金属酸化物または金属水酸化物からマイクロ波照射により金属微粒子を製造する方法および製造装置
【課題】金属微粒子を金属酸化物または水酸化物から経済的に製造する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒にマイクロ波を照射して加熱することにより金属微粒子を製造する方法であって、該有機溶媒がマイクロ波を吸収し易い有機溶媒とマイクロ波を吸収し難い有機溶媒の混合溶媒からなり、該混合溶媒中に金属酸化物または金属水酸化物の金属元素に対し等モル量以下の有機修飾剤を含有する金属微粒子の製造方法。
【効果】短時間で単分散のナノサイズの金属微粒子が製造できる。
【課題を解決するための手段】金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒にマイクロ波を照射して加熱することにより金属微粒子を製造する方法であって、該有機溶媒がマイクロ波を吸収し易い有機溶媒とマイクロ波を吸収し難い有機溶媒の混合溶媒からなり、該混合溶媒中に金属酸化物または金属水酸化物の金属元素に対し等モル量以下の有機修飾剤を含有する金属微粒子の製造方法。
【効果】短時間で単分散のナノサイズの金属微粒子が製造できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子の製造方法およびその製造装置に関し、さらに詳しくはマイクロ波を吸収し易い有機溶媒とマイクロ波を吸収し難い有機溶媒の混合溶媒中に金属酸化物または金属水酸化物および金属元素に対して等モル量以下の有機修飾剤を含有する反応媒体をマイクロ波加熱することにより金属微粒子を製造する技術に関するものである。本発明により、光触媒、金属触媒などの種々の触媒、導電膜用材料、記憶材料、発光材料、オプトエレクトロニクスなどの広範な分野における基本材料として使用することのできるナノサイズの金属微粒子を効率よく製造し提供することができる。
【背景技術】
【0002】
粒子をどんどん小さくしてナノサイズ化すると、触媒効果や量子サイズ効果などの全く新しい特性が発現し、従来では考えられなかった様々な用途展開が可能となる。例えば、融点が1063℃の金を2nmまでのナノサイズ化すると融点が300℃にまで低下し、物質固有の性質が劇的に変化して容易に融解・凝集が起こるようになることが知られている。また、これらの超微粒子は高い触媒作用をもつことが知られ、今後いろいろな分野で新しい可能性を持つ材料として期待されている。
【0003】
今や、マイクロエレクトロニクス分野では、数μmから数nmの幅を有する結晶の表面や粒界面の特異的な機能を利用した高性能化、高機能化が進んでおり、また、ファインセラミックス分野では製品の幅や厚さが年々微細化し、数十μmの部品が見受けられるようになってきている。このように、金属微粒子は、電子材料用の配線形成材料として、低温焼結ペースト等への応用が考えられ、また、光触媒や金属触媒等の種々の触媒、記憶材料、発光材料、オプトエレクトロニクス等の広範な分野における基本材料として重要視されている。しかしながら、ナノサイズで粒径を制御し、かつ粒径分布の狭い粒子を調製することは極めて困難であった。
【0004】
従来、原料となる金属を真空中、または若干のガスの存在下で蒸発させることによって気相中から金属の超微粒子を得るなどの気相法が知られている。ところが、この方法では、一般に一度に得られる超微粒子の生成量が少ない。また、金属を蒸発させるために電子ビーム、プラズマ、レーザー、誘導加熱などの装置と大量のエネルギーが必要であり、生産コスト上の問題もあることから、大量生産に適しているとは言い難い。しかも、これらの気相法により得られる超微粒子は、粒径分布の制御が困難で分布が広くなり易い、比較的凝集し易いという物性面上での欠点もある。また、粉砕などによる固相法が知られているが製造に長時間を要し、粒径のバラツキが大きく、超微粒子の製造には適していない。
【0005】
これに対し、液相中から超微粒子を調製する液相法としては、例えば、疎水性反応液中で金属化合物を還元して銀超微粒子を製造する方法が知られている。しかしながら、こうした液相法により得られる超微粒子も凝集性が比較的強いことがあり、安定に分散させるために界面活性剤を加えて保護コロイド化する必要があるが、そうしても分散安定性という面ではなお改善の余地がある。
【0006】
脂肪酸塩類から分散安定性に優れた超微粒子を工業的な規模で製造することを目的とした技術がいくつか提案されている。例えば、オレイン酸銀、ステアリン酸銀などの金属有機化合物をオイルバス中で長時間加熱して熱分解させることにより製造した、周囲を有機化合物により取り囲まれている銀の超微粒子(特許文献1参照)や、ミリスチン酸銅などの銅の脂肪酸塩をアルコールなどの還元性を示す有機溶媒中でマイクロ波加熱することにより銅塩に由来する有機成分を有する銅超微粒子の製造(特許文献2参照)が提案されている。
【0007】
その他の脂肪酸塩類を原料とする貴金属の超微粒子の製造では、カプリン酸銀を還元性溶媒である炭素数4から8のアルコール中でマイクロ波により加熱して、ナノサイズで粒径分布の狭い貴金属微粒子を製造する方法が提案されている(特許文献3参照)。また、金属微粒子の出発物として、金属水酸化物の使用が提案され、水酸化ニッケルを還元性の有機溶媒であるエチレングリコールにポリビニルピロリドンと共に分散させ、触媒の存在下でマイクロ波により加熱してニッケル超微粒子を製造することが提案されている(特許文献4参照)。更に、硝酸銀などの銀塩を、還元性溶媒としてのアルコール、ポリオールと、極性抑制剤としての炭化水素との混合溶媒に溶解し、有機保護剤としての脂肪酸、アミノ化合物の存在下にオイルバスなどの加熱方式により長時間加熱して銀粒子粉末を製造する方法が提案されている(特許文献5参照)。
【0008】
特に、上記したような従来の液相法において、オイルバスなどの加熱方式を採用すると、反応に4時間以上の長時間を要し粒径分布が粗くなる傾向を示した。また、マイクロ波加熱によると反応は短時間で達成されるが収率が低いなどの問題があった。有機修飾剤などの高級カルボン酸類を共存させて生成した金属微粒子の高濃度化を図ると、余剰の有機修飾剤が溶媒中に残存し析出して固まるなどの現象が生ずることがあり、有機修飾剤の添加量は極力抑えて還元反応を進行させることが必要である。また、有機修飾剤にアミンなどのN原子を含む物質を使用すると、Si半導体などの分野に使用できなくなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3205793号公報
【特許文献2】特開2007−56321号公報
【特許文献3】特開2004−353038号公報
【特許文献4】特許第3005683号公報
【特許文献5】特開2006−241494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記の従来技術に鑑みて、簡単に入手可能な金属化合物を原料として、短時間の反応時間により単分散性の金属微粒子を製造する技術の開発を目標に鋭意研究を積み重ねることにより、金属の酸化物または水酸化物を原料として、少量の有機修飾剤の存在下に混合溶媒中でマイクロ波加熱すると効率よく金属微粒子を製造できることを見出し、更に研究を積み重ねることにより本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の目的は、従来のオイルバス、電熱などの間接加熱方式を採用すると、反応に数時間以上の長時間を要し、また粒径分布が粗くなる傾向を示す問題を解決するものである。また、本発明の目的は、マイクロ波加熱による還元反応では短時間で金属微粒子の製造が達成されるが収率が低い、特殊な原料化合物を必要とするなどの問題があったのを解決し、簡便で効率的な金属微粒子を製造し提供することにある。また、本発明の目的は、金属微粒子の単分散性の向上を図るとともに、溶媒中に残存し析出して生成物である金属微粒子が固まるなどの現象が生ずる原因ともなっている有機修飾剤の添加量を極力抑えることができる金属微粒子の製造方法および装置を提供することにある。また、本発明の目的は、平均粒径が4nmで単分散性を有する金属微粒子を短時間で製造することにある。また、本発明の目的は、半導体の分野で有害となるN、PやSを含まない有機修飾剤を少量使用することにより金属微粒子を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
本発明は、金属酸化物または水酸化物を分散したマイクロ波吸収性溶媒とマイクロ波非吸収性溶媒の混合溶媒をマイクロ波加熱することにより金属微粒子を製造する方法に係るものである。
(1)金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒にマイクロ波を照射して加熱することにより金属微粒子を製造する方法であって、該有機溶媒がマイクロ波を吸収し易い有機溶媒とマイクロ波を吸収し難い有機溶媒の混合溶媒からなり、該混合溶媒中に金属酸化物または金属水酸化物の金属元素に対し等モル量以下の有機修飾剤を含有することを特徴とする金属微粒子の製造方法。
(2)金属酸化物または金属水酸化物が、銀、銅、ニッケルから選ばれた1種またはそれ以上の金属である上記(1)に記載の金属微粒子の製造方法。
(3)混合溶媒中に含まれている、(マイクロ波を吸収し易い有機溶媒):(マイクロ波を吸収し難い有機溶媒)の値が容積比で9:1〜1:9の範囲にある上記(1)または(2)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
(4)マイクロ波を吸収し難い有機溶媒が炭素数8以上の1価アルコールまたは炭化水素から選ばれ、マイクロ波を吸収し易い有機溶媒が炭素数7以下の1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる上記(1)から(3)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
(5)混合溶媒中に含まれている、(金属酸化物または金属水酸化物の金属元素):(有機修飾剤)の値がモル比で1.05:1〜6:1の範囲にある上記(1)から(4)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
(6)有機修飾剤が、炭素数10以上の脂肪酸から選ばれる上記(1)から(5)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
(7)マイクロ波を金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒にのみ照射する上記(1)から(6)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
【0013】
また、本発明は上記の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射化学反応装置に係るものである。
