説明

針部材ロック式開閉クランプ及び採血器具

【課題】従来の、破断すると流路が開通する封止部の破断が速やかにできない、封止部材の破断片が流路を塞ぐ等の懸念を解消することができる針部材ロック式開閉クランプ及び採血器具を提供すること。
【解決手段】それぞれチューブの挟持部(4a、4b)を有する可動固定部材(3)と底部(2)を、屈曲部(8)を介して連結し、前記底部(2)の前記屈曲部(8)と反対側に、上方向に立ち上がる連結部(9)を形成し、前記屈曲部(8)と前記連結部(9)にそれぞれチューブ(T)の挿入孔(13a、13b)を形成し、前記可動固定部材(3)の先端に係合突部(7a)を形成し、前記連結部(9)の上部に針部材固定部(K)を形成し、当該針部材固定部(K)に前記係合突部(7a)と係合する係止部(7b)を形成し、当該係止部(7b)の形成位置よりも上方に、針部材の固定孔(5)と挿通孔(6)を形成した針部材ロック式開閉クランプ(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針部材ロック式開閉クランプと、針部材ロック式開閉クランプを採血チューブに装着した採血器具の改良に関する。針部材ロック式開閉クランプは、採血器具以外の医療分野、その他の一般産業分野にも利用できる。
【背景技術】
【0002】
針部材(採血針)から採取した血液を採血バッグに導入する際、供血者の穿刺位置をアルコール等で消毒を行うが、消毒を行なっても、皮膚や皮下に存在する細菌が採取した血液の中に混入することがある。
混入した細菌は、細菌の種類によっては、採血バッグを保存している間にも増殖し、細菌の増殖に気づくことなく輸血などに用いられると輸血された患者に感染症などを引き起こし、重篤な事態となるおそれもある。
そこで、採取された血液の細菌汚染防止を図ることができるように、特に採血時の初流の血液を除去するシステムが発明されるようになった。
【0003】
特許文献1から特許文献4には、血液を採取する採血針と、採取された血液を収納する採血バッグと、一方端が採血バッグに他方端が採血針にそれぞれ連通し、採取された血液を採血バッグへ導入する第1の流路(採血チューブ)と、分岐部を介して第1の流路から分岐し、末端に血液の取り出し口を有する第2の流路(初流血液チューブ)を有し、分岐部と採血バッグの間の第1の流路(採血チューブ)に、流路用封止手段(外付けのクランプ、破断すると流路が開通する封止部材)を装着した採血用器具の発明が開示されている。
【0004】
中でも特許文献2と特許文献3は、第1の流路(採血チューブ)の流路用封止手段として、外付けのクランプを使用した場合、作業者のクランプの閉め忘れ、これに伴う採血バッグへの採血初流の混入を確実に防止するために、流路用封止手段として、破断すると流路が開通する封止部材を使用するのが良いと明記されている。
また特許文献2と特許文献3のように、分岐部と採血バッグの間の第1の流路(採血チューブ)に、破断すると流路が開通する封止部材を装着する手段では、(1)破断が速やかにできない、封止部材の破断片が流路を塞ぐ、破断屑が発生したりする等の懸念がある。(2)第1の流路(採血チューブ)内に配置するため、第1の流路(採血チューブ)と異なる管状部材内に配置して、第1の流路(採血チューブ)に接続しないといけないので、構成が複雑になる。
【0005】
また最近、わずかな数であるが第1の流路(採血チューブ)において、溶血の発生が報告され、確かな根拠はないが、破断すると流路が開通する封止部材が原因ではないかとの噂もある。
そこで、破断すると流路が開通する封止部材を廃止することも検討されているようであるが、封止部材を廃止し、作業者が直接かん子等の開閉手段を使用して、作業を行うことも検討されているが、採血初流除去開始前の初期状態では第1の流路(採血チューブ)が開放されているため、かん子等の閉め忘れなどにより操作の手順を誤ると、採血時に採血初流を採血バッグに流入させてしまう懸念がある。
【0006】
