説明

鉄道車両の天井構造

【課題】一対の空調ダクトを取付ける際に取付けるための調整労力を少なくすることができ且つ取付け作業の人手を減らすことができる鉄道車両の天井構造を提供すること。
【解決手段】鉄道車両の天井構造TN1は、枕木方向における車両中央部で横流ファン30を支持するCチャンネル金具40と、このCチャンネル金具40に対して枕木方向両外側に配置される一対の空調ダクト50,50とを備える構造である。この天井構造TN1では、Cチャンネル金具40と一対の空調ダクト50,50とが一体的に接合されたダクトユニットDU1になっている。そして、ダクトユニットDUIの枕木方向外側の部位に係合片52が設けられるとともに、屋根構体10から懸架された支持骨13に係合片52と係合する係合具14が設けられている。このダクトユニットDU1は、係合片52と係合具14とが係合することによって支持骨13に仮置きされるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機支持部材と一対の空調ダクトとを備えた鉄道車両の天井構造に関し、特に、送風機支持部材と一対の空調ダクトとが一体的に接合されたダクトユニットになっている鉄道車両の天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両の天井構造では、枕木方向における車両中央部で送風機を支持する送風機支持部材が配置され、この送風機支持部材に対して枕木方向両外側に一対の空調ダクトが配置される構造が採用されている。このような天井構造においては、屋根構体の車両内側に固着された内骨等に対して、送風機支持部材、各空調ダクト、各灯具、天井パネル等が個別に又は一体化(ユニット化)して取付けられるようになっていて、例えば下記特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
下記特許文献1に記載された鉄道車両の天井構造では、図14に示したように、一対の空調ダクト150,150及び灯具155,155が、共通の骨組み190によって一体化されていて、天井ユニットDVになっている。この天井ユニットDVは、アウトワークで一体化されたものであって、現車において枕木方向の外側の部位で屋根構体110から懸架された支持骨113,113にボルト114を介して取付けられるようになっている。このため、この天井構造TOでは、各空調ダクト150,150及び各灯具155,155を個別に取付ける場合に比して、現車作業での作業労力を軽減することができる。なお、この天井ユニットDVにおいて送風機支持部材140は一体化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−329865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した鉄道車両の天井構造TOでは、天井ユニットDVを取付ける際に多くの調整労力及び人手を必要とする。即ち、天井ユニットDVを取付ける際に、先ず補助作業者が天井ユニットDVを持ち上げる。その後、補助作業者が天井ユニットDVを支持し続けた状態で、又は補助作業者が天井ユニットDVと床面との間に支持棒(つっかえ棒)を介在することで支持棒が天井ユニットDVを支持し続けた状態で、取付け作業者が天井ユニットDVを取付ける。このように天井ユニットDVを下から支えながら取付ける場合、取付け位置の微調整が難しく、取付けるための調整労力が大きい。また、少なくとも二人以上の補助作業員によって取付け作業を行う必要があるため、取付けコストが高くなる。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決すべく、一対の空調ダクトを取付ける際に取付けるための調整労力を少なくすることができ且つ取付け作業の人手を減らすことができる鉄道車両の天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る鉄道車両の天井構造は、屋根構体の内骨に支持されていて枕木方向における車両中央部で送風機を支持する送風機支持部材と、この送風機支持部材に対して枕木方向両外側に配置される一対の空調ダクトと、を備えたものであって、前記送風機支持部材と前記一対の空調ダクトとが一体的に接合されたダクトユニットになっていて、前記ダクトユニットの枕木方向外側の部位に係合片が設けられるとともに、屋根構体から懸架された支持骨に前記係合片と係合する係合具が設けられていて、前記ダクトユニットは、前記係合片