説明

金属錯体の合成方法

光化学電池の増感色素として有用なルテニウム金属錯体等の金属錯体の合成プロセスにおいて、反応時間短時間化、高収率化、低設備費化を可能にする合成方法を提供する。 すなわち、金属錯体の合成過程において、マイクロ波照射処理を行い、続いてエージング処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、金属錯体の合成方法に関し、特に、ルテニウムを中心金属とする金属錯体を合成する方法に関する。
【背景技術】
金属錯体、例えば、ルテニウムを中心金属とする金属錯体は、光化学あるいは電気化学で利用されうる湿式太陽電池における増感色素並びに光触媒の原料として注目されている。そこで、金属錯体を、短時間で高収率に量産できる技術の開発が切望されている。現段階でこれらの金属錯体は熱伝導加熱を用い合成されるのが一般的である。
【発明の開示】
しかしながら、従来の金属錯体の合成方法は、反応時間が長く、高収率に金属錯体を得ることは困難であった。
そこで、本発明は、金属錯体、例えば、ルテニウムを中心金属とする金属錯体等を、短時間かつ高収率に合成する方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成すべく、本発明の金属錯体の合成方法は、マイクロ波を用いて行う。
例えば、本発明の第1の態様の金属錯体の合成方法は、ルテニウムを中心金属とする金属錯体の合成方法であって、原料物質と溶媒とからなる反応液に、マイクロ波を照射することを特徴とする金属錯体の合成方法である。
また、本発明の第2の態様の金属錯体の合成方法は、原料物質と溶媒とからなる反応液に、マイクロ波を照射後エージング処理を行うことを特徴とする金属錯体の合成方法である。
前記第1又は第2の態様の金属錯体の合成方法は、さらに、合成目的の金属錯体が溶解した溶液に、酸を添加し、析出した析出物を当該溶液から取り出す工程を有していてもよい。
また、合成目的の金属錯体と未反応の原料とを含む混合物を、有機溶媒に添加して、得られた溶液から、溶解していない物質を取り除く工程を有していてもよい。
また、合成目的の金属錯体と未反応の原料とを含む混合物を、含水量20重量%以下の含水プロトン性有機溶媒に添加して、得られた溶液から、溶解していない物質を取り除く工程を有していてもよい。
また、さらに、合成目的の金属錯体が溶解した溶液に、酸を添加し、析出した析出物を当該溶液から取り出す工程と、取り出した析出物を、有機溶媒に添加して、得られた溶液から溶解していない物質を取り除く工程とを有していてもよい。
また、取り除いた物質を、原料物質として再利用するようにしてもよい。
また、前記反応の溶媒は、沸点が90〜200℃の範囲であってもよい。
また、前記マイクロ波の照射は、照射出力に照射時間を乗じた値が、反応液100mlに対して、40〜1000Whの範囲となるように行われるようにしてもよい。
また、前記エージング処理は、前記反応液を90〜200℃の温度範囲に保持することにより行うようにしてもよい。
また、本発明の第3の態様は、光化学電池の増感色素として使用される金属錯体の処理方法であって、前記金属錯体を、超音波により純水に分散させ後、酸を添加し析出させる工程を行うことを特徴とする金属錯体の処理方法である。
前記第3の態様は、前記工程を、純水に分散させたときの溶液の着色が実質的になくなるまで複数回繰り返して行うようにしてもよい。
前記第1〜3のいずれかの態様の金属錯体は、
一般式(1)
RuLL’ (1)
(上記一般式(1)においてRuはルテニウム原子を表し、L及びL’は配位子を表す。aは2〜4の整数を表し、bは0又は1〜4の整数を表し、a+bは6以下である。)で表される金属錯体であってもよい。
また、前記第1〜第3のいずれかの態様の金属錯体は、
一般式(2)あるいは(3)
RuLL’ (2)
RuL (3)
(上記一般式(2)および(3)においてRuはルテニウム原子を表し、Lはビピリジン系配位子を表し、L’はL以外の配位子を表す。また、前記ビピリジン系配位子とは、2.2’−ビピリジンまたは2.2’−ビピリジンの誘導体である。)で表される金属錯体であってもよい。
前記第1〜3のいずれかの態様の金属錯体は、
一般式(4)
RuL(NCS) (4)
(上記一般式(4)においてRuはルテニウム原子を表し、Lは2.2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を表す。)で表される金属錯体であってもよい。
また、前記第1または第3の態様において、マイクロ波を照射する際、不活性ガス雰囲気及び遮光下にて行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
図1は、第1実施形態にかかる金属錯体の合成方法の処理の流れを示す図である。
図2は、第2実施形態にかかるRu(dcbpy)(NCS)の合成方法の処理の流れを示す図である。
図3は、第3実施形態にかかる金属錯体の合成方法の処理の流れを示す図である。
図4は、マイクロ波を用いる合成装置の概略図である。
図5は、実施例A1によって得た[RuL(NCS)]・2HOの紫外可視吸収スペクトル測定結果である。
図6は、実施例A1によって得た[RuL(NCS)]・2HOのH NMR測定結果である。
図7は、実施例A2によって得たRu(DMSO)ClH NMR測定結果である。
図8は、比較例A1によって得た[RuL(NCS)]・2HOの紫外可視吸収スペクトル測定結果である。
図9は、比較例A1によって得た[RuL(NCS)]・2HOのH NMR測定結果である。
図10は、比較例C1によって得たRu(dcbpy)(NCS)H NMR測定結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の金属錯体の合成方法では、金属源と、配位子となる化合物(「配位子化合物」ともいう。)とを溶媒に溶解もしくは分散させ、マイクロ波を照射させて金属錯体を生成させる。
例えば、ルテニウム源および配位子化合物を溶媒に溶解もしくは分散させ、マイクロ波を照射させてルテニウムを中心金属とするルテニウム錯体を生成させる。反応は、好ましくは、不活性ガス、例えば窒素、アルゴン等のバブリング下で有機溶媒中もしくは純水中で行う。また、上記反応は遮光環境下および不活性ガス雰囲気下で反応を進行させるのが好ましい。上記反応に用いるルテニウム源としては、塩化ルテニウムが好ましいがこれに限定しない。上記反応に用いる有機溶媒としては高沸点有機溶媒が好ましく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール等があげられる。上記反応によって得られたルテニウムを中心金属とする金属錯体は分別、晶析後、乾燥を行う。以下に、本発明の金属錯体の合成方法を、より詳しく説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態にかかる金属錯体の合成方法の処理の流れを示すフロー図である。
図示するように、本実施形態の金属錯体の合成方法は、原料の仕込処理(S1010)、マイクロ波の照射処理(S1020)、エージング処理(S1030)、溶媒の留去処理(S1040)とを有する。
原料の仕込処理(S1010)では、原料が溶媒とともに反応容器に入れられる。原料は、合成目的の金属錯体の中心金属を含む化合物及び配位子となる化合物である。原料および溶媒は、合成目的の金属錯体に応じて適宜選択される。
すなわち、Ru(dcbpy)Clの合成を行う場合(「dcbpy」は2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を意味する。)、下記式のように、ルテニウム源としてRuCl(RuCl・3HO)、配位子となる化合物としてdcbpyが原料として用いられる。また、溶媒として、DMF,DMSO,エチレングリコール,水等が用いられる。これらの中でも、沸点が90〜200℃の範囲である溶媒が好ましく用いられ、DMFがより好ましく用いられる。

