説明

鉄道模型用エンドレール

【課題】強度面およびコスト面に優れた可動機構付の鉄道模型用エンドレールを提供する。
【解決手段】一対のレール3は、直線状に延在しているとともに、他のレールと接続可能なジョイント端と、他のレールと接続できないエンド端とを有する。ガイド溝は、この一対のレール3と平行に延在している。車止め5は、この一対のレール3上に配置され、ガイド溝と係合するガイド爪を有する。車止め5は、進入方向に走行する鉄道模型車両を受け止めることによって、ガイド爪と係合したガイド溝に沿って、エンド端側に向かって摺動する。スプリング9は、固定端と、車止め5と連動して変位する自由端とを有し、鉄道模型車両の押圧に抗して、車止め5をジョイント端側に向かって付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式の車止めを備えた鉄道模型用エンドレールに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道模型には、左右のレールの間隔(ゲージ)の相違に応じて、Nゲージ、HOゲージおよびOゲージといった各種の規格が存在する。本願出願人は、従来より、Nゲージ用の鉄道模型用エンドレールを市販している(非特許文献1を参照)。エンドレールとは、ヤード(引込線)や終端駅などのレール末端部分に使用され、オーバーランしてきた列車を受け止める車止めを備えたレールをいう。実在するエンドレールとしては、そのエンド端にバラスト(砂利)を盛ったもの、そこにコンクリートブロックを配置したもの、或いは、車両衝撃を緩和する可動式の内蔵ダンパーを備えたものを含めて、様々なものが存在する。これらのうち、前二者のような可動機構を備えない単純なエンドレールについては、既に製品化されているが、後者のような可動機構を備えるエンドレールについては、未だ製品化されていない。
【非特許文献1】TOMIX CATALOG 2004-2005(トミックス総合カタログ7027) 2004年9月発行、p278
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、実物を手の平サイズに縮小した鉄道模型に関しては、実物の外観形状を極力忠実に再現すること、すなわちリアリティが要求されるが、サイズ、コスト、強度等の制約から、ある程度のデフォルメが行われる。鉄道模型の中でも特に小型なNゲージの場合、リアリティと、部品点数の削減による構成の単純化とのバランスが、製品化の課題となる。このような課題は、複雑な可動機構を備えるエンドレールの製品化に関しても同様に該当する。
【0004】
また、既存の製品は、車両衝突時に衝撃を緩和するような可動機構を備えない単純な構成なので、エンドレールに進入してきた車両がエンド端と衝突して脱線したり、最悪の場合には、衝突によって破損を招く可能性もある。さらに、電気的にも何らギミックを有さない極めて単純な構成なので、更なる商品訴求力の向上を図る余地が残されている。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉄道模型用エンドレールに可動機構を導入することで、商品訴求力の向上を図るとともに、製品バリエーションの多様化を図ることである。
【0006】
また、本発明の別の目的は、リアリティを損なうことなく、可動機構の構成を単純化することで、強度面およびコスト面の双方に優れた鉄道模型用エンドレールを提供することである。
【0007】
また、本発明の別の目的は、可動機構に衝撃緩和機能を付加することによって、車両の脱線や破損の抑制を図ることである。
【0008】
さらに、本発明の別の目的は、可動機構と連動する電気的なギミックを備えた鉄道模型用エンドレールを提供することで、商品訴求力の一層の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、第1の発明は、一対のレールと、ガイド溝と、可動式の車止めと、弾性部材とを有する鉄道模型用エンドレールを提供する。一対のレールは、直線状に延在し、他のレールと接続可能なジョイント端と、他のレールと接続できないエンド端とを有する。ガイド溝は、この一対のレールと平行に延在している。可動式の車止めは、一対のレール上に配置されており、ガイド溝と係合するガイド爪を有する。この車止めは、ジョイント端側からエンド端側に向かう進入方向に走行する鉄道模型車両を受け止めることによって、ガイド爪と係合したガイド溝に沿って、エンド端側に向かって摺動する。弾性部材は、固定端と、車止めと連動して変位する自由端とを有し、鉄道模型車両による押圧に抗して、車止めをジョイント端側に向かって付勢する。
【0010】