と前記係合具とが係合することによって前記支持骨に仮置きされるものであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る鉄道車両の天井構造において、前記係合具又は前記係合片には、前記ダクトユニットが仮置きされる際に前記ダクトユニットの移動量を規制するストッパ部が形成されていることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両の天井構造において、前記ストッパ部は、前記ダクトユニットが仮置きされる際に前記ダクトユニットのレール方向の移動量を規制できるように、前記係合具又は前記係合片のレール方向の両端から鉛直方向に延びる部分であることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両の天井構造において、前記ダクトユニットは、枕木方向に延び前記送風機支持部材の上面及び前記一対の空調ダクトの上面に配置される薄板状の板金を有し、この板金を介して屋根構体の内骨に支持されるものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両の天井構造において、前記ダクトユニットは、枕木方向に延び前記送風機支持部材の上面及び前記一対の空調ダクトの上面に掛け渡された支持梁を有し、この支持梁を介して屋根構体の内骨に支持されるものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両の天井構造において、前記ダクトユニットは、仮置きされた状態から前記係合片が前記支持骨に取付けられることによって、屋根構体に支持されるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る鉄道車両の天井構造によれば、送風機支持部材と一対の空調ダクトとが一体的に接合されたダクトユニットになっていて、このダクトユニットは、屋根構体の内骨に取付けられる前に、ダクトユニットの係合片と屋根構体から懸架された支持骨の係合具とを係合させることによって、仮置きされる。その後、ダクトユニットは、仮置きされた状態から僅かに持ち上げられて、屋根構体の内骨に取付けられる。このようにダクトユニットを取付ける際には、補助作業者等によってダクトユニットを支持し続ける必要がなく、仮置きされた状態で取付け位置の微調整を行うことができて、取付けるための調整労力を少なくすることができる。また、一人の補助作業員又は補助作業員なしで取付け作業を行うことができるため、取付け作業の人手を減らすことができ、取付けコストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態における天井構造をレール方向から見た正面図である。
【図2】図1に示したダクトユニットの拡大図である。
【図3】(A)係合片と係合具とが係合する前の状態を示した斜視図である。(B)係合片と係合具とが係合した状態を示した斜視図である。
【図4】ダクトユニットが仮置きされる前の状態を示した説明図である。
【図5】ダクトユニットが仮置きされた状態を示した説明図である。
【図6】ダクトユニットが第1内骨、第2内骨に取付けられた状態を示した説明図である。
【図7】第2実施形態における天井構造をレール方向から見た正面図である。
【図8】図7に示したダクトユニットの拡大図である。
【図9】第3実施形態における天井構造をレール方向から見た正面図である。
【図10】図9に示したダクトユニットの係合片が支持骨に取付けられている状態を示した斜視図である。
【図11】(A)図9に示した係合片と係合具とが係合する前の状態を示した斜視図である。(B)図9に示した係合片と係合具とが係合した状態を示した斜視図である。
【図12】(A)第1変形実施形態における係合片と係合具とが係合する前の状態を示した斜視図である。(B)第1変形実施形態における係合片と係合具とが係合した状態を示した斜視図である。
【図13】(A)第2変形実施形態における係合片と係合具とが係合する前の状態を示した斜視図である。(B)第2変形実施形態における係合片と係合具とが係合した状態を示した斜視図である。
【図14】従来の天井構造をレール方向から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る鉄道車両の天井構造について、図面を参照しながら以下に説明する。鉄道車両の車体は、台枠、側構体、屋根構体、妻構体の六面体で構成されている。図1は、屋根構体10及び側構体20の上部に適用されている天井構造TN1をレール方向(車両長手方向)から見た正面図である。
