説明

金属酸化物ナノ粒子の製造方法、ならびにそれにより製造されるナノ粒子および調製物

本発明は、a)少なくとも1種の金属イオンおよびその錯体を含む出発水溶液を少なくとも0.1%w/wの金属成分の濃度で調製する工程;b)50℃よりも高い温度を有する改変用水溶液を調製する工程;c)混合チャンバー中、連続方式で、改変用水溶液を出発水溶液と接触させ、改変された系を形成する工程;d)混合チャンバーから改変された系を押し出し流れ方式で取り出す工程を含む、小さなサイズの金属酸化物粒子を形成する方法であって、i)混合チャンバーにおける滞留時間が約5分未満であり、そしてiii)形成された粒子またはその凝集体が存在し、大部分の形成された粒子が約2nm〜約500nmの大きさであることを特徴とする方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小さなサイズの金属酸化物粒子の製造方法に関し、より詳しくは、所望の粒度、粒度分布、および晶癖を有する金属酸化物粒子を、工業的かつ経済的に有用な手法で製造する方法に関する。本発明において、用語金属酸化物は、式Metalの金属酸化物(例えばSnO、SnO、Al、SiO、ZnO、CoO、Co、CuO、CuO、Ni、NiO、MgO、Y、VO、VO、V、V、MnO、MnO、CdO、ZrO、PdO、PdO、MoO、MoO、Cr、CrO、およびRuO)、式Metal(OH)の金属水酸化酸化物(例えばSn(OH)、Sn(OH)、Al(OH)、Si(OH)、Zn(OH)、Co(OH)、Co(OH)、CuOH、Cu(OH)、Ni(OH)、Ni(OH)、Mg(OH)、Y(OH)、V(OH)、V(OH)、V(OH)、Mn(OH)、Mn(OH)、Cd(OH)、Zr(OH)、Pd(OH)、Pd(OH)、Mo(OH)、Cr(OH)、およびRu(OH))、金属酸、これらの種々の水和形態、およびこれらが主成分である組成物(式中、x、y、p、q、rはそれぞれ全整数である)を意味し、これらを含む。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物は、例えば研磨剤、触媒、化粧品、電子機器、磁性物質、顔料・被覆剤、および構造用セラミックスといった広範囲の用途で使用されている。
【0003】
(研磨剤)
ナノ粒子は、適切に分散された場合、重要な研磨およびつや出しの用途において、優れた効果を示す。適切に分散された製品の、超微粒子の大きさおよび分布には、実質的にいかなる他の市販の研磨剤も匹敵しない。この結果は、従来の研磨材料と比較した場合の、表面欠陥サイズが有意に減少したものである。金属酸化物ナノ粒子は、主として一般的な研磨剤、硬質メモリディスクの研磨、半導体の化学機械平坦化(CMP)、シリコンウエハーの研磨、光学研磨、光ファイバーの研磨、および宝石の研磨として使用される。主な使用される製品は、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化スズ、および酸化クロムである。
【0004】
(触媒)
金属酸化物ナノ粒子は、非常に反応性である強力に圧迫された表面原子のために、強い触媒能を有する。したがって、金属酸化物ナノ粒子は、主に一般的な触媒(例えば二酸化チタン、酸化亜鉛およびパラジウム)、酸化還元触媒(例えば酸化鉄)、水素合成触媒(例えば酸化鉄、二酸化チタン)、有価金属のための基材といった触媒担体(例えば酸化アルミニウムおよび二酸化チタン)、排出制御用触媒、石油精製用触媒ならびに廃棄物管理用触媒として使用される。
【0005】
(化粧品)
金属酸化物ナノ粒子は、優れた化粧品をつくり出すことを容易にする。金属酸化物ナノ粒子は、化学品を使用することなく強い紫外線減衰をもたらし、所望の場合は、可視光に対する透明性を与え、広範囲の化粧品ビヒクルに均一に分散され、非凝結性化粧品を提供し得る。金属酸化物ナノ粒子は、主に日焼け止め、SPF(太陽光線防護ファンデーション(sun protection foundation))を有する保湿剤、SPFを有するカラーファンデーション、SPFを有する口紅、SPFを有するリップクリーム、フットケア製品、および軟膏として使用される。化粧用途の主な製品は、酸化亜鉛粉末、ZnO分散液、FE45B(褐色酸化鉄)、TiO分散液、黒色金属酸化物顔料、赤色金属酸化物顔料、黄色金属酸化物(metal-yellow oxide)顔料、および青色金属酸化物(metal-blue oxide)顔料である。
【0006】
(電子機器)
金属酸化物ナノ粒子は、既存および将来の科学技術において使用するための、新規かつ独特の電気特性および伝導特性を提供し得る。金属酸化物ナノ粒子は、主にバリスタ(例えば酸化亜鉛)、透明導電体(インジウムスズ酸化物)、高誘電性セラミックス、導電性ペースト、コンデンサー(二酸化チタン)、CRTディスプレイ用蛍光体(例えば酸化亜鉛)、エレクトロルミネセンスパネルディスプレイ(例えば酸化亜鉛)、電子回路用セラミック物質(例えば酸化アルミニウム)、自動車エアバッグの噴射剤(例えば酸化鉄)、蛍光管内部の蛍光体(例えば酸化亜鉛)、そして白熱灯用反射体(例えば二酸化チタン)として使用される。
【0007】
(磁性物質)
金属酸化物ナノ粒子は、既存および将来の科学技術において使用するための、新規かつ独特の磁気的性質を提供し得る。金属酸化物ナノ粒子は、主に磁性流体(ferrofluids)、および磁性(magnetorheological)(MR)流体として使用される。
【0008】
(顔料・被覆剤)
金属酸化物ナノ粒子は、優れた顔料および被覆剤をつくり出すことを容易にする。金属酸化物ナノ粒子は、強い紫外線減衰をもたらし、所望の場合は、可視光に対する透明性を与え、そして広範な物質に均一に分散され得る。該ナノ粒子はまた、経時的な劣化および退色に耐えるであろう、より鮮明な色を提供し得る。金属酸化物ナノ粒子は、主に一般的な顔料・被覆剤、マイクロ波吸収被覆剤、レーダー吸収被覆剤、紫外線防護透明被覆剤、塗料用殺菌剤、粉体被覆剤、および自動車用顔料(金属外観のために雲母上で曇りが除去される)として使用される。
【0009】
(構造用セラミックス)
金属酸化物ナノ粒子は、セラミック部品の製造で使用することができる。超微細サイズの該粒子は、超塑性変形によりセラミック部品のニアネットシェイピング(near-net shaping)を可能にし、これによりコストのかかる後形成の機械加工の必要性を減少させることにより、製造コストを減少させ得る。金属酸化物は、主として発光管エンベロープ用透光性セラミックス、金属基複合材料の強化剤、気体濾過のための多孔性膜、およびネットシェイプして得られた耐摩耗性部品として使用される。
【0010】
多くの重要なナノ金属酸化物粉末が、まだ商品化されていない。ナノ金属酸化物を実現するために使用された、報告されているプロセスは、非常に費用がかかり、低収率であり、そして最も重要なことには、製造規模を増大することが困難であり得た。
【0011】
以下は、金属酸化物ナノ粒子を合成するための、先行技術において説明されているいくつかの方法である。
【0012】
(気相合成)
