説明

鉄塔

【課題】構造性能を向上することができる鉄塔を提供することを目的とする。
【解決手段】鉄塔1は、基礎2に支持され鉛直方向に沿って設けられる複数の柱主材3と、複数の柱主材3間に設けられる複数の副材4とによって構成される鉄塔1であって、鉛直方向下層部8の骨組構造形式がKトラス形であり、鉛直方向上層部9の骨組構造形式がブライヒ形であることを特徴とする。したがって、鉄塔1は、鉛直方向下層部8の柱主材3において大きな曲げ応力が発生することを抑制することができ、構造性能を向上することができる、という効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送電用鉄塔、配電用鉄塔、通信用アンテナが設置される鉄塔等、種々の用途に用いられる鉄塔が知られている。このような鉄塔は、骨組構造形式として、例えば、ダブルワーレン形、Kトラス形、プラット形、ブライヒ形等、様々な形式が採用されている。例えば、特許文献1には、上部に風力係数の小さい送電用鋼管単柱鉄塔部を用い、下部に鉄塔製作費の安価なブライヒ結構の送電用山形鋼鉄塔部を用いた複合構造送電用鉄塔が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−232142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような特許文献1に記載の複合構造送電用鉄塔は、例えば、構造性能の向上等の点で、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、構造性能を向上することができる鉄塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る鉄塔は、基礎に支持され鉛直方向に沿って設けられる複数の柱主材と、前記複数の柱主材間に設けられる複数の副材とによって構成される鉄塔であって、鉛直方向下層部の骨組構造形式がKトラス形であり、鉛直方向上層部の骨組構造形式がブライヒ形であることを特徴とする。
【0007】
また、上記鉄塔では、骨組構造形式が前記Kトラス形である範囲は、前記柱主材の鉛直方向に沿った高さに対して、鉛直方向下側の30%以上50%以下の範囲であり、骨組構造形式が前記ブライヒ形である範囲は、前記Kトラス形である範囲外の残りの範囲であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る鉄塔は、構造性能を向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施形態に係る鉄塔の概略構成を表す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る鉄塔の概略構成を表す立面図である。
【0012】
図1に示す本実施形態に係る鉄塔1は、地盤に埋め込まれた基礎2の上部に設けられる鉄製の骨組み構造により構成される鉛直方向に沿った細長い建造物であり、例えば、不図示の通信用アンテナやそれらの付帯設備が設置されるものである。
【0013】
本実施形態の鉄塔1は、地中に埋設される基礎2、複数の柱主材3、複数の副材4等を含んで構成され、これらが相互にボルト等で接合されて構成される。この鉄塔1は、水平平面(水平方向に沿った平面形状)が正方形平面となっている。そして、鉄塔1は、この正方形平面の各頂点にそれぞれ鉛直方向に沿って設けられる柱状の柱主材3を備えている。また、この鉄塔1は、複数の柱主材3、複数の副材4がそれぞれ山形部材としての山形鋼材(いわゆるアングル)によって構成されている。
【0014】
具体的には、柱主材3は、鉄塔1の正方形平面の各頂点にそれぞれ1つずつ、合計4本が設けられる。各柱主材3は、鉛直方向に沿った柱状の部材であり、それぞれ下端部がコンクリート等からなる基礎2によって支持されて概ね鉛直上方に向けて立設されている。本実施形態の鉄塔1は、立面形状が一対の柱主材3の各塔脚部(柱主材3の鉛直方向下端)3aから各塔頂部(柱主材3の鉛直方向上端)3bまでを直線で結んだ略台形状となっている。これにより、この鉄塔1は、構造性能と経済性とをより合理的に両立することが可能となる。
【0015】
複数の副材4は、複数の柱主材3間に設けられる。複数の副材4は、例えば、骨組構造を構成する部材として、複数の水平材5、複数の斜材6、複数の補剛材7a、7b等を含んで構成される。水平材5は、一対の柱主材3に対して水平方向に沿って渡される横材である。斜材6は、一対の柱主材3、あるいは、柱主材3と水平材5とに対して水平方向に傾斜して渡される部材である。補剛材7a、7bは、柱主材3と斜材6とに渡される座屈補強部材である。鉄塔1は、例えば、補剛材7aを設けることで、斜材6を太くすることなく強度を上げることができる。鉄塔1は、例えば、補剛材7bを設けることで、柱主材3を太くすることなく強度を上げることができる。
