説明

釣用衣服

【課題】前身ごろのポケットに、釣行に要する釣具が収容された状態で着用者が前かがみ姿勢などになっても装着感が良好で、動き易い釣用衣服の提供。
【解決手段】前身ごろと、後身ごろ5と、着用者が腕を通す脇部開口10とを備えたベスト本体2とを備え、前身ごろにポケット13が設けられ、脇部開口10を絞ることを可能とするアジャスト部15が脇部開口10の周辺部に設けられ、アジャスト部15は、脇部開口10の周辺部に沿って設けられた紐状体16と、紐状体16の途中部分に設けられたストッパー17と、脇部開口10の周辺部に沿って設けられ紐状体16の一部を挿通する挿通路18A、18Bとを備え、紐状体16は、挿通路に挿通される長さと挿通路から引出される長さとを調節可能に構成され、挿通路から引出された紐状体の長さ方向途中部分がストッパーを介してベスト本体に留められるよう構成されている釣用衣服。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮎釣り用ベストなど、釣行に着用する釣用衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の釣用衣服として、例えば特許文献1に示すものが提案されている。特許文献1に開示された衣服では、前身ごろから後身ごろに亘る裾に、衣服を着用者の身体にフィットさせるための伸縮部を設けている。
この釣用衣服を着用者が着用するには、脇に相当する部分に形成された開口から着用者が腕を通して、裾の伸縮部を締める。これにより釣用衣服が裾において着用者の身体にフィットして良好な装着感が得られ、しかも動き易いという装着感が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−164409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の釣用衣服の前身ごろにはポケットが設けられており、このポケットには、釣行に要するタックルなどの釣具が収容される。この釣具には錘など、かなりの重量物も収容される。この場合、着用者が前かがみ姿勢などになった際に、釣具の重さで前身ごろが垂れ下がってしまうことがあり、そうなると釣用衣服が裾において着用者の身体にフィットしていても装着感が低下し、動きづらくなる。
【0005】
そこで本発明は上記課題に鑑み、前身ごろのポケットに、釣行に要する釣具が収容された状態で着用者が前かがみ姿勢などになっても装着感が良好で、動き易い釣用衣服の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の釣用衣服は、前身ごろと、後身ごろと、着用者が腕を通す脇部開口とを備えた衣服本体とを備え、前記前身ごろにポケットが設けられ、前記脇部開口を絞ることを可能とするアジャスト部が脇部開口の周辺部に設けられていることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、着用者が衣服を着用し、アジャスト部を操作して着用者の脇周りに脇部開口をフィットさせておくことで、ポケットに釣具を収納することでその重量が衣服本体に働いた状態で、衣服の着用者が前かがみ姿勢などになっても、衣服本体はポケットに近い位置にある着用者の脇周りでアジャストさせているから、釣具の重さで前身ごろが垂れ下がってしまうといった状態を発生させず、装着感が良好で、動き易い。
【0008】
本発明の釣用衣服では、アジャスト部は、脇部開口の周辺部に沿って設けられた紐状体と、該紐状体の途中部分に設けられたストッパーと、前記脇部開口の周辺部に沿って設けられ紐状体の一部を挿通する挿通路とを備え、前記紐状体は、挿通路に挿通される長さと挿通路から引出される長さとを調節可能に構成され、前記挿通路から引出された紐状体の長さ方向途中部分が前記ストッパーを介して衣服本体に留められるよう構成されていることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、挿通路から紐状体の一部を引出すようにして挿通路内にある紐状体の長さを調節し、脇部開口を絞ることで着用者の体格に合わせてその脇周りに脇部開口をフィットさせ、挿通路から引出した紐状体はその長さ方向途中部分をストッパーによって衣服本体に留めることで、脇部開口を着用者の脇周りにフィットした状態が保持される。
【0010】
