説明

釣り用上着

【課題】ポケットなどに重量のあるタックルを収納した場合でも、十分な浮力を得ることができる釣り用上着を提供する。
【解決手段】上着本体に、固形状の浮力体と膨脹式の袋状の浮力体を備えた釣り用上着であって、前記袋状の浮力体は、非膨脹時に前記上着本体に収納されていて、膨脹することにより該上着本体から膨出すること。また、前記袋状の浮力体は、前記上着本体を構成する前身頃に収納されていて、膨脹することにより該前身頃から前方側へ膨出すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上着本体に、固形状の浮力体と膨脹式の袋状の浮力体を備えた釣り用上着に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフローティングベストは、上着本体内に、PVC、PE、EVA等からなる固形状の浮力体を備えて、落水時に身体を水面から浮かせることができるようにしている。
【0003】
そして、このようなフローティングベストを着用して釣りを行う場合には、フローティングベストに備えるポケットやフローティングベストの内側に着ている衣服のポケットなどに、錘や仕掛けあるいは釣用小物等のタックルを収納している。
【0004】
上記タックルを収納していると、その分重くなるため、より多くの浮力が必要になる。そこで、例えば、上着本体内に備えている固形状の浮力体に加えて、膨脹式の袋状の浮力体を備えたものが提案されている。具体的には、前身頃内に備える固形状の浮力体と前身頃の表地との間及び後身頃内に備える固形状の浮力体と後身頃の表地との間のそれぞれに、膨脹式の袋状の浮力体を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3065606号公報(図1、図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ポケットに収納されるタックルは、場合によっては7〜8kg位になる場合もある。
このため、特許文献1の構成によれば、前後に備える膨脹式の袋状の浮力体が、前身頃内に備える固形状の浮力体と前身頃の表地との間及び後身頃内に備える固形状の浮力体と後身頃の表地との間の狭いスペースに収納されているため、膨脹式の袋状の浮力体が膨脹したとしても、その膨脹した体積は小さく、十分な浮力を得ることができないものであった。
【0007】
本発明は、前述の状況に鑑みてなされ、ポケットなどに重量のあるタックルを収納した場合でも、十分な浮力を得ることができる釣り用上着を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の釣り用上着は、前述の課題解決のために、上着本体に、固形状の浮力体と膨脹式の袋状の浮力体を備えた釣り用上着であって、前記袋状の浮力体は、非膨脹状態では前記上着本体に収納されていて、膨脹状態では前記上着本体から膨出した状態となるように構成されていることを特徴としている。
【0009】
上記のように袋状の浮力体が常時(非膨脹状態)には上着本体に収納され、落水時等の非常時(膨脹状態)には上着本体から膨出した状態となるように構成されていることから、上着本体から膨出する分だけ袋状の浮力体を大きくできて、大きな浮力を得ることができる。
【0010】
また、本発明の釣り用上着は、前記袋状の浮力体が、非膨脹状態では、前記上着本体を構成する前身頃に収納されていて、膨脹状態では、該前身頃から前方側へ膨出している構成であってもよい。
【0011】
上記のように、膨脹状態で、該前身頃から前方側へ膨出している構成にすれば、落水時等に袋状の浮力体を膨脹状態にすることで、着用者の前方側で浮力が大きくなり、顔側が上になるような仰向けの浮遊姿勢を維持し易い。
【0012】
また、本発明の釣り用上着は、前記前身頃に左右のポケットを備え、前記袋状の浮力体は、膨脹状態では、該左右のポケットの間から前方側へ膨出している構成であってもよい。
【0013】
上記のように、膨脹状態では、該左右のポケットの間から前方側へ膨出している構成にすれば、落水時等に袋状の浮力体を膨脹状態にすることで、着用者の身体の左右中心部から前方側へ膨出して、顔側が上になるような仰向けの浮遊姿勢をより一層維持し易い。
【0014】