【0012】
天井構造TN1は、図1に示したように、送風機としての横流ファン30と、送風機支持部材としてのCチャンネル金具40と、一対の空調ダクト50,50と、天井パネルとしての一対の脇天井板60,60と、図示しない灯具及び吊り手受け等を備えた構造である。ここで、この天井構造TN1は、図1に示したように、枕木方向(車両幅方向)の中央部に対して左右対称の構造である。このため、以下において、左右一対の部材のうち一方側の部材についてのみ説明する。
【0013】
屋根構体10の車両内側には、図1に示したように、断面がハット形状の第1内骨11が固着されている。第1内骨11は、Cチャンネル金具40を支持するためのものである。この第1内骨11は、枕木方向における車両中央部に配置されていて、ライナー81を介してCチャンネル金具40の枕木方向外側の部位を支持している。
【0014】
また、屋根構体10の車両内側には、図1に示したように、断面が略L字状の第2内骨12が固着されている。第2内骨12は、空調ダクト50を支持するためのものである。この第2内骨12は、第1内骨11より枕木方向外側に配置されていて、ライナー82を介して空調ダクト50の枕木方向外側の部位を支持している。なお、ライナー81,82は、Cチャンネル金具40及び空調ダクト50が正確に枕木方向及びレール方向に延びるように、Cチャンネル金具40及び空調ダクト50の水平度合い(平面度)を調整するとともに、室内の高さを調整するためのものである。
【0015】
また、屋根構体10の車両内側には、図1に示したように、支持骨13が固着されている。支持骨13は、脇天井板60を支持するためのものである。この支持骨13は、第2内骨12より枕木方向外側に配置されていて、屋根構体10から懸架された断面がハット形状の本体部13aと、この本体部13aの枕木方向外側の部位に固着されている断面が略L字状の取付け部13bとを有している。本体部13aの高さ寸法は、空調ダクト50の高さ寸法と同程度である。取付け部13bは、ライナーを介して脇天井板60の枕木方向内側の部位を支持している。
【0016】
横流ファン30は、図示しない空気調和機(エアコン)が生成した冷風又は温風を攪拌して車室の隅々まで冷風又は温風を送り込むためのものである。この横流ファン30はフランジ部を有していて、このフランジ部がCチャンネル金具40の先端部に支持されている。Cチャンネル金具40は、枕木方向における車両中央部に配置されていて、横流ファン30を支持するためのものである。なお、横流ファン30の下方には、整風板31が空調ダクト50の枕木方向内側の下面に取付けられている。
【0017】
空調ダクト50は、図示しない空気調和機が生成した冷風又は温風を運ぶ管路である。この空調ダクト50は、複数の金属板によって断面が略矩形状に形成されていて、枕木方向内側にメインダクト50aを有し、枕木方向外側にサブダクト50bを有している。また、空調ダクト50は、メインダクト50aとサブダクト50bを連通する連通口50cを有し、サブダクト50bの下面に冷風又は温風を車室に送るための吹出し口50dを有している。なお、メインダクト50a及びサブダクト50bの内側には、断熱材が貼り付けられている。
【0018】
ところで、Cチャンネル金具40及び一対の空調ダクト50,50は、一体的に接合されたダクトユニットDU1となっている。そして、このダクトユニットDU1は、アウトワークで一体化されたものであり、現車で第1内骨11、第2内骨12に取付けられるようになっている。このため、Cチャンネル金具40、各空調ダクト50,50を個別に第1内骨11、第2内骨12に取付ける場合に比して、現車作業での作業労力を軽減することができる。
【0019】
また、仮にCチャンネル金具40、各空調ダクト50,50を個別に第1内骨11、第2内骨12に取付ける場合には、各空調ダクト50,50(メインダクト50a,50a)の下面の高さにズレが生じ易く、各空調ダクト50,50の下面の水平度合い(平面度)を調整するのに手間がかかる。これに対して、一体化されたダクトユニットDU1を第1内骨11、第2内骨12に取付ける場合には、各空調ダクト50,50の下面の高さにズレが生じ難くなり、各空調ダクト50,50の下面の水平度合いを調整する手間が少なくなる。このため、ダクトユニットDU1であれば、各空調ダクト50の下面に接合される天井パネルを、高さ方向にズレが生じないように取付けることが容易になる。