また、第1の発明において、鉄道模型用エンドレールは、一対のレールが上面に取り付けられた道床をさらに有していてもよく、ガイド溝は、この道床の上面における一対のレールの略中間に位置する中間部位に設けてもよい。この構成において、ガイド爪は、ガイド溝と位置的に対応して、車止めの下部より下方に向かって突出している。また、この道床の中間部位には、一対のレールと平行に延在し、かつ、上方に向かって突出した突出部が形成されていることが望ましい。また、この突出部の頂部にガイド溝を設けてもよく、突出部の内部に形成されたスペースに弾性部材を収納してもよい。さらに、ガイド溝の溝幅を部分的に広げることによって、ガイド溝にガイド爪を挿入するための挿入部を設けてもよい。この場合、車止めの脱落を防止すべく、挿入部は、鉄道模型車両を受け止めることによって、車止めが摺動する可動範囲の外側に位置することが望ましい。
【0011】
また、第1の発明において、一対のレールに電流を供給するフィーダの差込口を設けることが好ましい。この場合、差込口に差し込まれたフィーダと、一対のレールの少なくとも一方との間に、電気回路を設けてもてもよい。この電気回路は、車止めの変位と連動して、フィーダからレールへの通電状態を切り替える。なお、上記差込口を、鉄道模型用エンドレールのそれぞれの側面に設けてもよい。
【0012】
また、第1の発明において、上記電気回路は、車止めが鉄道模型車両を受け止めていない初期状態では、レールへの通電を許容する一方、車止めが鉄道模型車両を受け止めている押圧状態では、レールへの通電を遮断することが好ましい。また、これに代えて、上記電気回路は、車止めが鉄道模型車両を受け止めていない初期状態では、レールに対する通電を許容する一方、車止めが鉄道模型車両を受け止めている押圧状態では、鉄道模型車両を進入方向に走行させる第1の電流極性に関するレールへの通電を遮断し、かつ、第1の電流極性とは逆向きの第2の電流極性に関するレールへの通電を許容してもよい。
【0013】
第2の発明は、一対のレールと、可動式の車止めと、フィーダの差込口と、回路素子としてのスイッチとを有する鉄道模型用エンドレールを提供する。一対のレールは、直線状に延在し、他のレールと接続可能なジョイント端と、他のレールと接続できないエンド端とを有する。可動式の車止めは、一対のレール上に配置されている。この車止めは、ジョイント端側からエンド端側に向かう進入方向に走行する鉄道模型車両を受け止めることによって、エンド端側に向って摺動するとともに、内蔵された弾性部材によって、鉄道模型車両の押圧に抗して、ジョイント端側に向かって付勢されている。一対のレールに対する電流供給は、フィーダの差込口を介して行われる。回路素子としてのスイッチは、差込口に差し込まれたフィーダと、一対のレールの少なくとも一方との間に設けられている。このスイッチは、車止めの変位と連動して、一対のレールの通電状態を切り替える。なお、上記差込口を、鉄道模型用エンドレールのそれぞれの側面に設けてもよい。
【0014】
ここで、第2の発明において、スイッチは、車止めが鉄道模型車両を受け止めていない初期状態では、レールへの通電を許容する一方、車止めが鉄道模型車両を受け止めている押圧状態では、レールへの通電を遮断することが好ましい。
【0015】
また、第2の発明において、スイッチと並列に設けられた回路素子としてのダイオードをさらに設けてもよい。このダイオードは、鉄道模型車両を進入方向に走行させる第1の電流極性では逆方向接続になり、この第1の電流極性とは逆極性の第2の電流極性では順方向接続になる。
【0016】
また、第2の発明において、一対のレールが上面に取り付けられた道床をさらに有していてもよい。この道床の内部に形成されたスペースには、スイッチやダイオードといった回路素子が実装されたプリント回路基板が収納されている。ここで、回路素子としてのスイッチは、スイッチ片と、一対のスイッチ端子とで構成されていることが好ましい。このスイッチ片は、道床内のスペースに収納され、車止めの変位と連動する。また、一対のスイッチ端子は、プリント回路基板上に設けられ、スイッチ片の変位に応じて電気的に接続または分離される。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、鉄道模型車両を受け止める車止めを可動式にするとともに、内蔵された弾性部材の付勢力によって、車両衝突時の衝撃が緩和される。これにより、鉄道模型用エンドレールに向かって進入してきた車両の脱線や破損の抑制を図ることができる。また、ガイド溝とガイド爪との係合という比較的単純な構造で車止めの可動化を実現できるので、リアリティを損なうことなく、強度の確保および低コスト化の両立を図ることができる。さらに、既存の製品では存在しなかった新規な可動機構を備えた鉄道模型用エンドレールを提供することで、商品訴求力の向上と、製品バリエーションの多様化とを図ることができる。
【0018】