また、Ru(DMSO)Clの合成を行う場合、下記式のようにルテニウム源としてRuCl(RuCl・3HO)、配位子としてDMSOが用いられる。

また、Ru(dcbpy)(NCS)の合成を行う場合、下記式のようにルテニウム源としてRu(dcbpy)Cl、配位子としてNaSCNが用いられる。また、溶媒として、DMF、DMSO、エチレングリコール、水等が用いられる。これらの中でも、沸点が90〜200℃の範囲である溶媒が好ましく用いられ、DMFがより好ましく用いられる。なお、NaSCNの代わりに、KSCN,NHSCN等のSCN化合物を使用してもよい。

配位子化合物の使用量は、金属源となる化合物1重量部(質量部)に対して、通常1〜5重量部、好ましくは、2〜3重量部の範囲である。
溶媒の使用量は、反応容器の容量、原料の仕込み量によって適宜選択される。
マイクロ波照射処理(S1020)では、仕込まれた反応液にマイクロ波が照射される。
マイクロ波は、マイクロ波出力装置から出力される。マイクロ波出力装置としては、市販のものが使用できる。用いられるマイクロ波の波長は、通常、2.4〜2.6GHz、好ましくは2.45GHz付近(±30MHz)の範囲である。
マイクロ波の出力は、反応液の量に応じて適宜選択されるが、扱い易さの観点から、通常、30W〜1500W、好ましくは100〜800Wの範囲である。マイクロ波の照射は、短時間で反応液全体を均一に加熱するためになされる。出力が低すぎると加熱に時間がかかる。一方、出力が高すぎると加熱しすぎる場合があり制御が難しくなる。
マイクロ波の照射時間は、長すぎないようする。照射時間が長すぎると、反応液の温度が高くなり過ぎ、配位子が分解され、収率の低下を招く。マイクロ波の照射時間は、反応溶液の量が多い程、長くなるようにしてもよい。
例えば、マイクロ波の照射は、反応溶液100mlに対して、通常、40〜1000Wh、好ましくは100〜400Whの範囲で行われるようにする。反応溶液200mlに対して、通常、80〜2000Wh、好ましくは200〜800Whの範囲で行われるようにする。
マイクロ波の照射は、反応容器内に外から空気が入り込まないように、不活性ガスでバブリングさせながら行われるのが好ましい。不活性ガスとしては、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられるが、比重の観点からアルゴンガスが好ましく用いられる。
また、反応液が沸騰すると反応容器からふきこぼれることがあるので、沸騰したらマイクロ波の照射を中止し、液温が下がったら再び照射が行われるようにしてもよい。
マイクロ波の照射がなされると、次に、エージング処理がなされる(S1030)。エージング処理は、反応を十分進行させて、目的物の収率の向上を図るために行われる。エージング処理は、反応液を所定の温度範囲で保持することによりなされる。例えば、還流管を用いて、反応液を還流することによりなされる。エージング温度は、マントルヒータ等で加熱することにより維持される。エージング温度は、通常、溶媒の沸点(90〜200℃)である。
エージング処理の時間は、反応液の量に応じて適宜選択されるが、通常0.5〜24時間の範囲である。例えば、反応溶液100mlに対して0.5〜6時間の範囲である。
エージング処理(S1030)が終了すると、エバポレーター等により溶媒の留去処理がなされ(S1040)、目的の金属錯体が得られる。
なお、目的の金属錯体と未反応物質とを分離するために、適当な溶媒を加えて濾別する処理を行うようにしてもよい。
得られた金属錯体は、吸光度分析法,紫外吸収スペクトル法,蛍光分析,熱分析,赤外吸収スペクトル法,ICP発光分析,X線分析法,高速液体クロマトグラフィー,核磁気共鳴分析,電気化学分析,質量分析等により構造を決定することができる。
なお、本実施形態は、Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Rh,Pd,Ag,Os,Ir,Pt,Au等の遷移金属を中心金属とした金属錯体の合成にも適用できる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、RuCl又はRu(DMSO)ClからRu(dcbpy)(NCS)を合成する方法である。図2は、第2の実施形態のRu(dcbpy)(NCS)の合成方法の処理の流れを示す図である。以下に各処理ステップについて説明する。
原料の仕込み処理(S2010)では、ルテニウム源としてRuCl(RuCl・3HO)、又はRu(DMSO)Clが、配位子化合物としてdcbpyが、DMF等の溶媒とともに反応容器に入れられる。
マイクロ波照射処理(S2020)は、上記第1実施形態のS1020の処理と同様に行われるので説明を省略する。
マイクロ波照射処理(S2020)が終了すると、溶媒に分散させたNaSCNが、反応液に添加される(S2030)。
NaSCNの使用量は、RuClの1重量部対して、通常、3〜10重量部、好ましくは、5〜6重量部の範囲である。
NaSCNを分散させる溶媒としては、DMF等のS2010で仕込んだ溶媒と同様のものを用いることができる。溶媒の使用量は、NaSCNを分散できる量で適宜選択されるが、NaSCN 1重量部に対して、通常0.1〜10重量部の範囲である。
NaSCNの添加がなされると、マイクロ波の照射が再開される(S2040)。マイクロ波照射処理(S2040)は、S2020の処理と同様に行われる。
マイクロ波の照射が行われると、次に、エージング処理がなされる(S2050)。エージング処理は、第1実施形態のエージング処理(S1030)と同様に行われる。すなわち、反応液を所定の温度範囲で保持することによりなされる。例えば、還流管を用いて、反応液を還流することによりなされる。エージング温度は、マントルヒータ等で加熱することにより維持される。エージング温度は、通常、溶媒の沸点(90〜200℃)である。エージング処理の時間は、反応液の量に応じて適宜選択されるが、通常0.5〜24時間の範囲である。例えば、反応溶液100mlに対して0.5〜6時間の範囲である。
エージング処理(S2050)が終了すると、エバポレーター等により溶媒の留去処理がなされ(S1040)、目的の金属錯体が得られる。
なお、未反応物質と目的の金属錯体を分離するために、適当な溶媒を加えて濾別する処理を行うようにしてもよい。
以上、第2実施形態について説明した。なお、図2の処理では、マイクロ波の照射を一旦中止してNaSCNの添加が行われるようになっているが、マイクロ波の照射を中止せずに、照射しながらNaSCNが添加されるようにしてもよい。
また、NaSCNの代わりに、KSCN,NHSCN等のSCN化合物を使用してもよい。
<第3実施形態>
次に第3実施形態について図3のフロー図を用いて説明する。
第3実施形態は、ルテニウム錯体の合成反応後(S3010)、機能向上処理(S3020)及び未反応の配位子等を除くための有機溶媒処理(S3030)がなされるようにした金属錯体の合成方法である。
機能向上処理(S3020)は、合成されたルテニウム錯体の増感色素としての機能を向上させるために行われる。増感色素は、単に純度が高くてもその機能(エネルギー変換効率)が高いとは限らない。そこで、本実施形態では、合成後のルテニウム錯体に増感色素としての機能を向上させる処理が行われるようにする。
なお、金属錯体の合成反応(S3010)は、上記第1及び第2実施形態の合成反応(S1010〜S1040、S2010〜S2060)と同様に行うことができるので説明を省略する。
