釣用ルアー及びルアー本体の製造方法
【課題】形状又は外形を変化させないで又は大きく変化させないで、重心位置又は重さの配分を変化させることができ、しかも、釣用スプーンのような薄肉体にも適用が可能であり、かつ、簡単に製造できる釣用ルアーを提供する。
【解決手段】釣用スプーン1の金属製の薄肉のスプーン本体3を、成形材料の違いに基づき、後側の第1の区画17と前側の第2の区画19とに区分けすることができるように形成する。スプーン本体3の第1の区画17を、タングステン合金から成形し、スプーン本体3の第2の区画19を、このタングステン合金よりも比重の小さな材料で成形しておく。
【解決手段】釣用スプーン1の金属製の薄肉のスプーン本体3を、成形材料の違いに基づき、後側の第1の区画17と前側の第2の区画19とに区分けすることができるように形成する。スプーン本体3の第1の区画17を、タングステン合金から成形し、スプーン本体3の第2の区画19を、このタングステン合金よりも比重の小さな材料で成形しておく。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りに使用される釣用ルアーに関し、より具体的には、例えば内部に空洞を有しないソリッドタイプのルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
釣用ルアーには、使用態様に応じてさまざまな飛行特性や泳ぎが求められる。ある特定のルアーの、例えば水中での泳ぎを若干変更したい場合には、ルアーの形状の変更で対処してきているが、ルアーの形状の変更は、同時にルアーの意匠性や空気抵抗も変更してしまうため、例えば意匠性を低下させず、かつ、飛行特性に影響を与えないようにして特定の泳ぎを得るための形状の決定が難しい。すなわち、ルアーの形状を変更する場合には、意匠性、流水抵抗及び泳ぎ・動き、空気抵抗及び飛距離などすべての特性について最初から検討し、テストを繰り返えさざるを得なかった。また、形状の変更は、必然的に成形金型の変更を伴うこととなる。
【0003】
そこで、タングステン合金製の重量部材を、鉛又は鉛合金製の被覆体によって被覆したルアー本体を有する釣用ルアーが開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
このような構成の釣用ルアーでは、ルアーの形状を変更することなく、タングステン合金製の重量部材の重さ及び位置を変えることにより、ルアー特性に大きな影響のある釣用ルアーの重心位置を調整できる。したがって、ルアーの意匠性や空気抵抗及び流水抵抗はそのまま保持できるので、必要な機能を有する釣用ルアーを簡単に得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−73148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成の釣用ルアーでは、重量部材を予め成形しておき、この重量部材をインサートとしてルアー本体を鉛又は鉛合金で成形しなければならないために、ルアー本体の製造が簡単ではない。また、このような構成の釣用ルアーは、釣用ジグのような太さがあるものには適用できるが、釣用スプーンのような薄肉体あるいは釣用ジグであっても薄いものには適用できない。
【0007】
そこで本発明は、形状又は外形を変化させないで又は大きく変化させないで、重心位置又は重さの配分を変化させることができ、しかも、釣用スプーンのような薄肉体又は薄い釣用ジグにも適用が可能又は容易であり、かつ、簡単に製造できる釣用ルアー及びこのような釣用ルアーのルアー本体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するための本発明の釣用ルアーは、ルアー本体と、このルアー本体に接続されたフックと、を具備し、前記ルアー本体にはライン接続部(例えばラインアイ又はラインホール)が設けられている釣用ルアーであって、前記ルアー本体は、第1の材料で成形された第1の区画(第1の領域、第1の範囲又は第1の部分)と、第2の材料で前記第1の区画と連続して一体的に成形された第2の区画(第2の領域、第2の範囲又は第2の部分)と、を備え、前記第1の材料は、前記第2の材料の比重よりも大きな比重を有しているものである。本発明の釣用ルアーでは、ルアー本体の形状又は外形を変更することなくあるいは大きく変更することなく第1の区画側に重心を移動させることができる。あるいは、第1の区画に大きな重量を配分できる。
【0009】
あるいは、本発明の釣用ルアーは、ルアー本体と、このルアー本体に接続されたフックと、を具備し、前記ルアー本体にはライン接続部(例えばラインアイ又はラインホール)が設けられている釣用ルアーであって、前記ルアー本体は、第1の材料で成形された一端部側と、第2の材料で前記一端部側と連続して一体的に成形された他端部側又は中間部と、を備え、前記第1の材料は、前記第2の材料の比重よりも大きな比重を有しているものである。ルアー本体の一端部側は長さ方向一端部側であり、他端部側又は中間部は長さ方向他端部側又は長さ方向中間部である場合がある。あるいは、ルアー本体の一端部側は幅方向一端部側であり、他端部側又は中間部は幅方向他端部側又は幅方向中間部である場合がある。ここでは、ルアー本体を、第1の材料で成形された一端部側と、第2の材料で一端部側と連続して一体的に成形された中間部と、第1の材料で中間部と連続して一体的に成形された他端部側と、を備えるものとすることができる。あるいは、本発明の釣用ルアーは、ルアー本体と、このルアー本体に接続されたフックと、を具備し、前記ルアー本体にはライン接続部(例えばラインアイ又はラインホール)が設けられている釣用ルアーであって、前記ルアー本体は、第1の材料で成形された中間部と、第2の材料で中間部と連続して一体的に成形された一端部側及び他端部側と、を備え、前記第1の材料は、前記第2の材料の比重よりも大きな比重を有しているものとすることができる。
【0010】
第1の材料は、比重の大きいタングステン合金であることが好ましい。第2の材料は、粉末状であり焼結されるものとすることができ、より具体的には、第1の材料より比重の小さい例えばタングステン合金などとすることができる。第1の材料の比重は13.0以上19.2以下であることが望ましい。第1の材料の比重が13.0未満であると、ルアー本体が軽くなりすぎるし、第1の材料の比重が19.2を越えると、ルアー本体が重くなりすぎるし、第2の材料の比重が15.0を越えるとルアー本体が重くなりすぎる。第1の材料と第2の材料の比重差が3.0未満であると、重心の位置又は重量配分を大きく変更できない。
【0011】
ところで、例えば第1の材料と第2の材料とは同一の焼結温度で一体焼結される。第1の材料のための焼結温度と第2の材料のための焼結温度とが同じであったり大きくは異ならなかったりする場合には問題はないのであるが、第1の材料のための焼結温度と第2の材料のための焼結温度が大きく異なる場合には不都合が生じるおそれがある。例えば、第1の材料がタングステン含有比率の高い(例えば95重量%程度の)高比重のタングステン合金であり、第2の材料がタングステン含有比率の低い(例えば70重量%程度の)低比重のタングステン合金である場合には、第1の材料のための焼結温度は第2の材料のための焼結温度よりもかなり高くなる。ここで、第1の材料のための焼結温度で第1の材料と第2の材料とを一体焼結すると、この焼結温度は第2の材料には高すぎるので第2の材料の液相化部分からの噴出が発生するおそれがある。逆に第2の材料のための焼結温度で第1の材料と第2の材料とを一体焼結すると、この焼結温度は第1の材料には低すぎるので第1の材料の焼結が完了しないおそれがある。第1の材料の焼結が完了しなければ第1の材料の収縮は不十分となり、第2の材料との一体化が阻害されるし、第1の区画の比重も強度も十分な大きさにはならない。そこで、第1の材料のための焼結温度と第2の材料のための焼結温度が大きく異なる場合には、第1の材料及び/又は第2の材料の活性度を調整する活性度調整処理を施しておくことが必要である。活性度調整処理により第1の材料の活性度を向上させれば第1の材料のための焼結温度は低くなり、第2の材料の活性度を低下させれば第2の材料のための焼結温度は高くなる。例えば、第1の材料に融点の低い成分を添加して第1の材料の活性度を向上させる活性度調整処理(成分調整による活性度調整処理)を行えば第1の材料のための焼結温度は低くなる。また、第2の材料に融点の高い成分を添加して第2の材料の活性度を低下させる活性度調整処理(成分調整による活性度調整処理)を行えば第2の材料のための焼結温度は高くなる。あるいは、第1の材料の粉末状化をボールミルを用いて行い、粒度を小さくして第1の材料の活性度を向上させる活性度調整処理(製法調整による活性度調整処理)を行うことによっても第1の材料のための焼結温度を低くすることができる。
