説明

鉄心付電磁ソレノイド装置及びその製造方法

【課題】温度ヒューズの誤動作を防止し、成形不良をなくすようにした。パイプ内径の坐屈を生じないようにした。短ストローク鉄心の場合でも、重量が軽く製造コストが安価なままで、一定以上の電磁駆動力を得る。
【解決手段】コイル2を覆う絶縁テープ14と、この絶縁テープ14上に配置されコイル2に電気的に接続された温度ヒューズ8と、ボビン3の軸方向の両端が嵌り合う両端を有するケーシング15と、このケーシング15の両端とボビン3の両端との間を液密に嵌合させるOリング16とを有する。ヨークの中空部の角部あるいは補助ヨーク1c、1dの筒の角部にC面1mを形成し、補助ヨーク1c、1dの筒の内側を覆い軸方向両端のヨーク間を貫通するパイプ13のC面1mに当たる部分13eを薄く形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば冷蔵庫用開閉扉に用いられる鉄心付電磁ソレノイド装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の冷蔵庫の大型化により、その開閉扉も大型化しており、このため開閉扉の閉鎖状態でのマグネットによる吸着力も大きくなっている。この場合、開閉扉の開放に当たり開放操作力を補助するため鉄心付電磁ソレノイド装置による駆動力(電磁吸引力)にて、操作者の負担を軽減する。
従来における冷蔵庫用開閉扉開放のための鉄心付電磁ソレノイド装置においては、特許文献1に示すような構成を有するものが挙げられる。図9は、特許文献1に示す鉄心付電磁ソレノイド装置を示すもので、この鉄心付電磁ソレノイド装置は、冷蔵庫の開閉扉の近傍で冷蔵庫の本体、例えば天井に形成された凹部に収納されて固定され、電磁ソレノイドの駆動力によりプランジャを突出させ開閉扉をマグネットの吸引力に抗して開放させるように機能する。図9において、鉄心付電磁ソレノイド装置は、全体として枠状ヨーク1内にコイル2が巻回されて収納され、このコイル2の軸心部分には軸方向に移動可能な鉄心4及びこの鉄心4に連結されたプランジャ(押圧部材)5が備えられる。
【0003】
電気回路を構成するコイル2には電源(図示省略)に接続されるコネクタ6からのリード線7が接続され、このリード線7にはカバー8cにて覆われた温度ヒューズ8が介在されている。ここでコイル2自体は、例えば線径0.34mmφのポリウレタン銅線が筒状のボビン3上に巻回数3500ターンにて巻回され、全体がモールド樹脂(熱硬化性樹脂)9にて成形されている。このモールド樹脂9は、耐熱及び防滴あるいは防水のために施され、電気部品であるコイル2を保護する。
磁気回路を構成する枠状ヨーク1は、電磁ソレノイドのコイル2の周囲を囲むように構成され、その軸方向両端にて脚部10が張り出し、その脚部10には計3個のだるま穴11が開けられている。このだるま穴11は、冷蔵庫の本体にこの電磁ソレノイドを固定するためのねじ締め付け穴である。枠状ヨーク1の軸方向片端部は、2枚のヨーク板1a、1bが備えられ、ヨーク板1bは前述のだるま穴11を有する脚部10が張り出している。更に、コイル2が巻回されたボビン3の内筒には磁気吸引力を向上させるべく筒状の補助ヨーク1c、1dが軸方向両端より嵌め込まれる構造を有し、この補助ヨーク1dは枠状ヨーク1に、及び補助ヨーク1cはヨーク板1aにそれぞれ磁気的に接続されている。したがって、コイル2への通電に伴う磁界の発生により、鉄心4、補助ヨーク1c、1d、枠状ヨーク1、ヨーク板1a、1bからなる磁路が形成される。
【0004】
