説明

鉄道車両構体

【課題】配線を分岐させる場合であっても配線が煩雑になることを簡単な構成で回避でき、また、取り付けられた配線束の視認性を確保できる鉄道車両構体を提供する。
【解決手段】鉄道車両構体1では、保持部材14において、第1の載置板15が固定される第1の保持片14bと、第2の載置板16が固定される第2の保持片14cとが段違いとなっている。また、保持部材14自体は、吊溝13に所定の間隔をもって固定されている。このような構成により、配線束Pの両脇部分に十分なスペースを確保することが可能となり、配線束Pを分岐する際に保持部材14,14の間に配線の分岐部分Paを通すことで、分岐ルートが他の配線束Pに遮られることを防止できる。さらに、この鉄道車両構体1では、保持部材14が所定の間隔で配置されることで、保持部材14,14の間から配線束Pを容易に視認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両構体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道車両構体には、客室照明や液晶表示パネルといった各種の電気機器が備え付けられている。そのため、鉄道車両構体には、電気機器に対する信号の送受信に用いる配線が多数配置されることとなる。これらの配線は、一般的に種別ごとに束ねられ、構体に取り付けられた配線保持構造によって保持された状態で車両の長手方向に沿って配置される。
【0003】
このような配線保持構造に関し、例えば特許文献1では、屋根構体等に固定される固定部と、固定部から下方に延びる接続部と、接続部から水平方向に突出すると共に弾性を有する保護部材が被せられた載置部とを備え、載置部に配線束を載置して固定帯で固定した構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−188951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の配線保持構造では、配線束が複数の場合には、接続部を挟んで反対側に載置部を設け、複数の配線束を並列配置している。しかしながら、このような構造では、例えば室内から見て手前側に位置する配線束の一部を奥側に分岐させようとした場合に、配線の分岐部分を通すための切欠き等を接続部に設ける必要がある。また、切欠きを設けたとしても、配線の分岐部分を奥側に位置する配線束の上に這わせる必要があり、配線が煩雑になるおそれがある。さらに、室内側から奥側の配線束が視認しにくいため、配線の検査や拡張といった作業の作業性が確保しにくいといった問題もある。
【0006】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、配線を分岐させる場合であっても配線が煩雑になることを簡単な構成で回避でき、また、取り付けられた配線束の視認性を確保できる鉄道車両構体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決のため、本発明に係る鉄道車両構体は、電子機器に接続される配線を束ねた複数の配線束を保持する配線保持構造を備えた鉄道車両構体であって、配線保持構造は、鉄道車両構体の屋根構体又は側構体にアダプタを介して固定される吊溝と、吊溝に沿って延在し、配線束が載置される載置板と、吊溝に所定の間隔をもって固定され、載置板を保持する保持部材と、を備え、保持部材は、第1の載置板が固定される第1の保持片と、第2の載置板が固定される第2の保持片と、を有し、第1の保持片と第2の保持片とは、鉄道車両構体の高さ方向に段違いとなっていることを特徴としている。
【0008】
この鉄道車両構体では、載置板を保持する保持部材において、第1の載置板が固定される第1の保持片と、第2の載置板が固定される第2の保持片とが段違いとなっている。また、保持部材自体は、吊溝に所定の間隔をもって固定されている。このような構成により、第1の載置板に載置される配線束の両脇部分と第2の載置板に載置される配線束の両脇部分とに十分なスペースを確保することが可能となり、吊溝に切欠き等を設けなくても、配線束を分岐する際に保持部材の間に配線の分岐部分を通すことで、分岐ルートが他の配線束に遮られることを防止できる。さらに、この鉄道車両構体では、保持部材が所定の間隔で配置されることで、保持部材の間から配線束を容易に視認することができる。したがって、配線の検査や拡張(追加)といった作業の作業性が確保される。
【0009】
また、第1の保持片が鉄道車両構体の内側を向く一方で、第2の保持片が鉄道車両構体の外側を向き、第1の載置板と第2の載置板とが、吊溝の位置を挟んで両側に位置していることが好ましい。この場合、第1の載置板に載置される配線束の両脇部分と第2の載置板に載置される配線束の両脇部分とに更に十分なスペースを確保することができ、配線の煩雑さをより好適に回避できる。
【0010】