【0012】
また、本発明のルアー本体の製造方法は、釣用ルアーに用いられるルアー本体の製造方法であって、前記ルアー本体の第1の区画(第1の領域、第1の範囲又は第1の部分)を形成するための第1の材料と、前記ルアー本体の、前記第1の区画と連続する第2の区画(第2の領域、第2の範囲又は第2の部分)を形成するための第2の材料と、をそれぞれ準備する準備工程と、前記第1の材料と前記第2の材料とを、同時に又はほぼ同時に、前記ルアー本体の成形型に充填して成形する成形工程と、成形された材料を焼結する焼結工程と、を備えているものである。ここでは、ルアー本体は例えば金属製、セラミックス製である。ここで使用される成形型は、ルアー本体の最終形状を成形するためのものであってもよく、あるいは、2次加工(例えば型抜きやプレス)を施して最終的なルアー本体の形状を得るための素材を成形するためのものであってもよい。第1の区画を形成するための第1の材料は、第2の区画を形成するための第2の材料よりも比重を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の釣用ルアーの構造は、重量配分を簡単に調整できるので、要求される種々の機能を確保しやすいものである。また、本発明のルアー本体の製造方法を用いれば、重要配分を調整したルアー本体を簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る釣用スプーンの正面図である。
【図2】スプーン本体の断面図である。
【図3】釣用スプーンのフックを反対側に接続した場合の正面図である。
【図4】スプーン本体の製造工程を示す図であり、混練工程の図である。
【図5】スプーン本体の製造工程を示す図であり、成形工程の図である。
【図6】スプーン本体の製造工程を示す図であり、焼結工程の図である。
【図7】本発明に係る釣用ジグの正面図である。
【図8】ジグ本体の断面図である。
【図9】釣用ジグのフックを反対側に接続した場合の正面図である。
【図10】ジグ本体の製造工程を説明するための図である。
【図11】釣用ジグの変更例を示す図である。
【図12】本発明に係る別の釣用ジグの正面図である。
【図13】別のジグ本体の製造工程を説明するための図であり、成形工程の図である。
【図14】別のジグ本体の製造工程を説明するための図であり、組み合わせ工程の図である。
【図14−1】接続用線状体の変更例を示す図である。
【図15】本発明に係る他の釣用ジグの正面図である。
【図16】ジグ本体の側面図である。
【図17】他のジグ本体の製造工程を説明するための図である。
【図17−1】接続用線状体の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面の参照により説明する。
【0016】
図1は本発明に係る釣用スプーンの正面図、図2はスプーン本体の断面図、図3は釣用スプーンのフックを反対側に接続した場合の正面図である。
【0017】
釣用スプーン1は、金属製の薄肉のスプーン本体(ルアー本体)3と、このスプーン本体3の先端部に形成された取付孔5に取り付けられているアイ7と、スプーン本体3の後端部に形成されている取付孔9に取り付けられているアイ11と、を有し、アイ11には金属製フック13が接続されていて、この釣用スプーン1は、アイ7に釣竿から引き出したライン15を接続して使用するものである。スプーン本体3は、前後(長さ方向)対称形状に形成されているが、成形材料の違いに基づき、後側の第1の区画(第1の領域、第1の範囲又は第1の部分)17(細かい点の部分)と前側の第2の区画(第2の領域、第2の範囲又は第2の部分)19(粗い点の部分)とに区分けすることができ、スプーン本体3の第1の区画17は、タングステン合金(第1の材料)から成形され、スプーン本体3の第2の区画19は、このタングステン合金よりも比重の小さな材料(第2の材料)で成形されている。釣用スプーン1のスプーン本体3は、前側(ライン側)が軽く、後側(フック側)が重いので、全体が同一材料で成形された同じ形のスプーン本体と比較して、ライン先端から釣用スプーン1の重心までの距離が長いので、より遠くに飛ばすのに適したものであり、また、水中でフックがラインに絡みにくいものである。ここで使用される第1の材料のタングステン合金の比重は13.0以上19.2以下、第2の材料の比重は15.0以下であり、第1の材料と第2の材料との比重差は3.0以上である。第2の材料は、例えば、第1の材料とはニッケルなどの含有量が異なるタングステン合金とすることができる。
【0018】
ここで、水中での飛び跳ねるような釣用ルアーの動きが必要な場合あるいは根掛りを防止したい場合には、図3に示すように、アイ7にフック13を接続し、アイ11にライン15を接続して、スプーン本体3の前側が重く、後側が軽くなるようにすることもできる。
【0019】
図4乃至図6はスプーン本体3の製造工程を示す図である。
【0020】
まず、混練機Aに、製造したタングステン合金粉末(第1の材料)21及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダー23を入れて混練し、後側の第1の区画17のための材料25を製造する。また、混練機Bに、例えば第1の材料とは含有金属の種類が異なるように製造したタングステン合金粉末(第2の材料)27及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダー23を入れて混練し、前側の第2の区画19のための材料29を製造する(図4参照)。
【0021】
次に、製造した後側の第1の区画17のための材料25及び前側の第2の区画19のための材料29を用い、ダイ31及びパンチ33を備えたプレス装置35(図5a)を使用してスプーン本体3を成形する。まず、ダイキャビティ37の、第1の区画17を成形する部分に、第1の区画17のための材料25を入れ込むとともに、同時に又はほぼ同時に、ダイキャビティ37の、第2の区画19を成形する部分に、第2の区画19のための材料29を入れ込む(図5b)。第1の区画17のための材料25及び第2の区画19のための材料29をダイキャビティ37内に入れ込んだら、パンチ33を下降させ、第1の区画17のための材料及び第2の区画19のための材料を加圧してスプーン本体3の成形体を成形する(図5c)。
【0022】
その後は、加熱脱脂により、スプーン本体3の成形体から熱可塑性バインダー23を除去するとともに、焼結を行い(図6)、必要に応じてスプーン本体3の成形体に対してバレル研磨によるエッジ部分のバリ除去や表面光沢仕上げを行ってスプーン本体3を製造する。そして、スプーン本体3の取付孔5にアイ7を、取付孔9にアイ11を取り付ける。スプーン本体3の取付孔5、9は、焼結の後で形成しても、成形時に形成してもよい。
【0023】
なお、熱可塑性バインダー23を用いないで、第1の材料21及び第2の材料27をダイキャビティ37に入れ込み、スプーン本体3を成形する場合には、図4の混練工程や図6の加熱脱脂工程は省略される。
【0024】
より具体的には、第1の材料21はタングステンを95重量%含んだ比重の大きいものであるが、融点の低い銅を3乃至5重量%含んでいるので焼結温度は低くなっている。また、第2の材料27はタングステンを70重量%含んだ比重の小さいものであるが、融点の高い鉄を12乃至18重量%含んでいるので、焼結温度は高くなっている。その他の添加金属として、防錆性を高めるためのニッケルを使用したり、焼結温度を高温にするための融点の高いコバルト(特に第2の材料27に対して)を使用することができる。
【0025】
図7は本発明に係る釣用ジグの正面図、図8はジグ本体の断面図、図9は釣用ジグのフックを反対側に接続した場合の正面図である。
【0026】
釣用ジグ39は、小魚を模した金属製のジグ本体(ルアー本体)41と、このジグ本体41の先端部に取り付けられたアイ43と、ジグ本体41の後端部に取り付けられたアイ45と、を有し、アイ45には金属製フック13が接続されていて、この釣用ジグ39は、アイ43に釣竿から引き出したライン15を接続して使用するものである。ジグ本体41は、前後(長さ方向)対称形状に形成されているが、成形材料の違いに基づき、後側の第1の区画(第1の領域、第1の範囲又は第1の部分)47(細かい点の部分)と前側の第2の区画(第2の領域、第2の範囲又は第2の部分)49(粗い点の部分)とに区分けすることができ、ジグ本体41の第1の区画47は、タングステン合金(第1の材料)から成形され、ジグ本体41の第2の区画49は、このタングステン合金よりも比重の小さな材料(第2の材料)で成形されている。釣用ジグ39のジグ本体41は、前側(ライン側)が軽く、後側(フック側)が重いので、全体が同一材料で成形された同じ形のジグ本体と比較して、ライン先端から釣用ジグ39の重心までの距離が長いので、より遠くに飛ばすのに適したものであり、また、水中でフックがラインに絡みにくいものである。ここで使用される第1の材料のタングステン合金の比重は13.0以上19.2以下、第2の材料の比重は15.0以下であり、第1の材料と第2の材料との比重差は3.0以上である。第2の材料は、例えば、第1の材料とはニッケルなどの含有量が異なるタングステン合金とすることができる。