なお針部材付きチューブのクランプとして、例えば特許文献5と特許文献6の記載の発明が開示されている。
特許文献5に記載の発明は、使用された後の注射針を収容する注射針を収納可能な輸液流量制御器(クランプ)に関するもので、胴部11及び輸液チューブ6を貫通させるチューブ通路12を有する本体10と、本体10に装着され、輸液チューブ6に対して制動の動作を生じることによって流量を調整する調整ユニット20と、本体10に連接する筒部31と、注射針の頭部8を収納するように筒部31に設けられる収納孔32と、注射針の頭部8を出入りさせるように収納孔32と繋がる収納口33を有する収納筒30とを備える。これにより、制御器(クランプ)の収納筒30に注射針が収納されるものである。
【0007】
特許文献6に記載の発明は、プロテクターの機能とクランプの機能を兼ね備えたリキャップ操作を必要としない翼状針用クランプに関するもので、当該翼状針用クランプは、チューブ挿通孔11を有する基端側の可撓性湾曲部1と、湾曲部1を介して接続された上部材2及び下部材3を含んでおり、上部材2と下部材3は先端側で係脱自在に係合可能に形成され、そして上部材2と下部材3が係合したときにチューブが圧迫されるようになっており、非係合時には上部材2と下部材3の間に少なくとも翼を導入可能な間隙が生じるようになっている。また、上部材または下部材には針及びハブを収容可能な空間が設けられている。透析終了後に、人体から抜去した針41を収納空間にスライドさせて収納し、係合フック21と被係合部31を係合させて針41を内部に固定収納することで、誤刺防止と血液噴出防止を同時に果たすというものである。
しかし、特許文献5の発明では、使用後に針部材を本体内に収納するのみで、また特許文献6の発明も、使用後の針部材の誤刺防止のプロテクタの機能をクランプに付加したのみであり、使用前後の針のロック(固定)、チューブの液体流路の開閉手段については、開示していない。
【特許文献1】特許3361440(特許請求の範囲、図1、9、10)
【特許文献2】特許3776227(特許請求の範囲、図1、2、11から13)
【特許文献3】特許3813974(特許請求の範囲、図1、2、5)
【特許文献4】特開2001−17539(特許請求の範囲、図1)
【特許文献5】特開2003−190283号公報(特許請求の範囲、図2、3、[0011])
【特許文献6】特開2001−340450号公報(特許請求の範囲、図4、5、[0011])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明が解決しようとする問題点は、
特許文献2、3のように、破断すると流路が開通する封止部材を装着する手段では、(1)破断が速やかにできない、封止部材の破断片が流路を塞ぐ、破断屑が発生したりする等の懸念がある。(2)第1の流路(採血チューブ)の構成が複雑になる。(3)第1の流路(採血チューブ)における溶血の懸念を払拭するために、第1の流路(採血チューブ)から破断すると流路が開通する封止部材を廃止すると、作業者がかん子等の開閉手段を使用して、作業を行うことが必要となり、かん子等の閉め忘れなどにより操作の手順を誤ると、採血初流血液を採血バッグに流入させてしまう懸念がある点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明は、それぞれチューブの挟持部(4a、4b)を有する可動固定部材(3)と底部(2)を、屈曲部(8)を介して連結し、
前記底部(2)の前記屈曲部(8)と反対側に、上方向に立ち上がる連結部(9)を形成し、
前記屈曲部(8)と前記連結部(9)にそれぞれチューブ(T)の挿入孔(13a、13b)を形成し、
前記可動固定部材(3)の先端に係合突部(7a)を形成し、
前記連結部(9)の上部に針部材固定部(K)を形成し、当該針部材固定部(K)に前記係合突部(7a)と係合する係止部(7b)を形成し、当該係止部(7b)の形成位置よりも上方に、針部材の固定孔(5)と挿通孔(6)を形成した針部材ロック式開閉クランプ(1)を提供する。