鉄心4は、その周りに備えられた復帰用ばね12にて図中右方向に偏倚されるが、コイル2への通電によって鉄心4に電磁力が作用し、補助ヨーク1c、1dのそれぞれの長さに応じた磁気吸引力が発生し、鉄心4及び押圧部材5は図中左方向に駆動される。このとき、開閉扉を開放するため所定の位置にて所定の大きさの開閉扉開放駆動力(電磁吸引力)が発生することになる。なお、鉄心4の外方で補助ヨーク1c、1dの内側には、鉄心4と補助ヨーク1dとの接触による磁気ショート防止のため、鉄心4の摺動安定性あるいは鉄心4の磨耗防止のため、例えば黄銅のパイプ13が嵌め込まれている。
【特許文献1】特開2001−59379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示す鉄心付電磁ソレノイド装置においては、ボビン3上に巻回されたコイル2をモールド樹脂9にて成形しているので、温度ヒューズ8はこのモールド樹脂9上に配置されることになる。しかし、実際上、例えば巻回数3500ターンもの巻回数にわたりコイル2を巻く場合、コイル2をボビン3上に一様に巻くことは困難であり、コイル2の巻き厚さがばらつくことになる。このコイル2の巻き厚さのばらつきは、コイル2の直接の温度検出ではなくモールド樹脂9を介しているため、位置により温度分布の不均一をもたらす。このことは、温度ヒューズ8による一定温度の検出があったとしても、コイル温度としては、ばらつくことになる。そして、この温度のばらつきは、実際上コイル温度が温度ヒューズ8の動作必要温度なっても動作しない、あるいは動作必要温度にならなくても動作してしまうという、結果的に温度ヒューズの誤動作の問題が生ずる。また、モールド樹脂9の樹脂封入工程にて成形不良が発生した場合、この発生により使用部品の全て(例えばボビン3、コイル2、リード線7、等)が再使用できないという問題もある。
【0006】
更に、コイル2が巻回されたボビン3の内筒及び補助ヨーク1c、1dの筒を貫通するように配置されるパイプ13は、ヨーク板1bあるいは枠状ヨーク1の中央部(開口)から突出させ、プレス機(図示省略)により軸方向両側からこの突出部分を押圧してヨーク板1bや枠状ヨーク1に圧着される。しかし、このプレス加工に際して、部品寸法のばらつきや加工のばらつきによって、図10のようにパイプ13の内径に座屈を生じ、鉄心4の挿入や摺動に支障をきたすという問題が生じている。
また、冷蔵庫の開閉扉装置としてみた場合、冷蔵庫本体に鉄心付電磁ソレノイド装置の収納部分を設ける一方この収納部分に収まる大きさで重量も少ない鉄心付電磁ソレノイド装置の要請がある反面、冷蔵庫の大型化ひいては開閉扉の大型化により押圧ストロークが特許文献1に示される例えば30〜40mmもの大きな電磁ソレノイドが必要になる。したがって、鉄心の長さがある程度長いものが必要であるため、鉄心4の重量を抑えしかもテフロン(登録商標)等の高価な防錆加工処理の表面積を少なくして製造コストを抑えるため鉄心径を小さくしているのが現状であるが、この場合、重量とか嵩の許容範囲内にあってコイル2を太く巻回数を多くして起磁力を増やすことで、当然マグネットの吸着力に抗して開閉扉を押圧する電磁吸引力を増大させることが可能である。かかる所望の電磁吸引力を発生させつつ重量を抑え製造コストを抑えるべく鉄心径を小さくするという姿勢は、複数ドア冷蔵庫にあって小型開閉扉の短ストロークの鉄心についてもそのまま踏襲されているのが現状である。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みて発明されたもので、結果的に温度ヒューズの誤動作を防止し、成形不良をなくすようにした鉄心付電磁ソレノイド装置の提供を目的とする。
更に、本発明は、パイプ内径の座屈を生じないようにした鉄心付電磁ソレノイド装置及びその製造方法の提供を目的とする。