【0027】
ここで、水中での飛び跳ねるような釣用ルアーの動きが必要な場合あるいは根掛りを防止したい場合には、図9に示すように、アイ43にフック13を接続し、アイ45にライン15を接続して、ジグ本体41の前側が重く、後側が軽くなるようにすることもできる。また、フック13が接続されているアイと反対側のアイにアシストフック13−1を接続しておくことができる。あるいは、フック13を用いずにアシストフック13−1のみを用いることもできる。
【0028】
図10はジグ本体41の製造工程を説明するための図である。
【0029】
ジグ本体41を製造するには、まず、製造したタングステン合金粉末(第1の材料)及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダーを混練し、後側の第1の区画47のための材料を製造する。また、例えば第1の材料とは含有金属の種類が異なるように製造したタングステン合金粉末(第2の材料)及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダーを混練し、前側の第2の区画49のための材料を製造する。混練工程は図4に示すようにして行われる。
【0030】
次に、製造した後側の第1の区画47のための材料51及び前側の第2の区画49のための材料53を用い、ダイ55及びパンチ57を備えたプレス装置59(図10a)を使用してジグ本体41を成形する。まず、ダイキャビティ61の、第1の区画47を成形する部分に、第1の区画47のための材料51を入れ込むとともに、同時に又はほぼ同時に、ダイキャビティ61の、第2の区画49を成形する部分に、第2の区画49のための材料53を入れ込む(図10b)。第1の区画47のための材料51及び第2の区画49のための材料53をダイキャビティ61内に入れ込んだら、パンチ57を下降させ、第1の区画47のための材料51及び第2の区画49のための材料53を加圧してジグ本体41の成形体を成形する(図10c)。
【0031】
その後は、加熱脱脂により、ジグ本体41の成形体から熱可塑性バインダーを除去するとともに、焼結を行い、必要に応じてジグ本体41の成形体に対してバレル研磨によるエッジ部分のバリ除去や表面光沢仕上げを行う。ジグ本体41の成形体の加熱脱脂や焼結は図6に示すようにして行われる。そして、ジグ本体41の両端部に取付穴63、65(図8参照)を形成することによりジグ本体41を製造する。アイ43は取付穴63に差し込まれて取り付けられ、アイ45は取付穴65に差し込まれて取り付けられる。
【0032】
なお、熱可塑性バインダーを用いないで、第1の材料及び第2の材料をダイキャビティ61に入れ込み、ジグ本体41を成形する場合には、混練工程や加熱脱脂工程は省略される。
【0033】
また、図11に示すように、釣用ジグ39のジグ本体41を、成形材料の違いに基づき、中央の第1の区画67(細かい点の部分)と、前側の第2の区画69(粗い点の部分)と、後側の第3の区画71(粗い点の部分)とに区分けすることができるように形成してもよい。すなわち、ジグ本体41の第1の区画67を、タングステン合金(第1の材料)から成形し、ジグ本体41の第2の区画69及び第3の区画71を、このタングステン合金よりも比重の小さな材料(第2の材料)で成形することができる。ジグ本体41の第2の区画69及び第3の区画71は同一の材料(第2の材料)で成形される。ジグ本体41のこのような構成では、前後が軽く、中央が重いので、水中で釣用ジグ39が回転しにくく、安定した姿勢を維持しやすくなる。あるいは、ここでのジグ本体41は、第1の区画67と第2の区画69、71とに区分されているとすることもできる。なお、アイ43にアシストフック13−1を接続してもよい。あるいは、フック13を用いずに、アシストフック13−1のみを用いてもよい。
【0034】
ここでは、第1の材料はタングステンを95重量%含んだ比重の大きいものであるが、融点の低い銅を3乃至5重量%含んでいるので焼結温度は低くなっている。また、第2の材料はタングステンを70重量%含んだ比重の小さいものであるが、融点の高い鉄を12乃至18重量%含んでいるので、焼結温度は高くなっている。その他の添加金属として、防錆性を高めるためのニッケルを使用したり、焼結温度を高温にするための融点の高いコバルト(特に第2の材料に対して)を使用することができる。
なお、釣用ジグ39についての構成は例えばメタルバイブレーションルアーについても適用できる。
【0035】
図12は本発明に係る別の釣用ジグの正面図である。
【0036】
別の釣用ジグ73は、小魚を模した金属製のジグ本体(ルアー本体)75と、このジグ本体75を前後に貫通する取付孔77内に配置された金属製の接続用線状体(ワイヤ)79と、接続用線状体79の先端に、ジグ本体75の先端から突出するように形成されたアイ81と、接続用線状体79の後端に、ジグ本体75の後端から突出するように形成されたアイ83と、を有し、アイ83には金属製フック13が接続されていて、この釣用ジグ73は、アイ81に釣竿から引き出したライン15を接続して使用するものである。ジグ本体75は、前後(長さ方向)対称形状に形成されているが、成形材料の違いに基づき、後側の第1の区画85(細かい点の部分)と前側の第2の区画87(粗い点の部分)とに区分けすることができ、ジグ本体75の第1の区画85は、タングステン合金(第1の材料)から成形され、ジグ本体75の第2の区画87は、このタングステン合金よりも比重の小さな材料(第2の材料)で成形されている。釣用ジグ73は、より遠くに飛ばすのに適したものであり、また、水中でフックがラインに絡みにくいものである。ここで使用される第1の材料のタングステン合金の比重は13.0以上19.2以下、第2の材料の比重は15.0以下であり、第1の材料と第2の材料との比重差は3.0以上である。第2の材料は、例えば、第1の材料とはニッケルなどの含有量が異なるタングステン合金とすることができる。なお、水中での飛び跳ねるような釣用ルアーの動きが必要な場合あるいは根掛りを防止したい場合には、アイ81にフック13を接続し、アイ83にライン15を接続することができる。なお、アイ81にアシストフック13−1を接続してもよい。あるいは、フック13を用いずに、アシストフック13−1のみを用いてもよい。
【0037】
図13及び図14はジグ本体75の製造工程を説明するための図である。
【0038】
ジグ本体75を製造するには、まず、製造したタングステン合金粉末(第1の材料)及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダーを混練し、後側の第1の区画85のための材料を製造する。また、例えば第1の材料とは含有金属の種類が異なるように製造したタングステン合金粉末(第2の材料)及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダーを混練し、前側の第2の区画87のための材料を製造する。混練工程は図4に示すようにして行われる。
【0039】
次に、製造した後側の第1の区画85のための材料51及び前側の第2の区画87のための材料53を用い、ダイ89及びパンチ91を備えたプレス装置93(図13a)を使用してジグ本体75の半割り体を成形する。まず、ダイキャビティ95の、半割り体の第1の区画85を成形する部分に、第1の区画85のための材料51を入れ込むとともに、同時に又はほぼ同時に、ダイキャビティ95の、半割り体の第2の区画87を成形する部分に、第2の区画87のための材料53を入れ込む(図13b)。第1の区画85のための材料51及び第2の区画87のための材料53をダイキャビティ95内に入れ込んだら、パンチ91を下降させ、第1の区画85のための材料51及び第2の区画87のための材料53を加圧してジグ本体75の半割り体の成形体を成形する(図13c)。
【0040】
その後は、加熱脱脂により、ジグ本体75の半割り体の成形体から熱可塑性バインダーを除去するとともに、焼結を行い、必要に応じてジグ本体75の半割り体の成形体に対してバレル研磨によるエッジ部分のバリ除去や表面光沢仕上げを行う。ジグ本体75の半割り体の成形体の加熱脱脂や焼結は図6に示すようにして行われる。
【0041】
そして、成形した半割り体97の取付孔形成溝99に接続用線状体79を配置し、この半割り体97にもう一つの半割り体97を接着(例えば拡散接合又はロウ付け)してジグ本体75を製造する(図14)。また、接続用線状体79の回転や抜けを防止するために、接続用線状体79に曲り部又はU字状部82を形成し、この曲り部又はU字状部82に対応する曲り個所又はU字状個所84を取付孔形成溝99に形成しておいてもよい(図14−1)。
