説明

釣り竿

【課題】スパインの影響を抑制し、使用し易い釣り竿を提供する。
【解決手段】
略軸方向強化繊維を揃えたプリプレグのメインパターン5を芯金6に巻回積層して筒状に作成される管状体であって、メインパターン5における巻始辺5Aと巻終辺5Bとを、芯金6の軸線Xに対して元側程離れる傾斜状態になるように芯金6に巻き付けて、内側層における巻始辺5Aと外側層における巻終辺5Bとを、先側から元側に掛けて管状体の軸線Xに対して螺旋状を呈する状態に配置して、管状体における肉厚変化部を分散させるように構成し、メインパターン5の内側に、プリプレグ製の第1補助パターン8を一プライ分だけ巻回した層を配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維に合成樹脂を含浸させて形成したプリプレグ(以下、プリプレグと称する)を略台形に裁断しメインパターンとして芯金に巻回積層して筒状に作成される釣竿用の竿体やゴルフクラブに使用される管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
管状体として釣り竿用の竿体について説明すると、複数プライ分の幅を備えたメインパターンを芯金に巻回していく場合に、特許文献1における図5(a)で示すように、先行して芯金に巻き付けられた巻始辺に重ねるように、メインパターンの残りの部分に重ねて巻き付けていく。
その場合に、巻始辺の存在によって、その部分に段差ができ、何層も重ねて巻いた場合に、段差部分(技術用語としてスパインと称する)は解消せずに残っている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−268425号公報(公報段落番号〔0024〕、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した段差部分によって形成された重なり部分は、特許文献1の図5(a)で示すように、巻始辺が竿軸線に平行な直線状(円周方向において同一位相位置)に形成されていた。
そうすると、重なり部分を境にして剛性が大きく変化することとなり、その大きな剛性を変化させる部分が竿軸線に沿って直線状に形成されているので、中間竿等の釣竿用竿体において、曲げ方向によって剛性が異なることが起こっていた。
例えば、重なり部分を上下にする状態で釣りを行う場合と重なり部分を左右にした状態で釣りを行う場合とでは、竿の曲具合が異なり、竿の姿勢が一定しない面があった。また、釣竿を振りかぶって仕掛けを投入する場合に、前方に仕掛けを投げ出す積りであっても、竿体は勝手に横方向にも曲りを生じて、横前方に仕掛けを投げ出してしまうということも生じていた。
魚を釣り上げる場合にも、不意に竿体が横方向への振れを起こして、魚の取り込みに難儀することもあった。
また、ゴルフクラブ等を振り出す際に振れを生ずるといった問題もあった。
【0005】
本発明の目的は、重なり部分の配置に工夫を凝らすことによって、上記した不具合を解消し、釣り竿やゴルフクラブ等を振り出した際のコントロールと、引き上げ振り上げる際の振れを抑制し、製作が容易で出来上がり機能が十分に発揮され、効率良く製造できる管状体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、強化繊維を引き揃えたプリプレグのメインパターンを芯金に巻回積層して筒状に作成される管状体であって、
前記メインパターンの巻始辺を、先側から元側に掛けて管状体の軸線に対して螺旋状を呈する状態に配置し、
前記メインパターンの内側の一部に、プリプレグ製の第1補助パターンを巻回した層を配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
巻始辺を螺旋状に形成した。管状体の軸線に直交する断面を見ると、図4に示すように、軸方向強化繊維を有する層の段差部による重なり部分が形成されてはいる。
しかし、管状体における先側から元側に掛けての複数箇所での重なり部分は、図4(a)〜(d)に示すように、円周方向に分散した状態で形成されている。
従って、管状体全長に亘って円周方向の同じ位相位置に重なり部分が形成されてはなく分散されているので、管状体として偏肉状態が解消され周方向位置での剛性の変化が抑制されることとなった。
ただし、ここでは、内側の層の一部に、第1補助パターンによる層を設けた。この第1補助パターンによって、その外側に位置するメインパターンの巻始辺を、管状体の軸線に対して螺旋状を呈する状態に配置する場合に、メインパターンを巻き付け易く、メインパターンの巻始辺を所期の螺旋状に正確に配置構成することができる。
しかも、その内側の層の外側で大径側には、前記したようにメインパターンを巻回した層が形成され、そのメインパターンを巻回した層においては、巻始辺が螺旋状を呈して重なり部分を抑制する構成が採用されているところから、従来構造のように、前記した重なり部分が軸線に平行な状態のみに形成されているものに比べて、第1補助パターンを内側に配置してはいても、管状体全体としての偏肉状態を解消できるものである
【0008】
〔効果〕
巻始辺を螺旋状に芯金に巻き付けていくという工夫だけで、剛性の偏りを排した使い易い管状体で有りながら、第1補助パターンの導入によって、メインパターンも芯金に巻き付け易く、メインパターンの巻始辺を正確に螺旋状に配置することのできる管状体を提供することができた。
【0009】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記第1補助パターンを、前記メインパターンの厚みよりも薄い厚みのメインパターンで形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
第1補助パターンはメインパターンのプリプレグに比べて薄いものが採用されているので、メインパターン程段差部の影響は大きくなく、管状体全体で偏肉に与える効果を抑制することができた。
【0011】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記第1補助パターンは、その巻始辺が前記軸線に平行な状態でかつ管状体の軸線長を備える長さで形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
第1補助パターンで形成される内側の層は、その巻始辺を管状体の軸線に平行なものとしているところから、円周方向における一箇所に重なり部分が形成されることとなる。
しかし、第1補助パターンによる巻始辺を軸線に平行な状態でかつ管状体の軸線長で形成してあるので、芯金の軸線に傾斜する状態で巻き付ける必要のあるメインパターンに比べて、第1補助パターンによる巻始辺をその芯金の軸線に沿った状態に巻き付けることができ、かつ、その巻き付けることが容易に行える。
したがって、第1補助パターンを巻回した後に、引き続きメインパターンを巻回する際に、メインパターンの巻始辺を先側から元側に掛けて管状体の軸線に対して螺旋状を呈する状態に正確に配置しやすいところから、重なり部分の偏肉抑制効果をより高めたものにできる。