(8)上記(1)から(7)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射装置であって、マイクロ波発生装置、該マイクロ波発生装置から照射されるマイクロ波の照射領域内に設置されたマイクロ波透過材料からなる容器、マイクロ波遮蔽部材を有し、該マイクロ波遮蔽部材が容器内で金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒が収納されていない空間部を覆うように設置されていることを特徴とするマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
(9)上記(1)から(7)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射装置であって、マイクロ波発生装置、マイクロ波透過材料からなる容器、マイクロ波発生装置からマイクロ波を容器に誘導する導波管を有し、導波管は容器内のマイクロ波を金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒が収納されている部分にのみ直接マイクロ波を照射するように設置されていることを特徴とするマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
(10)複数の導波管から照射されたマイクロ波が、該容器内の金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒にのみ直接照射されるように導波管が設置されている上記(9)に記載のマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
(11)容器を構成するマイクロ波透過部分は、その面積が導波管の断面積よりも広く、金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒の規定量を容器内に投入した時にマイクロ波透過部分の全面が金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒と接触状態となる位置にあり、該導波管の外側にマイクロ波漏洩防止部材を配置した上記(9)に記載のマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
(12)請求項1から7のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射装置であって、マイクロ波発生装置、該マイクロ波発生装置から照射されるマイクロ波の照射領域内に設置された容器からなり、該容器でマイクロ波が照射される箇所のみがマイクロ波透過材料から形成されていることを特徴とするマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明により次のような効果が奏される。
(1)金属微粒子の製造原料として、入手が容易な金属酸化物あるいは金属水酸化物を利用することができる。
(2)従来のオイルバス加熱などの間接加熱では、数時間以上の反応時間を要したが、マイクロ波加熱を利用することにより数分間の反応時間で金属微粒子が製造できる。
(3)単分散性で約4nmのナノサイズ金属微粒子を製造することができる。
(4)マイクロ波を吸収し難い溶媒とマイクロ波を吸収し易い溶媒との混合溶媒を採用することにより、金属微粒子の生成反応を制御することができる。
(5)有機修飾剤の量を低減することができるので、生成した金属微粒子の取り扱いが簡便となる。
(6)反応液以外にマイクロ波が照射されない構造の照射装置の採用により反応時における反応容器の破損などの問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1で製造した銀微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図2】実施例1で製造した銀微粒子の粒径分布を示す図である。
【図3】実施例2で製造した銀微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図4】実施例2で製造した銀微粒子の粒径分布を示す図である。
【図5】実施例3で製造した銀微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図6】実施例3で製造した銀微粒子の粒径分布を示す図である。
【図7】実施例4で製造した銀微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図8】実施例4で製造した銀微粒子の粒径分布を示す図である。
【図9】実施例5で製造した銅微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図10】実施例5で製造した銅微粒子の粒径分布を示す図である。
【図11】マイクロ波照射により破損したガラス容器の外観を示す写真である。
【図12】マイクロ波遮蔽部材を有するマイクロ波照射による金属微粒子の製造装置の概要図である。
【図13】反応液に直接マイクロ波を照射する構造を有するマイクロ波照射による金属微粒子の製造装置の概要図である。
【図14】マントルヒーターによる加熱により反応を試みた際の反応状態を示す写真である。
【図15】マントルヒーターによる加熱により製造した銀微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図16】マイクロ波を吸収し易い溶媒のみの場合と、吸収し難い溶媒で希釈した場合のマイクロ波の作用を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、金属酸化物または金属水酸化物(両者を総称して「金属酸化物」とも言う。)を分散した有機溶媒にマイクロ波を照射して加熱することにより金属微粒子を製造するにあたり、有機溶媒を、マイクロ波を吸収し易い有機溶媒とマイクロ波を吸収し難い有機溶媒の混合溶媒とし、この混合溶媒中に分散させた金属酸化物または金属水酸化物の金属元素に対し当量以下の有機修飾剤を含有させる金属微粒子の製造方法に関するものである。また、本発明は、マイクロ波発生装置、マイクロ波透過材料からなる容器、マイクロ波発生装置からマイクロ波を容器に誘導する導波管を有し、導波管は容器内のマイクロ波を金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒が収納されている部分にのみ直接マイクロ波を照射するように設置されているマイクロ波照射装置に関するものである。本発明により、ナノサイズの金属微粒子を簡便に再現性よく製造することが可能となり、容易に入手できる製造原料を使用して短時間で単分散性の金属微粒子を製造することが可能となる。また、生成した金属微粒子には有機修飾剤などの存在を極力低下させることができる。
【0017】
次に、本発明について詳細に説明する。
本発明の微粒子の製造方法は、少なくとも1種またはそれ以上の金属酸化物または水酸化物を溶媒中に分散させた溶液を用いる。上記金属元素の種類は特に限定されることはなく、金属微粒子を構成する所望の金属の種類に応じていかなる種類のものをも単独で、また組み合わせて使用することができる。生成する金属微粒子の粒径は約3から7nmであり、その収率は80から100%を達成することができる。
例えば、微粒子を構成する金属が銀の場合はAg2O、亜鉛の場合はZn(OH)2、ニッケルの場合はNi(OH)2 、銅の場合は水酸化銅などを原料として用いることができる。その他、微粒子を構成する金属が鉛、鉄、コバルト、ルテニウム、銀、インジウム、パラジウム、カドミウムなどそれぞれの酸化物、水酸化物を単独または組み合わせて用いることができる。また、それらの金属酸化物、水酸化物の製造方法や履歴などには関係なく本発明に原料として利用できる。これらの金属酸化物または水酸化物は、その反応性、生成する金属微粒子の粒径などを考慮すると、その粒径が40から80μmであることが好適である。金属酸化物の濃度が低すぎると生産量が少なくなり経済的ではなく、高濃度になると還元反応が不十分となったり、生成した金属微粒子の凝集が起こる可能性が大きくなるため好ましくない。
【0018】
金属酸化物または金属水酸化物は溶媒中で還元されて微細粒子の金属に変換されるが、有機溶媒としては、(a)マイクロ波を吸収し難い有機溶媒と(b)マイクロ波を吸収し易い有機溶媒との混合溶媒が使用される。混合有機溶媒中には、金属酸化物または金属水酸化物を金属にまで還元することができる溶媒を必要とし、還元性の溶媒としてはアルコール類が好適に用いられる。本発明で使用する混合溶媒中では、(b)マイクロ波を吸収し易い有機溶媒が還元性有機溶媒に該当する場合が多い。(a)マイクロ波を吸収し難い有機溶媒と(b)マイクロ波を吸収し易い有機溶媒とは相溶性の組み合わせであることが好適である。
【0019】
〔マイクロ波を吸収し難い有機溶媒(a)〕
マイクロ波を吸収し難い有機溶媒としては特に限定されないが、炭素数8以上の1価アルコールまたは炭化水素から選ばれることが好適である。炭素数8以上の1価のアルコールとしては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。炭化水素としては沸点150℃以上の炭化水素が好適であり、例えば、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,3,4−トリメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、テレビン油等が挙げられる。
【0020】
〔マイクロ波を吸収し易い有機溶媒(b)〕
マイクロ波を吸収し易い有機溶媒としては特に限定されないが、炭素数7以下の1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれることが好適である。例えば、1価のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールが挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールを挙げることができる。これら2種類の溶媒からなる混合溶媒は、その沸点が、常圧で120℃以上であることが好適である。マイクロ波加熱により溶媒を高温に維持することにより、反応を迅速に、より完全に進行させることができる。
【0021】
マイクロ波を吸収し易い有機溶媒(b)はマイクロ波を吸収して反応系の温度を上昇させる機能を有している。したがって、マイクロ波を吸収し易い有機溶媒(b)が少ないと反応系が十分に高温とならないため還元反応が生起しない場合がある。マイクロ波を吸収し難い有機溶媒(a)は、反応系の温度上昇には直接寄与はしないが、生成した金属微粒子の収率は有機溶媒(a)が多いほど向上し、生成したナノ粒子の分散性も向上するという作用効果を呈する。マイクロ波を吸収し難い溶媒でマイクロ波を吸収し易い溶媒を希釈することにより、マイクロ波が容器内の表面部に存在する溶媒に吸収されてしまうことが少なくなり、内部にまでマイクロ波が透過できるようになるため、溶媒中に分散している金属酸化物にも効果的にマイクロ波が吸収されるようになり、その結果として反応が促進されることとなる(図16参照)。