また、第2の発明によれば、可動式の車止めと連動して、一対のレールの通電状態を切り替えるスイッチを内蔵することで、既存の製品では存在しなかった新規な電気的なギミックを比較的容易に実現できる。これにより、製品バリエーションの多様化とともに、商品訴求力の更なる向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る鉄道模型用エンドレールの全体斜視図である。この鉄道模型用エンドレール1(以下、単に「エンドレール1」という)は、レイアウトのヤードや終端駅といったレール末端部分に使用され、進入方向に走行する鉄道模型車両(以下単に「車両」という)を受け止める可動式の車止め5を備えている。このエンドレール1が備える一対のレール3の一端は、他のレールと接続可能なジョイント端になっているとともに、その他端は、他のレールと接続できないエンド端になっている。なお、本明細書では、ジョイント端側からエンド端側に向かう車両の走行方向を「進入方向」と定義し、その逆方向を「非進入方向」と定義する。
【0020】
エンドレール1は、道床2と、一対のレール3と、エンド本体部4と、車止め5と、規制部材6とを主体に構成されている。一対のレール3は金属製であり、これ以外の部材2,4〜6はプラスチック製である。直線状に延在する一対のレール3は、道床2の上面に取り付けられている。本実施形態では、後述する電気的なギミックを実現すべく、少なくとも片方のレールは互いに電気的に絶縁された複数のレール片で構成されている。車両への電流供給は、一対のレール3を介して行われ、これによって、モータが内蔵された動力車が走行し、或いは、車両に内蔵された前照灯や室内灯が点灯する。エンド本体部4は、エンド端側において道床2に一体形成されている。この本体部4は、実在するエンドレールが備えるコンクリートブロックを模した外観形状を有し、その頂部には、発光可能な標識部4aが設けられている。車止め5は、一対のレール3上に配置されており、進入方向に走行する車両を受け止める。これによって、車止め5は、進入車両に押圧されて所定の可動範囲内を可動する。規制部材6は、実在するエンドレールのダンパーを模した外観形状を有するが、それ自体は伸縮せず、車止め5の可動範囲を単に規制する役割のみを担っている。
【0021】
つぎに、図2から図13を参照しながら、その組立順序にしたがって、エンドレール1の具体的な構成について詳述する。
【0022】
まず、図2に示すように、エンド本体部4の内部に形成されたスペースに規制部材6が収納される。エンド本体部4の前方(ジョイント端側)には、矩形状の開口部4bが設けられているとともに、その後方(エンド端側)の内壁には、レール3の先端を受ける略凹状の受け部4cが2カ所に設けられている。また、規制部材6は、プラスチック成形された単一の部材であり、プレート部6aと、プレート部6aの縁部2カ所に設けられた切込部6bと、プレート部6aの前面中央より前方に突出した棒状部6cとを有する。これらの切込部6bは、後の組立工程で取り付けられる一対のレール3とそれぞれ係合し、これによって、スペース内における規制部材6の変位が部分的に規制される。棒状部6cは、その突出した先端が後退する車止め5の壁部と接触することにより、車止め5のエンド端側の可動範囲を規制する。規制部材6の収納に際しては、棒状部6cをその先端より開口部4bに挿入し、棒状部6cが開口部4bより突き出た状態でスペース内に収納する。なお、この状態において、規制部材6は、未だ固定されておらず、スペース内を変位自在な状態になっている。
【0023】
つぎに、図3に示すように、道床2の上面に、2つのレール片3a,3bが取り付けられる。道床2上の左右には、互いに対向したフック形状を有する一対の爪部2aが列状に並んで形成されている。右側のレール片3aは、同図に示す矢印の方向から、右側の爪部2aの列に順次挿入・係止され、これによって、レール片3aが道床2上に固定される。また、左側のレール片3bは、左側の爪部2aの列に順次挿入・係止され、これによって、レール片3bが道床2上に固定される。ここで、図1に示した右側のレール3は、レール片3aのみで構成されるが、左側のレール3は、図3に示したレール片3bと、後述する図5で示すレール片3cとによって構成される。これは、左側のレール3にギャップを形成するためであり、その関係でレール片3bはレール片3aよりも短くなっている。
【0024】
ここで、道床2の上面には、上方に向かって突出した突出部2bが一体形成されている。この突出部2bは、一対のレール3(図3ではレール片3a,3b)の略中間に位置する中間部位に設けられており、一対のレール3と平行に延在している。また、この突出部2bの頂部には、一対のレール3と平行に延在し、内外を貫通するガイド溝2cが設けられている。
【0025】
