説明

金属製真空断熱容器

【課題】外底側とその保護板との間に隙間が生じないようにする。
【解決手段】真空断熱容器1は、内容器と外容器7の間の空隙を真空排気し、排気孔を封止材で封止して真空断熱層9を形成し、封止材11の外側に保護板13を設ける。外筒部5の外側面の塗装層15、外底板部6の外側面の塗装層16、保護板13の外側面の塗装層17を設ける。凹部12の面と保護板13の僅かな隙間A,Bに隙間塗装層18,19を充填する。真空断熱容器1を水洗するときなどにおいて水分が封止材若しくは凹部12側に浸入することが隙間塗装層18,19によって阻止され、封止材若しくは凹部12の金属腐食、さらには腐食による断熱性能の低下をより完全に防ぐことができる。塗装工程によって保護板13の外側面の塗装層17に、隙間塗装層18を介して外底板部6に密着した塗装層16が接続され、かつ凹部12の面に密着した隙間塗装層19が接続されることにより、保護板13が外底板部6に強固に密着することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の内容器と外容器を有し、これら両者間を真空断熱層とした金属製真空断熱容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは内容器と外容器の口部相互を一体化し、そして外容器の例えば底部に排気穴を設けるとともに、この排気穴を介して空気を排気した後に封止材を介して排気孔を封止することで内容器と外容器間を真空断熱層としている。
【0003】
そして、外観性や取扱性が損なわれるため、底部の全体を下側から覆う底カバーが、外本体の底部側の外装体としてさらに嵌合しているものが知られている。
【0004】
また、底カバーに代えて封止材の外側を保護板で覆うものも知られている。このようなものでは、封止材を設けた真空断熱容器本体の外面を塗装し、そして、塗装を施した保護板を封止材の外側に接着していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−316729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の金属製真空断熱容器の底カバーの嵌合では、真空断熱容器の丸洗いのときに底カバーと外容器の間、或いは外底と保護板の間に水がわずかな隙間を通して浸入して、封止材や底部が金属腐食するおそれがあり、このような場合腐食が真空断熱層まで達すれば真空破壊による断熱性能低下のおそれがある。
【0007】
解決しようとする問題点は、外容器に設けられる封止孔を封止する封止材若しくは底部などを、外観性や取扱性が損なわれないように保護板で覆うようにする金属製真空断熱容器において、封止材側と保護板との間に僅かな隙間でも生じないようにする点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明の金属製真空断熱容器は、金属製の内容器と外容器とをそれぞれ口部を一体化して二重壁構造としてなるとともに、前記内容器と外容器の間の空隙を真空排気して、その排気孔を封止材で封止して真空断熱容器本体を形成し、前記封止材の外側に保護板を覆うように設けた金属製真空断熱容器において、前記保護板と前記封止材の間の保護板の内側に接着剤層を設け、前記保護板と前記断熱容器本体の隙間に塗装層を設けることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明の金属製真空断熱容器は、金属製の内容器と外容器とをそれぞれ口部を一体化して二重壁構造としてなるとともに、前記内容器と外容器の間の空隙を真空排気して、その排気孔を封止材で封止して真空断熱容器本体を形成し、前記封止材の外側に保護板を覆うように設けた金属製真空断熱容器において、前記保護板と前記封止材の間に前記保護材からはみ出すように接着剤層を設け、該はみ出した接着剤層の上に非透過性の塗装層を設けることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記封止材はろう材であって、該ろう材の外側表面は、前記保護板の密着面と同じ位置、或いは前記保護板の密着面よりも内側の深い位置に設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記真空断熱層内に設けられるゲッターは、前記保護板が接着される前記容器の前記保護板の接着面と対向する範囲内に溶接されることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記保護板は金属製であることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記接着剤層の耐熱温度を100℃以上とすることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