説明

鉄道車両構体

【課題】柱部材に配線を通す作業性の向上を図ることができる鉄道車両構体を提供する。
【解決手段】鉄道車両構体1は、骨部材12に沿って配置され、複数の側面部22a〜22cにより画成された中空部Sを有する閉断面構造の側柱22を備え、側柱22は、側面部22bの所定の位置に設けられ、中空部Sに連通する開口部30と、中空部S内に配置され、中空部を通る電線ELを開口部30に案内するように中空部Sを仕切るガイド部32とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両構体に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両構体では、一般的に、屋根構体に電線がまとめて通されている。例えば、特許文献1に記載の鉄道車両構体では、屋根構体に固定される配線受を備えており、配線受に保護部材を介して複数の電線が結束されて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−188951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばシートの下部に配置されるヒーターなどに電線などの配線を通す場合には、屋根構体側から側構体を通してシートまで電線を取り回す必要がある。この場合、配線は、側構体に配置された中空の柱部材内を通される。このとき、シートが固定される柱部材に配線を通すことになるが、シートが取り付けられる柱部材は、強度の観点から閉断面構造を有している場合が多い。そのため、柱部材に配線を通して取り出す作業に手間がかかるといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、柱部材に配線を通す作業性の向上を図ることができる鉄道車両構体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る鉄道車両構体は、外板の内側に骨部材を配置してなる側構体を備える鉄道車両構体であって、骨部材に配置され、複数の側面部により画成されると共に配線を通す中空部を有する柱部材を備え、柱部材は、一の側面部の所定の位置に設けられ、中空部に連通する開口部と、中空部内に配置され、中空部を通る配線を開口部に案内するように中空部を仕切るガイド部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この鉄道車両構体では、骨部材に柱部材が設けられており、柱部材は、中空部に連通する開口部と、中空部内に配置され、中空部を通る配線を開口部に案内するように中空部を仕切るガイド部とを備えている。そのため、柱部材の中空部に配線を通したときに、開口部が形成された位置において配線がガイド部により開口部側に案内される。したがって、中空部内に通された配線を開口部から容易に取り出すことができる。その結果、柱部材に配線を通す作業性の向上を図ることができる。
【0008】
柱部材は、当該鉄道車両の高さ方向に沿って延在すると共に、断面が略矩形形状を呈しており、ガイド部は、開口部の下端に向かって下方に傾斜する傾斜面を有していることが好ましい。このような構成によれば、屋根構体側から例えばシートまで配線を通すときに、柱部材の上方から通した配線が傾斜面に沿って開口部まで案内される。したがって、開口部から配線を容易に取り出すことができる。
【0009】
柱部材は、閉断面構造であることが好ましい。柱部材にはシートが固定されることがあり、この場合、所定の強度が必要となる。そこで、柱部材を閉断面構造とすることにより、強度を確保できる。また、柱部材が閉断面構造である場合には、上記の構成が特に有効である。
【0010】
柱部材は、側構体に設けられた窓枠を挟んで配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柱部材に配線を通す作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る鉄道車両構体を示す斜視図である。
【図2】側構体を鉄道車両構体の内側から示した図である。
【図3】図2におけるIII-III線断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV線断面図である。
【図5】図2におけるV−V線断面図である。
【図6】図2におけるVI−VI線断面図である。
【図7】図6におけるVII-VII線断面図である。
【図8】側柱を鉄道車両構体の前後方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る鉄道車両構体を示す斜視図である。図1に示すように、鉄道車両構体1は、床構体2と、側構体3と、屋根構体4と、妻構体5とを備え、これらの各構体が相互に接合されることにより、乗客を収容する空間を内部に有する箱型形状をなしている。
【0015】