本発明の釣用衣服では、挿通路は、脇部開口の周辺部に沿って衣服本体に縫着された生地から形成され、該生地には、脇部開口の周辺部に沿う途中部分が途切れた途切れ部が設けられ、該途切れ部から紐状体の一部が引出され、該紐状体の引出された部分がストッパーを介して衣服本体に留められていることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、途切れ部から紐状体の一部を引出し、紐状体の引出された部分を、ストッパーを介して衣服本体に留めることで、脇部開口を着用者の脇周りにフィットした状態が保持される。
【0012】
本発明の釣用衣服では、途切れ部およびストッパーは、衣服本体の前身ごろ側に設けられていることを特徴としている。
上記構成のように、途切れ部およびストッパーが前身ごろ側に設けられている構成によれば、着用者が釣用衣服を着用した状態でのアジャスト部の操作がし易い。
【0013】
本発明の釣用衣服では、挿通路は、脇部開口の周辺部のうち丈方向下部にのみ設けられていることを特徴としている。
上記構成によれば、挿通路は、脇部開口の周辺部のうち丈方向下部にのみ設けられていても、アジャスト部を操作することで、脇部開口が着用者の脇周り全体でフィットさせられる。
【0014】
本発明の釣用衣服では、アジャスト部は、衣服本体の裏面側に設けられていることを特徴としている。
上記構成のように、アジャスト部を衣服本体の裏面側に設けることにより、これが釣行において邪魔にならない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の釣用衣服は、衣服本体の脇部開口を絞ることを可能とするアジャスト部が脇部開口の周辺部に設けられているから、着用者が衣服を着用し、アジャスト部を操作して着用者の脇周りに脇部開口をフィットさせておくことで、衣服本体の前身ごろに設けたポケットに、釣具を収納することでその重量が衣服本体に働いた状態で衣服の着用者が前かがみ姿勢などになっても、衣服本体はポケットに近い位置にある着用者の脇周りでアジャストさせているから、釣具の重さで前身ごろが垂れ下がってしまうといった状態が発生するのを防止することができ、したがって装着感が良好で、動き易い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る鮎釣用ベストの正面図
【図2】同じく左前身ごろを開いてアジャスト部を露出させた状態の斜視図
【図3】同じくアジャスト部を操作して脇部開口を絞った状態の拡大斜視図
【図4】同じく図2におけるY−Y線断面矢視図
【図5】同じく図2におけるZ−Z線断面矢視図
【図6】同じく装着状態の側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る釣用衣服を、鮎釣用ベストを例に図面に基づいて説明する。図1は鮎釣用ベストの正面図、図2は左前身ごろを開いてアジャスト部を露出させた状態の斜視図、図3はアジャスト部を操作して脇部開口を絞った状態の拡大斜視図、図4は図2におけるY−Y線断面矢視図、図5は図2におけるZ−Z線断面矢視図、図6は装着状態の側面図である。
【0018】
図1および図2に示すように、鮎釣用ベスト(以下単に「ベスト」と称す)1は、ベスト本体2が、右前見ごろ3と、左前身ごろ4と、左右の前身ごろ3,4どうしをその後部で亙して縫着された後身ごろ5とを備えてなる。左右の前身ごろ3,4は、スライドファスナー6によって開閉自在に構成されている。
ベスト本体2は、撥水加工や防水加工などの浸水対策加工が施された本体構成生地7の裏側に、メッシュ裏地8が設けられてなり、本体構成生地7には、緩衝材9が内装されている。
【0019】
左右の前身ごろ3,4と後身ごろ5との間(連続部分)で丈方向上部、すなわち高さ方向上部に、着用者Hが腕Aを通す脇部開口10がそれぞれ形成されている。これら脇部開口10の縁には、補強生地11が全周に亙って縫着されている。
左右の前身ごろ3,4には、それぞれ釣具を収容するためのポケット12,13が設けられている。この場合、ポケット12,13は左右の前身ごろ3,4にそれぞれ丈方向に並べて複数個設けられている。
【0020】
図2および図3に示すように、脇部開口10を絞ることを可能とするアジャスト部15が、各脇部開口10の周辺部で、ベスト本体2の裏面側の前身ごろ3,4寄りに設けられている。
アジャスト部15は、脇部開口10の周辺部に沿って設けられた一本の紐状体16と、紐状体16の途中部分に設けられたストッパー17(紐留め)と、脇部開口10の周辺部に沿って設けられ紐状体16の一部を挿通する挿通路18A,18Bとを備えている。
【0021】
