説明

金属製品の製造方法、金属製品、金属部品の接続方法、及び接続構造体

製品本体を成型し、成型によって前記製品本体の被処理面に生じた欠陥を含む欠陥周辺を除去して、前記製品本体の前記被処理面に凹部を形成し、金属の粉末から成形した成形体、或いは加熱処理した前記成形体により構成される成形電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記凹部を含む凹部周辺と前記成形電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記成形電極の材料等に堆積等させて、徐々に、前記凹部周辺に肉盛を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製品の製造方法、金属製品、金属部品の接続方法、及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダ等の金属製品を製造する一連の工程、及び開先部をそれぞれ有した一対の金属部品を接合する一連の工程には、肉盛を形成する工程がそれぞれ含まれる。
【0003】
即ち、前記金属製品を製造する場合には、まず、製品本体を例えば鋳造により成型する。ここで、成型によって前記製品本体の被処理面には鋳物巣等の欠陥が生じている。次に、前記欠陥を含む欠陥周辺部を研削加工により除去して、前記製品本体の前記被処理面に凹部を形成する。そして、前記凹部を含む凹部周辺に肉盛を溶接により形成する。
【0004】
また、前記一対の金属部品を接合する場合には、まず、前記一対の金属部品を突き合わせることによって、一方の金属部品の開先部と他方の金属部品の開先部により凹部を区画する。そして、前記凹部を含む凹部周辺に肉盛を溶接により形成する。
【発明の開示】
【0005】
ところで、前記肉盛を溶接により形成するため、換言すれば、高温状態の前記肉盛が前記凹部周辺に瞬間的に又は短い時間で形成するため、前記金属製品の製造又は前記一対の金属部品の接合の際に、前記凹部周辺の温度が急激に上昇する。そのため、前記凹部周辺に熱変形が大きくなって、前記金属製品の製造不良を招いたり、前記一対の金属部品の接合不良を招いたりするという問題がある。
【0006】
前述の問題を解決するために、本発明の第1の特徴は、金属製品を製造するための方法であって、製品本体を成型する成型工程と;前記成型工程が終了した後に、成型によって前記製品本体の被処理面に生じた欠陥を含む欠陥周辺を除去して、前記製品本体の前記被処理面に凹部を形成する欠陥除去工程と;前記欠陥除去工程が終了した後に、金属の粉末から成形した成形体、或いは加熱処理した前記成形体により構成される成形電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記凹部を含む凹部周辺と前記成形電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記成形電極の材料或いは該材料の反応物質を前記凹部周辺に堆積、拡散、及び/又は溶着させて、徐々に、前記凹部周辺に肉盛を形成する肉盛工程と;を具備したことである。
【0007】
本発明の第2の特徴は、一対の金属部品を接合する方法であって、前記一対の金属部品を突き合わせることによって、一方の金属部品の開先部と他方の金属部品の開先部により凹部を区画する突き合わせ工程と;前記突き合わせ工程が終了した後に、金属の粉末から成形した成形体、或いは加熱処理した前記成形体により構成される成形電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記凹部を含む凹部周辺と前記成形電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記成形電極の材料或いは該材料の反応物質を前記凹部周辺に堆積、拡散、及び/又は溶着させて、徐々に、前記凹部周辺に肉盛を形成する肉盛工程と;を具備したことである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
[図1]第1の実施形態に係わる放電加工機を示す図である。
[図2]第1の実施形態に係わるシリンダの部分断面図である。
[図3]第1の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図4]第1の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図5]第1の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図6]第1の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図7]第1の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図8]第2の実施形態に係わるシリンダの部分断面図である。
[図9]第2の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図10]第2の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図11]第2の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図12]第2の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図13]第2の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図14]第3の実施形態に係わるシリンダの部分断面図である。
[図15]第3の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図16]第3の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図17]第3の実施形態に係わる金属製品の製造方法を説明する図である。
[図18]第4の実施形態に係わる接続構造体を示す図である。
[図19]第4の実施形態に係わる金属部品の接合方法を説明する図である。
[図20]第4の実施形態に係わる金属部品の接合方法を説明する図である。
[図21]第4の実施形態に係わる金属部品の接合方法を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をより詳細に説明するために、本発明の各実施形態につき、適宜に図面を参照して説明する。なお、説明中において、適宜に、「左右方向」のことをX軸方向といい、「前後方向」のことをY軸方向といい、「上下方向」のことをZ軸方向という。