【0013】
〔構成〕
請求項4に係る発明の特徴構成は、前記第1補助パターンの内側に配置する第1プリプレグテープを巻回した層、又は、前記メインパターンの外側に配置する第2プリプレグテープを巻回した層の、少なくとも一方を配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
つまり、第1補助パターンを巻回する前に第1プリプレグテープを巻回することによって、第1補助パターンを巻き付ける際に滑り等が少なく巻き付け易い。
また、メインパターンを巻回した後に第2プリプレグテープを巻回することによって、重合体を締付け、その重合体の巻回状態をしっかりしたものにできる
しかも、第1プリプレグテープと第2プリプレグテープを巻回した層があれば、メインパターンと第1補助パターンとを挟み込んで巻回するので、それらの溶融結合状態が良好であり、剛性の強化が図られる。
【0015】
〔構成〕
請求項5に係る発明の特徴構成は、前記メインパターンは、略軸方向に揃えた強化繊維を有し、巻始辺を前記強化繊維に対して平行に裁断してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0016】
〔作用効果〕
メインパターンの裁断形状としては、巻始辺を略軸方向に配置した強化繊維に対して平行に裁断しているので、従来とメインパターンの形状は同一のものであり、竿の調子等が実害のない程度に維持されたものとなる。
【0017】
〔構成〕
請求項6に係る発明の特徴構成は、前記メインパターンは、略軸方向に揃えた強化繊維を有し、巻始辺を前記強化繊維に対して傾斜する状態に裁断してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0018】
〔作用効果〕
巻始辺を芯金の軸方向に対して傾斜する状態に配置して巻回すると、強化繊維は管状体の軸線方向に沿った状態に配設されることとなり、軸方向繊維による曲げ強度及び剛性の強化を図ることができる。
【0019】
〔構成〕
請求項7に係る発明の特徴構成は、前記メインパターンは、複数層に分けて裁断されている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0020】
〔作用効果〕
巻始辺を螺旋状に形成したことによって、外側に位置する層において巻始辺に重なる部分が円周方向の同一位相に偏ることがなく、複数層のものにおいても剛性の偏りを排することができる。
しかも、積層数の多い管状体においては、メインパターンを複数に分けて裁断する場合があり、剛性と強度の改善が可能になる。
【0021】
〔構成〕
請求項8に係る発明の特徴構成は、さらに略軸方向強化繊維を有する複数層の内、外側に位置する層の巻終辺を、先側から元側に掛けて管状体の軸線に対して螺旋状を呈する状態に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0022】
〔作用効果〕
巻終辺についても、巻始辺と同様に段差部が形成されることとなる。その為にその段差部分で剛性が変化するので、巻終辺についても螺旋状を呈するように構成した。このことによって、より剛性の偏りの少ない管状体とできる。
【0023】
〔構成〕
請求項9に係る発明の特徴構成は、略軸方向強化繊維を揃えたプリプレグのメインパターンを芯金に巻回積層して筒状に作成される管状体の製造方法であって、
略軸方向に配設された強化繊維に対して前記巻始辺を平行に配置構成した前記メインパターンと、前記メインパターンの厚みよりも薄い厚みで管状体を形成するのに十分な軸線長を有するプリプレグ製の第1補助パターンとを重ね合わせ、その重ね合わせた前記メインパターンと前記第1補助パターンとを、前記第1補助パターンの巻始辺が芯金の軸線に沿う状態となるように、かつ、前記メインパターンの前記巻始辺が芯金の軸線に対して元側程離れる傾斜状態になるように、前記第1補助パターンを先行させて順次前記芯金に巻き付けて管状体を形成する点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0024】
〔作用効果〕
巻始辺を螺旋状に巻き付けていく方法として、巻始辺を芯金の軸線に対して元側程離れる傾斜状態になるように、その芯金に巻き付けていくことによって達成しており、芯金にメインパターンを巻き付けていく従来の製造方法を踏襲しながら、新たな技術の向上を図ったものである(図3の(a)を参照)。
しかも、メインパターン裁断形状としては、巻始辺を略軸方向に配置した強化繊維に対して平行に配置したものに維持しているので、従来とメインパターンの形状は同一のものであり、竿の調子等が実害のない程度に維持されたものとなる。
このようなことに加えて、メインパターンに対して重ね合わせた第1補助パターンを先行して芯金に巻き付けていく製造方法を採用した。これによって、第1補助パターンの巻始辺は、芯金に対して傾斜するものではなく芯金の軸線に沿った状態で巻き付けることができるので、巻始辺を芯金の軸線に対して傾斜する状態で巻き付ける場合に比べて容易に巻き付けることができ、かつ、メインパターンの巻始辺も芯金の軸線に対して傾斜するものであっても、正確にその巻始辺を配置できるのである。
更には、第1補助パターンはメインパターンに比べて薄いプリプレグを採用しているので、第1補助パターンの巻始辺を芯金の軸線に沿って配置し、段差部が形成されることとなっても、メインパターンの巻始辺を芯金の軸線に沿って配置し、段差部が形成される場合に比べて、その影響は少なくできる。
【0025】
〔構成〕
請求項10に係る発明の特徴構成は、略軸方向強化繊維を揃えたプリプレグのメインパターンを芯金に巻回積層して筒状に作成される管状体の製造方法であって、
略軸方向に配設された強化繊維に対して前記巻始辺を傾斜する状態に裁断した前記メインパターンと、前記メインパターンの厚みよりも薄い厚みで管状体を形成するに十分な軸線長を有するプリプレグ製の第1補助パターンとを重ね合わせ、その重ね合わせた前記メインパターンと前記第1補助パターンとを、前記第1補助パターンの巻始辺が芯金の軸線に沿う状態となるように、かつ、前記メインパターンの前記巻始辺が芯金の軸線に対して元側程離れる傾斜状態になるように、前記第1補助パターンを先行させて順次前記芯金に巻き付けて管状体を形成する点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0026】
〔作用効果〕
巻始辺を螺旋状に巻き付けていく方法として、メインパターンの巻始辺を管状体の軸線に沿って配置した強化繊維に対して始めから傾斜した状態に裁断したところのメインパターンを使用した。このことによって、請求項9に記載したと同様の作用効果を奏することができるのである。
【0027】
〔構成〕
請求項11に係る発明の特徴構成は、略軸方向強化繊維を揃えたプリプレグのメインパターンを芯金に巻回積層して筒状に作成される管状体の製造方法であって、