本実施形態では、機能向上処理(S3020)の前に、再沈殿処理による精製処理を行う。再沈殿処理は、例えば、以下のようにして行う。合成反応後に溶媒を留去し(S1040、S2060)、得られた合成物を、NaOH水溶液,KOH水溶液等のアルカリ水溶液に溶解する。次に、撹拌しながら酸を加えて、目的のルテニウム錯体を析出させる。析出物は、沈降するので、上澄み液をデカンテーション等で取り除くことで、目的のルテニウム錯体を得ることができる。
次に機能向上処理について説明する。機能向上処理では、合成反応により得られたルテニウム錯体(再沈殿で得られた沈殿物)を、超音波を用いて純水に分散させる。そして、撹拌しながら酸を加えてpHを低下させ、目的のルテニウム錯体を析出させる。続いて、沈殿物と上澄み液を円心沈殿機等で分離する。上澄み液を取り除き、沈殿物を再び純水に分散させ、酸の添加を行う。この一連の操作を、複数回繰り返す。好ましくは、沈殿物を純水に分散させたときの溶媒に、着色がなくなるまで複数回(例えば5回)繰り返す。
機能向上処理に用いられる酸としては、硝酸,塩酸,硫酸等の無機酸;酢酸,トリフルオロ酢酸等の有機酸等が挙げられるが、好ましくは、硝酸,トリフルオロ酢酸である。
撹拌は、核の発生を抑制し、析出物の粒径を大きくするため、最初は高回転で行い、後半は低回転で行うようにするのが好ましい。例えば、最初の1時間は、高回転で行い、次の1時間は低回転で行うようにする。
酸の添加も、核の発生を抑制し、析出物の粒径を大きくするため、滴下ロートを用いてゆっくり行うのが好ましい。通常、pH=4付近から析出が開始する。酸は、通常、pH=2付近になるまで、ゆっくり滴下する。pH値は、pHメータにより測定する。
次に、有機溶媒を用いた精製処理(S3030)について説明する。これまでの処理で得られた沈殿物には、目的物質であるルテニウム錯体のほかに、未反応の配位子化合物が含まれている。そこで、沈殿物から未反応の配位子化合物を除去する。ただし、本実施形態では、配位子化合物が合成反応に再利用されるように効率よく回収する。
かかる目的のため、有機溶媒処理では、これまでの処理で得られた沈殿物を有機溶媒に溶解させた後、濾過する。
用いられる有機溶媒としては、メタノール,エタノール,アセトン,アセトニトリル等のプロトン性溶媒を用いることができる。これらの中でも、沸点が30〜120℃のプロトン性溶媒が好ましく、メタノールがさらに好ましく用いられる。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
また、含水有機溶媒を用いてもよい。ルテニウム錯体は、無水有機溶媒には溶解しにくいが、含水有機溶媒には溶解しやすいからである。溶媒中の水の含水率は、通常、0.0001〜20%、好ましくは5〜15%の範囲である。
濾過後の残渣には、未反応の配位子化合物(dcbpy)が含まれている。配位子化合物は、再度合成反応の原料として用いることができる。
一方、濾液には目的のルテニウム錯体が含まれる。濾液は、溶媒を留去した後、乾燥、脱水される。乾燥、脱水は、真空凍結乾燥により行ってもよいし、ルテニウム錯体が多量の場合は、ジエチルエーテル等のエーテル類で脱水するようにしてもよい。
このようにして、増感色素としての機能が向上され、かつ精製されたルテニウム錯体が得られる。
以上、第3実施形態について説明した。
なお、第3実施形態では、機能向上処理と有機溶媒処理とが組み合わせて行われるようにしているが、いずれかの処理のみが行われるようにしてもよい。
以上、いくつかの実施例について説明したが、本発明は、その要旨の範囲内でさまざまな変形が可能である。
例えば、第3の実施形態では、ルテニウム錯体の機能向上処理及び有機溶媒処理について説明したが、他の金属錯体について第3の実施形態の処理を行うようにしてもよい。
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。尚、本発明は、下記実施形態になんら限定されるものではない。下記実施形態はあくまで例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
下記実施例及び比較例において用いられた試料は以下の通りである。
塩化ルテニウム3水和物:小島化学薬品(株)社製
2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸(dcbpy):広栄化学工業(株)社製
NaSCN:関東化学(株)社製
また、マイクロ波発生装置は、マイルストーンゼネラル(株)社製(商品名:マイクロシンス)を用いた。マイクロ波の照射は、図4に示すような合成装置で行った。図示するように、合成装置は、マイクロ波発生装置1、ガラス器具(ナス型フラスコ)2、ガラス製冷却管3、冷却装置4、排気装置5、マイクロ波漏洩防止壁6、転倒防止台7、ガス導入管8からなる。
超音波発生装置は、アズワン(株)社製(型式:US−D100、24kHz、110W)を用いた。
また、Ru(dcbpy)(NCS)の増感色素としての機能は、以下のように、セルを作成し後、光を照射しエネルギー変換効率を測定することにより調べた。
(セルの作成)
まず、TiO多孔層を担持したFTOガラス(フッ素ドープ酸化スズ導電性ガラス)を、ルテニウム錯体の溶液(3×10−4M)に、40℃で30分浸漬して、色素吸着ガラス電極を作成した。
この色素吸着ガラス電極の対極として、白金蒸着FTOガラス電極を用い、電解液をI/I系の有機電解液(dimethylpropyl−imidazolium iodide 0.6M,LiI 0.1M,I 0.05M,t−buthylpyridine 0.5Mからなるmethoxyacetonitrile溶液)として、セルを作成した。なお、電極間は、熱融着式のポリエチレン系スペーサー(厚さ50μm)で隔離した。
(エネルギー変換効率の測定)
色素吸着ガラス電極側のセル表面に、受光面積分0.64cmを切り抜いたマスクを装着し、キセノン灯光源(ソーラーシミュレータ:イーグルエンジニアリング(株)社製、型式:PC−L10)を用いて1sun(AM 1.5Gの擬似太陽光100mw/cm)の照度下で、I−V特性を計測して、エネルギー変換効率を測定した。I−V特性測定装置としては、ソースメーター(KEITHLEY INSTRUMENTS,Inc.社製、モデル2400シリーズ)を用いた。
また、エネルギー変換効率η(%)は、下記式で表される。
η=((Jsc・Voc・FF)/入射光)・100
Jsc:短絡光電流密度
Voc:開回路起電力
FF:フィルファクター、抵抗因子
<実施例A1>
実施例A1として[RuL(NCS)]・2HO(Ruはルテニウム原子を、Lは2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を示す)合成の手順を示す。
N,N−ジメチルホルムアミド中に3価に調整した塩化ルテニウム3水和物を30g/L及び2,2’−ビピリジン−4,4−ジカルボン酸を60g/Lとなるよう配合し、図4に示す装置を用いアルゴンガスバブリング中にてマイクロ波を10分間照射した。反応終了後、放冷し、濾過し、N,N−ジメチルホルムアミドを留去してからアセトンを添加し結晶を析出させた。この結晶を再度N,N−ジメチルホルムアミドに溶解した後、0.1N−水酸化ナトリウム水溶液を加え、更に塩化ルテニウム3水和物に対して十分に過剰なチオシアン酸ナトリウムの飽和水溶液を加えて、アルゴンガスバブリング中にてマイクロ波を15分間照射した。次いで、反応液を放冷し、反応生成物からN,N−ジメチルホルムアミドを留去させた後に乾固させ純水に溶解させた。この溶液を1N−HCl水溶液でpH=2前後に調整し沈殿物を得た。この沈殿物を濾別し、アセトンに溶解させた。上記のアセトン溶解溶液を濾過し、濾別後のアセトン溶解溶液中の溶媒を留去して得た結晶をジエチルエーテルで洗浄後、乾燥し[RuL(NCS)]2HOを得た。
上記実施例1によって得た[RuL(NCS)]・2HOの紫外可視吸収スペクトル測定結果を図5に、H NMR測定結果(Bruker社製 400MHzで測定)を図6に示す。収率は、89%であった。
