等を不均一析出核として析出しやすい。空気が流通する孔の表面にイオン結晶が析出すると、反応物である酸素の供給が阻害されるため放電反応が生じ難くなるほか、充電反応も生じ難くなる虞がある。非特許文献1に開示されている技術では、正極表面へのイオン結晶の析出を抑制するための対策が施されていないため、電池のサイクル特性が低下しやすいという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、サイクル特性を向上させることが可能な金属空気電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明は、正極、負極、及び、正極と負極との間に充填された水溶液電解質を少なくとも収容する第1の筺体、並びに、水溶液電解質を収容する第2の筺体を有し、水溶液電解質が流通する接合部を介して、第1の筺体と第2の筺体とが接続されていることを特徴とする、金属空気電池である。
【0008】
ここに、「水溶液電解質を収容する」とは、放電生成物を貯蔵した水溶液電解質を収容する形態も含む概念である。また、「正極、負極、及び、正極と負極との間に充填された水溶液電解質を少なくとも収容する第1の筺体」とは、第1の筺体には、少なくとも、正極、負極、及び、水溶液電解質が収容されることをいい、本発明の金属空気電池において、第1の筺体には、これら以外の構成要素も収容され得る。第1の筺体に収容された正極と負極との間に水溶液電解質のみが配設されている場合、水溶液電解質は、正極及び負極に接触している。これに対し、第1の筺体に収容された正極と負極との間に、水溶液電解質と他の構成要素とが配設されている場合、当該他の構成要素は、正極と負極との間をイオンが行き来できる形態で、第1の筺体に収容される。第1の筺体に収容され得る他の構成要素としては、固体電解質、非水電解液、イオン液体、アニオン交換膜等を例示することができる。本発明の金属空気電池において、水溶液電解質を収容している第1の筺体の部位と第2の筺体とは、接合部を介して、水溶液電解質が第1の筺体と第2の筺体との間を行き来できる形態で接続されている。本発明の金属空気電池において、充電反応及び放電反応は第1の筺体内で生じ、第2の筺体内では充電反応及び放電反応が生じない。
【0009】
上記本発明において、さらに、第2の筺体に収容されている水溶液電解質からの放電生成物の析出を促進する析出促進手段が備えられていることが好ましい。
【0010】
また、上記本発明において、第2の筺体の温度と第1の筺体の温度との差を広げる温度差拡大手段が、析出促進手段に含まれることが好ましい。
【0011】
ここに、析出促進手段の一形態である「温度差拡大手段」は、第1の筺体の温度よりも低い第2の筺体の温度と第1の筺体の温度との差を広げるものであれば、その形態は特に限定されるものではない。例えば、第2の筺体を冷却することによって第2の筺体の温度と第1の筺体の温度との差を広げる形態(形態A)や、第1の筺体を加温することによって第2の筺体の温度と第1の筺体の温度との差を広げる形態(形態B)のほか、第2の筺体を冷却し且つ第1の筺体を加温することによって第2の筺体の温度と第1の筺体の温度との差を広げる形態(形態C)とすることができる。形態Aとしては、第2の筺体にペルチェ素子等に代表される冷却素子や放熱板を設けることによって、第2の筺体を冷却する形態等を例示することができる。また、形態Bとしては、外部熱源(例えば、ヒーターのほか、本発明の金属空気電池がハイブリッド自動車等に設置される場合には機械摩擦等の熱源)を用いて第1の筺体を加温する形態等を例示することができる。また、形態Cとしては、ペルチェ素子を用いて第2の筺体を冷却し、且つ、このペルチェ素子から発生した廃熱を用いて第1の筺体を加温する形態等を例示することができる。
【0012】
また、上記本発明において、第1の筺体の外面と第2の筺体の外面との間に配設された断熱材が、析出促進手段に含まれることが好ましい。
【0013】
ここに、「断熱材」は、析出促進手段の一形態であり、第1の筺体の外面と第2の筺体との外面との間における熱拡散を抑制するために配設される。
【0014】
また、上記本発明において、水溶液電解質に接触する第2の筺体の内部に設けられた凹凸が、析出促進手段に含まれることが好ましい。
【0015】
ここに、水溶液電解質に接触する第2の筺体の内部に設けられた「凹凸」は、析出促進手段の一形態である。この凹凸は、表面の十点平均粗さRzが5.25μm以上、平均間隔Smが10.5μm以上、表面の二乗平均平方根粗さRqが1以上13.5以下であることが好ましい。ここで、「表面の十点平均粗さRz」は、JIS B 0601:2001に記載されているRzJISに相当し、基準長さL(例えば500μm)における、凹凸表面の粗さ曲線の最大高さ(山(Zpeak、j)の高さ)5点と、最大深さ(谷(Zvalley、j)の深さ)5点との平均の和であり、下記式(1)で定義される。また、「平均間隔Sm」は、JIS B 0601:2001の4.3.1.に規定されている平均長さであり、基準長さL(例えば500μm)の間に存在する、凹凸表面の粗さ曲線の、隣り合う山の間隔の平均値である。また、「二乗平均平方根粗さRq」は、JIS B 0601:2001の4.2.2.に規定されている二乗平均平方根粗さである。
【0016】
【数1】

【0017】
また、上記本発明において、第2の筺体と複数の第1の筺体とが接続されていることが好ましい。
【0018】
また、上記本発明において、第2の筺体に、第1の筺体の内側の圧力を制御可能な圧力制御手段が接続されていることが好ましい。
【0019】
また、第2の筺体に圧力制御手段が接続されている上記本発明において、該圧力制御手段がベントであり、該ベントの外側が加湿されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の金属空気電池は、充電反応や放電反応を起こさせるために必要な金属空気電池の各構成要素を収容する第1の筺体に加えて、水溶液電解質を収容する第2の筺体を備えている。そのため、充電反応や放電反応が生じる第1の筺体内と比較して温度が低い第2の筺体内に、放電生成物を析出させることが可能になる。第2の筺体内に放電生成物を析出させることで、第1の筺体内の正極の表面等に放電生成物が析出する事態を回避しながら金属空気電池の高容量化を図ることが可能になる。したがって、本発明によれば、サイクル特性を向上させることが可能な金属空気電池を提供することできる。
【0021】
本発明において、第2の筺体に収容されている水溶液電解質からの放電生成物の析出を促進する析出促進手段が備えられることにより、金属空気電池のサイクル特性を向上させることが容易になる。
【0022】
また、本発明において、温度差拡大手段が備えられていることにより、放電生成物が第2の筺体内で析出しやすくなるので、金属空気電池のサイクル特性を向上させることが容易になる。
【0023】
また、本発明において、第1の筺体の外面と第2の筺体の外面との間に断熱材が配設されていることにより、第1の筺体の温度よりも第2の筺体の温度が低い状態を維持しやすくなり、その結果、放電生成物が第2の筺体内で析出しやすくなるので、金属空気電池のサイクル特性を向上させることが容易になる。
【0024】
また、本発明において、水溶液電解質に接触する第2の筺体の内部に凹凸が設けられていることにより、放電生成物が第2の筺体内で析出しやすくなるので、金属空気電池のサイクル特性を向上させることが容易になる。
