説明

釣銭装置及びこの装置の貨幣回収方法並びに貨幣回収プログラム

【課題】釣銭準備金として残す貨幣の金額と量を金種間で所望の比率とする。
【解決手段】釣銭装置の制御部は、残置金額に対して五千円札の額面金額単位未満の端数金額を求め、この端数金額に相当する千円札の枚数を算出する。そして、残置金額からこの算出された枚数分の千円札の金額を減じた残り残置金額を、指定された比率の千円札と五千円札とで充足するための千円札と五千円札との各枚数を算出する。そして、この算出された千円札の枚数に先に算出された千円札の枚数を加算した枚数を千円札に対する残置枚数として決定する。同じく、算出された五千円札の枚数を五千円札に対する残置枚数として決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、釣銭用の貨幣として例えば紙幣を取扱う釣銭装置及びこの装置の貨幣回収方法並びに貨幣回収プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
釣銭用の貨幣として紙幣を取扱う釣銭装置、いわゆる紙幣釣銭装置がある。紙幣釣銭装置は、紙幣の投入口と投出口とを備えた筐体の内部に、紙幣を金種別に収納するための紙幣収納部を備える。そして、投入口に投入された紙幣を筐体内に搬入し、金種別に選別して、紙幣収納部に収納する釣銭収納機能と、POS(Point Of Sales)端末等から与えられる釣銭データに従い紙幣収納部から釣銭額相当の紙幣を搬出し、前記投出口に投出する釣銭払出機能とを有する。
【0003】
このような釣銭装置は、通常、指定された金額の紙幣を収納部内に残して残りの紙幣を回収する機能を有する。この機能は、残置回収機能と称され、指定される金額は残置金額と称される。この機能を店舗が営業終了後に毎回実施することで、一定の金額を翌営業日の釣銭準備金として収納部内に残し、残りを一営業日の売上金として回収することができる。ただし、釣銭準備金としてどの金種を何枚残せば適当なのかは、各店舗の釣銭使用状況によって異なるため一概には決定できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−173464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、釣銭準備金として残す貨幣の金額と量を金種間で所望の比率とすることができる釣銭装置及びこの装置の貨幣回収方法並びに貨幣回収プログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態において、釣銭装置は、少なくとも額面金額が最小の第1の貨幣と額面金額が第1の貨幣の額面より大きい第2の貨幣とを収納する貨幣収納部に釣銭準備金として指定された残置金額の貨幣を残して残りの貨幣を貨幣収納部から回収する貨幣回収手段を備えている。貨幣回収手段は、残置金額に対して第2の貨幣の額面金額単位未満の端数金額を求め、この端数金額に相当する第1の貨幣の枚数を算出する第1の手段と、残置金額から第1の手段で決定された枚数分の第1の貨幣の金額を減じた残り残置金額を、指定された比率の第1の貨幣と第2の貨幣とで充足するための第1及び第2の貨幣の各枚数を算出する第2の手段と、第2の手段で算出された第1の貨幣の枚数に第1の手段で算出された枚数を加算した枚数を第1の貨幣に対する残置枚数として決定する第3の手段と、第2の手段で算出された第2の貨幣の枚数を第2の貨幣に対する残置枚数として決定する第4の手段とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態である紙幣釣銭装置の外観斜視図。
【図2】同紙幣釣銭装置の要部構成を示すブロック図。
【図3】同紙幣釣銭装置の記憶部に形成される主要なメモリエリアを示す図。
【図4】同紙幣釣銭装置の制御部が貨幣回収プログラムに従って実行する処理手順の要部を示す流れ図。
【図5】図4において、ステップST7で示す残置枚数決定処理の手順を具体的に示す流れ図。
【図6】図5において、ステップST34で示す実在高補正処理の手順を具体的に示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、釣銭装置の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、この実施形態は、日本国において最小の額面金額である千円札(第1の貨幣)と、最大の額面金額である一万円札(第3の貨幣)と、その間の額面金額である五千円札(第2の貨幣)の3種類の紙幣を取扱う紙幣釣銭装置1に適用した場合である。
