説明

金属粉末の燃料化方法及び燃料化システム

【課題】新たな廃棄物の発生や設備の劣化等を伴うことなく、金属廃棄物を最大限に再利用することを可能にする。
【解決手段】金属粉末を、セメント焼成の主燃料である微粉炭と混合した後、その混合燃料をセメントキルン10に吹き込み、セメントキルン10で金属粉末を燃焼させる。金属粉末を燃焼させたときに発生する金属酸化物は、セメント原料の一部となり、最終的にはセメント中に取り込まれるため、新たな廃棄物を発生させることなく、金属廃棄物を燃料として有効利用することができる。また、セメントキルン10の内壁は、耐火レンガによって保護されているのに加え、原料粉末層やコーティングで被覆されているため、高温の金属粒子が融着したとしても、設備が劣化するのを回避することができる。鉄粉、アルミニウム粉及びシリコン粉等をセメントキルンの窯前部、窯尻部24、仮焼炉22等で燃焼させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末の燃料化方法及び燃料化システムに関し、特に、金属廃棄物を燃料として有効に再利用する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、機械製品や家電製品等には金属が多用され、それらが廃棄されれば金属廃棄物が発生し、また、その製造過程でも、金属加工の際の加工くずが廃棄物となる。金属部材の加工や研磨の際や、金属が気中から凝縮したとき、液中に析出したときなどは、比表面積の大きな粉末状態で金属の廃棄物が得られることがある。金属廃棄物のうち、純度が高いものは、金属資源として回収され、再利用されるが、廃棄物中には様々な不純物が混入していることが多く、それらは、埋め立て処理等によって処理される。しかしながら、その処理限度量は逼迫しており、廃棄物発生量のさらなる増大が見込まれる今日では、循環システムの確立が強く望まれている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、生活・産業廃棄物としてのアルミドロス及びアルミ灰等を主原料とし、これに石灰質原料、珪酸塩質原料、硫酸塩質原料及び鉄原料から選ばれる1種又は2種以上の成分補正用原料を用いたアーウイン系セメントの製造方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−309750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属は発熱量が高いため、廃棄物処理された金属粉末を燃料として用いれば、熱エネルギーを得るための資源として有効利用することができる。しかしながら、金属粉末を燃焼させると、金属酸化物が発生し、これらは燃焼灰として排出されるため、新たな廃棄物を発生させることになる。
【0006】
また、金属粉末の燃焼には高温の燃焼炉を用いるが、その炉内雰囲気下では、金属粉末や金属酸化物が炉内各所に付着するため、伝熱効率の低下や、設備の劣化等を招くという問題がある。例えば、金属粉末をボイラーで燃焼させ、熱回収しようとすると、ボイラー水管に高温の金属粒子が融着し、それによって、水管が劣化するため、破裂事故を誘発する虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、新たな廃棄物の発生や設備の劣化等を伴うことなく、金属廃棄物を最大限に再利用することが可能な金属粉末の燃料化方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、金属粉末の燃料化方法であって、金属粉末を、セメント焼成用の燃料としてセメント焼成炉に導入し、該セメント焼成炉で燃焼させることを特徴とする。ここで、前記金属粉末を廃棄物として排出されたものとすることもできる。
【0009】
そして、本発明によれば、金属廃棄物を含む金属粉末をセメント焼成用の燃料に用いるため、金属廃棄物を処理するのと同時に、熱エネルギーを得るための資源として有効利用することが可能となる。また、金属粉末を燃焼させたときに発生する金属酸化物は、セメント原料の一部となり、最終的にはセメント中に取り込まれるため、新たな廃棄物を発生させることなく、金属廃棄物を再利用することができる。さらに、セメント焼成炉の内壁は、耐火レンガによって保護されているのに加え、原料粉末層やコーティングで被覆されているため、高温の金属粒子が融着したとしても、設備が劣化するのを回避することができる。
