説明

金属組成物にシランコーティングを施す方法

有機官能性シランがオイルバスを使用して金属表面に適用される。金属はおよそ2%のシランを含むオイルバス中に浸される。好ましい実施態様では、金属はタイヤコード(12)である。シランは加水分解されているかもしくは未加水分解であってよい。加水分解シランは水分散性樹脂と組み合わせ可能である。タイヤコード(12)が本発明の方法を利用してコーティングされる場合には、タイヤを低い硫黄レベルで、且つコバルトなしに作成することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その開示内容をここに参照のために取り込むこととする仮出願60/715,424に関する。
【背景技術】
【0002】
シランは、耐食性及び付着促進を含む幾つかの目的のために金属表面に適用される。例えば、スチールタイヤコードは適切に機能するためにゴムに付着しなければならない。スチールはゴムに十分に接着しない。付着を促進するために、スチールタイヤコードは黄銅でコーティングされてきた。加硫処理の間に、ゴムは黄銅と化学結合を形成する。このゴム/金属結合は、4phr超の比較的に高い硫黄レベルを要する硫黄加硫ゴム並びに所定の促進剤(すなわち、遅延作用性スルホンアミドとナフテン酸コバルトの形態のコバルトとは適切な硬化及び優れた付着を達成する)並びに酸化亜鉛を用いた場合にのみ形成される。コバルトはゴム/黄銅結合の安定性を向上させる。しかしながら、これは、高温の酸素存在下では逆反応を促進することでゴム網目構造の安定性に負の影響を及ぼしもする。タイヤコードとゴムとの間に十分な結合を達成するためには硫黄及びコバルトの増量が必要であると考えられている。
【特許文献1】米国特許第6416869号
【特許文献2】米国特許第6756079号
【特許文献3】米国特許第6919469号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
付着を改善するために、タイヤコードを様々なシラン組成物で処理することが提案されている。これは例えば、van Oojiの米国特許第6416869号、米国特許第6756079号、及び米国特許第6919469号に開示されている。これらの特許に開示される方法は、様々な問題を有する。主な問題点の一つは、タイヤコードへのシランの有効な適用である。これらの適用の中には、適切な付着のためにタイヤコード上へのシランの焼き付けを要するものがある。
【0004】
シランコーティングは別の形態の金属にも適用される。これらは水溶液または懸濁液または揮発性溶媒中に分散した状態で適用してよい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、タイヤコード等の金属を低割合でシランを含むオイルバスに通すことによって、該金属をシランコーティングで被覆することができるとの発見を前提とする。過剰物質はエアワイプまたは別の類似装置を用いて簡便にふき取られる。タイヤコードのコーティングについては通常は加工の間にタイヤコードをオイルバスに通さねばならないことから、これは有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
あらゆる有機官能性シランが使用可能である。こうしたシランは、付着を改善し、且つ腐食を防止することが知られている。タイヤコード向けには、シランはゴム/金属付着を改善するあらゆる有機シランであってよい。これらには、例えばビニルシラン、アミノシラン、ポリスルフィドシラン並びに有機シランのブレンドが含まれる。硫黄硬化ゴムシステム向けには、シランはアミノシランとポリスルフィドシランとのブレンドとなる。
【0007】
これが、ひいてはより少ない硫黄及び酸化コバルトもしくは酸化亜鉛無しでのゴム生成、特にスキムラバー生成を可能にし、よって性能特性、例えば生成されるタイヤの熱老化等を改善する。これはまた、ゴム生成の費用を著しく低減する。
【0008】
この方法は黄銅、アルミニウム、スチール及び亜鉛メッキ金属を含むあらゆるタイプの金属のコーティングに使用可能である。
【0009】
本発明の目的及び利点は、以下の詳細な説明及び図面を参照することでよりよく理解されるであろう。
【0010】
本発明によれば、金属は、シランを入れたオイルバスを利用して有機官能性シランでコーティングされる。オルガノシランは、いかなるオルガノシランであってもよい。これらは、耐食性を付与するためまたは付着促進剤として、特に金属−ゴム付着促進剤として添加してよい。好ましい実施態様では、金属はワイヤー、特にスチールもしくは黄銅でコーティングされたスチールタイヤコードである。ゴムは金属を利用するあらゆるゴム、例えばタイヤ及びコンベヤーベルトであってよい。
【0011】
これらの応用に使用される典型的な有機官能性シランには、ビニルシラン、アミノシラン、及びポリスルフィドシラン、並びにこれらの混合物が含まれる。こうしたシランは、その開示内容を参照のためにここに取り込むこととする米国特許第6416869号、米国特許第6756079号、PCT出願WO2004/009717、係属中の出願US2005/0058843、及び米国特許第6919469号に開示されている。
【0012】
硫黄硬化ゴムシステム向けに好ましいシランコーティング組成物の一つは、ビス-シリルアミノシランとビス-シリルポリサルファシランとのブレンドであって、ビス-シリルアミノシランのビス-シリルポリサルファシランに対する重量比が約1:10乃至約10:1、好ましくは1:3のものである。
【0013】
本発明に使用してよい好ましいビス-シリルアミノシランは、二つの三置換シリル基を有し、ここで置換基はアルコキシ、アリールオキシ、及びアシルオキシからなる群より個別に選択される。したがって、これらのビス-シリルアミノシランは、下記の一般構造を有する。
【化1】

