説明

金属蒸気セラミックショートランプ

【課題】本発明の課題は、毛管または毛管シール部のないセラミック放電ランプを提供し、このランプの動作温度をより高くし、純金属充填物に耐える高温のシール部を可能にすることである。
【解決手段】短い金属シールプラグを有する高輝度アーク放電ランプであって、このシールプラグは、一般的な毛管シールよりも高温で動作し、金属充填物を備えるランプを、毛管シールにおいて一般的なコールドスポット温度によって規定される蒸気圧よりも高い蒸気圧にすることができる。例えばハロゲンなどの腐食性の充填物質は除外される。このランプを始動するために亜鉛を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
発明の技術分野
本発明は、電気ランプおよび、とりわけ高輝度アーク放電電気ランプに関する。とりわけ本発明は、純金属充填物を備えるセラミック高輝度アーク放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
37 CFR 1.97 および 1.98 に基づいて開示された情報を含む関連分野の説明
セラミック高輝度アーク放電ランプは、強白色発光の良好な光源であり、プロジェクタおよび他のビーム形成装置には便利である。通常これらにはセラミックの本体が設けられている。この本体は円筒形または胴の膨らんだ形とすることができ、2つの毛管を有することができる。この毛管は軸に沿って長く延長しており、シール導入線を支えている。毛管の長さは、典型的には直径比で10以上である。この長い毛管は、本体に近い高温の内側端部と、毛管先端部に近い低温の外側端部との間に大きな温度勾配を有する。金属の電極、すなわち一般的にタングステンの電極先端部である延長したロッドアセンブリと、モリブデンまたはサーメットとすることができる延長部分と、通常ニオブであるシール部分は、このニオブのシール部材に沿って、毛管の低温端部の方へとフリットシールされている。毛管は細長いため、必然的に軸方向に長いランプが形成されるが、この長いランプは小型プロジェクタなどといった容積の小さい装置に配置するのが困難である。したがって、毛管または毛管シール部のないセラミック放電ランプが必要とされる。
【0003】
動作中は、HIDランプのシール温度は、最も弱い部材の融解温度より下に維持しなければならない。一般的に、この最も弱い部材はフリットシール部である。このフリットシール部のフリットは、この長い毛管に隣接するセラミック本体から離して配置することによって、低温に維持される。フリットの最高動作温度が、しばしばランプのコールドスポット温度を規定する。これにより動作中にランプ内で蒸発することができる物質が制限される。したがって、動作温度がより高いランプが必要である。
【0004】
毛管に沿った熱の流れは、断面積の小さい部材を使用し、対流冷却または別の方法によって細長い毛管を介して熱を失うことにより熱が発散されることによって、熱的に阻止される。フリットを保護するために延長した毛管を介して電極が冷却されることについては、いくつかの問題がある。第1に、この毛管によってランプのサイズが大きくなるため、このランプを小型装置の中に配置することができないことである。第2の問題は、電極が冷却されるときの熱損失が、他ならぬ発光からのエネルギー損失であることである。この熱損失により、点火から完全状態への立ち上がり時間も長くなる。したがって、高温のシール部を備えるランプが必要である。
【0005】
毛管内で電極アセンブリを取り囲んでいる残空間は、充填物質の蓄積場所として機能する。この蓄積場所は、放電用の充填物質を不均等に保持または供給することがあるか、または反応帯を提供することがある。この反応帯は、放電、電極アセンブリ、または管球容器の壁と相互作用して、望ましくない化合物を発生させる。管理されずにこの残空間に出入りする塩は、時間につれて変化するカラーシフトの原因となることがある。放電ランプのシール領域にある残空間を減らす、または取り除くことによって、このような影響を制限することが必要である。
【0006】
純金属は一般的に、高輝度放電ランプで通常使用されるヨウ化塩よりも反応性があり、このため通常であれば、フリットシール物質と問題を引き起こすことだろう。本発明の目的は、純金属充填物に耐えるシール部を可能にすることである。
【発明の開示】
【0007】
本発明の要約
