説明

鉄道車両構体

【課題】側構体の剛性を確保しつつ取着される扉開閉装置を収容するスペースを確保できると共に、隠し樋構造にできる鉄道車両構体を提供すること。
【解決手段】側扉を開閉する扉開閉装置Mが取着される側構体20がダブルスキン構造の中空形材により形成されるので、側構体20の剛性を確保できる。また、側構体20の内板22の上端の第1節点22aから張り出した張出部31の先端31aに屋根構体10が連結されるので、張出部31の下側に扉開閉装置Mを配設するスペースを確保できる。また、張出部31より上側に位置する底部32は、屋根構体10の下端の第2節点11aと側構体20の外板21の上端の第3節点21aとの間に連結されると共に、第3節点21aに突設される堰部33は、先端33aが屋根構体10側を向いて側構体20の長手方向に沿って延設される。これにより底部32及び堰部33を隠し樋構造にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道車両構体に関し、特に、側構体の剛性を確保しつつ側構体に扉開閉装置を取着するスペースを確保できると共に、隠し樋構造にできる鉄道車両構体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄道車両の屋根構体と側構体との間に雨樋を設けた鉄道車両構体が知られている(特許文献1)。特許文献1に開示される技術では、雨樋は、プラットホーム上の乗客から視認できないように隠し樋(内樋)構造とされている。また、鉄道車両は側構体に側扉(側引戸)が配設されるので、側扉を自動で開閉する扉開閉装置が側構体の内側に取着される(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−143447号公報
【特許文献2】実開昭64−51563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術では、側構体に扉開閉装置が取着されると、屋根構体の下端部の位置に対して、扉開閉装置が、鉄道車両構体の幅方向の内側(客室側)に突出するという問題点があった。
【0005】
また、剛性の大きなダブルスキン構造の形材で側構体が形成されていても、扉開閉装置が取着されるスペースを確保するため、扉開閉装置が取着される側構体の上部側の一部を骨皮構造(柱や梁等の骨材が配設されたシングルスキン構造)にしなければならないことがある。この場合、側構体の構造が複雑化し製造工数が増加するという問題点があった。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、側構体の剛性を確保しつつ側構体に取着される扉開閉装置を収容するスペースを確保できると共に、隠し樋構造にできる鉄道車両構体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この目的を達成するために請求項1記載の鉄道車両構体によれば、側扉を開閉する扉開閉装置が少なくとも一方に取着される一対の側構体が、複数の隔壁で外板および内板が連結されるダブルスキン構造の中空形材により形成されるので、側構体の剛性を確保できる効果がある。
【0008】
また、側構体の内板の上端の第1節点に張出部が連結されると共に、その第1節点から他方の側構体側を向いて張出部が張り出し、側構体の長手方向に沿って屋根構体が先端に連結されるので、張出部の下側の側構体の内側を扉開閉装置の取着位置にすることができる。従って、側構体の一部を骨皮構造にすることなく、張出部の下側の側構体に扉開閉装置を取着するスペースを確保できる。その結果、屋根構体の下端部の位置に対して、扉開閉装置が、鉄道車両構体の幅方向の内側(客室側)に突出することを抑制できる効果がある。
【0009】
また、張出部より上側に位置する底部が、屋根構体の下端の第2節点と側構体の外板の上端の第3節点との間に連結される。側構体の長手方向に沿って延設される堰部が、底部が連結される第3節点に突設されると共に、堰部の先端が屋根構体側を向いて側構体の長手方向に沿って延設される。これにより、底部および堰部を隠し樋構造にできる効果がある。以上より、側構体の剛性を確保しつつ側構体に扉開閉装置を取着するスペースを確保できると共に、隠し樋構造にできる効果がある。
【0010】