【0010】
上記金属粉末の燃料化方法において、前記金属粉末として、鉄粉、アルミニウム粉及びシリコン粉よりなる群から選択される1以上の金属粉末を用いることができる。金属粉末が、鉄粉、アルミニウム粉及びシリコン粉である場合には、それらの酸化物は、セメントの主要成分であるため、セメント焼成炉に多量の金属粉末を導入することができ、より多くの金属廃棄物を処理することが可能となる。
【0011】
上記金属粉末の燃料化方法において、前記金属粉末を、セメントキルンの窯前部、窯尻部及び仮焼炉よりなる群から選択される1以上の箇所から導入することができる。特に、発熱量の高い金属粉末をセメントキルンの窯前部から吹き込むことにより、良好なバーナフレームの形成に寄与することができ、金属粉末をセメント焼成用の燃料として効率良く使用することが可能となる。
【0012】
上記金属粉末の燃料化方法において、前記金属粉末を主燃料とともに前記セメント焼成炉に吹き込むことにより、前記金属粉末を前記セメント焼成炉に導入することができる。これにより、金属粉末を含む燃料のセメント焼成炉での安定燃焼を図ることができる。
【0013】
上記金属粉末の燃料化方法において、前記金属粉末として、平均粒径で0.01μm以上1000μm以下の粒度を有する金属粉末を用いることができる。
【0014】
また、本発明は、金属粉末の燃料化システムであって、金属粉末を貯蔵する貯蔵手段と、該貯蔵手段で貯蔵された金属粉末をセメント焼成用燃料として導入する導入手段と、該導入手段を介して導入された金属粉末を用いてセメント原料を焼成するセメント焼成炉とを備えることを特徴とする。本発明によれば、前記発明と同様に、新たな廃棄物の発生や設備の劣化等を伴うことなく、金属廃棄物を最大限に再利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、新たな廃棄物の発生や設備の劣化等を伴うことなく、金属廃棄物を最大限に再利用することが可能な金属粉末の燃料化方法等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明にかかる金属粉末の燃料化システムの第1の実施形態を示し、この処理システム1は、大別して、主燃料槽2と、副燃料槽3と、混合器4と、バーナ5と、セメントキルン10と、クリンカクーラ11等で構成され、セメント焼成設備の一部として構成される。
【0018】
主燃料槽2は、主燃料を一時的に貯蔵するために備えられ、石炭を乾燥粉砕した微粉炭が貯蔵される。また、主燃料槽2には、主燃料槽2から排出される微粉炭を圧送するためのブロワ7と、微粉炭を混合器4に導入するための管路6とが付設される。
【0019】
副燃料槽3は、副燃料を一時的に貯蔵するために備えられ、廃棄物としてセメント製造工場に持ち込まれた金属粉末が貯蔵される。副燃料として使用可能な金属粉末には、鉄粉、アルミニウム粉及びシリコン粉の他、金属加工の際に発生する切断くず、切削くず、研磨くず、ダライ粉、新断及びメカス、アルミニウムのリサイクル処理時等に発生するアルミドロス粉、並びにWSO(ワイヤーソーオイル)固形分等がある。尚、副燃料槽3に貯蔵される金属粉末の粒度は、凝集、固結の低減、粉塵爆発の防止、搬送の安定性等の観点から、平均粒径で0.01μm以上1000μm以下であることが好ましく、10μm以上300μm以下であることがより好ましい。
【0020】
混合器4は、主燃料槽2から導入される微粉炭と、副燃料槽3から導入される金属粉末とを所定の割合で混合するために設けられる。このときの金属粉末の混合割合は、燃料代替の確実な効果を得ること、一方、適正な火炎状況を確保する必要があることなどの観点から、金属粉末の窯前燃料全体に対する燃料代替率が、発熱量換算で0.1%以上90%以下になる程度であることが好ましく、10%以上50%以下になる程度であることがより好ましい。尚、図1に示す例では、混合器4に副燃料槽3から直接副燃料を供給し、管路6を介して供給された主燃料と混合しているが、管路6を介して副燃料槽3から副燃料を混合器4に供給してもよく、管路6を介さずに、主燃料槽2から混合器4へ直接主燃料を供給することもできる。
【0021】
