説明

金属認識装置を備えた書類細裁機

本発明は、書類細裁機であって、該書類細裁機の紙引込み装置に送り込まれた金属製の対象物を検出するための装置と、回転する裁断工具を備えた裁断機構と、裁断工具を駆動するためのモータと、該モータを、回転する裁断工具に結合するための伝動装置とが設けられている形式のものに関する。本発明によれば、前記書類細裁機の裁断機構の、回転する裁断工具を取り囲むほぼ全ての金属製の構成部材と、モータと、伝動装置とが、互いに導電的に接続されていて、規定された共通の電位にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.使用分野
本発明は、書類細裁機、特に金属認識装置を備えた書類細裁機であって、該書類細裁機の紙引込み装置に送り込まれた金属製の対象物を検出するための装置と、回転する裁断工具を備えた裁断機構と、裁断工具を駆動するためのモータと、該モータを、回転する裁断工具に結合するための伝動装置とが設けられている形式のものに関する。
【0002】
II.技術的な背景
紙供給装置に送り込まれた金属部材、たとえばクリップ、ステープルまたはこれに類するものによる裁断機構の損傷を回避するために、数多くの書類細裁機は、今日、金属認識装置を有している。この金属認識装置は、通常、センサ装置を有している。このセンサ装置は、紙供給装置に送り込まれた金属に反応し、金属部材が裁断機構の裁断エレメントに接触する前に書類細裁機の裁断機構および/または紙供給装置を停止させる。
【0003】
金属認識する相応のセンサ装置の根底にある機能形式は、金属の検知/検出のために一般的に使用される方法、たとえば誘導に基づいたパルス測定または交流測定に基づいている。
【0004】
検知したい金属製の対象物の小さなサイズと、発生させられる小さな信号高さとに基づき、実際、公知先行技術による書類細裁機では、信号対雑音比(SN比)が極めて小さく、これによって、小さな金属部材の確実な認識が与えられていないという問題が生じる。
【0005】
III.発明の開示
a)技術的な課題
したがって、本発明に係る課題は、すでに紙供給装置に送り込まれた小さな金属部材にも確実に反応する、金属認識のためのセンサ装置を備えた書類細裁機を提供することである。
【0006】
b)課題の解決手段
この課題を解決するために本発明に係る書類細裁機では、前記書類細裁機の裁断機構の、回転する裁断工具を取り囲むほぼ全ての金属製の構成部材と、モータと、伝動装置とが、互いに導電的に接続されていて、規定された共通の電位にあるようにした。
【0007】
本発明に係る書類細裁機の有利な態様によれば、前記書類細裁機の回転する裁断工具が、さらにまた、前記書類細裁機の裁断機構の、回転する裁断工具を取り囲む金属製の構成部材と、モータと、伝動装置とに導電的に接続されていて、前記規定された共通の電位にある。
【0008】
本発明に係る書類細裁機の有利な態様によれば、前記規定された共通の電位が、アース電位である。
【0009】
本発明に係る書類細裁機の有利な態様によれば、回転する裁断工具と、裁断機構の、裁断工具に対して平行に軸方向に配置された金属製の構成部材とが、裁断工具の軸方向の両端部でそれぞれ互いに導電的に接続されている。
【0010】
本発明に係る書類細裁機の有利な態様によれば、裁断工具の軸方向の両端部に導電性のエンドプレートが存在しており、該エンドプレートが、回転する裁断工具と、裁断機構の、裁断工具に対して平行に軸方向に配置された金属製の構成部材とを互いに導電的に接続している。
【0011】
本発明に係る書類細裁機の有利な態様によれば、前記エンドプレートの一方が、伝動装置のハウジング壁によって形成されるようになっている。
【0012】
本発明に係る書類細裁機の有利な態様によれば、モータが、伝動装置の、前記エンドプレートの一方を成す前記ハウジング壁に導電的に取り付けられている。
【0013】
本発明に係る書類細裁機の有利な態様によれば、回転する裁断工具と、裁断機構の、定置に配置された金属製の構成部材との導電的な接続が、擦り接触を介して行われるようになっている。
【0014】
本発明に係る書類細裁機の有利な態様によれば、裁断機構が、金属製のスペーサを有しており、該スペーサが、裁断工具の軸方向で見て、該裁断工具に対して平行に配置されており、スペーサが、掻取りエレメントを有しており、該掻取りエレメント内に裁断工具のカッタが、運転中に部分的に係合するようになっており、掻取りエレメントが、スペーサと、回転する裁断工具との間に電気的な擦り接触を発生させるように形成されている。
【0015】
本発明によれば、センサ装置に生じる信号対雑音比は、雑音抑圧のために、裁断機構のほぼ全ての金属製の構成部材、特に裁断機構の、回転する裁断工具を場合により取り囲む金属部材、たとえば案内金属薄板、スペーサまたはこれに類するものが、書類細裁機を運転する電動モータおよびモータと裁断工具とを機械的に結合する伝動装置構成部材と一緒に、規定された共通の電位に置かれることによって改善される。このことは、有利には、これらの構成部材の相応に導電的な接続によって行われる。
【0016】
こうして、回転する裁断工具を取り囲む金属製の構成部材が一種のファラデーケージを形成していることを達成することができる。このファラデーケージは、回転する裁断工具と定置の金属認識センサとの間の相対運動に基づき発生させられる雑音信号を最小限に抑える。