気相でナノ粒子を合成するためのいくつかの方法が存在する。これらとしては、ガスの濃縮処理、化学蒸着、マイクロ波プラズマ処理、および燃焼炎合成が挙げられる。これらの方法において、出発材料は、ジュール加熱式耐火性るつぼ、電子ビーム蒸着装置、スパッタ源、高温壁型反応器(hot wall reactors)などのエネルギー源を用いて気化される。次いでナノサイズのクラスターが、均一な核形成によって該源の付近で蒸気から凝縮する。その後、機械式濾過装置または冷たい指を用いて、クラスターが収集される。これらの方法は、製造速度において意義ある達成として引用される、数十グラム/時間で、少量の非凝集物質を生成させる。
【0013】
(機械的摩耗またはボールミル粉砕)
この方法は、激しい塑性変形の結果として、粗く磨砕した材料の構造的分解によって、ナノ結晶材料を製造するために使用することができる方法である。最終生成物の質は、粉砕エネルギー、時間、および温度の関数である。直径数ナノメートルの粒度を達成するために、小量のバッチに対して、かなり長い処理時間または数時間を要する。この方法の別の主な欠点は、粉砕された材料が、粉砕媒体からひどく汚染されやすいことである。
【0014】
(ゾル−ゲル沈殿に基づく合成)
粒子またはゲルが、加水分解・縮合反応によって形成され、該反応は前駆体の最初の加水分解を含み、続いてこれらの加水分解された前駆体が重合して粒子になる。該加水分解・縮合反応を制御することによって、非常に均一な大きさの分布を有する粒子を沈殿させることができる。ゾル−ゲル法の不利な点は、前駆体が高価であり得、加水分解・縮合反応の注意深い制御が要求され、そして反応がゆっくりであり得ることである。
【0015】
(マイクロエマルションに基づく方法)
マイクロエマルション法は、油内に存在するナノメートルサイズの水性領域に無機反応を制限することによって、ナノメートルサイズの粒子をつくり出す。油中水型マイクロエマルション、または逆相マイクロエマルションと称されるこうした領域は、ある界面活性剤/水/油の組み合わせを用いて、つくり出すことができる。ナノメートルサイズの粒子は、一緒に混合されている2つの異なる逆相マイクロエマルションを調製し、これらを互いに反応させて、粒子を形成させることによって、つくることができる。この方法の欠点は、該方法が小さな反応容積を生じさせることにより、低い生成容積、低い収率、そして費用のかかるプロセスをもたらすことである。
【0016】
(界面活性剤/泡状(Foam)骨格)
このプロセス(米国特許第5,338,834号、および米国特許第5,093,289号に示される)において、規則正しく配列した界面活性剤分子が使用され、該無機材料を形成するための「鋳型」を提供する。界面活性剤分子は、骨格を形成し、無機材料を該界面活性剤構造上、または該界面活性剤構造の周囲に堆積させる。次いで界面活性剤は除去され(一般に焼失させるか、または溶解させることによって)、もとの界面活性剤の構造を模倣する多孔性網状組織を残す。界面活性剤のミセルの直径が極めて小さくなり得るため、該方法を用いてつくり出すことができる細孔経もまた極度に小さく、これが最終生成物の非常に高い表面積をもたらす。
【0017】
(沈殿)
いくつかの特定の場合、反応条件および後処理条件が注意深く制御されれば、沈殿または共沈によって、ナノ結晶材料を生成させることが可能である。沈殿反応は、工業的な規模で無機材料を生成させるために使用される、最も一般的かつ効率的な種類の化学反応の1つである。沈殿反応において典型的には2つの均一な溶液が混合され、その後不溶性物質(固体)が形成される。従来、沈殿を誘発するために、ある溶液が改変用溶液のタンクの中に注入されている。しかしながらこの方法の制御は複雑であり、そのためナノスケールでの粒度の均一な分布およびナノスケールの特定の粒径などの性質を実現することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の主要な目的は、所望の性質(例えば粒度の均一な分布、顧客要求によって変化し得る特定の粒径)のナノスケール金属酸化物粒子、ならびに要求される晶癖および構造のナノ粒子を製造するための工業的かつ経済的なプロセスを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、ナノスケール金属酸化物粒子の製造のために沈殿を使用することである。この方法は、工業的な観点から、単一かつ費用のかからないプロセスであるという最も望ましい性質を特徴とするからである。しかしながら、本発明のさらなる目的は、ナノスケール金属酸化物粒子を製造する従来型のプロセスに変化を加えることであり、このことが該系を制御することを可能にし、市場の厳しい要求を達成することとなる。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、低水和レベルを特徴とするナノスケール金属酸化物粒子の製造のための工業的かつ経済的なプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この先行技術を念頭に置き、
a)少なくとも1種の金属イオンおよびその錯体を含む出発水溶液を少なくとも0.1%w/wのかかる金属濃度で調製する工程、
b)50℃よりも高い温度の改変用水溶液を調製する工程、
c)混合チャンバー中、連続方式で、改変用溶液を出発水溶液と接触させることによって、条件を調節し、改変された系を形成する工程、
d)混合チャンバーから改変された系を押し出し流れ(plug-flow)方式で取り出す工程
を含む、小さなサイズの金属酸化物粒子を形成する方法であって、
i. 混合チャンバーにおける滞留時間が約5分未満であり、そして
ii. 形成された粒子またはその凝集体が存在し、
大部分の形成された粒子が約2nm〜約500nmの大きさである
ことを特徴とする方法が本発明によって、ここで提供される。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語金属は、スズ、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、コバルト、銅、ニッケル、マグネシウム、イットリウム、バナジウム、マンガン、カドミウム、ジルコニウム、パラジウム、モリブデン、クロム、ルテニウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属のことをいう。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語金属酸化物は、好ましくは式Metalの金属酸化物、式Metal(OH)の金属水酸化酸化物、金属酸、これらの種々の水和形態、およびこれらが主成分である組成物(式中x、y、p、q、rはそれぞれ全整数である)からなる群から選択される金属酸化物のことをいう。
【0024】
本発明の好ましい実施態様において、前記式Metalの金属酸化物は、SnO、SnO、Al、SiO、ZnO、CoO、Co、CuO、CuO、Ni、NiO、MgO、Y、VO、VO、V、V、MnO、MnO、CdO、ZrO、PdO、PdO、MoO、MoO、Cr、CrO、およびRuOからなる群から選択される。
【0025】
本発明の好ましい実施態様において、前記式Metal(OH)の金属水酸化酸化物は、Sn(OH)、Sn(OH)、Al(OH)、Si(OH)、Zn(OH)、Co(OH)、Co(OH)、CuOH、Cu(OH)、Ni(OH)、Ni(OH)、Mg(OH)、Y(OH)、V(OH)、V(OH)、V(OH)、Mn(OH)、Mn(OH)、Cd(OH)、Zr(OH)、Pd(OH)、Pd(OH)、Mo(OH)、Cr(OH)、およびRu(OH)である。