請求項2記載の鉄道車両構体によれば、底部は、屋根構体の外板の下端の第2節点から、側構体の外板の上端の第3節点に向かって下降傾斜している。その第3節点に堰部が突設されているので、底部を第2節点から水平に設定した場合と比較して、堰部の上端の位置を変えずに堰部の下端(即ち第3節点)を下方に下げることができる。これにより、請求項1の効果に加え、底部を第2節点から水平に設定した場合と比較して、底部および堰部の有効断面積を大きくすることができ排水量を増加できる効果がある。
【0011】
ここで、底部を流れる雨水の流量が少ないと、底部にゴミや砂等が溜まり易く、底部および堰部の有効断面積が経時的に小さくなり排水量が減少する。これに対し、底部は第2節点から第3節点(即ち堰部の下端)に向かって下降傾斜しているので、屋根構体から底部に流れ込んだ雨水は、底部に沿って堰部の下端に向かって流れる。従って、底部を第2節点から水平に設定した場合と比較して、底部の第3節点側を流れる雨水の流量を多くできる。これにより、底部の第3節点側にゴミや砂等を溜まり難くすることができる。その結果、底部および堰部の有効断面積の経時的な減少を抑制することができ、請求項1の効果に加え、排水量が減少することを抑制できる効果がある。
【0012】
請求項3記載の鉄道車両構体によれば、張出部は、第1節点から張出部の先端に向かって上昇傾斜しているので、張出部を第1節点から水平に設定した場合と比較して、張出部の先端の位置を上方に上げることができる。これにより、請求項1又は2の効果に加え、張出部を第1節点から水平に設定した場合と比較して、張出部の下側であって側構体の内側に、扉開閉装置を取着する広いスペースを確保できる効果がある。
【0013】
請求項4記載の鉄道車両構体によれば、隔壁は、第3節点と第1節点との間、その第1節点と第2節点との間、その第2節点と張出部の先端との間にそれぞれ介設されている。底部および張出部は、これらの複数の隔壁を介して連結されているので、請求項1から3のいずれかに記載の効果に加え、底部および張出部の機械的強度を向上できる効果がある。
【0014】
請求項5記載の鉄道車両構体によれば、屋根構体は、外板および内板が複数の隔壁で連結されるダブルスキン構造の中空形材により形成されるので、屋根構体の剛性を大きくできる効果がある。また、隔壁は屋根構体の外板の所定部と屋根構体の内板の所定の第4節点との間、その第4節点と第2節点との間に介設されている。その結果、屋根構体の外板および内板を連結する隔壁と底部とが第2節点で接合されるので、請求項1から4のいずれかに記載の効果に加え、屋根構体と底部との接合強度を向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の第1実施の形態における鉄道車両構体の断面図であり、(b)は樋部の拡大断面図である。
【図2】(a)は一部を拡大して示した鉄道車両構体の拡大断面図であり、(b)は一部を拡大して示した第2実施の形態における鉄道車両構体の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の第1実施の形態における鉄道車両構体1について説明する。図1(a)は第1実施の形態における鉄道車両構体1の断面図であり、図1(b)は一部を拡大して示した鉄道車両構体1の拡大断面図である。なお、図1では、屋根構体10の一部の図示を省略すると共に、屋根構体10の両側に配設される一対の側構体20の内、一方の側構体20の図示を省略している。また、側構体20の下部の図示を省略している。
【0017】
図1(a)に示すように、鉄道車両構体1は、屋根構体10と、その屋根構体10の下部に配設される側構体20と、その側構体20と屋根構体10との間に形設される樋部30とを備えて構成されている。屋根構体10は、外板11及び内板12と、それら外板11及び内板12を連結する複数の隔壁13とを備えるダブルスキン構造の中空形材により構成され、鉄道車両構体1の長手方向(図1(a)紙面垂直方向)に延設されている。これにより屋根構体10の剛性を大きくでき、屋根構体10の変形を抑制できる。また、屋根構体10を骨皮構造とする場合と比較して、柱や梁等の骨材を客室側に設ける必要がないので、広い客室空間を確保できる。
【0018】