例えば、ドデカノール単独を有機溶媒として使用すると、反応系の温度が還元反応に十分な高温に上昇することがないため酸化金属の還元反応が進行しなかった。また、エチレングリコール単独を有機溶媒として使用すると、反応系の温度は195℃と還元反応に十分な温度に上昇したが、金属微粒子の収率は20%以下となり実用的ではなかった。有機溶剤(a):有機溶媒(b)の容積比は、9:1から1:9が好適であり、更に6:1から1:6の範囲がより好適である。
【0022】
〔有機修飾剤〕
有機修飾剤は、生成した金属微粒子の凝集力を抑制し安定な一次粒子の形成に寄与するものであるが、他に生成後の粒子の酸化を防止する機能をも有する。有機修飾剤は金属微粒子からすると不純物であるからその使用量は必要最小限にすることが好適である。有機修飾剤としては高級脂肪酸類が主として用いられ、例えば、カプリン酸(C=10)、ラウリン酸(C=12)、ミリスチン酸(C=14)、パルミチン酸(C=16)、ステアリン酸(C=18)などの飽和脂肪酸、オレイン酸(C=18、二重結合1個)、リノール酸(C=18、二重結合2個)、リノレン酸(C=18、二重結合3個)などの不飽和脂肪酸、分岐状脂肪酸(C=16、主鎖側の炭素数が9)、他に環状脂肪酸、ヒドロキシル脂肪酸などが挙げられる。これらのなかでも、飽和脂肪酸が好適である。
有機修飾剤は、金属酸化物または金属水酸化物の金属元素に対し等モル量以下で使用される。すなわち、金属酸化物または金属水酸化物中に含まれる金属元素1モルに対して、例えば、1モル以下の脂肪酸が混合溶媒に添加される。金属元素:脂肪酸のモル比が、1.05:1から6:1の範囲が好適であり、更に好適な範囲としては3:1から6:1が挙げられる。モル比がこの上限を超えると、生成した金属微粒子に余剰の脂肪酸が残存することとなる。このとき、高融点の脂肪酸を使用した場合には脂肪酸が析出することにより生成物が反応容器内で固化してしまい金属微粒子を利用する際に、更に処理を行なう必要が発生することがあり好ましくない。また、下限値より少なくなると有機修飾剤としての機能を果たすことはできない場合がある。本発明の有機修飾剤としては、NやP元素を含まない化合物が好適に使用され、アミン化合物やリン酸化合物などの使用は避けるのがよい。このことは、生成した金属微粒子中に僅かでもこれらの元素が含有されると、金属微粒子の用途が制限されるからであり、例えば、半導体の技術分野での使用に適さなくなる。
【0023】
本発明における還元反応が進行する温度範囲は、140℃から240℃が好適であり、更に好適には、150℃から195℃の温度範囲を挙げることができる。反応温度が低いと、還元反応が生起したとしても反応速度が遅く経済的ではない。また、反応温度は混合溶媒の沸点によって上限は制限される。反応系は、減圧、常圧、加圧のいずれでもよく必要に応じて選択することができる。
【0024】
〔マイクロ波照射装置〕
本発明で使用されるマイクロ波照射装置は、容器内に収納された金属酸化物を含む混合溶媒を所定の温度に加熱させることができるものであればいずれの装置でも差し支えないが、例えば、四国計測工業株式会社製のキャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)などにより、ガラス製の容器内で金属微粒子の生成反応を実施することができる。
特に、金属微粒子を製造する際に起こることがある容器の破損問題を解決するには、反応の遂行全般にわたり、金属酸化物を含有する混合溶媒にのみ常にマイクロ波を照射することが重要である。
【0025】
容器の破損が発生したときの状態は図11に示す。こうした容器の破損現象は次のようにして発生するものと考えられる。すなわち、容器中に金属酸化物を含む混合溶媒(反応混合物)を収納してこれにマイクロ波を照射すると、反応混合物はマイクロ波を吸収して温度が上昇するに伴って体積が増加し、容器中の液面が上昇する。更にマイクロ波を照射して反応を進行させ続けると、加熱された混合溶媒が蒸発などにより揮散して溶媒の体積がある程度減少し液面が低下する。このとき、液面近くで生成していた金属微粒子が容器内壁面に付着したまま残されることがある。そのような状態で更にマイクロ波が照射され続けると、内壁面に付着した金属微粒子がマイクロ波により赤熱されて容器が局部的に高温に加熱されることになり、ガラスが破損する現象が発生することがある。
【0026】
このような容器の破損を防止するには、例えば、図12に示すように、マイクロ波発生装置1、該マイクロ波発生装置から照射されるマイクロ波の照射領域内に設置されたマイクロ波透過材料からなる容器3、マイクロ波遮蔽部材5を有し、該マイクロ波遮蔽部材5が容器3内で金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒(反応液)4が収納されていない空間部を覆うように設置されているマイクロ波発生装置が好適に用いられる。容器内の空間部を覆うように設置されたマイクロ波遮蔽部材5(スカート部)は容器内壁に付着し取り残された金属微粒子にマイクロ波が照射されないように遮蔽して過加熱による容器の破損を防止する。
【0027】
また、マイクロ波発生装置、マイクロ波透過材料からなる容器、マイクロ波発生装置からマイクロ波を容器に誘導する導波管を有し、導波管は容器内のマイクロ波を金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒(反応液)が収納されている部分にのみ直接マイクロ波を照射するように設置されているマイクロ波照射装置やマイクロ波発生装置1、該マイクロ波発生装置1から照射されるマイクロ波の照射領域内に設置された容器3からなり、該容器3でマイクロ波が照射される箇所のみがマイクロ波透過材料7から形成されているマイクロ波照射装置により容器の破損を防止することが可能となる(図13参照)。
【0028】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器に1−ドデカノール143ml、エチレングリコール32mlの混合溶媒を加えた後、酸化銀9g、ミリスチン酸(C13H27COOH)17gを添加し、分散した。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し、反応温度195℃まで30℃/minで昇温した。195℃に到達した後、10分間その温度を保持し、反応を終了した。加熱の間、メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度は安立計器株式会社製光ファイバー温度計(FL−2000)のファイバープローブを懸濁液中に浸漬することで計測・制御を行った。生成物をヘキサンに分散し、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った結果、ナノサイズの銀微粒子が生成していることが確認された。銀微粒子の収率は90%以上であった。得られた画像から粒径分布を計測した結果、粒径4nmにピークを持つ平均粒径4.0nmの銀微粒子が生成していた。図1にTEM画像を示し、図2に粒径分布を示す。
ここで、1−ドデカノールは、マイクロ波非吸収溶媒であり、エチレングリコールはマイクロ波吸収溶媒である。銀/ミリスチン酸(有機修飾剤)のモル比は1.05であった。
【実施例2】
【0030】
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器に1,3,5−トリメチルベンゼン105mlと1−ヘキサノール35mlの混合溶媒を加えた後、酸化銀9g、ミリスチン酸(C13H27COOH)17gを添加して分散させた。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し、反応温度157℃まで30℃/minで昇温した。157℃に到達した後、10分間その温度を保持し、反応を終了した。加熱の間、メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度は安立計器株式会社製光ファイバー温度計(FL−2000)のファイバープローブを懸濁液中に浸漬することで温度の計測および制御を行った。生成物をヘキサンに分散し、TEM観察を行った結果、ナノサイズの銀微粒子が生成していることが確認された。銀微粒子の収率は90%以上であった。得られた画像から粒径分布を計測した結果、粒径4nmにピークを持つ平均粒径4.0nmの銀微粒子が生成していた。図3にTEM画像を示し、図4に粒径分布を示す。
マイクロ波非吸収溶媒として、1,3,5−トリメチルベンゼンを使用し、マイクロ波吸収溶媒として、1−ヘキサノールを使用した。銀/ミリスチン酸(有機修飾剤)のモル比は1.05であった。
【実施例3】
【0031】
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器に種々の混合割合で混合した1,3,5−トリメチルベンゼンおよび1−ヘキサノールを表1、2に記載の溶媒の混合割合(容量比)と成るように加えた後、酸化銀9gおよび種々の量のミリスチン酸(C13H27COOH)3〜17gを表1および2に記載のモル比となるように添加して分散した。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し、反応温度157℃まで30℃/minで昇温した。157℃に到達した後、10分間その温度を保持し、反応を終了した。加熱の間、メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度は安立計器株式会社製光ファイバー温度計(FL−2000)のファイバープローブを懸濁液中に浸漬することで温度の計測および制御を行った。生成物をヘキサンに分散し、TEM観察を行った結果、ナノサイズの銀微粒子が生成していることが確認された。得られた画像から粒径分布を計測した結果、いずれの試料においても粒径4nmにピークを持つ銀微粒子が生成していた。銀微粒子の収率は90%以上であった。
【0032】
図5には、生成した銀微粒子のTEM画像(銀/有機修飾剤=6、1,3,5−トリメチルベンゼン/1-ヘキサノール=3)を示し、図6にはその粒径分布を示す。表1には、種々の銀/有機修飾剤で合成した銀ナノ粒子の平均粒径を示し、表2には、溶媒の混合比を変えて合成した銀ナノ粒子の平均粒径を示した。表3には、脂肪酸の鎖長を変えて合成した銀ナノ粒子の平均粒径を示した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【実施例4】
【0035】
