説明

鉄筋の分配装置

【課題】メッシュ筋の製造工程を安価かつ簡易に省力化できる鉄筋の分配装置を提供する。
【解決手段】供給された鉄筋fを上下方向へ一列に並べて収容する収容開口31を備える収容機構Hと、三次元空間内で移動可能に設けられて、収容開口31内に収容された鉄筋fを受け入れるための上下方向へ延びる受容開口51、および当該受容開口51の下端開口部に設置されて受容開口51内に上下方向へ一列に並んで受け入れられた鉄筋fを一本ずつ受容開口51内から下方へ離脱可能とするゲート手段6を備える。ゲート手段6は、受容開口51の下端開口部の上下位置に鉄筋fの外径に略等しい間隔をおいて設置されて交互に受容開口51内に突出する係止片61A,61Bを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄筋の分配装置に関し、特に、メッシュ筋の製造治具に鉄筋を分配するための分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メッシュ筋は鉄筋を縦横メッシュ状に配列したもので、コンクリート材中に埋設されて構造物の強度向上に資する。ここで、引用文献1にはメッシュ筋を配列するための鉄筋自動配列装置が提案されている。本装置では自走門型支持架台に昇降桁を設けるとともに、昇降桁に90度旋回可能な走行桁を設け、さらにこれに自走型の自動配列機を設けて、全自動制御により、ストックされた鉄筋を縦横のメッシュ状に配列している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−44342
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記公報に記載の装置は鉄筋の供給から縦横配列まで一貫して行なう大掛かりな一体型装置であるため、その製造や設置がコスト高になるという問題がある。そこで、メッシュ筋の製造工程を安価かつ簡易に省力化できる装置が求められていた。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、メッシュ筋の製造工程を安価かつ簡易に省力化できる鉄筋の分配装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、供給された鉄筋(f)を上下方向へ一列に並べて収容する収容部(31)を備える収容機構(H)と、三次元空間内で移動可能に設けられて、前記収容部(31)内に収容された鉄筋(f)を受け入れるための上下方向へ延びる受容部(51)、および当該受容部(51)の下端開口部に設置されて前記受容部(51)内に上下方向へ一列に並んで受け入れられた鉄筋(f)を一本ずつ前記受容部(51)内から下方へ離脱可能とするゲート手段(6)を備えた供給機構(S)とを具備している。
【0007】
本第1発明においては、例えばクレーン手段に吊設されて三次元空間内で移動可能な供給機構から鉄筋を一本ずつ下方へ離脱させることができるから、供給機構を例えば載置面上に等間隔で縦横に凹溝を形成したメッシュ筋製造治具上で移動させて各凹溝内に鉄筋を供給することにより、従来人手で行なっていたメッシュ筋の縦横配列を省力化することができる。加えて本第1発明は、従来の一体型装置に比して安価に実現することができる。
【0008】
本第2発明では、前記ゲート手段(6)は、前記受容部(51)の下端開口部の上下位置に前記鉄筋(f)の外径に略等しい間隔をおいて設置されて交互に受容部(51)内に突出する係止片(61A,61B)を備えている。
【0009】
本第2発明においては、簡易な構造で鉄筋を受容開口内から一本ずつ下方へ離脱させることができる。
【0010】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の鉄筋の分配装置によれば、メッシュ筋の製造工程を安価かつ簡易に省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す、分配装置の全体側面図である。
【図2】分配装置の全体平面図である。
【図3】メッシュ筋製造用治具とその上に位置する供給機構の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には分配装置の側面図を示し、図2にはその平面図を示す。分配装置を構成する収容機構Hは、これに保持される鉄筋fの、長手方向の複数位置(本実施形態では三箇所、図2)に設けられている。各収容機構Hは同構造で、それぞれ架台1を備えている。架台1はアングル材を組み立てたもので、架台1上には配列手段としての振動テーブル2が載置されている。振動テーブル2は四隅の下面がコイルバネ21によって架台1上に支持されており、テーブル下面の取付座23に振動モータ22が所定の姿勢で取り付けられている。
【0014】
上記架台1の前面(図1の右面)上端部には収容片3が固定されている。収容片3は長板の中央に収容部たる収容開口31を形成して全体を略U字形に成形したもので、収容開口31を上方へ開放させて起立姿勢でその側面が架台1に接合固定されている。収容開口31はその幅がこれに収容される鉄筋fの外径よりやや大きい程度となって上下方向へ延びており、当該収容開口31の、振動テーブル2に近い側の開口縁32は、振動テーブル2の、前下がりに傾斜した前側面24とほぼ面一の傾斜面となっている。
【0015】
図1において、収容機構Hの上方には供給機構Sが位置している。供給機構Sは収容機構Hを連ねた長さ以上に延びる桁部材4を備えており(図2)、桁部材4の下面には収容機構Hの設置間隔に等しい間隔で複数個所(本実施形態では三箇所)に保持体5(図1、図3)が固定されている。保持体5は長板の中央に受容部たる受容開口51を形成して全体を略逆U字形に成形したもので、受容開口51を下方へ開放させた起立姿勢でブラケット41を介して桁部材4の下面に固定されている。保持体5には、受容開口51の開口部にゲート手段6が設けられている。ゲート手段6は受容開口51を挟んで左右の上下位置にそれぞれ設けられた係止片61A,61Bを備えている。
