説明

釣竿

【課題】竿杆に着脱可能にスタンドを装着させても、竿杆の潰れを防止できる釣竿を提供する。
【解決手段】繊維強化樹脂製の竿杆10の所定位置に、該竿杆を挟持して装着させる装着具50によって着脱可能にスタンド40を装着させた釣竿であって、前記竿杆の所定位置の単位長さにおいて、全ての強化繊維を合わせたものを100重量%とし、その中で円周方向指向の強化繊維の比率が30重量%〜80重量%であるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスタンドを取り付けた釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
釣りにおいて、仕掛けを水中に入れた状態で獲物が掛かるのを待つ場合、手で釣竿を保持したまま待つこともあるが、楽をするために、別体である釣竿保持装置(竿掛け)に係止して待つことがある。しかし、別体である釣竿保持装置を持参するのは、釣道具全体が大掛かりになる。そこで、下記特許文献1,2には、簡単な構造のもの、或いは小型軽量化の可能なものであり、釣竿を載置できるスタンドが開示されている。前者は、クリップ状に形成されて弾性的に装着する挟持部が設けられ、後者は、ねじで締め付けて把手を取り付けることが開示されている。また、特許文献3にも釣竿に取り付けられたスタンドが開示されており、着脱可能にすることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−14740号公報
【特許文献2】特開2002−262727号公報
【特許文献3】特開平10−136856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら、最近の繊維強化樹脂製竿杆は極限まで軽量化を推し進めているため、スタンドを釣竿(竿杆)に装着する際に、その装着力次第では誤って竿杆を潰す恐れが高い。更には、装着した際には潰れを生じなくても、魚が掛かった際の魚とのやり取りによってスタンド装着部位に潰れ損傷を生じる恐れも高い。
従って、こうした着脱可能なスタンドを竿杆に装着する構成の場合は、竿杆にも工夫を施す必要がある。
依って本発明は、竿杆に着脱可能にスタンドを装着させても、竿杆の潰れを防止できる釣竿の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて本願第1の発明は、繊維強化樹脂製の竿杆の所定位置に、該竿杆を挟持して装着させる装着具によって着脱可能にスタンドを装着させた釣竿であって、前記竿杆の所定位置の単位長さにおいて、全ての強化繊維を合わせたものを100重量%とし、その中で円周方向指向の強化繊維の比率が30重量%〜80重量%であることを特徴とする釣竿を提供する。
本願で軸長方向指向とは、元竿等の竿杆の中心軸線に対して±15度の範囲内、円周方向指向とは、円周方向に対して±15度の範囲内の方向をいう。
【0006】
第2の発明は、第1の発明の釣竿が振出式釣竿であって、前記所定位置は継ぎ合わせられる前後の竿杆の継合部に位置するよう構成する。
第3の発明は、第1又は第2の発明の前記所定位置の竿杆横断面構造は、強化繊維の存在する層の中の最外層が、強化繊維が円周方向に指向した層であるよう構成する。
【0007】
第4の発明は、第1〜第3の発明の前記所定位置の竿杆横断面構造は、強化繊維の存在する層の中で、強化繊維が軸長方向に指向した層の外側層と内側層とが、強化繊維が円周方向に指向した層であるよう構成する。
第5の発明は、第1〜第4の発明の前記釣竿はリール装着部を設けているよう構成する。
【発明の効果】
【0008】
従来の釣竿においては、その竿杆に使用の強化繊維全部の中の円周方向指向の強化繊維の比率は20重量%く程度が上限である。一方、第1の発明では、それを30重量%以上に設定するため、竿杆の潰れ剛性を向上させて、装着具による不用意な過大な竿杆挟持の力による潰れを防止できる。
【0009】
第2の発明では、所定位置は竿杆の継合部に位置しているため、ここは元来厚肉化されるべき部位であると共に、裂けを防止すべく円周方向強化繊維を多くする必要性もあり、装着具の挟持力に耐える潰れ剛性を担保することは、同時に継合部としての機能にも寄与するメリットがある。
【0010】
第3の発明では、最外層を強化繊維が円周方向に指向した層とするため、竿杆の潰れ変形に対して最も潰れ剛性を高く構成できる。
第4の発明では、円周方向指向の強化繊維層を軸長方向指向層の内側にも設け、より潰れ剛性を向上させている。