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器に、マイクロ波非吸収溶媒である1,3,5−トリメチルベンゼン105mlと、マイクロ波吸収溶媒である1−ヘキサノール35mlの混合溶媒を加えた後、酸化銀9g、アルキル鎖長の異なる直鎖飽和脂肪酸(炭素数10〜18)を銀/有機修飾剤のモル比が6となるように添加して分散させた。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し、反応温度157℃まで30℃/minで昇温した。157℃に到達した後、10分間その温度を保持し、反応を終了した。加熱の間、メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度は安立計器株式会社製光ファイバー温度計(FL−2000)のファイバープローブを懸濁液中に浸漬することで温度の計測および制御を行った。生成物をヘキサンに分散し、TEM観察を行った結果、ナノサイズの銀微粒子が生成していることが確認された。銀微粒子の収率は90%以上であった。図7には、生成した銀微粒子のTEM画像を示し、図8にはその粒径分布を示す。アルキル鎖の異なる直鎖飽和脂肪酸を有機修飾剤とした場合の生成した銀微粒子の平均粒径を表3に示す。
【0036】
【表3】
【実施例5】
【0037】
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器に1,3,5−トリメチルベンゼン105ml、1−ヘキサノール35mlの混合溶媒を加えた後,水酸化銅3g、ミリスチン酸(C13H27COOH)3.5gを添加し,銅/有機修飾剤のモル比が2となるように添加して分散させた。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し,反応温度を157℃まで30℃/minで昇温した.157℃到達後、10分間その温度を保持し,反応を終了した。加熱の間、メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度は安立計器株式会社製光ファイバー温度計(FL−2000)のファイバープローブを懸濁液中に浸漬することで計測、制御を行った。生成物をヘキサンに分散し、TEM観察を行った結果,ナノサイズの銅微粒子が生成していることが確認された。得られた画像から粒径分布を計測した結果、粒径3nmにピークを持つ平均粒径4.0nmの銅微粒子が生成していることが確認された。図9には生成した銅微粒子のTEM画像を示し、図10にはその粒径分布を示す。
【0038】
(比較例1)
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器に1−ドデカノール175mlのみを加えた後、酸化銀9g、ミリスチン酸(C13H27COOH)17gを添加し、分散した。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し、反応温度の195℃まで加熱することを試みたが所定温度まで昇温せず、銀の微粒子は生成しなかった。このように、マイクロ波非吸収溶媒のみを溶媒とする反応系では温度上昇はできなかった。
【0039】
(比較例2)
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器にエチレングリコール175mlを加えた後、酸化銀9g、ミリスチン酸(C13H27COOH)17gを添加し、分散した。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し、反応温度195℃まで30℃/minで昇温した。195℃到達後、10分間その温度を保持し、反応を終了した。加熱の間メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度は安立計器株式会社製光ファイバー温度計(FL−2000)のファイバープローブを懸濁液中に浸漬することで温度の計測および制御を行った。生成物をヘキサンに分散しTEM観察を行った結果、ナノサイズの銀微粒子が生成していることが確認された。マイクロ波を吸収し易い有機溶媒であるエチレングリコールのみを媒体としても銀微粒子は生成したが、その収率は20%以下であり、効率的な金属微粒子の製造はできなかった。
【0040】
(比較例3)
還流管を取り付けた300mlの丸底フラスコに1,3,5−トリメチルベンゼン30mlと1−ヘキサノール10mlの混合溶媒を加えた後、酸化銀3g、ミリスチン酸(C13H27COOH)1gを添加して分散させた。この懸濁液をマントルヒーターで反応温度157℃まで最大出力で昇温した。157℃に到達した後、10分間その温度を保持したが、反応は完全に終了しておらず、図14に示すように固形物が残存していた。さらに4時間157℃で保持することにより固形物はなくなったが、生成物をヘキサンに分散しTEM観察を行った結果、図15に示すように数100nm程度の凝集物が認められた.加熱の間、メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度はK熱電対を懸濁液中に浸漬することで温度の計測および制御を行った。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒にマイクロ波を照射して加熱することにより金属微粒子を製造する方法であって、入手が容易な金属酸化物あるいは金属水酸化物を利用して数分から十数分間の短時間の反応で単分散性、約4nmのナノサイズ金属微粒子を製造することができる。金属ナノ粒子のこれまで開発のメインは金、銀であったが、最近では銅ナノ粒子など各種の金属微粒子が注目され、高密度磁気記録媒体、高感度ガスセンサー等への応用、超微粒子として選択性の高い触媒や高効率水素吸蔵材などへの応用、セラミックス、ポリマーなどとの複合化による新機能材としての応用研究がなされている有望な材料である。
【0042】
金属微粒子は極小であることから、例えば、金では粒子径が10nm以下になると融点が大きく低下するなど、元の金属とは異なる性質を示すといった特性や、表面積が大きくなることで高活性となり高い触媒作用を持つなどの様々な特徴的な物性に基づいて新機能材などの用途が開発されている材料である。本発明は、このような有望な材料を製造するための新しい技術を開発し提供するものであり、幅広い用途分野において利用される金属微粒子の製造技術として有用である。
【符号の説明】
【0043】
1:マイクロ波発生装置
2:マイクロ波導波管
3:反応容器
4:反応液
5:マイクロ波遮蔽部材(スカート)
6:マイクロ波漏洩防止部材
7:マイクロ波透過材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子の製造方法およびその製造装置に関し、さらに詳しくはマイクロ波を吸収し易い有機溶媒とマイクロ波を吸収し難い有機溶媒の混合溶媒中に金属酸化物または金属水酸化物および金属元素に対して等モル量以下の有機修飾剤を含有する反応媒体をマイクロ波加熱することにより金属微粒子を製造する技術に関するものである。本発明により、光触媒、金属触媒などの種々の触媒、導電膜用材料、記憶材料、発光材料、オプトエレクトロニクスなどの広範な分野における基本材料として使用することのできるナノサイズの金属微粒子を効率よく製造し提供することができる。
【背景技術】
【0002】
粒子をどんどん小さくしてナノサイズ化すると、触媒効果や量子サイズ効果などの全く新しい特性が発現し、従来では考えられなかった様々な用途展開が可能となる。例えば、融点が1063℃の金を2nmまでのナノサイズ化すると融点が300℃にまで低下し、物質固有の性質が劇的に変化して容易に融解・凝集が起こるようになることが知られている。また、これらの超微粒子は高い触媒作用をもつことが知られ、今後いろいろな分野で新しい可能性を持つ材料として期待されている。
【0003】
今や、マイクロエレクトロニクス分野では、数μmから数nmの幅を有する結晶の表面や粒界面の特異的な機能を利用した高性能化、高機能化が進んでおり、また、ファインセラミックス分野では製品の幅や厚さが年々微細化し、数十μmの部品が見受けられるようになってきている。このように、金属微粒子は、電子材料用の配線形成材料として、低温焼結ペースト等への応用が考えられ、また、光触媒や金属触媒等の種々の触媒、記憶材料、発光材料、オプトエレクトロニクス等の広範な分野における基本材料として重要視されている。しかしながら、ナノサイズで粒径を制御し、かつ粒径分布の狭い粒子を調製することは極めて困難であった。
【0004】
従来、原料となる金属を真空中、または若干のガスの存在下で蒸発させることによって気相中から金属の超微粒子を得るなどの気相法が知られている。ところが、この方法では、一般に一度に得られる超微粒子の生成量が少ない。また、金属を蒸発させるために電子ビーム、プラズマ、レーザー、誘導加熱などの装置と大量のエネルギーが必要であり、生産コスト上の問題もあることから、大量生産に適しているとは言い難い。しかも、これらの気相法により得られる超微粒子は、粒径分布の制御が困難で分布が広くなり易い、比較的凝集し易いという物性面上での欠点もある。また、粉砕などによる固相法が知られているが製造に長時間を要し、粒径のバラツキが大きく、超微粒子の製造には適していない。
【0005】
これに対し、液相中から超微粒子を調製する液相法としては、例えば、疎水性反応液中で金属化合物を還元して銀超微粒子を製造する方法が知られている。しかしながら、こうした液相法により得られる超微粒子も凝集性が比較的強いことがあり、安定に分散させるために界面活性剤を加えて保護コロイド化する必要があるが、そうしても分散安定性という面ではなお改善の余地がある。
【0006】
脂肪酸塩類から分散安定性に優れた超微粒子を工業的な規模で製造することを目的とした技術がいくつか提案されている。例えば、オレイン酸銀、ステアリン酸銀などの金属有機化合物をオイルバス中で長時間加熱して熱分解させることにより製造した、周囲を有機化合物により取り囲まれている銀の超微粒子(特許文献1参照)や、ミリスチン酸銅などの銅の脂肪酸塩をアルコールなどの還元性を示す有機溶媒中でマイクロ波加熱することにより銅塩に由来する有機成分を有する銅超微粒子の製造(特許文献2参照)が提案されている。
【0007】
その他の脂肪酸塩類を原料とする貴金属の超微粒子の製造では、カプリン酸銀を還元性溶媒である炭素数4から8のアルコール中でマイクロ波により加熱して、ナノサイズで粒径分布の狭い貴金属微粒子を製造する方法が提案されている(特許文献3参照)。また、金属微粒子の出発物として、金属水酸化物の使用が提案され、水酸化ニッケルを還元性の有機溶媒であるエチレングリコールにポリビニルピロリドンと共に分散させ、触媒の存在下でマイクロ波により加熱してニッケル超微粒子を製造することが提案されている(特許文献4参照)。更に、硝酸銀などの銀塩を、還元性溶媒としてのアルコール、ポリオールと、極性抑制剤としての炭化水素との混合溶媒に溶解し、有機保護剤としての脂肪酸、アミノ化合物の存在下にオイルバスなどの加熱方式により長時間加熱して銀粒子粉末を製造する方法が提案されている(特許文献5参照)。