【0020】
ここで、図2は、図1に示したダクトユニットDU1の拡大図である。このダクトユニットDU1では、図2に示したように、Cチャンネル金具40の枕木方向外側の側壁と各空調ダクト50,50の枕木方向内側の側壁とが、リベット41によって接合されている。また、Cチャンネル金具40の上壁と薄板状の板金51とが、リベット42によって接合されている。
【0021】
板金51は、枕木方向に延びCチャンネル金具40の上面及び各空調ダクト50,50の上面に配置される上面部51aと、各サブダクト50b,50bの枕木方向外側の側壁を形成する側面部51bとを有している。こうして、ダクトユニットDU1の上面は、板金51の上面部51aによって均一な平面になっている。これにより、図1に示したように、ダクトユニットDU1の上面を第1内骨11,11、第2内骨12,12に取付ける際に、ダクトユニットDU1の上面における水平度合いの精度(平面精度)を向上させることができる。なお、板金51は板状に薄く延ばした金属であるため、板金51によるダクトユニットDU1の重量増加は極力小さくなっている。
【0022】
ところで、本実施形態における天井構造TN1では、図1に示したように、ダクトユニットDU1の枕木方向外側の部位、即ち板金51の側面部51bに係合片52が設けられるとともに、支持骨13の枕木方向内側の部位、即ち本体部13aの枕木方向内側の側面部に係合具14が設けられている。係合片52と係合具14は、ダクトユニットDU1を各支持骨13に仮置きするためのものである。ここで、図3(A)は、係合片52と係合具14とが係合する前の状態を示した斜視図である。また、図3(B)は、係合片52と係合具14とが係合した状態を示した斜視図である。なお、図3(A)(B)では、図1の左側の係合片52及び係合具14が示されている。
【0023】
図3(A)に示したように、係合片52は、底面部52aと、この底面部52aの図3の右端から上方に延びる鉛直部52bと、底面部52aのレール方向前端で三角形状に形成されている前面部52cとを有している。この係合片52は、鉛直部52bで図示しないリベットを用いて板金51の側面部51bに接合されている。一方、係合具14は、係合片52の底面部52aを載せる平面部14aと、この平面部14aの図3の左端から下方に延びる鉛直部14bと、平面部14aのレール方向前端から上方に延びるストッパ部14cとを有している。この係合具14は、鉛直部14bで図示しないリベットを用いて支持骨13の本体部13aの側面部に接合されている。
【0024】
また、図3(B)に示したように、係合片52の底面部52aを係合具14の平面部14aの上に載せることによって、ダクトユニットDU1が各支持骨13に仮置きされた状態になる。そして、ダクトユニットDU1は、仮置きされた状態において、係合片52の底面部52aを係合具14の平面部14aの上でスライドさせることによって、レール方向及び枕木方向に所定量移動できるようになっている。これにより、ダクトユニットDU1を第1内骨11,11、第2内骨12,12に取付ける前に、ダクトユニットDU1が補助作業員等によって支持し続けられている状態ではなく、仮置きされた状態で、取付け位置の微調整を行うことができる。こうして、ダクトユニットDU1を取付けるための調整労力を少なくすることができる。
【0025】
また、係合具14のストッパ部14cは、ダクトユニットDU1が仮置きされた状態において、ダクトユニットDU1(係合片52)のレール方向前方の移動量を規制できるようになっている。即ち、ダクトユニットDU1が仮置きされる際(係合片52の底面部52aが係合具14の平面部14aの上でスライドする際)にレール方向前方に大きく移動しようとしても、係合片52の前面部52c及び底面部52aのレール方向前端が係合具14のストッパ部14cに当接することで、ダクトユニットDU1の移動が規制される。こうして、係合具14のストッパ部14cによって、係合片52の底面部52aが係合具14の平面部14aの上から落ち難くすることができ、ダクトユニットDU1を仮置きし易くすることができる。
【0026】
次に、ダクトユニットDU1が第1内骨11,11、第2内骨12,12に取付けられる工程を図4〜図6を用いて説明する。先ず、図4は、ダクトユニットDU1が仮置きされる前の状態を示した説明図である。図4に示したように、アウトワークで一体化されたダクトユニットDU1が、現車で屋根構体10の第1内骨11,11、第2内骨12,12に向けて持ち上げられる。このとき、ダクトユニットDU1は、係合片52の底面部52aが係合具14の平面部14aより僅かに上方に位置し且つ係合片52が係合具14より僅かにレール方向後方に位置するように(図3(A)参照)、持ち上げられる。