略軸方向に配設された強化繊維に対して前記巻始辺を平行に配置構成した前記メインパターンと、管状体の軸線長より短い軸線長を有するプリプレグ製の第2補助パターンとを重ね合わせて、その重ね合わせた前記メインパターンと前記第2補助パターンとを、前記第2補助パターンの巻始辺が芯金の軸線に沿う状態になるように、かつ、前記メインパターンの前記巻始辺が芯金の軸線に対して元側程離れる傾斜状態になるように、前記第2補助パターンを先行させて順次前記芯金に巻き付けて管状体を形成する点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0028】
〔作用効果〕
ここでは、請求項9で採用された第1補助パターンに代えて、軸線長が短い第2補助パターンを採用した。この第2補助パターンの採用によって、第1補助パターンを導入した場合と同様に、第2補助パターンの巻始辺は、芯金に対して傾斜するものではなく芯金の軸線に沿った状態で第2補助パターンを巻き付けることができるので、巻始辺を芯金の軸線に対して傾斜する状態で巻き付ける場合に比べて容易に巻き付けることができ、かつ、メインパターンの巻始辺も芯金の軸線に対して傾斜するものであっても、正確にその巻始辺を配置できるのである。
しかも、この第2補助パターンは、第1補助パターンに比べて軸線長が短いので、第2補助パターンが存在することによる影響を管状体の一部に限定できる。更には、第2補助パターンを元側端近傍に限定して設けた場合には、管状体の寸法を整える際に裁断放棄される部分に位置することともなり、完成した管状体においては、第2補助パターンが存在しないとも考えられ、第2補助パターンの影響は無視できる。
なお、第2補助パターンが残ることとなっても、管状体全長に亘って存在するわけではないので、スパイン低減の効果はある。
【0029】
〔構成〕
請求項12に係る発明の特徴構成は、略軸方向強化繊維を揃えたプリプレグのメインパターンを芯金に巻回積層して筒状に作成される管状体の製造方法であって、
略軸方向に配設された強化繊維に対して前記巻始辺を傾斜する状態に裁断した前記メインパターンと、管状体の軸線長より短い軸線長を有するプリプレグ製の第2補助パターンとを重ね合わせて、その重ね合わせた前記メインパターンと前記第2補助パターンとを、前記第2補助パターンの巻始辺が芯金の軸線に沿う状態になるように、かつ、前記メインパターンの前記巻始辺が芯金の軸線に対して元側程離れる傾斜状態になるように、前記第2補助パターンを先行させて順次前記芯金に巻き付けて管状体を形成する点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0030】
〔作用効果〕
ここでは、請求項10で採用された第1補助パターンに代えて、軸線長が短い第2補助パターンを採用した。この第2補助パターンの採用によって、第1補助パターンを導入した場合と同様に、第2補助パターンの巻始辺は、芯金に対して傾斜するものではなく芯金の軸線に沿った状態で第2補助パターンを巻き付けることができるので、巻始辺を芯金の軸線に対して傾斜する状態で巻き付ける場合に比べて容易に巻き付けることができ、かつ、メインパターンの巻始辺も芯金の軸線に対して傾斜するものであっても、正確にその巻始辺を配置できるのである。
しかも、この第2補助パターンは、第1補助パターンに比べて軸線長が短いので、第2補助パターンが存在することによる影響を管状体の一部に限定できる。更には、第2補助パターンを元側端近傍に限定して設けた場合には、管状体の寸法を整える際に裁断放棄される部分に位置することともなり、完成した管状体においては、第2補助パターンが存在しないとも考えられ、第2補助パターンの影響は無視できる。
【0031】
〔構成〕
請求項13に係る発明の特徴構成は、略軸方向強化繊維を揃えたプリプレグのメインパターンを芯金に巻回積層して筒状に作成される管状体の製造方法であって、
略軸方向に配設された強化繊維に対して前記巻始辺を傾斜する状態に裁断した前記メインパターンと前記メインパターンの厚みよりも薄い厚みで管状体を形成するに十分な軸線長を有するプリプレグ製の第1補助パターンとを重ね合わせ、前記第1補助パターンの先側端より所定間隔だけ離れた位置にその第1補助パターンより小さな形状の第3補助パターンと前記第1補助パターンの元側端位置にその第1補助パターンより小さな形状の第4補助パターンとを前記メインパターンの巻始辺に重なるように重ね合わせ、その重ね合わせた前記メインパターンと前記第1補助パターンと前記第3補助パターンと前記第4補助パターンとの重合体を、前記第1補助パターンの巻始辺が芯金の軸線に沿う状態となるように、かつ、前記メインパターンの前記巻始辺が芯金の軸線に対して元側程離れる傾斜状態になるように、前記第1補助パターンを先行させて順次前記芯金に巻き付けて管状体を形成する点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0032】
〔作用効果〕
ここでは、請求項6及び請求項10で採用されたメインパターンと第1補助パターンに加えて、第3補助パターン及び第4補助パターンを重ね合わせたものを巻回して管状体を形成する方法について説明する。
つまり、第1補助パターンより小さな形状の第3補助パターンを、第1補助パターンの先側端より元側端側に少し離して設けることによって、管状体の先側部分だけでなく先側端より元側に寄った部分の強度向上を図っている。また、第4補助パターンによって、先側より大きな荷重の作用する元側端での強度向上を図っている。
しかも、第3補助パターン及び第4補助パターンは、メインパターンの巻始辺に重なるように配置してあるので、管状体に形成した状態で、巻始辺における重なり部分(スパイン)での応力集中を緩和して、その部分の剛性の強化を図るものである。
【0033】
〔構成〕
請求項14に係る発明の特徴構成は、請求項13に係る管状体の製造方法であって、
重ね合わせた前記重合体を芯金に巻回することに先行させて、細い幅の第1プリプレグテープを前記重合体の略全長に亘って螺旋状に巻回するとともに、前記重合体を芯金に巻回した後に、細い幅の第2プリプレグテープを前記重合体の全長に亘って螺旋状に巻回して管状体を形成する点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0034】
〔作用効果〕
ここでは、請求項13で採用されたメインパターンと第1補助パターン、第3補助パターン及び第4補助パターンとの重合体を芯金に巻回することに加えて、第1プリプレグテープ及び第2プリプレグテープを巻回して管状体を形成する作用効果について説明する。
つまり、前記重合体を巻回する前に第1プリプレグテープを巻回することによって、重合体を巻き付ける際に滑り等が少なく巻き付け易い。
また、前記重合体を巻回した後に第2プリプレグテープを巻回することによって、重合体を締付け巻き付けた状態を確りしたものできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、ヘラ竿を示す全体側面図である。