また、本発明の釣り用上着は、前記固形状の浮力体が、前記前身頃の表地と裏地との間に配置され、前記固形状の浮力体と前記表地との間には、非膨脹状態の前記袋状の浮力体を収納可能な収納部が形成され、該収納部には、開閉可能な開閉部が備えられ、該開閉部は、閉じ状態から左右に開いて開状態になり、該開閉部が、閉じ状態から開状態になって前記袋状の浮力体が膨脹状態になる構成であってもよい。
【0015】
上記のように、開閉部が、閉じ状態から左右に開いて開状態になって前記袋状の浮力体が膨脹状態になる構成にすれば、着用者の身体の左右中心部から前方側への浮力の容量を更に増大させることができ、顔側が上になるような仰向けの浮遊姿勢を更に安定させることができる。
【発明の効果】
【0016】
非膨脹時では前記上着本体に収納されていて、膨脹状態では該上着本体から膨出する袋状の浮力体を上着本体に備えることによって、浮力の容量を増大させることができ、ポケットなどに重量のあるタックルを収納した場合でも、十分な浮力を得ることができる釣り用上着を提供することができる。しかも、浮力体を上着本体に収納するために確保する容量は、非膨脹状態の浮力体を収納できる程度の小さな容量で済むから、上着本体内で袋状の浮力体を膨脹させる構成に比べて上着本体が大型化することを可及的に抑制できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の釣り用上着の正面図である。
【図2】図1で示した釣り用上着の左右の前身頃を横に開放して内側が見えるようにした正面図である。
【図3】図1で示した釣り用上着の左右の前身頃の表地を開放して内部に収納されている膨脹式の袋状の浮力体が見えるようにした正面図である。
【図4】膨脹式の袋状の浮力体の正面図である。
【図5】本発明の釣り用上着を装着して膨脹式の袋状の浮力体を膨脹させた状態を示す側面図である。
【図6】本発明の釣り用上着を装着して膨脹式の袋状の浮力体を膨脹させた状態を示す正面図である。
【図7】本発明の釣り用上着を装着して膨脹式の袋状の浮力体を膨脹させた状態を示す背面図である。
【図8】本発明の釣り用上着の前身頃の表地を開放状態にした正面図である。
【図9】本発明の釣り用上着の前身頃の概略横断平面図を示し、(a)は袋状の浮力体が収納されている状態を示し、(b)は袋状の浮力体が膨出した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2に、浮力材付き釣り用の上着の一例である袖なしの上着であるベストを示しているが、袖のある上着であってもよい。このベストは、例えばルアーフィッシングの釣りの際に装着されるフローティングベストとして使用しているが、その他の釣り(磯釣りや波止釣りや船釣り等)で使用してもよい。
【0019】
ベストは、前身頃1と、この前身頃1の左右両端に連結される後身頃2とを有する上着本体を備えている。前身頃1は、左前身頃3と右前身頃4とを備え、左右中央部を開放自在な観音開き式の左右の前身頃に構成されている。左前身頃3は、前方に位置するメインの左前身頃3Aと、このメインの左前身頃3Aの後端に連結され、メインの左前身頃3Aよりも小さなサブの左前身頃3Bとを備えている。また、右前身頃4は、前方に位置するメインの右前身頃4Aと、このメインの右前身頃4Aの後端に連結され、メインの右前身頃4Aよりも小さなサブの右前身頃4Bとを備えている。そして、4つの前身頃3A,3B,4A,4Bの内部に、固形状の浮力体5,6,7,8を備えている。これら左前身頃3及び右前身頃4の左右方向中心部側端に備えさせたベスト着脱用のスライドファスナーFを開閉操作することで身体にベストを着脱することができるようになっている。
【0020】
前記メインの左前身頃3Aに備えた浮力体5は、上部に位置する上側の浮力体5Aと下側に位置し身体の外周方向に沿って隣り合う一対の浮力体5B,5Cの3つから構成され、身体にフィットし易いようになっている。また、メインの右前身頃4Aに備えた浮力体7も同様に、上側の浮力体7Aと下側に位置し身体の外周方向に沿って隣り合う一対の浮力体7B,7Cの3つから構成され、身体にフィットし易いようになっている。
【0021】