【0016】
鉄塔1は、4本の柱主材3が正方形平面の各頂点にそれぞれ1つずつ位置し、複数の副材4が隣接する柱主材3を結ぶようにしてボルト等を介して固設されることで、これら複数の副材4が4本の柱主材3間にそれぞれ種々の骨組構造をなす面を構成する。この鉄塔1は、正方形平面が地表側から上方に向かって、相似形であって、かつ、徐々に小さくなるように構成される。
【0017】
なお、この鉄塔1は、水平平面が正方形平面であり、鉄塔1の鉛直方向に沿った高さを水平方向に沿った幅で除算した値に応じた、いわゆる塔状比が7以上8以下の範囲内に設定されることで、構造性能と経済性とのさらなる合理化を図っている。ここで、塔状比とは、[塔体高さL÷脚部スタンスW]に相当する。塔体高さLは、柱主材3の鉛直方向に沿った高さに相当する。脚部スタンスWは、隣接する柱主材3の塔脚部3aの水平方向に沿った間隔(長さ)に相当する。鉄塔1は、例えば、この塔状比の増加に伴い部材の軸力が増加する傾向にあるが、反面、塔状比が大きくなりすぎると不経済となる傾向にあり、このため、塔状比を7〜8程度とすることで構造性能と経済性とを合理的に両立することが可能となる。
【0018】
そして、本実施形態の鉄塔1は、鉛直方向下層部8の骨組構造形式をKトラス形、鉛直方向上層部9の骨組構造形式をブライヒ形としたハイブリッド型の骨組構造形式とすることで、構造性能のさらなる向上を図っている。すなわち、本実施形態の鉄塔1は、鉛直方向下層部8のKトラス構造と、鉛直方向上層部9のブライヒ結構とを組み合わせた複合結構により構成される。
【0019】
鉛直方向上層部9の骨組構造形式として適用されるブライヒ形は、一対の柱主材3の間に渡される一対の斜材6の交点を通るようにして水平材5が設けられる。このブライヒ形では、一対の斜材6は、水平材5のほぼ中央部で十字型に交差する。このブライヒ形では、典型的には、斜材6は、端部が柱主材3にて鉛直方向に隣接する他の斜材6の端部の近傍に接合される。さらに言えば、このブライヒ形では、鉛直方向に隣接する一対の水平材5と、4本の斜材6とが、一対の水平材5の間に矩形(ひし形)を形成する。このブライヒ形の骨組構造は、一般的に強度及び経済性から合理的な構造である。
【0020】
一方、鉛直方向下層部8の骨組構造形式として適用されるKトラス形は、一対の柱主材3の間に渡される水平材5の鉛直方向下側に一対の斜材6が設けられる。このKトラス形では、一対の斜材6は、各鉛直方向上側端部が水平材5のほぼ中央部下側に接合され水平材5の下側に角部を形成し、各鉛直方向下側端部がそれぞれに対応する柱主材3に接合される。このKトラス形では、典型的には、斜材6は、鉛直方向下側端部が柱主材3にて鉛直方向下側に隣接する水平材5の端部近傍に接合される。さらに言えば、このKトラス形では、鉛直方向に隣接する一対の水平材5と、当該一対の水平材5に挟まれる一対の斜材6とが、一対の水平材5の間に三角形(二等辺三角形)を形成する。
【0021】
この結果、鉄塔1は、鉛直方向上層部9の骨組構造形式としてブライヒ形を適用することで経済性の向上を図った上で、鉛直方向下層部8の骨組構造形式としてKトラス形を適用することで、この鉛直方向下層部8の柱主材3において大きな曲げ応力が発生することを抑制することができる。これにより、鉄塔1は、全体として経済性の向上を図った上で、強度を向上することができ、構造性能を向上することができる。
【0022】
鉄塔1は、典型的には、鉛直方向下側から2層以上がKトラス形によって構成される。ここでは、鉄塔1は、鉛直方向下側から5層目までがKトラス形によって構成される。より詳細には、本実施形態の鉄塔1は、鉛直方向に対して、塔脚部3aから鉛直方向に5つ目の水平材5までの範囲がKトラス形をなす鉛直方向下層部8、当該5つ目の水平材5から塔頂部3bまでの残りの範囲がブライヒ形をなす鉛直方向上層部9である。骨組構造形式がKトラス形である範囲は、柱主材3の鉛直方向に沿った高さ、すなわち、塔体高さLに対して、鉛直方向下側の30%以上50%以下の範囲であることが好ましく、骨組構造形式がブライヒ形である範囲は、Kトラス形である範囲外の残りの範囲であることが好ましい。すなわち、鉄塔1は、鉛直方向下層部8の鉛直方向に沿った高さL1、鉛直方向上層部9の鉛直方向に沿った高さL2が下記の関係式(1)、(2)を満たすことが好ましい。