【0042】
なお、熱可塑性バインダーを用いないで、第1の材料及び第2の材料をダイキャビティ95に入れ込み、ジグ本体75の半割り体を成形する場合には、混練工程や加熱脱脂工程は省略される。
【0043】
より具体的には、第1の材料はタングステンを95重量%含んだ比重の大きいものであるが、融点の低い銅を3乃至5重量%含んでいるので焼結温度は低くなっている。また、第2の材料はタングステンを70重量%含んだ比重の小さいものであるが、融点の高い鉄を12乃至18重量%含んでいるので、焼結温度は高くなっている。その他の添加金属として、防錆性を高めるためのニッケルを使用したり、焼結温度を高温にするための融点の高いコバルト(特に第2の材料に対して)を使用することができる。
【0044】
図15は本発明に係る他の釣用ジグの正面図、図16はジグ本体の側面図である。
【0045】
他の釣用ジグ100は、釣用ジグ73と同様の形状に形成され、小魚を模した金属製のジグ本体(ルアー本体)101と、このジグ本体101を前後に貫通する取付孔103内に配置された金属製の接続用線状体(ワイヤ)105と、接続用線状体105の先端に、ジグ本体101の先端から突出するように形成されたアイ107と、接続用線状体105の後端に、ジグ本体101の後端から突出するように形成されたアイ108と、を有していて、アイ108には金属製フック13が接続されている。この釣用ジグ100は、アイ107に釣竿から引き出したライン15を接続して使用するものである。ジグ本体101は、厚さ方向に対称形状に形成されているが、成形材料の違いに基づき、上側の第1の区画109(細かい点の部分)と下側の第2の区画111(粗い点の部分)とに区分けされていて、ジグ本体101の第1の区画109は、タングステン合金(第1の材料)から成形され、ジグ本体101の第2の区画111は、このタングステン合金よりも比重の小さな材料(第2の材料)で成形されている。ここで使用される第1の材料のタングステン合金の比重は13.0以上19.2以下、第2の材料の比重は15.0以下であり、第1の材料と第2の材料との比重差は3.0以上である。第2の材料は、例えば、第1の材料とはニッケルなどの含有量が異なるタングステン合金とすることができる。
【0046】
図17はジグ本体101の製造工程を説明するための図である。
【0047】
ジグ本体101を製造するには、まず、製造したタングステン合金粉末(第1の材料)及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダーを混練し、上側の第1の区画109のための材料を製造する。また、例えば第1の材料とは含有金属の種類が異なるように製造したタングステン合金粉末(第2の材料)及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダーを混練し、下側の第2の区画111のための材料を製造する。混練工程は図4に示すようにして行われる。
【0048】
製造した第1の材料により、ダイ及びパンチを備えたプレス装置(図13a参照)を使用してジグ本体101の半割り体を成形する。また、製造した第2の材料により、ダイ及びパンチを備えたプレス装置(図13a参照)を使用してジグ本体101の半割り体を成形する。
【0049】
そして、加熱脱脂により、ジグ本体101の半割り体の成形体から熱可塑性バインダーを除去するとともに、焼結を行い、必要に応じてジグ本体101の半割り体の成形体に対してバレル研磨によるエッジ部分のバリ除去や表面光沢仕上げを行う。ジグ本体101の半割り体の成形体の加熱脱脂や焼結は図6に示すようにして行われる。
【0050】
そして、成形した半割り体113の取付孔形成溝115に接続用線状体105を配置し、この半割り体113にもう一つの半割り体117を接着(例えば拡散接合又はロウ付け)してジグ本体101を製造する。また、接続用線状体105の回転や抜けを防止するために、接続用線状体105に曲り部又はU字状部119を形成し、この曲り部又はU字状部119に対応する曲り個所又はU字状個所121を取付孔形成溝115に形成しておいてもよい(図17−1)。
【0051】
なお、熱可塑性バインダーを用いないで第1の材料及び第2の材料によりジグ本体101の半割り体を成形する場合には、混練工程や加熱脱脂工程は省略される。
【0052】
より具体的には、第1の材料はタングステンを95重量%含んだ比重の大きいものであるが、融点の低い銅を3乃至5重量%含んでいるので焼結温度は低くなっている。また、第2の材料はタングステンを70重量%含んだ比重の小さいものであるが、融点の高い鉄を12乃至18重量%含んでいるので、焼結温度は高くなっている。その他の添加金属として、防錆性を高めるためのニッケルを使用したり、焼結温度を高温にするための融点の高いコバルト(特に第2の材料に対して)を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の釣用ルアーは、粉末冶金法などを用いて製造することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 釣用スプーン(釣用ルアー)
3 スプーン本体(ルアー本体)
7、43、81、107 アイ(ラインアイ)
13 フック
13−1 アシストフック
17、47、67、85、109 第1の区画
19、49、69、71、87、111 第2の区画
21 タングステン合金粉末(第1の材料)
27 タングステン合金粉末(第2の材料)
39、73、99、100 釣用ジグ(釣用ルアー)
41、75、101 ジグ本体(ルアー本体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りに使用される釣用ルアーに関し、より具体的には、例えば内部に空洞を有しないソリッドタイプのルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
釣用ルアーには、使用態様に応じてさまざまな飛行特性や泳ぎが求められる。ある特定のルアーの、例えば水中での泳ぎを若干変更したい場合には、ルアーの形状の変更で対処してきているが、ルアーの形状の変更は、同時にルアーの意匠性や空気抵抗も変更してしまうため、例えば意匠性を低下させず、かつ、飛行特性に影響を与えないようにして特定の泳ぎを得るための形状の決定が難しい。すなわち、ルアーの形状を変更する場合には、意匠性、流水抵抗及び泳ぎ・動き、空気抵抗及び飛距離などすべての特性について最初から検討し、テストを繰り返えさざるを得なかった。また、形状の変更は、必然的に成形金型の変更を伴うこととなる。
【0003】
そこで、タングステン合金製の重量部材を、鉛又は鉛合金製の被覆体によって被覆したルアー本体を有する釣用ルアーが開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
このような構成の釣用ルアーでは、ルアーの形状を変更することなく、タングステン合金製の重量部材の重さ及び位置を変えることにより、ルアー特性に大きな影響のある釣用ルアーの重心位置を調整できる。したがって、ルアーの意匠性や空気抵抗及び流水抵抗はそのまま保持できるので、必要な機能を有する釣用ルアーを簡単に得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−73148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成の釣用ルアーでは、重量部材を予め成形しておき、この重量部材をインサートとしてルアー本体を鉛又は鉛合金で成形しなければならないために、ルアー本体の製造が簡単ではない。また、このような構成の釣用ルアーは、釣用ジグのような太さがあるものには適用できるが、釣用スプーンのような薄肉体あるいは釣用ジグであっても薄いものには適用できない。
【0007】
そこで本発明は、形状又は外形を変化させないで又は大きく変化させないで、重心位置又は重さの配分を変化させることができ、しかも、釣用スプーンのような薄肉体又は薄い釣用ジグにも適用が可能又は容易であり、かつ、簡単に製造できる釣用ルアー及びこのような釣用ルアーのルアー本体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するための本発明の釣用ルアーは、ルアー本体と、このルアー本体に接続されたフックと、を具備し、前記ルアー本体にはライン接続部(例えばラインアイ又はラインホール)が設けられている釣用ルアーであって、前記ルアー本体は、第1の材料で成形された第1の区画(第1の領域、第1の範囲又は第1の部分)と、第2の材料で前記第1の区画と連続して一体的に成形された第2の区画(第2の領域、第2の範囲又は第2の部分)と、を備え、前記第1の材料は、前記第2の材料の比重よりも大きな比重を有しているものである。本発明の釣用ルアーでは、ルアー本体の形状又は外形を変更することなくあるいは大きく変更することなく第1の区画側に重心を移動させることができる。あるいは、第1の区画に大きな重量を配分できる。
