説明

釣り用靴

【目的】 脱ぎ履きが容易であると共に、靴内部に水が浸入した場合でも、簡単に脱ぐことが可能な釣り用靴を提供する。
【構成】 甲部(11)と足首部(12)とを有する釣り用靴において、足首部(12)の上方に設けられた履き口(30)と、その履き口(30)から足首部(12)の周面の下方に向かってスライド可能なファスナ(24)と、そのファスナ(24)で足首部(12)を開閉し、履き口(30)の開口に連続する切開状開口部(22)と、を備える。この切開状開口部(22)は、足首部(12)の下方に向かうにつれて前方下がりに傾斜されて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用靴の技術に関し、特に、靴内に水が侵入しても脱ぎ履きに好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から釣り用の靴は、水辺を歩いたり、靴を履いたまま水の中に入ることがある。そのため、濡れても脱ぎ履きしやすいものが好まれている。
一方、足場の悪い場所も歩くことがあるため、足先から足首までのフィット感を調整しながら履くことも重要である。このため、靴紐を採用した釣り用の靴は多い。
【0003】
特許文献1に開示された技術としては、履き口にファスナで開閉可能な切開状の開口部を設けた靴が知られている。この靴は「高所作業用ブーツ」であり、釣り用の靴と同様に、履き口にファスナで開閉可能な切開状の開口部が設けられている。このため、脱ぎ履きが容易となるように形成されたブーツタイプを採用することが多い。
【0004】
【特許文献1】実開平4−59701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている「高所作業用ブーツ」では、ファスナ付き開口部は垂直に形成されているため、ファスナを開けて開口部を開いても甲部側があまり緩まない。したがって、この特許文献1に記載された技術をそのまま釣り用の靴に応用しても好ましくない。靴の中に水が浸入した場合には、靴から足を引き抜くことが困難となるからである。特に、特許文献1の靴のように、靴の正面側を足先、足の甲、足首部までを靴紐で締め付けるブーツタイプの靴では、足の甲部側が非常に引き抜きにくかった。靴紐が濡れた場合には、紐の結び目の抵抗が増して解きにくくなるため、靴紐を弛める作業もやりにくい。
【0006】
発明が解決しようとする課題は、靴内部に水が浸入した場合でも、容易に脱ぐことが可能なブーツタイプの釣り用靴を開発することである。
請求項1から請求項5に記載の発明の目的は、脱ぎ履きが容易であると共に、靴内部に水が浸入した場合でも、簡単に脱ぐことが可能な釣り用靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、甲部(11)と足首部(12)とを有するブーツタイプの釣り用靴(1)において、足首部(12)の上方に設けられた履き口(30)と、その履き口(30)から足首部(12)の周面の下方に向かってスライド可能なファスナ(24)と、そのファスナ(24)の進退にて足首部(12)を開閉するとともに前記履き口(30)の開口に連続する切開状開口部(22)と、を備え、前記切開状開口部(22)は、足首部(12)の下方に向かうにつれて前方下がりに傾斜して形成されていることを特徴とする。
【0008】
(作用)
釣り人が本請求項に係る釣り用靴(1)を履くときには、ファスナ(24)をスライドさせて履き口(30)から足を挿入し、ファスナ(24)を閉める。ファスナ(24)を開くことで履き口(30)の開口に切開状開口部(22)が連続して、全体の開口が大きくなるので履きやすくなる。必要に応じて靴紐によるフィット感を調整する。
また、釣り人が本請求項に係る釣り用靴(1)を脱ぐときには、ファスナ(24)をスライドさせて切開状開口部(22)を開き、履き口(30)を大きくして足を靴から抜く。また、切開状開口部(22)は、足首部(12)の下方に向かって前方下がりに傾斜されているので、甲部(11) 側が緩めやすくなり、足を挿出入する際の角度も自然となる。
したがって、釣り人は靴紐を解かなくても本請求項に係る釣り用靴(1)を脱ぐのは容易である。また、靴紐が濡れた場合や、釣り用靴(1)の内部に水が浸入した場合でも、簡単に脱ぐことが可能となる。