(第1の実施形態)
まず、図1を参照して、第1の実施形態に係わる金属製品の製造方法に使用する放電加工機1について説明する。
【0010】
放電加工機1は、X軸方向及びY軸方向へ延びたベッド3を具備しており、このベッド3には、Z軸方向へ延びたコラム5が設けられている。また、ベッド3には、テーブル7が設けられてあって、このテーブル7は、X軸サーボモータ9の駆動によってX軸方向へ移動可能であって、Y軸サーボモータ11の駆動によってY軸方向へ移動可能である。
【0011】
テーブル7には、油等、電気絶縁性のある液Sを貯留する加工槽13が設けられており、この加工槽13内には、支持プレート15が設けられている。この支持プレート15には、後述の金属製品等をセット可能な治具17が設けられている。なお、治具17は、電源19に支持プレート15を介して電気的に接続されており、治具17の具体的な構成は、金属製品等に応じて変更可能である。
【0012】
コラム5には、加工ヘッド21が設けられており、この加工ヘッド21は、Z軸サーボモータ23の駆動によってZ軸方向へ移動可能である。ここで、X軸サーボモータ9の駆動によってテーブル7をX軸方向へ移動させると、加工ヘッド21をX軸方向へテーブル7に対して相対的に移動させることができる。また、Y軸サーボモータ11の駆動によってテーブル7をY軸方向へ移動させると、加工ヘッド21をY軸方向へテーブル7に対して相対的に移動させることができる。
【0013】
そして、加工ヘッド21には、成形電極25又は成形電極27を保持する第1ホルダ29が設けられており、加工ヘッド21における第1ホルダ29の近傍には、耐消耗性のある硬質電極31を保持する第2ホルダ33が設けられている。なお、第1ホルダ29及び第2ホルダ33は、電源19に電気的に接続されている。また、成形電極25.27の具体的の構成については後述する。
【0014】
次に、図2を参照して、第1の実施形態に係わる金属製品の製造方法の対象である金属部品としてのシリンダ35について簡単に説明する。
【0015】
第1の実施の形態に係わる金属部品としてのシリンダ35は、ガスタービンの構成要素の1つであって、製品本体としてのシリンダ本体37を具備している。そして、シリンダ本体37の外周面には、凹部39が放電エネルギーにより形成されており、この凹部39を含む凹部周辺39’には、肉盛41が放電エネルギーにより形成されている。なお、凹部39及び肉盛41の詳細については、後述する。
【0016】
続いて、図1から図7を参照して、第1の実施形態に係わる金属製品の製造方法について説明する。
【0017】
第1の実施形態に係わる金属製品の製造方法は、金属部品としてのシリンダ35を製造するための方法であって、前述の放電加工機1、成形電極25、硬質電極31、及び図7に示す熱処理炉43を用いている。
【0018】
ここで、成形電極25は、シリンダ本体37の母材と同一の組成を有した材料の粉末、シリンダ本体37の母材と類似の組成を有した材料の粉末、又はシリンダ本体37の母材の熱膨張率と近い熱膨張率を有した材料の粉末からプレスによる圧縮によって成形した成形体、或いは真空炉等によって加熱処理した前記成形体により構成されるものである。
【0019】
なお、シリンダ本体37の母材が例えばAMS(Aerospace Material Speciflcations)No.5662の合金である場合にはあっては、各種のニッケル合金が類似の組成を有した材料になり、コバルト又はコバルト合金が近い熱膨張率を有した材料になる。また、電極25は、圧縮によって成形する代わりに、泥漿鋳込み、MIM(Metal Injection Molding)、溶射等によって成形しても差し支えない。
【0020】
また、硬質電極31は、グラファイト、タングステン合金、又は銅合金の固形物により構成されるものである。
【0021】
そして、第1の実施形態に係わる金属製品の製造方法は、以下に示すような(1−1)成型工程と、(1−2)欠陥除去工程と、(1−3)肉盛工程と、(1−4)余肉除去工程と、(1−5)熱処理工程とを具備している。
【0022】
(1−1)成型工程
図示省略の鋳型を用い、製品本体としてのシリンダ本体37を鋳造により成型する。なお、図3に示すように、シリンダ本体37の成型によって、シリンダ本体37の被処理面としての外周面には欠陥の1つである鋳物巣Dが生じている。
【0023】
(1−2)欠陥除去工程
前記(1−1)成型工程が終了した後に、シリンダ本体37を治具17にセットする。次に、X軸サーボモータ9及びY軸サーボモータ11の駆動によってテーブル7をX軸方向及びY軸方向へ移動させることにより、鋳物巣Dを含む欠陥周辺としての鋳物巣周辺D’と硬質電極31が対向するようにシリンダ本体37の位置決めを行う。なお、テーブル7をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。
【0024】
そして、電気絶縁性のある液S中において、鋳物巣周辺D’と硬質電極31との間にパルス状の放電を発生さる。これによって、図3Bに示すように、放電エネルギーにより、鋳物巣Pを除去して、シリンダ本体37の外周面に凹部39を形成することができる。なお、パルス状の放電を発生させる際に、Z軸サーボモータ23の駆動によって硬質電極31を加工ヘッド21と一体的にZ軸方向へ僅かな移動量だけ往復させる。
【0025】
(1−3)肉盛工程
前記(1−2)欠陥除去工程が終了した後に、X軸サーボモータ9及びY軸サーボモータ11の駆動によってテーブル7をX軸方向及びY軸方向へ移動させることにより、凹部周辺39’と成形電極25が対向するようにシリンダ本体37の位置決めを行う。なお、テーブル7をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。
【0026】
そして、電気絶縁性のある液S中において、凹部周辺39’と成形電極25との間にパルス状の放電を発生さる。これによって、図5に示すように、放電エネルギーにより、成形電極25の材料或いは該材料の反応物質を凹部周辺39’に堆積、拡散、及び/又は溶着させて、徐々に、凹部周辺39’に肉盛41を形成することができる。なお、パルス状の放電を発生させる際に、Z軸サーボモータ23の駆動によって成形電極25を加工ヘッド21と一体的にZ軸方向へ僅かな移動量だけ往復させる。
【0027】
なお、「堆積、拡散、及び/又は溶着」とは、「堆積」、「拡散」、「溶着」、「堆積と拡散の2つの混合現象」、「堆積と溶着の2つの混合現象」、「拡散と溶着の2つの混合現象」、「堆積と拡散と溶着の3つの混合現象」のいずれも含む意である。