また、第1の保持片及び第2の保持片のいずれもが鉄道車両構体の内側を向き、第1の載置板が吊溝よりも鉄道車両構体の内側に位置し、第2の載置板が吊溝の真下に位置していることが好ましい。この場合、配線束の視認性を更に高めることが可能となる。また、第1の載置板の位置と第2の載置板の位置をずらすことで、配線の煩雑さも回避できる。
【0011】
また、第1の保持片及び第2の保持片のいずれもが鉄道車両構体の内側を向き、第1の載置板及び第2の載置板のいずれもが吊溝の真下に位置していることが好ましい。この場合、配線束の視認性を更に高めることが可能となる。また、第1の載置板及び第2の載置板を吊溝の真下に位置させることで、保持部材の重量バランスが良好になる。
【0012】
また、第2の保持片と同一段で鉄道車両構体の内側を向く第3の保持片を更に有し、第3の保持片に固定される第3の載置板が吊溝の真下に位置していることが好ましい。この場合、配線束を更に配置した場合であっても、配線の煩雑さを回避できる。また、保持部材の重量バランスも保たれる。
【0013】
また、第2の保持片よりも下段で鉄道車両構体の内側を向く第4の保持片を更に有し、第4の保持片に固定される第4の載置板が第2の載置板の真下に位置していることが好ましい。この場合、配線束を更に配置した場合であっても、配線の煩雑さを回避できる。また、第4の載置板に載置される配線束を電子機器に近づけて配線できる。
【0014】
また、第1の保持片と同一段で鉄道車両構体の外側を向く第5の保持片を更に有し、第5の保持片に固定される第5の載置板が第2の載置板よりも鉄道車両構体の内側に位置していることが好ましい。この場合、配線束を更に配置した場合であっても、配線の煩雑さを回避できる。また、保持部材と屋根構体又は側構体との間のスペースを有効利用できる。
【0015】
また、第2の保持片が第1の保持片よりも下段となっていることが好ましい。これにより、保持部材の形状を鉄道車両構体の屋根構体及び側構体の形状に沿わせることが可能となり、スペースを有効利用できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配線を分岐させる場合であっても配線が煩雑になることを簡単な構成で回避でき、また、取り付けられた配線束の視認性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る鉄道車両構体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した鉄道車両構体に設けられる配線保持構造の第1実施形態を上方から示す斜視図である。
【図3】図2に示した配線保持構造を下方から示す斜視図である。
【図4】図2及び図3に示した配線保持構造の要部拡大断面図である。
【図5】配線保持構造の第2実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図6】配線保持構造の第3実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図7】配線保持構造の第4実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図8】配線保持構造の第5実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図9】配線保持構造の第6実施形態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る鉄道車両構体の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る鉄道車両構体の一例を示す斜視図である。同図に示すように、鉄道車両構体1は、床構体2と、側構体3と、屋根構体4と、妻構体5とを備え、これらの各構体が相互に接合されることにより、乗客を収容する空間を内部に有する箱型形状をなしている。
【0020】
床構体2は、車両の床部を構成する構体として鉄道車両構体1の底部に配置されている。床構体2の下部(床下)には、電源装置やブレーキ制御装置といった各種の床下装置が取り付けられている。側構体3及び妻構体5は、車両の側部を構成する構体として、床構体2の左右の縁部及び前後の縁部を囲むように立設されている。側構体3には、乗客・乗員が乗り降りするためのドア部6が等間隔に複数(例えば3ヶ所)設けられている。
【0021】
また、ドア部6,6間と側構体3の両端部とには、窓部7が設けられている。妻構体5は、乗客・乗員らが車両間を行き来するための出入口部8が設けられている。屋根構体4は、車両の屋根部を構成する構体として鉄道車両の構体の上部に空間に蓋をするように配置されている。車両の屋根構体4には、上部に車内の温度を調整するためのエアコンディショナーやパンタグラフ(図示しない)などが設けられている。
【0022】
[第1実施形態]