【0009】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の釣り用靴を限定したものである。
すなわち、靴内側の靴内底部(35)は、踵部(29b)が靴底面(ソール部接地部13b)に対して平行に形成された踵側平面部(28b)と、その踵側平面部(28b)から前方に向かって前下がりの傾斜状に形成された傾斜部(27)と、その傾斜部(27)から爪先部(28a)に向かって平坦状に形成された爪先側平面部(28a)とが連続して成形されるとともに、前記切開状開口部(22)は、それを閉塞してできる直線が前記傾斜部(27)と踵側平面部(28b)との境界線(L)にほぼ一致する位置に形成されたことを特徴とする。
【0010】
(作用)
釣り人の足の爪先および踵はそれぞれ、踵側平面部(28b)および爪先側平面部(28a)に接し、足の土踏まずは、傾斜部(27)に接することとなる。足の爪先と踵が靴底面に対して平行であり、足の土踏まずが爪先に向かって傾斜しているため、釣り人にとっては足が安定するので歩きやすい。
また、釣り人が本請求項に係る釣り用靴(1)を脱ぐときまたは履くときには、中央に位置する傾斜部(27)に足裏が触れると、これに誘導されて足全体が履き口(30)方向に向きやすくなり、脱ぎ履きが容易となる。これは、切開状開口部(22)を閉塞してできる直線が前記傾斜部(27)と踵側平面部(28b)との境界線(L)にほぼ一致するからである。
【0011】
(請求項3)
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の釣り用靴を限定したものであり、履き口(30)は、後方下がりの傾斜状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
(作用)
請求項3に係る釣り用靴では、履き口(30)を後方下がりの傾斜状に形成したことで、釣り人が足を抜き差しする時に踵が入れやすく、また踵が抜きやすくなる。
【0013】
(請求項4)
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の釣り用靴を限定したものであり、前記甲部(11)と足首部(12)との間にスリット(19)を形成したことを特徴とする。
【0014】
(作用)
請求項4に係る釣り用靴では、足首部(12)がスリット(19)によって変形し、切開状開口部(22)が大きく開く。したがって、釣り人の足の抜き差しが、より容易になる。
【0015】
(請求項5)
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の釣り用靴を限定したものであり、前記足首部(12)に切開状開口部(22)を覆うとともに、巻き付けることによって上端が履き口(30)よりも上方に位置するようなカバー体(40)を設けたことを特徴とする。
【0016】
(作用)
巻き付けることによって上端が履き口(30)よりも上方に位置するカバー体(40)を設けたことで、切開状開口部(22)をファスナ(24)で閉じた後、足首部(12)と共に切開状開口部(22)を覆うことができる。このため、ファスナ(24)の砂噛みや履き口(30)の隙間から砂やごみの侵入を軽減できる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1から請求項5に記載の発明によれば、脱ぎ履きが容易であると共に、靴内部に水が浸入した場合でも、簡単に脱ぐことが可能な釣り用靴を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、図面を参照させながら説明する。ここで使用する図面は、図1から図4である。図1は、釣り用靴の全体を示した側面図であり、図2は、釣り用靴を前後に切断し内部を示した側面断面図であり、図3は釣り人が靴から足を抜き差しした場合の形態を示した側面断面図であり、図4は、釣り人が靴を脱いだ様子を示した図である。
【0019】
これらの図において、釣り用靴1は、足の甲を覆う甲部11と、甲部11に連続し、足首を覆う足首部12とからなるアッパー部10と、甲部11の底部側に取り付けたソール部13と、甲部11に連続し、足指を覆う爪先部14とを有している。
【0020】