【0014】
上記式中、R1は、C1-C24アルキル(好ましくはC1-C6アルキル)及びC2-C24アシル(好ましくはC2-C4アシル)からなる群より選択される。各R1は同一または相違してよいが、加水分解シラン溶液中ではR1基の少なくとも一部(好ましくは全部または実質的に全部)が水素原子によって置換されている。好ましくは、R1はエチル、メチル、プロピル、iso-プロピル、ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、及びアセチルから個別に選択される。
【0015】
アミノシラン中の各R2は、置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基であってよく、且つ各R2は同一または相違してよい。好ましくは、各R2はC1-C10アルキレン、C1-C10アルケニレン、アリーレン、及びアルキルアリーレンからなる群より選択される。更に好ましくは、各R2はC1-C10アルキレン(特にプロピレン)である。
Xは下記のいずれかであってよい。
【化2】

上記式中、各R3は、水素、置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基であってよく、且つ各R3は同一または相違してよい。好ましくは、各R3は、水素、C1-C6アルキル、及びC1-C6アルケニルからなる群より選択される。更に好ましくは、各R3は水素原子である。
【0016】
最後に、アミノシラン中のR4は、置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基である。好ましくは、各R4はC1-C10アルキレン、C1-C10アルケニレン、アリーレン、及びアルキルアリーレンからなる群より選択される。更に好ましくは、R4はC1-C10アルキレン(特にエチレン)である。
【0017】
本発明において使用してよい好ましいbis-シリルアミノシランの例には、bis-(トリメトキシシリルプロピル)アミン(GE SiliconeによりSilquest(登録商標)A-1170の商標名で市販のもの)及びbis-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンが含まれる。
【0018】
本発明において使用してよい好ましいbis-シリルポリサルファシランには、下式:
【化3】

[式中、各R1は前述の通りである]
のものが含まれる。本発明の加水分解シラン溶液中では、R1基の少なくとも一部(好ましくは全部または実質的に全部)が水素原子によって置換されている。Zは-Q-Sx-Q-であり、式中各Qは脂肪族(飽和もしくは不飽和)または芳香族基であり、xは2乃至10の整数である。二官能性ポリサルファシラン内のQは、同一または相違してよい。好ましい実施態様では、各QはC1-C6アルキル(直鎖状もしくは分枝状)、C1-C6アルケニル(直鎖状もしくは分枝状)、一つ以上のアミノ基で置換されたC1-C6アルキル、一つ以上のアミノ基で置換されたC1-C6アルケニル、ベンジル、及びC1-C6アルキルで置換されたベンジルからなる群より個別に選択される。
【0019】
特に好ましいbis-シリルポリサルファシランには、2乃至10の硫黄原子を有するbis-(トリエトキシシリルプロピル)スルフィドが含まれる。こうした化合物は、下記の式:
【化4】