【図2】図2は、第1実施形態のメインパターンの形状と芯金とを示す構成図である。
【図3】図3(a)は、第1補助パターンの巻始辺の一部を芯金に巻き付けた状態を示す構成図、図3(b)は、第1補助パターンを巻き付け終えて、次にメインパターンの一部を芯金に巻き付けた状態を示す構成図、図3(c)は、メインパターンを芯金に巻き付け終えた状態を示す構成図である。
【図4】図4(a)は、図3(c)におけるI―I断面図、図4(b)は、図3(c)におけるII―II断面図、図4(c)は、図3(c)におけるIII―III断面図、図4(d)は、図3(c)におけるIV―IV断面図である。
【図5】図5は、メインパターンの竿先側辺を1プライ分だけ芯金に巻き付けた状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、メインパターンの巻始辺が螺旋状を呈することを示す斜視図である。
【図7】図7は、巻始辺を強化繊維に対して角度αだけ傾斜させた状態で裁断したメインパターンを、芯金に巻き付ける前の状態を示す構成図である。
【図8】図8は、第2実施形態を示し、巻始辺を強化繊維に対して平行に裁断したメインパターンに第2補助パターンを重ね合わせたものを、芯金に巻回する前の状態を示す構成図である。
【図9】図9は、第4実施形態を示し、巻始辺を強化繊維に対して傾斜させて裁断したメインパターンに第2補助パターンを重ね合わせたものを、芯金に巻回する前の状態を示す構成図である。
【図10】図10は、第5実施形態を示し、図10(a)は、第5補助パターンを芯金に巻回する前の状態を示す構成図、(b)は、その上に第1プリプレグテープを巻回する状態を示す構成図、(c)は、巻始辺を強化繊維に対して傾斜させて裁断したメインパターンに第1補助パターン、第3補助パターン、第4補助パターンの重合体を巻回する前の状態を示す構成図、(d)は、第6補助パターンを巻回する前の状態を示す構成図である。
【図11】図11は、図10に引き続く製作方法を示し、図11(e)は、第2プリプレグテープを巻回する状態を示す構成図、(f)は、第7補助パターンを巻回する前の状態を示す構成図、(g)は、第7補助パターンを巻終えた状態を示す構成図である。
【図12】図12は、図2における第1補助パターンの軸方向に配置された強化繊維の方向を円周方向に設定した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔第1実施形態〕
ここでは、主として、請求項1、3、8に関する実施形態について説明する。
ヘラ竿を参照して説明する。図1に示すように、釣り糸を括り付けるリリアン1Aを備えた穂先竿1、二番竿2、三番竿3等の中間竿、紡錘型の握り部4Aを備えている手元側竿4を備えて、ヘラ竿Hを構成している。穂先竿1、中間竿、手元側竿4等の釣り竿用竿体を、管状体の一例として示している。
【0037】
各竿1〜4については、次のように構成される。図2に示すように、プリプレグからなるメインパターン5を後記する芯金6に巻回して筒状の竿素材を形成し、この竿素材に仕上げ加工等を施して各竿1〜4を構成する。竿1〜4の竿先側と竿元側とに、補強パターン7で補強効果を図ってもよい。
メインパターン5は、竿の略軸線方向に沿って引き揃えた強化繊維fにマトリックス樹脂を含浸させて、板状に形成したものである。
【0038】
プリプレグを構成する強化繊維fとしては、具体的には、炭素繊維以外にガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維等が使用でき、マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂の他に、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂やPV(E)等の熱可塑性樹脂が使用できる。また、プリプレグとしては、織り物に樹脂を含浸させて構成したものであってもよい。
【0039】
ここでは、中間竿について説明する。メインパターン5は、図2に示すように、台形状のものであり、芯金6に最初に巻き付けられる巻始辺5Aと、最後に巻き付けられる巻終辺5Bとを芯金6に沿った長手方向に延出し、巻始辺5Aに直交する竿先側辺5Cと竿元側辺5Dとを備えて構成されている。巻終辺5Bは巻始辺5Aに対して角度βの傾斜角を持って斜辺に形成されている。また、巻始辺5Aは、略軸方向に引き揃えられた強化繊維fと平行に裁断されている。
ここで使用するメインパターン5は、巻始辺5Aに対して竿先側辺5Cと竿元側辺5Dとが直交する状態に裁断され、かつ、巻終辺5Bは巻始辺5Aに対して角度βの傾斜角を持って斜辺に形成されている、従来と同様のシートである。角度βとしては、竿元側辺5Dが竿先側辺5Cに対して1プライ分長くなるように設定されている。なお、1プライ以上とすることもある。
【0040】
竿先側辺5Cから竿元側辺5Dまでの長さL1は中間竿を作成するに十分な長さである略0.7m〜1.2mが採用される。これに対して、竿先側辺5Cの長さL2は芯金6の所定位置に3回巻き付けられる長さに裁断されている。つまり、3プライ分の長さがある。一方、竿元側辺5Dの長さL3は、竿先側辺5Cより長く、芯金6の元側部分に4回以上だけ巻き付けられる長さに裁断されている。つまり、4プライ分以上の長さがある。このように、竿元側辺5Dの方が、プライ数が多いのは、元側の方が手元側に近く曲げ応力等が大きく作用し、次の大径側竿との接続部位となるからである。
【0041】
そして、このように裁断されたメインパターン5を、図2に示すように、巻始辺5Aが芯金6の軸線Xに対して傾斜角αで傾斜する状態に傾斜させた状態で芯金6に巻き付ける。図2及び図3に示すように、巻始辺5Aと竿元側辺5Dとの交点位置eは、竿軸線(芯金軸線でもある)Xに平行な基準線Yより巻始辺5Aの傾斜分だけ離間しており、その離間長さL4は、芯金6に巻き付ける際の1プライ分の長さに相当するものである。
以上のところから、図2に示すように、巻始辺5Aと基準線Yとの傾斜角αは、tanα=L4/L1で表わされる。このαは、ヘラ竿の場合には、0.8°〜1.3°の間の数値が採用される。
以上のような構成により、芯金6に巻回して筒状に形成された中間竿における巻始辺5Aは、図5、図6に示すように、中間竿の内周面に沿って螺旋線となっている。なお、外径の大きな竿の場合は、傾斜角αは径の大きさに応じて大きくなる。
【0042】
次に、メインパターン5に重ねて使用される第1補助パターン8について説明する。図2に示すように、第1補助パターン8は、プリプレグ製であり、略長方形の形状に裁断されている。軸線に沿った巻始辺8Aと巻終辺8Bとは軸方向に沿った平行線であり、巻始辺8Aと巻終辺8Bの軸線長L5は、メインパターン5の軸線長L1より僅かに長い長さに設定されており、その幅L6は、一プライ分より僅かに長い長さに設定されている。