<実施例A2>
実施例A2としてRu(DMSO)Clの合成の手順を示す。
ジメチルスルホキシド中に塩化ルテニウムを200g/Lとなるよう溶解させ、図1に示す装置を用いアルゴンガスバブリング中にてマイクロ波を5分間照射した。反応終了後、放冷した。これを濾過し、アセトンにて洗浄し、乾燥させRu(DMSO)Clの結晶を得た。
上記実施例2によって得たRu(DMSO)ClH NMR測定結果を図7に示す。収率は、95%であった。
<比較例A1>
比較例A1として以下に従来法による[RuL(NCS)]・2HOの合成の手順を示す。
N,N−ジメチルホルムアミド中に3価に調整した塩化ルテニウム3水和物を3g/L及び2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を6g/Lとなるよう配合し、遮光したアルゴン雰囲気下にて還流しながら温度110〜150℃に保ち、5時間反応させた。反応終了後、放冷し、濾過し、N,N−ジメチルホルムアミドを留去してからアセトンを添加し結晶を析出させた。この結晶を再度N,N−ジメチルホルムアミドに溶解した後、遮光下で0.1N−水酸化ナトリウム水溶液を加え、更に塩化ルテニウム3水和物に対して十分に過剰なチオシアン酸ナトリウムの飽和水溶液を加えて、遮光したアルゴン雰囲気下にて還流しながら温度110〜150℃に保ち、6時間反応させた。次いで、反応液を放冷し、反応生成物からN,N−ジメチルホルムアミドを留去させた後に乾固させ純水に溶解させた。この溶液を1N−HCl水溶液でpH=2前後に調整し沈殿物を得た。この沈殿物を濾別し、メタノールに溶解させた。このメタノール溶解溶液を濾過し、別に準備したヒドロキシプロピル基導入架橋デキストランを充填剤とするカラムに上記のメタノール溶解溶液を通して不純物を分離し、メタノールを留去して得た結晶をジエチルエーテルで洗浄後、乾燥し[RuL(NCS)]・2HOを得た。
上記比較例1によって得た[RuL(NCS)]・2HOの紫外可視吸収スペクトル測定結果を図8に、H NMR測定結果を図9に示す。収率は、45%であった。
<比較例A2>
比較例A2として以下に従来法によるRu(DMSO)Clの合成の手順を示す。
DMSO中に塩化ルテニウムを100g/Lとなるよう溶解させ、マントルヒーターを用いアルゴンガスバブリング中にて、150℃、30分間の撹拌過熱を行った。反応終了後、放冷した。これを濾過し、アセトンにて洗浄し、乾燥させRu(DMSO)Clの結晶を得た。収率は、61%であった。
表1に本発明による合成法を用いた合成と、従来法による合成における総反応時間、使用薬品量および収率を示す。

表1より、実施例A1及びA2の方が、比較例A1及びA2より、溶媒使用量が極端に少なく、また収率が高いことが分かる。
<実施例B1> Ru(dcbpy)Clの合成
処理工程:マイクロ波合成+エージング+有機溶剤処理
(1)マイクロ波及びエージングによる合成反応
200mlナス型フラスコに塩化ルテニウム10gとdcbpy 20gおよびDMF 100mlを入れミクロスパーテルで少し撹拌した。フラスコをマイクロ波発生装置に設置し、フラスコ内にアルゴンガスを充填させた(5分間アルゴンガスバブリングを行った。)。
アルゴンガスバブリングを継続させながら、マイクロ波(出力500W)を60分照射した。
この時マイクロ波を連続照射させていると反応溶媒の沸点(135℃)を超え、反応液が沸騰し容器から噴きこぼれる可能性があるため、沸騰したらマイクロ波照射をやめ、液温が下がるのを待ち、再び照射を行うようにした。上記のマイクロ波照射時間60分は、反応液にマイクロ波を照射した時間である。
マイクロ波照射終了後、反応液が入っているフラスコをマントルヒーターに設置した(還流管も付けて)。マントルヒータの温度を135℃に設定し2時間加熱を行った(エージング)。
エージング終了後、沈殿物を含む反応液を500mlビーカーへ移しDMF 200mlおよび濃塩酸1mlを添加し沈殿物をすべて溶解させた。そして、溶解液をNo.5cの濾紙を用い濾別した。残渣はH NMRの測定結果から未反応のdcbpyであることが確認された。
H NMR(400MHz,DO/NaOD)δ:8.40(d,1H),8.00(s,1H),7.50(d,1H)
濾液を1Lナス型フラスコへ移しエバポレーターに設置し、反応溶媒を留去した(留去温度は70℃)。
(2)有機溶媒処理(未反応RuClを取り除く工程)
溶媒留去後に得られた沈殿物を10%含水アセトン1Lに溶解した。よく撹拌し、撹拌終了後、No.5cの濾紙を用い濾別した。
残渣を、ジエチルエーテルで洗浄しデシケーターへ移し真空乾燥を2時間行った。H NMRの測定結果からRu(dcbpy)Clであることが確認された。
H NMR(400MHz,DO/NaOD)δ:9.10(d,1H),8.55(s,1H),8.35(s,1H),7.80(d,1H),7.37(d,1H),7.00(d,1H)
収量:24.5g
収率:90%
未反応dcbpy:1.5g(7.5%)
下記の実施例C1〜C7は、Ru(dcbpy)(NCS)の合成の実施例である。
<実施例C1> Ru(dcbpy)(NCS)の合成
処理工程:マイクロ波合成+再沈殿+有機溶剤処理
(1)マイクロ波を用いた合成反応
200mlナス型フラスコに塩化ルテニウム1gとdcbpy 2gおよびDMF 100mlを入れた。フラスコをマイクロ波発生装置に設置し、フラスコ内にアルゴンガスを充填させた(5分間アルゴンガスバブリングを行った)。
アルゴンガスバブリングを継続させながら、マイクロ波(出力500W)を15分照射した。
次に、反応液に、DMF 10mlに分散させたNaSCN 5.6gを加えた。そして、再びアルゴンガスを充填させた(5分間アルゴンガスバブリングを行った。)
アルゴンガスバブリングを継続させながら、マイクロ波(出力500W)を15分照射した。
マイクロ波照射終了後、反応液が入っているフラスコをエバポレーターに設置し、反応溶媒のDMFを留去した(留去温度は70℃)。
(2)再沈殿処理
DMFを留去した後、1M−NaOHaq 20mlを加えて結晶を溶解させた。
そして、溶解液を、No5cの濾紙を用いて濾過した。
濾液に、純水を加え全体を500mlに薄めた。撹拌子を液中に入れスターラーで撹拌しながら、pHメーターを液中に浸漬した。滴下ロートを用い液中に1M−HClaqをゆっくり滴下し、pH=2まで下げた。pH=4付近から液中に沈殿物が生成した。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を2時間行った。このとき、最初の1時間は高回転で撹拌を行い、後半の1時間は低回転で撹拌を行った。
撹拌終了後、円心沈殿機を用い生成物を沈降させた。デカンテーションし、沈殿物を容器から取り出し、吸引濾過器で脱水した。得られた結晶を、ヌッチェ上で純水を用い1回洗浄した。
(3)有機溶媒処理
次に、得られた沈殿物(残渣)に、10%含水アセトン500mlを加えよく撹拌し溶解した。撹拌終了後、No.5cの濾紙を用い濾別した。濾紙上の残渣をH NMRで分析したところdcpbyと確認された。
H NMR(400MHz,DO/NaOD)δ:8.40(d,1H),8.00(s,1H),7.50(d,1H)
濾液は、1Lナス型フラスコに入れエバポレーターで溶媒を留去した(留去温度60℃)。
溶媒留去後、結晶をジエチルエーテルに分散させた後、吸引濾過した。
濾別したら、残渣を直ちにデシケーターに移し真空乾燥を2時間行い目的のRu(dcbpy)(NCS)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d6,)δ:9.45(d,1H),9.20(s,1H),9.02(s,1H),8.40(d,1H),7.81(d,1H),7.60(d,1H)
収量:1.91g
収率:67%