上述した鉄道車両構体1には、客室照明や液晶表示パネルといった各種の電気機器が備え付けられている。そこで、鉄道車両構体1には、電子機器に接続される配線を束ねた複数の配線束が配置されると共に、これらの配線束を保持するための配線保持構造が設けられている。図2は、図1に示した鉄道車両構体に設けられる配線保持構造の第1実施形態を上方から示す斜視図である。また、図3は、図2に示した配線保持構造を下方から示す斜視図であり、図4は、その要部拡大断面図である。なお、図2においては、説明の便宜上、配線保持構造の一部構成を不図示としている。
【0023】
図2〜図4に示すように、配線保持構造11は、アダプタ12と、吊溝13と、保持部材14と、第1の載置板15と、第2の載置板16と、によって構成され、例えば屋根構体4の垂木4aに対して取り付けられている。アダプタ12は、直角三角形状に突出するチャネル部12aと、チャネル部12aの両端から垂木4aの湾曲形状に沿って外側に突出するフランジ部12b,12bとを有する長尺のハット材である。アダプタ12は、鉄道車両構体1の長手方向に沿って配置され、チャネル部12aの一方の壁面が略水平面となり、かつ他方の壁面が略垂直面となった状態で垂木4aに固定されている。
【0024】
吊溝13は、一面側の中央部分が直線状に開口した中空のレール部材である。吊溝13は、アダプタ12と同様に鉄道車両構体1の長手方向に沿って配置され、開口部分を下方に向けた状態で、アダプタ12におけるチャネル部12aの略水平面に固定されている。吊溝13の内部には、保持部材14を固定するボルト17が配置され、ボルト17のネジ部は、吊溝13の開口部分から下方に突出した状態となっている。
【0025】
保持部材14は、本体片14aと、第1の保持片14bと、第2の保持片14cとを有する棒状部材又は板状部材である。保持部材14は、吊溝13に対して所定の間隔をもって複数配置されている。本体片14aは、吊溝13の真下に配置され、鉛直方向に延びている。本体片14aの上端部分には、ボルト17のネジ部を通す挿通孔が形成されており、挿通孔を通したネジ部にナットを締め付けることによって保持部材14が吊溝13に強固に固定されている。なお、ボルト17には、配線保持構造11を車室内側から視認するための点検窓用のパネルを保持部材14と共に固定しておいてもよい。
【0026】
第1の保持片14bは、保持部材14の上端部分に形成され、鉄道車両構体1の内側に向かって略水平に延びている。一方、第2の保持片14cは、保持部材14の下端部分に形成され、鉄道車両構体1の外側に向かって略水平に延びている。すなわち、第1の保持片14bと第2の保持片14cとは、第2の保持片14cが第1の保持片14bよりも下段となるように、鉄道車両構体1の高さ方向に段違いとなっている。
【0027】
第1の載置板15及び第2の載置板16は、配線束を載置可能な幅を有する長尺の板状部材である。第1の載置板15と第2の載置板16とは、吊溝13の位置を挟んで両側に位置しており、第1の載置板15は、各保持部材14の第1の保持片14bの先端部分に掛け渡された状態で固定され、第2の載置板16は、各保持部材14の第2の保持片14cの先端部分に掛け渡された状態で固定されている。
【0028】
第1の載置板15及び第2の載置板16には、それぞれ配線束Pが載置される。配線束Pは、例えば液晶表示パネルなどに接続されるメディア配線、暖房機などに接続されるAC配線、乗降客用の扉開閉装置などに接続されるDC配線といった各種配線を束ねたものである。配線束Pは、鉄道車両構体1の長手方向に沿って延び、バンド18などを用いて第1の載置板15及び第2の載置板16に固定される。
【0029】
配線束Pは、接続先の機器の位置に応じて適宜分岐される。第1の載置板15に載置された配線束Pの分岐部分Paは、鉄道車両構体1の外側に向かって分岐され、保持部材14,14間において、例えば第1の載置板15と第2の載置板16との間のスペースから下方に向かって配される。また、第2の載置板16に載置された配線束Pの分岐部分Paは、鉄道車両構体1の外側に向かって分岐され、保持部材14,14間において、例えば第2の載置板16と垂木4aとの間のスペースから下方に向かって配される。
【0030】
以上説明したように、鉄道車両構体1では、配線保持構造11の保持部材14において、第1の載置板15が固定される第1の保持片14bと、第2の載置板16が固定される第2の保持片14cとが段違いとなっている。また、保持部材14自体は、吊溝13に所定の間隔をもって固定されている。このような構成により、第1の載置板15に載置される配線束Pの両脇部分と第2の載置板16に載置される配線束Pの両脇部分とに十分なスペースを確保することが可能となり、吊溝13に切欠き等を設けなくても、配線束Pを分岐する際に保持部材14,14の間に配線の分岐部分Paを通すことで、分岐ルートが他の配線束Pに遮られることを防止できる。さらに、この鉄道車両構体1では、保持部材14が所定の間隔で配置されることで、保持部材14,14の間から配線束Pを容易に視認することができる。したがって、配線の検査や拡張といった作業の作業性が確保される。