【0016】
各係止片61A,61BはL字形に成形されて互いに対称形に配置され、受容開口51に近く位置させたその中間屈曲部で軸体62によって回動可能に保持体5板面に支持されている。各係止片61A,61Bの先端側面には、これが図1に示す進出位置に回動した際に、ほぼ鉄筋fの外径分だけ上下に離れた位置で受容開口51内へ突出する係止突起63が形成されている。各係止片61A,61Bの基端にはそれぞれ駆動シリンダ64のロッド641が連結されており、係止片61A,61Bは駆動シリンダ64によって、上記進出位置と、受容開口51内への係止突起63の突出が解消される後退位置(図1の鎖線)との間で回動操作される。
【0017】
供給機構Sの桁部材4は図3に示すように、その上面の左右二個所がワイヤ42によってクレーンに吊下されて、三次元空間内で移動可能となっている。なお、桁部材4に設けられた上記保持体5は、メッシュ筋の製造治具6の載置面の湾曲に合わせて鉄筋fを湾曲状態で保持するように、左右の保持体5よりも中央の保持体5を下方に位置させてある。これは前述の収容片3(図1)についても同様で、鉄筋長手方向の中央にある収容片3の位置を、残る二つの収容片3の位置よりも下方へ下げて、収容状態の鉄筋fを自重で所定形状に湾曲させるようにしてある。
【0018】
このような構造の分配装置において、メッシュ筋を形成するための鉄筋fは、架台1の振動テーブル2上に掛け渡して(図2)これらに積載される。鉄筋fの一例は長さ10m、外径50mmφである。鉄筋fを振動テーブル2上に積載した状態で振動モータ22を作動させると、鉄筋fは積層状態が崩れて、順次振動テーブル2上を前方(図1の右方)へ移送され、その前側面24上から開口縁32を経て収容片3の収容開口31内へ進入落下させられる。これにより、図1に示すように、鉄筋fは収容開口31内に上下方向へ一列に並んで収容される。
【0019】
この状態でクレーンによって供給機構Sの桁部材4を、図2に示すように、平面視で収容機構Hを連ねる位置に合致するように移動させて、各保持体5を、図1に示すように、収容機構Hの各収容片3の上方に位置させる。この状態で、各保持体5の係止片61A,61Bを後退回動させて係止突起63が受容開口51内に突出しない状態とし、その後、桁部材4、すなわち各保持体5を下降させて、収容開口31内で上下方向へ一列に並んだ鉄筋fを、相対的に受容開口51内へも進入させる。
【0020】
続いて、各保持体5の係止片61A,61Bを進出回動させて、その係止突起63を受容開口51内に突出させる。これにより、受容開口51内に相対進入している鉄筋fの脱落が規制されて、鉄筋fは上下方向へ一列に並んだ状態で受容開口51内に保持される。そこで、クレーンによって供給機構Sの桁部材4を上昇させると、鉄筋fは受容開口51内に保持された状態で収容開口31外の上方へ移送される(図1)。
【0021】
この後、桁部材4をメッシュ筋製造治具7の上方へ移動させ(図3)、鉄筋fを縦横いずれの方向へ配列するかによって桁部材4の姿勢を、平面視で90度変更し、この状態で、治具6の湾曲する載置面上に等間隔で縦横に形成された三角凹溝71の直上へ各保持体5を位置させて、各三角凹溝71内へ一本づつ鉄筋fを供給する。
【0022】
三角凹溝71内への鉄筋fの供給は以下の行程で行なわれる。すなわち、最初に、保持体5の下側係止片61A(図1)を後退回動させて受容開口51内の最下位置の鉄筋fのみを受容開口51内から下方の三角凹溝71内へ離脱落下させ、その後、下側係止片61Aを再び進出回動させておく。この状態で、上側係止片61Bを後退回動させると、受容開口51内の鉄筋fは、新たに最下位置となった鉄筋fが下側係止片61Aの係止突起63に当接するまで、自重で全体的に下方へ移動する。この後、上側係止片61Bを再び進出回動させておく。
【0023】
続いて、桁部材4を所定量平行に水平面内で移動させて、メッシュ筋製造治具7の隣接する次の三角凹溝71の直上へ各保持体5を位置させて、上述の手順で下側と上側の係止片61A,61Bを順次回動させて最下位置の鉄筋fのみを受容開口51内から下方へ離脱落下させて上記三角凹溝71内に鉄筋fを一本供給する。以降、これを繰り返して、メッシュ筋製造治具7上に縦横一定間隔で鉄筋fを一本ずつ平行に供給する。上記治具7上に供給された鉄筋f同士は従来と同様の方法で結束されてメッシュ筋とされる。
【符号の説明】
【0024】
2…振動テーブル、3…収容片、31…収容開口(収容部)、5…保持体、51…受容開口(受容部)、6…ゲート手段、61A,61B…係止片、7…メッシュ筋製造治具、H…収容機構、S…供給機構、f…鉄筋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された鉄筋を上下方向へ一列に並べて収容する収容部を備える収容機構と、三次元空間内で移動可能に設けられて、前記収容部内に収容された鉄筋を受け入れるための上下方向へ延びる受容部、および当該受容部の下端開口部に設置されて前記受容部内に上下方向へ一列に並んで受け入れられた鉄筋を一本ずつ前記受容部内から下方へ離脱可能とするゲート手段を備えた供給機構とを具備する鉄筋の分配装置。
【請求項2】
前記ゲート手段は、前記受容部の下端開口部の上下位置に前記鉄筋の外径に略等しい間隔をおいて設置されて交互に受容部内に突出する係止片を備えている請求項1に記載の鉄筋の分配装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−58174(P2011−58174A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205847(P2009−205847)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000158725)岐阜工業株式会社 (56)