未反応dcbpy:0.4g(20%)
<実施例C2> Ru(dcbpy)(NCS)の合成
処理工程:マイクロ波合成+再沈殿+機能向上処理+有機溶剤処理
(1)マイクロ波を用いた合成反応
200mlナス型フラスコに塩化ルテニウム1gとdcbpy 2gおよびDMF 100mlを入れた。フラスコをマイクロ波発生装置に設置し、フラスコ内にアルゴンガスを充填させた(5分間アルゴンガスバブリングを行った。)。
アルゴンガスバブリングを継続させながら、マイクロ波(出力500W)を15分照射した。
次に、反応液に、DMF 10mlに分散させたNaSCN 5.6gを加えた。そして、再びアルゴンガスを充填させた(5分間アルゴンガスバブリングを行った。)
アルゴンガスバブリングを継続させながら、マイクロ波(出力500W)を15分照射した。
マイクロ波照射終了後、反応液が入っているフラスコをエバポレーターに設置し、反応溶媒のDMFを留去した(留去温度は70℃)。
(2)再沈殿処理
DMFを留去した後、1M−NaOHaq 20mlを加えて結晶を溶解させた。そして、溶解液を、No5cの濾紙を用いて濾過した。
濾液に、純水を加え全体を500mlに薄めた。撹拌子を液中に入れスターラーで撹拌しながら、pHメーターを液中に浸漬した。滴下ロートを用い液中に1M−HClaqをゆっくり滴下し、pH=2まで下げた。pH=4付近から液中に沈殿物が生成した。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を2時間行った。このとき、最初の1時間は高回転で撹拌を行い、後半の1時間は低回転で撹拌を行った。
反応終了後、円心沈殿機を用い生成物を沈降させた。デカンテーションし、沈殿物を容器から取り出した。
(3)機能向上処理
得られた沈殿物を純水500mlに超音波を用い分散させた。pHメーターを液中に浸漬した。この時の分散液はpH=3.5であった。撹拌しながら滴下ロートを用い1M−HClaqをゆっくり滴下しpH=2まで下げた。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を2時間行った。
最初の1時間は高回転で撹拌を行い、後半の1時間は低回転で撹拌を行った。
溶液がほぼ無色透明になったら円心沈殿機を用い洗浄液と沈殿物を分離させ、上澄み液をデカンテーションで取り除いた。
この機能向上処理を3回繰り返した。3回目の機能向上処理で得られた沈殿物の分離は、円心沈殿機を用いず静置して沈殿物を沈降させた。そして、No.5cの濾紙を用い濾別した。濾別後、2時間その状態で風乾した。
(4)有機溶媒処理
得られた沈殿物(残渣)に10%含水アセトン500mlを加えた。よく撹拌した後、No.5cの濾紙を用い濾別した。この時、濾紙上の残渣をH NMRで分析したところdcpbyと確認された。
H NMR(400MHz,DO/NaOD)δ:8.40(d,1H),8.00(s,1H),7.50(d,1H)
濾液を、1Lナス型フラスコに入れ、エバポレーターに設置し、溶媒を留去した(留去温度60℃)。
溶媒留去後、フラスコ内の結晶を、ミクロスパーテルで掻き出し、50mlビーカーへ入れた。そこへジエチルエーテル20mlを加え超音波で分散させた。その後撹拌子を入れスターラーで1時間撹拌した。
撹拌終了後、No.5cの濾紙を用い濾別した。濾別したら直ちにデシケーターに移し真空乾燥を2時間行い、目的のRu(dcbpy)(NCS)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d)δ:9.45(d,1H),9.20(s,1H),9.02(s,1H),8.40(d,1H),7.81(d,1H),7.60(d,1H)
収量:1.85g
収率:65%
未反応dcbpy:0.4g(20%)
<実施例C3> Ru(dcbpy)(NCS)の合成
処理工程:マイクロ波合成+再沈殿+機能向上処理+有機溶剤処理
(1)マイクロ波を用いた合成反応
200mlナス型フラスコに塩化ルテニウム5gとdcbpy 10gおよびDMF 100mlを入れミクロスパーテルで少し撹拌した。フラスコをマイクロ波発生装置に設置し、フラスコ内にアルゴンガスを充填させた(5分間アルゴンガスバブリングを行った。)
アルゴンガスバブリングを継続させながら、マイクロ波(出力500W)を30分照射した。
この時、マイクロ波を連続照射させていると反応溶媒の沸点(135℃)を超え、反応液が沸騰し容器から噴きこぼれる可能性があるため、沸騰したらマイクロ波照射をやめ、液温が下がるのを待ち、再び照射を行うようにした。上記マイクロ波照射時間の30分は、反応液にマイクロ波を照射した時間である。
次に、反応液に、DMF 50mlに分散させたNaSCN 28gを加えた。そして、再びアルゴンガスを充填させた(5分間アルゴンガスバブリングを行った。)。
アルゴンガスバブリングを継続させながら、マイクロ波(出力500W)を30分照射した。この時も上記と同様にマイクロ波を連続照射させていると反応溶媒の沸点(135℃)を超え、反応液が沸騰し容器から噴きこぼれる可能性があるため、沸騰したらマイクロ波照射をやめ、液温が下がるのを待ち、再び照射を行うようにした。
マイクロ波照射終了後、反応液が入っている200mlナス型フラスコをエバポレーターに設置し、反応溶媒を留去した(留去温度は70℃)。
(2)再沈殿処理
溶媒を留去した後、1M−NaOHaq 100mlを用いて得られた結晶を溶解した。そして、溶解液を、No.5cの濾紙を用いて濾過した。
濾液に純水を加え全体を1Lに薄めた。撹拌子を液中に入れスターラーで撹拌しながら、pHメーターを液中に浸漬した。滴下ロートを用い液中に1M−HClaqをゆっくり滴下し、pH=2まで下げた。PH=4付近から液中に沈殿物が生成した。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を2時間行った。このとき、最初の1時間は高回転で撹拌を行い、後半の1時間は低回転で撹拌を行った。
反応終了後、円心沈殿機を用い生成物を沈降させた。デカンテーションして、沈殿物を取り出した。
(3)機能向上処理
得られた沈殿物を、純水1Lに超音波を用い分散させた。pHメーターを液中に浸漬した。この時の分散液は、pH=3.5付近であった。撹拌しながら、滴下ロートを用い1M−HClaqをゆっくり滴下し、pH=2まで下げた。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を2時間行った。このとき、最初の1時間は高回転で撹拌を行い、後半の1時間は低回転で撹拌を行った。溶液がほぼ無色透明になったら、円心沈殿機を用い上澄み液と沈殿物を分離させた。上澄み液はデカンテーションで取り除いた。
この機能向上処理を3回繰り返した。3回目の洗浄工程の沈殿物の分離は、円心沈殿機を用いず、静置して沈殿物を沈降させた。No.5cの濾紙を用い濾別し、残渣を2時間その状態で風乾した。
(4)有機溶媒処理
得られた沈殿物(残渣)を10%含水アセトン1Lに溶解させた。溶解液を、よく撹拌し、撹拌終了後、No.5cの濾紙を用い濾別した。この時、残渣をH NMRで分析したところdcpbyと確認された。
H NMR(400MHz,DO/NaOD)δ:8.40(d,1H),8.00(s,1H),7.50(d,1H)
濾液を、2Lナス型フラスコに入れエバポレーターに設置し溶媒を留去した。(留去温度60℃)。
溶媒留去後、2Lナス型フラスコ内の結晶をミクロスパーテルで掻き出し、200mlビーカーへ入れた。そこへジエチルエーテル100mlを加え超音波で分散させた。その後、撹拌子を入れスターラーで1時間撹拌した。
撹拌終了後、No.5cの濾紙を用い濾別した。濾別したら直ちにデシケーターに移し真空乾燥を2時間行い、目的のRu(dcbpy)(NCS)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d)δ:9.45(d,1H),9.20(s,1H),9.02(s,1H),8.40(d,1H),7.81(d,1H),7.60(d,1H)