【0031】
また、この鉄道車両構体1では、第1の保持片14bが鉄道車両構体1の内側を向く一方で、第2の保持片14cが鉄道車両構体1の外側を向き、第1の載置板15と第2の載置板16とが、吊溝13の位置を挟んで両側に位置している。これにより、第1の載置板15に載置される配線束Pの両脇部分と第2の載置板16に載置される配線束Pの両脇部分とに更に十分なスペースを確保することができ、配線の煩雑さをより好適に回避できる。
【0032】
さらに、この鉄道車両構体1では、鉄道車両構体1の外側を向く第2の保持片が、鉄道車両構体1の内側を向く第1の保持片14bよりも下段に位置している。これにより、保持部材14の形状を鉄道車両構体1の屋根構体4及び側構体3の形状に沿わせることが可能となり、スペースを有効利用できる。
【0033】
[第2実施形態]
図5は、配線保持構造の第2実施形態を示す要部拡大断面図である。同図に示すように、第2実施形態に係る配線保持構造21は、保持部材24の構成が第1実施形態と異なっている。すなわち、この保持部材では、本体片24aが吊溝よりも鉄道車両構体1の外側よりに配置され、第1の保持片24bは、第1実施形態と同様に本体片24aの上端部分から鉄道車両構体1の内側に向かって略水平に延びているが、第2の保持片24cは、本体片24aの下端部分から鉄道車両構体1の内側に向かって吊溝13の真下の位置まで略水平に延びている。そして、第1の載置板15は、第1の保持片24bの先端部分に固定され、第2の載置板16は、吊溝13の真下の位置で第2の保持片24cの先端部分に固定されている。
【0034】
このような構成においても、第1実施形態と同様に、第1の保持片24bと第2の保持片24cとが段違いとなっているので、第1の載置板15に載置される配線束Pの両脇部分と第2の載置板16に載置される配線束Pの両脇部分とに十分なスペースを確保することが可能となり、配線束Pを分岐する際に保持部材24,24の間に配線の分岐部分Paを通すことで、分岐ルートが他の配線束Pに遮られることを防止できる。また、保持部材24が所定の間隔で配置されることで、保持部材24,24の間から配線束Pを容易に視認することができ、配線の検査や拡張といった作業の作業性が確保される。
【0035】
さらに、この構成では、第1の保持片24b及び第2の保持片24cのいずれもが鉄道車両構体1の内側を向き、第1の載置板15が吊溝13よりも鉄道車両構体1の内側に位置し、第2の載置板16が吊溝13の真下に位置している。このため、配線束Pの視認性を更に高めることが可能となる。また、第1の載置板15の位置と第2の載置板16の位置をずらすことで、配線の煩雑さも回避できる。
【0036】
[第3実施形態]
図6は、配線保持構造の第3実施形態を示す要部拡大断面図である。同図に示すように、第3実施形態に係る配線保持構造31は、保持部材34の構成が第1実施形態と更に異なっている。すなわち、この保持部材34では、本体片34aが吊溝13よりも鉄道車両構体1の外側寄りに配置され、第1の保持片34bは、本体片34aの略中央部分から鉄道車両構体1の内側に向かって吊溝13の真下の位置まで略水平に延び、第2の保持片34cは、本体片34aの下端部分から鉄道車両構体1の内側に向かって吊溝13の真下の位置まで略水平に延びている。そして、第1の載置板15は、吊溝13の真下の位置で第1の保持片34bの先端部分に固定され、第2の載置板16は、第1の載置板15と同様に、吊溝13の真下の位置で第2の保持片34cの先端部分に固定されている。
【0037】
このような構成においても、第1実施形態と同様に、第1の保持片34bと第2の保持片34cとが段違いとなっているので、第1の載置板15に載置される配線束Pの両脇部分と第2の載置板16に載置される配線束Pの両脇部分とに十分なスペースを確保することが可能となり、配線束Pを分岐する際に保持部材34,34の間に配線の分岐部分Paを通すことで、分岐ルートが他の配線束Pに遮られることを防止できる。また、保持部材34が所定の間隔で配置されることで、保持部材34,34の間から配線束Pを容易に視認することができ、配線の検査や拡張といった作業の作業性が確保される。
【0038】
さらに、この構成では、第1の保持片34b及び第2の保持片34cのいずれもが鉄道車両構体1の内側を向き、第1の載置板15及び第2の載置板16のいずれもが吊溝13の真下に位置している。このため、配線束Pの視認性を更に高めることが可能となる。また、第1の載置板15及び第2の載置板16を吊溝13の真下に位置させることで、保持部材34の重量バランスが良好になる。
【0039】
[第4実施形態]