【0026】
本発明の第二の態様において、得られた粒子の熱変態(heat-transformation)、か焼(calcination)、または熟成(ripening)といった常套の方法によって、他の金属酸化物粒子を製造するための原料が提供される。
【0027】
本発明の好ましい実施態様において、前記条件の調節は、前記出発水溶液を少なくとも10℃だけ加熱する工程、前記出発水溶液のpHを少なくとも0.2単位上昇させる工程、および該出発水溶液を少なくとも20%希釈する工程の少なくとも1つの工程、またはこれらの組み合わせによって行われるが、一方で前記改変された系は、前記調節条件で、少なくとも0.5分間保持される。
【0028】
本発明の好ましい実施態様において、前記溶液は、前記改変された条件で、少なくとも0.5分間保持される。
【0029】
好ましくは、前記条件の改変は、2時間までの時間にわたって行われる。
【0030】
本発明の好ましい実施態様において、前記プロセスは、1時間あたり少なくとも50キログラムの粒子を生成させる。
【0031】
好ましくは、前記の条件の改変は、100気圧までの圧力で行われる。
【0032】
本発明の好ましい実施態様において、前記方法は、大部分の形成された粒子が50%よりも大きい結晶化度を有することをさらに特徴とする。
【0033】
好ましくは、前記方法は、平均の50%(重量)の形成された粒子の最小粒子と最大粒子との大きさの比が約10未満であり、特に好ましい実施態様においては、該大きさの比は、約5未満であることをさらに特徴とする。
【0034】
本明細書中で用いられる場合、用語平均の50重量%は、粒子の平均の大きさよりも大きい25重量%の粒子、および粒子の平均の大きさよりも小さい25%の粒子を含む、50重量%の粒子を指す。前記大きな25%の粒子および前記小さな25%の粒子は、形成された粒子の大きさの分布を表す標準化された統計図において、大きさが平均の大きさに最も近い粒子である。
【0035】
好ましくは、前記方法は、大部分の形成された粒子が、細長い形状以外の形状のものであることをさらに特徴とする。
【0036】
本発明の好ましい実施態様において、前記方法は、大部分の形成された粒子が、ある寸法と任意の他の寸法との比が約3未満である形状を有することをさらに特徴とする。
【0037】
本発明の他の好ましい実施態様において、大部分の形成された粒子は、細長い形状のものである。
【0038】
好ましくは、大部分の形成された粒子は、少なくとも30m/グラムの表面積を有する。
【0039】
好ましくは、大部分の形成された粒子は、少なくとも100m/グラムの表面積を有する。
【0040】
本発明の特に好ましい実施態様において、前記方法は、か焼(calcination)の工程、すなわち前記形成された粒子を約90℃〜約900℃の範囲の温度に加熱し、脱水した(dehydrated)粒子を形成することをさらに含む。
【0041】
前記の好ましい実施態様において、前記方法は、好ましくは前記改変工程の後、かつ前記脱水の前、前記脱水と同時、または前記脱水の後に、懸濁液の形態にある前記粒子の水の一部を除去する工程をさらに含む。
【0042】
前記の好ましい実施態様において、前記脱水は、好ましくは大気圧を超える(super-atmospheric)圧力下で行われる。
【0043】
前記の好ましい実施態様において、懸濁液の形態にある前記粒子の温度は、好ましくは4時間までの時間にわたって、前記脱水温度に上昇される。
【0044】
前記の特に好ましい実施態様において、大部分の脱水された粒子は、好ましくは細長い形状以外の形状のものである。
【0045】
前記の特に好ましい実施態様において、大部分の脱水された粒子は、好ましくは少なくとも30m/グラムの表面積を有する。
【0046】
本発明の好ましい実施態様において、前記出発水溶液の調製は、金属化合物の溶解、該金属塩溶液への塩基の添加、および金属塩溶液の酸性化を含む。
【0047】
前記の好ましい実施態様において、前記金属化合物は、好ましくは金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、金属鉱物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明において、用語金属錯体は、金属塩、金属錯体、および金属水酸化物を含む。
【0048】
好ましくは前記金属化合物は、金属酸化物、金属水酸化物、前記金属を含有する鉱物、およびこれらの混合物からなる群から選択され、前記化合物は、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、これらの酸性塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酸を含んでなる酸性溶液中に溶解される。
【0049】
本発明の好ましい実施態様において、前記の調製された出発水溶液は、硫酸イオン(sulfate)、塩化物イオン(chloride)、硝酸イオン(nitrate)、リン酸イオン(phosphate)、有機酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される陰イオンを含む。
【0050】
本発明の好ましい実施態様において、前記改変は少なくとも2つの加熱工程を含む。
【0051】
前記の好ましい改変工程において、少なくとも1つの加熱工程は、好ましくは高温の水溶液、高温のガスおよび水蒸気(steam)からなる群から選択される温流と接触させることにより行われる。
【0052】
好ましい実施態様において、前記方法は、好ましくは形成された粒子を磨砕することをさらに含む。
【0053】
好ましい実施態様において、前記方法は、好ましくは形成された粒子をふるい分けることをさらに含む。
【0054】
本発明はまた、上記方法によって形成される限りにおいて、金属酸化物粒子、およびその変換の生成物に関する。
【0055】
本発明はさらに、前記粒子を含む調製物に関する。
【0056】
前記調製物の好ましい実施態様において、前記粒子は好ましくは液体中に分散されるか、固体の化合物に担持されるか、または凝集してより大きな粒子になる。
【0057】
本発明の別の態様において、前記粒子の分散、担体の添加、加熱処理、混合、水の蒸発、噴霧乾燥、溶射、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される工程を含む、上記調製物の製造のためのプロセスが提供される。
【0058】
本発明の特に好ましい実施態様において、前記粒子および調製物は、塗料の製造において使用される。
【0059】
本発明の特に好ましい実施態様において、改変された系は、5秒未満の間、前記混合チャンバー中にとどまり、より好ましい実施態様において、改変された系は、0.5秒未満の間、前記混合チャンバー中にとどまる。
【0060】
本発明の好ましい実施態様において、混合チャンバーにおける混合は、入ってくる溶液の流速を利用して、機械的方式の混合または別の方式の混合を用いることによって、行われる。