図4に示すように、この突出部2bの裏側には、内部スペースとしての収納部2dが設けられており、この収納部2dは道床2の内部スペースと連続している。レール片3a,3bが取り付けられた状態において、レール片3a,3bは、規制部材6の縁部に設けられた一対の切込部6bと係合するとともに、これらの先端は、エンド本体部4の後内壁に接している。なお、同図において、規制部材6はエンド本体部4の後内壁まで後退しているが、この状態は一時的なものであって、最終的には、これを前方にスライドさせることによって、エンド本体部4の前内壁にほぼ接した状態となる。
【0026】
つぎに、図5に示すように、レール片3a,3bが取り付けられた道床2の上面に、更にレール片3cが取り付けられる。これによって、1本の連続した左側のレール3が2つのレール片3b,3cによって構成される。ただし、これらのレール片3b,3cは、僅かに離間しており、互いに絶縁(ギャップ)されている。
【0027】
つぎに、図6に示すように、道床2に設けられた3つのコンタクト部2eに、3つのレール接点7a〜7cが裏側よりそれぞれ嵌め込まれる。それぞれのコンタクト部2eは、道床2の内外を貫通する貫通孔であり、これらを介して、各レール片3a〜3cの一部が道床2の裏側に露出する。また、レール接点7a〜7cのそれぞれは、裏側に部分的に露出した各レール片3a〜3cを道床2の内部スペース(具体的には後述するプリント回路基板14)に導くための配線として機能する。レール接点7a〜7cは、金属薄板を略斗状に折り曲げることによって形成され、コンタクト部2eに嵌め入れられる四角状の頭部と、この頭部より斜めに延在するアームとを有する。レール片3aへの通電はレール接点7aを介して、レール片3bへの通電はレール接点7bを介して、また、レール片3cへの通電はレール接点7cを介して、それぞれ行われる。
【0028】
つぎに、図7に示すように、道床2上のガイド溝2cに、車止め5が上方より取り付けられるとともに、他のレールと接続するためのジョイント8がレール片3cのジョイント端側に取り付けられる。図8は車止め5の背面図であり、図9はその側面図である。この車止め5は、プラスチック成形された単一のパーツであり、実在するエンドレールが備える車止めを模した外観形状を有する車止め本体5aと、部位50〜53よりなるガイド爪5bとを有する。このガイド爪5bは、ガイド溝2cと位置的に対応して、車止め本体5aの下部より下方に向かって突出している。図8に示すように、ガイド部50は、突出部51よりも幅狭に形成されており、若干のクリアランスを保ちつつ、上述したガイド溝2cと直接係合する部位である。突出部51は、ガイド部50から下方に向かって延在している。この突出部51の途中には、エンド端側に向かって突出したスプリング受け部52が形成されているとともに、その先端には、略L字状に折れ曲がったフック部53が形成されている。
【0029】
図7に示すように、ガイド溝2cには、その溝幅を部分的に広げた挿入部2fが形成されている。車止め5の取り付けに際しては、この拡幅した挿入部2fに車止め5のガイド爪5bの先端を上方より挿入した上で、車止め5を前方にスライドさせる。これによって、一対のレール3上に配置された車止め5は、ガイド爪5b(より具体的にはガイド部50)とガイド溝2cとの係合によって、前後に摺動自在となる。この取付状態において、ガイド爪5bの途中に形成されたスプリング受け部52は、収納部2d内に収納されるとともに、先端のフック部53は、収納部2dを突き抜けて下方に突出する(図10を参照)。
【0030】
取り付けられた車止め5の変位は、前方(ジョイント端側)に関してはガイド溝2cの前端によって規制されるが、後方(エンド端側)に関しては、ガイド溝2cの後端ではなく、規制部材6が有する棒状部6cの先端によって規制される。図7には規制部材6が引っ込んだ状態が示されているが、上述したように、最終的には規制部材6を前方にスライドさせるので、棒状部6cは、少なくとも挿入部2fの直上を覆う位置まで突出することになる。このように棒状部6cを突出させることで、挿入部2fは、鉄道模型車両の押圧によって車止め5が摺動する可動範囲の外側に位置する。したがって、組立完了後の状態では、摺動によって車止め5が挿入部2fより脱落してしまうことはない。
【0031】
つぎに、図10に示すように、収納部2dの前後方向、具体的には、ガイド爪5bが有するスプリング受け部52と、これと対向する収納部2dの後内壁との間に、弾性部材の一例であるスプリング9が取り付けられる。これによって、スプリング9の一端は、車止め5と連動する自由端となるとともに、その他端は、収納部2dの内壁によって固定された固定端となる。取り付けられたスプリング9は、圧縮コイルスプリングであり、車止め5を前方すなわちジョイント端側に向かって常時付勢する。この組立工程において、一対のレール片3a,3bとの係合を維持したまま、エンド端側に位置していた規制部材6を前方のスライドさせる。なお、本実施形態では、弾性部材の一例として、スプリング9を用いているが、これ以外に板バネやゴム材等を用いてもよい。