【0025】
また、本発明において、第2の筺体と複数の第1の筺体とが接続されていることにより、複数の金属空気電池のサイクル特性を向上させることが可能な、金属空気電池(組電池)を提供することができる。
【0026】
また、本発明において、第1の筺体の内側の圧力を制御可能な圧力制御手段が第2の筺体に接続されていることにより、金属空気電池の安定性を向上させつつサイクル特性を向上させることが可能になる。
【0027】
また、本発明において、圧力制御手段として機能するベントが第2の筺体に接続され、且つ、ベントの外側が加湿されていることにより、上記効果に加え、電解質の蒸発に起因する液枯れによる電池の失活を抑制することができるので、金属空気電池のサイクル特性を向上させることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】空気電池10を説明する断面図である。
【図2】空気電池20を説明する断面図である。
【図3】第2の筺体25を説明する断面図である。
【図4】第2の筺体27を説明する断面図である。
【図5】空気電池30を説明する上面図である。
【図6】実施例にかかる空気電池及び比較例にかかる空気電池の放電曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
水溶液電解質中に放電生成物が析出する金属空気電池のうち、水溶液電解質を用いたリチウム空気電池は、例えば以下のように構成される。
Li負極|非水電解液又はイオン液体|Li伝導固体電解質|水溶液電解質|空気極
このように構成されるリチウム空気電池の放電反応は、下記式(2)で表される。
4Li + O + 2HO → 4LiOH 3.466V 式(2)
放電生成物であるLiOHは、水溶液電解質に約5.12mol/Lまで溶解する。飽和を超えて放電すると、溶解平衡を利用して固体として析出させることができ、これによって高い容量を得ることができる。
【0030】
しかしながら、上記のように構成されるリチウム空気電池は、放電生成物が、空気極やLi伝導固体電解質を不均一析出核として析出しやすい。このような箇所に析出した放電生成物はイオン伝導を妨げるため、電圧が降下し、電池の失活を招く虞がある。そこで、かかる事態を回避するため、Li伝導固体電解質と空気極との間隔を広げ、Li伝導固体電解質と空気極との間に充填された水溶液電解質中に放電生成物を析出させる対策を施すことが考えられる。しかしながら、水溶液電解質中に析出したLiOHはイオン伝導の抵抗体である。そのため、このような対策を施すと、水溶液電解質のイオン伝導抵抗が増大し、空気電池の性能が低下する虞がある。
【0031】
本発明者は、鋭意研究の結果、正極と負極とによって挟まれない位置に配設した水溶液電解質に放電生成物を析出させることにより、水溶液電解質のイオン伝導抵抗増大に起因する金属空気電池の性能低下を抑制することが可能になり、サイクル特性を向上させることが可能になることを知見し、本発明を完成させた。
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す、リチウムイオンが吸蔵放出される空気電池は本発明の例示であり、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0033】
図1は、第1実施形態にかかる本発明の空気電池10の形態を説明する断面図である。図1に示すように、空気電池10は、第1の筺体11及び第2の筺体12を有し、第1の筺体11と第2の筺体12とは、管状の接合部13を介して接続されている。第1の筺体11及び第2の筺体12の間には断熱材14が配設されており、第2の筺体12に対向する第1の筺体11の外面と、第1の筺体11に対向する第2の筺体12の外面とは、断熱材14を介して接続されている。
【0034】
図1に示すように、第1の筺体11には、図面下側から順に、負極層1と、固体電解質層2と、水溶液電解質層3と、正極(空気極)層4と、空気層5と、が収容されている。空気電池10では、負極層1の上面と固体電解質層2の下面とが接触しており、正極層4の下面と固体電解質層2の上面とによって挟まれた空間に、リチウムイオンを伝導させる水溶液電解質3aが充填されている。また、正極層4へと供給されるべき空気が流通可能な孔(不図示)が、空気層5に備えられている。
【0035】
第2の筺体12には、水溶液電解質層3に充填されているものと同じ水溶液電解質3aが収容されている一方、正極や負極は収容されていない。また、第2の筺体12の外面には、温度差拡大手段として機能する放熱板15が設けられている。図1に示すように、第2の筺体12と水溶液電解質層3とは、接合部13を介して接続されているので、第2の筺体12に収容されている水溶液電解質3aは、接合部13を介して水溶液電解質層3へと移動することができ、水溶液電解質層3に存在する放電生成物は、接合部13を介して第2の筺体12へと移動することができる。
【0036】
空気電池10の作動時には、第1の筺体11の内側において充電反応や放電反応が生じる。そのため、第1の筺体11に収容されている水溶液電解質3aは、動作熱により加温される。これに対し、正極や負極が収容されていない第2の筺体12では、充電反応や放電反応が生じない。さらに、第2の筺体12には放熱板15が設けられているので、第2の筺体12に収容されている水溶液電解質3aは温度が低下しやすい。加えて、空気電池10は、断熱材14によって、第1の筺体11と第2の筺体12との間の熱拡散が抑制されている。それゆえ、空気電池10の作動時において、第2の筺体12に収容されている水溶液電解質3aの温度は、第1の筺体11に収容されている水溶液電解質3aの温度よりも低い。相対的に温度が低い第2の筺体12に収容されている水溶液電解質3aは、相対的に温度が高い第1の筺体11に収容されている水溶液電解質3aよりも、イオン結晶として析出する放電生成物(LiOH)の飽和溶解度が低い。そのため、空気電池10によれば、第2の筺体12に放電生成物(LiOH)を析出させることができる。ここで、第2の筺体12に収容されている水溶液電解質3aは、正極層4及び負極層1によって挟まれる領域に位置していない。そのため、空気電池10によれば、第1の筺体11内で生ずる充電反応や放電反応を阻害しない第2の筺体12内に、放電生成物(LiOH)を析出させることができ、これによって、正極層4や固体電解質層2の表面等に放電生成物(LiOH)が析出する事態を回避しながら空気電池10の高容量化を図ることが可能になる。したがって、本発明によれば、サイクル特性を向上させることが可能な空気電池10を提供することできる。
【0037】
<負極層1>
負極層1には、リチウムイオンを放出可能、好ましくはリチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質(以下において、「負極活物質」という。)が含有されており、負極層1には、負極層1の内部又は外面に当接して、負極層1の集電を行う負極集電体(不図示)が設けられている。この負極集電体には、負極リードが接続されている。負極層1は、少なくとも負極活物質を含有していれば良く、負極活物質に加えて、導電性を向上させる導電性材料や金属等を固定化させる結着材が含有されていても良い。
【0038】