【0061】
本発明の好ましい実施態様において、改変された系は、押し出し流れ(plug flow)方式で混合チャンバーから出る。より好ましい実施態様において、押し出し流れは0.1秒よりも長い間(for more then)持続し、最も好ましい実施態様において、押し出し流れは5秒よりも長い間(for more then)持続する。
【0062】
本発明の好ましい実施態様において、押し出し流れを出た溶液は、容器に入る。本発明のより好ましい実施態様において、容器中の溶液は混合される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
(発明の詳細な説明)
ここで本発明を以下に詳細に説明することにする。
【0064】
本発明において用いられる出発金属塩水溶液は、好ましくは金属イオンまたはその錯体を少なくとも0.1%w/wの金属の濃度で含む金属塩水溶液である。
【0065】
好ましい実施態様によれば、出発溶液(または金属塩溶液)における金属のw/w濃度は少なくとも2%であり、より好ましくは少なくとも5%であり、最も好ましくは少なくとも10%である。出発溶液の濃度に上限はない。さらに、好ましい実施態様によれば、該濃度は飽和濃度よりも小さい。別の好ましい実施態様によれば、高い粘度は所望されない。さらに別の好ましい実施態様によれば、該溶液中のOH/金属の比は、2よりも小さい。好ましい実施態様によれば、調製された出発溶液の温度は70℃未満である。
【0066】
金属含有鉱石(ores)、かかる鉱石の断片、その処理の生成物、金属塩、または金属含有鉱石から出た水溶液などの金属含有溶液を含めて、任意の金属源が本発明の出発溶液を調製するのに適する。
【0067】
好ましい実施態様によれば、出発溶液の調製時間は20時間未満であり、好ましくは10時間未満であり、最も好ましくは2時間未満である。古い溶液が存在し(例えば再利用した溶液)、新しい溶液と混合して出発溶液を形成しようとする場合、本明細書中以下に説明するように、古い溶液は最初に酸処理される。
【0068】
新たに調製される金属塩の溶液は、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオン、有機酸イオン、およびこれらの種々の混合物といった、任意の陰イオンを含んでもよい。好ましい実施態様によれば、新たに調製される溶液は、金属硫酸塩を含む。別の好ましい実施態様によれば、該塩は有機酸のものである。
【0069】
本発明のプロセスにおいて使用するために新たに調製される塩溶液は、生じた溶液(天然の条件で、例えば金属含有鉱石を有する鉱山から出た溶液など)であってもよく、化学的または生物学的酸化を含む人工的方法によって調製された溶液であってもよい。かかる溶液は、金属塩の溶解;複塩の溶解;酸性溶液中での金属酸化物含有鉱石の溶解;金属塩、硝酸の溶液などの、酸化性溶液中での金属断片の溶解;および金属含有鉱物の浸出を含む、種々の方法またはそれらの組み合わせによって調製され得る。
【0070】
好ましい実施態様によれば、水溶液の調製は単一の工程で行われる。別の実施態様によれば、該調製は2以上の工程を含む。別の実施態様によれば、例えば水または水溶液に塩を溶解することによって、金属塩の濃縮溶液が調製される。溶解の間、一時的におよび/または局所的に、出発溶液の要求されたpHおよび濃度に到達するが、典型的には、少なくとも部分的な均質化の後の形成された濃縮溶液のpHは、出発溶液に対して所望されるよりも低い。好ましい実施態様によれば、このような一時的な所望の条件の到達は、出発溶液の調製とは考えない。濃縮溶液のpHは、次いで酸の除去、塩基性化合物の添加および/もしくは濃度の増大、またはこれらの組み合わせなどの任意の適切な手段によって、所望のレベルに達する。好ましい実施態様によれば、そうした場合の出発溶液の形成は、pHの選択された範囲への調節と考えられ、別の好ましい実施態様によれば、出発溶液のpHは、少なくとも部分的な均質化の後に得られるpHである。さらに別の好ましい実施態様によれば、濃縮溶液が調製され、pHが所望されるよりも幾分低いレベルに調節される。次いで出発溶液が該溶液の希釈により調製され、該希釈はpHを所望のレベルに増大させる。ここでもまた、好ましい実施態様によれば、出発溶液のpHは、少なくとも部分的な均質化の後に得られるpHである。同じことが例えば金属塩の溶液を形成する場合のように、出発溶液の多段階調製の他の方法にも当てはまる。
【0071】
好ましい実施態様によれば、出発溶液は新たに調製される。別の好ましい実施態様によれば、該溶液は、再利用溶液を新たに調製した溶液と混合する場合のような、別の時に調製したイオンおよび/または錯体を含まない。
【0072】
本発明のさらに別の好ましい実施態様において、金属のpKaよりも低いpH、高濃度(例えば金属が10%を超える)、および低温(例えば40℃未満)で、溶液は、その新しさをより長い時間維持し、貯蔵溶液として役立ち得る。
【0073】
本発明で用いられる場合、用語金属のpKaは、以下の反応:
+HO← →(MOH)X−1+H
に関して、金属の加水分解定数Kaの対数値を指し、
一方、
Ka=[(MOH)X−1]*[H]/[M]*[HO]
(式中Mは金属を表し、XまたはX−1は価数を表す)
である。
【0074】
他の条件で、該溶液は数時間後、または数日後には、新しくないと考えられる。
【0075】
好ましい実施態様によれば、溶液の新しさは、酸処理によって回復される。そのような新しさの低い溶液は、(pKa−1.5)の値よりも低いpH、そして好ましくは(pKa−2)よりも低いpHに酸性化され、好ましくは少なくとも5分間、混合、攪拌、または振盪してから、pHを増大させ、最初の値に戻し、新しい溶液を再形成する。好ましい実施態様によれば、かかる再形成された新しい溶液は、他の新しい溶液と混合される。
【0076】
プロセスの次の工程において、金属の溶液は、好ましくは14日を越えない保持時間の間、70℃よりも低い温度で保持される。保持時間の間に加水分解が起こる。好ましい実施態様によれば、保持時間は、1ミリモルの金属あたり溶液中で少なくとも0.1ミリモルのH(プロトン)を生じるのに必要とする時間である。さらに別の好ましい実施態様によれば、保持時間の間に塩基または塩基性化合物が溶液に加えられる場合、保持時間は、塩基の添加なしでこうした量のプロトンを形成させるのに必要とされたであろう時間である。
【0077】
好ましい実施態様によれば、調製された溶液のpHの増大とともに減少する保持時間の間、出発溶液は保持される。したがって、例えばpKa(金属の)よりも低いpHでは、保持時間は好ましくは20分〜数日である。(pKa+1)〜(pKa+4)の値のpHでは、保持時間は好ましくは1日未満である。保持時間の間にpHを変化させる場合、保持時間は到達した最大のpHに影響される。典型的には保持時間は、溶液の温度の増大とともに減少する。
【0078】
上記方式の沈殿を達成するために必要とされる工程(c)は、pHおよび/もしくは温度の増大、ならびに/または溶液の希釈の少なくとも1つを達成するための、溶液の条件の改変、または調節である。
【0079】