高輝度アーク放電ランプには、実質的にセラミック物質から形成された管球容器が設けられている。この管球容器は、内部表面を以て密閉容積を規定する壁を有している。この壁には少なくとも1つの通路が形成されており、この通路は、この密閉容積の内側表面から、壁の外側に向かって延長している。このランプは、少なくとも1つの伝導性電極アセンブリを有する。この伝導性電極アセンブリは、密閉容積の中に向かって延長しており、この密閉容積の外側と、シールプラグを介して電気的に接続されている。このシールプラグは金属のシール部を有しており、このシール部は、フリットを使用することなく通路を塞ぐために、通路内で密閉シールされている。このシールプラグは通常動作において、少なくとも800℃を超える動作温度を有する。化学的充填物は、密閉容積の中に配置されており、800℃から1000℃で蒸発する1つ以上の純金属を含んでいる。この化学的充填物は、通常のランプ動作温度において金属のシール部と化学的に反応するいかなる非金属成分も含まない。20℃で5kPaより大きい充填圧力を有する不活性充填ガスが使用される。
【実施例】
【0008】
発明の詳細な説明
図1は、高輝度放電ランプ10の概略断面図である。ランプ10は、セラミック管球容器12と、この管球容器12に封入された1つまたは複数の電極アセンブリ32,33と、化学的充填物16と、不活性充填ガスとを含む。
【0009】
図2は、管球容器12の概略断面図を示す。このセラミック管球容器12は、種々異なるセラミックから形成されている。本発明の目的のために、ガラス、ハードガラス、および水晶はセラミックとは見なされず、その一方で、多結晶アルミナ、多結晶ジスプロシウム、イットリア、アルミニウム酸窒化物、アルミニウム窒化物、および類似の固体金属酸化物、および金属窒化物(およびこれらの混合物)は、セラミックと見なされる。有利なセラミックは、多結晶アルミナ(PCA)である。セラミック管球容器12は、このセラミック管球容器が有する熱膨張率が、シール部36,37の熱膨張率と適合するように選択される。有利な管球容器12は、内部表面22を以て球状形の密閉容積20を規定するように形成された壁18を有する。有利な内部表面22は角がなく、球状形となる。扁長球、扁円球、楕円体、または同様に内側に丸くなった表面も使用できる。角および割れ目を生じさせるコールドスポットを防ぐため、円筒形の管球容器の場合よりも、角のない面22の方が有利である。壁18は、平均厚さ24を有する。有利な壁厚さ24は、0.1mm以上、2.0mm以下であり、有利な厚さは約0.9mmである。本出願人は、この壁を0.4mmの厚さで製作したことがあり、より薄い壁を製作することもできるのだが、壁が薄い場合にはランプの寿命はより短くなる。この壁を2.0mmより厚く製作することもできるが、透過率は減少し、より厚い壁での熱量増加が問題となる。有利な密閉容積20は、内径26が1.0mmより大きく、42.0mm以下であり、有利には7.9mmである。
【0010】
壁18は、第1通路28と、類似の第2通路38とを規定する。第1通路28および第2通路38は、ランプから密閉容積20の外側へ延長している。第1通路28は内径30を有しており、この内径30は、この第1通路がシールプラグ32と圧縮嵌め合いを形成するように寸法設定されている。このため干渉シールを、シールプラグ32と管球容器セラミック(PCA)との間の通路28に沿って形成することができる。有利な通路28および38にはそれぞれ、肩部41および49が形成されており、シールプラグ32,33がそれぞれ軸に沿って挿入される。第1通路28の低温内径30は、シール部36の相応する低温外径42よりも、3から9%小さい(図3)。このことは、最後の焼結工程間に起こる焼きしまりのあいだに達成される(1850℃)。完全に焼結されたPCA部材からなる有利な通路28は、シール部36の対応する外径42よりも7%小さい内径を有する。第2通路38も同様に形成し、シールすることができる。円筒形の通路28の長さ40は、標準壁厚さ24の0.8倍以上であり、標準壁厚さ24の2倍以下である。有利には標準壁厚さの1.11倍である。第2通路38の軸方向の長さ43も同様に短い。この比較的短い通路28,38は、毛管形状を有しておらず、また毛管シールにおいて典型的である冷却勾配も提供しない。それどころか、通路28,38の軸方向の長さ40,43は最小限である。ランプ動作中、通路28,38は、長さ40、43が比較的短く、金属シールプラグ32,33と直接熱接触しているから、近似的に同じ温度である。
【0011】