図7は、配線保持構造の第4実施形態を示す要部拡大断面図である。同図に示すように、第4実施形態に係る配線保持構造41は、保持部材44の構成が第1実施形態と更に異なっている。すなわち、この保持部材44では、本体片44aが吊溝13よりも鉄道車両構体1の外側寄りに配置されているほか、第2の保持片44cと同一段に第3の保持片44dが更に設けられている。第3の保持片44dは、本体片44aの下端部分から鉄道車両構体1の内側に向かって吊溝13の真下の位置まで略水平に延びている。そして、第3の保持片44dに固定される第3の載置板45は、吊溝13の真下の位置で第3の保持片44dの先端部分に固定されている。
【0040】
このような構成においても、第1実施形態と同様に、第1の保持片44bと第2の保持片44cとが段違いとなっているので、第1の載置板15に載置される配線束Pの両脇部分と第2の載置板16に載置される配線束Pの両脇部分とに十分なスペースを確保することが可能となり、配線束Pを分岐する際に保持部材44,44の間に配線の分岐部分Paを通すことで、分岐ルートが他の配線束Pに遮られることを防止できる。また、保持部材44が所定の間隔で配置されることで、保持部材44,44の間から配線束Pを容易に視認することができ、配線の検査や拡張といった作業の作業性が確保される。
【0041】
さらに、この構成では、第2の保持片44cと同一段で鉄道車両構体1の内側を向く第3の保持片44dを更に有し、第3の保持片44dに固定される第3の載置板45が吊溝13の真下に位置している。これにより、配線束Pを更に配置した場合であっても、配線の煩雑さを回避できる。また、保持部材44の重量バランスも保たれる。
【0042】
[第5実施形態]
図8は、配線保持構造の第5実施形態を示す要部拡大断面図である。同図に示すように、第5実施形態に係る配線保持構造51は、保持部材54の構成が第1実施形態と更に異なっている。すなわち、この保持部材54では、本体片54aが吊溝13よりも鉄道車両構体1の外側寄りに配置されているほか、本体片54aが第1実施形態よりも下方に延びており、本体片54aの略中央部分に第2の保持片54cが設けられ、本体片54aの下端部分に第4の保持片54dが設けられている。第4の保持片54dは、本体片54aの略中央部分から鉄道車両構体1の外側に向かって第2の保持片54cと同位置まで略水平に延びている。そして、第4の保持片54dに固定される第4の載置板55は、第2の載置板16の真下の位置で第4の保持片54dの先端部分に固定されている。
【0043】
このような構成においても、第1実施形態と同様に、第1の保持片54bと第2の保持片54cとが段違いとなっているので、第1の載置板15に載置される配線束Pの両脇部分と第2の載置板16に載置される配線束Pの両脇部分とに十分なスペースを確保することが可能となり、配線束Pを分岐する際に保持部材54,54の間に配線の分岐部分Paを通すことで、分岐ルートが他の配線束Pに遮られることを防止できる。また、保持部材54が所定の間隔で配置されることで、保持部材54,54の間から配線束Pを容易に視認することができ、配線の検査や拡張といった作業の作業性が確保される。
【0044】
さらに、この構成では、第2の保持片54cよりも下段で鉄道車両構体1の内側を向く第4の保持片54dを更に有し、第4の保持片54dに固定される第4の載置板55が第2の載置板16の真下に位置している。これにより、配線束Pを更に配置した場合であっても、配線の煩雑さを回避できる。また、第4の載置板55に載置される配線束Pを電子機器に近づけて配線できる。
【0045】
[第6実施形態]
図9は、配線保持構造の第6実施形態を示す要部拡大断面図である。同図に示すように、第6実施形態に係る配線保持構造61は、保持部材64の構成が第1実施形態と更に異なっている。すなわち、この保持部材64では、第1の保持片64bと同一段に第5の保持片64dが更に設けられている。第5の保持片64dは、本体片64aの上端部分から鉄道車両構体1の外側に向かって垂木4aに当たらない範囲で略水平に延びている。そして、第5の保持片64dに固定される第5の載置板65は、第2の載置板16よりも鉄道車両構体1の内側の位置で第5の保持片64dの先端部分に固定されている。
【0046】
このような構成においても、第1実施形態と同様に、第1の保持片64bと第2の保持片64cとが段違いとなっているので、第1の載置板15に載置される配線束Pの両脇部分と第2の載置板16に載置される配線束Pの両脇部分とに十分なスペースを確保することが可能となり、配線束Pを分岐する際に保持部材64,64の間に配線の分岐部分Paを通すことで、分岐ルートが他の配線束Pに遮られることを防止できる。また、保持部材64が所定の間隔で配置されることで、保持部材64,64の間から配線束Pを容易に視認することができ、配線の検査や拡張といった作業の作業性が確保される。
【0047】