【0009】
図1は、紙幣釣銭装置1の外観斜視図である。紙幣釣銭装置1は、前面を開口面とする箱型の筐体2と、この筐体2に対して開口面から引き出し可能に装着される装置本体3とからなる。装置本体3は、前面に操作パネル4と紙幣投出口5とを形成し、この前面に連通する上面に紙幣投入口6を形成して、前記筐体2に装着された際には、この前面とこの前面に連通する上面とで、筐体2の開口面を閉塞している。
【0010】
図2は、装置本体3の要部構成を示すブロック図である。装置本体3は、3種類の金種の紙幣をそれぞれ金種別に収納可能な紙幣収納庫(貨幣収納部)31と、紙幣回収庫32とを備えている。紙幣収納庫31と紙幣回収庫32とは、装置本体3が筐体2に装着された際には筐体2内に収容される。ただし、紙幣回収庫32は、装置本体3が筐体2に装着された状態でも、装置本体3の前面側から前方に引き出し可能となっている。
【0011】
装置本体3は、さらに、制御部33、記憶部34、通信インターフェース35、紙幣投入センサ36、紙幣投出センサ37、搬入・選別部38及び搬出処理部39を備えている。
【0012】
制御部33は、コンピュータの中枢を担うCPU(Central Processing Unit)を主体とし、プログラムに従って各部を制御することにより、紙幣釣銭装置1としての各種機能、例えば釣銭収納機能や釣銭払出機能等を実現させる。記憶部34は、前記プログラムを記憶する。また記憶部34は、各種のデータを記憶するためのメモリエリアを有する。通信インターフェース35は、有線または無線の通信手段によって接続されるPOS端末の制御部と前記制御部33との間でやり取りされるデータ通信を司る。
【0013】
紙幣投入センサ36は、紙幣投入口6に投入された紙幣を検出する。紙幣投入センサ36で紙幣が検出されると、制御部33は、搬入・選別部38を動作させる(釣銭収納機能)。搬入・選別部38は、紙幣投入口6に投入された紙幣を搬入し、その金種を選別する。そして搬入・選別部38は、選別された紙幣を紙幣収納庫31に金種別に収納するか、紙幣回収庫32に収納する。すなわち搬入・選別部38は、千円札と五千円札と一万円札は紙幣収納庫31に収納し、その他の例えば二千円札は紙幣回収庫32に収納する。
【0014】
POS端末から通信インターフェース35を介して釣銭データを受信すると、制御部33は、搬出処理部39を動作させる(釣銭払出機能)。搬出処理部39は、紙幣収納庫31から釣銭相当の紙幣を搬出して、紙幣投出口5に投出する。紙幣投出センサ37は、紙幣投出口5に投出された紙幣を検出する。
【0015】
図3は、記憶部34に形成される主要なメモリエリアを示す。図3に示すように、紙幣釣銭装置1は、記憶部34に、金種別の収納データテーブル41と、収納庫在高メモリ42と、金種別の残置データテーブル43と、指定残置金額メモリ44と、調整レベルメモリ45とを形成する。
【0016】
収納データテーブル41は、紙幣収納庫31に収納された各紙幣の枚数A1,A2,A3(A1は一万円札の収納枚数、A2は五千円札の収納枚数、A3は千円札の収納枚数)とその金額B1,B2,B3(B1は一万円札の収納金額、B2は五千円札の収納金額、B3は千円札の収納金額)を金種別に記憶する。収納庫在高メモリ42は、紙幣収納庫31に収納された全紙幣の総額Cを記憶する。
【0017】
搬入・選別部38は、選別した紙幣の金種情報を制御部33に与える。搬出処理部39は、紙幣収納庫31から搬出した紙幣の金種情報を制御部33に与える。制御部33は、これらの金種情報に基づいて、収納データテーブル41の金種別収納枚数A1,A2,A3及び収納金額B1,B2,B3と収納庫在高メモリ42の総額Cとを更新する。
【0018】