【0032】
つぎに、図11に示すように、収納部2dから突出しているフック部53にスイッチ片11の中心部位が取り付けられる。これによって、スイッチ片11は、車止め5の変位と連動する。また、標識部4aに光を導く導光材としてのプリズム10が標識部4aに取り付けられる。これにより、規制部材6は、プリズム10、レール片3a,3bおよびエンド本体部4の前内壁によって固定される。
【0033】
つぎに、図12に示すように、エンド本体部4の底面に、プレート状のフィーダガイド12が取り付けられる。フィーダガイド12の略中央には、プリント回路基板14上に実装された発光体の光を標識部4aに導くプリズム10の貫通口が設けられている。また、エンド本体部4の両側面には、2つの凹状の切り込みがそれぞれ設けられている。フィーダガイド12が取り付けられた状態では、これらの切り込みに応じた開口形状を有するフィーダの差込口13が左右下部にそれぞれ形成される。
【0034】
最後に、図13に示すように、道床2およびエンド本体部4を含む底面全体に、プリント回路基板14をネジ15で取り付けることによって、エンドレール1が完成する。プリント回路基板14には、車止め5の変位と連動して、フィーダ16からレール3への通電状態を切り替える電気回路の主要部が実装されているが、これ以外に、発光体としての発光ダイオード(LED)やノイズ対策回路等も実装されている。なお、本実施形態において、後述するスイッチやダイオード等の回路素子が実装されたプリント回路基板14は、エンドレール1の底蓋としての役割も担っている。
【0035】
図14は、エンドレール1のフィーダ差込みの説明図である。レイアウト作成時における配線引き回しの便宜を図るため、エンドレール1の左右側面には、一対のレール3に電流を供給するフィーダ16の差込口13がそれぞれ設けられている。エンドレール1が備える電気的なギミックを動作させるためには、このエンドレール1を含む線路区間(ブロック)をギャップを用いて他の線路区間と電気的に分離し、この区間の通電をフィーダ16を介して行うことが前提となる。プリント回路基板14を中心とした電気回路は、差し込まれたフィーダ16と、一対のレール3の少なくとも一方との間に設けられ、車止め5の変位と連動して、フィーダ16からレール3への通電状態を切り替える。
【0036】
以下、図15から図18を参照しながら、車両の進入に伴うエンドレール1の動作について説明するが、これに先立ち、まず、エンドレール1の電気的な回路構成について説明する。
【0037】
基本的に、一対のレール3(レール片3a〜3c)への通電は、フィーダ16を介して接続されたコントローラ20(電源)より行われる。レール片3aは、差込口13に差し込まれたフィーダ16の一方の端子に電気的に接続され、レール片3bは、その他方の端子に電気的に接続されているが、レール片3cは、ギャップ19によってレール片3bと絶縁されている。これらのレール片3a〜3cは、上述したレール接点7a〜7cを介して、プリント回路基板14上の接点にそれぞれ電気的に接続されている。エンドレール1には、スイッチ17およびダイオード18といった回路素子が内蔵されている。フィーダ16とレール片3cとの間に設けられたスイッチ17は、道床2の内部スペースに収納されたスイッチ片11(図7を参照)と、プリント回路基板14上に形成された一対のスイッチ接点とで構成されている。具体的には、一方のスイッチ接点がレール片3bに接続され、他方のスイッチ接点がレール片3cに接続されている。そして、これらのスイッチ接点は、車止め5と連動するスイッチ片11の変位に応じて、電気的に接続または分離され、これによって、2つのレール片3b,3c間の導通状態(導通/非導通)が決定される。また、ダイオード18は、スイッチ17と並列に設けられており、具体的には、アノードがレール片3bに、カソードがレール片3cにそれぞれ接続されている。
【0038】
図15は、エンドレール1の初期状態(進入方向)の説明図である。車止め5が車両を受け止めていない初期状態では、スイッチ17がオンし、フィーダ16に直結されたレール片3bとレール片3cとが電気的に接続される。すなわち、フィーダ16を介したレール3cへの通電が許容される。また、車両を進入方向に走行させる電流極性(レール片3aが正極、レール片3b,3cが負極)では、ダイオード18が逆方向接続になる。これにより、エンドレール1を含む線路区間に進入してきた車両(モータを内蔵した動力車を含む列車)は、進入方向に走行し続ける。
【0039】
