説明

金属顔料組成物

本発明は、金属顔料から形成された組成物及びそれらの製造方法に関する。該組成物は、金属粒子FP及び液体から構成され、該液体は、脂肪酸R'−COOR(式中、R'は9〜20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族基であり、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキルである。)のエステルである。このものは、金属(SP)の出発粒子を該脂肪酸エステルである液体ビヒクルに導入し、そしてこのようにして得られた混合物を摩砕することからなる方法によって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属顔料、特にアルミニウム顔料から形成された、金属塗料の製造用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属顔料から形成された、金属塗料の製造用の組成物を製造するのに産業上使用されている慣用技術は、粒状の金属を揮発油に導入し、そして該懸濁液を脂肪酸型の滑剤の存在下で摩砕することからなる。この技術は、特に、米国特許第2002891号に記載されている。この技術は、良好な特性を有する顔料を得ることを可能にする。しかしながら、これは、揮発油が非常に揮発性であり且つ毒性である(該揮発油はさらに生分解性ではない)ため、大きな不利益を有する。
【0003】
欧州特許第0936253号には、金属粒子から形成された組成物の製造方法であって、金属の粒子を、植物油のエステル化生成物からなり且つ滑剤としての脂肪酸を含む媒体中で摩砕することからなる方法が記載されている。該媒体は、本質的に、エステル源として使用される植物油から構成される様々な脂肪酸エステルの混合物を含む。この技術は、揮発油の使用と比較して利点がある。というのは、該脂肪酸エステルは揮発性でも毒性でもなく、さらに生分解性だからである。しかしながら、植物油から誘導されるエステルと、滑剤としての脂肪酸とのの混合物を金属粒子の摩砕用ビヒクルとして使用することには、所定の欠点がある。第一に、これは、顔料ペーストの熟成中に粒子(これらのものは、その保管の間存在する)の凝集を促進させる。実際は、金属塗料の製造の際に、金属粒子がかなりの程度凝集した金属粒子から形成される組成物を使用すると、塗料の「金属的」外観が悪化し、また、その関連する色の密度が増大する。これは、金属粒子の凝集が顔料によって生じた反射性表面を低減させ、それによってそれらの染色強度が失われるためである:該粒子を含む着色ラッカー組成物では、該顔料は、その結果、これらのものを含むラッカーの色の悪化の低減をもたらす。さらに、粒子から形成された組成物中に脂肪酸エステルに加えて脂肪酸が存在すると、さらなる潤滑の役割を与えることによって摩砕の効果が制限される。さらに、摩砕後に、摩砕用の溶媒であるビヒクルをそのリサイクルの目的で回収するには、蒸留することが必要となる。
【特許文献1】米国特許第2002891号明細書
【特許文献2】欧州特許第0936253号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、先行技術の組成物並びにそれらの製造方法の不利益を有しない、金属顔料から形成された新規組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従う、金属顔料から形成された組成物の製造方法は、出発金属粒子(SP)を液体ビヒクルに導入し、そして、このようにして得られた混合物を摩砕することからなる。これは、該液体ビヒクルが脂肪酸エステルR'−COOR(式中、R'は9〜20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族基であり、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキルである。)から構成されることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
該エステルR’−COORのなかでは、R’が飽和Cn2n+1基であり、nが9〜20の間であるもの、特に9≦n≦17であるものが好ましい。例示としては、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル及びステアリン酸メチルが挙げられる。
【0007】
該方法は、金属顔料から形成された組成物であってその金属がアルミニウム、銅、亜鉛、錫、金、銀、これらの金属の合金から、またステンレス鋼及び青銅から選択されるものの製造のために使用できる。これは、特に金属塗料の製造の際に使用されるアルミニウム顔料から形成された組成物の製造に特に有利である。
【0008】
金属粒子SPは、本質的に球状若しくは非球状粒子又は小さな棒状体から本質的に構成される任意の粉末の形態にあることができる。また、これらのものは、アルミニウムシートのような薄いシートによって形成されることもできる。アルミニウムの場合には、特に、アルミニウム金属の含有量が少なくとも99重量%であり、0.1〜500μmの平均寸法を有する粒子からなる粉末が使用できる。例示としては、Toyal Europe SA、Toyal America Inc.又は東洋アルミニウム株式会社により商品名「grade 406S」、「grade 409S」及び「grade 432」の下で販売されているアルミニウム粒子が挙げられる。