[式中、xは2乃至10の整数である]
を有する。特に好ましい化合物の一つは、bis-(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(bis-(トリエトキシシリルプロピル)スルファンまたは「TESPT」とも呼称される)である。しかしながら、TESPTの市販形態(例えばGE Siliconeから入手可能なSilquest(登録商標)A-1289)は、実際には2乃至10の硫黄原子を有するbis-(トリエトキシシリルプロピル)スルフィドの混合物である。換言すれば、これらTESPTの市販形態は、S3及びS4スルフィドが支配的であるスルフィド鎖長の分布を有する。
【0020】
シランは加水分解されていても未加水分解であってもよく、水性樹脂分散物と組みわせて使用可能である。典型的には、シランは樹脂分散物と混合された場合、並びに後述のようにオイルバスに直接加えられた場合には加水分解されない。しかしながら、シランは空気への暴露によって加水分解しがちである。
【0021】
本発明における使用のためには、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、アクリレート樹脂、及びポリウレタン樹脂を含む様々な水分散性樹脂が使用可能である。水分散性樹脂に加えて、油及び選択されたシランと適合性である純樹脂も使用可能である。ポリマー樹脂の水性分散物は、所定の体積パーセントの有機溶媒、例えばアルコール(例えばエタノール)、並びに樹脂を水中の溶液または分散物として維持するために使用される界面活性剤を更に含んでよい。一例では、分散物は約50体積%のn-ブトキシエタノールを含む。
【0022】
樹脂分散物としては市販品を購入してよく、例えば、Epi-rez 5522-WY-55(水及び2-プロポキシエタノール中、変性多官能性エポキシ樹脂の55%固体分散物、Resolution Performance LLCより入手可能)、またはEpi-rez WD510(水希釈性エポキシ樹脂)、またはECO CRYL 9790(45%の水、7%の2-プロポキシエタノール、3%のキシレン、及び3%のエタンアミン中に分散した42%の固体を有する水系アクリル)を含んでよい。
【0023】
シランはオイルバス中で金属に適用される。シランが樹脂なしに使用されるならば、シランはオイルバスに直接加えられる。シランの濃度は約5乃至10重量%、好ましくは約2重量%であるべきであり、6重量%が最も好ましい。油はバスの80重量%以上を占めるべきであり、少なくとも95重量%が好ましい。シランが樹脂の水性分散物と混合されるならば、樹脂分散物(活性成分50-55)のシランに対する重量比は約1:5乃至約5:1であり、1:1が好ましい。一般的に、樹脂の量を最小限にし、混合物中にシランが確実に分散されるために十分な量のみを用いることが望ましい。添加されるならばシランは樹脂分散物と混合され、バス中のシランを5乃至10重量%とするため、好ましくは6重量%とするために十分な分散物がオイルバスに添加される。
【0024】
油は不揮発性有機化合物潤滑油であるべきであり、いかなる鉱物、動物、または植物ベースの油であってもよい。油には合成潤滑剤、例えばポリグリコール、二塩基酸エステル、クロロフルオロカーボン、シリコーン油、ネオペンチルポリオールエステル、及びポリフェニルエーテルが含まれる。好ましくは、油は鉱物油、例えばパラフィン系もしくはナフテン系の潤滑油であって、適用温度で流動性であるような粘度を有するものである。タイヤコード製造方法において使用可能なあらゆる油が本発明において使用可能である。こうした油の一つは、100°Fで60SUSの粘度を有する高度水素化処理ナフテン系油(CAS 647-52-5)である。