図16は、エンドレール1の押圧状態(進入方向)の説明図である。進入方向に走行してきた車両の先端が車止め5に接触すると、上記初期状態から、車止め5が車両を受け止めている押圧状態へと変化する。この押圧状態では、車両の押圧によって、スプリング9の付勢力に抗して車止め5がエンド端側に向かって摺動する。車止め5への接触に伴う衝撃は、車両の押圧に抗したスプリング9の付勢力によって吸収・緩和される。また、車止め5の変位(後退)によって、オンしていたスイッチ17がオフに切り替わる。これにより、フィーダ16に直結されたレール片3bと、レール片3cとが電気的に分離される。すなわち、フィーダ16を介したレール3cへの通電が遮断される。また、この状態において、ダイオード18は逆方向接続となっている。その結果、エンドレール1を含む線路区間に進入してきた車両は、車止め5の後退に伴う通電遮断によって、強制的に停止する。
【0040】
図17は、エンドレール1の押圧状態(非進入方向)の説明図である。ユーザはコントローラ20を操作して、レール片3aが負極、レール片3b,3cが正極になるように電流極性を切り替える。押圧状態においてスイッチ17はオフしたままであるが、電流極性が逆になることで、スイッチ17に並列接続されたダイオード18が順方向接続へと切り替わる。これにより、レール片3c、ダイオード18、レール片3bを経た電流経路が形成され、停止していた車両が非進入方向に走行し始める。
【0041】
図18は、エンドレール1の初期状態(非進入方向)の説明図である。車両が非進入方向に走行すると、スプリング9の付勢力によって、車止め5が押圧状態から初期状態に復帰する。これにより、オフしていたスイッチ17が再びオンして、エンドレール1を含む線路区間における進入方向への車両走行が再び許容される。エンドレール1を含む線路区間を非進入方向に走行する車両は、やがてこの線路区間を離脱する。
【0042】
このように、本実施形態に係るエンドレール1では、車両を受け止める車止め5を可動式にするとともに、内蔵されたスプリング9によってジョイント端側へ向かう付勢力を車止め5に付与している。この付勢力によって車両衝突時の衝撃が緩和されるので、車両の脱線や破損の抑制を図ることができる。また、一対のレール3が取り付けられた道床2と一体化された部位(本実施形態では道床2そのもの)にガイド溝2cを形成し、これにガイド爪5bを係合させることによって、車止め5の可動化を実現している。したがって、車止め5の可動化を比較的単純な構造で実現できるほか、リアリティを損なうことなく、強度の確保および低コスト化の両立を図ることができる。さらに、既存の製品では存在しなかった新規な可動機構を備えたエンドレール1を提供することで、商品訴求力の向上と、製品バリエーションの多様化とを図ることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、可動式の車止め5と連動して、レール3の通電状態を切り替えることで、既存の製品では存在しなかった新規な電気的なギミックを比較的容易に実現できる。その結果、製品バリエーションの一層の多様化とともに、商品訴求力の更なる向上を図ることができる。
【0044】
特に、本実施形態に係るエンドレール1は、車止め5の変位と連動して、レール3の通電状態を切り替えるスイッチ17を内蔵している。車止め5が車両を受け止めていない初期状態では、スイッチ17がオンして、一対のレール3への通電が許容される。また、車止め5が車両を受け止めている押圧状態では、スイッチ17がオフして、その通電が遮断される。これにより、ユーザがコントローラ20を操作しなくても、進入方向に走行してきた車両を自動的に停止させることができるので、車両の脱線や破損を一層有効に抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態に係るエンドレール1は、スイッチ17と並列接続されたダイオード18を内蔵している。このダイオード18は、車両を進入方向に走行させる電流極性時には逆方向接続になってレール3への通電を遮断する一方、その逆極性時には順方向接続になってレール3への通電を許容する。これにより、進入方向に走行してきた車両が停止した場合でも、コントローラ20を操作して電流極性を切り替えるだけで、非進入方向への走行が可能になる。その結果、停止した車両をユーザが手で動かすといった煩雑な作業が不要になるので、ユーザにとっての利便性の向上を図ることができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、スイッチ17およびダイオード18を主体とした電気回路を一方のレール3にのみ設けているが、ギャップ19を設けることを前提として、双方に設けることも可能である。
【0047】
(第2の実施形態)