負極層1に含有される負極活物質としては、リチウム空気電池の負極活物質として利用可能な公知の負極活物質を適宜用いることができる。空気電池10で使用可能な負極活物質としては、金属リチウム、リチウム合金、LiTiO等の酸化物等を例示することができる。
【0039】
負極層1に含有され得る導電性材料は、空気電池10の使用時における環境に耐えることができ、且つ、導電性を有するものであれば、特に限定されるものではない。空気電池10で使用可能な導電性材料としては、金、白金、グラファイトやカーボンブラック等の炭素材料のほか、メソポーラスカーボン等に代表される多孔質構造を有する炭素材料等を例示することができる。負極層1に導電性材料が含有される場合、電池容量の低下を抑制する等の観点から、導電性材料の含有量は、10質量%以上99質量%以下とすることが好ましい。
負極層1に含有され得る結着材としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び、スチレンブタジエンゴム(SBR)等、空気電池に使用可能な公知の結着材を例示することができる。負極層1に結着材が含有される場合、その含有量は特に限定されるものではないが、例えば10質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上5質量%以下とすることがより好ましい。
【0040】
空気電池10において、負極集電体は負極層1の集電を行う部材である。負極集電体は、空気電池10の使用時における環境に耐えることができ、且つ、導電性を有するものであれば、特に限定されるものではない。負極集電体の構成材料としては、銅、ステンレス鋼、及び、ニッケル等を例示することができ、負極集電体の形状としては、箔状、板状、及び、メッシュ(グリッド)状等を例示することができる。
【0041】
このように構成される負極層1は、例えば、金属リチウムと負極集電体とを接合する等の工程を経て作製することができる。負極層1の大きさや厚さは、空気電池10が空気電池として機能可能であれば、特に限定されるものではない。
【0042】
<固体電解質層2>
固体電解質層2には、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質が含有されている。固体電解質層2に含有される固体電解質としては、種々のリチウム含有酸化物やリチウム系固体電解質等、リチウム空気電池に使用可能な固体電解質が用いられる。このような固体電解質としては、NASICON型固体電解質、ガーネット型固体電解質、ペロブスカイト型固体電解質、LISICON型固体電解質、ガラス型固体電解質、LATP型固体電解質のほか、リチウム塩を含ませたポリエチレンオキサイドや、リチウム塩を含ませたポリエチレンオキサイドとエチルグリシジルエーテルとの共重合体等を例示することができる。NASICON型固体電解質としては、Li1.5TiSi0.42.612や、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO等を例示することができ、ガーネット型固体電解質としては、LiLaZr12や、LiBaLaTa12等を例示することができる。また、ペロブスカイト型固体電解質としては、Li0.5La0.5TiO等を例示することができ、LISICON型固体電解質としては、Li3.60.4Si0.5、及び、Li3.40.6Ge0.4等を例示することができる。また、ガラス型固体電解質としては、LiO−B、LiCl−LiO−B、LiO−SiO、LiSO−LiPO、LiO−Nb、及び、LiO−Ta等を例示することができる。また、LATP型固体電解質としては、Li1+x+yAlTi2−xSi3−y12等を例示することができる。また、ポリエチレンオキサイドやポリエチレンオキサイドとエチルグリシジルエーテルとの共重合体等に含有させるリチウム塩としては、LiTFSA、LiPF、LiBF、LiClO、LiFSA、LiTfO等を例示することができる。このような固体電解質を含有する固体電解質層2は、例えば、粉体状の固体電解質を混合し、加圧成形すること等によって作製することができる。固体電解質層2の大きさや厚さは、空気電池10が空気電池として機能可能であれば、特に限定されるものではない。
【0043】
<水溶液電解質層3>
水溶液電解質層3には、リチウムイオン伝導性を有する水溶液電解質3aが充填されており、例えば、多孔質のセパレータ(不図示)に水溶液電解質3aが保持された形態で、水溶液電解質3aが充填されている。水溶液電解質層3に含有されている水溶液電解質3aは、例えば、リチウム塩を溶解させたアルカリ性の水溶液電解質や、リチウム塩を溶解させた中性の水溶液電解質等を用いることができる。本発明において、水溶液電解質には、LiOH、CHCOOLi、LiClO、LiSO等のリチウム塩を溶解させることができ、LiOHの濃度は0mol/L以上5.12mol/L以下とすることができる。5.12mol/Lは、室温における飽和濃度である。ただし、0.1mol/L未満の電解質濃度では、リチウムイオン伝導性の低下が顕著になる。そのため、当該LiOH濃度領域における動作を補償するために、別途、0.1mol/L以上12mol/L以下程度のKOH、NaOH、若しくは、(K、Na、H、NH4)と(SO2−、ClO、NO、Cl、Br、I、F、CHCOO、PO3−)との組み合わせ、又は、海水を加えることができる。なお、LiOHの室温における飽和濃度5.12mol/Lを超えてLiOHの沈殿物が存在する状態においても、空気電池10は作動させることが可能である。また、水溶液電解質3aを保持するセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔膜のほか、樹脂不織布やガラス繊維不織布等の不織布等を例示することができる。
【0044】
<正極層4>
正極層4は、空気電池の正極(空気極)として機能可能であれば、その形態は特に限定されるものではなく、公知の形態とすることができる。例えば、導電性材料、触媒、及び、これらを結着させる結着材を含有させることができる。
【0045】
正極層4には、負極層1に用いられる上記導電性材料と同様のものを用いることができる。正極層4に導電性材料を含有させる場合、反応場の減少及び電池容量の低下を抑制する等の観点から、正極層4における導電性材料の含有量は、10質量%以上とすることが好ましい。また、充分な触媒機能を発揮し得る形態にする等の観点から、正極層4における導電性材料の含有量は、99質量%以下とすることが好ましい。
正極層4に用いられる触媒としては、MnO、ペロブスカイト型(ABO;Aは、Sr、Ba、Ca等のアルカリ土類元素に一部置換される、LaやNd等のランタノイドであり、Bは、他の遷移金属元素によって一部置換されるNi、Fe、Co、Mn等の遷移金属元素である。ABOの具体例としては、LaSr1−xFeMn1−y等が挙げられる。)、スピネル型(AB;A及びBは遷移金属元素)、パイロクロア型(A。A2−x7−y(AはPbやBi、BはRuやIr))、IrO等の酸化物、Pd、Ag、Ir、Pt、Ru等の貴金属、Cu、Co、Cu等の遷移金属、ポリピロール配位子を有するポルフィリン等の錯体、及び、Pr−Ir、Pt−Ru、Au−Pd等の合金等を例示することができる。正極層4に触媒を含有させる場合、充分な触媒機能を発揮し得る形態にする等の観点から、正極層4における触媒の含有量は、1質量%以上とすることが好ましい。また、反応場の減少及び電池容量の低下を抑制する等の観点から、正極層4における触媒の含有量は、90質量%以下とすることが好ましい。