【0009】
あるいは、本発明の釣用ルアーは、ルアー本体と、このルアー本体に接続されたフックと、を具備し、前記ルアー本体にはライン接続部(例えばラインアイ又はラインホール)が設けられている釣用ルアーであって、前記ルアー本体は、第1の材料で成形された一端部側と、第2の材料で前記一端部側と連続して一体的に成形された他端部側又は中間部と、を備え、前記第1の材料は、前記第2の材料の比重よりも大きな比重を有しているものである。ルアー本体の一端部側は長さ方向一端部側であり、他端部側又は中間部は長さ方向他端部側又は長さ方向中間部である場合がある。あるいは、ルアー本体の一端部側は幅方向一端部側であり、他端部側又は中間部は幅方向他端部側又は幅方向中間部である場合がある。ここでは、ルアー本体を、第1の材料で成形された一端部側と、第2の材料で一端部側と連続して一体的に成形された中間部と、第1の材料で中間部と連続して一体的に成形された他端部側と、を備えるものとすることができる。あるいは、本発明の釣用ルアーは、ルアー本体と、このルアー本体に接続されたフックと、を具備し、前記ルアー本体にはライン接続部(例えばラインアイ又はラインホール)が設けられている釣用ルアーであって、前記ルアー本体は、第1の材料で成形された中間部と、第2の材料で中間部と連続して一体的に成形された一端部側及び他端部側と、を備え、前記第1の材料は、前記第2の材料の比重よりも大きな比重を有しているものとすることができる。
【0010】
第1の材料は、比重の大きいタングステン合金であることが好ましい。第2の材料は、粉末状であり焼結されるものとすることができ、より具体的には、第1の材料より比重の小さい例えばタングステン合金などとすることができる。第1の材料の比重は13.0以上19.2以下であることが望ましい。第1の材料の比重が13.0未満であると、ルアー本体が軽くなりすぎるし、第1の材料の比重が19.2を越えると、ルアー本体が重くなりすぎるし、第2の材料の比重が15.0を越えるとルアー本体が重くなりすぎる。第1の材料と第2の材料の比重差が3.0未満であると、重心の位置又は重量配分を大きく変更できない。
【0011】
ところで、例えば第1の材料と第2の材料とは同一の焼結温度で一体焼結される。第1の材料のための焼結温度と第2の材料のための焼結温度とが同じであったり大きくは異ならなかったりする場合には問題はないのであるが、第1の材料のための焼結温度と第2の材料のための焼結温度が大きく異なる場合には不都合が生じるおそれがある。例えば、第1の材料がタングステン含有比率の高い(例えば95重量%程度の)高比重のタングステン合金であり、第2の材料がタングステン含有比率の低い(例えば70重量%程度の)低比重のタングステン合金である場合には、第1の材料のための焼結温度は第2の材料のための焼結温度よりもかなり高くなる。ここで、第1の材料のための焼結温度で第1の材料と第2の材料とを一体焼結すると、この焼結温度は第2の材料には高すぎるので第2の材料の液相化部分からの噴出が発生するおそれがある。逆に第2の材料のための焼結温度で第1の材料と第2の材料とを一体焼結すると、この焼結温度は第1の材料には低すぎるので第1の材料の焼結が完了しないおそれがある。第1の材料の焼結が完了しなければ第1の材料の収縮は不十分となり、第2の材料との一体化が阻害されるし、第1の区画の比重も強度も十分な大きさにはならない。そこで、第1の材料のための焼結温度と第2の材料のための焼結温度が大きく異なる場合には、第1の材料及び/又は第2の材料の活性度を調整する活性度調整処理を施しておくことが必要である。活性度調整処理により第1の材料の活性度を向上させれば第1の材料のための焼結温度は低くなり、第2の材料の活性度を低下させれば第2の材料のための焼結温度は高くなる。例えば、第1の材料に融点の低い成分を添加して第1の材料の活性度を向上させる活性度調整処理(成分調整による活性度調整処理)を行えば第1の材料のための焼結温度は低くなる。また、第2の材料に融点の高い成分を添加して第2の材料の活性度を低下させる活性度調整処理(成分調整による活性度調整処理)を行えば第2の材料のための焼結温度は高くなる。あるいは、第1の材料の粉末状化をボールミルを用いて行い、粒度を小さくして第1の材料の活性度を向上させる活性度調整処理(製法調整による活性度調整処理)を行うことによっても第1の材料のための焼結温度を低くすることができる。
【0012】
また、本発明のルアー本体の製造方法は、釣用ルアーに用いられるルアー本体の製造方法であって、前記ルアー本体の第1の区画(第1の領域、第1の範囲又は第1の部分)を形成するための第1の材料と、前記ルアー本体の、前記第1の区画と連続する第2の区画(第2の領域、第2の範囲又は第2の部分)を形成するための第2の材料と、をそれぞれ準備する準備工程と、前記第1の材料と前記第2の材料とを、同時に又はほぼ同時に、前記ルアー本体の成形型に充填して成形する成形工程と、成形された材料を焼結する焼結工程と、を備えているものである。ここでは、ルアー本体は例えば金属製、セラミックス製である。ここで使用される成形型は、ルアー本体の最終形状を成形するためのものであってもよく、あるいは、2次加工(例えば型抜きやプレス)を施して最終的なルアー本体の形状を得るための素材を成形するためのものであってもよい。第1の区画を形成するための第1の材料は、第2の区画を形成するための第2の材料よりも比重を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の釣用ルアーの構造は、重量配分を簡単に調整できるので、要求される種々の機能を確保しやすいものである。また、本発明のルアー本体の製造方法を用いれば、重要配分を調整したルアー本体を簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る釣用スプーンの正面図である。
【図2】スプーン本体の断面図である。
【図3】釣用スプーンのフックを反対側に接続した場合の正面図である。
【図4】スプーン本体の製造工程を示す図であり、混練工程の図である。
【図5】スプーン本体の製造工程を示す図であり、成形工程の図である。
【図6】スプーン本体の製造工程を示す図であり、焼結工程の図である。
【図7】本発明に係る釣用ジグの正面図である。
【図8】ジグ本体の断面図である。
【図9】釣用ジグのフックを反対側に接続した場合の正面図である。
【図10】ジグ本体の製造工程を説明するための図である。
【図11】釣用ジグの変更例を示す図である。
【図12】本発明に係る別の釣用ジグの正面図である。
【図13】別のジグ本体の製造工程を説明するための図であり、成形工程の図である。
【図14】別のジグ本体の製造工程を説明するための図であり、組み合わせ工程の図である。
【図14−1】接続用線状体の変更例を示す図である。
【図15】本発明に係る他の釣用ジグの正面図である。
【図16】ジグ本体の側面図である。
【図17】他のジグ本体の製造工程を説明するための図である。
【図17−1】接続用線状体の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面の参照により説明する。
【0016】
図1は本発明に係る釣用スプーンの正面図、図2はスプーン本体の断面図、図3は釣用スプーンのフックを反対側に接続した場合の正面図である。
【0017】
釣用スプーン1は、金属製の薄肉のスプーン本体(ルアー本体)3と、このスプーン本体3の先端部に形成された取付孔5に取り付けられているアイ7と、スプーン本体3の後端部に形成されている取付孔9に取り付けられているアイ11と、を有し、アイ11には金属製フック13が接続されていて、この釣用スプーン1は、アイ7に釣竿から引き出したライン15を接続して使用するものである。スプーン本体3は、前後(長さ方向)対称形状に形成されているが、成形材料の違いに基づき、後側の第1の区画(第1の領域、第1の範囲又は第1の部分)17(細かい点の部分)と前側の第2の区画(第2の領域、第2の範囲又は第2の部分)19(粗い点の部分)とに区分けすることができ、スプーン本体3の第1の区画17は、タングステン合金(第1の材料)から成形され、スプーン本体3の第2の区画19は、このタングステン合金よりも比重の小さな材料(第2の材料)で成形されている。釣用スプーン1のスプーン本体3は、前側(ライン側)が軽く、後側(フック側)が重いので、全体が同一材料で成形された同じ形のスプーン本体と比較して、ライン先端から釣用スプーン1の重心までの距離が長いので、より遠くに飛ばすのに適したものであり、また、水中でフックがラインに絡みにくいものである。ここで使用される第1の材料のタングステン合金の比重は13.0以上19.2以下、第2の材料の比重は15.0以下であり、第1の材料と第2の材料との比重差は3.0以上である。第2の材料は、例えば、第1の材料とはニッケルなどの含有量が異なるタングステン合金とすることができる。