条件の改変は、好ましくは短時間で行われ、改変された条件は短時間維持される。改変された条件の時間は、例示的な実施態様によれば、24時間未満であり、好ましくは4時間未満であり、より好ましくは2時間未満であり、そして最も好ましくは10分未満である。本発明の他の好ましい実施態様において、条件の改変は、2時間以内、好ましくは10分以内、そしてより好ましくは1分以内に行われる。
【0080】
改変段階におけるpHの増大は、酸の除去、または塩基性化合物の添加もしくは濃度の増大などの任意の公知の方法によって達成することができる。酸の除去は、抽出または蒸留などの公知の方法によって行い得る。任意の塩基性化合物が添加され得る。好ましい実施態様によれば、塩基性化合物は、等モルの溶液のpHを比較することによって測定した場合、金属硫酸塩よりも塩基性である化合物である。したがって、かかる塩基性化合物は、好ましくは、無機塩基、もしくは有機塩基、または塩基の前駆体、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、アンモニア、尿素など、の少なくとも1つである。かかるpHの増大方法はまた、出発溶液を調製する工程(a)における使用にも適する。好ましい実施態様によれば、プロセスの大部分を通じて、塩基性のpHは避けられ、したがって工程(c)におけるpHの増大は、当該工程の大部分の時間の間、pHが酸性、または弱酸性となるように行われる。
【0081】
別の好ましい実施態様によれば、工程(a)におけるpHは、酸の添加により減少される。好ましい実施態様によれば、酸の陰イオンは、金属塩に存在する陰イオンと同じであるが、他の陰イオンも使用し得る。
【0082】
別の好ましい実施態様によれば、該溶液は、工程(c)において希釈される。好ましい実施態様によれば、希釈は、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも100%、そして最も好ましくは少なくとも200%である。
【0083】
別の好ましい実施態様によれば、該溶液の温度は上げられる。さらに別の好ましい実施態様によれば、温度は少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも30℃、さらにより好ましくは少なくとも50℃、そして最も好ましくは少なくとも80℃上げられる。温度の上昇は、高温表面との接触、高温の液体との接触、高温の蒸気との接触、赤外線照射、マイクロ波照射(microwaving)、またはこれらの任意の組み合わせなどの任意の公知の方法によって影響を受け得る。
【0084】
別の好ましい実施態様によれば、2つの、または3つのすべての改変が、逐次または同時に行われる。したがって、好ましい実施態様によれば、塩基性化合物が前記改変用水溶液で、金属塩の溶液(出発溶液)に加えられ、該改変用水溶液は金属塩も希釈する。別の好ましい実施態様によれば、金属塩の溶液は、水および/または水溶液を含む改変用溶液と接触させられ、該改変用溶液は、第一の好ましい実施態様によれば、金属塩の溶液の溶液よりも少なくとも50℃、そして好ましくは少なくとも100℃高い温度のものである。別の実施態様によれば、前記希釈用溶液の温度は、約100℃〜250℃であり、別の好ましい実施態様によれば150℃〜250℃である。さらに別の好ましい実施態様によれば、前記改変用溶液は、金属イオン、その錯体、および/またはこれらの粒子と相互作用する試薬を含む。
【0085】
さらに別の好ましい実施態様によれば、金属塩の溶液は、保持時間の後、工程(c)において、金属塩よりも塩基性である溶質を含む前記改変用水溶液と合わせられ、該改変用溶液は、金属塩の溶液よりも温度が高い。好ましい実施態様によれば、金属塩の溶液と前記改変用溶液は、均一な系を迅速に達成するために、例えば機械的に、強力な混合を提供する適切な機器で混合される。少なくとも1つのこうした溶液の温度が沸点を超える場合、混合機器は、好ましくは大気圧を超える(super-atmospheric)圧力に耐えるように選択される。好ましい実施態様によれば、混合は、流れる金属塩の溶液を、流れる改変用水溶液と、例えば押し出し流れ方式で接触させることによって行われる。好ましくは、混合された流れは、その形成された温度で保持されるか、または例示的な実施態様によれば1日未満、好ましくは1〜60分、より好ましくは0.5〜15分の短時間の冷却もしくは加熱によって与えられる別の温度で保持される。
【0086】
改変された系の温度は、出発溶液の温度、および高温の改変用溶液の温度、これらの熱容量、ならびにこれらの相対量によって決まる。好ましい実施態様によれば、改変された系の温度は、変化を最小限にして、例えば20℃を超える変化を有することなく、保持される。好ましい実施態様によれば、改変された系は、1〜30分の時間、より好ましくは3〜15分の時間、そうした温度で保持される。
【0087】
80℃よりも高い温度の改変用水溶液と出発溶液とは、混合チャンバー中、連続方式で接触させられ、改変された系を形成する。混合チャンバーは、溶液の迅速で効率的な混合を確実にするように構築される。改変された系は、混合チャンバーから押し出し流れ方式で取り出される。押し出し流れの間に沈殿が完結するか、または別の好ましい実施態様において、該溶液は、押し出し流れ時間の間に沈殿を析出し尽くさず(not exhausted)、別の容器の中で沈殿が続く。
【0088】
好ましくは混合チャンバーにおける混合は、入ってくる溶液の流速を利用して、または機械的混合手段もしくは別の方式の混合を用いることによって、行われる。
【0089】
1つの好ましい実施態様において、混合チャンバー中の温度と押し出し流れの間の温度は、同じくらいである。別の好ましい実施態様において、押し出し流れの間の溶液の温度は、混合チャンバー中の温度よりも高く、さらに別の好ましい実施態様において、押し出し流れの間の溶液の温度は、混合チャンバー中の温度よりも低い。
【0090】
本発明の好ましい実施態様において、酸、および塩基からなる群から選択される化合物を含有する溶液が、前記出発溶液、改変用溶液、および改変された系からなる群から選択される少なくとも1つの溶液に加えられる。
【0091】
本発明の好ましい実施態様において、混合チャンバーにおける滞留時間は、約5分未満であり、1分未満の滞留時間がより好ましい。さらにより好ましい実施態様において、混合チャンバーにおける滞留時間は、約5秒未満であり、特に好ましい実施態様において、滞留時間は、0.5秒未満である。
【0092】
本発明の好ましい実施態様において、押し出し流れを出た溶液は、容器に入る。本発明のより好ましい実施態様において、容器中の溶液は混合される。
【0093】
加熱、pHの上昇、および希釈の程度は、改変のための単一の手段として、または組み合わせて行われる場合、形成された粒子の化学的性質に影響する。例えば典型的には、温度が高いほど粒子成分の水和度は低い。結晶型および結晶の形状にもまた影響する。
【0094】
好ましい実施態様によれば、最終生成物の酸化物は、プロセスの工程(c)において形成される。別の好ましい実施態様によれば、工程(c)の生成物は、さらに処理され、所望の最終生成物に変態する(transformed)。
【0095】