記塗装層が粉体塗装層であることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記塗装層が液体塗装を複数重ねた複数層からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、保護板と封止材間の隙間に設けられる塗装層により、保護板による封止材の防水性・防錆性を簡単に向上させることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、保護板と封止材間の隙間にはみ出して設けられる塗装層により、保護板による封止材の防水性を簡単に向上させることができるとともに、保護板の接着面積を可及的に広くすることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、ろう材の外側表面が、前記保護板の密着面と同じ位置、或いは前記保護板の密着面よりも内側の深い位置に設けられることで、排気孔を確実に封止することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、ゲッターは、保護板の接着面よりも内側に溶接されることで、ゲッターの取り付け跡を隠すことができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、金属製保護板により封止材を確実に保護することができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、接着剤層の耐熱温度を100℃以上とすることで、熱湯により洗浄しても保護板が外れるようなことはない。
【0022】
請求項7の発明によれば、1回あたり塗装を比較的厚い塗装層に形成することができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、1回あたりの比較的薄い塗装層を積み重ねて形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1を示す全体縦断面図である。
【図2】同要部の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施例2を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の実施例3を示す全体縦断面図である。
【図5】同要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0026】
図1〜2は実施例1を示しており、金属製真空断熱容器1としてのカップは、内筒部2の底に内底板部3を有する内容器4と、外筒部5の底に外底板部6を有する外容器7とを、それぞれの広口の上部口部8を接合したものであり、内容器4と外容器7はそれぞれステンレス鋼、例えば18−8ステンレス鋼によって形成されている。そして、内容器4と外容器7との間隙は真空断熱層9が形成されているものであり、これは円形をなした外底板部6の中央に形成され内外を連通した排気孔10を介して内容器4と外容器7の間隙を排気した後、排気孔10を封止材11である、例えばSn又はSnとAg、Cu、Ni、Bi或いはZnの合金からなる金属ろう材或いはガラスろう材で封止したものである。
【0027】
前記排気孔10は小孔状であって、この排気孔10の周囲は排気孔10を中心とした平面円形であって、真空断熱層9側に浅底状の凹部12に形成されている。この凹部12は内側(真空断熱層9側)が外側よりも径小に形成されるように複数段、実施例では3段形成されたものであり、排気孔10を中心とした平面円形の内側凹部12Aには封止材11が収容されており、内側凹部12Aの外側に同心円状に配置される中間凹部12Bは平面を円環状であり、さらにその外側に同心円状に配置される外側凹部12Cは円環状であって、その下向きの外周縁12Dは排気孔10を中心として下方に向かうにしたがい径大になるようにテーパ面に形成されている。
【0028】
そして、外側凹部12Cに遊嵌して金属製、実施例ではステンレス鋼、例えば18−8ステンレス鋼製の保護板13が設けられる。この保護板13は、封止材11によって断熱容器1の底側の外観性や取扱性が損なわれないように少なくとも封止材11を中間凹部12Bによる空隙を介して覆うものであって、平面が円形な薄い平板状である。保護板13の外周縁13Aは封止材11全体を覆うように封止材11の外周縁11Aよりも広い範囲に配置されており、保護板13の外周縁13A側の内側面、すなわち真空断熱層9側の面は、外側凹部12Cの面に接着層14を介して密着しており、一方保護板13の下向きになっている外側面は外側凹部12Cの内側に配置されている。
【0029】