【0008】
特に、上記したような従来の液相法において、オイルバスなどの加熱方式を採用すると、反応に4時間以上の長時間を要し粒径分布が粗くなる傾向を示した。また、マイクロ波加熱によると反応は短時間で達成されるが収率が低いなどの問題があった。有機修飾剤などの高級カルボン酸類を共存させて生成した金属微粒子の高濃度化を図ると、余剰の有機修飾剤が溶媒中に残存し析出して固まるなどの現象が生ずることがあり、有機修飾剤の添加量は極力抑えて還元反応を進行させることが必要である。また、有機修飾剤にアミンなどのN原子を含む物質を使用すると、Si半導体などの分野に使用できなくなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3205793号公報
【特許文献2】特開2007−56321号公報
【特許文献3】特開2004−353038号公報
【特許文献4】特許第3005683号公報
【特許文献5】特開2006−241494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記の従来技術に鑑みて、簡単に入手可能な金属化合物を原料として、短時間の反応時間により単分散性の金属微粒子を製造する技術の開発を目標に鋭意研究を積み重ねることにより、金属の酸化物または水酸化物を原料として、少量の有機修飾剤の存在下に混合溶媒中でマイクロ波加熱すると効率よく金属微粒子を製造できることを見出し、更に研究を積み重ねることにより本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の目的は、従来のオイルバス、電熱などの間接加熱方式を採用すると、反応に数時間以上の長時間を要し、また粒径分布が粗くなる傾向を示す問題を解決するものである。また、本発明の目的は、マイクロ波加熱による還元反応では短時間で金属微粒子の製造が達成されるが収率が低い、特殊な原料化合物を必要とするなどの問題があったのを解決し、簡便で効率的な金属微粒子を製造し提供することにある。また、本発明の目的は、金属微粒子の単分散性の向上を図るとともに、溶媒中に残存し析出して生成物である金属微粒子が固まるなどの現象が生ずる原因ともなっている有機修飾剤の添加量を極力抑えることができる金属微粒子の製造方法および装置を提供することにある。また、本発明の目的は、平均粒径が4nmで単分散性を有する金属微粒子を短時間で製造することにある。また、本発明の目的は、半導体の分野で有害となるN、PやSを含まない有機修飾剤を少量使用することにより金属微粒子を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
本発明は、金属酸化物または水酸化物を分散したマイクロ波吸収性溶媒とマイクロ波非吸収性溶媒の混合溶媒をマイクロ波加熱することにより金属微粒子を製造する方法に係るものである。
(1)金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒にマイクロ波を照射して加熱することにより金属微粒子を製造する方法であって、該有機溶媒がマイクロ波を吸収し易い有機溶媒とマイクロ波を吸収し難い有機溶媒の混合溶媒からなり、該混合溶媒中に金属酸化物または金属水酸化物の金属元素に対し等モル量以下の有機修飾剤を含有することを特徴とする金属微粒子の製造方法。
(2)金属酸化物または金属水酸化物が、銀、銅、ニッケルから選ばれた1種またはそれ以上の金属である上記(1)に記載の金属微粒子の製造方法。
(3)混合溶媒中に含まれている、(マイクロ波を吸収し易い有機溶媒):(マイクロ波を吸収し難い有機溶媒)の値が容積比で9:1〜1:9の範囲にある上記(1)または(2)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
(4)マイクロ波を吸収し難い有機溶媒が炭素数8以上の1価アルコールまたは炭化水素から選ばれ、マイクロ波を吸収し易い有機溶媒が炭素数7以下の1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる上記(1)から(3)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
(5)混合溶媒中に含まれている、(金属酸化物または金属水酸化物の金属元素):(有機修飾剤)の値がモル比で1.05:1〜6:1の範囲にある上記(1)から(4)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
(6)有機修飾剤が、炭素数10以上の脂肪酸から選ばれる上記(1)から(5)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
(7)マイクロ波を金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒にのみ照射する上記(1)から(6)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
【0013】
また、本発明は上記の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射化学反応装置に係るものである。
(8)上記(1)から(7)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射装置であって、マイクロ波発生装置、該マイクロ波発生装置から照射されるマイクロ波の照射領域内に設置されたマイクロ波透過材料からなる容器、マイクロ波遮蔽部材を有し、該マイクロ波遮蔽部材が容器内で金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒が収納されていない空間部を覆うように設置されていることを特徴とするマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
(9)上記(1)から(7)のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射装置であって、マイクロ波発生装置、マイクロ波透過材料からなる容器、マイクロ波発生装置からマイクロ波を容器に誘導する導波管を有し、導波管は容器内のマイクロ波を金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒が収納されている部分にのみ直接マイクロ波を照射するように設置されていることを特徴とするマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
(10)複数の導波管から照射されたマイクロ波が、該容器内の金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒にのみ直接照射されるように導波管が設置されている上記(9)に記載のマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
(11)容器を構成するマイクロ波透過部分は、その面積が導波管の断面積よりも広く、金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒の規定量を容器内に投入した時にマイクロ波透過部分の全面が金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒と接触状態となる位置にあり、該導波管の外側にマイクロ波漏洩防止部材を配置した上記(9)に記載のマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
(12)請求項1から7のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射装置であって、マイクロ波発生装置、該マイクロ波発生装置から照射されるマイクロ波の照射領域内に設置された容器からなり、該容器でマイクロ波が照射される箇所のみがマイクロ波透過材料から形成されていることを特徴とするマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明により次のような効果が奏される。
(1)金属微粒子の製造原料として、入手が容易な金属酸化物あるいは金属水酸化物を利用することができる。
(2)従来のオイルバス加熱などの間接加熱では、数時間以上の反応時間を要したが、マイクロ波加熱を利用することにより数分間の反応時間で金属微粒子が製造できる。
(3)単分散性で約4nmのナノサイズ金属微粒子を製造することができる。
(4)マイクロ波を吸収し難い溶媒とマイクロ波を吸収し易い溶媒との混合溶媒を採用することにより、金属微粒子の生成反応を制御することができる。
(5)有機修飾剤の量を低減することができるので、生成した金属微粒子の取り扱いが簡便となる。
(6)反応液以外にマイクロ波が照射されない構造の照射装置の採用により反応時における反応容器の破損などの問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1で製造した銀微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図2】実施例1で製造した銀微粒子の粒径分布を示す図である。
【図3】実施例2で製造した銀微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図4】実施例2で製造した銀微粒子の粒径分布を示す図である。
【図5】実施例3で製造した銀微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図6】実施例3で製造した銀微粒子の粒径分布を示す図である。
【図7】実施例4で製造した銀微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図8】実施例4で製造した銀微粒子の粒径分布を示す図である。
【図9】実施例5で製造した銅微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図10】実施例5で製造した銅微粒子の粒径分布を示す図である。
【図11】マイクロ波照射により破損したガラス容器の外観を示す写真である。
【図12】マイクロ波遮蔽部材を有するマイクロ波照射による金属微粒子の製造装置の概要図である。
【図13】反応液に直接マイクロ波を照射する構造を有するマイクロ波照射による金属微粒子の製造装置の概要図である。
【図14】マントルヒーターによる加熱により反応を試みた際の反応状態を示す写真である。