また、本発明は、短ストローク鉄心の場合でも、重量が軽く製造コストが安価なままで、一定以上の電磁吸引力を得る鉄心付電磁ソレノイド装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成する本発明は、コイルが巻回されたボビンの内筒に軸方向に沿って移動可能な鉄心及び押圧部材を配置した鉄心付電磁ソレノイド装置において、上記コイルを覆う絶縁テープと、この絶縁テープ上に配置され上記コイルに電気的に接続された温度ヒューズと、上記ボビンの軸方向の両端が嵌り合う両端を有するケーシングと、このケーシングの両端とボビンの両端との間を液密に嵌合させるOリングと、を有することを特徴とする。
更に、本発明は、コイルが巻回されるボビンの内筒の軸方向両側より補助ヨークの筒を嵌め、この補助ヨークの上記軸方向両側に上記筒に対応する中空部を有するヨークを配置し、このヨークの中空部の角部あるいは補助ヨークの筒の角部にC面を形成し、上記補助ヨークの筒の内側を覆い上記軸方向両端のヨーク間を貫通するパイプの上記C面に当たる部分を薄く形成した構造を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、円筒状のボビンにコイルを巻回し、このコイルを温度ヒューズを介して電源に接続し、上記ボビンの内側に軸方向に移動可能な鉄心とこの鉄心に連結された押圧部在とを備えた短ストロークの鉄心付電磁ソレノイド装置において、上記軸方向に直角な横断面積を一定とした場合、上記コイル径及びコイル巻回数を減少させたコイル占有横断面積に対応して、上記コイル径及びコイル巻回数を減少させて起磁力を減少させても電磁吸引力が増大する範囲内にて上記コイル内に配置される鉄心径を太くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述の本発明によれば、コイルに密着して温度ヒューズを取付けることができかつボビンも含めたケーシングを難燃材料にて形成しかつ防水構造としたことで、温度ヒューズの的確な温度検出が可能となり、温度のばらつきによる誤動作が無くなる。また、モールド樹脂封入工程が無くなるので、使用部品の全てが再使用できないということもなくなり、不良品の発生も抑えられる。
また、上述の発明によれば、パイプの圧着に際し、部品寸法や加工のばらつきが存在したとしても、この薄いパイプ端部とヨークのC面によりこのばらつきが相殺され、パイプの肉厚の部分に座屈等の変形は生じない。
【0011】
更に、上述の発明によれば、従来例に比較して鉄心が短くなって小型化をもたらしこの小型化に伴い防錆処理等の表面積の減少による低コスト化につながり、電流低減により低電力化をもたらし、また従来のヨーク板の削減ができるにもかかわらず、磁気吸引力の増大を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ここで、本発明の実施形態について述べる。
〔第1実施形態〕
図1は、一実施形態の鉄心付電磁ソレノイド装置全体を示すものである。図1において、図9と同一部分には同一符号を付す。鉄心付電磁ソレノイド装置は、枠状ヨーク1内にボビン3上に巻回されたコイル2を有し、このコイル2の内部にあってボビン3の内筒に、軸方向に移動可能な鉄心4及びこの鉄心4に軸方向に沿って連結された押圧部材5を有する。そして、コイル2に通電することによってコイル2内に磁界が発生し、鉄心4はこの磁界に吸引されて軸方向に移動する。押圧部材5は、この鉄心4の移動と共に移動し開閉扉(図示省力)を開放するように押圧するものである。
【0013】
この鉄心付電磁ソレノイド装置は、枠状ヨーク1の軸方向両端に張り出された3個のだるま穴11を有する脚部10を有し、この脚部10のだるま穴11にてこの鉄心付電磁ソレノイド装置を冷蔵庫本体にねじ止め固定する。また、枠状ヨーク1の脚部10を除いたヨークの本体は、ボビン1やコイル2を覆い図1(a)の左側では中央部(開口)を有し、右側でもヨーク板1bの中央部(開口)を有する。そして、この中央部は、鉄心4及び押圧部材5が貫通する。