【0028】
ここで、前記(1−3)工程において形成された肉盛41の大きさは、凹部39の大きさに比べて大きくなるようにしてある。具体的には、肉盛41の外縁は、凹部39の外縁よりも外側へ0.5mm以上拡がるようにしてあって、肉盛41の厚さは、凹部39を埋めるのに必要な厚さよりも0.3mm以上厚くなるようにしてある。そのため、肉盛41の内部における粒子間の拡散結合を生じさせることができる。
【0029】
なお、肉盛41の一部分は、凹部39からはみ出した余肉41fになっている。
【0030】
(1−4)余肉除去工程
前記(1−3)肉盛工程が終了した後に、X軸サーボモータ9及びY軸サーボモータ11の駆動によってテーブル7をX軸方向及びY軸方向へ移動させることにより、肉盛41と硬質電極31が対向するようにシリンダ本体37の位置決めを行う。なお、テーブル7をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。
【0031】
そして、電気絶縁性のある液S中において、肉盛41と硬質電極31との間にパルス状の放電を発生さる。これによって、図6に示すように、放電エネルギーにより、高密度の組織からなる薄膜41aを生成しつつ、余肉41fを除去することができる。なお、パルス状の放電を発生させる際に、硬質電極31をX軸方向へシリンダ本体37に対して相対的に移動させると共に、Z軸サーボモータ23の駆動によって硬質電極31を加工ヘッド21と一体的にZ軸方向へ僅かな移動量だけ往復させる。
【0032】
(1−5)熱処理工程
前記(1−4)余肉除去工程が終了した後に、治具17からシリンダ本体37を取り外して、熱処理炉43の所定位置にセットする。そして、図7に示すように、熱処理炉43によってシリンダ本体37と併せて肉盛41を真空中又は大気中で高温に保つ。これによって、肉盛41の内部における粒子間の拡散結合が進行するように、肉盛41に対して熱処理を施すことができ、金属製品としてのシリンダ35の製造が終了する。
【0033】
ここで、熱処理の温度と時間は、例えば、肉盛41がニッケル合金又はコバルト合金により構成される場合にあっては、1050℃の高温に20分間、引き続き、760℃の高温に4時間である。
【0034】
なお、前述の第1の実施形態に係わる金属製品の製造方法は、次のように実施形態の変更することが可能である。
【0035】
即ち、第1の実施形態に係わる金属製品の製造方法における一連の工程の中から、前記(1−4)余肉除去工程又は前記(1−5)熱処理工程を省略したり、前記(1−4)余肉除去工程と前記(1−5)熱処理工程の工程順を変えたりすることも可能である。
【0036】
また、電気絶縁性のある液S中において、パルス状の放電を発生させる代わりに、電気絶縁性のある気中において、パルス状の放電を発生させるようにしても差し支えない。
【0037】
更に、放電加工機1の代わりに、研削盤を用いて、鋳物巣周辺D’を除去したり、余肉41fを除去したりしても差し支えない。
【0038】
また、鋳物巣周辺D’を除去する代わりに、クラック等の欠陥を含む欠陥周辺を除去するようにしても差し支えない。
【0039】
次に、第1の実施形態の作用について説明する。
【0040】
放電エネルギーは極めて小さい箇所に局所的に作用するものであって、肉盛41は、成形電極25の材料等を凹部39に堆積、拡散、及び/又は溶着させることよって徐々に形成されるものであるため、シリンダ35の製造の際に、シリンダ本体37における凹部周辺39’の温度が急激に上昇することがない。
【0041】
また、肉盛41は放電エネルギーにより形成されるため、肉盛41とシリンダ本体37の母材との境界部分は、組成比が傾斜する構造になっており、肉盛41をシリンダ本体37に強固に結合させることができる。
【0042】
更に、肉盛41の内部における粒子間の拡散結合が進行しているため、肉盛41の引張強さを高めることができる。
【0043】
また、前記(1−3)肉盛工程において形成された肉盛41の大きさは、凹部39の大きさに比べて大きくなるようにしてあるため、前記(1−4)余肉除去工程後における肉盛41の表側にポーラスな組織を残さない。
【0044】
以上の如き、第1の実施形態によれば、シリンダ35の製造の際に、シリンダ本体37における凹部周辺39’の温度が急激に上昇することがないため、シリンダ本体37にける凹部周辺39’の熱変形を十分に抑えて、シリンダ35の製造不良がほとんどなくなる。
【0045】
また、肉盛41をシリンダ本体37に強固に結合させることができるため、肉盛41がシリンダ本体37の母材から剥離し難くなって、シリンダ35の品質を安定させることができる。
【0046】
更に、肉盛41の引張強さを高めることができるため、シリンダ本体37における凹部周辺39’の機械的強度を高めることできる。
【0047】
また、肉盛41は高密度の組織からなる薄膜41aを有しているため、シリンダ35内からの流体の浸みだしを抑制することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
図8を参照して、第2の実施形態に係わる金属製品の製造方法の対象である金属部品としてのシリンダ45について簡単に説明する。
【0049】
第2の実施の形態に係わる金属部品としてのシリンダ45は、第1の実施形態に係わるシリンダ35と同様に、製品本体としてのシリンダ本体37を具備してあって、シリンダ本体37の外周面には、凹部39が放電エネルギーにより形成されている。そして、凹部39を含む凹部周辺39’には、2層の肉盛47からなる肉盛群49が放電エネルギーにより形成されている。なお、肉盛群49の詳細については、後述する。
【0050】
続いて、図1、図3、図4、図9から図13を参照して、第2の実施形態に係わる金属製品の製造方法について説明する。
【0051】
第2の実施形態に係わる金属製品の製造方法は、金属部品としてのシリンダ45を製造するための方法であって、前述の放電加工機1、成形電極25、硬質電極31、及び熱処理炉43を用いている。
【0052】
そして、第2の実施形態に係わる金属製品の製造方法は、以下に示すような(2−1)成型工程と、(2−2)欠陥除去工程と、(2−3)第1肉盛工程と、(2−4)薄膜工程と、(2−5)第2肉盛工程と、(2−6)余肉除去工程と、(2−7)熱処理工程とを具備している。
【0053】
(2−1)成型工程
前記(1−1)成型工程と同様に行う(図3参照)。
【0054】
(2−2)欠陥除去工程
前記(1−2)欠陥除去工程と同様に行う(図4参照)。
【0055】
(2−3)第1肉盛工程