【0018】
ここで、水中での飛び跳ねるような釣用ルアーの動きが必要な場合あるいは根掛りを防止したい場合には、図3に示すように、アイ7にフック13を接続し、アイ11にライン15を接続して、スプーン本体3の前側が重く、後側が軽くなるようにすることもできる。
【0019】
図4乃至図6はスプーン本体3の製造工程を示す図である。
【0020】
まず、混練機Aに、製造したタングステン合金粉末(第1の材料)21及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダー23を入れて混練し、後側の第1の区画17のための材料25を製造する。また、混練機Bに、例えば第1の材料とは含有金属の種類が異なるように製造したタングステン合金粉末(第2の材料)27及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダー23を入れて混練し、前側の第2の区画19のための材料29を製造する(図4参照)。
【0021】
次に、製造した後側の第1の区画17のための材料25及び前側の第2の区画19のための材料29を用い、ダイ31及びパンチ33を備えたプレス装置35(図5a)を使用してスプーン本体3を成形する。まず、ダイキャビティ37の、第1の区画17を成形する部分に、第1の区画17のための材料25を入れ込むとともに、同時に又はほぼ同時に、ダイキャビティ37の、第2の区画19を成形する部分に、第2の区画19のための材料29を入れ込む(図5b)。第1の区画17のための材料25及び第2の区画19のための材料29をダイキャビティ37内に入れ込んだら、パンチ33を下降させ、第1の区画17のための材料及び第2の区画19のための材料を加圧してスプーン本体3の成形体を成形する(図5c)。
【0022】
その後は、加熱脱脂により、スプーン本体3の成形体から熱可塑性バインダー23を除去するとともに、焼結を行い(図6)、必要に応じてスプーン本体3の成形体に対してバレル研磨によるエッジ部分のバリ除去や表面光沢仕上げを行ってスプーン本体3を製造する。そして、スプーン本体3の取付孔5にアイ7を、取付孔9にアイ11を取り付ける。スプーン本体3の取付孔5、9は、焼結の後で形成しても、成形時に形成してもよい。
【0023】
なお、熱可塑性バインダー23を用いないで、第1の材料21及び第2の材料27をダイキャビティ37に入れ込み、スプーン本体3を成形する場合には、図4の混練工程や図6の加熱脱脂工程は省略される。
【0024】
より具体的には、第1の材料21はタングステンを95重量%含んだ比重の大きいものであるが、融点の低い銅を3乃至5重量%含んでいるので焼結温度は低くなっている。また、第2の材料27はタングステンを70重量%含んだ比重の小さいものであるが、融点の高い鉄を12乃至18重量%含んでいるので、焼結温度は高くなっている。その他の添加金属として、防錆性を高めるためのニッケルを使用したり、焼結温度を高温にするための融点の高いコバルト(特に第2の材料27に対して)を使用することができる。
【0025】
図7は本発明に係る釣用ジグの正面図、図8はジグ本体の断面図、図9は釣用ジグのフックを反対側に接続した場合の正面図である。
【0026】
釣用ジグ39は、小魚を模した金属製のジグ本体(ルアー本体)41と、このジグ本体41の先端部に取り付けられたアイ43と、ジグ本体41の後端部に取り付けられたアイ45と、を有し、アイ45には金属製フック13が接続されていて、この釣用ジグ39は、アイ43に釣竿から引き出したライン15を接続して使用するものである。ジグ本体41は、前後(長さ方向)対称形状に形成されているが、成形材料の違いに基づき、後側の第1の区画(第1の領域、第1の範囲又は第1の部分)47(細かい点の部分)と前側の第2の区画(第2の領域、第2の範囲又は第2の部分)49(粗い点の部分)とに区分けすることができ、ジグ本体41の第1の区画47は、タングステン合金(第1の材料)から成形され、ジグ本体41の第2の区画49は、このタングステン合金よりも比重の小さな材料(第2の材料)で成形されている。釣用ジグ39のジグ本体41は、前側(ライン側)が軽く、後側(フック側)が重いので、全体が同一材料で成形された同じ形のジグ本体と比較して、ライン先端から釣用ジグ39の重心までの距離が長いので、より遠くに飛ばすのに適したものであり、また、水中でフックがラインに絡みにくいものである。ここで使用される第1の材料のタングステン合金の比重は13.0以上19.2以下、第2の材料の比重は15.0以下であり、第1の材料と第2の材料との比重差は3.0以上である。第2の材料は、例えば、第1の材料とはニッケルなどの含有量が異なるタングステン合金とすることができる。
【0027】
ここで、水中での飛び跳ねるような釣用ルアーの動きが必要な場合あるいは根掛りを防止したい場合には、図9に示すように、アイ43にフック13を接続し、アイ45にライン15を接続して、ジグ本体41の前側が重く、後側が軽くなるようにすることもできる。また、フック13が接続されているアイと反対側のアイにアシストフック13−1を接続しておくことができる。あるいは、フック13を用いずにアシストフック13−1のみを用いることもできる。
【0028】
図10はジグ本体41の製造工程を説明するための図である。
【0029】
ジグ本体41を製造するには、まず、製造したタングステン合金粉末(第1の材料)及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダーを混練し、後側の第1の区画47のための材料を製造する。また、例えば第1の材料とは含有金属の種類が異なるように製造したタングステン合金粉末(第2の材料)及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダーを混練し、前側の第2の区画49のための材料を製造する。混練工程は図4に示すようにして行われる。
【0030】
次に、製造した後側の第1の区画47のための材料51及び前側の第2の区画49のための材料53を用い、ダイ55及びパンチ57を備えたプレス装置59(図10a)を使用してジグ本体41を成形する。まず、ダイキャビティ61の、第1の区画47を成形する部分に、第1の区画47のための材料51を入れ込むとともに、同時に又はほぼ同時に、ダイキャビティ61の、第2の区画49を成形する部分に、第2の区画49のための材料53を入れ込む(図10b)。第1の区画47のための材料51及び第2の区画49のための材料53をダイキャビティ61内に入れ込んだら、パンチ57を下降させ、第1の区画47のための材料51及び第2の区画49のための材料53を加圧してジグ本体41の成形体を成形する(図10c)。
【0031】
その後は、加熱脱脂により、ジグ本体41の成形体から熱可塑性バインダーを除去するとともに、焼結を行い、必要に応じてジグ本体41の成形体に対してバレル研磨によるエッジ部分のバリ除去や表面光沢仕上げを行う。ジグ本体41の成形体の加熱脱脂や焼結は図6に示すようにして行われる。そして、ジグ本体41の両端部に取付穴63、65(図8参照)を形成することによりジグ本体41を製造する。アイ43は取付穴63に差し込まれて取り付けられ、アイ45は取付穴65に差し込まれて取り付けられる。
【0032】
なお、熱可塑性バインダーを用いないで、第1の材料及び第2の材料をダイキャビティ61に入れ込み、ジグ本体41を成形する場合には、混練工程や加熱脱脂工程は省略される。
【0033】
また、図11に示すように、釣用ジグ39のジグ本体41を、成形材料の違いに基づき、中央の第1の区画67(細かい点の部分)と、前側の第2の区画69(粗い点の部分)と、後側の第3の区画71(粗い点の部分)とに区分けすることができるように形成してもよい。すなわち、ジグ本体41の第1の区画67を、タングステン合金(第1の材料)から成形し、ジグ本体41の第2の区画69及び第3の区画71を、このタングステン合金よりも比重の小さな材料(第2の材料)で成形することができる。ジグ本体41の第2の区画69及び第3の区画71は同一の材料(第2の材料)で成形される。ジグ本体41のこのような構成では、前後が軽く、中央が重いので、水中で釣用ジグ39が回転しにくく、安定した姿勢を維持しやすくなる。あるいは、ここでのジグ本体41は、第1の区画67と第2の区画69、71とに区分されているとすることもできる。なお、アイ43にアシストフック13−1を接続してもよい。あるいは、フック13を用いずに、アシストフック13−1のみを用いてもよい。