【0009】
好ましくは、摩砕を受ける混合物は、1kgのSP粒子当たり1〜10kgの液体ビヒクルを含む。
【0010】
摩砕の目的は、出発金属粒子SPを成形的に変形させ、これをおおよそ球状の形態又はフィルムの形態から1/5〜1/1000の形状因子(平均厚さ対平均横径の比を表す)を有するFP粒子に変換させることである。このような粒子は、多かれ少なかれ均質なグリッター、ディスク又はフレークの形態で与えられ得る。該FP粒子の形状及び寸法は、摩砕の有効性に依存する。摩砕の効果が低いと、さらに大きな寸法の均質なFP粒子が生じる。摩砕がさらに効果的である場合(恐らくは過剰摩砕の条件下で)には、形成される粒子は崩壊し、且つ、おそらく均質性の低い小さな寸法の最終FP粒子を与えるであろう。
【0011】
摩砕時間は、一般に1時間〜20時間である。これは、摩砕装置によって生じるエネルギー、SP粒子の性質及び望まれる結果に従って調節される。摩砕時間の選択は、当業者の技術範囲内にある。
【0012】
摩砕工程の終了時に、酸エステルの含有量を30〜90重量%の値に調節して、想定される様々な用途に直接使用でき且つ使用するまで保管できる、金属粒子FP及び脂肪酸エステルから構成される組成物を形成させる。この調節は、摩砕後に得られた混合物にフィルタープレスの作用を受けさせて過剰の液体ビヒクルを除去することによって、又は、その含有量が不十分である場合には、混合により脂肪酸エステルを添加することによって実施できる。
【0013】
本発明の別の主題は、金属粒子FP及び液体から構成される、金属顔料から形成された組成物であって、該液体が、脂肪酸エステルR’−COOR(式中、R’は9〜20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族基であり、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキルである。)であることを特徴とする組成物である。
【0014】
R置換基がメチル基であり、R’置換基が9〜17個の炭素原子を有する飽和アルキル基であるエステルを含む組成物が特に好ましい。
【0015】
本発明に従う組成物のエステル含有量は、好ましくは30〜90重量%である。
【0016】
金属粒子FPは、500μm以下の平均寸法及び1/5〜1/1000の形状因子を有する異方性粒子である。好ましくは、該FP粒子は、500μm以下の平均横径及び3μm以下の平均厚さを有するグリッター型のものである。
【0017】
本発明に従う金属顔料から形成された組成物は、様々な技術分野で使用できる。例えば、このものは、特に自動車産業向けの金属塗料の処方又は工業用塗料の処方のために使用できる。本発明に従う金属顔料から形成された組成物は、さらに、金属的外観を有する印刷用インク又はプラスチックの処方のために使用できる。さらに、本発明に従う顔料から形成された組成物は、金属的外観を有する化粧用組成物の製造のために使用できる。
【0018】
本発明に従う顔料組成物を金属塗料の製造のために使用するときに、該FP粒子の形状及び寸法は、仕上げ塗料の外観に影響を与える。一般に、他の全てが同じならば、
・該粒子の平均横径が増大すると、該粒子が取り込まれた塗料の光沢が増大し、
・平均横径が減少すると、該塗料に関わる色がさらに悪化する、さらに高い包括力をもたらし、
・該粒子の均質性が増大すると、該粒子を含む塗料の光沢が増大する一方で、低い均質性によって塗料の艶がなくなり、
・粒子の割合が増加すると、塗料の金属的外観を増進させる。
【実施例】
【0019】
本発明を、次の実施例を利用してさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0020】
使用した物質は次の通りである:
・慣用の非球状アルミニウム粉末(以下、Al−05という。)(d50=5μm、Al>99.7%);
・慣用の非球状アルミニウム粉末(以下、Al−10という。)(d50=10μm、Al>99.7%);
・オレオン社により商品名Radia7118の下に販売されているラウリン酸メチル;
・ノウビオン社により商品名NS813の下に販売されている無色ニトロセルロースラッカー;
・ニトロセルロースラッカーNS813とフタロシアニン青色とを混合させることによって得られた青色ニトロセルロースラッカー;
・オレオン社によって商品名Radiacid294の下に販売されている、高オレイン酸含有量(90%)を有する脂肪酸混合物。
【0021】
様々な例において、
・摩砕は、50mmの直径と200mmの内部深さとを有し且つ10mm未満の直径を有する39.2kgの鋼球を備えたロールミルで実施し;
・ラッカーは、商品名MS NSB 350Nの下で倉敷紡績株式会社によって販売される遊星型の動作をするミキサーで調製する。
【0022】
例1
アルミニウム顔料から形成された組成物の製造
所定量nAのアルミニウム粉末SP及び所定量nLのラウリン酸メチルをミルに導入し、そして28回転/分で8時間にわたり摩砕した。
摩砕の終了時に、スラリーが得られ、そしてこれを25μmの開口を有するふるいに通してふるい分けし、次いで、プレートフィルターに通してろ過した。ろ過後に得られたペーストをシグマ型ブレードミキサーを使用して、65%のエステルレベルを調節するようにエステルを添加しつつ均質化させた。
この試験を、アルミニウム粉末SPの性質と量及びエステルの量を調節しつつ反復して表1に従う試料BR03及びBR06を得た。
【0023】
【表1】