残置データテーブル43は、後述する残置回収機能において、釣銭準備金として残す紙幣の枚数(D1は一万円札の残置枚数、D2は五千円札の残置枚数、D3は千円札の残置枚数)とその金額(E1は一万円札の残置金額、E2は五千円札の残置金額、E3は千円札の残置金額)を金種別に記憶する。指定残置金額メモリ44は、釣銭準備金として残す残置金額Fを記憶する。調整レベルメモリ45は、釣銭準備金として残す五千円札の千円札に対する比率を表わす調整レベルG(Gは0〜9の整数)を記憶する。すなわち、調整レベルGが“0”のときは、五千円札と千円札との比率が0:10であり、調整レベルが“1”のときは、五千円札と千円札との比率が1:9であり、調整レベルが“2”のときは、五千円札と千円札との比率が2:8である。以下、調整レベルが“3”〜“9”まで同様であり、例えば調整レベルが“9”のときは、五千円札と千円札との比率が9:1である。
【0019】
残置回収機能は、指定された残置金額Fの紙幣を紙幣収納庫31内に残し、残りの紙幣を搬出処理部39の作用によって紙幣収納庫31から搬出して、紙幣回収庫32に回収する。この機能は、店舗の毎営業日の閉店後に実施されるPOS端末の精算業務において発せられる残置回収コマンドを受信すると実行される。このときの残置回収コマンドには、残置金額のデータと調整レベルのデータとが任意で含まれる。すなわち、POS端末において、精算業務の実行前に残置金額と調整レベルのうちの少なくとも一方のデータが指定されたときには、指定されたデータが残置回収コマンドに含まれる。
【0020】
制御部33は、通信インターフェース35を介して残置回収コマンドを受信すると、図4の流れ図で示す手順の処理を実行する。この処理は、記憶部34に記憶される貨幣回収プログラムに従ったものである。
【0021】
先ず、制御部33は、POS端末からのコマンドを待機する(ST1)。通信インターフェース35を介してコマンドを受信すると、コマンドが残置回収コマンドであるか否かを判断する(ST2)。残置回収コマンドでない場合(ST2のNO)、そのコマンドに応じた処理を実行する。例えば釣銭コマンドであった場合には、前述した釣銭払出機能の処理を実行する。
【0022】
受信コマンドが残置回収コマンドであった場合(ST2のYES)、制御部33は、コマンドに残置金額が含まれるか否かを判断する(ST3)。コマンドに残置金額が含まれる場合には(ST3のYES)、指定残置金額メモリ44のデータFを、コマンド中の残置金額に書き換える(ST4)。コマンドに残置金額が含まれない場合には(ST3のNO)、指定残置金額メモリ44のデータFを変更しない。
【0023】
次に、制御部33は、コマンドに調整レベルが含まれるか否かを判断する(ST5)。コマンドに調整レベルが含まれる場合には(ST5のYES)、調整レベルメモリ45のデータGを、コマンド中の調整レベルに書き換える(ST6)。コマンドに調整レベルが含まれない場合には(ST5のNO)、調整レベルメモリ45のデータGを変更しない。
【0024】
次に、制御部33は、後述する残置枚数決定処理を実行して、金種別の残置枚数D1,D2,D3を決定する(ST7)。残置枚数D1,D2,D3が決定したならば、制御部33は、金種毎に、紙幣収納庫31内の収納枚数A1,A2,A3から残置枚数D1,D2,D3を減じた数を回収枚数として算出し、この回収枚数(A1−D1,A2−D2,A3−D3)の回収指令を搬出処理部39に与える。この指令を受けて、搬出処理部30は、紙幣収納庫31から金種毎にそれぞれ回収枚数の紙幣を搬出して紙幣回収庫32に回収する。
【0025】
制御部33は、紙幣の回収が終了するのを待機する(ST9)。搬出処理部39から回収終了の応答コマンドを受信すると(ST9のYES)、制御部33は、操作パネル4のディスプレイに回収終了を表示する(ST10)。以上で、貨幣回収プログラムは終了する。
【0026】
図5は、ステップST7の残置枚数決定処理の手順を具体的に示す流れ図である。残置枚数決定処理に入ると、先ず、制御部33は、収納庫在高金額Cと指定残置金額Fとを比較する(ST21)。その結果、収納庫在高金額Cが指定残置金額F以下であるときには(ST21のNO)、紙幣収納庫31から回収すべき紙幣はない。この場合、制御部33は、残置データテーブル43の金種別残置枚数D1,D2,D3のデータを、収納データテーブル41の同じ金種の収納枚数A1,A2,A3に一致させる。そして、残置データテーブル43の金種別残置金額E1,E2,E3を演算し直す(ST22)。以上で、残置枚数決定処理は終了する。したがって、この場合は、その後のステップST8の処理で、各金種の回収枚数は“0”となるので、紙幣収納庫31から紙幣は回収されない。