【0017】
有利には、さらに、回転する裁断工具自体も、前述した構成部材と一緒に、規定された共通の電位に置かれる。したがって、センサ信号に与えられる、一般的に金属から成る運動させられる裁断工具の妨害影響を一層減少させることができる。
【0018】
有利には、共通の電位がアース電位である。
【0019】
特に回転する裁断工具と、裁断機構の、裁断工具に対して平行に軸方向に配置された、この裁断工具を場合により少なくとも部分的に取り囲む金属製の構成部材、たとえば案内金属薄板またはスペーサとが、裁断工具の軸方向の両端部でそれぞれ互いに導電的に接続されていてよく、これによって、ここに、環状接続が得られる。
【0020】
裁断機構の個々の構成部材、すなわち、回転する裁断工具、案内金属薄板、スペーサ等の間の電気的な接続を形成するためには、たとえば裁断工具の軸方向の両端部に導電性のエンドプレートが設けられていてよい。両エンドプレートには、個々のエレメント、たとえば案内金属薄板、スペーサまたはこれに類するものを伝導的に定置に取り付けることができるかまたは回転する裁断工具を導電的に支承することができる。導電性のエンドプレートとして、金属プレートのほかに、導電性の複合材料、たとえば炭素繊維複合材から成るプレートも可能である。
【0021】
両エンドプレートの一方は、モータと裁断工具との間に作用する伝動装置のハウジング壁を同時に形成することができ、これによって、この一方のエンドプレートを共通の電位への相応の伝動装置構成部材の電気的な接続のために使用することもできる。有利には、この一方のエンドプレートに直接モータブロックが取り付けられていてもよく、これによって、エンドプレートを介して共通の電位への電気的な接続も行われる。
【0022】
エンドプレートへの回転する裁断工具の導電的な支承は、たとえば擦り接触またはこれに類するものを介して達成することができる。択一的または付加的には、導電的な擦り接触が、回転する裁断工具と、この裁断工具を取り囲む構成部材との間に発生させられてもよい。このことは、有利には、スペーサに配置されたスクレーパによって行うことができる。このためには、通常、裁断工具に位置する紙残分を掻き取るために働くスクレーパが、たとえば炭素ブラシを有していてもよく、これによって、回転する裁断工具との導電的な擦り接触が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の基本思想の概略的な回路図である。
【図2】本発明を実現する書類細裁機の裁断機構の斜視図である。
【図3】図2に示した実施の形態の分解図である。
【0024】
c)実施の形態
本発明の有利な実施の形態を以下に図面につき例示的に詳しく説明する。
【0025】
図1には、本発明の基本思想の概略的な電気的な回路図が示してある。この回路図には、書類細裁機の、本発明に対して重要な構成部材だけが、すなわち、裁断機構1と、モータMと、このモータMと裁断機構1とを機械的に結合する伝動装置Gとが示してある。
【0026】
書類細裁機の裁断機構1は、図示の形態では、回転する2つの裁断工具2を有している。両裁断工具2は、書類細裁機において慣用であるように、2つの裁断ローラである。両裁断ローラの、互いに向かい合って位置する周壁面は、カッタを備えている。このカッタの間には、細断したい材料がガイドされ、カッタによって、材料が小さな裁ち屑に切り刻まれる。
【0027】
裁断工具2に対して平行に配置されて、この裁断工具2の両側にそれぞれ1つの金属製のスペーサ3と1つの案内金属薄板4とが延びている。
【0028】
裁断工具2の一方の端部では、裁断工具2と、スペーサ3と、案内金属薄板4とが、第1のエンドプレート5を介して互いに導電的に接続されている。裁断工具2の他方の端部では、裁断工具2と、スペーサ3と、金属薄板4とが、第2のエンドプレート6を介して互いに導電的に接続されている。
【0029】
この第2のエンドプレート6は線路7を介してアースに接続されている。さらに、モータMだけでなく、裁断機構1をモータMに機械的に結合する伝動装置Gも線路7に接続されており、これによって、モータMと、伝動装置Gと、回転する裁断工具2と、スペーサ3と、案内金属薄板4と、ひいては、裁断機構1のほぼ全ての金属製の構成部材とがアース電位にある(接地されている)。
【0030】
図2には、書類細裁機の、本発明に対して重要な構成部材、すなわち、モータM、伝動装置Gおよび裁断機構1の斜視図が示してある。
【0031】
裁断機構1は、従来のローラとして形成された両裁断工具2を有している。両裁断工具2は両方のスペーサ3と案内金属薄板4とによって部分的に取り囲まれている。裁断工具2によって裁断したい材料は、裁断工具2に上方からスペーサ3の間で供給される。
【0032】
裁断工具2と、スペーサ3と、金属薄板4とは、伝動装置Gを収容するハウジングと、図示の形態ではプラスチックから成る支承プレート8との間に軸方向で配置されている。
【0033】
図3に示した分解図から知ることができるように、この支承プレート8と、裁断工具2、スペーサ3および金属薄板4との間には、一方のエンドプレート5が配置されている。このエンドプレート5は導電性の金属から成っていて、裁断工具2と、スペーサ3と、案内金属薄板4とを互いに導電的に接続している。支承プレート8は、図面をより見やすくする理由から図示していない。このことは、伝動装置Gにも当てはまる。
