説明

金属篭の吊り下げ方法及び吊り下げ具

【課題】 この発明は、金属篭の合成樹脂コーティングに際し、金属篭側へ吊り線(金属線)の一部が残留しないようにすることを目的そしたものである。
【解決手段】
この発明は、金属篭の構成線に耐熱性繊維よりなる紐の一端を所定間隔で2点、3点又は4点で固定し、前記紐の他端を金属篭の吊り線の下端部に掛止したことを特徴とする金属篭の吊り下げ方法により目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属篭を合成樹脂でコーティング処理する際における金属篭のコーティング時の吊り下げ方法及び吊り下げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食器収容に用いる金属篭は、合成樹脂をコーティングして、収容する食器にメタルマークが付着することを防止すると共に、発錆防止をしている。例えば、金属としてステンレスを用いれば発錆防止はできるけれども、メタルマークが食器に付着するのを防止することはできないので、メタルマーク付着防止のために合成樹脂をコーティングしている。
【0003】
また、従来金属篭に合成樹脂をコーティングする際には、金属篭を下向きにしたり、横向きにしたりして、底部又は側部の線に吊り線の下端を溶接していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3077228号公報
【特許文献2】特許第4157970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、食器篭は金属製であって、食器にメタルマークが付着するのを防止するために合成樹脂をコーティングしている。金属篭に合成樹脂をコーティングするには、金属篭を構成する金属線に合成樹脂を被着させ、この金属線を用いて篭を成形する場合と、金属線で金属篭を作り、この金属線を全面的に合成樹脂でコーティングする場合とあるが、前者は金属篭の各線を溶接することができないので、大部分の篭はまず金属篭を作り、これを全面的に合成樹脂コーティングすることが普通となっている。そして合成樹脂コーティング時に金属篭を支持するには、専ら図3に示すように、金属篭1の底部の金属線1aの中央部へ、吊り下げ用の金属線(以下「吊り線」という)10の下端を溶接固着している(図3(b))。コーティングが終わったならば、吊り線10を溶接部10aの直上Bで切断するが、切断部は露出しており、誤って手を触れると怪我をするおそれがあった。そこで、切断面へ合成樹脂を被着させれば一応危険性は低減するけれども、切断面は尖鋭になっているために合成樹脂被着が破れやすく、かつ吊り線の断面が露出しやすく(合成樹脂の被着不十分)又は合成樹脂がはがれるので、怪我をするおそれがあり、また、発錆しやすい問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、合成樹脂コーティングすべき金属篭の底部の金属線へ、耐熱繊維の一端部を結着し、前記耐熱繊維の他端部を吊り線に掛止することにより、前記問題点を解決することに成功したのである。即ち、耐熱性繊維を切断して切断面が露出していても、該部に指などが接触した場合にも怪我をするおそれがなく、発錆のおそれもない。
【0007】
前記において使用する繊維は、高温(例えば300℃以上)に対し耐熱性があり、かつ吊り下げ荷重に耐え得る強度を有する必要がある。前記耐熱性繊維の材料は300℃以上の耐熱性合成樹脂「例えばポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)」又は炭素繊維などである。例えば前記繊維は8番手で1本10kg以上の引張り強度が必要であり、高温(300℃〜400℃)でも張力が衰えない材質が好ましい。
【0008】
前記耐熱性繊維二本の一端部を2cm〜4cm間隔で結着し、他端部を一本の金属細線(例えば直径0.1mm)の両端フック部へ掛止する。前記金属細線の中央部を吊り線(直径1mm〜2mm)のフック部へかけて吊り下げる。
【0009】
前記における耐熱性繊維は8番手ならば1本でもよいが、2本の方が安定性がよいので、2本が好ましい。なお、3本用いる必要性はない。また、金属細線を省略して耐熱性繊維の一端を吊り線のフック部へ直接掛止することも考えられるが、この場合には安定性が悪くなりやすいので、金属細線を介在させることが好ましい。
【0010】