収量:11.61g
収率:81%
未反応dcbpy:1.7g(17%)
<実施例C4> Ru(dcbpy)(NCS)の合成
処理工程:マイクロ波合成+エージング+機能向上処理+有機溶剤処理
(1)マイクロ波及びエージングによる合成反応
200mlナス型フラスコに塩化ルテニウム1gとdcbpy 2gおよびDMF 100mlを入れミクロスパーテルで少し撹拌した。フラスコを、マイクロ波発生装置に設置し、フラスコ内にアルゴンガスを充填させた(5分間アルゴンガスバブリングを行った)。
アルゴンガスバブリングを継続させながら、マイクロ波(出力500W)を15分照射した。
次に、反応液に、DMF 10mlに分散させたNaSCN 5.6gを加えた。そして、再びアルゴンガスを充填させた(5分間アルゴンガスバブリングを行った)。
アルゴンガスバブリングを継続させながら、マイクロ波(出力500W)を15分照射した。
マイクロ波照射終了後、反応液が入っているフラスコをマントルヒーターに設置した。マントルヒータの温度を135℃に設定し2時間保持した(エージング)。
マントルヒーターでの加熱終了後、反応液が入ったフラスコをエバポレーターに設置し、反応溶媒を留去した(留去温度は70℃)。
(2)機能向上処理
溶媒を留去した後、得られた結晶を純水500mlに分散させた。
分散液に撹拌子を入れスターラーで撹拌しながら、pHメーターを液中に浸漬した。滴下ロートを用い、液中に20%−CFCOOHaqをゆっくり滴下し、pH=2まで下げた。pH=4付近から液中に沈殿物が生成した。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を2時間行った。このとき、最初の1時間は高回転で撹拌を行い、後半の1時間は低回転で撹拌を行った。
撹拌終了後、円心沈殿機を用い生成物を沈降させた。分離した上澄み液はデカンテーションして取り除いた。
得られた沈殿物を、純水500mlに超音波を用い分散させた。pHメーターを液中に浸漬した。この時の分散液はpH=3.5付近であった。撹拌しながら滴下ロートを用い、20%−CFCOOHaqをゆっくり滴下しpH=2まで下げた。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を2時間行った。最初の1時間は高回転で撹拌を行い、後半の1時間は低回転で撹拌を行った。溶液がほぼ無色透明になったら円心沈殿機を用い、溶媒と沈殿物を分離させた。上澄み液はデカンテーションで取り除いた。この工程を3回繰り返した。
3回目のデカンテーション後、沈殿物は吸引濾過により脱水した。濾別後2時間その状態で風乾した。
(3)有機溶媒処理
得られた沈殿物を10%含水アセトン500mlに溶解させた。よく撹拌し、撹拌終了後、No.5cの濾紙を用い濾別した。この時の残渣をH NMRで分析したところdcpbyと確認された。
H NMR(400MHz,DO/NaOD)δ:8.40(d,1H),8.00(s,1H),7.50(d,1H)
濾液を、1Lナス型フラスコに入れエバポレーターに設置し、溶媒を留去した。(留去温度60℃)。
溶媒留去後、1Lナス型フラスコ内の結晶をミクロスパーテルで掻き出し、100mlビーカーへ入れた。そこへジエチルエーテル50mlを加え超音波で分散させた。その後撹拌子を入れスターラーで1時間撹拌した。
撹拌終了後、No.5cの濾紙を用い濾別し、残渣を直ちにデシケーターに移し真空乾燥を2時間行い、目的のRu(dcbpy)(NCS)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d)δ:9.45(d,1H),9.20(s,1H),9.02(s,1H),8.40(d,1H),7.81(d,1H),7.60(d,1H)
収量:2.5g
収率:88%
未反応dcbpy:0.2g(10%)
<実施例C5> Ru(dcbpy)(NCS)の合成
処理工程:マイクロ波合成+エージング+機能向上処理+有機溶剤処理
(1)マイクロ波及びエージングによる合成反応
2L丸底フラスコに塩化ルテニウム100gとdcbpy 200gおよびDMF 1Lを入れミクロスパーテルで少し撹拌した。フラスコをマイクロ波発生装置に設置し、フラスコ内にアルゴンガスを充填させた(15分間アルゴンガスバブリングを行った)。
アルゴンガスバブリングを継続させながら、反応液の温度を135℃に維持しながら、マイクロ波(出力100〜500W)を6時間照射した。
次に、反応液に、DMF 500mlに分散させたNaSCN 560gを加えた。そして、再びアルゴンガスを充填させた(15分間アルゴンガスバブリングを行った。)。
アルゴンガスバブリングを継続させながら、マイクロ波(出力100〜500W)を6時間照射した。
マイクロ波照射終了後、反応液が入っているフラスコをマントルヒーターに設置した(還流管も付けて)。マントルヒータの温度を135℃に設定し6時間加熱を行った(エージング)。
マントルヒーターでの加熱終了後、反応液が入ったフラスコをエバポレーターに設置し、反応溶媒を留去した(留去温度は70℃)。
(2)機能向上処理
溶媒を留去した後、純水5Lを用いて、得られた結晶を分散させた。
分散液に撹拌子を入れ、スターラーで撹拌しながらpHメーターを液中に浸漬した。滴下ロートを用い液中に20%−CFCOOHaqをゆっくり滴下し、pH=2まで下げた。pH=4付近から液中に沈殿物が生成した。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を4時間行った。このとき、最初の2時間は高回転で撹拌を行い、後半の2時間は低回転で撹拌を行った。
撹拌終了後、円心沈殿機を用い生成物を沈降させた。分離した上澄み液はデカンテーションし取り除いた。
得られた沈殿物を純水5Lに超音波を用い分散させた。pHメーターを液中に浸漬した。この時の分散液はpH=3.5付近であった。撹拌しながら滴下ロートを用い20%−CFCOOHaqをゆっくり滴下し、pH=2まで下げた。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を4時間行った。このとき、最初の2時間は高回転で撹拌を行い、後半の2時間は低回転で撹拌を行った。溶液がほぼ無色透明になったら円心沈殿機を用い洗浄液と沈殿物を分離させた。上澄みの洗浄液はデカンテーションで取り除いた。この工程を3回繰り返した。
3回目のデカンテーション後、沈殿物は吸引濾過により脱水させた。濾別後2時間その状態で風乾した。
(3)有機溶媒処理
得られた沈殿物(残渣)を10%含水アセトン5Lで溶解した。よく撹拌し、撹拌終了後、No.5cの濾紙を用い濾別した。この時の残渣をH NMRで分析したところdcpbyと確認された。
H NMR(400MHz,DO/NaOD δ:8.40(d,1H),8.00(s,1H),7.50(d,1H)
濾液を、10Lナス型フラスコに入れエバポレーターに設置し、溶媒を留去した(留去温度60℃)。
溶媒留去後、フラスコ内の結晶をミクロスパーテルで掻き出し、1Lビーカーへ入れた。そこへジエチルエーテル500mlを加え超音波で分散させた。その後撹拌子を入れスターラーで2時間撹拌した。
撹拌終了後、No.5cの濾紙を用い濾別し、残渣を直ちにデシケーターに移し真空乾燥を4時間行い目的のRu(dcbpy)(NCS)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d)δ:9.45(d,1H),9.20(s,1H),9.02(s,1H),8.40(d,1H),7.81(d,1H),7.60(d,1H)
収量:263g
収率:92%
未反応dcbpy:14g(7%)
<実施例C6> Ru(dcbpy)(NCS)の合成