【0027】
次に、図5は、ダクトユニットDU1が仮置きされた状態を示した説明図である。図5に示したように、ダクトユニットDU1は、係合片52と係合具14とが係合することによって支持骨13,13に仮置きされる。即ち、係合片52をレール方向前方に移動させて(図3(A)参照)、係合片52の底面部52aを係合具14の平面部14aの上に載せることによって(図3(B)参照)、ダクトユニットDU1が仮置きされる。ここで、係合片52の底面部52aを係合具14の平面部14aの上でスライドさせることで、ダクトユニットDU1の取付け位置の微調整を行うことができる。
【0028】
最後に、図6は、ダクトユニットDU1が第1内骨11,11、第2内骨12,12に取付けられた状態を示した説明図である。図6に示したように、ダクトユニットDU1は仮置きされた状態から所定量持ち上げられ、板金51と第1内骨11,11、第2内骨12,12との間にライナー81,81、82,82が介装される。このとき、ライナー81,81、82,82によってダクトユニットDU1の水平度合い(平面度)が調整されるとともに、ダクトユニットDU1の高さが調整される。その後、図示しないボルトを用いてダクトユニットDU1が第1内骨11,11、第2内骨12,12に取付けられる。なお、ダクトユニットDU1が取付けられた後に、脇天井板60が支持骨13の取付け部13bに取付けられる。
【0029】
本実施形態における鉄道車両の天井構造TN1の作用効果について説明する。
この天井構造TN1によれば、Cチャンネル金具40と一対の空調ダクト50,50とが一体的に接合されたダクトユニットDU1になっていて、このダクトユニットDU1は、第1内骨11,11、第2内骨12,12に取付けられる前に、係合片52と係合具14とを係合させることによって、支持骨13,13に仮置きされる。その後、ダクトユニットDU1は、仮置きされた状態から僅かに持ち上げられて、第1内骨11,11、第2内骨12,12に取付けられる。このようにダクトユニットDU1を取付ける際には、補助作業者等によってダクトユニットDU1を支持し続ける必要がなく、仮置きされた状態で取付け位置の微調整を行うことができて、取付けるための調整労力を少なくすることができる。また、一人の補助作業員又は補助作業員なしで取付け作業を行うことができるため、取付け作業の人手を減らすことができ、取付けコストを低くすることができる。
【0030】
次に、第2実施形態について図7及び図8を用いて説明する。図7は、第2実施形態におけるダクトユニットDU2が適用されている天井構造TN2をレール方向から見た正面図である。図8は、図7に示したダクトユニットDU2の拡大図である。このダクトユニットDU2では、図7及び図8に示したように、第1実施形態における板金51(図2参照)に換えて、支持梁53がCチャンネル金具40の上面及び一対の空調ダクト50,50(メインダクト50a,50a)の上面に架け渡されている。
【0031】
支持梁53は、ダクトユニットDU2の曲げ剛性を大きくするものである。この支持梁53は、枕木方向に延びていて、その厚さ寸法が第1実施形態における板金51の厚さ寸法より十分大きいものである。そして、支持梁53は、枕木方向の中央部でライナー83,83を用いてCチャンネル金具40に接合されるとともに、枕木方向外側の部位で空調ダクト50,50の上面に接合されている。第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0032】
第2実施形態におけるダクトユニットDU2では、第1実施形態におけるダクトユニットDU1より、曲げ剛性が十分大きい。このため、ダクトユニットの曲げ剛性を確保するために、第1実施形態ではダクトユニットDU1を第1内骨11,11、第2内骨12,12の4箇所で取付ける必要があるが(図1参照)、第2実施形態ではダクトユニットDU2を第2内骨12,12の2箇所で取付ければ良い(図7参照)。従って、第2実施形態における天井構造TN2によれば、第1実施形態における天井構造TN1に比して、ダクトユニットDU2を取付ける際のライナー調整の数を減らすことができ、取付けるための調整労力を少なくすることができる。なお、ダクトユニットDU2では板金51に換えて支持梁53が用いられているため、第2実施形態におけるダクトユニットDU2の重量は、第1実施形態におけるダクトユニットDU1の重量より大きくなっている。第2実施形態のその他の作用効果は、第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0033】