第1補助パターン8の厚みはメインパターン5の厚みより薄いものであり、約半分の厚みに設定されている。この第1補助パターン8に使用されるプリプレグにおける強化繊維の配設方向は、軸線方向に引き揃えられている。
【0043】
この第1補助パターン8をメインパターン5に重ね合わせるのに、まず、メインパターン5を傾斜角αだけ傾斜させて、巻始辺5Aが芯金6の軸線Xに平行な基準線Yに対して傾斜するように、設定する。つまり、メインパターン5の前記した交点eが基準線Yに対して1プライ分だけ離間する方向に傾斜させる。
【0044】
この傾斜したメインパターン5に対して、略長方形状の第1補助パターン8を、第1補助パターン8の対角線がメインパターン5の巻始辺5Aに略重なるように、重ね合わせる。これによって、第1補助パターン8の対角線を挟んで一方の領域部分がメインパターン5に重なっていることとなる。
【0045】
次に、図2、3に示すように、芯金6を準備する。芯金6は、耐熱、耐腐食性のニッケル・モリブデン合金や表面焼入れ鋼(S45C)等に金属メッキ等を施して形成された棒状体である。先端から元部に向かって管状体に対応する長さL1よりも若干長い長さを有し元部端に至るまで略一定の極小テーパ率を有する外径Dを呈し、元部端は大径部に形成してある。
元部端大径部の外径Dは略一定に形成されており、ヘラ竿等では、先端から元端に向けて略1.0/1000〜3.0/1000mmのテーパ率が採用される。
【0046】
上記した芯金6にメインパターン5と第1補助パターン8を巻回して、中間竿を成形する。
図3(a)に示すように、芯金6に第1補助パターン8を先行して巻き付けていく。つまり、第1補助パターン8の巻始辺8Aを芯金6に軸線Xに沿って配置し、第1補助パターン8及びメインパターン5を巻き付けていく。そうすると、メインパターン5の巻始辺5Aは芯金6の軸線Xに対して竿元側が芯金6より離れる状態でかつ傾斜角αだけ傾斜した状態で巻き付けられていく。
【0047】
そうすると、図3(b)に示すように、巻始辺5Aが芯金6に対して斜めに向かう姿勢で、メインパターン5が巻き付けられるので、図3(c)及び、図5に示すように、メインパターン5で形成した内側に位置する層の巻始辺5Aが斜めの点線で示される。このことは、つまり、図6においても示すように、巻始辺5Aが螺旋を描く状態で巻き付けられたことを示している。
【0048】
巻始辺5Aが螺旋状を描く点を考察してみると、前記したように、メインパターン5が、傾斜角αだけ傾斜する状態、つまり、巻始辺5Aと竿元側辺5Dとの交点位置eが、竿軸線(芯金軸線でもある)Xに平行な基準線Yより巻始辺5Aの傾斜分だけ離間しており、その離間長さL4は、芯金6に巻き付ける際の1プライ分の長さに相当するだけ離間している点については先にも説明した。このことは、図3(c)および図4に示すように、竿軸線Xの軸線方向における4箇所において管状体の断面を検証してみると、図3(c)及び図4(b)で示すII―II断面において切断すると、図3(c)及び図4(a)で示すI―I断面の巻始点aから、円周方向に120°離れた図3(c)及び図4(b)で示すII―II断面の巻始点bにおける位置で巻始辺5Aの位置を確認できる。
【0049】
同様の手順で、図3(c)及び図4(c)で示すIII―III断面において切断すると、図3(c)及び図4(b)で示す内側層のII―II断面の巻始点bから円周方向に120°離れた図3(c)及び図4(c)で示す巻始点cにおける位置で巻始辺5Aの位置を確認できる。
同様の手順で、図3(c)及び図4(d)で示すように、IV―IV断面において切断すると、図3(c)及び図4(c)で示す内側層のIII―III断面の巻始点cから円周方向に120°離れた図3(c)及び図4(d)で示す巻始点dにおける位置で巻始辺5Aの位置を確認できる。丁度、元の巻始点aと同じ位置まで戻ったことになり、1プライだけ巻き付けられたことが分かる。
【0050】
一方、外側層における巻終辺5Bについて考察してみると、管状体の元部端の巻終辺5Bは巻始辺5Aに対して1プライ分以上だけ傾斜する状態に形成されており、更に、前記した傾斜角αで芯金6にメインパターン5が巻回されるので、巻終辺5Bと竿元側辺5Dとの交点位置gは、基準線Yより2プライ分以上離間することとなる。
実際に図3(c)においては、巻終辺5Bと竿元側辺5Dとの交点位置gは、基準線Yより略3プライ分離間するように描かれている。
【0051】
したがって、管状体に形成された状態では、外側層における巻終辺5Bは図3(c)で示すように3本の傾斜線が表出する螺旋状を呈するものとなる。なお、メインパターン5が傾斜角αで巻き付けられているので、竿元側辺5Dの内側層のみならず中間層の部分も表出することとなる。
このように、巻終辺5Bについても巻始辺5Aと同様に、螺旋状を呈しているので、前記したスパインによる効果を抑制することに機能している。なお、傾斜角βにより傾斜の数は変化することは言うまでもない。
【0052】
以上のように、巻始辺5Aを螺旋状に巻き付けたものについて、傾斜角αの角度の違いについて、CAEで検証テストを行ってみた。
テストの前提として、次のような条件で行っている。
(1)芯金直径5mm 芯金のテーパ1/1000
テスト竿の長さ1000mm
(2)テスト方法
竿元端を固定し、竿先自由端に所定の重さMgの負荷を掛けて、竿先自由端の撓みを測定する。
釣り竿の円周方向における基準位置にマークを付与し、そのマークが上を向く状態を0°とし、そのマークが上を向く0°の状態から45°だけ回転させた位置、更に、45°ずつ回転させた位置での、竿先端の下向きの撓み量を測定する。
(3)テスト竿の諸元
テスト竿1:メインパターン厚:smm 巻き数:hプライ(竿先側)−jプライ(竿元側)
テスト竿2:メインパターン厚:smm 巻き数:hプライ(竿先側)−jプライ(竿元側)
(4)テスト竿1は、内側層の巻始辺5Aが芯金6の軸線Xに平行で離間長さL4が零の従来構造のものである。
(5)テスト竿2は、内側層の巻始辺5Aが芯金6の軸線Xに傾斜し、離間長さL4が1プライ分に相当する本願発明のものである。
【0053】
上記したテスト結果について記載する。
【0054】
【表1】

【0055】
以上のテスト結果より、芯金の全周分(1プライ分)の離間長さL4、つまり、tanα=L4/L1で表わされる傾斜角αを持って、メインパターン5を巻き付けたテスト竿1においては、0°、45°、90°、135°の位置での最大最小撓み量の差が3.0%の範囲に達しているのに対して、テスト竿2においては、最大最小撓み量の差0.6%の範囲に抑制されている。
このことによって、巻始辺5Aの螺旋が偏肉状態を有効に解消する機能が高いことが分かる。
テスト結果として、記載してはいないが、樹脂量の多いものについては、スパインの抑制効果が高いと考えられる。
【0056】
〔第2実施形態〕