【0025】
オイルバス中で金属をコーティングする前に、金属を酸性またはアルカリ性の洗浄剤で清浄化し、脱塩水ですすぐべきであるが、アルカリ性洗浄剤が好ましい。シラン油混合物はあらゆる定法、例えばスプレー、ブラシ、浸漬(emersion)コーティング、カーテン式コーティング等によって金属表面に適用可能である。
【0026】
金属がワイヤー、例えばタイヤコード等である場合には、これは図に示したような装置を用いてコーティングしてよい。図は、タイヤコード12をシランを含む油17でコーティングするために適合させたコーティング装置例10を示す。図示の通り、装置10はバリア11によって第一セクション13と第二セクション15とに分割されたトラフである。第一セクション13には第一及び第二の溝付きローラー14及び16が含まれる。コード12はローラー14及び16中で溝内を前後に運動し、よって第一セクション13内で油17中に繰り返し浸される。矢印26の方向に移動するコード12は、その後過剰な油及びコーティング物質を落とすエアワイプ18を通過する。この過剰分は、その後装置10の第二セクション15から、方向変更してライン20からローラー14に再度乗せられ、コーティングトラフ10の第一セクション13中に戻される。
【0027】
オイルバスの温度は、一般的にほぼ室温(50-120°F)であるが、油の沸点まで上昇させてよい。コードは1乃至10秒間、好ましくは1-2秒間に亘り油中にあるべきである。これは、油を通る経路並びにコード12の速度を制御することによって制御される。
【0028】
コーティングが済んだ後、コードは単にスプールに巻きつけ、その後タイヤ、コンベヤーベルト等を形成するために使用することができる。典型的なゴム形成は、その開示内容をここに参照のために取り込むこととする米国特許第6919469号に開示されている。
【0029】
シランコートされたコードと硫黄硬化ゴムとの間のゴム付着を試験するために、一連の試験を行った。これらの試験では、加水分解及び未加水分解シランを使用し、また、シランを、樹脂コーティング有り無しの場合に用いた。
【0030】
使用した物質:コード、アミノシランA1170、Sulfane A1289、Epi-rez 3510 W-60、Epi-rez WD 510、Lubesnap 60潤滑剤。
表面処理:1MのNaOH dip、空気乾燥、Dl rinse、空気乾燥、1MのNaOH dip、空気乾燥、Dl rinse、空気乾燥。
使用したゴム:試験化合物には、ナフテン酸コバルトを組み込んだ、黄銅に対する優れた付着性を有する典型的なタイヤゴム製剤、並びに試験目的用の化合物であって黄銅に対する付着性を有しない、すなわちナフテン酸コバルトを含まない化合物が含まれる。
加硫パラメーター:43 kg/m2にて1720Cで16分間。
分析法:張力をかけた状態での付着引き抜き試験。
【0031】
Epi-rez WD 510は100%の固体を90%超のビスフェノールAエポキシ樹脂及び10%未満のポリマー分散剤と共に含む。Epi-rez 3510 W-60は、ビスフェノールAの水性分散物であり、水中に61%の固体を含む。下記のマトリックスは、加水分解シラン混合物の物理的構成を説明する。
【0032】
表1:加水分解シランの説明
【表1】