次に、第3実施形態について図9〜図11を用いて説明する。図9は、第3実施形態におけるダクトユニットDU3が適用されている天井構造TN3をレール方向から見た正面図である。図10は、図9に示したダクトユニットDU3の係合片252が支持骨213に取付けられている状態を示した斜視図である。ここで、天井構造TN3は、枕木方向の中央部に対して左右対称の構造であるため、左右一対の部材のうち一方側の部材についてのみ説明する。
【0034】
第3実施形態の屋根構体210では、図9に示したように、枕木方向の中央部に、断面がハット形状の第1内骨211が固着されている。また、第1内骨211より枕木方向外側の部位に、断面がハット形状の支持骨213が固着されている。そして、第3実施形態のダクトユニットDU3は、第1実施形態のダクトユニットDU1と同様に、Cチャンネル金具240及び一対の空調ダクト250が一体的に接合されたものである。
【0035】
そして、図9及び図10に示したように、ダクトユニットDU3の枕木方向外側の部位、即ち板金251の側面部251bに係合片252が設けられるとともに、支持骨213の平面部213aに係合具214が設けられている。係合片252と係合具214は、ダクトユニットDU3を各支持骨213に仮置きするための金具である。ここで、図11(A)は、図9に示した係合片252と係合具214とが係合する前の状態を示した斜視図である。また、図11(B)は、図9に示した係合片252と係合具214とが係合した状態を示した斜視図である。
【0036】
図11(A)に示したように、係合片252は、チャンネル状に形成されていて、平面状である平面部252aと、この平面部252aのレール方向の両端から鉛直方向下方に延びる第1ストッパ部252b及び第2ストッパ部252cを有している。平面部252aには、ボルト254(図10参照)を挿通するためのレール方向に長い長孔252dが形成されている。この係合片252は、第1ストッパ部252b及び第2ストッパ部252cの図10の右端が溶接されることによって、板金251の側面部251bに接合されている。なお、係合片252の第1ストッパ部252b及び第2ストッパ部252cと、板金251の側面部251bとの接合は、溶接に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0037】
一方、図11(A)に示したように、係合具214は、断面がL字状に形成されていて、係合片252の平面部252aを載せる底面部214aと、この底面部214aの図11の左端から上方へ起立する起立部214bとを有している。この係合具214は、起立部214bの図10の上端が溶接されることによって、支持骨213の平面部213aに接合されている。なお、係合具214の起立部214bと支持骨213の平面部213aとの接合は、溶接に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0038】
そして、図11(A)に示した状態から図11(B)に示したように、係合片252の平面部252aを係合具214の底面部214aに対して乗り上げるように移動させて、係合具214の底面部214aの上に載せることによって、ダクトユニットDU3が支持骨213に仮置きされた状態になる。この仮置きされた状態において、係合片252の平面部252aを係合具214の底面部214aの上でスライドさせることによって、ダクトユニットDU3をレール方向及び枕木方向に所定量移動させることができ、取付位置の微調整を行うことができるようになっている。
【0039】
ここで、第3実施形態では、平面部252aのレール方向の両端に、第1ストッパ部252b及び第2ストッパ部252cが形成されているため、図11(B)に示したように、ダクトユニットDU3(係合片252)のレール方向前方及びレール方向後方の両方向の移動量を規制できるようになっている。なお、第1ストッパ部252bと第2ストッパ部252cとの間のレール方向の距離(約50mm)は、係合具214の底面部214aのレール方向の長さ(約35mm)より、長くなっている。こうして、ダクトユニットDU3が仮置きされる際にレール方向前方及びレール方向後方に大きく移動しようとしても、係合片252の第1ストッパ部252b又は第2ストッパ部252cが、係合具214の底面部214aに当接することで、ダクトユニットDU3の移動が規制される。こうして、第1ストッパ部252b及び第2ストッパ部252cによって、第1実施形態に比べて、係合片252の平面部252aを係合具214の底面部214aの上から落ち難くすることができる。