[2]本発明は、チューブを押圧挟持してチューブを閉塞することができる挟持部(4a)を、下部に形成した可動固定部材(3)と、当該可動固定部材(3)に形成した挟持部(4a)とともに、チューブを押圧挟持してチューブを閉塞することができる挟持部(4b)を、上部に形成した底部(2)を有し、
前記底部(2)と前記可動固定部材(3)を、相互に連結する屈曲部(8)を介して一体に形成し、前記可動固定部材(3)の先端に係合突部(7a)を形成し、前記底部(2)の前記屈曲部(8)と反対側に、上方向に立ち上がる連結部(9)を形成し、
前記屈曲部(8)と前記連結部(9)のそれぞれにチューブ(T)の挿入孔(13a、13b)を形成し、
前記連結部(9)の上部に針部材固定部(K)を形成し、当該針部材固定部(K)に前記係合突部(7a)と係合する係止部(7b)を形成し、当該係止部(7b)の形成位置よりも上方に、針部材の固定孔(5)と挿通孔(6)を形成した針部材ロック式開閉クランプ(1)を提供する。
[3]本発明は、前記針部材固定部Kの固定孔(5)の径(L1)を、針部材(11)の最大径(H1)より小さいサイズに形成し、挿通孔(6)の径(L2)を、針部材(11)の最大径(H1)が通過できるサイズに形成した[1]または[2]に記載の針部材ロック式開閉クランプ(1)を提供する。
[4]本発明は、係合突部(7a)が係止部(7b)に係合しているときは、係合突部(7a)は係止部(7b)の下部に位置し、挟持手段(4a、4b)はチューブを挟持して、チューブ(T)の液体流路を遮断し、
係合突部(7a)が係止部(7b)に係合していないときは、係合突部(7a)は係止部(7b)の上部に位置し、係合突部(7a)は、針部材(11)を固定孔(5)に固定し、
挟持手段(4a、4b)はチューブを挟持せずに液体流路を開放している[1]から[3]のいずれか1項に記載の針部材ロック式開閉クランプ(1)を提供する。
[5]本発明は、供血者より血液を採取する針部材(11)と、
採取された血液を収納する採血バッグ(12)と、
一方端が前記採血バッグ(12)に他方端が前記針部材(11)にそれぞれ連通し、前記採取された血液を前記採血バッグ(12)へ導入する採血チューブ(T1)と、
当該採血チューブ(T1)の途中に分岐管(14)を配置し、当該分岐管(14)に前記採取された血液の初流を除去する初流血液チューブ(T2)を接続し、前記分岐管(14)と前記採血バッグ(12)の間の採血チューブ(T1)の途中に、[1]から[4]のいずれか1項に記載の針部材ロック式開閉クランプ(1)を装着し、当該針部材ロック式開閉クランプ(1)に針部材(11)を固定した採血器具(10)を提供する。
【発明の効果】
【0010】
(1)本発明の針部材ロック式開閉クランプ1を、第1の流路(採血チューブ)に配置することにより、従来の破断すると流路が開通する封止部の破断が速やかにできない、封止部材の破断片が流路を塞ぐ、破断屑が発生したりする等の懸念を解消することができる。
(2)採血初流除去開始前では、針部材11は固定孔5固定されているので、針部材11は使用できず、採血初流除去開始時には、挟持手段4a、4bは採血チューブT1を挟持して、採血チューブT1の流路を遮断し、採血初流が採血バッグ10bに入ることはないので、作業者は操作手順を誤ることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の針部材ロック式開閉クランプ1の概略図、図2、図3は本発明の針部材ロック式開閉クランプ1を装着した採血器具10の一例を示す概略図である。
図4から図7は、本発明の針部材ロック式開閉クランプ1の使用例の概略図で、図4(A)は本発明の針部材ロック式開閉クランプ1で針部材11を固定(ロック)した状態の概略図、図4(B)は針部材11付近の一部拡大図、図5は本発明の針部材ロック式開閉クランプ1でチューブTをクランプした状態の概略図、図6は針部材11を固定孔5から挿通孔6に移動させた状態の概略図、図7は、本発明の針部材ロック式開閉クランプ1で挿通孔6から針部材11を抜いた概略図である。