また、メインの左前身頃3Aの上側に第1ポケット10を備え、下側に第1ポケット10よりも大きく、該左前身頃3Aから離間する外側に張り出すマチ部11Aを有する第2ポケット11を備え、図2及び図3に示すように、第2ポケット11の前側部分にポケット11の上下寸法と略同一でかつ左右幅寸法と略同一の寸法を有する固形状で矩形状の浮力体12を備えている。マチ部11Aには、ポケット11の開口部を開閉するためのファスナー11Bを備えている。
【0022】
また、メインの右前身頃4Aの上側に第3ポケット13を備え、下側に第3ポケット13よりも大きく、該右前身頃4Aから離間する外側に張り出すマチ部14Aを有する第4ポケット14を備え、図2及び図3に示すように、第4ポケット14の前側部分にポケット14の上下寸法と略同一でかつ左右幅寸法と略同一の寸法を有する固形状で矩形状の浮力体15を備えている。マチ部14Aには、ポケット14の開口部を開閉するためのファスナー14Bを備えている。このようにポケット11,14の前側部分にも、浮力体12,15を備えさせることによって、効率よく浮力をアップさせることができる。
【0023】
後身頃2の内部には、前身頃1に備えた全ての浮力材5,6,7,8,12,15による浮力よりも浮力が小さく設定された5つの浮力材16,17,18,19,20を備えている。浮力材の個数は、図に示す5つに限定されるものではない。
【0024】
図2、図3及び図7に示すように、左前身頃3の上端及び右前身頃4の上端には、身体の後側となる背中の上側部分を覆う背中部21が連結され、この背中部21の下端と後身頃2の上端とが長さ調整自在に構成された左右一対の連結具9,9を介して連結されている。
【0025】
図2、図3及び図9(a),(b)に示すように、前記左前身頃3は、前記浮力体5を収納するための表側生地42Aと裏側生地42Bとからなる左側収納袋42と、この左側収納袋42の前方に膨脹式の袋状の浮力体43の一部(左側部分)を収納するための収納部S1を形成するための裏生地44A(図9にのみ図示している)を備えた左側表地44とを備えている。又、前記右前身頃4は、前記浮力体7を収納するための表側生地45Aと裏側生地45Bとからなる右側収納袋45と、この右側収納袋45の前方に膨脹式の袋状の浮力体43の一部(右側部分)を収納するための収納部S2を形成する裏生地46A(図9にのみ図示している)を備えた右側表地46とを備えている。これら左側表地44及び右側表地46の表面に前記ポケット10,11,13,14を備えている。図9(a),(b)に示すように、裏生地44A,46Aの左右方向一端が、左右の表地44,46の合わせ部側端に縫着され、左右方向他端が、表側生地42A,45Aの脇側寄り部分に縫着されている。尚、図9では、ポケット11,14を省略している。また、前記裏生地44A,46Aを省略して実施することもできる。
【0026】
図2に示すように、右側収納袋45の裏側生地45B、左側収納袋42の裏側生地42B、後身頃2の裏側(内側)の生地は、下端よりも少し上方の位置から上端までの範囲に渡る上下方向に長尺な第1生地4a、3a、2aと、下端から少し上方の位置までの範囲に渡り、かつ、第1生地4a、3a、2aの下部と一部重複するように該第1生地の下端4c,3c,2cよりも上方に位置する上端4d,3d,2dを有する上下方向に短尺な第2生地4b、3b、2bとを備え、第1生地4a、3a、2aと第2生地4b、3b、2bとをそれらの重複部分に備えた複数のドット釦39,40,41により連結している。従って、ドット釦39,40,41の係合を解除することにより、第1生地4a、3a、2aと第2生地4b、3b、2bとの間を開口させて浮力体7,5,16,17,18,19,20をメインの右前身頃4A、メインの左前身頃3A、後身頃2の下側から取り出すことができるようになっている。説明はしないが、サブの左前身頃3B及びサブの右前身頃4Bも同様に浮力体を取り出すことができる構成になっている。
【0027】