図19は、第2の実施形態に係る鉄道模型用エンドレールの全体図である。このエンドレール1’は、終端駅に使用されるプラットホーム一体型のものである。エンドレール1’は、道床2と、一対のレール3と、エンド本体部4と、車止め5と、プラットホーム21とを有する。車止め5の可動に関する基本的なメカニズムは、第1の実施形態と同様であるが、それとの相違点は、ガイド溝2cおよびガイド爪5bの形成位置にある。なお、プラットホーム21と道床2とは一体化されているが、両者が一体形成されている必要はなく、着脱自在な形態であってもよい(道床2にプラットホーム21を取り付けた際に一体化されれば足りる)。
【0048】
具体的には、ガイド溝2cは、プラットホーム21の左右の側面(車止め5の両サイドに位置的に対応)にそれぞれ形成されており、一対のレール3と平行に延在している。また、ガイド爪5bは、車止め5の両サイドから左右に突出しており、それぞれが対応するガイド溝2cと係合している。車止め5は、ガイド溝2cとガイド爪5bとの係合によってレール3上を離間して配置されており、浮いた状態を保ちながらガイド溝2cに沿って摺動自在である。また、プラットホーム21の側部に内蔵されたスプリング9は、第1の実施形態と同様、車両による押圧に抗して、車止め5をジョイント端側に向かって常時付勢している。なお、それ以外の点については、第1の実施形態と同様であるから、ここでの説明を省略する。
【0049】
このように、本実施形態では、一対のレール3が取り付けられた道床2に一体化された部位、すなわちプラットホーム21にガイド溝2cを形成し、これにガイド爪5bを係合させることによって、車止め5の可動化を実現している。これにより、形態的には第1の実施形態と相違するものの、機能的には第1の実施形態と同様となり、結果的に、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施形態に係る鉄道模型用エンドレールの全体図
【図2】鉄道模型用エンドレールの組立図
【図3】鉄道模型用エンドレールの組立図
【図4】鉄道模型用エンドレールの組立図
【図5】鉄道模型用エンドレールの組立図
【図6】鉄道模型用エンドレールの組立図
【図7】鉄道模型用エンドレールの組立図
【図8】車止めの背面図
【図9】車止めの側面図
【図10】鉄道模型用エンドレールの組立図
【図11】鉄道模型用エンドレールの組立図
【図12】鉄道模型用エンドレールの組立図
【図13】鉄道模型用エンドレールの組立図
【図14】鉄道模型用エンドレールのフィーダ差込みの説明図
【図15】鉄道模型用エンドレールの初期状態(進入方向)の説明図
【図16】鉄道模型用エンドレールの押圧状態(進入方向)の説明図
【図17】鉄道模型用エンドレールの押圧状態(非進入方向)の説明図
【図18】鉄道模型用エンドレールの初期状態(非進入方向)の説明図
【図19】第2の実施形態に係る鉄道模型用エンドレールの全体図
【符号の説明】
【0051】
1,1’ 鉄道模型用エンドレール(エンドレール)
2 道床
2c ガイド溝
3 一対のレール
4 エンド本体部
5 車止め
5b ガイド爪
6 規制部材
7a〜7c レール接点
8 ジョイント
9 スプリング
10 プリズム
11 スイッチ片
12 フィーダガイド
13 差込口
14 プリント回路基板
15 ネジ
16 フィーダ
17 スイッチ
18 ダイオード
19 ギャップ
20 コントローラ
21 プラットホーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道模型用エンドレールにおいて、
他のレールと接続可能なジョイント端と、他のレールと接続できないエンド端とを有し、直線状に延在する一対のレールと、
前記一対のレールと平行に延在するガイド溝と、
前記一対のレール上に配置され、前記ガイド溝と係合するガイド爪を有するとともに、前記ジョイント端側から前記エンド端側に向かう進入方向に走行する鉄道模型車両を受け止めることによって、前記ガイド爪と係合した前記ガイド溝に沿って、前記エンド端側に向かって摺動する可動式の車止めと、
固定端と、前記車止めと連動して変位する自由端とを有し、前記鉄道模型車両による押圧に抗して、前記車止めを前記ジョイント端側に向かって付勢する弾性部材と
を有することを特徴とする鉄道模型用エンドレール。
【請求項2】
前記一対のレールが上面に取り付けられた道床をさらに有し、
前記ガイド溝は、前記道床の上面における前記一対のレールの略中間に位置する中間部位に設けられており、
前記ガイド爪は、前記ガイド溝と位置的に対応して、前記車止めの下部より下方に向かって突出していることを特徴とする請求項1に記載された鉄道模型用エンドレール。
【請求項3】
前記道床の前記中間部位には、前記一対のレールと平行に延在し、かつ、上方に向かって突出した突出部が形成されており、当該突出部の頂部に前記ガイド溝が設けられているとともに、前記突出部の内部に形成されたスペースに前記弾性部材が収納されていることを特徴とする請求項2に記載された鉄道模型用エンドレール。