[採血器具10]
採血器具10は、図2、図3に例示するように、供血者より血液を採取する針部材11と、採取された血液を収納する採血バッグ12と、一方端が採血バッグ12に、他方端が針部材11にそれぞれ連通し、採取された血液を採血バッグ12へ導入する採血チューブT1を有し、採血チューブT1の途中には分岐管14を配置し、この分岐管14に、採取された血液の初流を除去する初流血液チューブT2を接続し、分岐管14と採血バッグ12間の採血チューブT1の途中に、針部材ロック式開閉クランプ1を配置している。針部材11は、針部材ロック式開閉クランプ1に固定している。
【0012】
さらに詳述すれば、採血器具10は、例えば図2に示すように、採血バッグ12、採血初流除去セット10a、血液フィルタ23、第1子バッグ25、第2子バッグ26及び赤血球保存液入バッグ27から構成される。
採血バッグ12の上流には、採血チューブT1が接続されている。採血チューブT1には、先端(上流)からその途中にわたって、針部材11、分岐管14が接続・配置されている。分岐管14には、初流血液導入チューブT2を介して採血初流除去セット10a(採血初流除去バッグ10bと採血管ホルダ10c含む)が接続される。
さらに採血バッグ12の下流には、連結チューブT3を介して血液フィルタ23及び第1子バッグ25を接続している。さらに第1子バッグ25は、連結チューブT4、分岐管14b、連結チューブT5、T6を介して、第2子バッグ26、赤血球保存液入バッグ27を接続している。
採血バッグ12及び赤血球保存液入りバッグ27には、採血時または輸血保存時における血液の凝固の防止または保存のために、例えばACD液、CPD液、MAP液のような抗凝固剤または赤血球保存液を収納している。
採血初流除去バッグ10b及び採血バッグ12のバッグ類を構成する材料として、例えばポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等の可撓性合成樹脂が用いられる。
【0013】
[針部材ロック式開閉クランプ1(以下、クランプ1)]
本発明のクランプ1は、図1に例示するように、少なくともそれぞれチューブの挟持部4a、4bを有する可動固定部材3と底部2を屈曲部8を介して連結し、底部2の屈曲部8と反対側に、上方向に立ち上がる連結部9を形成し、屈曲部8と連結部9のそれぞれにチューブTの挿入孔13a、13bを形成し、可動固定部材3の先端に係合突部7aを形成し、連結部9の上部に針部材固定部Kを形成し、針部材固定部Kに係合突部7aと係合する係止部7bを形成し、係止部7bの形成位置よりも上方に、針部材の固定孔5と挿通孔6を形成することにより構成されている。
さらに詳述すれば、チューブを押圧挟持してチューブを閉塞することができる挟持部4aを、下部に形成した可動固定部材3と、可動固定部材3に形成した挟持部4aとともに、チューブを押圧挟持してチューブを閉塞することができる挟持部4bを、上部に形成した底部2を有する。
そして底部2と可動固定部材3を、相互に連結する屈曲部8を介して一体に形成し、可動固定部材3の先端に係合突部7aを形成し、底部2の前記屈曲部8と反対側に、上方向に立ち上がる連結部9を形成している。
屈曲部8と連結部9のそれぞれにチューブTの挿入孔13a、13bを形成している。
連結部9の上部に針部材固定部Kを形成し、針部材固定部Kに係合突部7aと係合する係止部7bを形成し、係止部7bの形成位置よりも上方に、針部材の固定孔5と挿通孔6を形成している。
【0014】
[針部材固定部K、固定孔5、挿通孔6]
針部材固定部Kは、連結部9の上部に形成され、係合突部7aと係合する係止部7bを形成し、係止部7bの形成位置よりも上方に、針部材11の固定孔5と挿通孔6を形成している。