前記(2−2)欠陥除去工程が終了した後に、X軸サーボモータ9及びY軸サーボモータ11の駆動によってテーブル7をX軸方向及びY軸方向へ移動させることにより、凹部周辺39’と成形電極25が対向するようにシリンダ本体37の位置決めを行う。なお、テーブル7をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。
【0056】
そして、電気絶縁性のある液S中において、凹部周辺39’と成形電極25との間にパルス状の放電を発生さる。これによって、図9に示すように、放電エネルギーにより、成形電極25の材料或いは該材料の反応物質を凹部周辺39’に堆積、拡散、及び/又は溶着させて、徐々に、凹部周辺39’に肉盛47を形成することができる。なお、パルス状の放電を発生させる際に、Z軸サーボモータ23の駆動によって成形電極25を加工ヘッド21と一体的にZ軸方向へ僅かな移動量だけ往復させる。
【0057】
(2−4)薄膜工程
前記(2−3)成型工程が終了した後に、X軸サーボモータ9及びY軸サーボモータ11の駆動によってテーブル7をX軸方向及びY軸方向へ移動させることにより、肉盛47と硬質電極31が対向するようにシリンダ本体37の位置決めを行う。なお、テーブル7をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。
【0058】
そして、電気絶縁性のある液S中において、肉盛47と硬質電極31との間にパルス状の放電を発生さる。これによって、図10に示すように、放電エネルギーにより、肉盛47の表面を溶融して、肉盛47の表面に高密度の組織からなる薄膜47aを生成することができる。なお、パルス状の放電を発生させる際に、Z軸サーボモータ23の駆動によって硬質電極31を加工ヘッド21と一体的にZ軸方向へ僅かな移動量だけ往復させる。
【0059】
(2−5)第2肉盛工程
前記(2−4)欠陥除去工程が終了した後に、X軸サーボモータ9及びY軸サーボモータ11の駆動によってテーブル7をX軸方向及びY軸方向へ移動させることにより、肉盛47における薄膜47aと成形電極25が対向するようにシリンダ本体37の位置決めを行う。なお、テーブル7をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。
【0060】
そして、電気絶縁性のある液S中において、肉盛47における薄膜47aと成形電極25との間にパルス状の放電を発生さる。これによって、図11に示すように、放電エネルギーにより、成形電極25の材料或いは該材料の反応物質を肉盛47における薄膜47aに堆積、拡散、及び/又は溶着させて、徐々に、凹部39に2層の肉盛47からなる肉盛群49を形成することができる。なお、パルス状の放電を発生させる際に、Z軸サーボモータ23の駆動によって成形電極25を加工ヘッド21と一体的にZ軸方向へ僅かな移動量だけ往復させる。
【0061】
ここで、前記(2−5)第2肉盛工程において形成された肉盛群49の大きさは、凹部39の大きさに比べて大きくなるようにしてある。具体的には、肉盛群49の外縁は、凹部39の外縁よりも外側へ0.5mm以上拡がるようにしてあって、肉盛群49の厚さは、凹部39を埋めるのに必要な厚さよりも0.3mm以上厚くなるようにしてある。なお、肉盛群49の一部分は、凹部39からはみ出した余肉49fになっている。そのため、肉盛群49における内部の粒子間の拡散結合を生じさせることができる。
【0062】
(2−6)余肉除去工程
前記(2−5)第2肉盛工程が終了した後に、X軸サーボモータ9及びY軸サーボモータ11の駆動によってテーブル7をX軸方向及びY軸方向へ移動させることにより、肉盛群49と硬質電極31が対向するようにシリンダ本体37の位置決めを行う。なお、テーブル7をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。
【0063】
そして、電気絶縁性のある液S中において、肉盛群49と硬質電極31との間にパルス状の放電を発生さる。これによって、図12に示すように、放電エネルギーにより、高密度の組織からなる薄膜49aを生成しつつ、余肉49fを除去することができる。なお、パルス状の放電を発生させる際に、硬質電極31をX軸方向へシリンダ本体37に対して相対的に移動させると共に、Z軸サーボモータ23の駆動によって硬質電極31を加工ヘッド21と一体的にZ軸方向へ僅かな移動量だけ往復させる。
【0064】
(2−7)熱処理工程
前記(2−5)余肉除去工程が終了した後に、治具17からシリンダ本体37を取り外して、熱処理炉43の所定位置にセットする。そして、図13に示すように、熱処理炉43によってシリンダ本体37と併せて肉盛群49を真空中又は大気中で高温に保つ。これによって、肉盛群49の内部における粒子間の拡散結合が進行するように、肉盛群49に対して熱処理を施すことができ、金属製品としてのシリンダ45の製造が終了する。
【0065】
ここで、熱処理の温度と時間は、例えば、肉盛群49がニッケル合金又はコバルト合金により構成される場合にあっては、1050℃の高温に20分間、引き続き、760℃の高温に4時間である。
【0066】
なお、前述の第2の実施形態に係わる金属製品の製造方法は、次のように実施形態の変更することが可能である。
【0067】
即ち、第2の実施形態に係わる金属製品の製造方法における一連の工程の中から、前記(2−6)余肉除去工程又は前記(2−7)熱処理工程を省略したり、前記(2−6)余肉除去工程と前記(2−7)熱処理工程の工程順を変えたりすることも可能である。
【0068】
また、電気絶縁性のある液S中において、パルス状の放電を発生させる代わりに、電気絶縁性のある気中において、パルス状の放電を発生させるようにしても差し支えない。
【0069】
更に、放電加工機1の代わりに、研削盤を用いて、鋳物巣周辺D’を除去したり、余肉49fを除去したりしても差し支えない。
【0070】
また、鋳物巣周辺D’を除去する代わりに、クラック等の欠陥を含む欠陥周辺を除去するようにしても差し支えない。
【0071】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
【0072】
放電エネルギーは極めて小さい箇所に局所的に作用するものであって、肉盛群49は、成形電極25の材料等を凹部39に堆積、拡散、及び/又は溶着させることよって徐々に形成されるものであるため、シリンダ45の製造の際に、シリンダ本体37における凹部周辺39’の温度が急激に上昇することがない。
【0073】
また、肉盛群49は放電エネルギーにより形成されるため、肉盛群49とシリンダ本体37の母材との境界部分は、組成比が傾斜する構造になっており、肉盛群49をシリンダ本体37に強固に結合させることができる。