【0027】
ステップST21の処理において、収納庫在高金額Cが指定残置金額Fより大きいときには、制御部33は、千円札の収納金額B3と五千円札の収納金額B2との合計金額“B2+B3”と指定残置金額Fとを比較する(ST23)。その結果、合計金額“B2+B3”が指定残置金額F以上であるときには(ST23のYES)、千円札と五千円札とによって指定残置金額Fを充足することができる。したがって、一万円札は、全て回収してよい。すなわち一万円札を紙幣収納庫31に残す必要がないので、制御部33は、残置データテーブル43の一万円札に対する残置枚数D1を“0”とする(ST24)。
【0028】
一方、合計金額“B2+B3”が指定残置金額Fに満たないときには(ST23のNO)、その不足分を一万円札で賄う必要がある。そこで制御部33は、指定残置金額Fから合計金額“B2+B3”を減じた金額を、一万円札の額面金額“10,000”で除算し、その商に“1”を加算した値の整数部を、残置データテーブル43の一万円札に対する残置枚数D1とする(ST25)。
【0029】
次に、制御部33は、指定残置金額Fから残置枚数D1分の一万円札の金額“10,000*D1”を除いた残り残置金額Hを算出する(ST26)。制御部33は、この残り残置金額Hを五千円札の額面金額“5,000”で除算し、その商の余り、つまりは額面金額“5,000”未満の端数金額Iを得る(ST27)。そして制御部33は、この端数金額Iを千円札の額面金額“1,000”で除算して、端数金額に相当する千円札の枚数を算出し、残置データテーブル43の千円札に対する残置枚数D3とする(ST28)。
【0030】
次に、制御部33は、残り残置金額Hから端数金額Iを減じる(ST29)。そして制御部33は、端数金額Iを減算後の残り残置金額H′に調整レベルGの1/10の値を乗算して、その積Jを得る(ST30)。この積Jは、残り残置金額H′のうち釣銭準備金として残す五千円札の千円札に対する比率Gに相当する金額である。制御部33は、この積Jを五千円札の額面金額“5,000”で除算し、その商の整数部を残置データテーブル43の五千円札に対する残置枚数D2とする(ST31)。
【0031】
次に、制御部33は、残り残置金額H′から残置枚数D2分の五千円札の総額“5,000*D2”を減じる(ST32)。そして制御部33は、残置枚数D2分の五千円札の総額“5,000*D2”を減じた残り残置金額H″を千円札の額面金額“1,000”で除算し、その商Kを得る(ST33)。制御部33は、残置データテーブル43の千円札に対する残置枚数D1に、商Kを加算する(ST34)。
【0032】
しかる後、制御部33は、実在高補正処理を実行する(ST35)。この処理は、ステップST31及びステップST34の処理によって決定した五千円札及び千円札の残置枚数D2,D3が、実際に紙幣収納庫31に収納されていない場合にその残置枚数D2,D3を補正する。
【0033】
図6は、実在高補正処理の手順を示す流れ図である。実在高補正処理に入ると、制御部33は、先ず、五千円札の収納枚数A2と残置枚数D2とを比較する(ST41)。その結果、収納枚数A2が残置枚数D2以上の場合には(ST41のNO)、ステップST45の処理に進む。
【0034】
これに対し、収納枚数A2が残置枚数D2に対して不足している場合には(ST41のYES)、制御部33は、残置枚数D2から収納枚数A2を減じた差Lを算出する(ST42)。そして制御部33は、残置データテーブル43の五千円札に対する残置枚数D2を、収納枚数A2に補正する(ST43)。また、制御部33は、上記差Lに値“5”を乗算して、この差Lの枚数の五千円札の総額を千円札で賄うのに必要な千円札の枚数“L*5”を算出する。そしてこの枚数“L*5”を残置データテーブル43の千円札に対する残置枚数D3に加算して、残置枚数D3を補正する(ST44)。しかる後、ステップST45の処理に進む。
【0035】
ステップST45では、制御部33は、千円札の収納枚数A3と残置枚数D3とを比較する(ST45)。その結果、収納枚数A3が残置枚数D3以上ある場合には(ST45のNO)、実在高補正処理を終了する。
【0036】
