説明

金属製容器又は金属製管の密閉シール方法

【課題】略平面を有する不定形のフランジに、溝を形成することなく、簡便にシールし、真空さらに1.0MPa未満の加圧圧力にも耐える金属製容器又は金属製管の密閉シール方法を提供する。
【解決手段】本発明は、フランジ面が略平坦で、嵌合する一対の金属製の容器又は管のフランジ間に、金属線、例えば、その表面に表面張力調整剤が塗布されていない等を配置し、ナット及びボルト又はクランプで圧締し、金属線を潰し、シールすることを特徴とする金属製容器又は金属製管の密閉シール方法の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製容器又は金属製管の密閉シール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉シール方法は、固定用途に使用されるガスケットと、運動部、可動部に使用されるパッキンによる方法に大別することができる。
【0003】
ガスケットには、図8に示すように、金属製管6などの接続面(フランジ6a)、エンジンのヘッドカバーの取り付け部などの挟み、フランジ6aに穿設された孔6bに通したボルト、或いはクランプ等で圧締固定されるガスケット17など、Oリングやゴムシート等のソフトガスケット、金属を加工したメタルガスケット、金属と非金属を組み合わせたセミメタルガスケットなどがある。
【0004】
金属製容器、金属製管の密閉シール方法として、特許文献1のメタルガスケットを用いた真空シール構造、真空シール方法、真空シール用メタルガスケットおよびメタルガスケット用真空フランジが公開されている。
【0005】
特許文献1に係る発明は、 内側側壁部47が傾斜したシール溝45を有し、内周側のフランジ面51aが外周側のフランジ面51bよりも低いフランジ本体43の間に、断面形状が幅/厚さの比が0.5〜4の略矩形で、ビッカース硬度が50〜120のメタルガスケットを圧締して真空シールすることを特徴とする。
【特許文献1】特開平5−248542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の密閉シール方法では、フランジ部に溝を形成すること、一連のリング状のメタルガスケットを使用しており、規格外の不定形のフランジにおいては、フランジに溝を形成しなければならないこと、また、その溝及びフランジにあった形状のカスケットを成型しなければならなかった。溝を形成せず、ボルト等で固定する板状のガスケットが知られているが、やはり容器、管の形状に合わせて形成しなければならない。
【0007】
そこで、本発明は、略平面を有する不定形のフランジに、溝を形成すること、又は特殊ガスケットを用意することなく、簡便にシールし、真空さらに1.0MPa未満の加圧圧力にも耐える金属製容器又は金属製管の密閉シール方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、フランジ面が略平坦で、嵌合する一対の金属製の容器又は管のフランジ間に、金属線を配置し、ナット及びボルト又はクランプで圧締し、金属線を潰し、シールすることを特徴とする金属製容器又は金属製管の密閉シール方法の構成、前記金属線が、金属製容器或いは金属製管のフランジ部より、軟質であることを特徴とする金属製容器又は金属製管の密閉シール方法の構成、前記金属線が、その表面に表面張力調整剤が塗布されていない半田であることを特徴とする前記記載の金属製容器又は金属製管の密閉シール方法の構成、前記金属線の先端と末端を重ね合わせ、又は、前記金属線を複数に分断し、隣り合う金属線を重ねて圧締することを特徴とする前記何れかに記載の金属製容器又は金属製管の密閉シール方法の構成、前記金属線の端部を金属製容器、又は金属製管外に突出させて配置することを特徴とする前記何れかに記載の金属製容器又は金属製管の密閉シール方法の構成、前記金属線の突出端部を、フランジに折り込み、固定したことを特徴とする前記金属製容器又は金属製管の密閉シール方法の構成とした。
【0009】
さらに、前記容器が、マイクロ波導波管と連結したマイクロ波チャンバーであることを特徴とする前記何れかに記載の金属製容器の密閉シール方法を用いたマイクロ波チャンバーの構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上の構成であるから以下の効果が得られる。先ず、金属線をフランジの略平坦面に配置し、圧締することで、簡便に、真空さらに1.0MPa未満の加圧圧力に耐えるシールを可能にする。金属線の素材を適宜選択することで、耐熱、耐圧、密閉空間内を通過する素材に対する安定性などを得ることができる。