第5の発明では、リールを装着する釣竿は種々の釣りを行うことができ、装着させたスタンドを使用する機会が多くなり、利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る釣竿の使用状態を示す図である。
【図2】図1の要部拡大縦断面図である。
【図3】図2の矢視線C−Cによる横断面図である。
【図4】図1の要部拡大部分破断図である。
【図5】図1の釣竿の使用説明図である。
【図6】図2に対応する第2実施形態例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面を用いて更に詳細に説明する。図1〜図5を参照する。この例の釣竿は、元竿10、第1中竿12、第2中竿14、穂持竿16、穂先竿18を振出式に継ぎ合わせて構成しているが、並継式釣竿や一本竿でもよい。各竿杆は、エポキシ樹脂等の合成樹脂をマトリックスとし、炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製である。元竿10の後部にはハンドル部としてのグリップ部20が設けられており、その直前部にはリール装着部30が設けられている。このリール装着部にはリールR(この例ではスピニングリール)が装着されている。Gは釣糸のガイドである。
【0013】
元竿10の所定位置である先部の継合部に、スタンド40を挟持装着させる装着具50が設けられている。スタンド40が立つ側は、前記リール装着部30のリール載置面30Sの径方向反対側である。即ち、ガイドGの径方向反対側である。この装着具50は、上下に分かれた2つの挟持部品50A,50Bを有し、各挟持部品は元竿10を受け入れる略半円筒形状の凹部50AH,50BHを設けており、各挟持部品のフランジ部同士にねじ部材Nを締め込むことによって取り付ける。この一方の挟持部品50Aには、左右1対の脚を有するスタンド40が取り付けられており、このスタンド40を図1の使用状態の位置に位置させる方向に常時付勢する捩じりばね40Cが設けられている。この捩りばねによって付勢されたスタンド40が図5の2点鎖線で示す使用位置で止まるのは、挟持部品50Aに明示しない停止部が設けられているからである。
【0014】
使用位置のスタンド40を収納位置に収納保持するために、元竿10の、装着具50の位置の後方所定位置に保持具60を設けている。この後方所定位置としては、後述する操作上の理由から、この例のようにリール装着部30の直前位置が好ましい。保持具60の保持具本体60Aを元竿10に装着保持させておき、その上に、前後方向にスライド可能であるが、それ以外の動きのできないよう規制した駒体60Bを搭載している。この駒体60Bの前端側には保持孔60BHを設けており、また、保持具本体60Aに収納保持したコイルばね60Cによって駒体の後端部を常時前方に付勢している。リール装着部を把持した手の親指等の指先で、コイルばね60Cの付勢力に抗してこの駒体を引っ張って後方に引き下げ、スタンド40の脚先部を前記保持孔60BHに位置させ、駒体を保持している指を離せばコイルばね60Cの作用で駒体を押しやり、スタンドの脚先部を保持孔60BHの中に収容し、元竿10と概ね平行なその状態に保持する。
【0015】
こうした元竿の継合部にスタンド40を装着させて、元竿と平行に収納でき、更には釣竿が振出式であるため、各竿杆を収納できる他、スタンドも邪魔にならず、本願釣竿全体が運搬に便利である。
スタンドを使用する際には、指で駒体60Bを引き下げれば、スタンドの端部が駒体から外れ、前記捩じりばね40Cの作用によって、スタンド40が図5の2点鎖線で示す使用位置に戻るように構成している。
【0016】
再度図2を参照する。元竿10は内側層10A、中間層10B、外側層10Cの3層構造になっている。この中間層10Bは強化繊維である炭素繊維が軸長方向に指向しており、内外各層10A,10Cは炭素繊維が円周方向に指向している。各層はエポキシ樹脂をマトリックスとするプリプレグを巻回して形成しているが、各プリプレグには裏打として極僅かのガラス繊維が使用されている。
【0017】
中間層10Bは強化繊維の目付け量が500g/mの、内側層10Aは強化繊維の目付け量が100g/mの、外側層10Cは、強化繊維の目付け量が300g/mの、各プリプレグシートを使用している。内側層は1プライ、中間層は3プライ、外側層は3プライを巻回している。また、この例では、中間層は2プライ分のシートと1プライ分のシートとに分割した2枚のシートを使用した。また、各層の炭素繊維の弾性率は全て24000kgf/mm(235200N/mm)である。元竿10に使用する炭素繊維は、弾性率が7000〜40000kgf/mm(68600〜392000N/mm)の範囲内の繊維である。