ここでは、主として、請求項1、5、11に関する実施形態について説明する。図8に示すように、メインパターン5は強化繊維が軸方向に引き揃え配置されたプリプレグを略台形状に裁断し、巻始辺5Aを強化繊維に平行に裁断した第1実施形態と同様の構成のものを使用する。
一方、補助パターンとしては、第1補助パターン8とは異なる第2補助パターン9を使用する。
【0057】
第2補助パターン9は、軸線長がメインパターン5に比べて大幅に短く、形状も略台形状のものであり、メインパターン5の巻始辺5Aと竿元側辺5Dとの交点の近傍に重ねて取り付けられる。
第2補助パターン9の厚みは、第1補助パターン8とは異なり、メインパターン5より薄く設定する必要はなく、メインパターン5より厚いものであってもよい。それは、この第2補助パターン9は、竿体に巻かれた後に、竿体として長さを整える際に、竿元側の一部とともに切り落とされる。
【0058】
以上のように、メインパターン5に重ね合わされた第2補助パターン9を芯金6に巻き付ける際に、第2補助パターン9の巻始辺9Aを芯金6の軸線Xに沿った状態になるように第2補助パターン9を配置し巻回していくと、メインパターン5も引き続いて巻回される。その際に、そうすると、メインパターン5の巻始辺5Aは芯金6の軸線Xに対して竿元側が芯金6より離れる状態でかつ傾斜角αだけ傾斜した状態で巻き付けられていく。
それにより、段落番号〔0028〕で記載したことが言え、メインパターン5の巻始辺5Aが螺旋状を呈するのである。
【0059】
〔第3実施形態〕
ここでは、ここでは、主として、請求項1、6、10に関する実施形態について説明する。メインパターン5が異なる形状のもので中間竿を作成する。
メインパターン5は、図7に示すように、略台形状のものであり、芯金6に最初に巻き付けられる辺を巻始辺5Aと、最後に巻き付けられる辺を巻終辺5Bとして、巻始辺5Aと巻終辺5Bとに略直交する状態の辺を竿先側と竿元側に配置して、竿先側辺5Cと竿元側辺5Dとを備えて構成されている。
【0060】
竿先側辺5Cと竿元側辺5Dとは、芯金6の軸線Xに平行な線を基準線Yとして考えると、基準線Yに対して直交する姿勢に裁断されている。一方、巻始辺5Aは、図7に示すように、基準線Yに対して平行ではなく、竿元側辺5Dに近くなる程基準線Yより離れるように、傾斜する状態に裁断されている。つまり、巻始辺5Aは、略軸方向に沿って配置されている強化繊維fに対して角度αを持って裁断されており、巻始辺5Aと竿先側辺5Cとを、それらが挟む挟み角γを90度より小さな値になるように構成してある。また、このように、メインパターン5の形状としては、角度αの部分を廃棄する必要があるが、強化繊維fの引き揃え方向を軸方向に設定してあるので、強度低下を抑制できている。
【0061】
竿先側辺5Cから竿元側辺5Dまでの長さL1は中間竿を作成するに十分な長さとして、略0.7m〜1.2mと考えてよい。これに対して、竿先側辺5Cの長さL2は芯金6の所定位置に3回巻き付けられる長さに裁断されている。つまり、3プライ分の長さがある。一方、竿元側辺5Dの長さL3は、竿先側辺5Cより長く、芯金6の元側部分に4回以上巻き付けられる長さに裁断されている。つまり、4プライ分以上の長さがある。このように、竿元側辺5Dの方がプライ数が多いのは、元側の方が手元側に近く曲げ応力等が大きく作用し、次の大径側竿との接続部位となるからである。
【0062】
そして、図7に示すように、巻始辺5Aと竿元側辺5Dとの交点位置eは、基準線Yより巻始辺5Aの傾斜分だけ離間しており、その離間長さL4は、芯金6に巻き付ける際の1プライ分の長さに相当するものである。
以上のところから、図7に示すように、巻始辺5Aと基準線Yとの傾斜角αは、tanα=L4/L1で表わされる。このαはヘラ竿の場合は、0.8°〜1.3°の間の数値が採用される。
以上のような構成により、芯金6に巻回して筒状に形成された中間竿における巻始辺5Aは、図6に示すように、管状体の内周面に沿って螺旋線となっている。なお、外径の大きな竿の場合は、傾斜角αは径の大きさに応じて大きくなる。
【0063】
一方、巻終辺5Bも巻始辺5Aと同様に基準線Yに対して傾斜角度βで傾斜する状態に設定してあり、巻終辺5Bも芯金6に巻き付けられた際に、螺旋状を呈することとなる。
なお、巻始辺5Aの傾斜角度αと巻終辺5Bの傾斜角βとは、必ずしも一致する必要はないが、螺旋を描く状態としては、竿先側端から所定の長さだけ竿元側端に位置する各竿部分において断面して見た場合に、円周方向において、互いに180°反対側に位置するように、二つの螺旋を形成すると、より剛性の変化を抑制できる。
【0064】
このようなメインパターン5に対して、図7に示すように、段落番号〔0042〕〜段落番号〔0044〕で記載した第1補助パターン8を重ね合わせて使用する。第1補助パターン8は、前記したものと同じであり、略長方形状のプリプレグで、強化繊維を軸方向に引き揃え、メインパターン5の巻始辺5Aが対角線位置にくるように、重ね合わせる。このような構成によって、第1補助パターン8の巻始辺8Aを芯金6の軸線Xに沿わせるように巻回することによって、メインパターン5の巻始辺5Aが軸線Xにたいして傾斜する状態で巻き付けられる。
【0065】
〔第4実施形態〕
ここでは、主として、請求項1、6、12に関する実施形態について説明する第3実施形態で示したメインパターン5に第2実施形態で示した第2補助パターン9を重ね合わせて使用する形態について説明する。図9に示すように、メインパターン5の巻始辺5Aは、軸方向に引き揃えられた強化繊維fに対して傾斜角αで傾斜する状態に裁断されており、メインパターン5は略台形に近い形に裁断してある。
これに対して、第2補助パターン9は第2実施形態で述べたように、メインパターン5の軸線方向長L1に比べて随分短い軸線長に形成されており、メインパターン5の巻始辺5Aと竿元側辺5Dとの交点近傍に重ね合わされている。
【0066】
このような構成になる第2補助パターン9の巻始辺9Aを芯金6の軸線Xに沿わせるように巻回することによって、メインパターン5の巻始辺5Aが軸線Xに対して傾斜する状態で巻き付けられる。
【0067】
〔第5実施形態〕
ここでは、主として、請求項1、6、13、14に対応した実施形態について説明する。図10及び図11に基づいて説明する。
(1)図10(a)に示すように、第5補助パターン13を竿先側部分に設定して芯金6に巻回する。第5補助パターン13は、略台形状のもので、軸線長はメインパターン5に比べて短い。その厚みは、メインパターン5より薄く有る必要はなく、厚くてもよい。
この第5補助パターン13は、不織布を材料として構成されている。ただし、図10(a)に示すように、プリプレグから構成されるものでもよい。その場合には、強化繊維fの方向は、周方向に配置したものを記載しているが、軸方向に配置したものでもよい。更には、傾斜するものでもよく、二方向に交差するものであってもよい。
【0068】
(2)図10(b)に示すように、第5補助パターン13の上から、細い幅の第1プリプレグテープ12Aを螺旋状に芯金6の全長に亘って巻回する。
【0069】