床構体2は、車両の床部を構成する構体として鉄道車両構体1の底部に配置されている。側構体3及び妻構体5は、車両の側部を構成する構体として、床構体2の左右の縁部及び前後の縁部を囲むように立設されている。側構体3には、乗客・乗員が乗り降りするためのドア部6が等間隔に複数(例えば3ヶ所)設けられている。
【0016】
また、ドア部6,6間と側構体3の両端部とには、窓部7が設けられている。妻構体5は、乗客・乗員らが車両間を行き来するための出入口部8が設けられている。屋根構体4は、車両の屋根部を構成する構体として鉄道車両の構体の上部に空間に蓋をするように配置されている。車両の屋根構体4には、上部に車内の温度を調整するためのエアコンディショナーやパンタグラフ(図示しない)などを備えている。
【0017】
続いて、側構体3について、図2〜図4を参照しながら説明する。図2は、側構体を鉄道車両構体の内側から示した図である。図3は、図2におけるIII−III線断面図である。図4は、図2におけるIV−IV線断面図である。
【0018】
図2に示すように、側構体3は、外板パネル10の内側に複数の骨部材12が配置されて構成されている。骨部材12は、図6に示すように、頂部14及び頂部14の幅方向の端部から起立するウェブ部15a,15bとからなる断面コの字状のチャネル部16と、ウェブ部15a,15bの先端から外側に張り出すフランジ部17a,17bとを有するハット型部材である。
【0019】
側構体3には、鉄道車両構体1の長手方向に沿ってシート18が配設されている。シート18は、例えば7人掛けのシートであり、車両の幅方向の中央(通路側)を向くようにドア部6,6の間に取付けられている。このシート18は、背もたれ部18aが側壁面に固定された、いわゆる片持ち式のシートである。シート18の詳細な固定方法については後述する。
【0020】
窓枠19(窓部7)を挟んで配置され、鉄道車両構体1の高さ方向に延在する骨部材12には、配線部材20と、側柱(柱部材)22とが設けられている。最初に、配線部材20について説明する。図5は、図2におけるV−V線断面図である。
【0021】
図5に示すように、配線部材20は、骨部材12に沿って配置されている。配線部材20は、骨部材12の車室側に配置されており、側構体3の上端側から窓枠19の下端まで延在している。配線部材20には、この配線部材20の延在方向に沿って凹部20aが設けられている。凹部20aは、車室側に向かって開口している。この凹部20aには、電線(配線)ELが配置される。具体的には、凹部20aには、タイマウントMが設けられており、凹部20aに配置された電線ELは、タイマウントMにて結束され、凹部20aに保持固定される。
【0022】
側柱22は、骨部材12に沿って配置されている。側柱22は、骨部材12の車室側に配置されていると共に、窓枠19の下端部の高さ位置から側構体3の下端側まで延在する中空の柱部材であり、長手方向の両端部が開口している。側柱22は、複数(ここでは3面)の側面部22a,22b,22cにより構成されており、断面が略矩形形状を呈している。側面部22a,22bは、骨部材12のウェブ部15a,15bに沿ってそれぞれ延在し、互いに対向している。側面部22cは、一対の側面部22a,22bを連結すると共に、骨部材12の頂部14に対向して設けられている。これにより、側柱22は、側面部22a〜22c及び骨部材12の頂部14により中空部Sが画成されており、閉断面が形成されている。
【0023】
この側柱22には、上記のシート18が固定されている。シート18は、背もたれ部18aが側壁面(図示しない)を介してボルト等によって側柱22の側面部22cに固定されて支持されている。シート18の下部には、図3及び図4に示すように、ヒーター(電気暖房器)25が設置されている。
【0024】
続いて、側柱22について、図6〜図8を参照しながら詳細に説明する。図6は、図2におけるVI−VI線断面図である。図7は、図6におけるVII−VII線断面図である。図8は、側柱を鉄道車両構体の前後方向から見た図である。
【0025】
各図に示すように、側柱22は、開口部30と、ガイド部32とを有している。開口部30は、側柱22の側面部22bにおいて、所定の高さ位置に配置されている。具体的には、開口部30は、図4に示すように、例えばヒーター25の電線ELに接続されるコネクタCの近傍の高さ位置に配置される。開口部30は、楕円形状を呈しており、中空部Sに連通している。開口部30には、電線ELの外被に傷が付くことなどを防止するために、この開口部30の端面に沿ってゴム(図示しない)が設けられている。
【0026】
ガイド部32は、中空部Sを通る電線ELを開口部30に案内する部分である。ガイド部32は、開口部30に向かって中空部Sが連続的に狭くなるように中空部Sを仕切っている。図7に示すように、ガイド部32は、ガイド部材32aと、このガイド部材32aと一体に形成された固定部材32b,32cとにより構成されている。ガイド部材32aは、板部材であり、電線ELをガイドするガイド面(傾斜面)を形成している。ガイド部材32aは、側面部22aと側面部22bとに亘って設けられており、側面部22bから開口部30が形成された側面部22aに向かって下方に傾斜している。