前記のような金属篭をコーティングする方法は、金属篭を吊り下げて移動させ、移動中にコーティング溶液を吹き付け、又は金属篭を高温(例えば200℃〜300℃)にして、これに耐熱コーティング材料(例えばポリエステル、ポリプロピレン、塩化ゼニリテレン、ポリカーボネート、又は耐熱ナイロン樹脂)を吹き付け、或いは金属篭を耐熱コーティング溶液中に浸漬するなど、公知の方法が採用されるが、何れにしても金属篭を吊り下げし、これを移動しなければならない。
【0011】
前記において、耐熱コーティング材料を使用するのは金属篭を食器篭として使用する場合が多いが、この場合に、食器の洗浄、乾燥時に100℃以上の熱気に長時間接触する場合が多く、前記乾燥時に150℃以上になることもあるので、100℃〜200℃で長時間さらされてもコーティング材料が変化(軟化又は溶解)しない材質にしなければならない。
【0012】
この発明は、金属篭を吊り下げ状態でコーティングした後に、使用した吊り下げ具の一部を金属篭側へ残留させないことを第1の目的とし、残留させても実質的に支障をきたさないことを唯一最大の目的としている。従って、残留しても支障をきたさない材質を求めたものである。200℃に耐える程度の耐熱性繊維は比較的多くあるが、金属篭の使用によっては、200℃以上300℃近くの高温にさらされる場合も多々あることが判明したので、300℃以上になった場合にも十分な強度(引張り強度)を発揮する耐熱性繊維を要件としたのである。
【0013】
この発明は、金属篭の底部の線に耐熱性繊維よりなる紐の一端を所定間隔で2点、3点又は4点で固定し、前記紐の他端を金属篭の吊り線の下端部に掛止したことを特徴とする金属篭の吊り下げ方法であり、金属篭の底部の線に、耐熱性繊維よりなる二本の紐の夫々の一端を所定間隔で固定し、前記二本の紐の他端を夫々金属細線の両端と掛止すると共に、前記金属細線の中央部と前記金属篭の吊り線の下端部とを掛止させたことを特徴とする金属篭の吊り下げ方法である。
【0014】
また、金属細線の両端にフックを形成し、該フックへ二本の紐の他端を夫々掛止したことを特徴とする請求項2記載の金属篭の吊り下げ方法であり、耐熱性繊維よりなる紐は、直線状又はリング状に形成することを特徴とした請求項1又は2記載の金属篭の吊り下げ方法であり、耐熱性繊維は、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール又は炭素繊維としたことを特徴とする請求項1又は2記載の金属篭の吊り下げ方法である。
【0015】
さらに、耐熱性繊維を所定長さの紐又はリング状の紐としたことを特徴とする請求項1又は2記載の金属篭の吊り下げ方法であり、一端を金属篭に固定する紐と、該紐の他端を掛止する吊り線とよりなることを特徴とした請求項1記載の方法に用いる吊り具であり、一端を金属篭の底部の線に所定間隔で固着し、他端を金属細線の両端に夫々掛止する耐熱性繊維よりなる二本の紐と、前記金属細線と該金属細線を吊り下げる吊り線とを組み合わせたことを特徴とする請求項2記載の方法に用いる吊り具である。
【0016】
前記のように、本願発明は金属篭と吊り線との間に耐熱性紐を介在することを要旨としている。従来は吊り線を金属篭の底部の金属線へ溶接していたので、コーティング後吊り線を切断するとその切り口が鋭利であって、指が接触すると怪我をするおそれがあった。また、切断面をコーティングしても剥がれやすく、かつ発錆するおそれがあり、剥がれないまでも切り口の一部によって指を怪我するおそれがある。前記従来の問題点について様々な対応をしたが、何れも万全とはいえなかった。
【0017】
然るに、耐熱性繊維又はその紐を使用することにより、切り口が鋭利でなくなったので、怪我を未然に防止することに成功したのである。
【0018】
前記において、金属細線はあった方が吊り下げ時及び移動時の安定性がよくなる。前記において紐と吊り線のみでも目的を達成できるけれども、この場合には紐が長くなり不安定になりやすい。そこで、吊り線と紐との間に金属細線を介装し、紐を短くして安定性を確保したのである。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、吊り線と金属篭との間に、耐熱性繊維又は耐熱性紐を介装したので、金属篭をコーティング後吊り具を取り去った際の危険性がなく、かつ外観を損なう(例えば発錆により)おそれもない効果がある。
【0020】
また、吊り線と耐熱性紐との間に金属細線を介装したので、耐熱性紐の長さが可及的に短くなり、安定性良好でコントロールしやすくなる効果がある。