(3)図10(c)に示すように、メインパターン5と第1補助パターン8と第3補助パターン10と第4補助パターン11との重合体Aを、第1プリプレグテープ12Aの上から巻回する。
重合体Aは、略軸方向に配設された強化繊維fに対して巻始辺5Aを傾斜する状態に裁断したメインパターン5とメインパターン5の厚みよりも薄い厚みで管状体を形成するに十分な軸線長を有するプリプレグ製の第1補助パターン8とを重ね合わせ、第1補助パターン8の先側端より所定間隔だけ離れた位置にその第1補助パターン8より小さな三角形状の第3補助パターン10と前記第1補助パターン8の元側端位置にその第1補助パターン8より小さな台形状の第4補助パターン11とをメインパターン5の巻始辺5Aに重なるように重ね合わせ、その重ね合わせたメインパターン5と第1補助パターン8と第3補助パターン10と第4補助パターン11とで構成してある。
【0070】
この重合体Aを、第3、第4補助パターン10、11が内側になるように、かつ、第1補助パターン8の巻始辺8Aが芯金6の軸線Xに沿う状態となるように、かつ、メインパターン5の巻始辺5Aが芯金6の軸線Xに対して元側程離れる傾斜状態になるように、第1補助パターン8を先行させて順次芯金6に巻き付けて管状体を形成する。
この場合に、メインパターン5における巻始辺5Aと竿元側辺5Dとの交点位置が前記基準線Yから一プライ分だけ離れるように、巻始辺5Aは裁断されている。
ただし、一プライより小さくてもよく、大きくてもよい。第3補助パターン10と第4補助パターン11はなくてもよい。或いは、第4補助パターン11だけ設けてもよい。
【0071】
(4)次に図10(d)に示すように、第6補助パターン14を巻回する。第6補助パターン14は二枚のプリプレグからなっており、重なり合せた状態で互いの強化繊維fが交差するバイアス式のパターンになっている。
このように、バイアス式の第6補助パターン14を採用したのは、振り出し式釣り竿を使用する場合に、釣り竿の使用する為に引き延ばす状態で、例えば、二番竿と三番竿とを互いに捩りながら引き延ばしていくが、その際に、二番竿の玉口に捩り力が作用する。
そのネジリ力等に対する対抗力を高める為に、第6補助パターン14をバイアス式とした。
【0072】
(5)図11(e)に示すように、第6補助パターン14及び重合体Aの上から、細い幅の第2プリプレグテープ12Bを螺旋状に芯金6の全長に亘って巻回する。この第2プリプレグテープ12Bの螺旋の進み方向は、第1プリプレグテープ12Aと対称となるように、反対方向に巻いていく。
【0073】
(6)図11(f)(g)に示すように、第7補助パターン15を巻回する。第7補助パターン15も第6補助パターン14と同様に二枚のプリプレグからなっており、重なり合せた状態で互いの強化繊維fが交差するバイアス式のパターンになっている。
このように、バイアス式の第7補助パターン15を採用したのは、振り出し式釣り竿を使用する場合に、釣り竿の使用する為に引き延ばす状態で、例えば、穂先竿と二番竿とを互いに捩りながら引き延ばしていくが、その際に、二番竿の元側部分に捩り力が作用する。
そのネジ力等に対する対抗力を高める為に、第7補助パターン15をバイアス式とした。
【0074】
(7)第7補助パターン15を巻回した後、所定の成形テープを巻回し、焼成して、釣り竿の竿素材を形成する。その後、所定長さに裁断し、塗装仕上げ加工を施して、釣り竿用竿体として、構成する。
【0075】
〔別実施形態〕
(1)第1、第2プリプレグテープ12A、12Bとしては、少なくともいずれか一方を巻回していればよい。また、メインパターン5の外側に更に、別個のプリプレグを巻回して外側層を形成してもよい。
つまり、第1〜第4実施形態で示したメインパターン5を巻回して形成した複数層を中間層とした竿体を形成することもできる。
【0076】
(2)ここでは、巻始辺5Aを芯金6に巻き付ける際に、異なる巻き付け方をするものについて説明する。図示してはいないが、メインパターン5としては、第1実施形態及び第2実施形態で記載したものを使用する。第1実施形態においては、芯金6の軸線Xに対して巻始辺5Aを傾斜角αだけ、竿元側が芯金6より離れる状態で巻き付けた。
これに対して、芯金6の軸線Xに対して巻始辺5Aを傾斜角αだけ、竿先側が芯金6より離れる状態で巻き付ける。このことによって、巻始辺5Aは、螺旋状を呈する。したがって、前記した段差部による重なり部分が螺旋状を呈することによって、偏肉状態が解消し、前記した欠点は改善される。
【0077】
(3)釣り竿用竿体としては、ヘラ竿だけでなく全ての竿に適用することが可能であるが、特に、肉厚の薄い、中間竿において顕著な効果を確認できる。
【0078】
(4)メインパターン5を芯金6に巻き付ける際に傾斜角αで巻き付けたが、この場合に、上記した1プライ分だけ傾斜させるのではなく、それより小さなプライ数、つまり、0.5や0.7プライ分で巻き付けてもよい。また、1プライ分以上巻き付けてもよい。
【0079】
(5)メインパターン5としては、竿先側辺5Cが3プライ分の幅を備えた1枚もので構成したが、1プライ分ずつに分割した複数枚のメインパターン5を重ね巻きしたものでもよい。
また、メインパターン5及び第1補助パターン8におけるプリプレグとして軸方向繊維を使用するものについて説明したが、図示してはいないがメインパターンにおいて、又は図12に示す第1補助パターン8のように、周方向繊維を有するプリプレグ若しくは傾斜繊維を有するプリプレグを使用してもよい。更にクロス状の繊維を有するプリプレグを使用した管状体であってもよい。
【0080】
(6)第5実施形態で示した、第5補助パターン13、第1、第2プリプレグテープ12A、12B、第6補助パターン14、第7補助パターン15のうち少なくとも一つについて、メインパターン5と第1補助パターン8とを基本とした構成に、付け加えて使用できる。
【0081】
(7)第5実施形態で示したメインパターン5としては、略軸方向に揃えた強化繊維を有し、巻始辺5Aを前記強化繊維に対して平行に裁断してあるものを採用して、前記重合体Aを形成してもよい。
【0082】
(8)第1補助パターン8としては、メインパターンより軽量でなくてもよい。また、第1補助パターン8の巻始辺8Aは、必ずしも、前記軸線に平行な状態でかつ管状体の軸線長を備える長さで形成してある必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本願発明は、本発明に係る管状体は、釣り竿用の竿体だけでなく、ゴルフクラブ、及び、自転車の車体フレーム等に使用可能である。
【符号の説明】
【0084】
5 メインパターン
5A 巻始辺
5B 巻終辺
5C 竿先側辺
5D 竿元側辺
6 芯金
8 第1補助パターン
8A 巻始辺
9 第2補助パターン
10 第3補助パターン
11 第4補助パターン
12A 第1プリプレグテープ
12B 第2プリプレグテープ
13 第5補助パターン
14 第6補助パターン
15 第7補助パターン