アッパー部10は、合成樹脂のシートや織布等を裁断して縫着等の手段で貼り合わせて形成し、アッパー部10の正面側に爪先部14を除いて足首部12から甲部11にかけて正面開口部20が形成されている。この正面開口部20を内側から閉塞するように、靴内側部には舌片15が取り付けられている。
【0021】
正面開口部20には、左右両側に沿って複数の靴紐16の保持部である孔17やリング18が設けられる。靴紐16は、これらの靴紐16の保持部を介して甲部11から足首部12にかけて取り付け、この靴紐16を用いて正面開口部20が閉じるように締め付ける。そのことで、靴内側部の足の収納空間が狭くなる。すると、アッパー部10が足に合致するため、釣り人の足に対する靴のずれが軽減される。
【0022】
足首部12は、甲部11の後方側から上方に向かって突出するように一体的に形成されている。また、釣り用靴1の正面には、その境界部に折り曲げが容易になるようにスリット19が形成されており、甲部11の緩やかな傾斜から上方に向かって急傾斜になるよう変移している。
【0023】
ソール部13は、ソール部基部13aとソール部接地部13bからなる。ソール部基部13aは、ゴムや合成樹脂で形成されており、後述する中底部26に接地されている。ソール部接地部13bは、フェルトで形成されており、その一面が地面に接地され、他面がソール部基部13aに面している。なお、ソール部13は、ソール部基部13aとソール部接地部13bとをゴムや合成樹脂で一体的に形成することも可能である。
【0024】
靴内側部には、甲部11から連続して足の収納空間が形成されており、その収納空間の上端側に足を抜き差しする履き口30が設けられている。履き口30は、図2に示すように、後方下がりの傾斜状の角度をなして形成されている。また、足首部12の履き口30の内側(靴土踏まず側の側面)に切開状の開口部22を設け、この切開状開口部22に沿ってスライドファスナ24が設けられて切開状開口部22の開閉を可能にしている。このため、釣り人が足を抜き差しする時に踵を入れやすく、また踵を抜きやすくなっている。切開状開口部22は、履き口30の前後長さの略中央から設けられ、足首部12に沿って下方に延設され、前方下がりに傾斜する方向に形成されている。
【0025】
靴内側には中底部26が設けられ、この中底部26の上面には前後の中央側の土踏まず部に前下がりの傾斜部27が形成され、その傾斜部27の前後の踵部29aと爪先部29bに傾斜部27より傾斜の小さい爪先側平面部28a及び踵側平面部28bがそれぞれ形成されている。したがって、前後の踵側平面部28a及び爪先側平面部28bにおいては足が安定して歩きやすく、足裏が中央側の傾斜部27に触れると、これに誘導されて足が履き口30方向に向きやすく脱ぎ履きが容易となる。
【0026】
また、図2に示すように、切開状開口部22は、履き口30から傾斜部27と踵側平面部28bとの境界線Lの後端に向かうように形成されている。このため、図3に示すように、履き口30と切開状開口部22を共に開いて足を差し込むと、ちょうど傾斜部27に触れることなり、逆に脱ぐ時には、傾斜部27に沿って足を引き抜くと、履き口30と切開状開口部22を共に開いて足を容易に抜き出すことができる。この時、甲部11と足首部12の間にスリット19を形成したため、足首部12がスリット19によって変形し、切開状開口部22が大きく開くので、足の抜き差しがより容易になる。なお、スリット19は、切開状開口部22の下端側に向かうように形成されているため、足首部12はスリット19と切開状開口部22の下端側との間で屈曲しやすくなっていることも足の抜き差しを容易にしている。
【0027】
さらに、図1に示すように、足首部12の後側には、足首部12に捲回可能なカバー体40が設けられている。カバー体40は、外側面全体が雌の面ファスナとして形成されており、カバー体40の内側端部に設けられた雄ファスナ41によって、カバー体40に止着される。カバー体40は、巻き付け固定することによって上端が履き口30よりも上方に位置するような寸法としている。このようなカバー体40を設けたことで、切開状開口部22をスライドファスナ24で閉じた後、足首部12と共に切開状開口部22を覆う。カバー体40の上端は履き口30よりも上に位置するので、スライドファスナ24の砂噛みや履き口30の隙間から砂やごみの侵入を軽減できる。
【0028】