【0024】
試料BR06の特定の手順を繰り返して試料BR07〜BR011を製造したが、ただし、BR07については、試料BR06のふるい分け/ろ過工程後に回収した液体を使用し、そしてその後、試料BRn(n=8〜11)のそれぞれの製造については、試料BR(n−1)のふるい分け/ろ過工程後に回収された液体を使用した。
比較として例1の手順を繰り返したが、ただし、この場合、摩砕用液体ビヒクルとして、一方では揮発油(gで表すnW)とRadiacid(gで表すnR)との混合物(試料BR01−C、BR05−C)を、そして他方ではラウリン酸メチル(gで表すnL)とRadiacid(gで表すnR)との混合物(試料BR02−C)を使用した。この特定の条件を次の表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
ふるい分け前の様々な試料の粒度を決定した。試料の0.32gを8mLのブチルグリコールに分散させ、次いで得られた混合物を40mLのエタノールに再分散させた。へらを使用して均質化させた後に、該混合物を3分間超音波照射(60Hz)に付した。その後、該混合物をHydro2000S液体ルート測定モジュールを備えたMalvern Mastersizer2000型の粒度計を使用して特徴付けた。結果を次の表3に示す。
【0027】
【表3】

【0028】
本発明に従う試料BR06〜BR11についての結果を比較すると、リサイクルされた摩砕用液体ビヒクルは、顔料の粒度の悪化を生じさせないことが分かる。
【0029】
BR01−C及びBR03について得られた結果を比較すると、粒子の寸法分布は、先行技術の「揮発油+Radiacid」混合物(試料BR01−C)を本発明に従うエステル(試料BR03)で置き換えた場合に実質的に同等であることが分かる。
【0030】
BR03及びBR02−Cについて得られたd50の値を比較すると、摩砕用液体ビヒクルがラウリン酸メチルとRadiacidとの混合物である場合に、粒子がさらに大きいことが分かる。従って、摩砕用液体ビヒクルが脂肪酸エステルであるときに脂肪酸が存在すると摩砕の効果が低減し、この場合に該粒子が歪みを受け、それによって劈開を受けることなく該粒子を成長させることが確認される。このときに、摩砕されすぎることなく、即ち、より大きな寸法のグリッターの劈開によって得られる低粒度のグリッターを生じさせることなく、摩砕が生じる。
【0031】
例2
顔料の被覆力の評価
ラッカー組成物を次の方法で製造する:顔料から形成された組成物の試料の1.5gを、48.5gの青色ニトロセルロースラッカー中に分散させ、そしてこの混合物をミキサーで均質化させる。このようにして得られた着色ラッカーを紙のシートに塗布する。
【0032】
このようにして、青色ラッカーを、一方では本発明に従う顔料から形成された組成物BR03で、そして他方では先行技術のBR01−C及びBR02−Cの顔料から形成された組成物で製造した。
【0033】
それぞれのラッカーを紙シートに塗布した後に、その被覆力を、紙の被覆シートのそれぞれを通して透過した光を透明度により観察することによって評価した。それにより、次のことが分かった:
・顔料BR03から形成された組成物から得られたラッカーは、組成物BR01−Cから得られたラッカーの被覆力と同等の被覆力を有すること(これは、揮発油/脂肪酸混合物を摩砕用液体ビヒクルとして脂肪酸エステルで有利に置き換えることができることを確認するものである);
・BR02−Cから得られたラッカーは、BR03から得られたラッカーよりも低い被覆力を有すること。
【0034】
この結果は、該ラウリン酸メチルが摩砕中に潤滑剤の役割を果たし、しかも脂肪酸の添加によって全体的に非常に高い潤滑力が得られるが、これは摩砕の効果を制限し且つより大きな寸法の粒子を与えやすいということを確認するものである。従って、BR02Cから得られた顔料を含むラッカー組成物は、BR03から得られた顔料を含むラッカー組成物よりも低い被覆力を有する。
【0035】
例3
老化試験
本発明に従う顔料から形成された様々な組成物(BR03、BR06、BR09、BR11)及び先行技術の顔料組成物BR02−Cの経時的挙動を比較した。この比較は、次の手順に従う促進老化試験によって実施した。
顔料から形成されたそれぞれの組成物について、2種の試料を調製し、そしてそれぞれ4℃の温度で、即ち、組成物が変化しないと認められる条件下で、及び加速された老化をもたらすと思われる50℃で保存した。
老化中に、試料のそれぞれの部分を、3ヶ月後、6ヶ月後及び9ヶ月後に取り出し、そして、取り出されたそれぞれの部分から、例2の手順に従って青色ニトロセルロースラッカーを調製した。
顔料から形成された組成物では該顔料が時間経過と共に凝集する傾向があること、及び顔料から形成された組成物中で該顔料の凝集度合いが増加すると、該顔料の染色強度の損失に対して、顔料から形成された当該組成物を含む塗料の着色の強さが増大することが分かる。
該顔料の染色強度の変化を、パラメーターCを使用して極座標[h、C、L]で表されるCIELab 1976 表色系で評価した。これは、色の彩度についての情報を与える。パラメーターCが大きければ大きいほど、飽和も大きく且つ色はより純粋である。パラメーターCが小さければ小さいほど、その色は悪化し且つ灰色になる傾向がある。従って、同一の青色の色合い(同一のパラメーターh)を有する2種のラッカー組成物を比較する場合に、パラメーターCは、顔料の凝集が少なく且つ顔料の染色強度が大きいラッカーについては、より低いであろう。
ミノルタCR300装置を使用して得られた値を次の表4に与える。ΔC=C基準−Ct(ここで、Ctは、老化時間t後に測定された値である)。
【0036】
【表4】