【図15】マントルヒーターによる加熱により製造した銀微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図16】マイクロ波を吸収し易い溶媒のみの場合と、吸収し難い溶媒で希釈した場合のマイクロ波の作用を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、金属酸化物または金属水酸化物(両者を総称して「金属酸化物」とも言う。)を分散した有機溶媒にマイクロ波を照射して加熱することにより金属微粒子を製造するにあたり、有機溶媒を、マイクロ波を吸収し易い有機溶媒とマイクロ波を吸収し難い有機溶媒の混合溶媒とし、この混合溶媒中に分散させた金属酸化物または金属水酸化物の金属元素に対し当量以下の有機修飾剤を含有させる金属微粒子の製造方法に関するものである。また、本発明は、マイクロ波発生装置、マイクロ波透過材料からなる容器、マイクロ波発生装置からマイクロ波を容器に誘導する導波管を有し、導波管は容器内のマイクロ波を金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒が収納されている部分にのみ直接マイクロ波を照射するように設置されているマイクロ波照射装置に関するものである。本発明により、ナノサイズの金属微粒子を簡便に再現性よく製造することが可能となり、容易に入手できる製造原料を使用して短時間で単分散性の金属微粒子を製造することが可能となる。また、生成した金属微粒子には有機修飾剤などの存在を極力低下させることができる。
【0017】
次に、本発明について詳細に説明する。
本発明の微粒子の製造方法は、少なくとも1種またはそれ以上の金属酸化物または水酸化物を溶媒中に分散させた溶液を用いる。上記金属元素の種類は特に限定されることはなく、金属微粒子を構成する所望の金属の種類に応じていかなる種類のものをも単独で、また組み合わせて使用することができる。生成する金属微粒子の粒径は約3から7nmであり、その収率は80から100%を達成することができる。
例えば、微粒子を構成する金属が銀の場合はAg2O、亜鉛の場合はZn(OH)2、ニッケルの場合はNi(OH)2 、銅の場合は水酸化銅などを原料として用いることができる。その他、微粒子を構成する金属が鉛、鉄、コバルト、ルテニウム、銀、インジウム、パラジウム、カドミウムなどそれぞれの酸化物、水酸化物を単独または組み合わせて用いることができる。また、それらの金属酸化物、水酸化物の製造方法や履歴などには関係なく本発明に原料として利用できる。これらの金属酸化物または水酸化物は、その反応性、生成する金属微粒子の粒径などを考慮すると、その粒径が40から80μmであることが好適である。金属酸化物の濃度が低すぎると生産量が少なくなり経済的ではなく、高濃度になると還元反応が不十分となったり、生成した金属微粒子の凝集が起こる可能性が大きくなるため好ましくない。
【0018】
金属酸化物または金属水酸化物は溶媒中で還元されて微細粒子の金属に変換されるが、有機溶媒としては、(a)マイクロ波を吸収し難い有機溶媒と(b)マイクロ波を吸収し易い有機溶媒との混合溶媒が使用される。混合有機溶媒中には、金属酸化物または金属水酸化物を金属にまで還元することができる溶媒を必要とし、還元性の溶媒としてはアルコール類が好適に用いられる。本発明で使用する混合溶媒中では、(b)マイクロ波を吸収し易い有機溶媒が還元性有機溶媒に該当する場合が多い。(a)マイクロ波を吸収し難い有機溶媒と(b)マイクロ波を吸収し易い有機溶媒とは相溶性の組み合わせであることが好適である。
【0019】
〔マイクロ波を吸収し難い有機溶媒(a)〕
マイクロ波を吸収し難い有機溶媒としては特に限定されないが、炭素数8以上の1価アルコールまたは炭化水素から選ばれることが好適である。炭素数8以上の1価のアルコールとしては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。炭化水素としては沸点150℃以上の炭化水素が好適であり、例えば、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,3,4−トリメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、テレビン油等が挙げられる。
【0020】
〔マイクロ波を吸収し易い有機溶媒(b)〕
マイクロ波を吸収し易い有機溶媒としては特に限定されないが、炭素数7以下の1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれることが好適である。例えば、1価のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールが挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールを挙げることができる。これら2種類の溶媒からなる混合溶媒は、その沸点が、常圧で120℃以上であることが好適である。マイクロ波加熱により溶媒を高温に維持することにより、反応を迅速に、より完全に進行させることができる。
【0021】
マイクロ波を吸収し易い有機溶媒(b)はマイクロ波を吸収して反応系の温度を上昇させる機能を有している。したがって、マイクロ波を吸収し易い有機溶媒(b)が少ないと反応系が十分に高温とならないため還元反応が生起しない場合がある。マイクロ波を吸収し難い有機溶媒(a)は、反応系の温度上昇には直接寄与はしないが、生成した金属微粒子の収率は有機溶媒(a)が多いほど向上し、生成したナノ粒子の分散性も向上するという作用効果を呈する。マイクロ波を吸収し難い溶媒でマイクロ波を吸収し易い溶媒を希釈することにより、マイクロ波が容器内の表面部に存在する溶媒に吸収されてしまうことが少なくなり、内部にまでマイクロ波が透過できるようになるため、溶媒中に分散している金属酸化物にも効果的にマイクロ波が吸収されるようになり、その結果として反応が促進されることとなる(図16参照)。
例えば、ドデカノール単独を有機溶媒として使用すると、反応系の温度が還元反応に十分な高温に上昇することがないため酸化金属の還元反応が進行しなかった。また、エチレングリコール単独を有機溶媒として使用すると、反応系の温度は195℃と還元反応に十分な温度に上昇したが、金属微粒子の収率は20%以下となり実用的ではなかった。有機溶剤(a):有機溶媒(b)の容積比は、9:1から1:9が好適であり、更に6:1から1:6の範囲がより好適である。
【0022】
〔有機修飾剤〕
有機修飾剤は、生成した金属微粒子の凝集力を抑制し安定な一次粒子の形成に寄与するものであるが、他に生成後の粒子の酸化を防止する機能をも有する。有機修飾剤は金属微粒子からすると不純物であるからその使用量は必要最小限にすることが好適である。有機修飾剤としては高級脂肪酸類が主として用いられ、例えば、カプリン酸(C=10)、ラウリン酸(C=12)、ミリスチン酸(C=14)、パルミチン酸(C=16)、ステアリン酸(C=18)などの飽和脂肪酸、オレイン酸(C=18、二重結合1個)、リノール酸(C=18、二重結合2個)、リノレン酸(C=18、二重結合3個)などの不飽和脂肪酸、分岐状脂肪酸(C=16、主鎖側の炭素数が9)、他に環状脂肪酸、ヒドロキシル脂肪酸などが挙げられる。これらのなかでも、飽和脂肪酸が好適である。
有機修飾剤は、金属酸化物または金属水酸化物の金属元素に対し等モル量以下で使用される。すなわち、金属酸化物または金属水酸化物中に含まれる金属元素1モルに対して、例えば、1モル以下の脂肪酸が混合溶媒に添加される。金属元素:脂肪酸のモル比が、1.05:1から6:1の範囲が好適であり、更に好適な範囲としては3:1から6:1が挙げられる。モル比がこの上限を超えると、生成した金属微粒子に余剰の脂肪酸が残存することとなる。このとき、高融点の脂肪酸を使用した場合には脂肪酸が析出することにより生成物が反応容器内で固化してしまい金属微粒子を利用する際に、更に処理を行なう必要が発生することがあり好ましくない。また、下限値より少なくなると有機修飾剤としての機能を果たすことはできない場合がある。本発明の有機修飾剤としては、NやP元素を含まない化合物が好適に使用され、アミン化合物やリン酸化合物などの使用は避けるのがよい。このことは、生成した金属微粒子中に僅かでもこれらの元素が含有されると、金属微粒子の用途が制限されるからであり、例えば、半導体の技術分野での使用に適さなくなる。
【0023】
本発明における還元反応が進行する温度範囲は、140℃から240℃が好適であり、更に好適には、150℃から195℃の温度範囲を挙げることができる。反応温度が低いと、還元反応が生起したとしても反応速度が遅く経済的ではない。また、反応温度は混合溶媒の沸点によって上限は制限される。反応系は、減圧、常圧、加圧のいずれでもよく必要に応じて選択することができる。
【0024】
〔マイクロ波照射装置〕
本発明で使用されるマイクロ波照射装置は、容器内に収納された金属酸化物を含む混合溶媒を所定の温度に加熱させることができるものであればいずれの装置でも差し支えないが、例えば、四国計測工業株式会社製のキャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)などにより、ガラス製の容器内で金属微粒子の生成反応を実施することができる。
特に、金属微粒子を製造する際に起こることがある容器の破損問題を解決するには、反応の遂行全般にわたり、金属酸化物を含有する混合溶媒にのみ常にマイクロ波を照射することが重要である。
【0025】
容器の破損が発生したときの状態は図11に示す。こうした容器の破損現象は次のようにして発生するものと考えられる。すなわち、容器中に金属酸化物を含む混合溶媒(反応混合物)を収納してこれにマイクロ波を照射すると、反応混合物はマイクロ波を吸収して温度が上昇するに伴って体積が増加し、容器中の液面が上昇する。更にマイクロ波を照射して反応を進行させ続けると、加熱された混合溶媒が蒸発などにより揮散して溶媒の体積がある程度減少し液面が低下する。このとき、液面近くで生成していた金属微粒子が容器内壁面に付着したまま残されることがある。そのような状態で更にマイクロ波が照射され続けると、内壁面に付着した金属微粒子がマイクロ波により赤熱されて容器が局部的に高温に加熱されることになり、ガラスが破損する現象が発生することがある。
【0026】
このような容器の破損を防止するには、例えば、図12に示すように、マイクロ波発生装置1、該マイクロ波発生装置から照射されるマイクロ波の照射領域内に設置されたマイクロ波透過材料からなる容器3、マイクロ波遮蔽部材5を有し、該マイクロ波遮蔽部材5が容器3内で金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒(反応液)4が収納されていない空間部を覆うように設置されているマイクロ波発生装置が好適に用いられる。容器内の空間部を覆うように設置されたマイクロ波遮蔽部材5(スカート部)は容器内壁に付着し取り残された金属微粒子にマイクロ波が照射されないように遮蔽して過加熱による容器の破損を防止する。
【0027】