【0074】
更に、肉盛群49の内部における粒子間の拡散結合が進行しているため、肉盛群49の引張強さを高めることができる。
【0075】
以上の如き、第2の実施形態によれば、シリンダ45の製造の際に、シリンダ本体37における凹部周辺39’の温度が急激に上昇することがないため、シリンダ本体37にける凹部周辺39’の熱変形を十分に抑えて、シリンダ45の製造不良がほとんどなくなる。
【0076】
また、肉盛群49をシリンダ本体37に強固に結合させることができるため、肉盛群49がシリンダ本体37の母材から剥離し難くなって、シリンダ45の品質を安定させることができる。
【0077】
更に、肉盛群49の引張強さを高めることができるため、シリンダ本体37における凹部周辺39’の機械的強度を高めることできる。
【0078】
また、肉盛群49は高密度の組織からなる薄膜47a、49aを有しているため、シリンダ45内からの流体の浸みだしを抑制することができる。
【0079】
(第3の実施形態)
図14を参照して、第3の実施形態に係わる金属製品の製造方法の対象である金属部品としてのシリンダ51について簡単に説明する。
【0080】
第3の実施の形態に係わる金属部品としてのシリンダ51は、第1の実施形態に係わるシリンダ35及び第2の実施形態に係わるシリンダ45と同様に、製品本体としてのシリンダ本体37を具備してあって、シリンダ本体37の外周面には、凹部39が放電エネルギーにより形成されている。そして、凹部39を含む凹部周辺39’には、多層の肉盛47からなる肉盛群53が放電エネルギーにより形成されている。なお、肉盛群53の詳細については、後述する。
【0081】
続いて、図1、図3、図4、図9、図10、図15から図17を参照して、第3の実施形態に係わる金属製品の製造方法について説明する。
【0082】
第3の実施形態に係わる金属製品の製造方法は、金属部品としてのシリンダ51を製造するための方法であって、前述の放電加工機1、成形電極25、硬質電極31、及び熱処理炉43を用いている。
【0083】
そして、第3の実施形態に係わる金属製品の製造方法は、以下に示すような(3−1)成型工程と、(3−2)欠陥除去工程と、(3−3)肉盛工程と、(3−4)薄膜工程と、(3−5)繰り返し工程と、(3−6)余肉除去工程と、(3−7)熱処理工程とを具備している。
【0084】
(3−1)成型工程
前記(1−1)成型工程と同様に行う(図3参照)。
【0085】
(3−2)欠陥除去工程
前記(1−2)欠陥除去工程と同様に行う(図4参照)。
【0086】
(3−3)肉盛工程
前記(2−3)第1肉盛工程と同様に行う(図9参照)。
【0087】
(3−4)薄膜工程
前記(2−4)薄膜工程と同様の内容に行う(図10参照)。
【0088】
(3−5)繰り返し工程
前記(3−4)薄膜工程が終了した後に、前記(3−3)肉盛工程と前記(3−4)を交互に繰り返す。これによって、図15に示すように、放電エネルギーにより、各層の肉盛47の表面に薄膜47aを生成しつつ、徐々に、凹部39に多層の肉盛47からなる肉盛群53を形成することができる。
【0089】
ここで、前記(3−5)繰り返し工程において形成された肉盛群53の大きさは、凹部39の大きさに比べて大きくなるようにしてある。具体的には、肉盛群53の外縁は、凹部39の外縁よりも外側へ0.5mm以上拡がるようにしてあって、肉盛群53の厚さは、凹部39を埋めるのに必要な厚さよりも0.3mm以上厚くなるようにしてある。そのため、肉盛群53における内部の粒子間の拡散結合を生じさせることができる。
【0090】
なお、肉盛群53の一部分は、凹部39からはみ出した余肉53fになっている。
【0091】
(3−6)余肉除去工程
前記(3−5)繰り返し工程が終了した後に、X軸サーボモータ9及びY軸サーボモータ11の駆動によってテーブル7をX軸方向及びY軸方向へ移動させることにより、肉盛群53と硬質電極31が対向するようにシリンダ本体37の位置決めを行う。なお、テーブル7をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。
【0092】
そして、電気絶縁性のある液S中において、硬質電極31と肉盛群53との間にパルス状の放電を発生さる。これによって、図16に示すように、放電エネルギーにより、高密度の組織からなる薄膜53aを生成しつつ、余肉53fを除去することができる。なお、パルス状の放電を発生させる際に、硬質電極31をX軸方向へシリンダ本体37に対して相対的に移動させると共に、Z軸サーボモータ23の駆動によって硬質電極31を加工ヘッド21と一体的にZ軸方向へ僅かな移動量だけ往復させる。
【0093】
(3−7)熱処理工程
前記(3−5)余肉除去工程が終了した後に、治具17からシリンダ本体37を取り外して、熱処理炉43の所定位置にセットする。そして、図17に示すように、熱処理炉43によってシリンダ本体37と併せて肉盛群49を真空中又は大気中で高温に保つ。これによって、肉盛群53の内部における粒子間の拡散結合が進行するように、肉盛群53に対して熱処理を施すことができ、金属製品としてのシリンダ51の製造が終了する。
【0094】
ここで、熱処理の温度と時間は、例えば、肉盛群49がニッケル合金又はコバルト合金により構成される場合にあっては、1050℃の高温に20分間、引き続き、760℃の高温に4時間である。
【0095】
なお、前述の第3の実施形態に係わる金属製品の製造方法は、次のように実施形態の変更することが可能である。
【0096】
即ち、第3の実施形態に係わる金属製品の製造方法における一連の工程の中から、前記(3−6)余肉除去工程又は前記(3−7)熱処理工程を省略したり、前記(3−6)余肉除去工程と前記(3−7)熱処理工程の工程順を変えたりすることも可能である。
【0097】
また、電気絶縁性のある液S中において、パルス状の放電を発生させる代わりに、電気絶縁性のある気中において、パルス状の放電を発生させるようにしても差し支えない。
【0098】
更に、放電加工機1の代わりに、研削盤を用いて、鋳物巣周辺D’を除去したり、余肉53fを除去したりしても差し支えない。
【0099】
また、鋳物巣周辺D’を除去する代わりに、クラック等の欠陥を含む欠陥周辺を除去するようにしても差し支えない。
【0100】
次に、第3の実施形態の作用について説明する。
【0101】
放電エネルギーは極めて小さい箇所に局所的に作用するものであって、肉盛群53は、成形電極25の材料等を凹部39に堆積、拡散、及び/又は溶着させることよって徐々に形成されるものであるため、シリンダ51の製造の際に、シリンダ本体37における凹部周辺39’の温度が急激に上昇することがない。