また、この構成では、第1の保持片64bと同一段で鉄道車両構体1の外側を向く第5の保持片64dを更に有し、第5の保持片64dに固定される第5の載置板65が第2の載置板16よりも鉄道車両構体1の内側に位置している。これにより、配線束Pを更に配置した場合であっても、配線の煩雑さを回避できる。また、保持部材64と屋根構体4又は側構体3との間のスペースを有効利用できる。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、アダプタ12を屋根構体4に対して固定しているが、鉄道車両構体1の態様によっては、アダプタ12を側構体3に対して固定してもよい。また、上述した実施形態では、載置板から鉄道車両構体1の外側に向かって配線を分岐させると共に下方に引き出しているが、配線の分岐ルートは、電子機器の位置に応じて適宜設定可能である。例えば載置板から鉄道車両構体1の内側に向かって配線を分岐させてもよく、載置板の内側及び外側の双方に配線を分岐させてもよい。また、分岐後の配線は、下方に引き出すだけでなく、上方(天井側など)に向かって引き出してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…鉄道車両構体、3…側構体、4…屋根構体、12…アダプタ、13…吊溝、14,24,34,44,54,64…保持部材、14b…第1の保持片、14c…第2の保持片、15…第1の載置板、16…第2の載置板、44d…第3の保持片、45…第3の載置板、54d…第4の保持片、55…第4の載置板、64d…第5の保持片、65…第5の載置板、P…配線束。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に接続される配線を束ねた複数の配線束を保持する配線保持構造を備えた鉄道車両構体であって、
前記配線保持構造は、
前記鉄道車両構体の屋根構体又は側構体にアダプタを介して固定される吊溝と、
前記吊溝に沿って延在し、前記配線束が載置される載置板と、
前記吊溝に所定の間隔をもって固定され、前記載置板を保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、第1の載置板が固定される第1の保持片と、第2の載置板が固定される第2の保持片と、を有し、
前記第1の保持片と前記第2の保持片とは、前記鉄道車両構体の高さ方向に段違いとなっていることを特徴とする鉄道車両構体。
【請求項2】
前記第1の保持片が前記鉄道車両構体の内側を向く一方で、前記第2の保持片が前記鉄道車両構体の外側を向き、
前記第1の載置板と前記第2の載置板とが、前記吊溝の位置を挟んで両側に位置していることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両構体。
【請求項3】
前記第1の保持片及び前記第2の保持片のいずれもが前記鉄道車両構体の内側を向き、
前記第1の載置板が前記吊溝よりも前記鉄道車両構体の内側に位置し、前記第2の載置板が前記吊溝の真下に位置していることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両構体。
【請求項4】
前記第1の保持片及び前記第2の保持片のいずれもが前記鉄道車両構体の内側を向き、
前記第1の載置板及び前記第2の載置板のいずれもが前記吊溝の真下に位置していることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両構体。
【請求項5】
前記第2の保持片と同一段で前記鉄道車両構体の内側を向く第3の保持片を更に有し、
前記第3の保持片に固定される第3の載置板が前記吊溝の真下に位置していることを特徴とする請求項2記載の鉄道車両構体。
【請求項6】
前記第2の保持片よりも下段で前記鉄道車両構体の内側を向く第4の保持片を更に有し、
前記第4の保持片に固定される第4の載置板が前記第2の載置板の真下に位置していることを特徴とする請求項2記載の鉄道車両構体。
【請求項7】
前記第1の保持片と同一段で前記鉄道車両構体の外側を向く第5の保持片を更に有し、
前記第5の保持片に固定される第5の載置板が前記第2の載置板よりも前記鉄道車両構体の内側に位置していることを特徴とする請求項2記載の鉄道車両構体。
【請求項8】
前記第2の保持片が前記第1の保持片よりも下段となっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の鉄道車両構体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−71473(P2013−71473A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209644(P2011−209644)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(712004783)株式会社総合車両製作所 (40)