また、マイクロ波発生装置、マイクロ波透過材料からなる容器、マイクロ波発生装置からマイクロ波を容器に誘導する導波管を有し、導波管は容器内のマイクロ波を金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒(反応液)が収納されている部分にのみ直接マイクロ波を照射するように設置されているマイクロ波照射装置やマイクロ波発生装置1、該マイクロ波発生装置1から照射されるマイクロ波の照射領域内に設置された容器3からなり、該容器3でマイクロ波が照射される箇所のみがマイクロ波透過材料7から形成されているマイクロ波照射装置により容器の破損を防止することが可能となる(図13参照)。
【0028】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器に1−ドデカノール143ml、エチレングリコール32mlの混合溶媒を加えた後、酸化銀9g、ミリスチン酸(C13H27COOH)17gを添加し、分散した。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し、反応温度195℃まで30℃/minで昇温した。195℃に到達した後、10分間その温度を保持し、反応を終了した。加熱の間、メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度は安立計器株式会社製光ファイバー温度計(FL−2000)のファイバープローブを懸濁液中に浸漬することで計測・制御を行った。生成物をヘキサンに分散し、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った結果、ナノサイズの銀微粒子が生成していることが確認された。銀微粒子の収率は90%以上であった。得られた画像から粒径分布を計測した結果、粒径4nmにピークを持つ平均粒径4.0nmの銀微粒子が生成していた。図1にTEM画像を示し、図2に粒径分布を示す。
ここで、1−ドデカノールは、マイクロ波非吸収溶媒であり、エチレングリコールはマイクロ波吸収溶媒である。銀/ミリスチン酸(有機修飾剤)のモル比は1.05であった。
【実施例2】
【0030】
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器に1,3,5−トリメチルベンゼン105mlと1−ヘキサノール35mlの混合溶媒を加えた後、酸化銀9g、ミリスチン酸(C13H27COOH)17gを添加して分散させた。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し、反応温度157℃まで30℃/minで昇温した。157℃に到達した後、10分間その温度を保持し、反応を終了した。加熱の間、メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度は安立計器株式会社製光ファイバー温度計(FL−2000)のファイバープローブを懸濁液中に浸漬することで温度の計測および制御を行った。生成物をヘキサンに分散し、TEM観察を行った結果、ナノサイズの銀微粒子が生成していることが確認された。銀微粒子の収率は90%以上であった。得られた画像から粒径分布を計測した結果、粒径4nmにピークを持つ平均粒径4.0nmの銀微粒子が生成していた。図3にTEM画像を示し、図4に粒径分布を示す。
マイクロ波非吸収溶媒として、1,3,5−トリメチルベンゼンを使用し、マイクロ波吸収溶媒として、1−ヘキサノールを使用した。銀/ミリスチン酸(有機修飾剤)のモル比は1.05であった。
【実施例3】
【0031】
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器に種々の混合割合で混合した1,3,5−トリメチルベンゼンおよび1−ヘキサノールを表1、2に記載の溶媒の混合割合(容量比)と成るように加えた後、酸化銀9gおよび種々の量のミリスチン酸(C13H27COOH)3〜17gを表1および2に記載のモル比となるように添加して分散した。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し、反応温度157℃まで30℃/minで昇温した。157℃に到達した後、10分間その温度を保持し、反応を終了した。加熱の間、メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度は安立計器株式会社製光ファイバー温度計(FL−2000)のファイバープローブを懸濁液中に浸漬することで温度の計測および制御を行った。生成物をヘキサンに分散し、TEM観察を行った結果、ナノサイズの銀微粒子が生成していることが確認された。得られた画像から粒径分布を計測した結果、いずれの試料においても粒径4nmにピークを持つ銀微粒子が生成していた。銀微粒子の収率は90%以上であった。
【0032】
図5には、生成した銀微粒子のTEM画像(銀/有機修飾剤=6、1,3,5−トリメチルベンゼン/1-ヘキサノール=3)を示し、図6にはその粒径分布を示す。表1には、種々の銀/有機修飾剤で合成した銀ナノ粒子の平均粒径を示し、表2には、溶媒の混合比を変えて合成した銀ナノ粒子の平均粒径を示した。表3には、脂肪酸の鎖長を変えて合成した銀ナノ粒子の平均粒径を示した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【実施例4】
【0035】
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器に、マイクロ波非吸収溶媒である1,3,5−トリメチルベンゼン105mlと、マイクロ波吸収溶媒である1−ヘキサノール35mlの混合溶媒を加えた後、酸化銀9g、アルキル鎖長の異なる直鎖飽和脂肪酸(炭素数10〜18)を銀/有機修飾剤のモル比が6となるように添加して分散させた。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し、反応温度157℃まで30℃/minで昇温した。157℃に到達した後、10分間その温度を保持し、反応を終了した。加熱の間、メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度は安立計器株式会社製光ファイバー温度計(FL−2000)のファイバープローブを懸濁液中に浸漬することで温度の計測および制御を行った。生成物をヘキサンに分散し、TEM観察を行った結果、ナノサイズの銀微粒子が生成していることが確認された。銀微粒子の収率は90%以上であった。図7には、生成した銀微粒子のTEM画像を示し、図8にはその粒径分布を示す。アルキル鎖の異なる直鎖飽和脂肪酸を有機修飾剤とした場合の生成した銀微粒子の平均粒径を表3に示す。
【0036】
【表3】
【実施例5】
【0037】
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器に1,3,5−トリメチルベンゼン105ml、1−ヘキサノール35mlの混合溶媒を加えた後,水酸化銅3g、ミリスチン酸(C13H27COOH)3.5gを添加し,銅/有機修飾剤のモル比が2となるように添加して分散させた。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し,反応温度を157℃まで30℃/minで昇温した.157℃到達後、10分間その温度を保持し,反応を終了した。加熱の間、メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度は安立計器株式会社製光ファイバー温度計(FL−2000)のファイバープローブを懸濁液中に浸漬することで計測、制御を行った。生成物をヘキサンに分散し、TEM観察を行った結果,ナノサイズの銅微粒子が生成していることが確認された。得られた画像から粒径分布を計測した結果、粒径3nmにピークを持つ平均粒径4.0nmの銅微粒子が生成していることが確認された。図9には生成した銅微粒子のTEM画像を示し、図10にはその粒径分布を示す。
【0038】
(比較例1)
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器に1−ドデカノール175mlのみを加えた後、酸化銀9g、ミリスチン酸(C13H27COOH)17gを添加し、分散した。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し、反応温度の195℃まで加熱することを試みたが所定温度まで昇温せず、銀の微粒子は生成しなかった。このように、マイクロ波非吸収溶媒のみを溶媒とする反応系では温度上昇はできなかった。
【0039】
(比較例2)
還流管を取り付けた1Lのセパラブル容器にエチレングリコール175mlを加えた後、酸化銀9g、ミリスチン酸(C13H27COOH)17gを添加し、分散した。この懸濁液に四国計測工業株式会社製キャビティ型マイクロ波反応装置(SMW−107)を用いて、マイクロ波(2.45GHz)を照射し、反応温度195℃まで30℃/minで昇温した。195℃到達後、10分間その温度を保持し、反応を終了した。加熱の間メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度は安立計器株式会社製光ファイバー温度計(FL−2000)のファイバープローブを懸濁液中に浸漬することで温度の計測および制御を行った。生成物をヘキサンに分散しTEM観察を行った結果、ナノサイズの銀微粒子が生成していることが確認された。マイクロ波を吸収し易い有機溶媒であるエチレングリコールのみを媒体としても銀微粒子は生成したが、その収率は20%以下であり、効率的な金属微粒子の製造はできなかった。
【0040】
(比較例3)
還流管を取り付けた300mlの丸底フラスコに1,3,5−トリメチルベンゼン30mlと1−ヘキサノール10mlの混合溶媒を加えた後、酸化銀3g、ミリスチン酸(C13H27COOH)1gを添加して分散させた。この懸濁液をマントルヒーターで反応温度157℃まで最大出力で昇温した。157℃に到達した後、10分間その温度を保持したが、反応は完全に終了しておらず、図14に示すように固形物が残存していた。さらに4時間157℃で保持することにより固形物はなくなったが、生成物をヘキサンに分散しTEM観察を行った結果、図15に示すように数100nm程度の凝集物が認められた.加熱の間、メカニカル撹拌機で撹拌を行い、反応温度はK熱電対を懸濁液中に浸漬することで温度の計測および制御を行った。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒にマイクロ波を照射して加熱することにより金属微粒子を製造する方法であって、入手が容易な金属酸化物あるいは金属水酸化物を利用して数分から十数分間の短時間の反応で単分散性、約4nmのナノサイズ金属微粒子を製造することができる。金属ナノ粒子のこれまで開発のメインは金、銀であったが、最近では銅ナノ粒子など各種の金属微粒子が注目され、高密度磁気記録媒体、高感度ガスセンサー等への応用、超微粒子として選択性の高い触媒や高効率水素吸蔵材などへの応用、セラミックス、ポリマーなどとの複合化による新機能材としての応用研究がなされている有望な材料である。