【0102】
また、肉盛群53は放電エネルギーにより形成されるため、肉盛群53とシリンダ本体37の母材との境界部分は、組成比が傾斜する構造になっており、肉盛群53をシリンダ本体37に強固に結合させることができる。
【0103】
更に、肉盛群53の内部における粒子間の拡散結合が進行しているため、肉盛群53の引張強さを高めることができる。
【0104】
以上の如き、第3の実施形態によれば、シリンダ51の製造の際に、シリンダ本体37における凹部周辺39’の温度が急激に上昇することがないため、シリンダ本体37にける凹部周辺39’の熱変形を十分に抑えて、シリンダ51の製造不良がほとんどなくなる。
【0105】
また、肉盛群53をシリンダ本体37に強固に結合させることができるため、肉盛群53がシリンダ本体37の母材から剥離し難くなって、シリンダ51の品質を安定させることができる。
【0106】
更に、肉盛群53の引張強さを高めることができるため、シリンダ本体37における凹部周辺39’の機械的強度を高めることできる。
【0107】
また、肉盛群53は高密度の組織からなる薄膜41a、53aを有しているため、シリンダ51内からの流体の浸みだしを抑制することができる。
【0108】
(第4の実施形態)
図18を参照して、第4の実施形態に係わる接合構造体55について説明する。
【0109】
接合構造体55は、突き合わせた状態で接合される一対の金属部品57.59を具備しており、一対の金属部品57.59は、開先部57a.57bをそれぞれ有している。また、一方の金属部品57の開先部57aと他方の金属部品59の開先部59aとにより凹部61が区画されるており、この凹部61を含む凹部周辺61’には、肉盛63が放電エネルギーにより形成されている。そして、この肉盛63は、図1に示す成形電極27を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、凹部61を含む凹部周辺61’と成形電極27との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、成形電極27の材料或いは該材料の反応物質を凹部周辺61’に堆積、拡散、及び/又は溶着させることによって、徐々に形成されたものである。
【0110】
ここで、成形電極27は、金属部品57.59の母材と同一の組成を有した材料の粉末、金属部品57.59の母材と類似の組成を有した材料の粉末、又は金属部品57.59の母材の熱膨張率と近い熱膨張率を有した材料の粉末からプレスによる圧縮によって成形した成形体、或いは真空炉等によって加熱処理した前記成形体により構成されるものである。
【0111】
なお、金属部品57.59の母材が例えば鉄に18%のクロムと8%のニッケルを含むステンレス合金である場合にあっては、含有率の異なる他のステンレス合金が類似の組成を有した材料になり、コバルト又はコバルト合金が近い熱膨張率を有した材料になる。また、成形電極27は、圧縮によって成形する代わりに、泥漿鋳込み、MIM(Metal Injection Molding)、溶射等によって成形しても差し支えない。
【0112】
続いて、図1、図19から図21を参照して、第4の実施形態に係わる金属部品の接合方法について説明する。
【0113】
第4の実施形態に係わる金属部品の接合方法は、一対の金属部品57.59を接合するための方法であって、前述の放電加工機1、成形電極27、及び熱処理炉43を用いている。そして、第4の実施形態に係わる金属部品の接合方法は、以下に示すような(4−1)突き合わせと、(4−2)肉盛工程と、(4−3)熱処理工程とを具備している。
【0114】
(4−1)突き合わせ工程
一対の金属部品57.59を突き合わすように、一対の金属部品57.59を治具17にセットする。これによって、図19に示すように、一方の金属部品57の開先部57aと他方の金属部品59の開先部59aとにより、凹部61を区画することできる。
【0115】
(4−2)肉盛工程
前記(4−1)突き合わせ工程が終了した後に、X軸サーボモータ9及びY軸サーボモータ11の駆動によってテーブル7をX軸方向及びY軸方向へ移動させることにより、凹部周辺61’と成形電極27が対向するように一対の金属部品57.59の位置決めを行う。なお、テーブル7をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。
【0116】
そして、電気絶縁性のある液S中において、凹部周辺61’と成形電極27との間にパルス状の放電を発生さる。これによって、図20に示すように、放電エネルギーにより、成形電極27の材料成いは該材料の反応物質を凹部周辺61’に堆積、拡散、及び/又は溶着させて、徐々に、凹部周辺61’に肉盛63を形成することができる。なお、パルス状の放電を発生させる際に、Z軸サーボモータ23の駆動によって成形電極27を加工ヘッド21と一体的にZ軸方向へ僅かな移動量だけ往復させる。
【0117】
ここで、前記(4−2)肉盛工程において形成された肉盛63の大きさは、凹部61の大きさに比べて大きくなるようにしてある。具体的には、肉盛63の外縁は、凹部61の外縁よりも外側へ0.5mm以上拡がるようにしてあって、肉盛63の厚さは、凹部61を埋めるのに必要な厚さよりも0.3mm以上厚くなるようにしてある。そのため、肉盛63における内部の粒子間の拡散結合を生じさせることができる。
【0118】
(4−3)熱処理工程
前記(4−2)肉盛工程が終了した後に、治具17から一対の金属部品57.59を取り外して、熱処理炉43の所定位置にセットする。そして、熱処理炉43によって一対の金属部品57.59と併せて肉盛63を真空中又は大気中で高温に保つ。これによって、肉盛63の内部における粒子間の拡散結合が進行するように、肉盛63に対して熱処理を施すことができ、一対の金属部品57.59の接合が終了する。
【0119】
ここで、熱処理の温度と時間は、例えば、肉盛63がニッケル合金又はコバルト合金により構成される場合にあっては、1050℃の高温に20分間、引き続き、760℃の高温に4時間である。
【0120】
なお、前述の第4の実施形態に係わる金属部品の接合方法は、次のように実施形態の変更することが可能である。
【0121】
即ち、第4の実施形態に係わる金属部品の接合方法における一連の工程の中から、前記(4−3)熱処理工程を省略することも可能である。
【0122】
また、前記(4−2)肉盛工程と前記(4−3)熱処理工程の間に、肉盛63の余肉を除去しても差し支えない。
【0123】
更に、電気絶縁性のある液S中において、パルス状の放電を発生させる代わりに、電気絶縁性のある気中において、パルス状の放電を発生させるようにしても差し支えない。