【0018】
この例の元竿10では円周方向指向の炭素繊維は40重量%、残りの60重量%は軸長方向指向であるが、円周方向指向の炭素繊維の比率が30〜80重量%の範囲内になる様にする。また、炭素繊維が円周方向指向の層の強化繊維と合成樹脂とを合わせた全体に対する合成樹脂比率は15〜50重量%であり、この例では30重量%である。
【0019】
第1中竿12は2層構造であり、内側層12Aは炭素繊維が円周方向に指向した層であり、外側層12Bは炭素繊維が軸長方向に指向した層である。この第1中竿においても炭素繊維の弾性率は全て24000kgf/mm(235200N/mm)である。また、内側層12Aは、目付け量が100g/mのプリプレグシートを1プライ巻回し、外側層12Bは、目付け量が400g/mのプリプレグシートを2プライ巻回し、その上に目付け量が200g/mのプリプレグシートを1プライ巻回している。しかし、この例には限らない。
【0020】
所定範囲位置において、円周方向に指向した炭素繊維の比率を30〜80重量%にする上に、軸長方向指向の炭素繊維の層の撓み剛性に対して、円周方向指向の層の(合計の)撓み剛性が40〜400%の範囲になるように、炭素繊維の縦弾性率を選択し、これにより潰れ剛性を向上させる。
【0021】
図6を参照する。この例では図2に示す構造と相違する事項を説明する。元竿10’の本体層は2層構造であり、内側の層10Aは、炭素繊維が円周方向指向の層であり、その外側に炭素繊維が軸長方向に指向した層10Bを設けている。装着具50が挟持装着される元竿10’の所定位置は、図2の場合と同じ継合部であり、この継合部領域の本体層の上に、炭素繊維を円周方向に指向させた最外層10C’を追加して補強している。その結果、この継合部領域では、円周方向指向の炭素繊維は40重量%、残りの60重量%は軸長方向指向である。
【0022】
以上の例では、装着具50は元竿10,10’の継合部に装着したが、適宜な他の部位に装着してもよい。その場合、その装着部位のみ、又は竿杆の全長を含むもっと広い範囲に亘って、炭素繊維が円周方向指向の層を厚く設け、円周方向指向とその他指向とを合わせた全体100%の内、円周方向指向の炭素繊維を30重量%〜80重量%に設定すればよい。また、装着具50の装着位置領域を補強する他、保持具60の装着位置領域をも同様に補強しても良い。更には、スタンドは2本の脚の物を例示したが、その形態は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、繊維強化樹脂製釣竿に利用でき、特にリールを装着して使用する汎用的な使用の釣竿に有利に利用できる。
【符号の説明】
【0024】
10 元竿
10A,10C,10C’ 円周方向指向の層
30 リール装着部
40 スタンド
50 装着具
60 保持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂製の竿杆の所定位置に、該竿杆を挟持して装着させる装着具によって着脱可能にスタンドを装着させた釣竿であって、前記竿杆の所定位置の単位長さにおいて、全ての強化繊維を合わせたものを100重量%とし、その中で円周方向指向の強化繊維の比率が30重量%〜80重量%であることを特徴とする釣竿。
【請求項2】
釣竿が振出式釣竿であって、前記所定位置は継ぎ合わせられる前後の竿杆の継合部に位置する請求項1記載の釣竿。
【請求項3】
前記所定位置の竿杆横断面構造は、強化繊維の存在する層の中の最外層が、強化繊維が円周方向に指向した層である請求項1又は2記載の釣竿。
【請求項4】
前記所定位置の竿杆横断面構造は、強化繊維の存在する層の中で、強化繊維が軸長方向に指向した層の外側層と内側層とが、強化繊維が円周方向に指向した層である請求項1〜3の何れか1記載の釣竿。
【請求項5】
前記釣竿はリール装着部を設けている請求項1〜4の何れか1記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−115156(P2012−115156A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265263(P2010−265263)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】