そして、外筒部5の外側面、外底板部6の外側面、保護板13の外側面にそれぞれ塗装層15,16,17を設ける。これら塗装層15,16,17は同じ塗装工程で連続して形成されるものであり、このため外底板部6の外側面の塗装層16及び保護板13の外側面の塗装層17が塗装される工程で、外側凹部12Cの外周縁12Dと保護板13の外周縁13Aとの第一の隙間A、さらにはその奥の外側凹部12Cの面と保護板13の内側面との第二の隙間Bに塗料が入り込んで充填された後に成膜される。この結果第一の隙間Aに塗料が溜まるように、塗装層16と塗装層17との間に介在する第一の隙間塗装層18が設けられ、さらに第二の隙間Bに塗料が溜まるように、第一の隙間塗装層18と接着層14の外周縁14Aとの間に介在する第二の隙間塗装層19が設けられる。
【0030】
実施例では表面が大気開放の前記塗装層15,16,17及び隙間塗装層18,19は、膜厚Cが30〜150μm程度の粉体塗料による焼付け塗装によって形成される。このため接着層14に用いられる接着剤の耐熱温度は100℃以上であって、粉体塗料の焼付け温度よりも高温のものにより形成される。実施例では一般的に粉体塗料による焼付け塗装の焼付け温度は190〜220℃であるので、接着層14を例えば耐熱性の高い接着性ポリオレフィン(溶融温度220〜240℃)などが用いられている。尚、粉体塗装は、塗料中に有機溶剤や水などの溶媒を用いず塗膜形成成分のみにて配合されている粉末状塗料を用い、その塗装方法は、塗料の供給、搬送及び塗装の手段として加圧空気を利用し、静電粉体塗装法、流動浸漬法を中心とした塗装が行われている。静電粉体塗装法は、粉体状態の塗装時から加熱を経て焼付けを行い、そして脱気、平滑可硬化反応を経て成膜されるものである。特に、液体塗装に比べ粉体塗装は一度に塗装できる膜厚Cが例えば30〜150μm程度と厚く、塗装工程が一回でも十分な膜厚を確保することができるため、粉体塗装は保護板13の接着強度の向上及び生産効率の向上に有用な塗装である。尚、粉体塗装においては一度に塗装できる薄い膜厚は25〜35μm程度、一度に塗装できる厚い膜厚は予熱方法を採用することで300〜2,000μmとすることができる。
【0031】
尚、外底板部6の真空断熱層9側の面にゲッター20がスポット溶接など溶接部20Aを介して装着しており、このゲッター20は真空断熱層9の内面から発生するガスを吸着する。そして、保護板13で溶接部20Aの跡が隠れるようにゲッター20の取り付け位置は、平面視で保護板13の接着層14による接着面よりも内側に溶接されている。また、外側面塗装層16、外側面塗装層17、第一の隙間塗装層18、第二の隙間塗装層19などを塗装するときには、外底板部6を上向きとして塗装がなされ、口元が最外径より小さくなっている。厚くなった塗装層15に口を付けずに、ステンレス鋼の上部口部8に口を付けて直接飲料を飲むことができ飲む際に厚くなった塗装層による不快感を感じないようになっている。
【0032】
次に前記構成についてその作用を説明する。断熱容器1に収容された湯又は冷水などは、これを囲むように設けられた真空断熱層9によって保温又は保冷される。
【0033】
そして、容器全体を湯などで水洗するような場合、水が隙間A,Bを通って封止材11若しくは凹部12まで浸入しようとしても、隙間A,Bに設けられている隙間塗装層18,19により水の浸入が阻止されて、封止材11の腐食を防止できる。
【0034】
以上のように、前記実施例では内容器4と外容器7の間の空隙を真空排気し、排気孔10を封止材11で封止して真空断熱層9とし、封止材11の外側に保護板13を設けた金属製真空断熱容器1において、外底板部6における外側凹部12Cと保護板13との間で、接着層14の外周縁14Aに対向するように、凹部12における外側凹部12Cの面と保護板13の僅かな隙間A,Bに隙間塗装層18,19を充填することで、真空断熱容器1を水洗するときなどにおいて水分が封止材11若しくは凹部12側に浸入することが阻止され、封止材11若しくは凹部12の金属腐食、さらには腐食による断熱性能の低下をより完全に防ぐことができる。また、塗装工程によって保護板13の外側面の塗装層17に、第一の隙間塗装層18を介して外底板部6に密着した塗装層16が接続され、かつ凹部12の面に密着した第二の隙間塗装層19が接続されることにより、保護板13が外底板部6に強固に密着することができる。
【0035】
また、前記封止材11はろう材であって、該ろう材の外側表面は、保護板13の接着層14によって形成される密着面より奥側、すなわち深い位置に設けられることで、排気孔10を確実に封止することができる。
【0036】
さらに、外側凹部12Cの真空断熱層9側に溶接部20Aを介して設けられるゲッター20は、保護板13の接着面よりも内側に溶接されることで、外側凹部12Cの外側にあらわれた溶接部20Aの跡を保護板13で覆って隠すことができ、美観の低下を阻止することができる。
【0037】
