説明

鉄塔建替工法

【課題】複数の送電線支持体を有する送電線鉄塔の建替工法において、既設用地内で建替えることができ、容易にかつ短期間で施工できる。
【解決手段】既設鉄塔tの基礎間に新設鉄塔Tの基礎を夫々配設し、前記既設鉄塔tに対して新設鉄塔Tが、平面視略45°方向を変えて建設し、当該新設鉄塔Tは、前記各基礎から立設する各主柱材2を、これらの主柱材2の隣接する主柱材間に渡す水平材3が、既設鉄塔tの隣接する主柱材間で構成される外周面の外側に位置するまで略垂直に伸ばし、その後、前記既設鉄塔tの外側で、各主柱材2の間隔が次第に小さくなるように傾斜させて建設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送電線等の鉄塔の建替工法に関するもので、さらに詳しく述べると、既設鉄塔の敷地の範囲内で既設鉄塔の上から新設鉄塔を建てる、変則45°包込工法による建替工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送電容量の大型化に伴い、鉄塔を大きなものに建替える等、鉄塔の建替工事が必要とされるケースが頻繁にある。その様な場合、特に市街地では既設の鉄塔の周りに建物が密集し、新たに鉄塔用地を取得することは非常に困難な状況になっている。そこで、新たな敷地を必要とせず、既設の鉄塔の敷地内で短期間の工事を可能にする、鉄塔の建替工法の開発が要求されている。
【0003】
この様な建替え工法としては、例えば特許文献1に示すように、縦方向に配設される主柱材と、主柱材に対して横方向に配設される腹材を備えて構成されるパネルが複数段載積されるとともに、複数の送電線体を備えてなる送電鉄塔を建替する工法において、新設鉄塔の基礎を、既設鉄塔の基礎の間に配設し、既設の鉄塔に対して新設の鉄塔が、平面視において45°方向を変えて建設されるとともに、新規鉄塔の複数段のパネルのうち、少なくとも一部のパネルが、水平補助材と当該水平補助材の中央部から下方に向かって両側に広がるように配設された斜材により構成されるK字型部を含む腹材とを備え、前記パネルを組み立てる際、主柱材と水平補助材との間に仮設材を設け、前記腹材の一部を既設パネルの外側に一時的に配設することにより、前記既設鉄塔との接触を回避しながら建設され、新規鉄塔の建設途中において前記既設鉄塔が撤去される工法がある。
【0004】
【特許文献1】特許第3639999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、新旧鉄塔の根開きが同程度の建替(例:既設用地内での元位置建替)において、前記特許文献1に示すような45°包込工法を採用する場合、既設鉄塔の部材、特に腹材が、新設の鉄塔の腹材と相互に接触する等、必ず支障となる。その場合、既設鉄塔の複雑な改造や新設鉄塔への仮設材の挿入、建替え後の仮設材の撤去等の煩雑な作業を必要とし、これにより施工工事が長期化し、施工誤り等の要因となるおそれがある。
【0006】
そこで、この発明は、前記の従来工法の欠点を改善し、既設用地内で建替えることができ、容易にかつ短期間で施工できる鉄塔の建替工法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、複数の送電線支持体を有する送電線鉄塔の建替工法において、既設鉄塔の基礎間に新設鉄塔の基礎を夫々配設し、前記既設鉄塔に対して新設鉄塔が、平面視略45°方向を変えて建設し、当該新設鉄塔は、前記各基礎から立設する各主柱材を、これらの主柱材の隣接する主柱材間に渡す水平材が、既設鉄塔の隣接する主柱材間で形成される外周面の外側に位置するまで略垂直に伸ばし、その後、前記既設鉄塔の外側で、各主柱材の間隔が次第に小さくなるように傾斜させて建設する、鉄塔の建替工法とした。
【0008】