好ましい実施態様によれば、かかるさらなる処理は、加熱、および/または部分的なもしくは完全な水の除去を含む。好ましくは、加熱は、約90℃〜900℃の範囲の温度へのものである。別の好ましい実施態様によれば、形成された粒子は、最初に溶液から分離される。分離された粒子は、そのまま処理してもよく、さらなる処理、例えば洗浄および/または乾燥の後に処理してもよい。溶液の加熱は、好ましくは大気圧を超える圧力で、そしてかかる圧力に適した機器で行われる。好ましい実施態様によれば、外圧(external pressure)が加えられる。加熱の性質もまた制御因子であり、したがって徐々に加熱した結果が急速な加熱の結果と異なる場合がある。好ましい実施態様によれば、工程(c)およびさらなる加熱は、連続的に、好ましくは同じ容器の中で行われる。
【0096】
好ましい実施態様によれば、変態した粒子の晶癖は、該変態した粒子が生じてきた起源の粒子の一般的な晶癖である。例えば棒状の粒子は、細長い粒子に変態させることができる。
【0097】
本発明の別の実施態様において、低い粒子寸法比を有する無定形の金属酸粒子は、高い寸法比を有する粒子に変態させることができる。
【0098】
本発明の別の実施態様において、棒状の晶癖を有する凝集体、または球状の晶癖の凝集体は、それぞれ棒状の晶癖を有する粒子、または球状の晶癖を有する凝集体に変態させることができる。
【0099】
理解されることになるように、本発明は、容易に変態する沈殿の生成についての条件、および優れた特性を有する変態生成物を提供すること、を提供する。
【0100】
好ましい実施態様によれば、少なくとも1つの分散剤が、少なくとも1つの方法工程に存在する。本明細書で用いられる場合、用語分散剤は、分散剤、界面活性剤、ポリマー、およびレオロジー調節剤(rheological agents)を意味し、それらを含む。したがって、好ましい実施態様によれば、分散剤は、金属塩を溶解しているか、もしくは溶解しようとする溶液に導入されるか、または鉱石などの溶液の前駆体に加えられる。別の好ましい実施態様によれば、分散剤は、保持時間の間か、またはその後に溶液に加えられる。別の実施態様によれば、分散剤は調節工程の前か、またはかかる工程の後に溶液に加えられる。さらに別の好ましい実施態様によれば、分散剤は、変態させる工程の前、かかる工程の間、またはその後に加えられる。別の好ましい実施態様によれば、プロセスは、プロセスの間に分散剤の濃度および/もしくは性質を変化させる工程をさらに含み、ならびに/または別の分散剤が添加される。好ましい実施態様によれば、適切な分散剤は、ナノ粒子および/または核の表面に吸着する能力を有する化合物である。適切な分散剤としては、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、非イオン性ポリマー、界面活性剤、ポリイオン(poly-ions)、およびこれらの混合物が挙げられる。本明細書において、用語「分散剤」は、形成された粒子の分散を安定化し得る分子、および/もしくはナノ粒子の形成の機構を改変し得る分子、ならびに/またはナノ粒子の形成のプロセスの間に形成される任意の化学種の構造、性質および大きさを改変し得る分子に関する。
【0101】
好ましい実施態様によれば、前記分散剤は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ポリエチレングリコール、ならびにSolsperse(登録商標)グレード、Efka(登録商標)グレード、Disperbyk(登録商標)またはByk(登録商標)グレード、Daxad(登録商標)グレードおよびTamol(登録商標)グレードなどの市販の分散剤からなる群から選択される。
【0102】
好ましい実施態様によれば、プロセスは、少なくとも1つのプロセス工程の間または後に、該溶液を超音波処理する工程をさらに含む。
【0103】
好ましい実施態様によれば、プロセスは、少なくとも1つのプロセス工程の間または後に、該溶液をマイクロ波処理する工程をさらに含む。
【0104】
好ましい実施態様によれば、さらなる処理は、粒子を部分的に融合させ、より大きいサイズの粒子にすることを含む。別の好ましい実施態様によれば、粒子の凝集体は粉砕のために機械的に処理される。
【0105】
工程(c)において、またはさらなる変態の後に形成される本発明の生成物は、好ましくは金属酸化物の小さなサイズの粒子である。好ましい実施態様によれば、粒経は2nm〜500nmの範囲である。別の好ましい実施態様によれば、生成物の粒子の粒度分布は狭く、形成された粒子の平均の50%(重量)の最小粒子と最大粒子との大きさの比は、約10未満であり、より好ましくは5未満であり、最も好ましくは3未満である。
【0106】
好ましい実施態様によれば、分離した粒子が形成される。別の実施態様によれば、形成された粒子は、少なくとも部分的に凝集している。
【0107】
好ましい実施態様によれば、大部分の形成された粒子は、X線分析によって測定される場合、50%よりも大きい結晶化度を有する。
【0108】
好ましい実施態様によれば、工程(c)において、またはさらなる変態の後に形成される粒子の形状は、針、棒、またはいかだ(rafts)のように細長い。
【0109】
別の好ましい実施態様によれば、粒子は球状またはほぼ球状であり、したがって大部分の形成された粒子は、1つの寸法と任意の他の寸法との比が約3未満である形状を有する。
【0110】
好ましい実施態様によれば、大部分の形成された粒子は、少なくとも30m/グラム、より好ましくは少なくとも100m/グラムの表面積を有する。本発明の高い表面積の粒子は、触媒の調製に使用するのに適する。
【0111】
本発明のプロセスは、金属鉱石などの比較的低い純度の前駆体から高度に純粋な金属酸化物を形成し得る。好ましい実施態様によれば、純度は、一緒に混合された他の金属に関して、少なくとも95%であり、より好ましくは少なくとも99%である。
【0112】
別の好ましい実施態様によれば、金属酸化物粒子は、他の遷移金属のイオンまたは原子でドープされる。
【0113】
好ましい実施態様によれば、粒子は、液体に分散した粒子、固体化合物に担持された粒子、凝集してより大きい粒子になった粒子、部分的に融合した粒子、被覆された粒子、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される形態で得られる。
【0114】
粒子、その調製物、および/またはその転換の生成物は、顔料、触媒、被覆剤(coatings)、サーマルコーティング剤(thermal coating)などの製造のような多数の工業的用途における使用に適する。粒子は、こうした用途、および好ましい実施態様による用途のような他の用途において使用されるか、別の実施態様によればさらに処理されるか、またはさらに別の好ましい実施態様によればかかる用途のための製作材料の一部として形成される。
【0115】
文献に記載された多くのプロセスは、実験室において使用するために適し、商業的な使用のためにはそれほど実際的ではない。該プロセスは、高度に純粋な前駆体から開始し、高度に希釈した溶液で機能し、および/または低容量かつ低速度である。本発明の方法は、経済的に魅力ある工業規模の製造に非常に適している。好ましい実施態様によれば、該方法は、少なくとも50Kg/時間、より好ましくは少なくとも500Kg/時間の製造速度で機能する。
【0116】