これに対し、収納枚数A3が残置枚数D3に対して不足している場合には(ST45のYES)、制御部33は、残置枚数D3から収納枚数A3を減じた差Mを算出する(ST46)。制御部33は、この差Mを値“5”で除算する(ST47)。そして、その商Nに小数部があるか否かを判断する(ST48)。小数部がある場合(ST48のYES)、制御部33は、その商の整数部に値“1”を加算した値Pを算出する(ST49)。小数部がない場合には(ST48のNO)、値“1”を加算せず、その商Nの整数部を値Pとする(ST50)。こうして、ステップST49またはST50で得られた値Pは、M枚の千円札の総額を賄うのに必要な五千円札の最小枚数である。
【0037】
しかる後、制御部33は、残置データテーブル43の五千円札に対する残置枚数D2に最小枚数Pを加算して、残置枚数D2を補正する(ST51)。また、制御部33は、残置データテーブル43の千円札に対する残置枚数D3から、最小枚数Pに値“5”を乗算した値を減じて、残置枚数D3を補正する(ST52)。以上で、制御部33は、実在高補正処理を終了する。
実在高補正処理が終了すると、残置枚数決定処理は終了する。
【0038】
ここに、残置枚数決定処理のステップST23,ST24,ST25の各処理は、千円札と五千円札との合計金額“B2+B3”と指定残置金額Fとから、額面金額が最大の一万円札(第3の貨幣)に対する残置枚数D1を決定する第7の手段を構成する。
【0039】
残置枚数決定処理のステップST27,ST28は、指定残置金額Fに対して、五千円札(第2の貨幣)の額面金額単位未満の端数金額Iを求め、この端数金額Iに相当する千円札(第1の貨幣)の枚数D3を算出する第1の手段を構成する。
【0040】
残置枚数決定処理のステップST29〜ST33は、指定残置金額Fから第7手段で決定された枚数D1分の一万円札の金額と第1の手段で決定された枚数D3分の千円札の金額とを減じた残り残置金額H′を、調整レベルGによって指定された比率の千円札と五千円札とで充足するための各枚数K,D2を算出する第2の手段を構成する。
【0041】
残置枚数決定処理のステップST34は、第2の手段で算出された千円札の枚数Kに第1の手段で算出された枚数D3を加算した枚数を千円札に対する残置枚数D3として決定する第3の手段を構成する。
【0042】
残置枚数決定処理のステップST31の処理は、第2の手段で算出された五千円札の枚数D2を五千円札に対する残置枚数D2として決定する第4の手段を構成する。
【0043】
実在高補正処理のステップST41〜ST44は、第4の手段で決定された五千円札の残置枚数D2に対して紙幣収納庫31に収納されている五千円札の実収納枚数A2が不足するとき、残置枚数D2を実収納枚数A2に変更するとともに、残置枚数D2から実収納枚数A2を減じた枚数Lの五千円札の金額に相当する千円札の枚数“L*5”を算出し、この枚数“L*5”を第3の手段で決定された千円札の残置枚数D3に加算する第5の手段を構成する。
【0044】
実在高補正処理のステップST45〜ST52の各処理は、第3の手段で決定された千円札の残置枚数D3に対して紙幣収納庫31に収納されている千円札の実収納枚数A3が不足するとき、残置枚数D3から実収納枚数A3を減じた枚数Mの千円札の金額を充足する五千円札の最小枚数Pを算出し、この最小枚数Pを第4の手段で決定された五千円札の残置枚数D2に加算するとともに、第3の手段で決定された千円札に対する残置枚数D3から、最小枚数Pの五千円札の金額に相当する千円札の枚数を減じる第6の手段を構成する。
【0045】
[具体例1]
一万円札の収納枚数A1が10枚、5千円札の収納枚数A2が20枚、千円札の収納枚数A3が70枚のとき、指定残置金額Fが123,000円で調整レベルGが“4”の残置回収コマンドを受信した。
【0046】
この場合、先ず、収納庫在高C(=270,000)が指定残置金額Fより多いので、5千円札の収納枚数A2の金額B2(=100,000)と千円札の収納枚数A3の金額B3(=70,000)との合計金額“B2+B3”と指定残置金額Fとが比較される。その結果、合計金額“B2+B3”が指定残置金額Fより大きいので、一万円札の残置枚数D1が“0”と決定される。したがって、残り残置金額Hは、指定残置金額F(=123,000)と等しい。
【0047】
次に、残り残置金額H(=123,000)に対する額面金額“5,000”単位未満の端数金額I(=3,000)が算出され、さらに、この端数金額I相当の千円札の枚数D3が算出される。