図3、図8及び図9(a),(b)に示すように、前記左側表地44の上端には、該上端から後側に延びてから左右中央側に延びることで前記背中部21の左側表地21Aを備えている。また、右側表地46の上端には、該上端から後側に延びてから左右中央側に延びることで前記背中部21の右側表地21Bを備えている。そして、左前身頃3の左側表地44及び背中部21の左側表地21Aの左脇側(身頃の合わせ部から離間する側)が、左側収納袋42及び背中部21の左脇側(身頃の合わせ部から離間する側)に縫着され、左前身頃3の左側表地44及び背中部21の左側表地21Aが左脇側(身頃の合わせ部から離間する側端)の縫着部分T1を支点として揺動自在に構成している。従って、左前身頃3の左側表地44及び背中部21の左側表地21Aが、前記左半分の収納部S1を開閉することができる開閉可能な開閉部を構成している。前記右前身頃4の右側表地46及び背中部21の右側表地21Bの右脇側(身頃の合わせ部から離間する側)が、右側収納袋45及び背中部21の右脇側身頃の合わせ部から離間する側)に縫着され、右前身頃4の右側生地46及び背中部21の右側表地21Bが右脇側(身頃の合わせ部から離間する側)の縫着部分T2を支点として揺動自在に構成している。前記右前身頃4の右側生地46及び背中部21の右側表地21Bが、前記右半分の収納部S2を開閉することができる開閉可能な開閉部を構成している。従って、前記左右の開閉部が閉じ状態から開状態になって前記袋状の浮力体43が膨脹状態になるように構成されている。図3及び図8では、左右の収納部S1,S2を開放した状態を示している。また、図8では、浮力体43を収納部S1,S2に収納する直前の状態を示している。
【0028】
図3及び図8に示すように、前記右前身頃4の右側表地46及び背中部21の右側表地21Bの前身頃の合わせ部側端に面ファスナー47を縫着等により備えるとともに、前記左前身頃3の左側表地44及び背中部21の左側表地21Aの前身頃の合わせ部側端に面ファスナー48を縫着等により備えている。そして、前記面ファスナー47,48に係止する一対の面ファスナー49,50を収納袋42,45及び背中部21の前身頃の合わせ部側端に縫着等により備えている。また、背中部21の表地21A,21Bの前身頃の合わせ部側端とは反対側となる後端に面ファスナー52,53を縫着等により備え、これら面ファスナー52,53に係止する面ファスナー54を背中部21の前身頃の合わせ部側端とは反対側となる後端に縫着等により備えている。また、背中部21の表地21A,21Bの遊端部には、両者を連結するための面ファスナー55,56を縫着等により備えている。まず、右前身頃4の右側生地46及び背中部21の右側生地21Bを収納袋45及び背中部21へ縫着部分T2を支点として揺動して被せることで、面ファスナー47と49とが係止するとともに面ファスナー52と54の一端側部分とが係止して右半分の収納部S2を閉じることができ、次に、左前身頃3の左側表地44及び背中部21の左側表地21Aを収納袋42及び背中部21へ縫着部分T1を支点として揺動して被せることで、面ファスナー48と50とが係止するとともに面ファスナー53と54の他端側部分とが係止して左半分の収納部S1を閉じることができ、さらには面ファスナー55,56が係止して表地21A,21Bの遊端部を連結することができる。ここでは、面ファスナーを示しているが、他の各種係止部材であってもよい。
【0029】
前記袋状の浮力体43は、図4に示すように、2枚の生地を重ね合わせて略アーチ状に構成され、重ね合わされた外周部分43Aを接着又は溶着等することにより密閉空間を形成することができ、図7に示すボンベVからの気体を浮力体43に供給することにより膨脹するようになっている。前記浮力体43には、ボンベVからの気体により十分に膨脹できなかった場合に、エアを吹き込むことができるエア管Rを備えている。また、浮力体43の両端には、ベルトを介して雄部材57Aをそれぞれ備えるとともに、これら雄部材57A,57Aが挿入されて係合するための雌部材57Bを収納袋42,45に備えさせて、係合解除自在なバックルを構成している。また、ボンベVを開放操作する操作部(図示せず)に該操作部を操作するための紐58と紐58の先端に連結された引っ張り具59とを備えている。また、浮力体43は、上端側の左右幅W1よりも下端側の左右幅W2の方が幅広に構成されており、身体の下側ほど浮力が発生するようになっている。
【0030】
図3及び図8に示すように、浮力体43が膨脹した状態で、上着本体から浮力体43が浮き上がることができないように上着本体に浮力体43を固定するための複数(図では3本)のループ60,61,62を備えている。左右のループ62,60は、左右の収納袋42,45の上部に縫着等により取り付けられ、上側のループ61は、それの両端が背中部21の左右方向中央部に縫着等により取り付けられている。これらループ60,61,62に浮力体43を挿入するとともに前記バックルにて浮力体43の両端が上着本体側に連結されることによって、上着本体に浮力体43を固定することができるようにしている。尚、右側のループ60の一端が、前記縫着部分T2に縫着され、他端が右側収納袋45の面ファスナー49(後述する)の近傍に縫着されている。また、左側のループ62の一端が、前記縫着部分T1に縫着され、他端が左側収納袋42の面ファスナー50(後述する)の近傍に縫着されている。