上記構成を有する金属粉末の燃料化システム1では、微粉炭及び金属粉末を主燃料槽2及び副燃料槽3に一時的に貯蔵した後、セメントキルン10の運転時に、ブロワ7及び管路6を介して混合器4に供給する。次に、混合器4において、両燃料を混合した後、両燃料の混合物をバーナ5からセメントキルン10に吹き込み、セメント焼成に利用する。
【0022】
上記構成によれば、金属廃棄物としての金属粉末をセメント焼成用の燃料に用いるため、金属廃棄物を処理するのと同時に、セメント焼成用の熱エネルギーを得るための資源として有効利用することが可能となる。また、混合器4において、両燃料を混合してバーナ5に吹き込むため、セメント焼成炉での安定燃焼を図ることができる。尚、図1に示す例では、ブロワ7とバーナ5との間に混合器4を設置して両燃料を混合しているが、微粉炭を乾燥粉砕する石炭ミルの出口部等において粉砕した微粉炭と金属粉末を混合し、混合物をそのままブロワ7とバーナ5との間の管路6に供給したり、石炭ミルに金属粉末を石炭とともに供給して乾燥粉砕した後、管路6に供給することもできる。混合器4を用いずに、バーナ5に接続された主燃料の流路に、金属粉末を直接合流させ吹き込んだり、金属粉末を同一バーナ内の主燃料とは別の流路から吹き込んだり、金属粉末を主燃料とは別のバーナから吹き込んだりすることもできる。
【0023】
尚、セメントキルン10内において、金属粉末を燃焼させた際に金属酸化物が発生するが、発生した金属酸化物は、焼成過程でセメント原料の一部となり、最終的にはセメント中に取り込まれる。従って、新たな廃棄物を発生させることなく、金属廃棄物を再利用することができる。特に、金属粉末が、鉄粉、アルミニウム粉及びシリコン粉である場合には、それらの酸化物はセメントの主要成分であるため、多量の金属粉末を導入することができ、より多くの金属廃棄物を処理することが可能となる。
【0024】
また、金属粉末中に不純物が混入していたとしても、不純物が、廃油、廃プラスチック等の可燃物であったり、水等の蒸散するものであれば、別途の分離処理を行うことなく、そのまま、セメント焼成用の燃料として用いることができ、処理コストを低く抑えることが可能である。
【0025】
さらに、金属粉末をセメント焼成燃料の一部に用いることにより、主燃料である微粉炭の使用量を減らすことができるため、CO2の排出量を削減することができ、セメント製造の面から見ても有効である。また、金属粉末に微量の重金属、塩素等が混入していても、セメント焼成炉であれば、塩素バイパスシステムで系外に排出することができるため、セメント品質の低下を招く虞がない。
【0026】
さらに、セメントキルン10の内壁は、耐火レンガによって保護されているのに加え、原料粉末層やコーティングで被覆されているため、高温の金属粒子が融着したとしても、設備が劣化するのを回避することができる。
【0027】
次に、本発明にかかる金属粉末の燃料化システムの第2の実施形態について、図2を参照しながら説明する。
【0028】
この処理システム20は、大別して、セメントキルン10と、プレヒータ21と、仮焼炉22と、バーナ23等で構成され、第1の実施形態と同様に、セメント焼成設備の一部として構成される。
【0029】
プレヒータ21及び仮焼炉22は、従来のセメント製造装置と同様の機能を有し、プレヒータ21に供給されたセメント原料は、プレヒータ21で予熱され、仮焼炉22で仮焼された後、セメントキルン10にて焼成される。
【0030】
第1の実施形態では、セメントキルン10の窯前部から金属粉末を吹き込む場合について説明したが、本実施の形態では、矢印Aで示すように、微粉炭と金属粉末とを混合した燃料をバーナ23に供給し、仮焼炉22へ吹き込む。両燃料を吹き込むにあたって、図1に示した主燃料槽2、副燃料槽3、混合器4、管路6及びブロワ7等を使用することができる。
【0031】
本実施の形態でも、金属粉末をセメント焼成用の燃料に用いることができ、第1の実施形態と同様に、新たな廃棄物の発生や設備の劣化等を伴うことなく、金属廃棄物を最大限に再利用することが可能となる。
【0032】
尚、上記実施形態では、金属粉末を仮焼炉22で使用する際に、バーナ23を介して微粉炭とともに吹き込んでいるが、必ずしも微粉炭とともに吹き込む必要はなく、金属粉末のみをバーナ23とは別のバーナを用いて吹き込んでもよく、空気とともに金属粉末を吹き込まなくとも、シュート33を用いて仮焼炉22内に金属粉末を投入するようにしてもよい。