α 傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維を引き揃えたプリプレグのメインパターンを芯金に巻回積層して筒状に作成される管状体であって、
前記メインパターンの巻始辺を、先側から元側に掛けて管状体の軸線に対して螺旋状を呈する状態に配置し、
前記メインパターンの内側の一部に、プリプレグ製の第1補助パターンを巻回した層を配置してある管状体。
【請求項2】
前記第1補助パターンを、前記メインパターンの厚みよりも薄い厚みのプリプレグで形成してある請求項1記載の釣竿用の竿体。
【請求項3】
前記第1補助パターンは、その巻始辺が前記軸線に平行な状態でかつ管状体の軸線長を備える長さで形成してある請求項1又は2記載の管状体。
【請求項4】
前記第1補助パターンの内側に配置する第1プリプレグテープを巻回した層、又は、前記メインパターンの外側に配置する第2プリプレグテープを巻回した層の、少なくとも一方を配置してある請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の管状体。
【請求項5】
前記メインパターンは、略軸方向に揃えた強化繊維を有し、巻始辺を前記強化繊維に対して平行に裁断してある請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の管状体。
【請求項6】
前記メインパターンは、略軸方向に揃えた強化繊維を有し、巻始辺を前記強化繊維に対して傾斜する状態に裁断してある請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の管状体。
【請求項7】
前記メインパターンは、複数層に分けて裁断されている請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の管状体。
【請求項8】
さらに略軸方向強化繊維を有する複数層の内、外側に位置する層の巻終辺を、先側から元側に掛けて管状体の軸線に対して螺旋状を呈する状態に配置してある請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の管状体。
【請求項9】
略軸方向強化繊維を揃えたプリプレグのメインパターンを芯金に巻回積層して筒状に作成される管状体の製造方法であって、
略軸方向に配設された強化繊維に対して前記巻始辺を平行に配置構成した前記メインパターンと、前記メインパターンの厚みよりも薄い厚みで管状体を形成するに十分な軸線長を有するプリプレグ製の第1補助パターンとを重ね合わせ、その重ね合わせた前記メインパターンと前記第1補助パターンとを、前記第1補助パターンの巻始辺が芯金の軸線に沿う状態となるように、かつ、前記メインパターンの前記巻始辺が芯金の軸線に対して元側程離れる傾斜状態になるように、前記第1補助パターンを先行させて順次前記芯金に巻き付けて管状体を形成する管状体の製造方法。
【請求項10】
略軸方向強化繊維を揃えたプリプレグのメインパターンを芯金に巻回積層して筒状に作成される管状体の製造方法であって、
略軸方向に配設された強化繊維に対して前記巻始辺を傾斜する状態に裁断した前記メインパターンと、前記メインパターンの厚みよりも薄い厚みで管状体を形成するに十分な軸線長を有するプリプレグ製の第1補助パターンとを重ね合わせ、その重ね合わせた前記メインパターンと前記第1補助パターンとを、前記第1補助パターンの巻始辺が芯金の軸線に沿う状態となるように、かつ、前記メインパターンの前記巻始辺が芯金の軸線に対して元側程離れる傾斜状態になるように、前記第1補助パターンを先行させて順次前記芯金に巻き付けて管状体を形成する管状体の製造方法。
【請求項11】
略軸方向強化繊維を揃えたプリプレグのメインパターンを芯金に巻回積層して筒状に作成される管状体の製造方法であって、
略軸方向に配設された強化繊維に対して前記巻始辺を平行に配置構成した前記メインパターンと、管状体の軸線長より短い軸線長を有するプリプレグ製の第2補助パターンとを重ね合わせて、その重ね合わせた前記メインパターンと前記第2補助パターンとを、前記第2補助パターンの巻始辺が芯金の軸線に沿う状態になるように、かつ、前記メインパターンの前記巻始辺が芯金の軸線に対して元側程離れる傾斜状態になるように、前記第2補助パターンを先行させて順次前記芯金に巻き付けて管状体を形成する管状体の製造方法。
【請求項12】
略軸方向強化繊維を揃えたプリプレグのメインパターンを芯金に巻回積層して筒状に作成される管状体の製造方法であって、
略軸方向に配設された強化繊維に対して前記巻始辺を傾斜する状態に裁断した前記メインパターンと、管状体の軸線長より短い軸線長を有するプリプレグ製の第2補助パターンとを重ね合わせて、その重ね合わせた前記メインパターンと前記第2補助パターンとを、前記第2補助パターンの巻始辺が芯金の軸線に沿う状態になるように、かつ、前記メインパターンの前記巻始辺が芯金の軸線に対して元側程離れる傾斜状態になるように、前記第2補助パターンを先行させて順次前記芯金に巻き付けて管状体を形成する管状体の製造方法。
【請求項13】
略軸方向強化繊維を揃えたプリプレグのメインパターンを芯金に巻回積層して筒状に作成される管状体の製造方法であって、
略軸方向に配設された強化繊維に対して前記巻始辺を傾斜する状態に裁断した前記メインパターンと前記メインパターンの厚みよりも薄い厚みで管状体を形成するに十分な軸線長を有するプリプレグ製の第1補助パターンとを重ね合わせ、前記第1補助パターンの先側端より所定間隔だけ離れた位置にその第1補助パターンより小さな形状の第3補助パターンと前記第1補助パターンの元側端位置にその第1補助パターンより小さな形状の第4補助パターンとを前記メインパターンの巻始辺に重なるように重ね合わせ、その重ね合わせた前記メインパターンと前記第1補助パターンと前記第3補助パターンと前記第4補助パターンとの重合体を、前記第1補助パターンの巻始辺が芯金の軸線に沿う状態となるように、かつ、前記メインパターンの前記巻始辺が芯金の軸線に対して元側程離れる傾斜状態になるように、前記第1補助パターンを先行させて順次前記芯金に巻き付けて管状体を形成する管状体の製造方法。
【請求項14】
請求項13に係る管状体の製造方法であって、
重ね合わせた前記重合体を芯金に巻回することに先行させて、細い幅の第1プリプレグテープを前記重合体の略全長に亘って螺旋状に巻回するとともに、前記重合体を芯金に巻回した後に、細い幅の第2プリプレグテープを前記重合体の全長に亘って螺旋状に巻回して管状体を形成する管状体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−78295(P2013−78295A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221246(P2011−221246)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】