【0040】
そして、第3実施形態では、ダクトユニットDU3を上述したように仮置きされた状態から僅かに持ち上げて、図9及び図10に示すように、係合片252を支持骨213に対してボルト254を用いて取付けるとともに、Cチャンネル金具240の上面240aを第1内骨211に対してボルト255を用いて取付ける。こうして、第3実施形態の係合片252は、係合具214に対して乗せ掛け金具としての機能と、支持骨213に対して取付金具としての機能とを併せ持つものになっている。
【0041】
この取付け時においては、係合片252の平面部252aと支持骨213の平面部213aとの間にライナー282を介在させるとともに、Cチャンネル金具240の上面部240aと第1内骨211の平面部211aとの間にライナ−281を介在させる。これにより、ダクトユニットDU3の水平度合い(平面度)を調整するとともに、室内の高さを調整することができる。このようにして、ダクトユニットDU3は、屋根構体210に支持されるようになっている。第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0042】
第3実施形態における鉄道車両の天井構造TN3の作用効果について説明する。
第3実施形態のダクトユニットDU3では、上述したように、枕木方向外側の部位に設けられた係合片252が、ボルト254を用いて支持骨213に取付けられるようになっている。このため、ボルト254の締結作業が、空調ダクト250より枕木方向外側で行われることになる。従って、ボルト254を締結する際の作業性が良く、更に、ボルト254が確実に締結されているか否かを目視し易い。なお、第1実施形態のダクトユニットDU1では、図1に示したように、空調ダクト50のサブダクト50bの上側で、ボルト(図示省略)の締結作業を行うため、ボルトを締結する際の作業性が悪く、ボルトが確実に締結されているか否かを目視し難くなっている。第3実施形態のその他の作用効果は、第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0043】
以上、本発明に係る鉄道車両の天井構造TN1,TN2,TN3について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、第1実施形態において、Cチャンネル金具40と一対の空調ダクト50,50とが、リベット41,42によって一体的に接合されているが、Cチャンネル金具40と一対の空調ダクト50との接合は、ボルトによる接合、接着材による接着、溶接等であっても良い。
【0044】
また、第1及び第2実施形態において図3(A)(B)に示したように、係合具14に、ダクトユニット(係合片52)のレール方向前方の移動量を規制するストッパ部14cを形成した。しかしながら、図12(A)(B)に示した第1変形実施形態のように、係合片52Aに、ダクトユニット(係合片52A)のレール方向前方の移動量を規制するストッパ部52dを形成しても良い。なお、図12(A)は、係合片52Aと係合具14Aとが係合する前の状態を示した斜視図である。また、図12(B)は、係合片52Aと係合具14Aとが係合した状態を示した斜視図である。
【0045】
また、第1及び第2実施形態では、ダクトユニット(係合片52)のレール方向前方の移動量が規制されるように、係合片52と係合具14とが構成されている。しかしながら、図13(A)(B)に示した第2変形実施形態では、ダクトユニット(係合片52B)のレール方向前方の移動量及び枕木方向の移動量が規制されるように、係合片52Bと係合具14Bとが構成されている。ここで、図13(A)は、係合片52Bと係合具14Bとが係合する前の状態を示した斜視図である。図13(B)は、係合片52Bと係合具14Bとが係合した状態を示した斜視図である。
【0046】