【0034】
ここでは、第1の材料はタングステンを95重量%含んだ比重の大きいものであるが、融点の低い銅を3乃至5重量%含んでいるので焼結温度は低くなっている。また、第2の材料はタングステンを70重量%含んだ比重の小さいものであるが、融点の高い鉄を12乃至18重量%含んでいるので、焼結温度は高くなっている。その他の添加金属として、防錆性を高めるためのニッケルを使用したり、焼結温度を高温にするための融点の高いコバルト(特に第2の材料に対して)を使用することができる。
なお、釣用ジグ39についての構成は例えばメタルバイブレーションルアーについても適用できる。
【0035】
図12は本発明に係る別の釣用ジグの正面図である。
【0036】
別の釣用ジグ73は、小魚を模した金属製のジグ本体(ルアー本体)75と、このジグ本体75を前後に貫通する取付孔77内に配置された金属製の接続用線状体(ワイヤ)79と、接続用線状体79の先端に、ジグ本体75の先端から突出するように形成されたアイ81と、接続用線状体79の後端に、ジグ本体75の後端から突出するように形成されたアイ83と、を有し、アイ83には金属製フック13が接続されていて、この釣用ジグ73は、アイ81に釣竿から引き出したライン15を接続して使用するものである。ジグ本体75は、前後(長さ方向)対称形状に形成されているが、成形材料の違いに基づき、後側の第1の区画85(細かい点の部分)と前側の第2の区画87(粗い点の部分)とに区分けすることができ、ジグ本体75の第1の区画85は、タングステン合金(第1の材料)から成形され、ジグ本体75の第2の区画87は、このタングステン合金よりも比重の小さな材料(第2の材料)で成形されている。釣用ジグ73は、より遠くに飛ばすのに適したものであり、また、水中でフックがラインに絡みにくいものである。ここで使用される第1の材料のタングステン合金の比重は13.0以上19.2以下、第2の材料の比重は15.0以下であり、第1の材料と第2の材料との比重差は3.0以上である。第2の材料は、例えば、第1の材料とはニッケルなどの含有量が異なるタングステン合金とすることができる。なお、水中での飛び跳ねるような釣用ルアーの動きが必要な場合あるいは根掛りを防止したい場合には、アイ81にフック13を接続し、アイ83にライン15を接続することができる。なお、アイ81にアシストフック13−1を接続してもよい。あるいは、フック13を用いずに、アシストフック13−1のみを用いてもよい。
【0037】
図13及び図14はジグ本体75の製造工程を説明するための図である。
【0038】
ジグ本体75を製造するには、まず、製造したタングステン合金粉末(第1の材料)及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダーを混練し、後側の第1の区画85のための材料を製造する。また、例えば第1の材料とは含有金属の種類が異なるように製造したタングステン合金粉末(第2の材料)及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダーを混練し、前側の第2の区画87のための材料を製造する。混練工程は図4に示すようにして行われる。
【0039】
次に、製造した後側の第1の区画85のための材料51及び前側の第2の区画87のための材料53を用い、ダイ89及びパンチ91を備えたプレス装置93(図13a)を使用してジグ本体75の半割り体を成形する。まず、ダイキャビティ95の、半割り体の第1の区画85を成形する部分に、第1の区画85のための材料51を入れ込むとともに、同時に又はほぼ同時に、ダイキャビティ95の、半割り体の第2の区画87を成形する部分に、第2の区画87のための材料53を入れ込む(図13b)。第1の区画85のための材料51及び第2の区画87のための材料53をダイキャビティ95内に入れ込んだら、パンチ91を下降させ、第1の区画85のための材料51及び第2の区画87のための材料53を加圧してジグ本体75の半割り体の成形体を成形する(図13c)。
【0040】
その後は、加熱脱脂により、ジグ本体75の半割り体の成形体から熱可塑性バインダーを除去するとともに、焼結を行い、必要に応じてジグ本体75の半割り体の成形体に対してバレル研磨によるエッジ部分のバリ除去や表面光沢仕上げを行う。ジグ本体75の半割り体の成形体の加熱脱脂や焼結は図6に示すようにして行われる。
【0041】
そして、成形した半割り体97の取付孔形成溝99に接続用線状体79を配置し、この半割り体97にもう一つの半割り体97を接着(例えば拡散接合又はロウ付け)してジグ本体75を製造する(図14)。また、接続用線状体79の回転や抜けを防止するために、接続用線状体79に曲り部又はU字状部82を形成し、この曲り部又はU字状部82に対応する曲り個所又はU字状個所84を取付孔形成溝99に形成しておいてもよい(図14−1)。
【0042】
なお、熱可塑性バインダーを用いないで、第1の材料及び第2の材料をダイキャビティ95に入れ込み、ジグ本体75の半割り体を成形する場合には、混練工程や加熱脱脂工程は省略される。
【0043】
より具体的には、第1の材料はタングステンを95重量%含んだ比重の大きいものであるが、融点の低い銅を3乃至5重量%含んでいるので焼結温度は低くなっている。また、第2の材料はタングステンを70重量%含んだ比重の小さいものであるが、融点の高い鉄を12乃至18重量%含んでいるので、焼結温度は高くなっている。その他の添加金属として、防錆性を高めるためのニッケルを使用したり、焼結温度を高温にするための融点の高いコバルト(特に第2の材料に対して)を使用することができる。
【0044】
図15は本発明に係る他の釣用ジグの正面図、図16はジグ本体の側面図である。
【0045】
他の釣用ジグ100は、釣用ジグ73と同様の形状に形成され、小魚を模した金属製のジグ本体(ルアー本体)101と、このジグ本体101を前後に貫通する取付孔103内に配置された金属製の接続用線状体(ワイヤ)105と、接続用線状体105の先端に、ジグ本体101の先端から突出するように形成されたアイ107と、接続用線状体105の後端に、ジグ本体101の後端から突出するように形成されたアイ108と、を有していて、アイ108には金属製フック13が接続されている。この釣用ジグ100は、アイ107に釣竿から引き出したライン15を接続して使用するものである。ジグ本体101は、厚さ方向に対称形状に形成されているが、成形材料の違いに基づき、上側の第1の区画109(細かい点の部分)と下側の第2の区画111(粗い点の部分)とに区分けされていて、ジグ本体101の第1の区画109は、タングステン合金(第1の材料)から成形され、ジグ本体101の第2の区画111は、このタングステン合金よりも比重の小さな材料(第2の材料)で成形されている。ここで使用される第1の材料のタングステン合金の比重は13.0以上19.2以下、第2の材料の比重は15.0以下であり、第1の材料と第2の材料との比重差は3.0以上である。第2の材料は、例えば、第1の材料とはニッケルなどの含有量が異なるタングステン合金とすることができる。
【0046】
図17はジグ本体101の製造工程を説明するための図である。
【0047】
ジグ本体101を製造するには、まず、製造したタングステン合金粉末(第1の材料)及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダーを混練し、上側の第1の区画109のための材料を製造する。また、例えば第1の材料とは含有金属の種類が異なるように製造したタングステン合金粉末(第2の材料)及び潤滑剤を含んだ熱可塑性バインダーを混練し、下側の第2の区画111のための材料を製造する。混練工程は図4に示すようにして行われる。
【0048】
製造した第1の材料により、ダイ及びパンチを備えたプレス装置(図13a参照)を使用してジグ本体101の半割り体を成形する。また、製造した第2の材料により、ダイ及びパンチを備えたプレス装置(図13a参照)を使用してジグ本体101の半割り体を成形する。
【0049】
そして、加熱脱脂により、ジグ本体101の半割り体の成形体から熱可塑性バインダーを除去するとともに、焼結を行い、必要に応じてジグ本体101の半割り体の成形体に対してバレル研磨によるエッジ部分のバリ除去や表面光沢仕上げを行う。ジグ本体101の半割り体の成形体の加熱脱脂や焼結は図6に示すようにして行われる。
【0050】
そして、成形した半割り体113の取付孔形成溝115に接続用線状体105を配置し、この半割り体113にもう一つの半割り体117を接着(例えば拡散接合又はロウ付け)してジグ本体101を製造する。また、接続用線状体105の回転や抜けを防止するために、接続用線状体105に曲り部又はU字状部119を形成し、この曲り部又はU字状部119に対応する曲り個所又はU字状個所121を取付孔形成溝115に形成しておいてもよい(図17−1)。