【0033】
下記の試験を、油ベースの樹脂シラン混合物と水ベースの樹脂シラン混合物との性能の相違を研究するために行った。
以下に挙げた値は、100gの総重量ベースで測定される。ワイヤーを前述のように清浄化した。A1170とA1289との間で1:3の比を維持した。清浄化した後のワイヤーを前述のシラン混合物でコーティングし、ゴム中で硬化させ、張力をかけて付着について試験した。
【0034】
表2:シラン混合物の説明
【表2】

【0035】
それぞれの試料及び未被覆のコントロールについての引っ張り力は下記の通りである。
コントロール 12.5 kg
A 17.0 kg
B 21.0 kg
C 21.0 kg
D 17.0 kg
E 27.3 kg
F 22.0 kg
G 20.5 kg
【0036】
以下に挙げたマトリックスは、油ベースのWD 510樹脂シラン系に対する清浄化及び乾燥の効果を評価する。純シラン濃度は20重量%であり、A1170のA1289に対する比は1:3である。等量のA1170及びWD 510を添加した。タイヤコードを実験用ゴム中で硬化させ、張力をかけて付着について試験した。
【0037】
表3:
【表3】

油ベースのシラン樹脂混合物Bは、水ベースの樹脂シラン混合物Aよりも優れた成果を挙げた。これらの混合物はいずれも同等のゴム被覆を与えた。
【0038】
シラン混合物Dは、引っ張り力及びゴム被覆に関して油ベースの樹脂シラン系の中で最も性能に優れた混合物である。これは加水分解A1289及びA1170を含む。化学量論量の水を加えてA1289のみを加水分解した。アセトンを水と同量加えた。
【0039】
乾燥は、引っ張り力の値に関して混合物Bには正の効果を有し、混合物Cには効果をもたず、混合物Dには負の効果をもたらした。しかしながら、油ベースの樹脂シラン混合物については、乾燥の結果としてゴム被覆が劇的に低下した。
【0040】
油ベースのWD 510樹脂シラン系に関しては、清浄化及び無乾燥の組み合わせによって最良の付着性値が得られた。この系については、乾燥によって引っ張り力が18%減少し、ゴム被覆がほぼ50%増大した。
【0041】
この試験に基づけば、清浄化は引っ張り力値に正の影響を及ぼす。しかしながら、シラン濃度が高いほど引っ張り力値が低下するのみならず、清浄化は付着性値に対してわずかの影響をもたらすかもしくは全く影響しなかった。より低いシラン濃度が最良の付着性値をもたらした。試料#1については、清浄化により付着性値が190%向上した。
【0042】
清浄化されなかった試料は、0%のゴム被覆を有していた。しかしながら、清浄化された試料の中でもシラン混合物A#1が最大被覆をもたらした。ゴム被覆は高いシラン濃度では低下した。
【0043】
油ベースの樹脂シラン混合物の性能に対する清浄化の影響もまた試験した。以下に挙げた値は、100gの総重量ベースで測定される。A1170とA1289との間の1:3の比を維持した。混合物I、III、及びVは同量の樹脂とA1170とを有する。混合物II、IV、及びVIは同量の樹脂と全シラン濃度を有する。ワイヤーを前述の通り清浄化し、その後下記のシラン混合物でコーティングした。未清浄化ワイヤーもまたこれらのシラン混合物でコーティングした。これらのワイヤーをその後ゴム化合物中で硬化させ、張力をかけて付着性について試験した。
【0044】
表4:様々な油ベースのWD 510樹脂シラン混合物の構成
【表4】

油ベースの純樹脂混合物と加水分解シラン樹脂混合物との間の性能の相違を評価するために、表5及び表6の製剤を試験した。
【0045】
表5:油ベースの純シラン−樹脂系
【表5】

【0046】
表6:油ベースの加水分解シラン−樹脂系
【表6】

【0047】
清浄化されたワイヤーを前述のシラン混合物でコーティングし、ゴム化合物中で硬化させ、その後張力をかけて付着性について試験した。
加水分解混合物6及び8はそれぞれの成分を混合した際にゲル化した。これらは、それ自体は試験しなかった。
【0048】
純シランは、加水分解シランが引っ張り力について純シランよりも50%優れた性能を示した混合物#4を除いて、加水分解シランよりも優れた性能を示した。シラン混合物#1が16の異なる溶液中で最も優れた性能を示した。加水分解溶液の中では、混合物#3が最良の性能を示した。
【0049】
引っ張り力値に対する純シラン及び加水分解シランの比率及び濃度を変化させる影響を決定するために、表7及び8に示した製剤を試験した。
【0050】
表7:油ベースの純シラン−樹脂系
【表7】