図13(A)に示したように、係合片52Bは、平面部52eと、この平面部52eの図13の左端から下方に延びる鉛直部52fとを有している。係合具14Bは、底面部14dと、この底面部14dの図13の左端から上方に延びる左壁部14e(ストッパ部)と、底面部14dの図13右端から上方に延びる右壁部14f(ストッパ部)と、底面部14dのレール方向前端から上方に延びる前壁部14gとを有している。そして、図13(B)に示したように、係合片52Bと係合具14Bとが係合する際に、係合具14Bの左壁部14e及び右壁部14fが係合片52の鉛直部52fの枕木方向の移動量を規制するようになっていて、係合具14Bの前壁部14gが係合片52の鉛直部52fのレール方向前方の移動量を規制するようになっている。
【0047】
また、第3実施形態では、図11に示したように、係合片252は、チャンネル状に形成されて、平面部252aのレール方向の両端から鉛直方向下方に延びる第1ストッパ部252b及び第2ストッパ部252cを有していて、係合具214は、断面がL字状に形成されている。しかしながら、係合片252及び係合具214の形状は、適宜変更可能であり、例えば係合片は、断面L字状に形成されていて、係合具は、チャンネル状に形成されて、平面部のレール方向の両端から鉛直方向上方に延びる第1ストッパ部及び第2ストッパ部を有していても良い。
【符号の説明】
【0048】
TN1,TN2,TN3 天井構造
DU1,DU2,DU3 ダクトユニット
10 屋根構体
11 第1内骨
12 第2内骨
13 支持骨
14 係合具
14c ストッパ部
20 側構体
30 横流ファン
40 Cチャンネル金具
50 空調ダクト
51 板金
52 係合片
53 支持梁
214 係合具
214b 第1ストッパ部
214c 第2ストッパ部
252 係合片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根構体の内骨に支持されていて枕木方向における車両中央部で送風機を支持する送風機支持部材と、
この送風機支持部材に対して枕木方向両外側に配置される一対の空調ダクトと、を備えた鉄道車両の天井構造において、
前記送風機支持部材と前記一対の空調ダクトとが一体的に接合されたダクトユニットになっていて、
前記ダクトユニットの枕木方向外側の部位に係合片が設けられるとともに、屋根構体から懸架された支持骨に前記係合片と係合する係合具が設けられていて、
前記ダクトユニットは、前記係合片と前記係合具とが係合することによって前記支持骨に仮置きされるものであることを特徴とする鉄道車両の天井構造。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両の天井構造において、
前記係合具又は前記係合片には、前記ダクトユニットが仮置きされる際に前記ダクトユニットの移動量を規制するストッパ部が形成されていることを特徴とする鉄道車両の天井構造。
【請求項3】
請求項2に記載された鉄道車両の天井構造において、
前記ストッパ部は、前記ダクトユニットが仮置きされる際に前記ダクトユニットのレール方向の移動量を規制できるように、前記係合具又は前記係合片のレール方向の両端から鉛直方向に延びた部分であることを特徴とする鉄道車両に天井構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載された鉄道車両の天井構造において、
前記ダクトユニットは、枕木方向に延び前記送風機支持部材の上面及び前記一対の空調ダクトの上面に配置される薄板状の板金を有し、この板金を介して屋根構体の内骨に支持されるものであることを特徴とする鉄道車両の天井構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載された鉄道車両の天井構造において、
前記ダクトユニットは、枕木方向に延び前記送風機支持部材の上面及び前記一対の空調ダクトの上面に掛け渡された支持梁を有し、この支持梁を介して屋根構体の内骨に支持されるものであることを特徴とする鉄道車両の天井構造。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載された鉄道車両の天井構造において、
前記ダクトユニットは、仮置きされた状態から前記係合片が前記支持骨に取付けられることによって、屋根構体に支持されるものであることを特徴とする鉄道車両の天井構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−250703(P2012−250703A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−96627(P2012−96627)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)