電気回路としては、電源(図示省略)に接続されるコネクタ6、このコネクタ6に接続されるリード線7、このリード線7に接続された温度ヒューズ8、そして温度ヒューズ8につながるコイル2からなる。このコイル2は、例えば0.28mmφの径を有するポリウレタン銅線をボビン3上に2700ターン巻回したものである。
【0014】
図2(a)は、温度ヒューズ8の接続状態と、絶縁テープ14の被覆状態を示しており、2本のリード線7がコイル2の巻き始め及び巻き終わりに接続され、この一本のリード線7に温度ヒューズ8が接続されている。すなわち、コイル2がボビン3に巻回された状態で、コイル2を周囲と絶縁するためにコイル全体が例えば0.15mm厚さの絶縁テープ14によって覆われる。この絶縁テープ14としては、ボビン3の軸方向両側に設けられたフランジ3a、3bを除くコイル2上のみに被覆する(図2(a)参照)。そして、この絶縁テープ14が巻かれたコイル2の表面には、温度ヒューズ8が密着して置かれる。この場合、仮にコイル2の巻回数が多くてコイル2が一様に巻回されなくても、温度ヒューズ8は絶縁テープ14を介してコイル2に密着していることには変わりが無く、的確な温度検出が可能である。温度ヒューズ8は、絶縁テープ14が介在するとはいえ、コイル2に密着することになるのでコイル2の温度を的確に検出することができる。こうして、温度ヒューズ8は、電源からの電流をコイル2に供給する通電路の一部を構成するものであるが、同時にコイルの温度を検出して許容温度以上の場合にはこの通電路を遮断するものである。そして図2(b)は、ボビン3のフランジ3bを図2(a)の横方向から見たもので、リード線7の導出口3cが形成されている。
【0015】
図1に戻り、ボビン3上にコイル2が巻回され、コイル2上に絶縁テープ14が巻かれ、この絶縁テープ14上に通電路を構成する温度ヒューズ8が密着された状態で、ケーシング15がかぶせられる。このケーシング15は、ボビン3のフランジ3a、3bと嵌まり合う筒状の構造を有し、フランジ3a、3bに形成された溝17に嵌まるOリング16によって液密に構成される。そして、このケーシング15は、難燃性規格UL94での難燃グレード5VAの可塑性樹脂(例えばPBT樹脂)からなる。なお、このケーシング15の材質は、ボビン3の材質でもある。ケーシング15は、コイル2による温度上昇に耐えるため、上述のような性質を有すると共に構造上防水あるいは防滴のため外部に対し液密になっている。図3(a)は、ケーシング15を示し、図3(b)はボビン3上にケーシング15を装着した状態を示す。図3(b)に示す斜線部分は、冷蔵庫用開閉扉装置として冷蔵庫本体に設けた凹部に電磁ソレノイド装置を配置した状態で、誤って水が凹部に浸入した時の水位(凹部の深さ)を示す。このようにソレノイドの約半分が水に浸かる恐れがあるのでケーシング15による防水は必要不可欠である。
【0016】
こうしてコイル2に密着して温度ヒューズ8を取付けることができかつボビンも含めたケーシング15を難燃材料にて形成し防水としたことで、温度ヒューズ8の的確な温度検出が可能となり、温度のばらつきによる誤動作が無くなる。また、従来のようなモールド樹脂封入工程が無くなるので、使用部品の全てが再使用できないことが無く、不良品の発生も抑えられる。
〔第2実施形態〕
図1において、枠状ヨーク1及びヨーク板1bの中央部(開口)にあって、ボビン3の内筒側には軸方向両側から筒状の補助ヨーク1c、1dが嵌め込まれている。そして、枠状ヨーク1、ヨーク板1bそれぞれの中央部(開口)、及び補助ヨーク1c、1dの筒を内側から覆うようにして黄銅製のパイプ13が貫通して嵌め込まれる。このパイプ13は、前述したように磁気ショートの防止等の機能を有する。パイプ13がボビン3に沿い貫通して嵌め込まれたままの状態では、図4(b)に示すように端部が突出した状態となっている。