【0048】
次に、残り残置金額H(=123,000)から端数金額I(=3,000)が減算される。そして、この端数金額減算後の残り残置金額H′(=120,000)に対して、調整レベルGで指定された比率“6:4”の千円札と五千円札とで充足するための千円札と五千円札の各枚数D2(=9),K(=75)が算出される。しかして、五千円札の残置枚数D2が“9”と決定される。また、千円札の残置枚数D3が“78”と決定される。
【0049】
ここで、五千円札の残置枚数D2(=9)はその収納枚数A2(=20)より小さいが、千円札の残置枚数D3(=78)は、その収納枚数A3(=75)より大きい。すなわち、千円札の残置枚数D3に対して同一金種の収納枚数A3が不足している。このため、実在高補正処理によって、先ず、残置枚数D3から収納枚数A3が減じられてその差M(=3)が算出される。次いで、この差Mが値“5”で除算される。その商=0.6に小数があるので、商の整数部=0に値“1”が加算されて値N(=1)が算出される。その結果、五千円札の残置枚数D2が“10”に補正される。また、千円札の残置枚数D3が“73”に補正される。
【0050】
その結果、紙幣収納庫31からは、10枚の一万円札と、10枚の五千円札と、2枚の千円札とが、紙幣回収庫32に回収される。したがって、紙幣収納庫31には、五千円札が10枚、千円札が73枚残るので、釣銭準備金額は、123,000円となる。
【0051】
[具体例2]
具体例1から調整レベルGを“6”に変更した。
【0052】
この場合、一万円札の残置枚数D1が“0”と決定されてから、残り残置金額H(=123,000)から端数金額I(=3,000)が減算されるまでは、具体例1と同じである。具体例2では、端数金額減算後の残り残置金額H′(=120,000)に対して、調整レベルGで指定された比率“4:6”の千円札と五千円札とで充足するための千円札と五千円札の各枚数D2(=14),K(=50)が算出される。しかして、五千円札の残置枚数D2が“14”と決定される。また、千円札の残置枚数D3が“53”と決定される。
【0053】
ここで、五千円札の残置枚数D2(=14)はその収納枚数A2(=20)より小さく、千円札の残置枚数D3(=53)も、その収納枚数A3(=75)より小さい。その結果、紙幣収納庫31からは、10枚の一万円札と、6枚の五千円札と、22枚の千円札とが、紙幣回収庫32に回収される。したがって、紙幣収納庫31には、五千円札が14枚、千円札が53枚残るので、釣銭準備金額は、123,000円となる。
【0054】
[具体例3]
具体例1から指定残置金額Fを185,000円に変更した。この場合、5千円札の収納枚数A2の金額B2(=100,000)と千円札の収納枚数A3の金額B3(=70,000)との合計金額“B2+B3”が指定残置金額Fより少ないので、その差額を充当する一万円札の最小枚数“2”が算出されて、一万円札の残置枚数D1として決定される。
【0055】
次に1万円札の残置金額分を減じた残り残置金額H(=165,000)に対する額面金額“5,000”単位未満の端数金額Iが算出される。ただし、端数金額Iは“0”なので、この時点における千円札の枚数D3は“0”である。
【0056】
次に、残り残置金額H′(=165,000)に対して、調整レベルGで指定された比率“6:4”の千円札と五千円札とで充足するための千円札と五千円札の各枚数D2(=13),K(=100)が算出される。しかして、五千円札の残置枚数D2が“13”と決定される。また、千円札の残置枚数D3が“100”と決定される。
【0057】
この場合も、千円札の残置枚数D3に対して同一金種の収納枚数A3が不足している。このため、実在高補正処理によって、先ず、残置枚数D3から収納枚数A3が減じられてその差M(=30)が算出される。次いで、この差Mが値“5”で除算される。このとき、商=6.0に小数はないので、商の整数部=6に値“1”は加算されない。その結果、五千円札の残置枚数D2が“19”に補正される。また、千円札の残置枚数D3が“70”に補正される。
【0058】
その結果、紙幣収納庫31からは、8枚の一万円札と、1枚の五千円札とが、紙幣回収庫32に回収される。したがって、紙幣収納庫31には、一万円札が2枚、五千円札が19枚、千円札が70枚残るので、釣銭準備金額は、185,000円となる。