処理工程:マイクロ波合成+エージング+機能向上処理+有機溶剤処理
(1)マイクロ波及びエージングによる合成反応
200mlナス型フラスコに実施例B1で得られたRu(dcbpy)Cl 24.5gとNaSCN 50gおよび150mlのDMFを入れた。フラスコ内にアルゴンガスを充填させた(5分間アルゴンガスバブリングを行った)。
アルゴンガスバブリングを継続させながら、マイクロ波(出力500W)を30分照射した。
このとき、マイクロ波を連続照射させていると反応溶媒の沸点(135℃)を超え、反応液が沸騰し容器から噴きこぼれる可能性があるため、沸騰したらマイクロ波照射をやめ、液温が下がるのを待ち、再び照射を行うようにした。上記マイクロ波照射時間30分は、反応液にマイクロ波を照射した時間である。
マイクロ波照射終了後、反応液が入っている200mlナス型フラスコをマントルヒーターに設置した(還流管も付けて)。マントルヒータの温度を135℃に設定し2時間加熱を行った(エージング)。
マントルヒーターでの加熱終了後、反応液が入った200mlナス型フラスコをエバポレーターに設置し、反応溶媒を留去した(留去温度は70℃)。
(2)機能向上処理
溶媒を留去した後、純水1Lを用いて、得られた結晶を分散させた。
分散液に撹拌子を入れスターラーで撹拌しながら、pHメーターを液中に浸漬した。滴下ロートを用い液中に10倍に希釈した濃硝酸をゆっくり滴下しpH=2まで下げた。pH=4付近から液中に沈殿物が生成した。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を2時間行った。このとき、最初の1時間は高回転で撹拌を行い、後半の1時間は低回転で撹拌を行うようにした。
撹拌終了後、円心沈殿機を用い生成物を沈降させた。分離した上澄み液はデカンテーションし取り除いた。
得られた沈殿物を、純水1Lに超音波を用いて分散させた。pHメーターを液中に浸漬した。この時の分散液はpH=3.5であった。滴下ロートを用い10倍に希釈した濃硝酸をゆっくり滴下しpH=2まで下げた。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を2時間行った。最初の1時間は高回転で撹拌を行い、後半の1時間は低回転で撹拌を行った。溶液がほぼ無色透明になったら円心沈殿機を用い洗浄液と沈殿物を分離させた。上澄みの洗浄液はデカンテーションで取り除いた。この洗浄工程を3回繰り返した。
3回目のデカンテーション終了後、沈殿物は吸引濾過を用い脱水させた。濾別後、2時間その状態で風乾した。
(3)有機溶媒処理
得られた沈殿物を10%含水メタノール1Lで溶解した。よく撹拌し、撹拌終了後、No.5cの濾紙を用い濾別した。
濾液は2Lナス型フラスコに入れエバポレーターに設置し、溶媒を留去した。(留去温度60℃)。
溶媒留去後、フラスコ内の結晶をミクロスパーテルで掻き出し、200mlビーカーへ入れた。そこへジエチルエーテル100mlを加え、超音波で分散させた。その後スターラーで1時間撹拌した。
撹拌終了後、No5cの濾紙を用い濾別し、残渣を直ちにデシケーターに移し真空乾燥を2時間行い、目的のRu(dcbpy)(NCS)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d)δ:9.45(d,1H),9.20(s,1H),9.02(s,1H),8.40(d,1H),7.81(d,1H),7.60(d,1H)
収量:24g
収率:85%
<実施例C7> Ru(dcbpy)(NCS)の合成(配位子化合物を再利用)
処理工程:マイクロ波合成+エージング+機能向上処理+有機溶剤処理
(1)マイクロ波及びエージングによる合成反応
2L丸底フラスコに塩化ルテニウム100gとdcbpy 200g(そのうち14gは実施例C5で回収した配位子)およびDMF 1Lを入れミクロスパーテルで少し撹拌した。フラスコをマイクロ波発生装置に設置し、フラスコ内にアルゴンガスを充填させた(15分間アルゴンガスバブリングを行った。)。
アルゴンガスバブリングを継続させながら、反応液の温度を135℃に維持しながら、マイクロ波(出力100〜500W)を6時間照射した。
反応液にDMF 500mlに分散させたNaSCN 560gを加えた。そして、再びアルゴンガスを充填させた(15分間アルゴンガスバブリングを行った。)。
アルゴンガスバブリングを継続させながら、マイクロ波(出力100〜500W)を6時間照射した。
マイクロ波照射終了後、反応液が入っているフラスコをマントルヒーターに設置した(還流管も付けて)。マントルヒータの温度を135℃に設定し6時間加熱を行った(エージング)。
マントルヒーターでの加熱終了後、反応液が入ったフラスコをエバポレーターに設置し、反応溶媒を留去した(留去温度は70℃)。
(2)機能向上処理
溶媒を留去した後、純水5Lを用いて、得られた結晶を分散させた。
分散液に撹拌子を入れ、スターラーで撹拌しながらpHメーターを液中に浸漬した。滴下ロートを用い液中に20%−CFCOOHaqをゆっくり滴下し、pH=2まで下げた。pH=4付近から液中に沈殿物が生成した。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を4時間行った。このとき、最初の2時間は高回転で撹拌を行い、後半の2時間は低回転で撹拌を行った。
撹拌終了後、円心沈殿機を用い生成物を沈降させた。分離した上澄み液はデカンテーションし取り除いた。
得られた沈殿物を純水5Lに超音波を用い分散させた。pHメーターを液中に浸漬した。この時の分散液はpH=3.5付近であった。撹拌しながら滴下ロートを用い20%−CFCOOHaqをゆっくり滴下し、pH=2まで下げた。pH=2まで下げたら、pHメーターを液中から取り出し、そのまま撹拌を4時間行った。このとき、最初の2時間は高回転で撹拌を行い、後半の2時間は低回転で撹拌を行った。溶液がほぼ無色透明になったら円心沈殿機を用い洗浄液と沈殿物を分離させた。上澄みの洗浄液はデカンテーションで取り除いた。この工程を3回繰り返した。
3回目のデカンテーション後、沈殿物は吸引濾過により脱水させた。濾別後2時間その状態で風乾した。
(3)有機溶媒処理
得られた沈殿物(残渣)を10%含水アセトン5Lで溶解した。よく撹拌し、撹拌終了後、No5cの濾紙を用い濾別した。この時の残渣をH NMRで分析したところdcpbyと確認された。
H NMR(400MHz,DO/NaOD)δ:8.40(d,1H),8.00(s,1H),7.50(d,1H)
濾液を、10Lナス型フラスコに入れエバポレーターに設置し、溶媒を留去した(留去温度60℃)。
溶媒留去後、フラスコ内の結晶をミクロスパーテルで掻き出し、1Lビーカーへ入れた。そこへジエチルエーテル500mlを加え超音波で分散させた。その後撹拌子を入れスターラーで2時間撹拌した。
撹拌終了後、No5cの濾紙を用い濾別し、残渣を直ちにデシケーターに移し真空乾燥を4時間行い目的のRu(dcbpy)(NCS)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d)δ:9.45(d,1H),9.20(s,1H),9.02(s,1H),8.40(d,1H),7.81(d,1H),7.60(d,1H)
収量:263g
収率:92%
未反応dcbpy:14g(7%)
<比較例C1> Ru(dcbpy)(NCS)の合成
処理工程:熱伝導加熱合成+再沈殿処理
(1)熱伝導加熱反応よる合成
200mlナス型フラスコにDMF 100ml、塩化ルテニウム300mg及びdcbpy 570mgを入れ遮光したアルゴン雰囲気のもとで温度を135℃に保ち5時間反応させた。反応終了後、放冷しDMFを留去してからアセトンを添加して結晶を析出させた。この結晶をろ別し、アセトン洗浄を行なった後、常温で減圧蒸留してRu(dcbpy)Clを得た。