また、正極1には、負極層1に用いられる上記結着材と同様のものを用いることができる。正極層4に結着材を含有させる場合、結着材の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば10質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上5質量%以下とすることがより好ましい。
【0046】
正極層4は、例えば、カーボンブラック、触媒、及び結着材を含む組成物を、後述する正極集電体の表面に塗布する等の工程を経て作製することができる。このほか、カーボンブラック及び触媒を含む混合粉末を熱圧着する等の工程を経て作製することもできる。正極層4の大きさや厚さは、空気電池10が空気電池として機能可能であれば、特に限定されるものではない。
【0047】
<空気層5>
空気層5は、空気を正極層4へと導く層である。空気層5は、正極層4へと導かれる空気の通り道を有し、例えば、正極層4の内部又は外面に当接して、正極層4の集電を行う正極集電体に備えられる孔が、空気層5として機能する。空気層5は、正極集電体5と表現することもできる。
【0048】
空気電池10において、正極集電体は正極層4の集電を行う部材である。正極集電体の構成材料は、空気電池10の使用時における環境に耐えることができ、且つ、導電性を有するものであれば、特に限定されるものではない。正極集電体の構成材料としては、Pt、Ag、Ir、Ru、Rh、Pd等の貴金属、Co、Ni、Mn等の遷移金属、グラファイトやカーボン等の炭素系材料、Au−Pd等のAuと貴金属との合金等を例示することができる。正極集電体の形状としては、例えばメッシュ(グリッド)状等を例示することができる。空気電池10において、正極集電体は、上記構成材料によってメッシュ状に形成したり、上記構成材料の微粒子を熱圧着する等して緻密に固めたりする等して作製することができる。正極集電体の大きさや厚さは、空気電池10が空気電池として機能可能であれば、特に限定されるものではない。
【0049】
<第1の筺体11>
第1の筐体11は、第2の筺体12と水溶液電解質層3との間を、接合部13を介して、物質が移動可能なように構成されていれば、その形状は特に限定されるものではない。例えば、接合部13が接続されるべき箇所に孔を形成するほかは、第1の筐体11の一部をメッシュ状としたり、開口部を設けたりすることによって、外部から取り込まれた空気が正極層4へと供給される形態とすることができる。このような形態の第1の筺体11は、リチウム空気電池の筐体に使用可能な公知の材料を用いて作製することができる。
【0050】
<第2の筺体12>
第2の筺体12は、第1の筺体11に収容された水溶液電解質層3と第2の筺体12との間を、接合部13を介して、物質が移動可能なように構成されていれば、その形状は特に限定されるものではない。例えば、接合部13が接続されるべき箇所に孔を形成するほかは、孔を有しない形態の筺体とすることができる。このような形態の第2の筺体12は、リチウム空気電池の筐体に使用可能な公知の材料を用いて作製することができる。空気電池10において、空気電池10の総体積をV1、第2の筺体12の体積をV2とするとき、電池の容量密度を損なわないようにする等の観点からは、V2/V1≦0.5とすることが好ましい。
【0051】
<接合部13>
接合部13は、第2の筺体12と水溶液電解質層3との間を水溶液電解質3aが移動可能なように、第1の筺体11と第2の筺体12とを接続する管状の部材である。接合部13は管状であればその形態は特に限定されるものではないが、電池内で気体が発生する場合を考慮して、軸方向を法線方向とする断面の形状は、円形、又は、三角形、四角形、五角形、若しくは、六角形等の多角形であることが好ましい。充電等で第1の筺体11内で気泡が発生した場合、又は、第2の筺体12から第1の筺体11へ気泡が流入した場合に、水溶液電解質3a(LiOH電解液)が高粘性であるために接合部13に気泡が詰まり、その結果、第2の筺体12と水溶液電解質層3との連結が絶たれてLiOHの析出を誘導する部位である第2の筺体12の機能が損なわれる事態を防止する等の観点から、接合部13の断面形状が円形である場合、当該円の直径は3mm以上とすることが好ましい。また、同様の観点から、接合部13の断面形状が多角形である場合、当該多角形の一辺の長さは3mm以上とすることが好ましい。接合部13は、例えば、第1の筺体11や第2の筺体12と同様の材料を用いて作製することができる。
【0052】
<断熱材14>
断熱材14は、第1の筺体11と第2の筺体12との間の、外面を介した熱拡散を抑制するために配設されている。空気電池10において、断熱材14は断熱機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、公知の断熱材を適宜用いることができる。
【0053】
<放熱板15>
放熱板15は、第2の筺体12の温度を低下させて、第1の筺体11と第2の筺体12との温度差を広げることにより、放電生成物を第2の筺体12内で析出させやすくするために設けられる部材である。当該機能を有するものであれば、放熱板15の形態は特に限定されるものではなく、公知の放熱板を適宜用いることができる。
【0054】
本発明に関する上記説明では、第2の筺体12の温度を低下させる放熱板15を備えた空気電池10を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。本発明の金属空気電池に、第2の筺体の温度を低下させる温度差拡大手段が備えられる場合、温度差拡大手段としては、ペルチェ素子等に代表される公知の冷却素子を用いることも可能である。このほか、第1の筺体の温度を増大させる温度差拡大手段が備えられる形態とすることも可能であり、かかる形態の場合には、外部熱源(例えば、ヒーターのほか、機械摩擦等の熱源)を用いて、第1の筺体の温度を増大させることができる。さらに、ペルチェ素子等に代表される公知の冷却素子を用いて第2の筺体の温度を低減する場合には、冷却素子から発生した廃熱を用いて第1の筺体を加温することにより、第1の筺体と第2の筺体との温度差を拡大しても良い。
【0055】
また、本発明に関する上記説明では、断熱材14及び温度差拡大手段として機能する放熱板15が備えられる形態を例示したが、本発明の空気電池は当該形態に限定されるものではない。本発明の空気電池には、断熱材及び放熱板の一方のみが備えられていても良く、断熱材及び放熱板の両方が備えられていない形態とすることも可能である。そこで、断熱材及び放熱板以外の析出促進手段が備えられる形態の本発明の空気電池について、以下に説明する。
【0056】
図2は、第2実施形態にかかる本発明の空気電池20の形態を説明する断面図である。図2では、加湿部23へと供給される流体(例えば、加湿された空気等。以下において同じ。)が流通すべき流路等の記載を省略している。図2において、空気電池10と同様に構成されるものには、図1で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。図2に示すように、空気電池20は、第1の筺体11及び第2の筺体21を有し、第1の筺体11と第2の筺体21とは、接合部13を介して接続されている。第1の筺体11及び第2の筺体21の間には断熱材14が配設されており、第2の筺体21に対向する第1の筺体11の外面と、第1の筺体11に対向する第2の筺体21の外面とは、断熱材14を介して接続されている。空気電池20は、さらに、圧力調整手段として機能するベント22と、ベント22の外側(図2ではベント22の上側)に配設された加湿部23と、を有しており、ベント22を介して、第2の筺体21と加湿部23とが接続されている。