図3は、シールプラグ32の概略断面図を示す。通路28はシールプラグ32によってシールされており、このシールプラグは、電極34とシール部36を有する。有利なシール部36は、直径42および高さ44を備える円筒体である。ある有利な実施形態では、直径42および高さ42は近似的に同じであった。内側には、電極シャフト34を収容するために軸に沿って配向されたブラインドホールが形成されている。この電極シャフト34は、高輝度放電ランプには一般的なものであり、ワイヤーラップまたはその他いかなる既知の先端部構造をも備えるタングステンシャフトとすることができる。この電極シャフトは軸に沿って延長しており、密閉容積20内にさらされている。電極シャフト34は、ブラインドホールに挿入されると、シール部36と溶接されるか、または同様に接合される。シール部36の外側に同様の導入線35を挿入すると便利であり、これによりランプとの電気的または機械的な結合が可能となる。
【0012】
図4は、第2シール部37と第2電極シャフト39とを備える第2シール電極アセンブリ33を示す。第2シール部37は、直径43および高さ45を備える円筒体とすることができる。ある有利な実施形態では、直径43および高さ45は近似的に同じであった。密閉容積20を充填するために、第2シール部37には貫通通路が形成されている。化学的充填物および充填ガスが密閉容積20の中に入れられた後、第2シール部37は、第2電極39を挿入することによって閉鎖され、そして第2シール部37と第2電極は溶接される、または同様に接合される。ここでもまた、有利な電極シャフト39は、高輝度放電ランプには一般的なものであり、ワイヤーラップまたはその他いかなる既知の先端部構造をも備えるタングステンシャフトとすることができる。電極39は、溶接中に位置が変わらないようにその場に固定することができる。この溶接は、あらゆる周知の手段、すなわちピンチング手段、シャフトを削って若干変形させ摩擦面干渉を形成する手段、または電極軸に対して垂直に停止ワイヤーを溶接する手段などによる。内側の複数の軸部分は、有利には同様の大きさおよび形であり、同様のワイヤーラップ端部を有する。有利な第2電極39は、内側の軸を含む2つの部材からなる軸として形成されている。この内側の軸は、シール部の内側面から開始しており、ワイヤーラップ端部を支えている。内側の軸およびワイヤーラップ端部は、シール部通路を通るために充分に小さい一体的な外径を有しているから、この内側の軸およびワイヤーラップ端部を、このシール部通路を通して密閉容積の内部に出るように挿入することができる。
【0013】
有利なシール部36,37は、管球容器の通路28,38にそれぞれ適合した外径42、43を備えるプラグであり、有利には全て円筒体である。シール部の直径42、43は、管球容器通路28の、完全に焼結された内径30,31(低温)の方が若干小さくなるように選択されている。例えばシール部36,37の外径42,43のそれぞれ0.91倍から0.97倍であり、有利にはシール部外径42,43の0.94倍である。有利なシール部36,37は、このシール部36,37の内側面から外側面まで、以下のような軸寸法44,45を有している。すなわちこの軸寸法は、平均壁厚さ24と等倍から、平均壁厚さ24の約4倍であり、有利には、平均壁厚さ24の2倍より大きくはない。薄いシール部36,37は、それぞれヒートシンクとして機能するのではなく、より適切には、温度を維持するため、または周囲の管球容器の壁18の平均動作温度以上に維持するためのものである。シールプラグ32,33は、フリットがないから毛管シールではなく、周囲の管球容器と近似的に等温となるように軸方向に薄くなっている。
【0014】
シール部36,37は2つ以上の金属粉を混合して形成することができ、続いて加圧、焼結、熱間等方加圧、または別の方法によって焼きしめられる。例えば、一方の金属粉は、選択したセラミックよりも高い膨張率を有することができ、もう一方の金属粉は、このセラミックよりも低い膨張率を有することができる。有利なセラミックであるアルミナに関しては、モリブデン、タングステン、およびこれらの合金を含むグループから第1金属粉を選択し、クロム、チタン、バナジウム、およびこれらの合金を含むグループから第2金属粉を選択することができる。次にこの2つの金属粉は混合され、選択したセラミック管球容器物質のセラミック熱膨張率に近似した混合熱膨張率が得られる。とりわけ、セラミック熱膨張率と±4%より大きくは異ならない熱膨張率が得られるように、金属粉が混合される。
【0015】