【0059】
このように、本実施形態によれば、紙幣釣銭装置1の残置回収機能において、指定残置金額Fと調整レベルGとを任意に指定するだけで、釣銭準備金として残す紙幣の金額と枚数を金種間で所望の比率とすることができる。
【0060】
以下、その他の実施形態について説明する。
例えば、前記実施形態では、調整レベルGは釣銭準備金として残す五千円札の千円札に対する比率を表わすものとして説明したが、千円札に対する五千円札の比率であってもよい。この場合、図5のステップST30において、調整レベルGを“10−G”に置き換えて、金額Jを算出すればよい。
【0061】
また、実在高補正処理は、ステップST45〜ST52の各処理を先に実行し、ステップST41〜ST44の処理を後から実行してもよい。
【0062】
また、前記実施形態は、最小の額面金額である千円札(第1の貨幣)と、最大の額面金額である一万円札(第3の貨幣)と、その間の額面金額である五千円札(第2の貨幣)の3種類の紙幣を取扱う紙幣釣銭装置1に適用したが、本発明はこの形態に限定されるものではない。例えば、釣銭として使用される五千円札と千円札とを紙幣収納庫31で収納し、一万円札は紙幣回収庫32にて回収する紙幣釣銭装置であってもよい。この場合は、図5のステップST21〜ST26の処理を省略すればよい。すなわち、残置枚数決定処理におけるステップST29〜ST33の第2の手段は、指定残置金額Fから第1の手段で決定された枚数D3分の千円札の金額を減じた残り残置金額H′を、調整レベルGによって指定された比率の千円札と五千円札とで充足するための各枚数K,D2を算出するものとなる。
また、紙幣釣銭装置に限定されるものではなく、硬貨による釣銭装置であっても適用することは可能である。
【0063】
さらに、前記実施形態は、装置内部の記憶部34に発明の機能を実現させる貨幣回収プログラムが予め記録されているものとした。しかしこれに限らず、同様のプログラムがネットワークから装置にダウンロードされてもよい。あるいは、記録媒体に記録された同様のプログラムが、装置にインストールされてもよい。記録媒体は、CD−ROM,メモリカード等のようにプログラムを記憶でき、かつ装置が読み取り可能であれば、その形態は問わない。また、プログラムのインストールやダウンロードにより得る機能は、装置内部のOS(オペレーティング・システム)等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0064】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1…紙幣釣銭装置、5…紙幣投出口、6…紙幣投入口、31…紙幣収納庫、32…紙幣回収庫、33…制御部、34…記憶部、38…搬入・選別部、39…搬出処理部、41…収納データテーブル、42…収納庫在高メモリ、43…残置データテーブル、44…指定残置金額メモリ、45…調整レベルメモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも額面金額が最小の第1の貨幣と額面金額が前記第1の貨幣の額面より大きい第2の貨幣とを収納する貨幣収納部に釣銭準備金として指定された残置金額の貨幣を残して残りの貨幣を前記貨幣収納部から回収する貨幣回収手段、を備え、
前記貨幣回収手段は、
前記残置金額に対して前記第2の貨幣の額面金額単位未満の端数金額を求め、この端数金額に相当する前記第1の貨幣の枚数を算出する第1の手段と、
前記残置金額から前記第1の手段で決定された枚数分の前記第1の貨幣の金額を減じた残り残置金額を、指定された比率の前記第1の貨幣と前記第2の貨幣とで充足するための前記第1及び第2の貨幣の各枚数を算出する第2の手段と、
前記第2の手段で算出された前記第1の貨幣の枚数に前記第1の手段で算出された枚数を加算した枚数を前記第1の貨幣に対する残置枚数として決定する第3の手段と、
前記第2の手段で算出された前記第2の貨幣の枚数を前記第2の貨幣に対する残置枚数として決定する第4の手段と、
を含むことを特徴とする釣銭装置。
【請求項2】