【0037】
このように、オレイン酸を含む先行技術に従う試料BR02−Cについて観察されるものとは対照的に、本発明に従う試料BR03については、Cは9ヶ月までは変化が非常に小さいことが明らかである。それぞれのラッカー組成物で被覆された支持材の単純な目視観察もこの結果を支持する。また、本発明に従う他の試料(BR06、BR09及びBR11)については、老化試験の9ヶ月経過後でもCが事実上変化しないことも分かる。
【0038】
例4
光沢仕上げラッカーの様々なパラメーターに及ぼす顔料の影響を評価した。
「化学的」乾燥を示す塗料組成物(以下、JB042という。)を次の方法で調製する。例1に従って製造された顔料BR03から形成された組成物の試料20.0gと、商品名Lixothan UAL55.55BTの下で販売されているアルキドウレタン樹脂71.67g、商品名Octa Soligen 161/D60の下で販売されている複合乾燥剤1.45g、商品名Exkin518の下で販売されている皮張り防止剤1.2g及び揮発油5.68gを含む構成成分の混合物とを混合した。このようにして得られた塗料組成物を、ミキサーを使用して均質化した。
基準混合物(以下、JB041という。)を同様の方法で調製したが、ただし、顔料BR03から形成された組成物を、上記表2で定義した先行技術のBR01−Cの顔料から形成された組成物で置き換えた。
【0039】
光沢
金属塗料JB042及びJB041を、150μmの湿潤塗膜厚さで金属シートに塗布した。塗膜の光沢を、60°及び85°の角度で異なる観察時間に評価した。これらの結果を次の表5に示す。D+1、D+7及びD+30は、観察時間、即ち、それぞれ、塗膜の付着後1日、7日及び30日を表す。
【0040】
【表5】

【0041】
これらの結果は、本発明に従う塗膜の光沢が、先行技術に従う塗膜の光沢よりもD+1で著しく大きいことを示している。光沢の差は時間と共に減少するが、それにもかかわらず、この光沢は、本発明に従う塗膜については優れたままである。
【0042】
促進老化試験
金属塗料JB041及びJB042を150μm湿潤塗膜厚さで金属シートに塗布した。このようにして得られたシートを暗所で保管し、そしてそれらの色座標(Lab系)を一定間隔で測定してそれらの色に対して見込まれる変化を評価した(黄変)。結果を以下の表6に与える。
【0043】
【表6】