固定孔5は、針部材11を固定するための孔であり、固定孔5の径L1は、針部材11を固定するために、少なくとも針部材11の最大径H1よりも小さいサイズに形成している。針部材11の最大径H1よりも大きく形成すると、針部材11が固定孔5から抜けるなどして、針部材11を固定することができないためである。
挿通孔6は、固定孔5に固定する際に針部材11を差し込む及び/又は針部材11を使用する際に固定孔5から引き抜くための孔であり、挿通孔6の径L2は、針部材11の最大径H1が通過できるサイズに形成されている。
固定孔5と挿通孔6の位置関係は、図1のように固定孔5の下部に挿通孔6が連続して形成され、形状は達磨状(略8の字状)の孔のごとく形成される。
なお「針部材11の最大径H1」とは、針部材11を構成するキャツプ、針基、チューブ接続部等のうちもっとも径の大きい箇所の径を意味する。
本発明のクランプ1は、係合突部7aが係止部7bに係合していないときは、係合突部7aは係止部7bの上部に位置し、係合突部7aは、上方向に作用する弾性力により、針部材11を固定溝5固定している。このとき挟持手段4a、4bはチューブを挟持せずに液体流路を開放している。
係合突部7aが係止部7bに係合しているときは、係合突部7aは係止部7bの下部に位置し、挟持手段4a、4bはチューブを挟持して、チューブTの液体流路を遮断している。
クランプ1は、ポリプロピレン、ポリアセタール等の硬質ないし半硬質で、可撓性(弾性)を有する合成樹脂を用いて一体に成形される。
【0015】
[針部材11の固定(ロック)]
さらに詳述すれば図4(B)に例示するように、針部材11は、通常、針管(図示せず)を保護するキャップ11a、針管を植設する針基11b、液体移送チューブTとの接続部11c(針基の内部または外部に形成)等の各構成部材を有する。このためこれらの各構成部材間には、段部H3が存在する。
段部H3により、針部材11は、大径部Lと小径部Sに隔てられている。
大径部Lの径[針部材11の最大径で、図4(B)では、針基11bの最大外径)H1は、固定孔5の径L1より大きく形成され、小径部Sの径H2[図4(B)では、接続部11cにチューブTを装着したところの外径]は、固定孔5の径L1と実質的に同じかまたは若干小さく形成されている。
図4(A)に例示するように、小径部Sは、係合突部7aにより固定孔5に固定され、大径部Lの(右)端面は固定孔5の周囲の針部材固定部Kの壁面に係止されることにより、固定孔5から左右(前後)に引き抜けないようになっている。
また図4(B)に例示した段差H3に代えて、例えば針基11bに、固定孔5に係止可能な溝部、凹凸等(図示せず)を形成することで、固定孔5に固定することもできる。
【0016】
[採血器具10の採血チューブT1へのクランプ1の装置]
図2の例示では、クランプ1は、分岐管14と採血バッグ12の間の採血チューブT1の途中に配置し、クランプ1の針部材固定部Kを、採血バッグ12側に向けて装着している。
さらに針部材11をクランプ1の屈曲部8側から針部材固定部K側に向けて固定孔5に装着している。
分岐管14から針部材14に装着された採血チューブT1は、分岐管14から採血バッグ12側に向けて折り返されている。
また図3に例示するように、針部材11をクランプ1の針部材固定部K側から屈曲部8側に向けて挿通孔6(固定孔5)に装着しても良い。
分岐管14から針部材11に装着された採血チューブT1は、分岐管14から採血バッグ12側に向けて折り返され、さらに分岐管14側に向けて折り返されている。
またクランプ1は、図2、図3とは逆に屈曲部8を採血バッグ12側に向けて装着しても良い。その場合も針部材11は、屈曲部8側または針部材固定部K側から挿通孔6(固定孔5)に装着してもよい。
以上のように、本発明のクランプ1は、針部材11の装着方向を考慮することなく、採血チューブT1の分岐管14から採血バッグ12の間に配置することができ、針部材11も使い勝手などに合わせて任意の方向に配置しておくことができる。
【0017】