この場合、パイプ13の突出した端部13eは他の部分よりもその厚みが薄く形成され、しかもヨークの中央部に対応する端部13eにてヨーク側に空隙が存在するように薄くなっている。その一方で、枠状ヨーク1及びヨーク板1bの中央部の開口角部にはC面1mが形成されている。このような構成にあって、パイプ13を枠状ヨーク1やヨーク板1bに圧着するについては、図4(a)に示すようにプレス機(図示省略)のカールポンチにてパイプ13の軸方向両側での端部13eを塑性変形する。このとき、パイプ13の端部13eは、薄いので低いプレス圧力でも変形しやすく、図1(d)あるいは図4(c)のように45度のC面1mにそって圧着される。この場合、仮に図4(a)に示すように部品寸法や加工のばらつきが存在したとしても、この薄い端部13eとC面1mによりこのばらつきが相殺され、パイプ13の肉厚の部分に座屈等の変形は生じない。
【0017】
〔第3実施形態〕
本実施形態においては、例えばコイル2の線径を0.28mmφ、巻回数を2700ターンとして、従来例での線径0.34mmφ、巻回数3500ターンと比べた場合、コイル2としては、線径が細くなり巻回数が少なくなるので重量が軽くなり、仮に電磁ソレノイドの外形が定まっているとすればコイル2の外側径を同じとするとき、本実施形態でのコイル内の空芯の径は大きくなる。すなわち、コイル2の重量が軽く、コイルの空芯径が大きくなる。しかも、線径の減少にてコイル抵抗が従来の60Ωから70Ωへと高くなりコイル電流が小さくなった状態では、単位長さ当たり巻回数が同じであってもあるいは巻回数が減少すればなおさらのこと、起磁力が減少する。このような状態にて、空芯径が大きくなった分鉄心径を大きく、例えば従来にて16mmφの径であったものを19mmφとした時、重量の許容範囲上動作ストロークが30〜40とかの長ストロークの電磁ソレノイドではなく、15〜25前後の動作ストロークを有する短ストロークの電磁ソレノイドの場合、起磁力が減少したにもかかわらず鉄心4に作用する磁気吸引力が増大するという現象が生じた。
【0018】
この現象は、図5に示すように従来例の2枚重ねられたヨーク板1aを除いて図1に示すようにヨーク板1bのみにしても発生した。この従来のヨーク板1aは、磁気吸引力を増大するためのものであるが、このヨーク板1aが無くても本実施形態では磁気吸引力が増大した。このことは、図6に示す磁気回路の枠状ヨーク1、ヨーク板1b、補助ヨーク1c、1d及び鉄心4からなる磁路にあって、磁気吸引力の増大が鉄心4内の磁束の増大に大きく依存することによるものと考えられる。そして、この短ストロークの電磁ソレノイドを同様な従来品と比較した場合、鉄心長さを例えば15mmほど短くしても磁気吸引力の増大を図ることができた。
【0019】
図7は、従来例でのソレノイドと本実施形態でのソレノイドの例につき動作ストローク15mmの短ストロークについてのソレノイドの吸引性能を比較したものである。この図にて判明するように、従来品のコイル抵抗を60Ω消費電力240Wに対しコイル抵抗を70Ωとし消費電力200Wとした時、操作力が最も必要な開閉扉の開け始め付近である0ストローク付近では従来品に比べ吸引力が大幅に向上している。なお、この図においてストロークの符号(−)は、試験セット上+方向あるいは−方向の吸引を行った場合の吸引特性を示すが、いずれにしても吸引開始点では最大の吸引力が得られた。また、これまでの説明上、動作ストロークなる概念は、図8にて明示するが、電磁ソレノイドの特性上吸引開始点での極大吸引力の外吸引終了点付近にて最大吸引力が得られ、この最大吸引力及び極大吸引力間のストロークを動作ストロークとした。
【0020】
図8では、冷蔵庫用短ストローク電磁ソレノイドの吸引力特性を例示したものである。この図8での動作ストロークは、14cmである。