【0044】
これらの結果は、塗膜の色座標の小さな変化、特にパラメーターb*の小さな変化を示しているが、このパラメータの正の値に対しての変化は該塗膜の黄変を示すものであるが、この変化は、基準塗料JB041でも本発明に従う塗料JB042でも同様に増大している。
【0045】
塗膜の乾燥
金属塗料JB041及びJB042を100μmの湿潤塗膜厚さでガラスシートに塗布する。金属ボールを、10gの重さを用いて湿った塗膜上で保持する。一定速度(6cm/時間)での直線的平行移動を該ボールに加える(これは、該塗膜の表面にわだちを残して直線的に移動する)が、この分析結果から、時間の関数として乾燥の性質が明らかになる。
典型的には、該塗膜は、該ボールが通った後にもはや再びふさがらない場合には、乾燥し始めているとみなされ、該塗膜がピックオフを示し始めた場合には表が乾燥しているとみなされ、該ピックオフが消滅した場合にはその中が乾燥しているとみなされ、そして、ボールが該基材上にもはやいかなる印も残さない場合に乾燥が完了したとみなされる。
結果を次の表7にまとめる。
【0046】
【表7】

【0047】
*:この試験は、11時間の期間を有する;従って、該ボールのわだちは、この期間後にもなお存在することが可能であるが、これは実証できない。
【0048】
乾燥の初期の局面は、金属塗料JB042については30分延び、そしてこの乾燥の第1段階中に得られる時間差は、様々な段階全体を通して安定なままである。従って、これは、乾燥の他の局面が従来技術JB041の塗料と同様の速度に従って生ずることを示す傾向がある。
【0049】
塗膜の硬度
金属塗料JB041及びJB042を150μmの湿潤塗膜厚さで金属シートに塗布する。このようにして製造されたシートをペルソ振子試験に付してそれらの硬度を評価する。この振子を塗膜の表面に置き、そして振動状態にセットする。該塗膜の硬度が高ければ高いほど、振幅の減衰は弱く且つ振幅時間は長い。従って、この硬度は、秒で「表す」ことができ、それよりも長い時間は硬度がさらに大きいことを示す。結果を以下の表8に示す。
【0050】
【表8】

【0051】
出発硬度(塗布後1日)は、2種の塗膜について同一である。その後、該硬度は、本発明に従う塗膜JB042についてはさらに有意に増加する。しかしながら、30日後には、2種の塗膜は同様の硬度を示す。
【0052】
従って、実施した試験の組合せから、アルキドウレタン型の塗料組成物において先行技術の顔料を本発明に従う顔料で置き換えても、該塗料の特徴である主なパラメーター、即ち、光沢、安定性、乾燥時間及び硬度が変化しないと結論付けることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発金属粒子(SP)を液体ビヒクルに導入し、そしてこのようにして得られた混合物を摩砕することからなる、金属顔料から形成された組成物の製造方法であって、該液体ビヒクルが脂肪酸エステルR'−COOR(式中、R'は9〜20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族基であり、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキルである。)から構成されることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
前記エステルR'−COORが、R'が飽和Cn2n+1基(ここで、nは9〜20である。)であるものから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エステルがラウリン酸メチルであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属粒子SPが、アルミニウム、銅、亜鉛、錫、金、銀又はこれらの金属の合金の粒子並びにステンレス鋼又は青銅から形成された粒子から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属粒子SPが0.1〜500μmの平均寸法を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
摩砕を受ける混合物が、SP粒子1kg当たり1〜10kgの液体ビヒクルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
摩砕時間が1時間〜20時間の間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
摩砕工程の終了時に、酸エステルの含有量を総重量の30〜90重量%の値に調節することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
金属粒子FP及び液体から構成される、金属顔料から形成された組成物であって、該液体が脂肪酸エステルR'−COOR(式中、R'は9〜20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族基であり、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキルである。)から構成されることを特徴とする、組成物。
【請求項10】
Rがメチルであり、R’が9〜17個の炭素原子を有する飽和アルキル基であることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記エステル含有量が30〜90重量%であることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
金属粒子FPが、500μm以下の平均寸法及び1/5〜1/1000の形状因子(これは、平均厚さ対平均横径の比である)を有する異方性粒子であることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記粒子が500μm以下の平均横径及び3μm以下の平均厚さを有するグリッター型のものであることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記エステルがラウリン酸メチルであり、前記金属粒子がアルミニウムグリッターであることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
請求項9に記載の金属顔料から形成された組成物を含むことを特徴とする塗料組成物。
【請求項16】
請求項9に記載の金属顔料から形成された組成物を含むことを特徴とするインク組成物。
【請求項17】
請求項9に記載の金属顔料から形成された組成物を含むことを特徴とする、金属的外観を有するプラスチックから形成された組成物。
【請求項18】
請求項9に記載の金属顔料から形成された組成物を含む、金属的外観を有する化粧用組成物。

【公表番号】特表2008−525559(P2008−525559A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547571(P2007−547571)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003224
【国際公開番号】WO2006/070108
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507208495)
【Fターム(参考)】