また、図2、3のように、採血時等における血液の凝固の防止または保存のために採血バッグ12内に収納している抗凝固剤(例えばCPD液)が採血初流除去バッグ10a内に入り込むのを防止するために、連通ピース13(破断すると流路が開通する封止部材)を、初流血液チューブT2の途中に配置している。
【0018】
[クランプ1と採血器具10の使用方法の一例]
(1)(クランプ1の採血器具10への装着/採血初流除去前の初期状態)
クランプ1は、図2と図4に例示するように、採血器具10に装着される。
すなわち組み立て時、クランプ1のチューブの挿入孔13a、13bに採血チューブT1(チューブT)を装着し、針部材固定部Kの固定孔5に針部材11を装着する。
このとき係合突部7aは、図1、図4のように係止部7bとは係止せず、クランプ1自体の弾性力により、係止部7bの上方に位置し、針部材11の細径部Sを押止して、針部材11を固定孔5に固定している。
チューブTは挟持手段4a、4bにより、挟持されていないので液体流路は開放状態にある。
(2)(針部材11のクランプ1からの取り外し)
採血初流除去を開始するにあたり、クランプ1の可動固定部材3を下方に移動させて、係止部7bによる針部材11の細径部Sの押止を解除し、係合突部7aを係止部7bの下方に移動させて係止部7bと係止させると、採血チューブT1が挟持手段4a、4bに閉塞(採血バッグ12側の流路が遮断)される。同時に針部材11は、固定孔5から挿通孔6へ移動しクランプ1から取り外して使用できるようになる。
このとき、クランプ1でチューブT1を閉塞しなければ、針部材11はクランプ1に固定されていて使用することはできないため、採血チューブT1を遮断することを忘れたりすることがない。
針部材11は係合突部7aの押止から開放されるので、図6のように針部材11を固定孔5から挿通孔6へ移動させて図7のようにクランプ1から引き抜き、連通ピース13を破断して、初流血液チューブT2を開通するとともに、針部材11を供血者に穿刺して採血を開始する。
(3)針部材11から採取された初流血液は、開通された初流血液チューブT2を経て採血初流除去バッグ10b内に採取される。採血初流除去バッグ10b内に必要量の血液を採取したのち、初流血液チューブT2をクランプ等(図示せず)で閉塞する。
(4)続いてクランプ1の可動固定部材3を上方に移動させて、(1)と同様にして、採血チューブT1の流路を開通させ、供血者から、針部材11、採血チューブT1を介して採血バッグ12に採血する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の針部材ロック式開閉クランプの概略図
【図2】本発明の針部材ロック式開閉クランプ1を装着した採血器具10の一例を示す概略図
【図3】本発明の針部材ロック式開閉クランプ1を装着した採血器具10の一例を示す概略図
【図4】本発明の針部材ロック式開閉クランプで、(A)針をロックした状態の概略図、(B)針部材11付近の一部拡大図
【図5】本発明の針部材ロック式開閉クランプでチューブをクランプした状態の概略図
【図6】本発明の針部材ロック式開閉クランプで針部材を固定孔から挿通孔に移動させたところの概略図
【図7】本発明の針部材ロック式開閉クランプで針部材を挿通孔から引き抜いた状態の概略図
【符号の説明】
【0020】
1 (針ロック式開閉)クランプ
2 底部
3 可動固定部材
K 針部材固定部
4a、4b 挟持部
5 固定孔
6 挿通孔
7a 係合突部
7b 係止部
8 屈曲部
9 連結部
10 採血器具
10a 採血初流除去セット
10b 採血初流除去バッグ
10c 採血管ホルダ
11 針部材(採血針)
11a 針キャップ
11b 針基
11c (チューブTの)接続部
L (針部材)大径部
S (針部材)小径部
12 採血バッグ
13a、13b チューブ挿通孔
14、14b 分岐管
13 連通ピース
23 血液フィルタ
25 第一子バッグ
26 第二子バッグ