【0033】
次に、本発明にかかる金属粉末の燃料化システムの第3の実施形態について、図3を参照しながら説明する。この処理システム30も、大別して、セメントキルン10と、プレヒータ31と、仮焼炉32等で構成され、第1の実施形態と同様に、セメント焼成設備の一部として構成される。
【0034】
図2に示した第2の実施形態では、微粉炭と金属粉末を混合した燃料をバーナ23に供給し、仮焼炉22へ吹き込んでいたが、本実施の形態では、図3の矢印Bで示すように、シュート等を用いてセメントキルン10の窯尻部34に金属粉末のみを投入する。
【0035】
本実施の形態でも、金属粉末をセメント焼成用の燃料に用いることができるため、上記実施形態と同様に、新たな廃棄物の発生や設備の劣化等を伴うことなく、金属廃棄物を最大限に再利用することが可能となる。
【0036】
尚、セメント焼成炉において、上記3つの実施形態のいずれか1つを実施してもよく、3つの実施形態から選択される2つを組み合わせて実施してもよく、すべての実施形態を同時に実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明にかかる金属粉末の燃料化システムの第1の実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明にかかる金属粉末の燃料化システムの第2の実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明にかかる金属粉末の燃料化システムの第3の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1 金属粉末の燃料化システム
2 主燃料槽
3 副燃料槽
4 混合器
5 バーナ
6 管路
7 ブロワ
10 セメントキルン
11 クリンカクーラ
20 金属粉末の燃料化システム
21 プレヒータ
22 仮焼炉
23 バーナ
24 窯尻部
30 金属粉末の燃料化システム
31 プレヒータ
32 仮焼炉
33 シュート
34 窯尻部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末を、セメント焼成用の燃料としてセメント焼成炉に導入し、該セメント焼成炉で燃焼させることを特徴とする金属粉末の燃料化方法。
【請求項2】
前記金属粉末は、廃棄物として排出されたものであることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末の燃料化方法。
【請求項3】
前記金属粉末は、鉄粉、アルミニウム粉及びシリコン粉よりなる群から選択される1以上の金属粉末であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属粉末の燃料化方法。
【請求項4】
前記金属粉末を、セメントキルンの窯前部、窯尻部及び仮焼炉よりなる群から選択される1以上の箇所から導入することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の金属粉末の燃料化方法。
【請求項5】
前記金属粉末を主燃料とともに前記セメント焼成炉に吹き込むことにより、前記金属粉末を前記セメント焼成炉に導入することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の金属粉末の燃料化方法。
【請求項6】
前記金属粉末が、平均粒径で0.01μm以上1000μm以下の粒度を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の金属粉末の燃料化方法。
【請求項7】
金属粉末を貯蔵する貯蔵手段と、
該貯蔵手段で貯蔵された金属粉末をセメント焼成用燃料として導入する導入手段と、
該導入手段を介して導入された金属粉末を用いてセメント原料を焼成するセメント焼成炉とを備えることを特徴とする金属粉末の燃料化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−201620(P2008−201620A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39451(P2007−39451)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】