図4に示すように、釣り人が靴の脱ぎ履きをする際に、矢印方向の傾斜角とスライドファスナ24の角度と略同一に形成されている。このため、スライドファスナ24の操作性が向上する。
なお、靴内底部35は、中底部26の上面としたが靴内側部に中敷きを収納して、この中敷きに上記の中底と同様の構成を設けて中敷き上面を靴内底部35とすることもできる。
【0029】
上述したように、釣り人は、靴を履くときには、スライドファスナ24をスライドさせて履き口30から足を挿入し、スライドファスナ24を閉める。スライドファスナ24を開くことで履き口30の開口に切開状開口部22が連続して、全体の開口が大きくなるので履きやすくなる。また、釣り人が靴を脱ぐときには、スライドファスナ24をスライドさせて切開状開口部22を開き、履き口30を大きくして足を靴から抜く。切開状開口部22が足首部12の下方に向かって前方下がりに傾斜されているので、甲部11側が緩めやすくなり、釣り人が足を出し入れする際の角度も自然であり、動作の円滑化に寄与している。
【0030】
また、靴内底部35は、足の爪先と踵が平坦状となっており、足の土踏まずが爪先に向かって傾斜状に形成されているため、靴の脱ぎ履きが容易である。また、靴紐16が濡れていたり、靴内部に水が浸入した場合でも、簡単に脱ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】釣り用靴の全体を示した側面図である。
【図2】釣り用靴を前後に切断し内部を示した側面断面図である。
【図3】釣り人が靴から足を抜き差しした場合の形態を示した側面断面図である。
【図4】釣り人が靴を脱ぎ履きする様子を示した図である。
【符号の説明】
【0032】
1 釣り用靴
10 アッパー部 11 甲部
12 足首部
13 ソール部 13a ソール部基部
13b ソール部接地部
14 爪先部 15 舌片
16 靴紐 17 孔
18 リング 19 スリット
20 正面開口部
22 切開状開口部 24 スライドファスナ
26 中底部 27 傾斜部
28a 踵側平面部 28b 爪先側平面部
29a 踵部 29b 爪先部
30 履き口 35 靴底底部
40 カバー体 41 雄ファスナ
L 境界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲部と足首部とを有するブーツタイプの釣り用靴において、
足首部の上方に設けられた履き口と、
その履き口から足首部の周面の下方に向かってスライド可能なファスナと、
そのファスナの進退にて足首部を開閉するとともに前記履き口の開口に連続する切開状開口部と、を備え、
前記切開状開口部は、足首部の下方に向かうにつれて前方下がりに傾斜して形成されていることを特徴とする釣り用靴。
【請求項2】
靴内側の靴内底部は、踵部が靴底面に対して平行に形成された踵側平面部と、その踵側平面部から前方に向かって前下がりの傾斜状に形成された傾斜部と、その傾斜部から爪先部に向かって平坦状に形成された爪先側平面部とが連続して成形されるとともに、
前記切開状開口部は、それを閉塞してできる直線が前記傾斜部と踵側平面部との境界線にほぼ一致する位置に形成されたことを特徴とする請求項1記載の釣り用靴。
【請求項3】
前記履き口は、後方下がりの傾斜状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の釣り用靴。
【請求項4】
前記甲部と足首部との間にスリットを形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の釣り用靴。
【請求項5】
前記足首部に切開状開口部を覆うとともに、巻き付けることによって上端が履き口よりも上方に位置するようなカバー体を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の釣り用靴。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−195723(P2007−195723A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17623(P2006−17623)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】