化学的充填物16は、密閉容積20に配置されており、電力を適用して光を放射するために励起することができる。有利な化学的充填物は1つ以上の純金属を含み、この純金属は、シールプラグ32,33が耐えることができる動作温度において充分な蒸気圧を有する。シールプラグ32,33は相対的に高温であるから、典型的なフリット融解温度以上、セラミック管球容器物質の焼結温度以下で充分に蒸発する純金属を含む充填物を使用することが可能となる。有利な化学的充填物16は、以下のものを含むグループ、すなわちバリウム、カルシウム、インジウム、リチウム、水銀、カリウム、ナトリウム、タリウムおよび亜鉛を含むグループから選択される純金属単体または純金属の化合物を含む。他の純金属を特別な光源を製造するために用いることができる。例えば周期表からの他の金属は、IA、IIA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIBを含む族から、動作温度においてシールプラグと反応しない限り、使用することができる。例えば、マグネシウムは使用できるが、金属硫化物を形成することが予期される硫黄は使用されない。電圧を発生する添加物として水銀を用いると便利であるが、しかし水銀は、いくつかの使用法に対しては許容されないことがある。本発明の高温シール構造において特に有利には、ランプの電圧発生を助けるために、水銀の代わりに純粋な亜鉛を使用することができる。バリウム、カルシウム、セシウム、インジウム、リチウム、カリウム、ナトリウム、およびタリウムのうちの1つ以上と、亜鉛との充填化合物が有利である。化学的充填物16は、ハロゲンと、ハロゲン化合物と、約1200℃という通常のランプ動作温度において金属のシール部36の成分と化学反応しうる別の化合物とを除いて選択される。充填物16からハロゲンおよび別の反応性化合物を除く一方で、純金属を使用することによって、従来技術のようにPCAが化学的充填物に溶解することが阻止される。結果として、管球容器12の内部の腐食は減少する。
【0016】
密閉容積20は不活性充填ガスも含む。有利な充填ガスは、アルゴン、クリプトン、またはキセノン、またはこれらの混合気である。20℃でのこの充填ガス圧力は、10Paから2MPa(20気圧)の範囲とすることができる。有利な充填ガス圧力は、20℃で約60kPaである。有利な充填ガスはキセノンであり、キセノンは、10kPa(0.1気気圧)よりも大きい低温充填圧力を有する。
【0017】
ある実施形態では、セラミック管球容器はPCAからできており、1000℃で熱膨張率8.3x10-6/℃を有していた。シールプラグは、71.0重量パーセントのモリブデンである第1成分からできていた。第2成分は、29.0重量パーセントのバナジウムからできていた。モリブデン粉(71.0%)をバナジウム(29.0%)と混合した。次にこの2つの成分の混合物を、密閉気孔率95%より高い密度になるまで加圧および焼結し、直径2.0mmの円筒形プラグの形状に機械加工し、軸方向の長さを20.0mmとした。するとこのプラグは、1000℃で近似的に熱膨張率8.3x10-6/℃を有し、これはPCAの熱膨張率と近似的に同じであった。直径0.68mmおよび長さ2.2mmのタングステンシャフトは、このシールプラグの端部の上に溶接された。胴の膨らんだセラミック管球容器(ほぼ角のない丸い内部表面を有する回転楕円面)は、1000℃のときの熱膨張率が8.3x10-6/℃であるPCAからできており、適当な直径が2mmであるモリブデンバナジウムプラグに対して、シールするための焼結直径を備える円筒形通路を備えている。このプラグはこの円筒形通路に挿入され、それからこの2つの部材は互いに焼結される。第2通路も同様に形成されており、同様のプラグと電極によってシールされた。有利なシール工程は、第1シールプラグ(32)と第2シール部(37)を、それぞれ管球容器の通路でシールすることである。その後充填物16が、第2シール部(37)の中の開放通路を通って投入される。このアセンブリは、レーザー窓を有する圧力容器内に配置され、選択された不活性充填ガス(アルゴン、キセノン等)によって所期の低温充填圧力まで加圧される。電極シャフト(39)は第2シール部(37)に挿入される。レーザービームが窓を通して現れ、第2シール部(37)と第2電極シャフト(39)とを溶接し、密閉容積をシールする。有利な充填物は、低温圧力約50kPaにおいては、キセノン充填ガスとともに、ナトリウム、タリウム、インジウム、および水銀である。ある実施形態では、充填物は、およそ6.64モルパーセントのインジウムと、49.64モルパーセントのナトリウムと、38.06モルパーセントの水銀と、5.65モルパーセントのタリウムの化合物を含んだ。このランプは、外部赤道直径が9.7mmであり、外部軸長さは12.6mmであった。電極端部の長さは、この管球容器の本体から、軸方向に2.0mm(プラグの内部面から電極先端部まで)であり、直径0.25mmである。このランプは、1000℃以上の温度で動作した。
【0018】