【0031】
従って、浮力体43は、非膨脹時(常時)に前身頃と前身頃の表地との間に折り畳まれて収納されていて(図9(a)参照)、落水時等の非常時に引っ張り具59を引っ張ることによりボンベVからの気体を浮力体43に供給されることにより浮力体43が膨脹する。この膨脹により、面ファスナー47と49、48と50、55と56、53と54、52と54の係止が解除され、図3、図8及び図9(b)に示すように左右の前身頃3の表地44,46が左右に広がるように開くことで、図6及び図9(b)に示すように、浮力体43が前方だけでなく、左右方向にも膨出することができるようになっている。そして、このように浮力体43が膨出することにより、浮力の容量を増大させることができ、図5に示すように顔側が上になるような仰向けの浮遊姿勢を安定させることができる。また、図6に示すように、浮力体43を首からポケット11,14のある身頃下部にまで備えることによって、浮遊姿勢を安定良く維持することが可能になる。また、9図(a)に示すように、浮力体43を収納する収納部S1,S2の容量は、非膨脹状態の浮力体43を収納できる程度の小さな容量で済むから、前身頃内で膨脹させるものに比べて前身頃が大型化することを可及的に抑制できる。
【0032】
また、図2に示すように、前身頃1と後身頃2を身体に保持するための1本のベルト22を備えている。具体的には、ベルト22を前身頃1及び後身頃2の内側に保持するための5つの帯状でループ状の保持部23,24,25,26,27を備え、それら保持部23,24,25,26,27のうちの後身頃2の幅方向中央部の保持部25を除いた保持部23,24,26,27がベルト22をそれの長さ方向に移動可能で、かつ、ベルト22の締め付け時において前身頃1及び後身頃2をベルト22から離間可能とする融通部を備えている。
【0033】
また、前記保持部25は、前記保持部24,26と同一の構成であるが、ドット釦によりベルト22を保持部25に固定している。このドット釦は、ベルト側に設けられた雄型部材(図示せず)と、この雄型部材に係合するように保持部25側に設けられた雌型部材28とからなっているが、他の部材にて固定してもよいし、場合によっては、固定しないで他の保持部と同様に、ベルト22を挿通可能なループに構成してもよい。
【0034】
また、メインの右前身頃4Aの裏面に縫着した保持部23及びメインの左前身頃3Aの裏面に縫着した保持部27は、図2に示すように、各保持部の上下端部が右前身頃4Aの内面に縫着された上下一対の補強用帯状部材29,30及び左前身頃3Aの内面に縫着された上下一対の補強用帯状部材31,32で覆われ、その覆われた部分を縫着することにより固定されている。
【0035】
また、残りの保持部24,25,26も同様に、各保持部の上下端部が後身頃2の内面に縫着された上下一対の補強用帯状部材33,34で覆われ、その覆われた部分を縫着することにより固定されている。
【0036】
図2に示すように、ベルト22の一端には、雄部材35Aが備えられ、他端には、雄部材35Aを挿入して係合可能な雌部材35Bが備えられて、係合解除自在なバックルを構成している。従って、衣服本体を身体に着てからベルト22の雄部材35Aを雌部材35Bに挿入することにより両者が係合してベルト22を身体に装着することができる。また、ベルト22の雄部材35A側近傍に、ベルト22の長さを調節するための長さ調節具Gを備えており、身体の胴回りのサイズに応じてベルト22の長さを調節することができる。また、ベルト22の雌部材35B側近傍にも、同じようにベルト22の長さを調節するための長さ調節具Gを備えており、ベルト22の両サイドでベルト22の長さを調節することができるようになっている。
【0037】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0038】