好ましい実施態様によれば、溶液のpHは、金属塩の加水分解によりプロセスの間に低下し、これにより酸、例えば硫酸の形成が達成される。好ましい実施態様によれば、かかる酸は、再利用され、別の好ましい実施態様によれば、例えば金属含有鉱物の溶解において、例えば金属塩の溶液を形成するために再利用される。形成された酸は、プロセスの間に部分的にまたは完全に中和され、これにより該酸の塩を形成する。好ましい実施態様によれば、例えばアンモニアを用いて中和を行い、肥料としての使用に適するアンモニウム塩を形成する場合のように、該塩は、工業的に使用されるものである。
【0117】
本発明は前記説明の詳細に限定されないこと、および本発明はその本質的な属性から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化し得ることは、当業者に明らかになることであり、したがって本実施態様および実施例は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないとみなされ、参照は前記説明に対してではなく添付された特許請求の範囲に対してなされることが所望され、したがって特許請求の範囲と均等の意味および範囲に入るあらゆる変化は特許請求の範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の金属イオンおよびその錯体を含む出発水溶液を少なくとも0.1%w/wの前記金属成分の濃度で調製する工程、
b)50℃よりも高い温度を有する改変用水溶液を調製する工程、
c)混合チャンバー中、連続方式で、改変用水溶液を出発水溶液と接触させ、改変された系を形成する工程、
d)混合チャンバーから改変された系を押し出し流れ方式で取り出す工程
を含む、小さなサイズの金属酸化物粒子を形成する方法であって、
i)混合チャンバーにおける滞留時間が約5分未満であり、そして
ii)形成された粒子またはその凝集体が存在し、
大部分の形成された粒子が約2nm〜約500nmの大きさである
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
a)前記出発水溶液を少なくとも10℃だけ加熱する工程、
b)前記出発水溶液のpHを少なくとも0.2単位上昇させる工程、および
c)該出発水溶液を少なくとも20%希釈する工程、
の少なくとも1つの工程、またはこれらの組み合わせによって、前記系の条件が調節され、前記改変された系が前記調節条件で少なくとも0.5分間保持される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記条件の調節が、2時間未満の時間の間行われる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
大部分の形成された粒子が50%よりも大きい結晶化度を有することをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
平均の50重量%の形成された粒子の最小粒子と最大粒子との大きさの比が約10未満であることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
平均の50重量%の形成された粒子の最小粒子と最大粒子との大きさの比が約5未満であることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
大部分の形成された粒子が、細長い形状以外の形状のものであることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
大部分の形成された粒子が、少なくとも30m/グラムの表面積を有することをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記形成された粒子を約90℃〜約900℃の範囲の温度で脱水し、脱水粒子を形成するためのか焼の工程をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項10】
前記脱水が、大気圧を超える圧力下で行われる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記脱水工程と前記調節工程が同時に行われる、請求項9記載の方法。
【請求項12】
調節がか焼の温度に加熱することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
大部分の脱水された粒子が、細長い形状以外の形状のものであることをさらに特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項14】
大部分の脱水された粒子が、少なくとも30m/グラムの表面積を有することをさらに特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記金属が、スズ、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、コバルト、銅、ニッケル、マグネシウム、イットリウム、バナジウム、マンガン、カドミウム、ジルコニウム、パラジウム、モリブデン、クロム、ルテニウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記金属酸化物が、式Metalの金属酸化物、式Metal(OH)の金属水酸化酸化物、金属酸、これらの種々の水和形態、およびこれらが主成分である組成物(式中x、y、p、q、rはそれぞれ全整数である)からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記式Metalの金属酸化物が、SnO、SnO、Al、SiO、ZnO、CoO、Co、CuO、CuO、Ni、NiO、MgO、Y、VO、VO、V、V、MnO、MnO、CdO、ZrO、PdO、PdO、MoO、MoO、Cr、CrO、およびRuOからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記式Metal(OH)の金属水酸化酸化物が、Sn(OH)、Sn(OH)、Al(OH)、Si(OH)、Zn(OH)、Co(OH)、Co(OH)、CuOH、Cu(OH)、Ni(OH)、Ni(OH)、Mg(OH)、Y(OH)、V(OH)、V(OH)、V(OH)、Mn(OH)、Mn(OH)、Cd(OH)、Zr(OH)、Pd(OH)、Pd(OH)、Mo(OH)、Cr(OH)、およびRu(OH)である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記出発水溶液の前記調製が、以下の動作:
a)金属化合物の溶解、
b)塩基の添加、および
c)金属塩溶液の酸性化