【0011】
また、金属線を使用することで、不定形のフランジに対しても、その形状に配置するだけで良いので、ガスケットを特注することなく、容易かつ低廉でシールすることができる。金属線として、線状の市販のその表面に表面張力調整剤が塗布されていない半田とすることで、極めて低廉でシールすることができる。
【0012】
金属線の末端と先端、或いは複数に分断して配置した金属線の隣り合う金属線を重ねて(交差部)圧締することで、隣り合う金属線からの漏れはなく、不定形のフランジに対しても確実にシールすることができる。さらに、金属線の末端部を金属製容器又は金属製管の外に突出させ、加えて、フランジに折り込み、固定することで、圧締めの際の、金属線のズレを防止し、かつ配置位置を調整することができる。
【0013】
金属線でシールすることで、電気的同電位を必要とする容器、例えば、マイクロ波チャンバーなどに有効である。特殊形状のマイクロ波チャンバーは、それを構成する部材が電気的に同電位でないと、火花放電を起こす。しかし、本発明を利用することで、マイクロ波チャンバーなどの同電位を必要とする容器を一体で形成する必要も、またアース等で同電位とする必要もなく、火花放電を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、略平面を不定形のフランジに、溝を形成すること、又は特殊ガスケットを用意することなく、簡便にシールし、真空さらに1.0MPa未満の加圧圧力にも耐える金属製容器又は金属製管の密閉シール方法を提供する目的を、フランジ面が略平坦で、嵌合する一対の金属製の容器又は管のフランジ間に、金属製容器或いは金属製管のフランジ部より、軟質である金属線、例えば、その表面に表面張力調整剤が塗布されていない半田を、先端と末端を重ね合わせ、又は複数に分断し、隣り合う金属線を重ねて配置し、かつ、前記金属線の端部を金属製容器、又は金属製管外に突出させ、その突出端部を、フランジに折り込み、固定し、フランジ同士をナット及びボルト又はクランプで圧締し、金属線を潰し、フランジ部をシールすることを特徴とする金属製容器又は金属製管の密閉シール方法の構成とすることで実現した。
【0015】
また、前記容器が、マイクロ波導波管と連結したマイクロ波チャンバーであることを特徴とする前記何れかに記載の金属製容器の密閉シール方法を用いたマイクロ波チャンバーの構成とした。
【0016】
以下、添付図面に基づき、本発明である金属製容器又は金属製管の密閉シール方法について、詳細に述べる。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の密閉シール方法を利用した金属製容器の断面図である。図2は、本発明の密閉シール方法を利用した金属製容器の断面図である。図3は、本発明の密閉シール方法を利用した金属製容器の分解断面図(密閉シール前)である。

【0018】
本発明において、金属製容器1は、その用途は特に限定されない。ここでは、金属製容器1は、略平坦面のフランジ2a、3aを有し、方形かつ同形で、一対の容器部材2、3からなり、さらに、容器部材2、3には管2c、3cが接続されている容器について説明する。
【0019】
これら、一対の容器部材2、3は、金属線5、5a、5b、5cをフランジ面に間に挟んでいる。容器部材2、3は、フランジ2a、3aにそれぞれに穿設された複数の孔2b、3bにボルト4を挿入し、ボルト4とナット4aで、強く金属線5、5a、5b、5cを圧締めし、容器部材2、3を連結している。各金属線の端部は、容器部材2、3の外に突出し、フランジ3aに沿って、折り込まれ、フランジ3aに引っ掛かっている。
【0020】
これにより、容器部材2、3は密閉シールされ、内部は真空さらに1.0MPa未満の加圧圧力にも十分耐える密閉空間1aを有する。従って、金属製容器1内部の密閉空間1aを真空にすること、加圧すること、或いは、外気と遮断し、蒸気などの気体、薬品などの液体、固体を移動させることができる。内部を移動する物質の特性に合わせ、金属線5の素材は、本発明の技術的範囲内において、適宜選択することで、腐食などの金属線5、5a、5b、5cの劣化に耐え、密閉性を維持することができる。管同士の連結においても同じ。
【0021】
図4は、図3の矢印A−A位の平面図である。容器部材3のフランジ上面の略平坦面に内部3dを囲むように、4本の金属線5、5a、5b、5cが、その各端部5dをフランジ3a外に突出するように配置されている。また、各金属線5、5a、5b、5cは、それぞれ隣り合う金属線と交差し、交差部5e(点線円)を形成する。