また、接着層14の耐熱温度を100℃以上とすることで、カップのような金属製真空断熱容器1を湯で洗浄する食器洗浄器(図示せず)に収容して洗浄する場合であっても、保護板13が外れるようなおそれはないとともに、カップのような外底板部6に接着層14を介して保護板13を設けた場合、商品の耐熱性も高くなる。
【0038】
さらに、金属塗装時には温度上昇が必要のために、接着剤を溶かしてしまい保護板の位置ずれや外れが発生するおそれがあり、また、塗装済みの保護板を塗装後に接着する場合、接着剤の融点が高いと接着時に塗装が変色する。そして、接着剤の融点が低い場合は、商品の耐熱性が低くなってしまうため、保護板の接着のための生産条件を確立するのが困難である。しかしながら、接着剤に融点の高い材料を使用することで生産条件を確立することができる。
【0039】
特に、実施例では前記塗装層15,16,17及び隙間塗装層18,19を粉体の塗装層とすることで、一度に塗装できる膜厚を30〜150μmのように厚く形成することができ、塗装工程が一回或いは数回程度でも十分な膜厚を確保することができ、この結果粉体塗装による隙間塗装層18,19により、水密性能の向上、保護板13の接着強度の向上及び生産効率の向上を図ることができる。しかも、粉体の塗装層では塗装時の第一の隙間A、第二の隙間Bへの入り込みが均一であり、また塗料の泡立ちや不均一な溜まりの発生がない。
【0040】
また、外筒部5の外側面、外容器7の底板部の外側面、さらに保護板13の外側面に相互につながるように塗装層15、塗装層16、塗装層17、隙間塗装層18を一緒に塗装することで、外観上の同じ色で統一できデザイン性に優れ、さらに塗装層15、塗装層16などとは別に塗装層17を設ける必要はないので、製造工程を増えずに生産性を向上することができる。
【実施例2】
【0041】
以下に、他の実施例について説明する。尚、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0042】
図3は実施例2を示しており、金属製真空断熱容器1としてのカップにおける外底板部6の外側凹部12Cに遊嵌して保護板13´が設けられる。この保護板13´は、封止材11によって断熱容器1の底側の外観性や取扱性が損なわれないように覆うもので、外側凹部12Cと保護板13との間に介在する接着層14´の外周縁14´Aは、保護板13´の外周縁13´Aよりはみ出した状態で外側凹部12Cに収容されている。そして、外筒部5の外側面、外底板部6の外側面、保護板13´の外側面にそれぞれ塗装層15´,16´,17´を設けるとともに、塗装層16´と塗装層17´をつなぐために、第一の隙間Aに隙間塗装層18´が設けられる。これら塗装層15´,16´,17´,18´は、液体塗料(溶剤塗料)を使用して一回目の焼付け塗装工程を連続して下塗装層21を形成した後に、再び液体塗料を使用して下塗装層21上に二回の焼付け塗装工程を連続して仕上げ塗装となる上塗装層22を形成したものであり、このため外底板部6の外側面の塗装層16´及び保護板13´の外側面の塗装層17´のそれぞれの下塗装層21が塗装される工程で、第一の隙間Aに塗料が入り込んではみ出ている外周縁14´A上を含んで一般に120〜180℃の焼付け温度にて成膜される。この結果第一の隙間Aに塗料が溜まるように、塗装層16´の下塗装層21と塗装層17´の下塗装層21との間に介在する第一の隙間塗装層18´の下塗装層21が設けられる。再度、下塗装層21上に液体塗料を塗装し、焼付け温度にて上塗装層22を成膜する。尚、はみ出した接着層14´の外周縁14´A側を隠すように下塗装層21又は及び上塗装層22は外周縁14´Aを透過可視できないように形成されている。
【0043】
以上のように、前記実施例では凹部12における外側凹部12Cの面と保護板13´の僅かな隙間Aに隙間塗装層18´を充填することで、真空断熱容器1を水洗するときなどにおいて水分が封止材若しくは凹部12側に浸入することが阻止される。
【0044】
さらに、実施例では接着層14´の外周縁14´Aを保護板13´の外周縁13´Aより外側にはみ出すことで保護板13´の上面全域を接着面とすることができるものの、前記はみ出た接着層14´では塗料溜りが発生して外観が劣るが、その箇所に隙間塗装層18´を設けることで、その外観の美観の低下を阻止することができる。
【0045】
しかも、塗装層15´,16´,17´,18´は、下塗装層21に上塗装層22を設けるように2重、さらには3重、4重のように複数層にすることで、下塗装層21では外周縁13´Aまわりの外観が悪いが、重ねて上塗装層22を設けるようにすることで、外観の低下を阻止することができる。
【実施例3】
【0046】