【0124】
次に、第4の実施形態の作用について説明する。
【0125】
放電エネルギーは極めて小さい箇所に局所的に作用するものであって、肉盛63は、成形電極27の材料等を凹部61に堆積、拡散、及び/又は溶着させることよって徐々に形成されるものであるため、一対の金属部品57.59の接合の際に、金属部品57.59における凹部周辺61’の温度が急激に上昇することがない。
【0126】
また、肉盛63は放電エネルギーにより形成されるため、肉盛63と金属部品57.59の母材との境界部分は、組成比が傾斜する構造になっており、肉盛63を金属部品57.59に強固に結合させることができる。
【0127】
更に、肉盛63の内部における粒子間の拡散結合が進行しているため、肉盛63の引張強さを高めることができる。
【0128】
以上の如き、第4の実施形態によれば、一対の金属部品57.59の接合の際に、金属部品57.59における凹部周辺61’の温度が急激に上昇することがないため、金属部品57.59にける凹部周辺61’の熱変形を十分に抑えて、一対の金属部品57.59の接合不良がほとんどなくなる。
【0129】
また、肉盛63を金属部品57.59に強固に結合させると共に、肉盛63の引張強さを高めることができるため、一対の金属部品57.59の接合状態が強固になり、換言すれば、接合構造体55の機械的強度を高めることできる。
【0130】
以上のように、本発明をいくつかの好ましい実施形態により説明したが、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【0131】
また、2003年6月11日に日本国特許庁に出願された特願2003−167025号の内容、及び2003年6月11日に日本国特許庁に出願された特願2003−167074号の内容は、参照により本願の内容に引用されたものとする。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製品を製造するための方法であって、
製品本体を成型する成型工程と;
前記成型工程が終了した後に、成型によって前記製品本体の被処理面に生じた欠陥を含む欠陥周辺を除去して、前記製品本体の前記被処理面に凹部を形成する欠陥除去工程と;
前記欠陥除去工程が終了した後に、金属の粉末から成形した成形体、或いは加熱処理した前記成形体により構成される成形電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記凹部を含む凹部周辺と前記成形電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記成形電極の材料或いは該材料の反応物質を前記凹部周辺に堆積、拡散、及び/又は溶着させて、徐々に、前記凹部周辺に肉盛を形成する肉盛工程と;を具備したことを特徴とする金属製品の製造方法。
【請求項2】
前記肉盛工程が終了した後に、前記肉盛における前記凹部からはみ出した余肉を除去する余肉除去工程と:を具備したことを特徴とする請求項1に記載の金属製品の製造方法。
【請求項3】
前記余肉除去工程にあっては、耐消耗性のある硬質電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記肉盛と前記硬質電極との間にパルス状の放電を発生させて、その放電エネルギーにより、高密度の組織からなる薄膜を生成しつつ、前記余肉を除去することを特徴とする請求項2に記載の金属製品の製造方法。
【請求項4】
前記肉盛工程が終了した後に、熱処理炉によって前記製品本体と併せて前記肉盛を真空中又は大気中で高温に保つことにより、前記肉盛の内部における粒子間の拡散結合が進行するように、前記肉盛に対して熱処理を施す熱処理工程と;を具備したことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の金属製品の製造方法。
【請求項5】
金属製品を製造するための方法であって、
製品本体を成型する成型工程と;
前記成型工程が終了した後に、成型によって前記製品本体の被処理面に生じた欠陥を含む欠陥周辺を除去して、前記製品本体の前記被処理面に凹部を形成する欠陥除去工程と;
前記欠陥除去工程が終了した後に、金属の粉末から成形した成形体、或いは加熱処理した前記成形体により構成される成形電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記凹部を含む凹部周辺と前記成形電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記成形電極の材料或いは該材料の反応物質を前記凹部周辺に堆積、拡散、及び/又は溶着させて、肉盛を形成する第1肉盛工程と;
前記第1肉盛工程が終了した後に、前記成形電極又は耐消耗性のある硬質電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記肉盛と前記成形電極又は前記硬質電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記肉盛の表面を溶融して、前記肉盛の表面に高密度の組織からなる薄膜を生成する薄膜工程と;
前記薄膜工程が終了した後に、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記肉盛における前記薄膜と前記成形電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記成形電極の材料或いは該材料の反応物質を前記肉盛における前記薄膜に堆積、拡散、及び/又は溶着させて、徐々に、前記凹部周辺に2層の肉盛からなる肉盛群を形成する第2肉盛工程と;を具備したことを特徴とする金属製品の製造方法。
【請求項6】
前記第2肉盛工程が終了した後に、前記肉盛群における前記凹部からはみ出した余肉を除去する余肉除去工程と:を具備したことを特徴とする請求項5に記載の金属製品の製造方法。
【請求項7】
前記第2肉盛工程が終了した後に、熱処理炉によって前記製品本体と併せて前記肉盛群を真空中又は大気中で高温に保つことにより、前記肉盛群の内部における粒子間の拡散結合が進行するように、前記肉盛群に対して熱処理を施す熱処理工程と;を具備したことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の金属製品の製造方法。
【請求項8】
金属製品を製造するための金属製品の製造方法であって、
製品本体を成型する成型工程と;
前記成型工程が終了した後に、成型によって前記製品本体の被処理面に生じた欠陥を含む欠陥周辺を除去して、前記製品本体の前記被処理面に凹部を形成する欠陥除去工程と;