【0021】
この発明の方法によって、従来コーティング篭の欠点となっていた危険性を未然に防止することができる。
【0022】
また、紐は装着と切断がきわめて容易であって作業性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)この発明の吊り線を付けた実施例の斜視図、(b)同じく吊り具の使用状態の実施例の一部拡大図、(c)同じく線に固定した紐と金属細線との掛止状態を示す一部を省略した断面拡大図。
【図2】(a)同じく紐の実施例の図、(b)同じく紐の他の実施例の図、(c)同じく紐の他の実施例の図、(d)同じく紐を線に固定した状態の断面拡大図、(e)同じく紐を吊り線に掛止した図、(f)同じく3本吊りの図、(g)同じく4本吊りの図。
【図3】(a)従来の金属篭と吊り線の使用状態の一例を示す斜視図、(b)同じく吊り線の溶接状態を示す断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明は、合成樹脂をコーティングすべき金属篭の底部を構成する線(例えば図1の筋交線1a)の中央部に、2本の耐熱性紐の夫々の一端を縛着し、夫々の他端の結び部を凸形の金属細線の両端フック部に夫々掛止し、前記金属細線の中央部へ、吊り線の下端に設けたフック部を掛止して、吊り線により金属篭を吊り下げる。前記において、紐はなるべく短くする(例えば10mm〜30mm)。前記において、紐を短くするのは、金属篭の移動自由度(ゆれも同じ)を少なくするためである。また、金属細線(保形性あり)を介在させたのは、金属篭の姿勢コントロールを容易にするためである(自由度を少なくする)。
【0025】
この発明における第1の目的は、金属篭を安全に吊下し、移動中のゆれを少なくし、トラブルなく吊り下げ目的を達成するためである。また、吊り線切断による危害を未然に防止するためである。また、吊り線切断による危害が少ない限りは従来の吊り線下端の溶接と同様に金属篭の姿勢コントロールを容易にすることである。そこで金属篭に残るのは耐熱性繊維又は該繊維よりなる紐である。この場合に紐を除去すると、紐結着部の樹脂被覆が剥がれるので、紐の結着部はそのまま残すが、紐の材質は耐熱性繊維であるから、その一部が残留しても危害が生じるおそれはない。然しながら、紐の場合には金属篭の移動自由度が大きくなるので、紐の長さを可及的に短くするためには、金属細線を介在させる方が好ましい。紐を吊り線に直接掛止する場合であっても、吊り線の掛止部を改善して短い紐(例えば3cm〜5cm)と直接掛止できれば採用することができる。
【実施例1】
【0026】
この発明の実施例を図1、2に基づいて説明する。金属篭1の底部の筋交線1aに、一端を結んでリングとした紐2を縛着する。この場合に二本の紐2の無端側(U状部2a)を筋交線1aに巻きつけ、前記U状部2aに紐2の結び目2b側を通過させて、結び目2bを矢示7のように引張れば、紐2のU字状部2aを筋交線1aへ縛着することができる。
【0027】
ついで、三角形の凸状に形成した金属細線3を挿し込み、紐2の結び目2bと金属細線3のフック部3aとを掛止する。金属細線3は直径0.1mm〜0.2mmであるけれども、剛性が大きいので金属篭1を吊しても凸状を保持することができる。前記金属細線3の中央部3bへ、金属製の吊り線5のフック部5aを掛止する。
【0028】
前記金属篭1を通常の要領で吊り下げて合成樹脂をコーティングすれば、筋交線1aと紐2との縛着部も合成樹脂層9で被覆される(図1(c))。そこで、紐2をA点で切断すると、紐の切断面は合成樹脂層9と面一となる。
【0029】
前記紐の切断面が露出していても指などを傷つけるおそれはなく、安全である。また紐は外観上も殆ど目立たないので、金属篭の品質を低下するおそれはない。また、念のために紐の切断面へ合成樹脂を被着することもある。
【0030】
前記において使用する紐は、図2(a)、(b)の如く、無端(図2(b))又は縛着部を有するリング(図2(a))、又はU字状(図2(c))とがある。前記における図2(d)は、紐を筋交線1aへ縛着したときの説明図である。
【0031】
前記実施例において、紐2と金属細線3及び吊り線5は予め多量生産できるとともに、紐2と金属細線3との掛止はきわめて簡単であって、短時間に多数の取り付けができるので、作業(人力)上支障をきたすおそれはない。
【0032】