【0027】
固定部材32b,32cは、ガイド部材32aの両端部にそれぞれ設けられている。固定部材32b,32cは、側面部22a,22bにそれぞれ面接触しており、側面部22a,22bに固定されている。これにより、ガイド部32は、中空部S内に配置される。
【0028】
なお、ガイド部32は、図6に示すように、骨部材12の頂部14、及び側柱22の側面部22cとの間に隙間が形成されるように、中空部S内に配置されてもよいし、頂部14及び側面部22cと当接して中空部S内に設けられてもよい。
【0029】
続いて、上記の構成を有する鉄道車両構体1における電線ELの配線方法について説明する。以下の説明では、屋根構体4に配置された電線ELをシート18に設置されたヒーター25まで通す方法について説明する。
【0030】
まず、屋根構体4に配置された電線ELを側構体3の配線部材20の凹部20aに沿って配置する。このとき、凹部20aにおいてタイマウントMで電線ELをまとめて結束する。次に、側柱22の上端の開口から中空部Sに電線ELを挿通する。そして、側柱22に沿って電線ELを下方に押し入れる。そうすると、開口部30の位置において電線ELの先端がガイド部32に当接する。これにより、電線ELは、ガイド部32に案内されて開口部30側に方向が変えられ、開口部30から取り出される。このようにして、鉄道車両構体1では電線ELが配線される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態では、骨部材12に側柱22が設けられており、側柱22は、中空部Sに連通する開口部30と、中空部S内に配置され、中空部Sを通る電線ELを開口部30にガイドするように中空部Sを仕切るガイド部32とを備えている。ガイド部32は、側柱22の側面部22aと側面部22bとに亘って設けられ、側面部22aから側面部22b(開口部30側)に向かって下方に傾斜するガイド面を形成している。
【0032】
そのため、側柱22の中空部Sに電線ELを通したときに、開口部30が設けられた位置において、中空部S内に通された電線ELが開口部30側にガイド部32により案内される。したがって、開口部30から電線ELを容易に取り出すことができる。その結果、側柱22に電線ELを通す作業性の向上を図ることができる。
【0033】
また、側構体3において、シート18が固定される側柱22は、強度を確保するために閉断面構造を有している。そのため、上記のように、側柱22が開口部30及びガイド部32を備える構成を採用することが特に有効である。
【0034】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ガイド部32におけるガイド部材32aのガイド面を平坦面としているが、ガイド面は、湾曲形状などであってもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、側柱22を窓枠19を挟んで配置された骨部材12に設けているが、側柱22は他の位置に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…鉄道車両構体、3…側構体、10…外板パネル、12…骨部材、22…側柱(柱部材)、22a〜22c…側面部、19…窓枠、30…開口部、32…ガイド部、EL…電線(配線)、S…中空部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外板の内側に骨部材を配置してなる側構体を備える鉄道車両構体であって、
前記骨部材に配置され、複数の側面部により画成されると共に配線を通す中空部を有する柱部材を備え、
前記柱部材は、
一の前記側面部の所定の位置に設けられ、前記中空部に連通する開口部と、
前記中空部内に配置され、前記中空部を通る前記配線を前記開口部に案内するように前記中空部を仕切るガイド部とを備えていることを特徴とする鉄道車両構体。
【請求項2】
前記柱部材は、当該鉄道車両の高さ方向に沿って延在すると共に、断面が略矩形形状を呈しており、
前記ガイド部は、前記開口部の下端に向かって下方に傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両構体。
【請求項3】
前記柱部材は、閉断面構造であることを特徴とする請求項1又は2記載の鉄道車両構体。
【請求項4】
前記柱部材は、前記側構体に設けられた窓枠を挟んで配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の鉄道車両構体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−71557(P2013−71557A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211262(P2011−211262)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(712004783)株式会社総合車両製作所 (40)