【0057】
第2の筺体21は、水溶液電解質3aで満たされており、水溶液電解質3aに接触する第2の筺体21の表面には、析出促進手段として機能する凹凸(析出部24)が備えられている。表面張力の大きい固体表面が放電生成物の結晶核として振る舞いやすく、微小な凹凸が形成される等により比表面積等が増大されている部位で、結晶成長が起こりやすい。それゆえ、空気電池20では、析出部24において放電生成物の析出を促進することが可能になり、これによって、水溶液電解質層3における放電生成物の析出を抑制することができる。すなわち、空気電池20によれば、第1の筺体11内で生ずる充電反応や放電反応を阻害しない第2の筺体21の析出部24に、放電生成物(LiOH)を析出させることができ、これによって、正極層4や固体電解質層2の表面等に放電生成物(LiOH)が析出する事態を回避しながら空気電池20の高容量化を図ることが可能になる。したがって、本発明によれば、サイクル特性を向上させることが可能な空気電池20を提供することできる。
【0058】
さらに、空気電池20は、第2の筺体21にベント22が接続されている。空気電池は正極に空気が供給されるため、基本的に開放型の構造とされる。そのため、筺体内の圧力を制御する構成は必須ではないとも考えられる。しかしながら、電池内の温度上昇等によって内圧が上昇する虞があり、また、上記式2によれば空気電池は水分子を消費して放電するため、電池の内圧が低下する虞もある。電池内の圧力が過度に上昇・低下すると、電池の性能が低下する虞があるため、空気電池は電池内の圧力を制御する構成を有する形態とすることが好ましい。空気電池20にはベント22が備えられているので、ベント22を用いて第2の筺体21の内圧及び第1の筺体11の内圧を調整(制御)することができる。
【0059】
上述のように、第2の筺体21は、水溶液電解質3aで満たされている。第2の筺体21に収容されている水溶液電解質3aの量が低減すると、第2の筺体21に放電生成物を析出させるという効果が得られ難くなる虞がある。それゆえ、第2の筺体21に接続されたベント22の外側には、水溶液電解質3aを加湿可能な構成を有していることが好ましい。かかる観点から、空気電池20では、ベント22の外側に、水溶液電解質3aを加湿可能な流体が収容される加湿部23を配置している。加湿部23を用いて水溶液電解質3aを加湿することにより、水溶液電解質3aの揮発量を低減することが可能になるので、空気電池20のサイクル特性を向上させることが容易になる。
【0060】
空気電池20において、析出部24は、例えば、水溶液電解質3aと接触する第2の筺体21の内面(内壁)を荒れた表面とすることにより形成することができる。第2の筺体21の内壁は、樹脂や無機不活性物質等によって構成されていることが好ましい。第2の筺体21の内壁がこれらの物質で構成されている場合、樹脂等の生成過程や生成後の後処理において析出部24を形成することができる。後処理を行う場合は、ヤスリ等の研磨手段を用いて研磨したり、不活性微粒子(炭素、金属、セラミックス、又は、樹脂等)を埋め込んだりすることによって、析出部24を形成することができる。
【0061】
水溶液電解質3aと接触する析出部24の表面は、JIS B 0601:2001に記載されているとがりRkuが9.96以上の凹凸を有することが好ましい。このようなとがりを有することで、水溶液電解質3aが飽和溶解度を超えた場合に、析出部24の表面に放電生成物を優先的に析出させることが容易になる。
【0062】
また、水溶液電解質3aと接触する析出部24の表面は、凹凸による表面の十点平均粗さRzが5.25μm以上であることが好ましい。また、当該凹凸の平均間隔Smは10.5μm以上であることが好ましい。また、水溶液電解質3aと接触する析出部24の表面は、凹凸による表面の二乗平均平方根粗さRqが1以上13.5以下であることが好ましく、4以上12以下であることがより好ましい。析出部24をこのような形態とすることにより、水溶液電解質3aが飽和溶解度を超えた場合に、放電生成物を析出部24の表面に優先的に析出させることが一層容易になる。
【0063】
本発明に関する上記説明では、ベントが備えられない形態の空気電池10、及び、ベント22が備えられる形態の空気電池20を例示したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明の金属空気電池は、温度差拡大手段とともにベント等の圧力制御手段が備えられる形態とすることも可能であり、放電生成物を析出させる凹凸が備えられる一方でベント等の圧力制御手段が備えられない形態とすることも可能である。
【0064】
また、本発明に関する上記説明では、水溶液電解質3aと接触する第2の筺体21の内面(内壁)に析出部24が設けられた空気電池20を例示したが、析出促進手段として機能する凹凸は当該形態に限定されるものではない。そこで、図3及び図4を参照しつつ、第2の筺体の内部に備えられる凹凸の他の形態について説明する。
【0065】
図3は、本発明の金属空気電池(例えば、リチウム空気電池)に備えられ得る第2の筺体25を説明する断面図である。図3では、第2の筺体25の外側に備えられているリチウム空気電池の構成要素として接合部13のみを記載し、その他の構成要素の記載を省略している。図3に示すように、第2の筺体25には水溶液電解質3aが充填されており、第2の筺体25の内面(内壁)には、析出促進手段として機能する構造体26、26、…が設けられている。構造体26、26、…は、第2の筺体25の一の内面から、これと対向する内面へと向かって延びており、水溶液電解質3aと接触する表面に微小な凹凸を有している。放電生成物を析出させやすい形態にする等の観点から、構造体26は、第2筺体25の内部に複数備えられていることが好ましい。図3に示すように複数の構造体26、26、…が備えられている場合、隣り合う構造体26、26の間隔は、水溶液電解質3aと溶存イオンの流動を妨げない間隔(当該間隔は水溶液電解質3aの粘性及び空気電池の大きさにより適宜調整可能であり、例えば、5μm〜5000μm)とすることが好ましい。構造体26、26、…は、表面の微小な凹凸に放電生成物を析出させることができれば、その形態は特に限定されるものではない。構造体26、26、…は、例えば、棒状部材や板状部材の表面を研磨し、又は、表面に比表面積の大きな微粒子を埋め込むことによって、表面に微小な凹凸を形成し、その後、第2の筺体25の内面(内壁)へ、溶接、接着、又は、係合等の方法で固定することができる。構造体26、26、…の構成材料は、空気電池の使用時における環境に耐えることができ、且つ、表面に放電生成物を析出させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂や無機不活性物質等を用いることができる。構造体26、26、…の大きさや形状は、放電生成物を表面に析出させることによって空気電池のサイクル特性を向上させるという本発明の目的に合わせて適宜選択することができる。