また、請求項2の発明は、前記請求項1の発明において、前記新設鉄塔の建設途中において前記既設鉄塔を撤去する、鉄塔の建替工法とした。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、既設鉄塔の各脚部の主柱材間に渡している腹材を取り替えて、隣接する各主柱材間に開口部を設けるように改造し、前記垂直な主柱材間に渡す水平材と、既設鉄塔の腹材との接触を回避しながら建設する、鉄塔の建替工法とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜3の発明によれば、新設鉄塔の主柱材の、基礎から立ち上げる脚部を略垂直に設け、これらの略垂直な主柱材の、隣接する主柱材間に渡す水平材が、既設鉄塔の隣接する主柱材間で構成される外周面の外側に位置するまで垂直部とし、その後前記既設鉄塔の外側で、各主柱材の間隔が次第に小さくなるように傾斜させて建設するため、既設鉄塔の腹材等の部材と新設鉄塔の部材との接触のおそれを、ごく限られた主柱材の垂直部内に限定し、これにより迅速にかつ容易に建替施工ができるものである。従って、短期間での施工が可能となる。
【0011】
また、請求項2の発明によれば、既設鉄塔を、新設鉄塔の建替途中で撤去するため、効率よく建替えを行うことができ、施工の短期間化をより確実なものにする。
【0012】
また、請求項3の発明によれば、既設鉄塔の各脚部の主柱材を渡している腹材を付け替えて、既設鉄塔の脚部の、隣接する各主柱材間に開口部を設けるように改造したため、既設鉄塔の腹材等の部材と新設鉄塔の部材との接触をより確実に回避でき、また、既設鉄塔内への出入りスペースが確保でき、杭施工、鉄塔の資材や機材の搬入、搬出等、狭隘工事箇所での作業が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明は、複数の送電線支持体を有する送電線鉄塔の建替工法において、既設鉄塔の基礎間に新設鉄塔の基礎を夫々配設し、前記既設鉄塔に対して新設鉄塔が、平面視略45°方向を変えて建設し、当該新設鉄塔は、前記各基礎から立設する各主柱材を、これらの主柱材の隣接する主柱材間に渡す水平材が、既設鉄塔の隣接する主柱材間で形成される外周面の外側に位置するまで略垂直に伸ばし、その後、前記既設鉄塔の外側で、各主柱材の間隔が次第に小さくなるように傾斜させて建設し、前記新規鉄塔の建設途中において前記既設鉄塔を撤去する、鉄塔の建替工法とした。
【0014】
これにより、既設鉄塔の用地内で、迅速にかつ容易に建替施工ができる。
【実施例1】
【0015】
以下、この発明の実施例1を図に基づいて説明する。図1はこの発明の新設鉄塔と既設鉄塔の構成を示す正面図、図2は既設鉄塔と新設鉄塔の基礎部分を示す平面図、図3は既設鉄塔を正面にして新設鉄塔の垂直部を示す説明側面図、図4は新設鉄塔の垂直部と既設鉄塔の脚部を示す説明斜視図、図5は新設鉄塔と既設鉄塔の複数の異なる箇所における主柱材及び水平材の位置関係を示す説明断面図である。
【0016】
図1に示すように、新設鉄塔Tは、既設鉄塔tを被うように建てられる。しかしながら、新設鉄塔Tの4個の各基礎1は、図2に示すように、既設鉄塔tの4個の基礎101の間であって、平面視45度、向きを変えている。また、この建替工事において、新設鉄塔Tを建設する時点においては既設鉄塔tは撤去せずそのまま残しておき、新設鉄塔Tの建設途中で既設鉄塔tを撤去する。
【0017】
新設鉄塔Tは、各基礎1から主柱材2を垂直に立てる。そうして、適宜の高さで、隣接する主柱材2間で、複数段に水平材3を渡し強度を保つ。その場合、主柱材2の下部では、図4に示すように、既設鉄塔tの主柱材102の内側を通っている。そして、各主柱材2を、その上端に主柱材2を重ねて接続していき、隣接する各主柱材2を渡す水平材3が、既設鉄塔tの、隣接する主柱材102間に形成される外周面の外側に位置するまで垂直に伸ばす。
【0018】
そして、図4に示すように、隣接する各主柱材2を渡す水平材3が、既設鉄塔tの、隣接する主柱材102間に形成される外周面の外側に位置した後、前記既設鉄塔tの外側で既設鉄塔tを包み込むように、各主柱材2を、各主柱材2が相互に次第に近接するように所定の角度に傾斜させて伸ばしていき、新設鉄塔Tを建設する。
【0019】
この新設鉄塔Tの建設途中で、送電線を停電させ、既設鉄塔tの複数の送電線支持体104に支持された各送電線を、新設鉄塔Tの上部に仮取付けする(図示省略)。その後、既設鉄塔tを上から順に分解、撤去する。そして、新規鉄塔Tが組み立てられた時点で、再び送電を停電させ、新規鉄塔Tの正規な送電線支持体4に各送電線を取り付ける(図示省略)。