図5から図8は、択一的な高輝度アーク放電ランプの断面図を示す。図5は、軸方向に配向されたシールプラグ50,52を備える、択一的な高輝度アーク放電ランプの断面図を示す。このシールプラグは、円筒形通路のそれぞれの端部に、階段突縁部54,56を有している。このT字形もしくは「シルクハット形」に形成されたプラグは、ランプ管球容器のボディにプラグを組み立て、配置するのに便利である。図6は、図5と同様の構成を備える択一的高輝度アーク放電ランプの断面図を示し、ここでは電極シャフト62がシールプラグ64を通って延長している。このシールプラグ64は、階段突縁部66から電極シャフト62に沿って傾斜がつけられており、シール接合部を延長している。図6の円錐形状部分により、図1および図5のような隅肉溶接とは異なり、テーパー溶接にとって、先の細くなった領域を溶接することが容易になる。図7は、シールプラグ70,72を備える択一的高輝度放電ランプの断面図を示す。このシールプラグ70,72は管球容器の主軸からずれており、電極シャフト74、76は、この電極シャフトの先端部は管球容器のほぼ主軸上にあるにもかかわらず、管球容器の主軸に対して傾いている。図7は、2つの通路が正反対に向かい合う必要がないことを示している。それどころか複数の電極は、対極位置だけではなく、管球容器内で同じ緯度に配置することができる。図8は、シールプラグ80,82を備える択一的高輝度アーク放電ランプの断面図を示す。ここでは、このシールプラグ80,82の軸方向の厚さ84は、管球容器の厚さ86よりも薄い。第1電極部分87,89を、ブラインドホールによって支えるかわりに、シールプラグ80のそれぞれの面に直接溶接することができる。図8は、プラグ80の厚さが直径よりも小さい実施形態を示しており、プラグ80は「コイン」のようなアスペクト比を有している。これは、モリブデンバナジウム物質のような混合金属物質をさほど使用しないので、経済的に魅力的である。
【0019】
重要なことは、通常動作中のランプのシール温度を上げて、有利な充填物質の蒸発を可能にすること、およびシール領域内またはシール領域の周囲での、充填物の凝縮または充填物の隔離を防ぐことである。シール温度を上げるために、通路28,38とシール部36,37との間のシールはそれぞれ、フリットを用いては形成されない。フリットは、多数の混合物を備えた周知のガラス物質であり、セラミック管球容器と金属の電極との間の界面を溶接シールするために使用される。フリットは、典型的には約1600℃である融点を有する。この融点は、セラミック管球容器の焼結温度よりも低く、金属の電極の軟化点よりも低い。さらにフリットは、比較的低い温度で、例えば780℃以下で、ランプの充填物質に化学反応する可能性がある。このような反応を減らし、この機械的なシール機構を維持するために、フリットは通常、フリットの融点以下の温度に保たれている。このことは、毛管シールでは、フリットを毛管の外側(低温)の端部に配置することによって達成される。毛管タイプのランプでは、毛管または近接領域がコールドスポットになるか、もしくはコールドスポットを含む。このコールドスポットの温度は、ランプの凝縮作用を決定する重要な決定要因である。毛管シールで使用されるフリット物質は、約780℃しか耐えることができないため、この温度によって、この毛管方式のランプの管球容器において蒸発可能なものが規定される。本発明の構造では、シール部はフリットを有していないため、より高い動作温度に耐えることができる。シールプラグ32,33の領域は、残りのランプ本体より高温にはならないとしても、近似的に同じ温度となり、コールドスポット温度は1000℃以上に押し上げられる。このことは、従来の毛管ランプとは異なっている。なぜなら従来の毛管ランプでは、ホットスポットが一般的にランプ本体に沿っており、毛管領域は、たとえコールドスポットではないとしても、比較的低温となるからである。
【0020】
本発明の構造の新しく便利な特徴は、シール領域(管球容器の壁18とシールプラグ32との接合部の領域)をより高い温度で動作できること、および、化学的充填物を、高温の密閉容積帯に押しやることができることである。この高温のシールプラグによって、充填物は、フリットの一般的な限界温度より高い温度で蒸発する物質を含むことが可能となる。例えば、純金属は、今やより高い温度で蒸発することができ、この純金属自身のそれぞれの光放射を、アークスペクトルに与えることができる。動作中は、シールプラグを取り囲む円筒形領域は、一般的には50℃から100℃だけ、ランプ管球容器の赤道領域よりも高温で動作する。40Wで動作する場合、図1で示すように構成されたランプは、円筒形のシール領域が、1039℃の温度で、このシール領域にわたって5℃の差もなく動作することを示した。その一方で、管球容器の赤道領域は973℃の温度で動作した。ボディに沿った温度勾配は、管球容器とプラグとの間にある内部接合部から管球容器の赤道まで測定すると、距離5.8mm間で約66℃、または1mmにつき約11℃であった。管球容器の壁とランプ内側のシールプラグとの間の溶接接合部の測定温度は、より高いことが予期される。