前記実施形態では、下側のポケット11,14にのみ固形状の浮力体12,15を備えさせたが、上側のポケット10,13にも固形状の浮力体を備えて実施してもよいし、場合によっては、下側のポケット10,11,13,14に固形状の浮力体を備えさせないで実施することもできる。
【0039】
また、前記実施形態では、前身頃を左右の前身頃から構成したが、頭から被って着るような1つの前身頃からなるベストであってもよい。この場合、例えば前身頃の左右中央部に袋状の浮力体が外部へ膨出することができる開閉自在な開閉部を備えさせることになる。又、前身頃にのみ袋状の浮力体を備えさせたが、後身頃にも袋状の浮力体を備えさせて実施してもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、浮力体43が前方だけでなく、左右方向にも膨出することができるように構成したが、前方にのみ膨出することができるように構成してもよい。
【0041】
また、前記実施形態では、前身頃以外の背中部21にも袋状の浮力体43の一部を収納するように構成したが、前身頃のみに袋状の浮力体を備えさせてもよい。また、袋状の浮力体は1個だけでなく、複数設けてもよい。
【0042】
また、前記実施形態では、袋状の浮力体が手動操作により膨脹させる構成であったが、落水したことを検知する検出手段と、その検出手段からの検出信号に基づいて袋状の浮力体を膨脹させる制御手段とを備えた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…前身頃、2…後身頃、3…左前身頃、4…右前身頃、4a,4b…生地、4c,3c,2c…下端、4d,3d,2d…上端、5…浮力体、5,6,7,8,12,15,16,17,18,19,20…浮力材、9,9…連結具、10,11,13,14…ポケット、11A,14A…マチ部、11B,14B…ファスナー、21…背中部、21A…左側表地、21B…右側表地、22…ベルト、23,24,25,26,27…保持部、28…雌型部材、29,30,31,32,33,34…補強用帯状部材、35A…雄部材、35B…雌部材、39,40,41…ドット釦、42…左側収納袋、42A…表側生地、42B…裏側生地地、43…袋状の浮力体、44…左側表地、45…右側収納袋、45A…表側生地、45B…裏側生地、46…右側表地、47,48,49,50,52,53,54,55,56…面ファスナー、57A…雄部材、57B…雌部材、58…紐、59…引っ張り具、60,61,62…ループ、F…スライドファスナー、G…調節具、R…エア管、V…ボンベ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上着本体に、固形状の浮力体と膨脹式の袋状の浮力体を備えた釣り用上着であって、
前記袋状の浮力体は、非膨脹状態では前記上着本体に収納されていて、膨脹状態では前記上着本体から膨出した状態となるように構成されていることを特徴とする釣り用上着。
【請求項2】
前記袋状の浮力体は、非膨脹状態では、前記上着本体を構成する前身頃に収納されていて、膨脹状態では、該前身頃から前方側へ膨出していることを特徴とする請求項1に記載の釣り用上着。
【請求項3】
前記前身頃に左右のポケットを備え、前記袋状の浮力体は、膨脹状態では、該左右のポケットの間から前方側へ膨出していることを特徴とする請求項2に記載の釣り用上着。
【請求項4】
前記固形状の浮力体は、前記前身頃の表地と裏地との間に配置され、前記固形状の浮力体と前記表地との間には、非膨脹状態の前記袋状の浮力体を収納可能な収納部が形成され、該収納部には、開閉可能な開閉部が備えられ、該開閉部は、閉じ状態から左右に開いて開状態になり、該開閉部が、閉じ状態から開状態になって前記袋状の浮力体が膨脹状態になることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の釣り用上着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−157665(P2011−157665A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21600(P2010−21600)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】