【0034】
支承プレート8と反対の側に位置する端部では、裁断工具2と、スペーサ3と、案内金属薄板4とが第2のエンドプレート6に導電的に接続されている。この第2のエンドプレート6は、伝動装置Gを収容するハウジングのハウジング壁を同時に成している。第2のエンドプレート6も導電性の材料から成っている。
【0035】
モータMも第2のエンドプレート6に導電的に接続されており、これによって、裁断工具2と、スペーサ3と、案内金属薄板4と、モータMと、伝動装置Gとが共通の電位にある。図示の実施の形態では、エンドプレート6が線路(図示せず)を介してアースに接続されており、これによって、共通の電位がアース電位によって形成される。
【0036】
図示の実施の形態では、スペーサ3が、それぞれ軸方向にわたって分配された複数の切欠き31を有している。これらの切欠き31は掻取りエレメントとして作用する。また、切欠き31内には、書類細裁機の運転中に裁断工具2の裁断エレメントが部分的に係合する。回転する裁断工具2とスペーサ3との間の電気的な接触をさらに一層改善するために、本発明では、両エレメントの間に電気的な擦り接触が存在している。
【符号の説明】
【0037】
1 裁断機構
2 裁断工具
3 スペーサ
4 案内金属薄板
5 第1のエンドプレート
6 第2のエンドプレート
7 線路
8 支承プレート
G 伝動装置
M モータ
31 スペーサに設けられた切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書類細裁機であって、
・該書類細裁機の紙引込み装置に送り込まれた金属製の対象物を検出するための装置と、
・回転する裁断工具(2)を備えた裁断機構(1)と、
・裁断工具(2)を駆動するためのモータ(M)と、
・該モータ(M)を、回転する裁断工具(2)に結合するための伝動装置(G)とが設けられている形式のものにおいて、
前記書類細裁機の裁断機構(1)の、回転する裁断工具(2)を取り囲むほぼ全ての金属製の構成部材(3,4,5,6)と、モータ(M)と、伝動装置(G)とが、互いに導電的に接続されていて、規定された共通の電位にあることを特徴とする、書類細裁機。
【請求項2】
前記書類細裁機の回転する裁断工具(2)が、さらにまた、前記書類細裁機の裁断機構(1)の、回転する裁断工具(2)を取り囲む金属製の構成部材(3,4,5,6)と、モータ(M)と、伝動装置(G)とに導電的に接続されていて、前記規定された共通の電位にある、請求項1記載の書類細裁機。
【請求項3】
前記規定された共通の電位が、アース電位である、請求項1または2記載の書類細裁機。
【請求項4】
回転する裁断工具(2)と、裁断機構(1)の、裁断工具(2)に対して平行に軸方向に配置された金属製の構成部材(3,4)とが、裁断工具(2)の軸方向の両端部でそれぞれ互いに導電的に接続されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の書類細裁機。
【請求項5】
裁断工具(2)の軸方向の両端部に導電性のエンドプレート(5,6)が存在しており、該エンドプレート(5,6)が、回転する裁断工具(2)と、裁断機構(1)の、裁断工具(2)に対して平行に軸方向に配置された金属製の構成部材(3,4)とを互いに導電的に接続している、請求項4記載の書類細裁機。
【請求項6】
前記エンドプレートの一方(6)が、伝動装置(G)のハウジング壁によって形成されるようになっている、請求項5記載の書類細裁機。
【請求項7】
モータ(M)が、伝動装置(G)の、前記エンドプレートの一方(6)を成す前記ハウジング壁に導電的に取り付けられている、請求項6記載の書類細裁機。
【請求項8】
回転する裁断工具(2)と、裁断機構(1)の、定置に配置された金属製の構成部材(3,4,5,6)との導電的な接続が、擦り接触を介して行われるようになっている、請求項1から7までのいずれか1項記載の書類細裁機。
【請求項9】
裁断機構(1)が、金属製のスペーサ(3)を有しており、該スペーサ(3)が、裁断工具(2)の軸方向で見て、該裁断工具(2)に対して平行に配置されており、スペーサ(3)が、掻取りエレメント(31)を有しており、該掻取りエレメント(31)内に裁断工具(2)のカッタが、運転中に部分的に係合するようになっており、掻取りエレメント(31)が、スペーサ(3)と、回転する裁断工具(2)との間に電気的な擦り接触を発生させるように形成されている、請求項8記載の書類細裁機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−506540(P2013−506540A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531287(P2012−531287)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006032
【国際公開番号】WO2011/042139
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(595179631)
【氏名又は名称原語表記】Hermann SCHWELLING
【住所又は居所原語表記】Hartmannweg 5, D−88682 Salem, Germany
【Fターム(参考)】