【0066】
図3では、析出促進手段として、構造体26、26、…のみが備えられる形態を例示したが、第2の筺体の内部に放電生成物を析出させやすくする等の観点からは、構造体26、26、…に加えて、第2の筺体25の内面(内壁)に析出部24が設けられていることが好ましい。このように構成される第2の筺体は、例えば、第2の筺体の内面(内壁)に析出部24を設けた後、構造体26、26、…を第2の筺体の内面(内壁)に固定する等の方法によって、作製することができる。
【0067】
図4は、本発明の金属空気電池(例えば、リチウム空気電池)に備えられ得る第2の筺体27を説明する断面図である。図4では、第2の筺体27の外側に備えられているリチウム空気電池の構成要素として接合部13のみを記載し、その他の構成要素の記載を省略している。図4に示すように、第2の筺体27に充填されている水溶液電解質3aは、構造体28に含浸されており、構造体28には、結晶成長核29、29、…が備えられている。
【0068】
構造体28は、水溶液電解質を透過・含浸させ得る、繊維状やフィルム状等の部材である。構造体28は、例えば、ガラス材料、高分子材料、合金、又は、セラミックス等、空気電池のセパレータとして使用可能な材料を用いて作製することができる。構造体28の表面にも放電生成物を析出させ得る形態にする観点からは、構造体28の表面に、析出部24と同様の凹凸が設けられていることが好ましい。
【0069】
結晶成長核29、29、…は、放電生成物の析出・成長核として機能し、構造体28の内部や表面に点在・担持されている。結晶成長核29、29、…が配設されている構造体28の内部や表面は、凹凸を有しており、この凹凸が析出促進手段として機能する。放電生成物を析出させやすい形態にする等の観点から、結晶成長核29は、構造体28の内部に複数備えられていることが好ましく、比表面積の大きい微粒子や繊維状物質を結晶成長核29、29、…として用いることが好ましい。ここで、「比表面積の大きい」とは、例えば、BET法で求められる比表面積((BETによるガス吸着量から求められる粒子表面積)/(粒子の質量))が、同質量の粒子を球体と仮定した場合の比表面積の2倍以上であることをいう。結晶成長核29、29、…の構成材料は、空気電池の使用時の環境に耐えることができ、且つ、放電生成物の析出・成長核として機能する材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス材料、高分子材料、合金、又は、セラミックス等を用いることができる。また、結晶成長核29、29、…の大きさは、特に限定されるものではなく、例えば、単粒子又は二次粒子凝集体の形態であれば、その径を0.5μm〜3000μmとすることができ、繊維状形態であれば、繊維長さを0.5μm〜3000μm、繊維直径(繊維の長さ方向と直交する方向の幅)を0.01μm〜1000μmとすることができる。
【0070】
複数の結晶成長核29、29、…を内部に備えた構造体28は、例えば、構造体28を構成する繊維又はフィルム(繊維等)を複数用意し、繊維等の表面に結晶成長核29、29、…を点在させる工程、及び、表面に結晶成長核29、29、…が点在している繊維等の表面に他の繊維等を配設する工程を、厚さが第2の筺体27に充填されるべき水溶液電解質3aの深さと同程度になるまで繰り返す等の過程を経て、作製することができる。このほか、結晶成長核29、29、…が分散されている水溶液電解質3aを構造体28に含浸させることにより、構造体の内部に複数の結晶成長核29、29、…を点在させることも可能である。
【0071】
図4では、析出促進手段として、複数の結晶成長核29、29、…を内部に有する構造体28のみが備えられる形態を例示したが、第2の筺体の内部に放電生成物を析出させやすくする等の観点からは、複数の結晶成長核29、29、…を内部に有する構造体28に加えて、第2の筺体27の内面(内壁)に析出部24が設けられていることが好ましい。このように構成される第2の筺体は、例えば、内面(内壁)に析出部24が設けられた第2の筺体に構造体28を配置した後、結晶成長核29、29、…が分散されている水溶液電解質3aを構造体28に含浸させる等の方法によって、作製することができる。
【0072】
析出促進手段として機能する凹凸を有する形態の空気電池に関する上記説明では、当該凹凸及び断熱材14が析出促進手段として備えられる形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。析出促進手段として機能する凹凸を内部に備える第2の筺体には、放熱板15やペルチェ素子等に代表される冷却素子(温度差拡大手段)が設けられていても良い。ペルチェ素子等に代表される公知の冷却素子を用いて第2の筺体の温度を低減する場合には、冷却素子から発生した廃熱を用いて第1の筺体を加温することにより、第1の筺体と第2の筺体との温度差を拡大しても良い。
【0073】
また、本発明に関する上記説明では、析出促進手段として機能する断熱材14、ベント22、及び、析出部24を有する空気電池20を例示したが、ベント22等の圧力制御手段が組み合わされる析出促進手段は、断熱材14、及び、析出部24に代表される第2の筺体の内部に設けられた凹凸、に限定されるものではない。本発明において、圧力制御手段は、断熱材14及び凹凸の一方のみと組み合わせることも可能であり、断熱材14及び凹凸の両方と組み合わせず温度差拡大手段と組み合わせる形態や、温度差拡大手段及び断熱材と組み合わせる形態のほか、温度差拡大手段、断熱材、及び、凹凸と組み合わせる形態とすることも可能である。
【0074】
また、本発明に関する上記説明では、第1の筺体1つと第2の筺体1つとが接合部を介して接続されている形態の空気電池を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。さらに、本発明に関する上記説明では、析出促進手段を備えている形態の空気電池を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。そこで、複数の第1の筺体と1つの第2の筺体とが接合部を介して接続され、且つ、析出促進手段が備えられていない形態の本発明について、以下に説明する。
【0075】
図5は、第3実施形態にかかる本発明の空気電池30の形態を説明する上面図である。図5において、空気電池10と同様に構成されるものには、図1で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。図5に示すように、空気電池30は、第1の筺体11、11、11及び第2の筺体31を有し、第1の筺体11、11、11と第2の筺体31とは、管状の接合部32、32、32を介してそれぞれ接合されている。接合部32、32、32には、それぞれ、接合部32、32、32内における水溶液電解液3aの流動の可否を切り替えることができる開閉弁33、33、33が設けられており、第2の筺体31には、水溶液電解質3aが収容されている一方、正極や負極は収容されていない。空気電池30では、第1の筺体11、11、11にそれぞれ収容されている水溶液電解質層3、3、3と第2の筺体31とが、接合部32、32、32を介して接続されている。そのため、開閉弁33、33、33が開いている間は、第2の筺体31に収容されている水溶液電解質3aが、接合部32、32、32を介して第1の筺体11、11、11にそれぞれ収容されている水溶液電解質層3、3、3へと移動することができ、第1の筺体11、11、11の水溶液電解質層3、3、3に存在する放電生成物が、接合部32、32、32を介して第2の筺体31へと移動することができる。なお、空気電池10や空気電池20とは異なり、空気電池30は析出促進手段を備えていない。