【0051】
なお、熱可塑性バインダーを用いないで第1の材料及び第2の材料によりジグ本体101の半割り体を成形する場合には、混練工程や加熱脱脂工程は省略される。
【0052】
より具体的には、第1の材料はタングステンを95重量%含んだ比重の大きいものであるが、融点の低い銅を3乃至5重量%含んでいるので焼結温度は低くなっている。また、第2の材料はタングステンを70重量%含んだ比重の小さいものであるが、融点の高い鉄を12乃至18重量%含んでいるので、焼結温度は高くなっている。その他の添加金属として、防錆性を高めるためのニッケルを使用したり、焼結温度を高温にするための融点の高いコバルト(特に第2の材料に対して)を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の釣用ルアーは、粉末冶金法などを用いて製造することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 釣用スプーン(釣用ルアー)
3 スプーン本体(ルアー本体)
7、43、81、107 アイ(ラインアイ)
13 フック
13−1 アシストフック
17、47、67、85、109 第1の区画
19、49、69、71、87、111 第2の区画
21 タングステン合金粉末(第1の材料)
27 タングステン合金粉末(第2の材料)
39、73、99、100 釣用ジグ(釣用ルアー)
41、75、101 ジグ本体(ルアー本体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルアー本体と、このルアー本体に接続されたフックと、を具備し、前記ルアー本体にはラインアイ又はラインホールが設けられている釣用ルアーであって、
前記ルアー本体は、第1の材料で成形された第1の区画と、第2の材料で前記第1の区画と連続して一体的に成形された第2の区画と、を備え、
前記第1の材料は、前記第2の材料の比重よりも大きな比重を有している、ことを特徴とする釣用ルアー。
【請求項2】
ルアー本体と、このルアー本体に接続されたフックと、を具備し、前記ルアー本体にはラインアイ又はラインホールが設けられている釣用ルアーであって、
前記ルアー本体は、第1の材料で成形された一端部側と、第2の材料で前記一端部側と連続して一体的に成形された他端部側又は中間部と、を備え、
前記第1の材料は、前記第2の材料の比重よりも大きな比重を有している、ことを特徴とする釣用ルアー。
【請求項3】
ルアー本体と、このルアー本体に接続されたフックと、を具備し、前記ルアー本体にはラインアイ又はラインホールが設けられている釣用ルアーであって、
前記ルアー本体は、第1の材料で成形された中間部と、第2の材料でこの中間部と連続して一体的に成形された一端部側及び他端部側と、を備え、
前記第1の材料は、前記第2の材料の比重よりも大きな比重を有している、ことを特徴とする釣用ルアー。
【請求項4】
大きな比重の前記第1の材料はタングステン合金である、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の釣用ルアー。
【請求項5】
前記第2の区画は、小さな比重の粉末状の前記第2の材料を焼結して成形されている、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の釣用ルアー。
【請求項6】
前記第1の材料の比重は13.0以上19.2以下、前記第2の材料の比重は15.0以下であり、前記第1の材料と前記第2の材料との比重差は3.0以上である、ことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の釣用ルアー。
【請求項7】
釣用ルアーに用いられるルアー本体の製造方法であって、
前記ルアー本体の第1の区画を形成するための第1の材料と、前記ルアー本体の、前記第1の区画と連続する第2の区画を形成するための第2の材料と、をそれぞれ準備する準備工程と、
前記第1の材料と前記第2の材料とを、同時に又はほぼ同時に、前記ルアー本体の成形型に入れ込んで成形する成形工程と、
成形された材料を焼結する焼結工程と、を備えていることを特徴とするルアー本体の製造方法。
【請求項8】
前記第1の区画を形成するための前記第1の材料は、前記第2の区画を形成するための前記第2の材料よりも比重が大きい、ことを特徴とする請求項7記載のルアー本体の製造方法。
【請求項9】
前記準備工程では、前記第1の材料の活性度を向上させる活性度調整処理及び/又は前記第2の材料の活性度を低下させる活性度調整処理を行う、ことを特徴とする請求項8記載のルアー本体の製造方法。
【請求項1】
ルアー本体と、このルアー本体に接続されたフックと、を具備し、前記ルアー本体にはラインアイ又はラインホールが設けられている釣用ルアーであって、
前記ルアー本体は、第1の材料で成形された第1の区画と、第2の材料で前記第1の区画と連続して一体的に成形された第2の区画と、を備え、
前記第1の材料は、前記第2の材料の比重よりも大きな比重を有している、ことを特徴とする釣用ルアー。
【請求項2】
ルアー本体と、このルアー本体に接続されたフックと、を具備し、前記ルアー本体にはラインアイ又はラインホールが設けられている釣用ルアーであって、
前記ルアー本体は、第1の材料で成形された一端部側と、第2の材料で前記一端部側と連続して一体的に成形された他端部側又は中間部と、を備え、
前記第1の材料は、前記第2の材料の比重よりも大きな比重を有している、ことを特徴とする釣用ルアー。
【請求項3】
ルアー本体と、このルアー本体に接続されたフックと、を具備し、前記ルアー本体にはラインアイ又はラインホールが設けられている釣用ルアーであって、
前記ルアー本体は、第1の材料で成形された中間部と、第2の材料でこの中間部と連続して一体的に成形された一端部側及び他端部側と、を備え、
前記第1の材料は、前記第2の材料の比重よりも大きな比重を有している、ことを特徴とする釣用ルアー。
【請求項4】
大きな比重の前記第1の材料はタングステン合金である、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の釣用ルアー。
【請求項5】
前記第2の区画は、小さな比重の粉末状の前記第2の材料を焼結して成形されている、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の釣用ルアー。
【請求項6】
前記第1の材料の比重は13.0以上19.2以下、前記第2の材料の比重は15.0以下であり、前記第1の材料と前記第2の材料との比重差は3.0以上である、ことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の釣用ルアー。
【請求項7】
釣用ルアーに用いられるルアー本体の製造方法であって、
前記ルアー本体の第1の区画を形成するための第1の材料と、前記ルアー本体の、前記第1の区画と連続する第2の区画を形成するための第2の材料と、をそれぞれ準備する準備工程と、
前記第1の材料と前記第2の材料とを、同時に又はほぼ同時に、前記ルアー本体の成形型に入れ込んで成形する成形工程と、
成形された材料を焼結する焼結工程と、を備えていることを特徴とするルアー本体の製造方法。
【請求項8】
前記第1の区画を形成するための前記第1の材料は、前記第2の区画を形成するための前記第2の材料よりも比重が大きい、ことを特徴とする請求項7記載のルアー本体の製造方法。
【請求項9】
前記準備工程では、前記第1の材料の活性度を向上させる活性度調整処理及び/又は前記第2の材料の活性度を低下させる活性度調整処理を行う、ことを特徴とする請求項8記載のルアー本体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図14−1】
【図15】
【図16】
【図17】
【図17−1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図14−1】
【図15】
【図16】
【図17】
【図17−1】
【公開番号】特開2012−213384(P2012−213384A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−53602(P2012−53602)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(511083525)株式会社岳石デライト (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(511083525)株式会社岳石デライト (1)
【Fターム(参考)】
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