【0051】
表8:油ベースの加水分解シラン−樹脂系
【表8】

【0052】
コントロール、加水分解混合物#6及び加水分解混合物#8はゴム被覆がゼロであった。最高のゴム被覆は純シラン及び加水分解シラン混合物#1の両方によってもたらされる。別の場合には、加水分解混合物が純溶液よりも125%多い被覆をもたらす混合物#7の場合以外は、純シラン混合物がより多くのゴム被覆をもたらす。
【0053】
乾燥温度に対するライン速度の分析により、最大の引っ張り力は約4m/分で140℃の乾燥温度にて達成された。
【0054】
したがって、示した通り、本発明は油を使用する金属表面上への多種多様なシラン製剤の適用を可能にする。適用されたシランは、その後付着を改善する機能を果たし且つシランコーティングに付随する典型的な特質、例えば耐食性を提供する。オイルバスを用いてシランコーティングを施すことは、シランの適用により大きな柔軟性を与え、これを多くの異なる処理に合わせて導入することを可能にする。多種多様な処理が油コーティングを必要とし、したがってシランの適用は更なる装置なしに達成可能である。これは特にコーティングされる金属がタイヤコードである場合である。こうした適用では、適用されたシランコーティングが、硫黄硬化ゴムのタイヤコードへの付着を著しく改善すると同時にコバルト化合物を含まず、且つ硫黄のレベルの低いゴム製剤の使用を可能にし、これによってゴム自体の総体的な物理特性を改善する。
【0055】
これが、本発明を実践する好ましい方法を伴う本発明の説明である。しかしながら、本発明自体は添付の請求項によってのみ定義されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、タイヤコードをコーティングするために使用される装置の、部分的に切り欠きされた図示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板上にシランコーティングを適用する方法であって、前記金属基板と油混合物とを接触させる工程を含み、前記油混合物が少なくとも80重量%の油と1乃至10重量%の有機官能性シランとのブレンドを含む方法。
【請求項2】
前記金属基板がワイヤーであり、前記ワイヤーが前記バスから引抜される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機官能性シランが樹脂中に分散している、請求項に記載2の方法。
【請求項4】
前記シランがアミノシランを含む、請求項に記載1の方法。
【請求項5】
前記有機官能性シランが前記オイルバスの少なくとも約2重量%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有機官能性シランがアミノシランとポリサルファシランとの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機官能性シラン混合物が1:3乃至3:1のアミノシラン:ポリサルファシラン重量比を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ワイヤーが少なくとも約1秒間の期間に亘って前記バス中に維持される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記有機官能性シランが未加水分解である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有機官能性シランが加水分解され、且つ前記溶液が更に水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記油がナフテン系潤滑油である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記油がパラフィン系潤滑油である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記金属基板が、前記シランの適用前にアルカリ洗浄剤で清浄化される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも80重量%の油及び2乃至10重量%の有機官能性シランを含む、コーティング組成物。
【請求項15】
油がその少なくとも約90%を占める、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記有機官能性シランがアミノシランとポリサルファシランとの混合物を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記有機官能性シランが未加水分解である、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が前記油中に分散性である樹脂を更に含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記樹脂がエポキシを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記油がナフテン系油である、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1の方法によってコーティングされたタイヤコード。
【請求項22】
有機官能性シランで金属をコーティングする方法であって、前記金属に油と有機官能性シランとの混合物を適用する工程を含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−507628(P2009−507628A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530166(P2008−530166)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/034705
【国際公開番号】WO2007/030532
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(508071205)ザ・ユニヴァーシティー・オブ・シンシナティ (2)
【出願人】(506119039)エアロメット・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】