の少なくとも1つを含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記金属化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、これら前記金属化合物を含有する鉱物、およびこれらの混合物からなる群から選択され、前記化合物が硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、有機酸、これらの酸性塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酸を含む酸性溶液中に溶解される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記の調製された出発水溶液が、硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、有機酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される陰イオンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記の調製された出発水溶液中の大部分の陰イオンが硫酸陰イオンである、請求項1記載の方法。
【請求項23】
調製された溶液の金属の濃度が約5重量%よりも大きい、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記金属塩溶液の前記酸性化が、前記金属塩に存在する陰イオンの酸、別の酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される酸の添加によって行われる、請求項19記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2つの加熱工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項26】
以下のa)前記形成された粒子を磨砕する工程、およびb)前記形成された粒子をふるい分ける工程の少なくとも1つの工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
酸、および塩基からなる群から選択される化合物を含む溶液が、前記出発溶液、前記改変用溶液、および前記改変された系からなる群から選択される少なくとも1つの溶液に加えられる、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記出発溶液が、以下の操作:a)超音波、およびb)マイクロ波照射の少なくとも1つによって処理される、請求項1記載の方法。
【請求項29】
請求項1記載の方法によって形成された金属酸化物粒子、およびその変換の生成物。
【請求項30】
金属酸化物粒子の純度が、これとともに混合された他の金属に関して、少なくとも95%であることを特徴とする、請求項29記載の金属酸化物粒子。
【請求項31】
球形状、棒形状、針形状、およびいかだ形状からなる群から選択される形状を有することを特徴とする、請求項29記載の金属酸化物粒子。
【請求項32】
他の化合物の原子でドープされていることを特徴とする、請求項29記載の金属酸化物粒子。
【請求項33】
請求項1記載の方法によって調製された前記金属酸化物粒子を含む調製物。
【請求項34】
前記粒子が、液体中に分散しているか、固体化合物上に担持されているか、凝集してより大きな粒子になっているか、部分的に融合しているか、被覆されているか、またはこれらの任意の組み合わせである、請求項33記載の調製物。
【請求項35】
前記粒子の分散、担体の添加、加熱処理、混合、水の蒸発、噴霧乾燥、溶射、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される工程を含む、請求項33記載の調製物の製造方法。
【請求項36】
請求項29記載の前記粒子、および請求項33記載の前記調製物の少なくとも1つを顔料として使用することを含む方法。
【請求項37】
請求項29記載の前記粒子、および請求項33記載の前記調製物の少なくとも1つを触媒において使用することを含む方法。
【請求項38】
請求項29記載の前記粒子、および請求項33記載の前記調製物の少なくとも1つを被覆剤において使用することを含む方法。
【請求項39】
粒子が少なくとも50Kg/時間の速度で形成される、上記請求項のいずれかに記載の粒子の工業的な製造。
【請求項40】
請求項1記載の工程を含む、顔料の形成方法。
【請求項41】
請求項1記載の工程を含む、触媒の形成方法。
【請求項42】
酸、および塩基からなる群から選択される化合物を含む溶液が、前記出発溶液、改変用溶液、および改変された系からなる群から選択される少なくとも1つの溶液に加えられる、請求項1記載の方法。
【請求項43】
前記塩基性化合物が、アンモニア、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、および尿素からなる群から選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記改変された系の溶液のOH/金属のモル比が4未満である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
改変用溶液の温度が100℃〜300℃の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項46】
前記改変された系が100気圧未満の圧力で保持される、請求項1記載の方法。
【請求項47】
改変された系が1〜30分の時間保持される、請求項1記載の方法。
【請求項48】
前記保持の間、温度が、改変された系の温度から、いずれの方向においても20℃の変化よりも小さい範囲内で保持される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
混合チャンバーにおける滞留時間が約5秒未満である、請求項1記載の方法。
【請求項50】
混合チャンバーにおける滞留時間が約0.5秒未満である、請求項1記載の方法。
【請求項51】
取り出された改変された系が少なくとも0.5分間保持される、請求項1記載の方法。
【請求項52】
取り出された改変された系が晶析装置に導入される、請求項1記載の方法。
【請求項53】
晶析装置の内側の温度が、100〜300℃の範囲に保たれる、請求項52記載の方法。
【請求項54】
金属塩溶液も晶析装置に導入される、請求項52記載の方法。
【請求項55】
分散剤、および塩基性化合物からなる群から選択される試薬が、調製、保持、調節、前記晶析装置における結晶化、前記押し出し流れ方式での流れからなる群の少なくとも1つの工程において存在する、請求項1および52記載の方法。
【請求項56】
前記分散剤が、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、非イオン性ポリマー、界面活性剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記分散剤の量を変化させる工程をさらに含む、請求項55記載の方法。

【公表番号】特表2009−521393(P2009−521393A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548066(P2008−548066)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001469
【国際公開番号】WO2007/074437
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(507132813)ヨマ インターナショナル アーエス (6)
【Fターム(参考)】