【0022】
交差部5eは、フランジ2a、3aに潰され、フランジ2a、3aより軟質な金属線は、変形し、フランジ2a、3a、及び金属線同士が密着し、フランジ2a、3aをシールし、金属容器1の内部に密閉空間1aを密封する。
【0023】
また、孔3bは、ボルト4、ナット4aにより、均一にフランジ2a、3aを圧締めでくるように、フランジ3a全周に渡り複数、均等間隔で穿設されている。金属線5、5a、5b、5cは、複数の孔3bから内部3d側に位置し、内部3dとボルト4を遮断している。
【0024】
これにより、内部3dの物質とボルト4が化学反応しない。内部3dの物質との化学反応がない場合は、金属線5、5a、5b、5cは孔3bの外側に位置してもよい。なお、内部3dに存在する物質とボルト4が腐食する恐れがある場合であっても、ボルト4を耐食性のある素材を選択することで、孔3bのから内部3d側に配置することができる。
【実施例2】
【0025】
図5は、本発明の密閉シール方法を利用した金属製管のフランジ面の平面図である。ここでは、略平坦面のフランジ6aを有し、円形かつ同形の一対の金属製管6のフランジ6aを合わせてシールする場合について、一方の金属製管6のフランジ6aの平面図である図5を参照して説明する。
【0026】
フランジ6aには、内部6cを囲むように、ボルト、ナットでフランジ6a、6aを連結するため、ボルトを挿通させる孔6bが全周に渡って、均等間隔で、穿設されている。
【0027】
金属線7は、1本の線状で、フランジ6a上面の略平坦面に、孔6bより、内部6c側に、その先端7a、末端7b部を交差させ配置されている。その先端7a、末端7bは、フランジ6aが外方に突出している。
【0028】
このような状態で、もう一方の金属製管6のフランジとをボルトで圧締めし、金属線7を潰し、金属製管6、6をシール連結する。これにより、内部は真空さらに1.0MPa未満の加圧圧力にも十分耐える密閉空間を形成することができる。従って、金属製管6内部の密閉空間を真空にすること、加圧すること、或いは、外気と遮断し、蒸気などの気体、薬品などの液体、固体を移動させることができる。
【実施例3】
【0029】
図6は、本発明の密閉シール方法の他のシール方法を示す金属製管のフラン断面図である。金属製管6の実施例2の他のシール方法である。実施例2においては、1本の線状の金属線6を交差して、シールしたが、ここでは、実施例1と同様に、4本の金属線5、5a、5b、5cで、フランジ6a上面の略平坦面に、孔6bより、内部6c側に、それぞれ隣り合う金属線と交差し、交差部5e(点線円)を形成するよう配置されている。
【0030】
また、4本の金属線5、5a、5b、5cの各端部をフランジ6a外に突出するように配置されている。これにより、実施例2と同様の採用、効果を発揮する。なお、金属線は、1本、2本、3本、4本、それ以上の本数とすることができ、シールフランジの形状、ボルトを挿通する孔の位置などを考慮し、適宜選択する。2以上の金属線を使用する場合は、隣り合う金属線同士を交差させることが必要である。
【実施例4】
【0031】
図7は、本発明の密閉シール方法を利用したマイクロ波チャンバーの断面図である。マイクロ波チャンバー11は、方形の容器部材2と、同形の容器部材3と、マイクロ波13aを通す導波管13が接続された容器部材2、3の間に配置する方形の金属製の連結管12と、容器部材2から容器部材3まで挿通する吸着材15がその中を移動する円筒の誘電体管14と、容器部材2、3に接続し、誘電体管14を一定の長さまで、覆いマイクロ波13aの外部漏洩を防止する減衰管16、16からなり、ガスの吸着回収に使用されるチャンバーである。
【0032】
また、容器部材2と連結管12、及び容器部材3と連結管12は、本発明である金属製容器又は金属製管の密閉シール方法、即ち実施例1〜3に示すシール方法により、密閉シールされている。
【0033】
フランジ2a、12aと、フランジ3a、12bは、金属線5、5a、5b、5cを挟み、ボルト4、ナット4aにより、圧締めされ、金属線を潰し、それぞれ連結されている。これにより、密閉空間11aを形成する。容器部材2、3、連結管12は、アースを取らなくとも電位差がなく、マイクロ波13aによる火花放電がない。従って、マイクロ波チャンバー11を一体として成型する必要がなくなる。
【0034】