図7のストローク0、あるいは図8のストローク17における吸引開始点に関しては、図1、図6での補助ヨーク1dの長さの設定により最大吸引力となる位置を調整することができる。したがって、この補助ヨーク1dの長さ設定にて最大吸引力が必要な開閉扉の開け始め位置を調整すれば良い。
この結果、従来例に比較して鉄心が短くなって小型化をもたらしこの小型化に伴い防錆処理等の表面積の減少による低コスト化につながり、電流低減により低電力化をもたらし、また従来のヨーク板の削減ができるにもかかわらず、磁気吸引力の増大を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の構成図である。
【図2】コイルと温度ヒューズを主に示す構成図である。
【図3】ケーシングを主に示す構成図である。
【図4】パイプの端部の加工を示す説明図である。
【図5】ヨーク板を省略する説明図である。
【図6】磁気回路の説明図である。
【図7】ソレノイドの吸引性能の比較図である。
【図8】冷蔵庫用ソレノイドの吸引特性図である。
【図9】従来例の構成図である。
【図10】パイプ座屈の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のボビンにコイルを巻回し、このコイルを温度ヒューズを介して電源に接続し、上記ボビンの内側に軸方向に移動可能な鉄心とこの鉄心に連結された押圧部材とを備えた短ストロークの鉄心付電磁ソレノイド装置において、
上記軸方向に直角な横断面積を一定とした場合、上記コイル径及びコイル巻回数を減少させたコイル占有横断面積に対応して、上記コイル径及びコイル巻回数を減少させて起磁力を減少させても電磁吸引力が増大する範囲内にて上記コイル内に配置される鉄心径を太くしたことを特徴とする鉄心付電磁ソレノイド装置。
【請求項2】
短ストロークの鉄心の動作ストロークは、15mm〜25mmであることを特徴とする請求項1に記載の鉄心付電磁ソレノイド装置。
【請求項3】
減少後のコイル径は0.28mm、コイル巻回数は2700ターンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄心付電磁ソレノイド装置。
【請求項4】
コイルが巻回されたボビンの内筒に軸方向に沿って移動可能な鉄心及び押圧部材を配置した鉄心付電磁ソレノイド装置において、
上記コイルを覆う絶縁テープと、この絶縁テープ上に配置され上記コイルに電気的に接続された温度ヒューズと、上記ボビンの軸方向の両端が嵌り合う両端を有するケーシングと、このケーシングの両端とボビンの両端との間を液密に嵌合させるOリングと、を有することを特徴とする鉄心付電磁ソレノイド装置。
【請求項5】
ケーシングは、難燃性規格UL94にあって難燃グレード5VAからなる可塑性樹脂にて形成されることを特徴とする請求項4に記載の鉄心付電磁ソレノイド装置。
【請求項6】
コイルが巻回されるボビンの内筒の軸方向両側より補助ヨークの筒を嵌め、この補助ヨークの上記軸方向両側に上記筒に対応する中空部を有するヨークを配置し、このヨークの中空部の角部あるいは補助ヨークの筒の角部にC面を形成し、上記補助ヨークの筒の内側を覆い上記軸方向両端のヨーク間を貫通するパイプの上記C面に当たる部分を薄く形成した構造を有することを特徴とする鉄心付電磁ソレノイド装置。
【請求項7】
コイルが巻回されるボビンの内筒の軸方向両側より補助ヨークの筒を嵌め、この補助ヨークの上記軸方向両側に上記筒に対応する中空部を有するヨークを配置し、上記補助ヨークの筒の内側を覆い上記軸方向両端のヨーク間を貫通するパイプの薄肉部をヨーク中空部の角部あるいは補助ヨークの筒の角部でのC面に当てつつ上記パイプの軸方向両端を塑性変形することを特徴とする鉄心付電磁ソレノイド装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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