挿通路18A,18Bは、例えば図5に示すように、脇部開口10の周辺部に沿ってベスト本体2の裏側に縫着された、帯状の挿通路用生地20から形成され、挿通路18A,18Bは、脇部開口10の周辺部のうち丈方向下部(下側寄り)にのみ設けられ、挿通路用生地20には、脇部開口10の周辺部に沿う途中部分が途切れて、途切れ部領域21が設けられている。
この途切れ部領域21は、左右の前身ごろ3,4と後身ごろ5との縫着部を跨ぐようになっている。換言すれば、挿通路18A,18Bは、左右の前身ごろ3,4のそれぞれと、後身ごろ5に分割されて設けられている。
【0022】
紐状体16は、それ自体が伸縮可能なゴム製の紐から構成されている。紐状体16は、挿通路18A,18Bに挿通される長さと、挿通路18A,18Bから引出される長さとを、ストッパー17によって調節可能に構成されている。すなわち、紐状体16の両方の先端部16aは、それぞれ各挿通路18A,18B内の上端部(最奥部)にまで至って、本体構成生地7の裏側に縫着され、紐状体16の長さ方向途中部分22が途切れ部領域21から引出され、長さ方向途中部分22がストッパー17を挿通し、ストッパー17を介してベスト本体2に留められるよう構成されている。
【0023】
ストッパー17は、種々の公知のものを採用できる。ここでは、紐留めと称されるものを用いており、紐状体16の長さ方向途中部分22が通る孔17aを有し、孔17aを通る紐状体16を、孔17aの周面に出退するバネ部材23で固定するタイプのものである。
このストッパー17の構成において、バネ部材23よる押圧力で引出量を維持でき、且つバネ部材23を孔17aに向けて押すと押圧力が解除され、紐状体16が孔17aを自由に通ることができて、途切れ部領域21からの紐状体16の引出量を可変できる構造を有している。
ストッパー17の胴の一部に、生地からなる保持帯体24が挿通され、保持帯体24の端部が本体構成生地7の裏側に縫着されている。この構成によりストッパー17は、生地である保持帯体24が許容する範囲内において、位置的自由度が付与されている。
【0024】
図2ないし図4に示すように、ベスト1には、紐状体16の長さ方向途中部分22を挿通させて、長さ方向途中部分22の位置を安定させる保持部材25が設けられている。保持部材25は、伸縮性生地を丈方向に所定の長さを有したループ状にして、伸縮性生地の端部を、左右の前身ごろ3,4と後身ごろ5の縫着部分に重ねて縫着してなる。
【0025】
保持部材25の中心孔25aを挿通した紐状体16の長さ方向途中部分22が、中心孔25aから抜出るのを防止する硬質の環状体26が、紐状体16の長さ方向途中部分22のループ部22aに係止している。この環状体26の直径は中心孔25aよりも大きく設定されている。
【0026】
上記構成において、図6に示すように、着用者Hが各脇部開口10に左右の腕Aをそれぞれ通し、スライドファスナー6を閉めて着用するものである。
このベスト1には、脇部開口10を絞ることを可能とするアジャスト部15が備えられている。このアジャスト部15を操作して脇部開口10を絞るには、例えば次のようにして行う。
すなわち、着用者Hがその手指で、ストッパー17のバネ部材23をその弾性に抗して押圧することで、孔17aの径を広げて、紐状体16に対するバネ部材23での規制を解除し、途切れ部領域21に露出している紐状体16の長さ方向途中部分22をさらに引出す。
このとき、例えば着用者Hは、その片方の手指でバネ部材23を押圧し、別の片方の手指で紐状体16の長さ方向途中部分22をさらに引出すようにすると、途切れ部領域21が自ずとストッパー17に近付く。
あるいは、着用者Hが片手の手指を環状体26に引っ掛けて引くようにすると、ストッパー17が保持部材25まで引かれて移動することで、ストッパー17が保持部材25に係止して、紐状体16のみがさらに引かれて、脇部開口10を絞ることが可能になる。
【0027】
さらに紐状体16の長さ方向途中部分22を引出すと、挿通路用生地20の、紐状体16が導出されている開口部分が、ストッパー17に接触するようになって、脇部開口10が絞られる。別の片方の手指で紐状体16の長さ方向途中部分22を引出すとき、環状体26を把持してこれを引くことで容易にできる。
また、アジャスト部15は、各脇部開口10の周辺部で、ベスト本体2の裏面側の前身ごろ3,4寄りに設けられているから、着用者Hがベスト1のスライドファスナー6を閉める前の装着状態でのアジャスト部15の操作がし易い。そして、ストッパー17のバネ部材23の押圧を解除すれば、途切れ部領域21から引出されている紐状体16の長さが保持される。すなわち、脇部開口10が絞られた状態を保持することができる。