前記実施例は紐2について説明したが、繊維を所定長さに切断し、そのまま使用することもできる。紐2の製作については色々あるけれども、例えば複数の繊維を溶着して一本の紐にすることもできる。また一本の繊維の両端を溶着すれば、無端リング状の紐ができる。
【実施例2】
【0033】
一本の紐の両端を所定間隔で筋交線1aに縛着した図2(e)は、紐2を吊り線3に直接掛止した実施例である。この実施例においても、従来のような金属線の切断部が露出する問題点を除くことはできる。然しながらこの実施例の場合には、紐を吊り線に直接掛止したので、紐が必然的に長くなり、吊り下げた金属篭のゆれが若干大きくなったり、金属篭の姿勢制御について制御精度が低くなるなどの問題点があるが、金属篭の姿勢制御を要しない場合には問題がない。
【実施例3】
【0034】
この発明の吊り方の他の実施例を図2(f)、(g)に基づいて説明する。図2(f)は、金属篭の線1a、1bに一本の紐4の両端を固定し、線1aに一本の紐2の一端を固定し(巻きつけ、又は縛着により)、一本の紐4の中央部を吊り線5のフック5aに掛止し、他の一本の紐2の他端を前記フック5aに掛止して、金属篭を二本の紐2、4で吊り下げたものである。前記実施例によれば、篭は3点支持であるから、2点支持より安定性が良好となる。
【0035】
次に他の実施例を図2(g)に基づいて説明する。二本の紐2、4の一端を夫々線1aへ所定間隔で縛着すると共に、紐2、4の他端を夫々線1bへ所定間隔で縛着し、前記紐2、4の中央部を吊り線5のフック5aに掛止したものである。この場合に金属篭は4点で支持され安定性がよく、姿勢制御も容易である。
【0036】
前記実施例の3点支持と4点支持の場合には、金属細線を介装してないが、フック5aと各紐との間に金属細線を介装することもできる。即ち各紐は金属細線のフックへ掛止し、金属細線の中央部を吊り線のフックへ掛止すれば目的を達成することができる。
【0037】
前記のように、金属篭の吊り方には2点支持、3点支持、4点支持がり、夫々金属篭の条件(金属篭の大きさ、形状又は重量)に応じて選定使用するが、5点支持の必要性がないので、実用上2点〜4点支持が用いられる。
【符号の説明】
【0038】
1 金属篭
1a、1b 筋交線
2、4 紐
3 金属細線
5 吊り線
9 合成樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属篭の構成線に耐熱性繊維よりなる紐の一端を所定間隔で2点、3点又は4点で固定し、前記紐の他端を金属篭の吊り線の下端部に掛止したことを特徴とする金属篭の吊り下げ方法。
【請求項2】
金属篭の構成線に、耐熱性繊維よりなる二本の紐の夫々の一端を所定間隔で固定し、前記二本の紐の他端を夫々金属細線の両端と掛止すると共に、前記金属細線の中央部と前記金属篭の吊り線の下端部とを掛止させたことを特徴とする金属篭の吊り下げ方法。
【請求項3】
金属細線の両端にフックを形成し、該フックへ二本の紐の他端を夫々掛止したことを特徴とする請求項2記載の金属篭の吊り下げ方法。
【請求項4】
耐熱性繊維よりなる紐は、直線状又はリングとすることを特徴とした請求項1又は2記載の金属篭の吊り下げ方法。
【請求項5】
耐熱性繊維は、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール又は炭素繊維としたことを特徴とする請求項1又は2記載の金属篭の吊り下げ方法。
【請求項6】
耐熱性繊維を所定長さの紐又はリング状の紐としたことを特徴とする請求項1又は2記載の金属篭の吊り下げ方法。
【請求項7】
一端を金属篭に固定する紐と、該紐の他端を掛止する吊り線とよりなることを特徴とした請求項1記載の方法に用いる吊り具。
【請求項8】
一端を金属篭の構成線に所定間隔で縛着し、他端を金属細線の両端に夫々掛止する耐熱性繊維よりなる二本の紐と、前記金属細線と該金属細線を吊り下げる吊り線とを組み合わせたことを特徴とする請求項2記載の方法に用いる吊り具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−91805(P2012−91805A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239324(P2010−239324)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(391029853)イズミ商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】