L1+L2=L ・・・ (1)

0.3・L≦L1≦0.5・L ・・・ (2)

【0023】
次に、上記のように構成される鉄塔1を、以下で説明する点に留意して3次元解析モデルによる応力解析を行ってその性能を概略的に評価する。すなわち、一般的に鉄塔設計においては平面解析が主流となっているが、実構造物の実応力状態を正確に再現する上では3次元による正確なモデル化が重要となる。これにより、例えば、設計段階における応力の不正確な把握・設定から引き起こされうる実際の鉄塔の地震や風による不具合についてのいくつかを回避することができる。
【0024】
そこでここでは、正確な応力状態を把握するにあたって以下の3点に配慮する。
1.3次元モデルによる解析によって応力状態を把握する。
2.柱主材3については全長にわたって剛接合としてモデル化する。
3.3次元モデルの設定において補剛材7a、7bをモデルに加える。
【0025】
例えば、柱主材3に関しては、鉄塔におけるトラス構造では、一般的に、軸力のみでモデル化、設計されている傾向にあったが、実際には連続体として配置されていることで曲げ応力が生じるため、軸力と曲げの複合応力で検討することがより好ましい。さらに言えば、山形鋼材においてはその曲げ応力が設計上非常に重要になることがあるため、より実情に近い応力状態を再現することが好ましい。このため、柱主材3については全長にわたって剛接合としてモデル化する。
【0026】
また、従来、補剛材7a、7bは、二次部材的な扱いとされ応力解析においてモデル化されない傾向にあるが、実際には柱主材3の補剛材7a、7bの接合位置において応力変化が生じているため、より実情に近い応力状態を再現することが好ましい。このため、3次元モデルの設定において補剛材7a、7bをモデルに加える。
【0027】
以上の点に留意して、鉄塔1に対して3次元解析モデルによる応力解析を行った結果、鉄塔1の鉛直方向(塔体高さ方向)に対して塔脚部3aから塔体高さLの概ね30%以上50%以下の高さあたりまでは骨組構造形式としてKトラス形を採用することで柱主材3の曲げ応力の発生を抑制することができ、それ以上の高さの骨組構造形式としてブライヒ形を採用することで、構造性能及び経済性の上で、合理的な骨組構造形式であることが確認された。
【0028】
一方、鉄塔の鉛直方向に対して塔脚部3aから塔体高さLの概ね30%未満の高さまでは骨組構造形式としてKトラス形を採用し、それ以上の高さの骨組構造形式としてブライヒ形を採用した場合、ブライヒ形の範囲における鉛直方向下層において、柱主材3と斜材6との接合部分(結節点)近傍で、柱主材3に大きな曲げ応力が発生し座屈が発生しうるという知見が得られた。また逆に、鉄塔の鉛直方向に対して塔脚部3aから塔体高さLの概ね50%を超える高さまでは骨組構造形式としてKトラス形を採用し、それ以上の高さの骨組構造形式としてブライヒ形を採用した場合、経済性が悪化するという知見が得られた。
【0029】
以上で説明した実施形態に係る鉄塔1によれば、基礎2に支持され鉛直方向に沿って設けられる複数の柱主材3と、複数の柱主材3間に設けられる複数の副材4とによって構成される鉄塔1であって、鉛直方向下層部8の骨組構造形式がKトラス形であり、鉛直方向上層部9の骨組構造形式がブライヒ形である。したがって、鉄塔1は、鉛直方向下層部8の柱主材3において大きな曲げ応力が発生することを抑制することができ、構造性能を向上することができる。
【0030】
なお、上述した本発明の実施形態に係る鉄塔は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0031】
以上の説明では、鉄塔1は、通信用アンテナが設置される鉄塔であるものとして説明したが、これに限らず、送電用鉄塔、配電用鉄塔等であってもよい。
【0032】
以上の説明では、鉄塔は、塔状比が7以上8以下の範囲内に設定されるものとして説明したがこれに限らない。
【0033】
以上の説明では、鉄塔は、水平平面(水平方向に沿った平面形状)が正方形平面であるものとして説明したがこれに限らず、例えば、三角形平面、正方形以外の矩形平面等であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 鉄塔
2 基礎
3 柱主材
3a 塔脚部
3b 塔頂部
4 副材
5 水平材
6 斜材
7a、7b 補剛材
8 鉛直方向下層部
9 鉛直方向上層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に支持され鉛直方向に沿って設けられる複数の柱主材と、前記複数の柱主材間に設けられる複数の副材とによって構成される鉄塔であって、
鉛直方向下層部の骨組構造形式がKトラス形であり、鉛直方向上層部の骨組構造形式がブライヒ形であることを特徴とする、
鉄塔。
【請求項2】
骨組構造形式が前記Kトラス形である範囲は、前記柱主材の鉛直方向に沿った高さに対して、鉛直方向下側の30%以上50%以下の範囲であり、
骨組構造形式が前記ブライヒ形である範囲は、前記Kトラス形である範囲外の残りの範囲である、
請求項1に記載の鉄塔。

【図1】
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【公開番号】特開2012−246685(P2012−246685A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119633(P2011−119633)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(511092295)レンドリース・ジャパン株式会社 (3)