【0021】
本発明の構造では、フリットはシール部から取り除かれており、より高い温度の充填物質、およびより腐食性の強い純金属の充填物質を使用することができる。より高い温度で動作すると、より効率的な発光を達成することができる。目下のところ本発明の有利な実施形態であると考えられているものを図示、説明したが、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲を逸脱することなく種々異なる変更及び改良が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、高輝度放電ランプの概略断面図を示す。
【図2】図2は、高輝度放電ランプの管球容器の概略断面図を示す。
【図3】図3は、第1シールプラグの概略断面図を示す。
【図4】図4は、第2シールプラグの概略断面図を示す。
【図5】図5は、別の高輝度放電ランプの概略断面図を示す。
【図6】図6は、別の高輝度放電ランプの概略断面図を示す。
【図7】図7は、別の高輝度放電ランプの概略断面図を示す。
【図8】図8は、別の高輝度放電ランプの概略断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高輝度アーク放電ランプにおいて、管球容器と、少なくとも1つの伝導性電極と、化学的充填物と、不活性充填ガスとを備えており、
前記管球容器は、実質的にセラミック物質から形成されており、内部表面を以て密閉容積を規定する壁を有しており、
該壁には少なくとも1つの通路が形成されており、
該通路は、密閉容積の内側表面から前記壁の外側に向かって延長しており、
前記伝導性電極は、前記密閉容積の中に向かって延長しており、該密閉容積の外側と、シールプラグを介して電気的に接続されており、
該シールプラグは金属のシール部を有しており、
該シール部は、フリットを使用することなく前記通路を塞ぐために、前記通路内で溶接シールされており、
前記シールプラグは通常動作において、少なくとも800℃を超える動作温度を有しており、
前記化学的充填物は、前記密閉容積の中に配置されており、800℃から1000℃でのアーク放電作用に耐えるのに適した蒸気圧を有する1つ以上の純金属を含んでおり、
前記化学的充填物は、通常のランプ動作における温度で金属のシール部と化学的に反応するいかなる非金属成分も含まず、
前記不活性充填ガスは、20℃で5kPaより大きい充填圧力を有する、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項2】
請求項1記載の高輝度アーク放電ランプにおいて、
前記金属のシール部の軸方向の長さは、平均壁厚さの4倍である、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項3】
請求項1記載の高輝度アーク放電ランプにおいて、
前記シール部は、ランプの通常動作中、ランプの前記管球容器の平均動作温度を超える動作温度を有する、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項4】
請求項1記載の高輝度アーク放電ランプにおいて、
前記金属のシール部の熱膨張率は、前記管球容器の熱膨張率の±4%以内である、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項5】
請求項1記載の高輝度アーク放電ランプにおいて、
前記管球容器は、角のない内部表面を有する、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項6】
請求項1記載の高輝度アーク放電ランプにおいて、
前記化学的充填物は、IA、IIA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIBを含む周期表の元素属から選択される純金属を含む、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項7】
高輝度アーク放電ランプにおいて、管球容器と、少なくとも1つの伝導性電極と、化学的充填物と、不活性充填ガスとを備えており、
前記管球容器は、実質的にセラミック物質から形成されており、密閉容積を規定する内部表面を有する壁を有しており、
前記内部表面は角がなく、
前記壁は、平均壁厚さを規定し、