なお、吸着材15は、例えば、絶縁体で被覆された粒状の活性炭で、誘電体管14の中を移動し、マイクロ波照射によって加熱される。この吸着材15にはVOCなどのガスが吸着しており、マイクロ波で加熱されることで、吸着ガスは脱離しガラス製チューブに流されるキャリアガスによって系外に排出され、そこで冷却されて、凝集し溶剤が回収される。
【0035】
誘電体管14は、例えばガラス製チューブで、マイクロ波を通過させ、それ自体マイクロ波を吸収せず、加熱されない。
【0036】
マイクロ波チャンバー11を貫通する誘電体管14であるガラス製チューブには金属製の減衰管16が、マイクロ波チャンバー11と誘電体管14の全周にわたって電気的に接続されているように配置されている。
【0037】
減衰管16の中を通過して外部に出ようとするマイクロ波13aは、ガラス製チューブ内のマイクロ波吸収率の高い吸着材を通過することによって十分に減衰し、外部にマイクロ波が漏洩することは無い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の密閉シール方法を利用した金属製容器の側面図である。
【図2】本発明の密閉シール方法を利用した金属製容器の断面図である。
【図3】本発明の密閉シール方法を利用した金属製容器の分解断面図(密閉シール前)である。
【図4】図3の矢印A−A位の平面図である。
【図5】本発明の密閉シール方法を利用した金属製管のフランジ面の平面図である。
【図6】本発明の密閉シール方法の他のシール方法を示す金属製管のフラン断面図である。
【図7】本発明の密閉シール方法を利用したマイクロ波チャンバーの断面図である。
【図8】従来のガスケットを使用したシール面の図である。
【符号の説明】
【0039】
1 金属製容器
1a 密閉空間
2 容器部材
2a フランジ
2b 孔
2c 管
3 容器部材
3a フランジ
3b 孔
3c 管
3d 内部
4 ボルト
4a ナット
5 金属線
5a 金属線
5b 金属線
5c 金属線
5d 端部
5e 交差部
6 金属製
6a フランジ
6b 孔
6c 内部
7 金属線
7a 先端
7b 末端
8 金属製容器
8a 密閉空間
9 容器部材
9a フランジ
10 容器部材
10a フランジ
11 マイクロ波チャンバー
11a 密閉空間
12 連結管
12a フランジ
12b フランジ
13 導波管
13a マイクロ波
14 誘電体管
15 吸着材
16 減衰管
17 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ面が略平坦で、嵌合する一対の金属製の容器又は管のフランジ間に、金属線を配置し、ナット及びボルト又はクランプで圧締し、金属線を潰し、シールすることを特徴とする金属製容器又は金属製管の密閉シール方法。
【請求項2】
前記金属線が、金属製容器或いは金属製管のフランジ部より、軟質であることを特徴とする請求項1に記載の金属製容器又は金属製管の密閉シール方法。
【請求項3】
前記金属線が、その表面に表面張力調整剤が塗布されていない半田であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属製容器又は金属製管の密閉シール方法。
【請求項4】
前記金属線の先端と末端を重ね合わせて圧締めすることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の金属製容器又は金属製管の密閉シール方法。
【請求項5】
前記金属線を複数に分断し、隣り合う金属線を重ねて圧締することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の金属製容器又は金属製管の密閉シール方法。
【請求項6】
前記金属線の端部を金属製容器、又は金属製管外に突出させて配置することを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の金属製容器又は金属製管の密閉シール方法。
【請求項7】
前記金属線の突出端部を、フランジに折り込み、固定したことを特徴とする請求項6に記載の金属製容器又は金属製管の密閉シール方法。
【請求項8】
前記容器が、マイクロ波導波管と連結したマイクロ波チャンバーであることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れかに記載の金属製容器又は金属製管の密閉シール方法を用いたマイクロ波チャンバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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