上記のようにして左右のアジャスト部15を操作して、着用者Hの体型に合うように脇部開口10を絞り、スライドファスナー6を閉じることで、ベスト1を装着することができる。
【0028】
ところで、ポケット12,13には錘などの釣具が収容される。ポケット12,13に釣具が収容された状態で、着用者Hが前かがみ姿勢などになった際に、釣具の重さで前身ごろ3,4が垂れ下がる方向に力が働く。
しかしながら、このベスト1ではアジャスト部15によって、脇部開口10を着用者Hの脇にフィットさせている。このため、着用者Hの脇と脇部開口10とに隙間がほとんどないから、釣具の重さで前身ごろ3,4が垂れ下がる方向に力が働いても、前身ごろ3,4が垂れ下がらず、ベスト1の装着感が良好であるとともに動き易さを維持することができる。
【0029】
特にポケット12,13が丈方向に並べてある場合では、上のポケット12に重量のある釣具を収容して前かがみになると前身ごろ3,4が垂れ下がり易い状態がつくられるが、アジャスト部15は脇部開口10にあって、上のポケット12に近い位置にあるから、上のポケット12に重量のある釣具を収容して前かがみになっても、前身ごろ3,4が垂れ下がりにくい。
【0030】
上記実施形態では、アジャスト部15の挿通路18A,18Bは、脇部開口10の周辺部のうち丈方向下部にのみ設けたがこれに限定されず、脇部開口10の周辺部全域に亙って設けて、紐状体16を挿通してもよい。この場合も、途切れ部領域21は設ける。また、紐状体16はその途中部分の一箇所をベスト本体2に縫着することが好ましい。
【0031】
また、上記実施形態では、挿通路18A,18Bを途切れ部領域21を介して振分けたがこれに限定されず、挿通路18A,18Bのうち、何れか一方の挿通路のみを設けて、これに紐状体16を挿通するよう構成することも可能である。
また、上記実施形態では、紐状体16は一本物としたが、挿通路18A,18Bにそれぞれ挿通する紐状体としてもよい。
さらに、紐状体16はそれ自体に伸縮性を有するものでなくともよい。
【符号の説明】
【0032】
1…ベスト、2…ベスト本体、6…スライドファスナー、7…本体構成生地、8…メッシュ裏地、10…脇部開口、11…補強生地、12,13…ポケット、15…アジャスト部、16…紐状体、17…ストッパー、18A,18B…挿通路、20…挿通路用生地、21…途切れ部領域、24…保持帯体、25…保持部材、26…環状体、A…腕、H…着用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身ごろと、後身ごろと、着用者が腕を通す脇部開口とを備えたベスト本体とを備え、前記前身ごろにポケットが設けられた釣用衣服において、
前記脇部開口を絞ることを可能とするアジャスト部が脇部開口の周辺部に設けられていることを特徴とする釣用衣服。
【請求項2】
アジャスト部は、脇部開口の周辺部に沿って設けられた紐状体と、該紐状体の途中部分に設けられたストッパーと、前記脇部開口の周辺部に沿って設けられ紐状体の一部を挿通する挿通路とを備え、
前記紐状体は、挿通路に挿通される長さと挿通路から引出される長さとを調節可能に構成され、前記挿通路から引出された紐状体の長さ方向途中部分が前記ストッパーを介してベスト本体に留められるよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の釣用衣服。
【請求項3】
挿通路は、脇部開口の周辺部に沿ってベスト本体に縫着された生地から形成され、該生地には、脇部開口の周辺部に沿う途中部分が途切れた途切れ部が設けられ、該途切れ部から紐状体の一部が引出され、該紐状体の引出された部分がストッパーを介してベスト本体に留められていることを特徴とする請求項2記載の釣用衣服。
【請求項4】
途切れ部およびストッパーは、ベスト本体の前身ごろ側に設けられていることを特徴とする請求項3記載の釣用衣服。
【請求項5】
挿通路は、脇部開口の周辺部のうち丈方向下部にのみ設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項4の何れかに記載の釣用衣服。
【請求項6】
アジャスト部は、ベスト本体の裏面側に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の釣用衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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