【請求項4】
前記ガイド溝の溝幅を部分的に広げることによって、前記ガイド溝に前記ガイド爪を挿入するための挿入部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された鉄道模型用エンドレール。
【請求項5】
前記挿入部は、前記鉄道模型車両を受け止めることによって、前記車止めが摺動する可動範囲の外側に位置することを特徴とする請求項4に記載された鉄道模型用エンドレール。
【請求項6】
前記一対のレールに電流を供給するフィーダの差込口と、
前記差込口に差し込まれた前記フィーダと、前記一対のレールの少なくとも一方との間に設けられ、前記車止めの変位と連動して、前記フィーダから前記レールへの通電状態を切り替える電気回路とをさらに有することを特徴とする請求項1に記載された鉄道模型用エンドレール。
【請求項7】
前記差込口は、前記鉄道模型用エンドレールのそれぞれの側面に設けられていることを特徴とする請求項6に記載された鉄道模型用エンドレール。
【請求項8】
前記電気回路は、
前記車止めが前記鉄道模型車両を受け止めていない初期状態では、前記レールへの通電を許容し、
前記車止めが前記鉄道模型車両を受け止めている押圧状態では、前記レールへの通電を遮断することを特徴とする請求項6または7に記載された鉄道模型用エンドレール。
【請求項9】
前記電気回路は、
前記車止めが前記鉄道模型車両を受け止めていない初期状態では、前記レールに対する通電を許容し、
前記車止めが前記鉄道模型車両を受け止めている押圧状態では、前記鉄道模型車両を前記進入方向に走行させる第1の電流極性に関する前記レールへの通電を遮断し、かつ、前記第1の電流極性とは逆極性の第2の電流極性に関する前記レールへの通電を許容することを特徴とする請求項6または7に記載された鉄道模型用エンドレール。
【請求項10】
鉄道模型用エンドレールにおいて、
他のレールと接続可能なジョイント端と、他のレールと接続できないエンド端とを有し、直線状に延在する一対のレールと、
前記一対のレール上に配置され、前記ジョイント端側から前記エンド端側に向かう進入方向に走行する鉄道模型車両を受け止めることによって、前記エンド端側に向かって摺動するとともに、内蔵された弾性部材によって、前記鉄道模型車両による押圧に抗して、前記ジョイント端側に向かって付勢された可動式の車止めと、
前記一対のレールに電流を供給するフィーダの差込口と、
前記差込口に差し込まれた前記フィーダと、前記一対のレールの少なくとも一方との間に設けられ、前記車止めの変位と連動して、前記一対のレールの通電状態を切り替える回路素子としてのスイッチと
を有することを特徴とする鉄道模型用エンドレール。
【請求項11】
前記差込口は、前記鉄道模型用エンドレールのそれぞれの側面に設けられていることを特徴とする請求項10に記載された鉄道模型用エンドレール。
【請求項12】
前記回路素子としての前記スイッチは、
前記車止めが前記鉄道模型車両を受け止めていない初期状態では、前記レールへの通電を許容し、
前記車止めが前記鉄道模型車両を受け止めている押圧状態では、前記レールへの通電を遮断することを特徴とする請求項10または11に記載された鉄道模型用エンドレール。
【請求項13】
前記スイッチと並列に設けられた回路素子としてのダイオードをさらに有し、
前記ダイオードは、
前記鉄道模型車両を前記進入方向に走行させる第1の電流極性では逆方向接続になり、
前記第1の電流極性とは逆極性の第2の電流極性では順方向接続になることを特徴とする請求項12に記載された鉄道模型用エンドレール。
【請求項14】
前記一対のレールが上面に取り付けられた道床をさらに有し、
前記道床の内部に形成されたスペースには、前記回路素子が実装されたプリント回路基板が収納されていることを特徴とする請求項10、12または13に記載された鉄道模型用エンドレール。
【請求項15】
前記回路素子としての前記スイッチは、
前記道床内の前記スペースに収納され、前記車止めの変位と連動するスイッチ片と、
前記プリント回路基板上に設けられ、前記スイッチ片の変位に応じて電気的に接続または分離される一対のスイッチ接点と
で構成されていることを特徴とする請求項14に記載された鉄道模型用エンドレール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−175034(P2006−175034A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371574(P2004−371574)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】