【0076】
充電反応や放電反応が生じる第1の筺体11、11、11では、動作熱により水溶液電解質層3、3、3に充填されている水溶液電解質3a、3a、3aが加温されるのに対し、正極及び負極が収容されていない第2の筺体31では充電反応や放電反応が生じない。動作熱によって加温され難い第2の筺体31に収容されている水溶液電解質3aの温度は、第1の筺体11、11、11に収容されている水溶液電解質3a、3a、3aの温度よりも低いので、析出促進手段を備えていない空気電池30であっても、第2の筺体31内に放電生成物を析出させることができる。したがって、複数の第1の筺体11、11、11に接続された第2の筺体31を有する形態であっても、サイクル特性を向上させることが可能な空気電池30とすることできる。
【0077】
また、空気電池30の接合部32、32、32には、開閉弁33、33、33が設けられている。このようにすることで、第2の筺体31を着脱可能な形態とすることができる。空気電池30では、例えば、第2の筺体31に収容されている水溶液電解質3aの量が所定値以下に低減した場合に、開閉弁33、33、33を閉じて第2の筺体31を取り外し、水溶液電解質3aで満たされた新たな第2の筺体31を取り付けた後に、開閉弁33、33、33を開くことができる。そして、開閉弁33、33、33が開いた状態で、空気電池30を作動させることができる。空気電池30において、第2の筺体31は第2の筺体12と同様の材料によって構成することができ、接合部32は接合部13と同様の材料によって構成することができ、開閉弁33は空気電池30の使用時の環境に耐えることが可能な公知の開閉弁を適宜用いることができる。
【0078】
本発明に関する上記説明では、第1の筺体11、11、11と第2の筺体31とが接続されている一方で、析出促進手段を備えていない形態の空気電池30を例示したが、本発明の金属空気電池は、当該形態に限定されるものではない。放電生成物を第2の筺体の内部に析出させやすい形態とすることにより、サイクル特性を向上させやすい形態の金属空気電池を提供する等の観点からは、複数の第1の筺体と1つの第2の筺体とが接続されている形態の本発明の金属空気電池にも、析出促進手段が備えられることが好ましい。
【0079】
また、本発明に関する上記説明では、下側から順に、負極層1と、固体電解質層2と、水溶液電解質層3と、正極層4と、空気層5と、を収容した第1の筺体11が備えられる形態を例示したが、本発明の金属空気電池に備えられる第1の筺体は、当該形態に限定されるものではない。第1の筺体には、少なくとも、正極層及び負極層、並びに、正極層と接触するように正極層及び負極層の間に配設された水溶液電解質層、が収容されていれば良い。すなわち、第1の筺体は、空気層を有しない形態とすることも可能であり、正極層と負極層との間に水溶液電解質層のみが配設される形態とすることも可能である。
【0080】
以下に、本発明の金属空気電池における第1の筺体に収容される、負極層から正極層までの積層構造の形態例について説明する。本発明の金属空気電池における上記積層構造としては、以下の構造を例示することができる。なお、以下において、第1の筺体に収容される水溶液電解質層を「a」、非水電解質層を「b」、イオン液体層を「c」、固体電解質層を「d」、アニオン交換膜層を「e」と表記することがある。
(1)負極層|a|正極層
(2)負極層|d|a|正極層
(3)負極層|b|d|a|正極層
(4)負極層|c|d|a|正極層
(5)負極層|d|a|e|a|正極層
(6)負極層|b|d|a|e|a|正極層
(7)負極層|c|d|a|e|a|正極層
【0081】
(1)は正極層と負極層との間に水溶液電解質層のみが配設される形態であり、(2)は第1の筺体11に収容されていた積層構造に相当する形態である。また、(3)は、(2)の負極層と固体電解質層との間に非水電解質層を介在させた形態であり、(4)は、(2)の負極層と固体電解質層との間にイオン液体層を介在させた形態である。また、(5)は、(2)の固体電解質層と水溶液電解質層との間に、水溶液電解質層及びアニオン交換膜層を介在させた形態である。また、(6)は、(5)の負極層と固体電解質層との間に非水電解質層を介在させた形態であり、(7)は、(5)の負極層と固体電解質層との間にイオン液体層を介在させた形態である。負極層と固体電解質層(d)とが接触している場合、これらは直接接合される。以下に、第1の筺体に収容され得る、非水電解質層、イオン液体層、アニオン交換膜層について具体的に説明する。
【0082】
非水電解質層(b)は、非水溶媒に1種又は2種以上のリチウム塩を溶質として溶かすことによって作製された非水電解質が充填されている層であり、非水電解質層(b)は、必要に応じて、水溶液電解質層3でも用いられ得るセパレータに非水電解質を保持させた形態とすることも可能である。非水電解質に用いられる非水溶媒としては、カーボネート系溶媒(例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)等)、一般的な電池用溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキソフラン等)のほか、カーボネート系溶媒と一般的な電池用溶媒とを混合した混合溶媒等を例示することができる。また、非水電解質に用いられるリチウム塩としては、LITFSA、LiPF、LiBF、LiClO、LiFSA、LiTfO等を例示することができる。
【0083】
イオン液体層(c)は、イオン液体に1種又は2種以上のリチウム塩を溶質として溶かすことによって作製されたイオン液体が充填されている層であり、イオン液体層(c)は、必要に応じて、水溶液電解質層3でも用いられ得るセパレータにイオン液体を保持させた形態とすることも可能である。イオン液体層(c)に用いられるイオン液体としては、イミダゾリウムカチオン(EMImカチオン、BMImカチオン等)、アルキルアンモニウムカチオン(N1113カチオン等)、アルキルピリジニウムカチオン(P13カチオン、P14カチオン等)、アルキルピペリジニウムカチオン(PP13カチオン)、エーテル側鎖を持つアルキルアンモニウムカチオン(DEMEカチオン等)等のカチオンと、PFアニオン、BFアニオン、フルオロスルフォニルアミドアニオン又はパーフルオロアルキルスルフォニルアミドアニオン(FSAアニオン、TFSAアニオン等)等のアニオンと、を有するイオン液体や、これらのイオン液体を混合したもの等を例示することができる。また、イオン液体層(c)に用いられるリチウム塩としては、LITFSA、LiPF、LiBF、LiClO、LiFSA、LiTfO等を例示することができる。
【0084】
アニオン交換膜層(e)は、炭化水素重合体を有する層であり、例えば、側鎖にメチルアンモニウム基、メチルピリジニウム基、アルキルリンを含む高分子膜(例えば、株式会社トクヤマ製Aシリーズアニオン型電解質材料)等によって構成することができる。
【0085】