【0020】
この様にして、既設鉄塔tは新規鉄塔Tに建替られる。この工法によれば、図1におけるパネルP2の箇所では、図5の(a)図に示すように、新設鉄塔Tの水平材3と、既設鉄塔tの水平材103は交差、接触するおそれがある。しかしながら、図1のパネルP1の箇所、即ち垂直な主柱材2の頂部では、図5の(b)図に示すように、新設鉄塔Tの水平材3は既設鉄塔tの水平材103の外側に位置しており、これらが相互に接触するおそれはない。また、さらに新設鉄塔TのパネルP1より高い箇所では、常に図5の(c)図に示すように新設鉄塔Tの水平材3は既設鉄塔tの外側に位置し、これらは相互に接触するおそれはない。
【0021】
従って、実施例1の建替工法においては、主柱材の垂直部内で、既設鉄塔の部材に接触する恐れがあるが、それも従来例の工法と比べ、きわめて限定された範囲でしかそのおそれはない。新設鉄塔の大部分である、主柱材の垂直部以外の箇所では、既設鉄塔との間にクリアランスを保ち、部材同士が接触する恐れはない。それ故、建替工事が容易で、迅速な施工ができる。
【0022】
また、図6は、上記実施例1の他の例を示す。既設鉄塔tの各脚部の主柱材102間に渡している腹材105を取り替えて、隣接する各主柱材間に開口部106を設けるように改造したものである。これにより、前記垂直な主柱材2間に渡す水平材3と、既設鉄塔tの腹材105との接触を回避しながら建設することができる。
【0023】
これにより、既設鉄塔の腹材等の部材と新設鉄塔の部材との接触をより確実に回避でき、また、既設鉄塔内への出入りスペースが確保でき、杭施工、鉄塔の資材や機材の搬入、搬出等、狭隘工事箇所での作業が可能となる。
【0024】
なお、上記実施例1では、基礎1から立ち上げる主柱材2を垂直に設けたが、多少内側にすぼまるように傾斜しても良く、また、外側に拡がるように傾斜することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施例1の新設鉄塔と既設鉄塔の構成を示す正面図である。
【図2】この発明の実施例1の既設鉄塔と新設鉄塔の基礎部分を示す平面図である。
【図3】この発明の実施例1の既設鉄塔を正面にして新設鉄塔の垂直部を示す説明側面図である。
【図4】この発明の実施例1の新設鉄塔の垂直部と既設鉄塔の脚部を示す説明斜視図である。
【図5】この発明の実施例1の新規鉄塔と既設鉄塔の複数の異なる箇所における主柱材及び水平材の位置関係を示す説明断面図である。
【図6】この発明の実施例1の他の例における既設鉄塔を正面にして新設鉄塔の垂直部を示す説明側面図である。
【符号の説明】
【0026】
T 新設鉄塔
1 基礎 2 主柱材
3 水平材 4 送電線支持体
t 既設鉄塔
101 基礎 102 主柱材
103 水平材 104 送電線支持体
105 腹材 106 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送電線支持体を有する送電線鉄塔の建替工法において、
既設鉄塔の基礎間に新設鉄塔の基礎を夫々配設し、前記既設鉄塔に対して新設鉄塔が、平面視略45°方向を変えて建設し、
当該新設鉄塔は、前記各基礎から立設する各主柱材を、これらの主柱材の隣接する主柱材間に渡す水平材が、既設鉄塔の隣接する主柱材間で形成される外周面の外側に位置するまで略垂直に伸ばし、
その後、前記既設鉄塔の外側で、各主柱材の間隔が次第に小さくなるように傾斜させて建設することを特徴とする、鉄塔の建替工法。
【請求項2】
前記新設鉄塔の建設途中において、前記既設鉄塔を撤去することを特徴とする、請求項1に記載の鉄塔の建替工法。
【請求項3】
既設鉄塔の各脚部の主柱材間に渡している腹材を取り替えて、隣接する各主柱材間に開口部を設けるように改造し、前記垂直な主柱材間に渡す水平材と、既設鉄塔の腹材との接触を回避しながら建設することを特徴とする、請求項1又は2に記載の鉄塔の建替工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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