図4〜5は実施例3を示しており、金属製真空断熱容器1´として魔法瓶などの飲料用容器を示しており、内容器4、外容器7の狭口の上部口部8相互を接合した断熱容器1´の外容器7の外底板部6に設けられる平面が円形の凹部12は、複数、実施例では2段に設けられており、中央部に奥深い内側凹部12A、その外側に外側凹部12Cが設けられており、この第三の凹部12の外側縁12Aが外底板部6に連続している。
【0047】
そして、内側凹部12Aの中心に設けられた排気孔10を封止するように封止材11が設けられており、外側凹部12Cに封止材11を覆うように保護板13´´が設けられている。保護板13´´は外側凹部12Cの面に、保護板13´´と平面がほぼ同じ大きさの接着層14´´により密着している。尚、接着層14´´としては保護板13´´と一体な貼り付け用のものである。
【0048】
そして、外筒部5の外側面、外底板部6の外側面、さらに保護板13´´の外側面には、同一の粉体塗装工程によって形成された塗装層15´´,16´´,17´´が設けられるとともに、外底板部6の塗装層16´´と保護板13の塗装層17´´は、保護板13´´の外周縁13´´Aと外側凹部12Cの外周縁12Dとの隙間に溜まった隙間塗装層23を介して接続している。
【0049】
したがって、実施例1と同様に、断熱容器1´を水洗するときなどにおいて水分が隙間塗装層23によって内側凹部12A側に浸入することが阻止され、封止材11若しくは凹部12の金属腐食、さらには腐食による断熱性能の低下をより完全に防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように本発明に係る金属製真空断熱容器は各種の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 断熱容器
4 内容器
7 外容器
8 上部口部
9 真空断熱層
10 排気孔
11 封止材
13 保護板
14 14´ 14´´ 接着層
18 18´ 19 23 隙間塗装層
20 ゲッター
21 下塗装層
22 上塗装層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の内容器と外容器とをそれぞれ口部を一体化して二重壁構造としてなるとともに、前記内容器と外容器の間の空隙を真空排気して、その排気孔を封止材で封止して真空断熱容器本体を形成し、前記封止材の外側に保護板を覆うように設け、外面の一部または全体を塗装する金属製真空断熱容器において、前記保護板と前記封止材の間の保護板の内側に接着剤層を設け、前記保護板と前記断熱容器本体の隙間に塗装層を設けることを特徴とする金属製真空断熱容器。
【請求項2】
金属製の内容器と外容器とをそれぞれ口部を一体化して二重壁構造としてなるとともに、前記内容器と外容器の間の空隙を真空排気して、その排気孔を封止材で封止して真空断熱容器本体を形成し、前記封止材の外側に保護板を覆うように設けた前記請求項1の金属製真空断熱容器において、前記保護板と前記封止材の間に前記保護材からはみ出すように接着剤層を設け、該はみ出した接着剤層の上に非透過性の塗装層を設けることを特徴とする金属製真空断熱容器。
【請求項3】
前記封止材はろう材であって、該ろう材の外側表面は、前記保護板の密着面と同じ位置、或いは前記保護板の密着面よりも内側の深い位置に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の金属製真空断熱容器。
【請求項4】
前記真空断熱層内に設けられるゲッターは、前記保護板が接着される前記容器の前記保護板の接着面と対向する範囲内に溶接されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属製真空断熱容器。
【請求項5】
前記保護板は金属製であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属製真空断熱容器。
【請求項6】
前記接着剤層の耐熱温度を100℃以上とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属製真空断熱容器。
【請求項7】
前記塗装層が粉体塗装層であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属製真空断熱容器。
【請求項8】
前記塗装層が液体塗装を複数重ねた複数層からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属製真空断熱容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−493(P2013−493A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137196(P2011−137196)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(591261602)サーモス株式会社 (76)
【Fターム(参考)】