27 赤血球保存液入バッグ
T チューブ
T1 採血チューブ
T2 初流血液チューブ
T3、T4、T5、T6 連結チューブ
L1 固定孔5の径の長さ
L2 挿通孔6の径の長さ
H1 針部材11の最大径
H2 チューブT1の径
H3 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれチューブの挟持部(4a、4b)を有する可動固定部材(3)と底部(2)を、屈曲部(8)を介して連結し、
前記底部(2)の前記屈曲部(8)と反対側に、上方向に立ち上がる連結部(9)を形成し、
前記屈曲部(8)と前記連結部(9)にそれぞれチューブ(T)の挿入孔(13a、13b)を形成し、
前記可動固定部材(3)の先端に係合突部(7a)を形成し、
前記連結部(9)の上部に針部材固定部(K)を形成し、当該針部材固定部(K)に前記係合突部(7a)と係合する係止部(7b)を形成し、当該係止部(7b)の形成位置よりも上方に、針部材の固定孔(5)と挿通孔(6)を形成した、ことを特徴とする針部材ロック式開閉クランプ(1)。
【請求項2】
チューブを押圧挟持してチューブを閉塞することができる挟持部(4a)を、下部に形成した可動固定部材(3)と、当該可動固定部材(3)に形成した挟持部(4a)とともに、チューブを押圧挟持してチューブを閉塞することができる挟持部(4b)を、上部に形成した底部(2)を有し、
前記底部(2)と前記可動固定部材(3)を、相互に連結する屈曲部(8)を介して一体に形成し、前記可動固定部材(3)の先端に係合突部(7a)を形成し、前記底部(2)の前記屈曲部(8)と反対側に、上方向に立ち上がる連結部(9)を形成し、
前記屈曲部(8)と前記連結部(9)のそれぞれにチューブ(T)の挿入孔(13a、13b)を形成し、
前記連結部(9)の上部に針部材固定部(K)を形成し、当該針部材固定部(K)に前記係合突部(7a)と係合する係止部(7b)を形成し、当該係止部(7b)の形成位置よりも上方に、針部材の固定孔(5)と挿通孔(6)を形成した、ことを特徴とする針部材ロック式開閉クランプ(1)。
【請求項3】
前記針部材固定部Kの固定孔(5)の径(L1)を、針部材(11)の最大径(H1)より小さいサイズに形成し、挿通孔(6)の径(L2)を、針部材(11)の最大径(H1)が通過できるサイズに形成した請求項1または請求項2に記載の針部材ロック式開閉クランプ(1)。
【請求項4】
係合突部(7a)が係止部(7b)に係合しているときは、係合突部(7a)は係止部(7b)の下部に位置し、挟持手段(4a、4b)はチューブを挟持して、チューブ(T)の液体流路を遮断し、
係合突部(7a)が係止部(7b)に係合していないときは、係合突部(7a)は係止部(7b)の上部に位置し、係合突部(7a)は、針部材(11)を固定孔(5)に固定し、
挟持手段(4a、4b)はチューブを挟持せずに液体流路を開放している請求項1から請求項3のいずれか1の請求項に記載の針部材ロック式開閉クランプ(1)。
【請求項5】
供血者より血液を採取する針部材(11)と、
採取された血液を収納する採血バッグ(12)と、
一方端が前記採血バッグ(12)に他方端が前記針部材(11)にそれぞれ連通し、前記採取された血液を前記採血バッグ(12)へ導入する採血チューブ(T1)と、
当該採血チューブ(T1)の途中に分岐管(14)を配置し、当該分岐管(14)に前記採取された血液の初流を除去する初流血液チューブ(T2)を接続し、前記分岐管(14)と前記採血バッグ(12)の間の採血チューブ(T1)の途中に、請求項1から請求項4のいずれか1の請求項に記載の針部材ロック式開閉クランプ(1)を装着し、当該針部材ロック式開閉クランプ(1)に針部材(11)を固定したことを特徴とする採血器具(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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