以上、本発明に関する上記説明では、本発明がリチウム空気電池に適用される場合を例示したが、本発明の金属空気電池はリチウム空気電池に限定されるものではない。本発明の金属空気電池は、充電や放電時に、電解液に可溶な塩が生成される電池であれば、他の形態の電池にも適用することができる。本発明は、特に、電解液において塩の濃度が大きく変化するような電池に効果的である。このような電池としては、リチウム空気電池のほか、水溶液電解質を備えるとともにZn等の負極を有するその他の金属空気電池や、ダニエル電池(Cu|CuSO水溶液|ZnSO水溶液|Zn)等を例示することができる。リチウム空気電池以外の金属空気電池においても、正極及び負極並びにこれらの間に配設される水溶液電解質層を収容する第1の筺体とは異なる第2の筺体に水溶液電解質を収容し、第2の筺体と水溶液電解質層とを水溶液電解質が流動可能なように接続した構成とすることで、本発明の効果を奏することができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を参照しつつ、本発明の金属空気電池について説明を続ける。
【0087】
負極|非水電解質層|固体電解質層|水溶液電解質層|正極層を順に収容した第1の筺体と、当該第1の筺体に収容されている水溶液電解質と同じ水溶液電解質を収容した第2の筺体と、水溶液電解質層と第2の筺体とを水溶液電解質が流動可能な形態で繋ぐ管状の接合部とを備える、本発明の金属空気電池(Li空気電池)を作製した。ここで、負極層は金属Liによって構成し、非水電解質層にはPCに1mol/LのLiTFSAを溶かすことによって作製した非水電解液を充填した。また、固体電解質層にはLATP型固体電解質を用い、水溶液電解質層には5mol/LのLiOHを含む飽和LiOH水溶液(1ml)を充填した。また、空気極層は導電性材料(Ketjen Black等のカーボン)と結着材(PVDF等)と触媒(Pt、ペロブスカイト触媒等)とを混合する過程を経て作製した。本発明の金属空気電池では、第2の筺体に収容した分を含めて総量1.5mlのLiOH水溶液を用い、負極層には負極集電体を介して負極リードを接続し、正極層には空気が流通可能な孔を有する正極集電体を介して正極リードを接続した。
【0088】
また、結合部及び第2の筺体が備えないほかは上記本発明の金属空気電池と同様に構成した比較例の金属空気電池(Li空気電池)も作製した。そして、本発明のLi空気電池及び比較例のLi空気電池を、それぞれ、0.5mA/cmで放電し、性能を調査した。本発明のLi空気電池の放電曲線(実施例)、及び、比較例のLi空気電池の放電曲線を、図6に示す。図6の縦軸は放電電位E[V]、横軸は放電容量Q[mAh]である。
【0089】
図6に示すように、比較例のLi空気電池では、第一プラトー領域の2.7Vでしばらく放電した後、放電電位が急速に低下した。そして、1.7V以下の第2プラトー領域でさらに放電し、放電終止電位は1.5Vであった。比較例のLi空気電池は、放電終止後に、正極層の内部にLiOHが析出していた。これは、第一プラトー領域における放電反応は下記式(2)で示される想定反応通りであったが、空気極内にLiOHが析出したために空気極内の空気の拡散が妨げられて酸素還元反応の正味の反応速度が低下し、電圧が降下した結果、第二プラトー領域における放電反応は下記式(3)で示される水の分解反応が起こるようになったためであると考えられる。
想定放電反応:4Li + O + 2HO → 4LiOH 3.466V 式(2)
水分解型反応:2Li + 2HO → 2OH + H 2.127V 式(3)
【0090】
これに対し、実施例のLi空気電池では、第一プラトー領域の電位のみで、比較例の空気電池の総容量の1.5倍以上の放電を行うことができた。実施例及び比較例の、第一プラトー領域同士の放電容量比は、おおよそ、実施例:比較例=3:1であった。なお、今回の実験において、実施例のLi空気電池は放電終止に達しておらず、さらに放電を継続することが可能であった。
【0091】
以上のように、充電反応や放電反応を生じさせる第1の筺体のほかに、放電生成物を析出させる第2の筺体を増設した実施例のLi空気電池によれば、第2の筺体におけるLiOHの析出を促すことが可能になり、正極層の近傍や正極層内部におけるLiOHの析出を抑制することが可能になった結果、放電容量を増大させることができ、サイクル特性を向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の金属空気電池は、電気自動車や携帯型情報機器の動力源等に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1…負極層
2…固体電解質層
3…水溶液電解質層
3a…水溶液電解質
4…正極層
5…空気層
10…空気電池(金属空気電池)
11…第1の筺体
12…第2の筺体
13…接続部
14…断熱材
15…放熱板(温度差拡大手段)
20…空気電池(金属空気電池)
21…第2の筺体
22…ベント(圧力調整手段)
23…加湿部
24…析出部(凹凸)
25…第2の筺体
26…構造体(凹凸)
27…第2の筺体
28…構造体
29…結晶成長核(凹凸)
30…空気電池(金属空気電池)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び、前記正極と前記負極との間に充填された水溶液電解質を少なくとも収容する第1の筺体、並びに、前記水溶液電解質を収容する第2の筺体を有し、前記水溶液電解質が流通する接合部を介して、前記第1の筺体と前記第2の筺体とが接続されていることを特徴とする、金属空気電池。
【請求項2】
さらに、前記第2の筺体に収容されている前記水溶液電解質からの放電生成物の析出を促進する析出促進手段が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項3】
前記第2の筺体の温度と前記第1の筺体の温度との差を広げる温度差拡大手段が、前記析出促進手段に含まれることを特徴とする、請求項2に記載の金属空気電池。
【請求項4】
前記第1の筺体の外面と前記第2の筺体の外面との間に配設された断熱材が、前記析出促進手段に含まれることを特徴とする、請求項2又は3に記載の金属空気電池。
【請求項5】
前記水溶液電解質に接触する前記第2の筺体の内部に設けられた凹凸が、前記析出促進手段に含まれることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の金属空気電池。
【請求項6】
前記第2の筺体と複数の前記第1の筺体とが接続されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属空気電池。
【請求項7】
前記第2の筺体に、前記第1の筺体の内側の圧力を制御可能な圧力制御手段が接続されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属空気電池。
【請求項8】
前記圧力制御手段がベントであり、該ベントの外側が加湿されていることを特徴とする、請求項7に記載の金属空気電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−3940(P2012−3940A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137934(P2010−137934)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】