前記第4の手段で決定された前記第2の貨幣に対する残置枚数に対して前記貨幣収納部に収納されている前記第2の貨幣の実収納枚数が不足するとき、前記第2の貨幣に対する残置枚数を前記第2の貨幣の実収納枚数に変更するとともに、前記第2の貨幣に対する残置枚数から前記第2の貨幣の実収納枚数を減じた枚数の前記第2の貨幣の金額に相当する前記第1の貨幣の枚数を算出し、この枚数を前記第3の手段で決定された前記第1の貨幣に対する残置枚数に加算する第5の手段、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の釣銭装置。
【請求項3】
前記第3の手段で決定された前記第1の貨幣に対する残置枚数に対して前記貨幣収納部に収納されている前記第1の貨幣の実収納枚数が不足するとき、前記第1の貨幣に対する残置枚数から前記第1の貨幣の実収納枚数を減じた枚数の前記第1の貨幣の金額を充足する前記第2の貨幣の最小枚数を算出し、この最小枚数を前記第4の手段で決定された前記第2の貨幣に対する残置枚数に加算するとともに、前記第1の貨幣に対する残置枚数から、前記最小枚数の前記第2の貨幣の金額に相当する前記第1の貨幣の枚数を減じる第6の手段、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1または2記載の釣銭装置。
【請求項4】
前記貨幣収納部は、額面金額が最大の第3の貨幣をさらに収納し、
前記貨幣回収手段は、
前記貨幣収納部に収納されている前記第1及び第2の貨幣の合計金額と前記残置金額とから、前記第3の貨幣に対する残置枚数を決定する第7の手段、をさらに含み、
前記第2の手段は、前記残置金額から前記第7の手段で決定された残置枚数分の前記第1の貨幣の金額と前記第1の手段で算出された枚数分の前記第1の貨幣の金額とを減じた残り残置金額を、指定された比率の前記第1の貨幣と前記第2の貨幣とで充足するための前記第1及び第2の貨幣の各枚数を算出することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1に記載の釣銭装置。
【請求項5】
少なくとも額面金額が最小の第1の貨幣と額面金額が前記第1の貨幣の額面より大きい第2の貨幣とを収納する貨幣収納部を備えた釣銭装置の、前記貨幣収納部に釣銭準備金として指定された残置金額の貨幣を残して残りの貨幣を前記貨幣収納部から回収する貨幣回収方法であって、
前記残置金額に対して前記第2の貨幣の額面金額単位未満の端数金額を求め、この端数金額に相当する前記第1の貨幣の枚数を算出する第1のステップと、
前記残置金額から前記第1のステップで決定された枚数分の前記第1の貨幣の金額を減じた残り残置金額を、指定された比率の前記第1の貨幣と前記第2の貨幣とで充足するための前記第1及び第2の貨幣の各枚数を算出する第2のステップと、
前記第2のステップで算出された前記第1の貨幣の枚数に前記第1のステップで算出された枚数を加算した枚数を前記第1の貨幣に対する残置枚数として決定するとともに、前記第2のステップで算出された前記第2の貨幣の枚数を前記第2の貨幣に対する残置枚数として決定する第3のステップと、
を含むことを特徴とする釣銭装置の貨幣回収方法。
【請求項6】
少なくとも額面金額が最小の第1の貨幣と額面金額が前記第1の貨幣の額面より大きい第2の貨幣とを収納する貨幣収納部を備えた釣銭装置のコンピュータに、前記貨幣収納部に釣銭準備金として指定された残置金額の貨幣を残して残りの貨幣を前記貨幣収納部から回収する貨幣回収機能を実現させるためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記残置金額に対して前記第2の貨幣の額面金額単位未満の端数金額を求め、この端数金額に相当する前記第1の貨幣の枚数を算出する第1の手段、
前記残置金額から前記第1の手段で決定された枚数分の前記第1の貨幣の金額を減じた残り残置金額を、指定された比率の前記第1の貨幣と前記第2の貨幣とで充足するための前記第1及び第2の貨幣の各枚数を算出する第2の手段、
前記第2の手段で算出された前記第1の貨幣の枚数に前記第1の手段で算出された枚数を加算した枚数を前記第1の貨幣に対する残置枚数として決定する第3の手段、及び
前記第2の手段で算出された前記第2の貨幣の枚数を前記第2の貨幣に対する残置枚数として決定する第4の手段、
として機能させるための貨幣回収プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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