【0042】
金属微粒子は極小であることから、例えば、金では粒子径が10nm以下になると融点が大きく低下するなど、元の金属とは異なる性質を示すといった特性や、表面積が大きくなることで高活性となり高い触媒作用を持つなどの様々な特徴的な物性に基づいて新機能材などの用途が開発されている材料である。本発明は、このような有望な材料を製造するための新しい技術を開発し提供するものであり、幅広い用途分野において利用される金属微粒子の製造技術として有用である。
【符号の説明】
【0043】
1:マイクロ波発生装置
2:マイクロ波導波管
3:反応容器
4:反応液
5:マイクロ波遮蔽部材(スカート)
6:マイクロ波漏洩防止部材
7:マイクロ波透過材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒にマイクロ波を照射して加熱することにより金属微粒子を製造する方法であって、該有機溶媒がマイクロ波を吸収し易い有機溶媒とマイクロ波を吸収し難い有機溶媒の混合溶媒からなり、該混合溶媒中に金属酸化物または金属水酸化物の金属元素に対し等モル量以下の有機修飾剤を含有することを特徴とする金属微粒子の製造方法。
【請求項2】
金属酸化物または金属水酸化物が、銀、銅、ニッケルから選ばれた1種またはそれ以上の金属である請求項1に記載の金属微粒子の製造方法。
【請求項3】
混合溶媒中に含まれている、(マイクロ波を吸収し易い有機溶媒):(マイクロ波を吸収し難い有機溶媒)の値が容積比で9:1〜1:9の範囲にある請求項1または2のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
【請求項4】
マイクロ波を吸収し難い有機溶媒が炭素数8以上の1価アルコールまたは炭化水素から選ばれ、マイクロ波を吸収し易い有機溶媒が炭素数7以下の1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる請求項1から3のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
【請求項5】
混合溶媒中に含まれている、(金属酸化物または金属水酸化物の金属元素):(有機修飾剤)の値がモル比で1.05:1〜6:1の範囲にある請求項1から4のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
【請求項6】
有機修飾剤が、炭素数10以上の脂肪酸から選ばれる請求項1から5のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
【請求項7】
マイクロ波を金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒にのみ照射する請求項1から6のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射装置であって、マイクロ波発生装置、該マイクロ波発生装置から照射されるマイクロ波の照射領域内に設置されたマイクロ波透過材料からなる容器、マイクロ波遮蔽部材を有し、該マイクロ波遮蔽部材が容器内で金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒が収納されていない空間部を覆うように設置されていることを特徴とするマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射装置であって、マイクロ波発生装置、マイクロ波透過材料からなる容器、マイクロ波発生装置からマイクロ波を容器に誘導する導波管を有し、導波管は容器内のマイクロ波を金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒が収納されている部分にのみ直接マイクロ波を照射するように設置されていることを特徴とするマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
【請求項10】
複数の導波管から照射されたマイクロ波が、該容器内の金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒にのみ直接照射されるように導波管が設置されている請求項9に記載のマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
【請求項11】
容器を構成するマイクロ波透過部分は、その面積が導波管の断面積よりも広く、金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒の規定量を容器内に投入した時にマイクロ波透過部分の全面が金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒と接触状態となる位置にあり、該導波管の外側にマイクロ波漏洩防止部材を配置した請求項9に記載のマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
【請求項12】
請求項1から7のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射装置であって、マイクロ波発生装置、該マイクロ波発生装置から照射されるマイクロ波の照射領域内に設置された容器からなり、該容器でマイクロ波が照射される箇所のみがマイクロ波透過材料から形成されていることを特徴とするマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
【請求項1】
金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒にマイクロ波を照射して加熱することにより金属微粒子を製造する方法であって、該有機溶媒がマイクロ波を吸収し易い有機溶媒とマイクロ波を吸収し難い有機溶媒の混合溶媒からなり、該混合溶媒中に金属酸化物または金属水酸化物の金属元素に対し等モル量以下の有機修飾剤を含有することを特徴とする金属微粒子の製造方法。
【請求項2】
金属酸化物または金属水酸化物が、銀、銅、ニッケルから選ばれた1種またはそれ以上の金属である請求項1に記載の金属微粒子の製造方法。
【請求項3】
混合溶媒中に含まれている、(マイクロ波を吸収し易い有機溶媒):(マイクロ波を吸収し難い有機溶媒)の値が容積比で9:1〜1:9の範囲にある請求項1または2のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
【請求項4】
マイクロ波を吸収し難い有機溶媒が炭素数8以上の1価アルコールまたは炭化水素から選ばれ、マイクロ波を吸収し易い有機溶媒が炭素数7以下の1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる請求項1から3のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
【請求項5】
混合溶媒中に含まれている、(金属酸化物または金属水酸化物の金属元素):(有機修飾剤)の値がモル比で1.05:1〜6:1の範囲にある請求項1から4のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
【請求項6】
有機修飾剤が、炭素数10以上の脂肪酸から選ばれる請求項1から5のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
【請求項7】
マイクロ波を金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒にのみ照射する請求項1から6のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射装置であって、マイクロ波発生装置、該マイクロ波発生装置から照射されるマイクロ波の照射領域内に設置されたマイクロ波透過材料からなる容器、マイクロ波遮蔽部材を有し、該マイクロ波遮蔽部材が容器内で金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒が収納されていない空間部を覆うように設置されていることを特徴とするマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射装置であって、マイクロ波発生装置、マイクロ波透過材料からなる容器、マイクロ波発生装置からマイクロ波を容器に誘導する導波管を有し、導波管は容器内のマイクロ波を金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒が収納されている部分にのみ直接マイクロ波を照射するように設置されていることを特徴とするマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
【請求項10】
複数の導波管から照射されたマイクロ波が、該容器内の金属酸化物または金属水酸化物を分散した混合溶媒にのみ直接照射されるように導波管が設置されている請求項9に記載のマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
【請求項11】
容器を構成するマイクロ波透過部分は、その面積が導波管の断面積よりも広く、金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒の規定量を容器内に投入した時にマイクロ波透過部分の全面が金属酸化物または金属水酸化物を分散した有機溶媒と接触状態となる位置にあり、該導波管の外側にマイクロ波漏洩防止部材を配置した請求項9に記載のマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
【請求項12】
請求項1から7のいずれかに記載の金属微粒子の製造方法を実施するためのマイクロ波照射装置であって、マイクロ波発生装置、該マイクロ波発生装置から照射されるマイクロ波の照射領域内に設置された容器からなり、該容器でマイクロ波が照射される箇所のみがマイクロ波透過材料から形成されていることを特徴とするマイクロ波による金属微粒子の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−12290(P2011−12290A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155455(P2009−155455)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000180313)四国計測工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000180313)四国計測工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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