前記壁には少なくとも1つの通路が形成されており、
該通路は、前記密閉容積の内側表面から前記壁の外側に向かって延長しており、
前記通路の軸方向の長さは、前記平均壁厚さの2倍より短く、
前記伝導性電極は、前記密閉容積の中に向かって延びており、該密閉容積の外側と、シールプラグを介して電気的に接続されており、
該シールプラグは金属のシール部を有しており、
該シール部は、フリットを使用することなく前記通路を塞ぐために、前記通路内で溶接シールされており、
前記シールプラグは通常動作において、少なくとも800℃を超える動作温度を有しており、
前記化学的充填物は、前記密閉容積の中に配置されており、
前記化学的充填物は、通常のランプ動作における温度で金属のシール部と化学的に反応するいかなる非金属成分も含まず、
前記化学的充填物は、アルミニウム、アンチモニン、砒素、バリウム、セシウム、インジウム、リチウム、マグネシウム、水銀、カリウム、ナトリウム、ストロンチウム、テルル、タリウム、亜鉛を含むグループから選択される純金属を含み、
前記不活性充填ガスは、20℃で5kPaより大きい充填圧力を有する、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項8】
請求項7記載の高輝度アーク放電ランプにおいて、
前記化学的充填物は、バリウム、セシウム、インジウム、リチウム、水銀、カリウム、ナトリウム、タリウム、亜鉛を含むグループから選択される純金属を少なくとも1つ含む、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項9】
請求項1記載の高輝度アーク放電ランプにおいて、
前記化学的充填物は亜鉛と、バリウム、セシウム、インジウム、リチウム、水銀、カリウム、ナトリウム、タリウム、を含むグループから選択される純金属の少なくとも1つとを含む、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項10】
請求項7記載の高輝度アーク放電ランプにおいて、
前記金属のシール部の熱膨張率は、前記管球容器の熱膨張率の±4%以内であるように適合されている、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項11】
請求項1記載の高輝度アーク放電ランプにおいて、
前記シール部は、第1金属と第2金属の混合物であり、ランプ動作時において、
第1金属の熱膨張率は、前記管球容器セラミックの熱膨張率より低く、
第2金属の熱膨張率は、前記管球容器セラミックの熱膨張率より高い、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項12】
請求項1記載の高輝度アーク放電ランプにおいて、
前記化学的充填物は、いかなるハロゲンまたはハロゲン化合物も含まない、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項13】
請求項1記載の高輝度アーク放電ランプにおいて、
前記化学的充填物は、約6.64モルパーセントのインジウムと、約49.64モルパーセントのナトリウムと、約38.06モルパーセントの水銀と、約5.65モルパーセントのタリウムとの混合気を含む、
ことを特徴とする高輝度アーク放電ランプ。
【請求項14】
高輝度高圧放電ランプの動作方法において
a)フリットのない電極シールを備える高圧セラミック放電ランプの管球容器を準備し、
ただし前記電極シールは、セラミック管球容器と結合した金属のシール部を有しており、
b)前記ランプを、前記金属のシール部が管球容器の平均温度を超える温度を有するように動作させる、
ことを特徴とする高輝度高圧放電ランプの動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−54588(P2009−54588A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−217610(P2008−217610)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(596104131)オスラム シルヴェニア インコーポレイテッド (72)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM SYLVANIA Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Endicott Street, Danvers, Massachusetts 01923, USA
【Fターム(参考)】