(2)再沈殿処理
得られたRu(dcbpy)Clを200mlナス型フラスコに入れDMF 100mlに溶解した後、0.1N−NaOHaq 10mlに溶解したNaSCN 1.7gを加え、遮光下で135℃に保ちながらアルゴン雰囲気下で6時間還流しながら加熱反応させた。反応終了後、室温まで冷却しDMFを留去し、乾固させた。そして、ジエチルエーテルで洗浄後、常温で真空乾燥させ、Ru(dcbpy)(NCS)を得た。図10にH NMR測定結果を示す。
収量:0.4g
収率:55%
<比較例C2>Ru(dcbpy)(NCS)の合成
処理工程:熱伝導加熱+再沈殿処理+カラムによる精製
(1)熱伝導加熱反応による合成
200mlナス型フラスコDMF 100ml、塩化ルテニウム300mg及びdcbpy 570mgを入れ遮光したアルゴン雰囲気のもとで温度を135℃に保ち5時間反応させた。反応終了後、放冷しDMFを留去してからアセトンを添加して結晶を析出させた。この結晶をろ別しアセトン洗浄を行なった後、常温で減圧蒸留してRu(dcbpy)Clを得た。
(2)再沈殿処理
得られたRu(dcbpy)Clを、200mlナス型フラスコに入れ、DMF 100mlに溶解した後、0.1N−NaOHaq 10mlに溶解したNaSCN 1.7gを加え、遮光下で、135℃に保ちながら、アルゴン雰囲気下で6時間還流しながら加熱反応させた。反応終了後、室温まで冷却しDMFを留去し乾固させRu(dcbpy)(NCS)を得た。
(3)カラム分離による精製
得られたRu(dcbpy)(NCS)をメタノールに溶解し、ろ過した。ろ液を、別に準備した「トヨパール−HW55F・東ソー(株)製」を充填したカラムに通して、バンドの色が濃い紫色部分を採取することにより、不純物を分離した。メタノールを留去して得た結晶を、ジエチルエーテルで洗浄し、Ru(dcbpy)(NCS)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d)δ:9.45(d,1H),9.20(s,1H),9.02(s,1H),8.40(d,1H),7.81(d,1H),7.60(d,1H)
収量:0.3g
収率:45%
なお、比較例C2については、同様の条件、操作で複数回行った。その結果、NMR測定,UV測定,ルテニウム含量,収量及び収率の値は安定していたが、変換効率は、3〜6%の幅があり、ばらつきがあった。エネルギー変換効率が6%であったものを比較例C2’とする。
<参考例1>
ソーラニクス社製のRu(dcbpy)(NCS)について、上記の変換効率の測定方法と同様の方法でエネルギー変換効率を測定した。
上記、実施例及び比較例における収率を下記表2にまとめた。

上記、実施例、比較例及び参考例におけるエネルギー変換効率を下記表3にまとめた。

表2及び表3から、従来の熱伝導による加熱合成(比較例C1及びC2)に比べ、本発明を適用した実施例C1〜C7の方が、収率が高くまた増感色素としても優れていることが分かる。
また、多くの時間と多量の溶媒が必要なカラム分離(比較例C2)と比べても、本発明を適用した実施例C1〜C7の方が、収率が高い。また、機能向上処理を行うことで、増感色素として優れたルテニウム錯体が合成されることが分かる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテニウムを中心金属とする金属錯体の合成方法であって、
原料物質と溶媒とからなる反応液に、マイクロ波を照射する
ことを特徴とする金属錯体の合成方法。
【請求項2】
金属錯体の合成方法であって、
原料物質と溶媒とからなる反応液に、マイクロ波を照射後エージング処理を行うことを特徴とする金属錯体の合成方法。
【請求項3】
請求項1または2において、さらに、
合成目的の金属錯体が溶解した溶液に、酸を添加し、析出した析出物を当該溶液から取り出す工程を有する
ことを特徴とする金属錯体の合成方法。
【請求項4】
請求項1または2において、さらに、
合成目的の金属錯体と未反応の原料とを含む混合物を、有機溶媒に添加して、得られた溶液から、溶解していない物質を取り除く工程を有する
ことを特徴とする金属錯体の合成方法。
【請求項5】
請求項1または2において、さらに、
合成目的の金属錯体と未反応の原料とを含む混合物を、含水量20重量%以下の含水プロトン性有機溶媒に添加して、得られた溶液から、溶解していない物質を取り除く工程を有する
ことを特徴とする金属錯体の合成方法。
【請求項6】
請求項1または2において、さらに、
合成目的の金属錯体が溶解した溶液に、酸を添加し、析出した析出物を当該溶液から取り出す工程と、
取り出した析出物を、有機溶媒に添加して、得られた溶液から溶解していない物質を取り除く工程とを有する
ことを特徴とする金属錯体の合成方法。
【請求項7】
請求項4において、
取り除いた物質を、原料物質として再利用する
ことを特徴とする金属錯体の合成方法。
【請求項8】
請求項1又は2において、
前記溶媒は、沸点が90〜200℃の範囲である
ことを特徴とする金属錯体の合成方法。
【請求項9】
請求項1又は2において、
前記マイクロ波の照射は、照射出力に照射時間を乗じた値が、反応液100mlに対して、40〜1000Whの範囲となるように行われることを特徴とする金属錯体の合成方法。
【請求項10】
請求項2において、
前記エージング処理は、前記反応液を90〜200℃の温度範囲に保持することにより行う
ことを特徴とする金属錯体の合成方法。
【請求項11】
光化学電池の増感色素として使用される金属錯体の処理方法であって、
前記金属錯体を、超音波により純水に分散させ後、酸を添加し析出させる工程を行うことを特徴とする金属錯体の処理方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記工程を、純水に分散させたときの溶液の着色が実質的になくなるまで複数回繰り返して行うことを特徴とする金属錯体の処理方法。
【請求項13】
請求項1又は2において、
前記金属錯体は、
一般式(1)
RuLL’ (1)
(上記一般式(1)においてRuはルテニウム原子を表し、L及びL’は配位子を表す。aは2〜4の整数を表し、bは0又は1〜4の整数を表し、a+bは6以下である。)で表される金属錯体である
ことを特徴とする金属錯体の合成方法。
【請求項14】
請求項1または2において、
前記金属錯体は、
一般式(2)あるいは(3)
RuLL’ (2)
RuL (3)
(上記一般式(2)および(3)においてRuはルテニウム原子を表し、Lはビピリジン系配位子を表し、L’はL以外の配位子を表す。また、前記ビピリジン系配位子とは、2,2’−ビピリジンまたは2,2’−ビピリジンの誘導体である。)で表される金属錯体である
ことを特徴とする金属錯体合成方法。
【請求項15】
請求項1または2において、
前記金属錯体は、
一般式(4)
RuL(SCN) (4)
(上記一般式(4)においてRuはルテニウム原子を表し、Lは2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を表す。)で表される金属錯体である
ことを特徴とする金属錯体の合成方法。
【請求項16】
請求項1または2において、
マイクロ波を照射する際、不活性ガス雰囲気及び遮光下にて行うことを特徴とする金属錯体の合成方法。

【国際公開番号】WO2004/099128
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505997(P2005−505997)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006133
【国際出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【出願人】(393017188)小島化学薬品株式会社 (13)
【Fターム(参考)】