前記欠陥除去工程が終了した後に、金属の粉末から成形した成形体、或いは加熱処理した前記成形体により構成される成形電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記凹部を含む凹部周辺と前記成形電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記成形電極の材料或いは該材料の反応物質を前記凹部周辺に堆積、拡散、及び/又は溶着させて、肉盛を形成する肉盛工程と;
前記薄膜工程が終了した後に、前記成形電極又は耐消耗性のある硬質電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記肉盛と前記成形電極又は前記硬質電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記肉盛の表面を溶融して、前記肉盛の表側に高密度の組織からなる薄膜を生成する薄膜工程と;
前記薄膜工程が終了した後に、前記肉盛工程と前記薄膜工程を繰り返すことにより、各層の肉盛の表面に前記薄膜を生成しつつ、徐々に、前記凹部周辺に多層の肉盛からなる肉盛群を形成する繰り返し工程と;を具備したことを特徴とする金属製品の製造方法。
【請求項9】
前記繰り返し工程が終了した後に、前記肉盛群における前記凹部からはみ出した余肉を除去する余肉除去工程と:を具備したことを特徴とする請求項8に記載の金属製品の製造方法。
【請求項10】
前記繰り返し工程が終了した後に、熱処理炉によって前記製品本体と併せて前記肉盛群を真空中又は大気中で高温に保つことにより、前記肉盛群の内部における粒子間の拡散結合が進行するように、前記肉盛群に対して熱処理を施す熱処理工程と;を具備したことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の金属製品の製造方法。
【請求項11】
前記欠陥除去工程にあっては、耐消耗性のある硬質電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記製品本体の前記被処理面と前記硬質電極との間にパルス状の放電を発生させて、その放電エネルギーにより、前記製品本体の前記被処理面に生じた前記欠陥を除去することを特徴とする請求項1から請求項10のうちのいずれかの請求項に記載の金属製品の製造方法。
【請求項12】
前記成形電極を構成する金属の粉末は、前記製品本体の母材と同一の組成を有した材料の粉末、前記製品本体の母材と類似の組成を有した材料の粉末、又は前記製品本体の母材の熱膨張率と近い熱伝達率を有した材料の粉末であることを特徴とする請求項1から請求項11のうちのいずれかの請求項に記載の金属製品の製造方法。
【請求項13】
前記硬質電極は、グラファイト、タングステン合金、又は銅合金の固形物により構成されることを特徴とする請求項3、請求項5、請求項8のうちのいずれかの請求項に記載の金属製品の製造方法。
【請求項14】
前記成型工程にあっては、製品本体を鋳造により成型する工程であって、前記欠陥は、鋳物巣であることを特徴とする請求項1から請求項13のうちのいずれかの請求項に記載の金属製品の製造方法。
【請求項15】
請求項1から請求項14のうちのいずれかの請求項に記載の金属製品の製造方法により製造されたことを特徴とする金属部品。
【請求項16】
金属部品を接合する方法であって、
一対の金属部品を突き合わせることによって、一方の金属部品の開先部と他方の金属部品の開先部により凹部を区画する突き合わせ工程と;
前記突き合わせ工程が終了した後に、金属の粉末から成形した成形体、或いは加熱処理した前記成形体により構成される成形電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記凹部を含む凹部周辺と前記成形電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記成形電極の材料或いは該材料の反応物質を前記凹部周辺に堆積、拡散、及び/又は溶着させて、徐々に、前記凹部周辺に肉盛を形成する肉盛工程と;を具備したことを特徴とする金属部品の接合方法。
【請求項17】
前記繰り返し工程が終了した後に、熱処理炉によって前記一対の金属部品と併せて前記肉盛を真空中又は大気中で高温に保つことにより、前記肉盛の内部における粒子間の拡散結合が進行するように、前記肉盛に対して熱処理を施す熱処理工程と;を具備したことを特徴とする請求項16に記載の金属部品の接合方法。
【請求項18】
前記成形電極を構成する金属の粉末は、前記金属部品の母材と同一の組成を有した材料の粉末、前記金属部品の母材と類似の組成を有した材料の粉末、又は前記金属部品の母材の熱膨張率と近い熱膨張率を有した材料の粉末であることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の金属部品の接合方法。
【請求項19】
開先部をそれぞれ有し、突き合わせた状態で接合される一対の金属部品と;
一方の金属部品の開先部と他方の金属部品の開先部とによって区画される凹部を含む凹部周辺に形成された肉盛と;を具備してあって、
前記肉盛は、金属の粉末から成形した成形体、或いは加熱処理した前記成形体により構成される成形電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記凹部周辺と前記成形電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記成形電極の材料或いは該材料の反応物質を前記凹部周辺に堆積、拡散、及び/又は溶着させることによって、徐々に形成されたことを特徴とする接合構造体。
【請求項20】
前記肉盛は、内部における粒子間の拡散結合が進行するように熱処理を施していることを特徴とする請求項19に記載の接合構造体。
【請求項21】
前記成形電極を構成する金属の粉末は、前記金属部品の母材と同一の組成を有した材料の粉末、前記金属部品の母材と類似の組成を有した材料の粉末、又は前記金属部品の母材と熱膨張率と近い熱膨張率を有した材料の粉末であることを特徴とする請求項19又は請求項20に記載の接合構造体。

【国際公開番号】WO2004/111303
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506938(P2005−506938)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008212
【国際出願日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】