屋根構体10は、外板11及び内板12が平面状に形成された第1パネル14と、外板11及び内板12が外側に凸の曲面状に形成された第2パネル15とを備え、それら第1パネル14及び第2パネル15が長手方向に亘って摩擦撹拌接合により接合されている。なお、第2パネル15は、外板11及び内板12の下部が略鉛直方向に沿って位置するように第1パネル14に接合されている。
【0019】
側構体20は、外板21及び内板22と、それら外板21及び内板22を連結する複数の隔壁23とを備えるダブルスキン構造の中空形材により構成され、鉄道車両構体1の長手方向(図1(a)紙面垂直方向)に延設されている。これにより側構体20の剛性を大きくでき、側構体20の変形を抑制できる。また、側構体20を骨皮構造とする場合と比較して、柱や梁等の骨材を客室側に設ける必要がないので、広い客室空間を確保できる。
【0020】
側構体20は、側構体20の下部側を構成する平板状の第1パネル24と、側構体20の上部側を構成する平板状の第2パネル25とを備え、それら第1パネル24及び第2パネル25が長手方向に亘って摩擦撹拌接合により接合されている。第2パネル25の外板21の上端側は、長手方向に直交する断面において外側に凸の曲面状に形成されており、第2パネル25の内板22には、側構体20に配設される側扉(図示せず)を開閉するための扉開閉装置Mが取着される。
【0021】
樋部30は、屋根構体10の傾斜に沿って流れる雨水(屋根構体10に積もった雪が融けた融雪水を含む)を受けて鉄道車両構体1の長手方向(図1(a)紙面垂直方向)に導き、地上に流すための部位であり、屋根構体10と側構体20との間に形設されている。本実施の形態では、樋部30は第2パネル15,25と一体に形成されている。第2パネル15,25の各々を第1パネル14,24に接合することにより樋部30を備える屋根構体10及び側構体20を組み立てられるので、部品点数および作業工数を削減できると共に、溶接によって樋部30に歪が生じることを防止できる。
【0022】
次に図1(b)を参照して、樋部30近傍の構造について説明する。樋部30は、鉄道車両構体1の客室側(内側)に位置する張出部31と、その張出部31より上側に位置する底部32と、その底部32に突設される堰部33とを備えて構成されている。
【0023】
張出部31は、扉開閉装置Mを側構体20に取着するスペースを確保するための部材であり、側構体20の内板22の上端の第1節点22aに連結されると共に、その第1節点22aから他方の側構体20側(図1(b)左側)を向いて張り出し、側構体20の長手方向に沿って屋根構体10が先端31aに連結されている。
【0024】
本実施の形態では、屋根構体10がダブルスキン構造の中空形材により形成されているので、張出部31は、屋根構体10の内板12に先端31aが連結されている。また、張出部31は平面をなすように構成されている。
【0025】
鉄道車両構体1は張出部31を有しているので、張出部31の下側の側構体20の内側を扉開閉装置M(図1(a)参照)の取着位置にすることができる。従って、扉開閉装置Mを取着するために側構体20の一部を骨皮構造にすることなく、側構体20に扉開閉装置Mを取着するスペースを確保できる。その結果、屋根構体10の下端部(張出部31の先端31a)の位置に対して、扉開閉装置Mが、鉄道車両構体1の幅方向(図1(a)左右方向)の内側(客室側)に突出することを抑制できる。これにより、鉄道車両構体1の車体断面が小さい場合であっても、屋根構体10や側構体20の内側に無駄なスペースをなくし、側構体20の内側に広い客室空間を確保できる。
【0026】
また、張出部31の下側の側構体20の内側に窪み20aが凹設されている。窪み20aは、第2パネル25の内板22と外板21との間隔を狭めることで、側構体20に対する張出部31の張出量を相対的に大きくするための部位である。側構体20の内板22に窪み20aが凹設されることにより、窪み20aに取着された扉開閉装置Mの側構体20からの突出量を小さくすることができる。これにより、側構体20の内側にさらに広い客室空間を確保できる。
【0027】
張出部31は、第1節点22aから先端31aに向かって上昇傾斜している。これにより、張出部31を第1節点22aから水平に設定した場合と比較して、張出部31の先端31aの位置を上方に上げることができる。その結果、張出部31を第1節点22aから水平に設定した場合と比較して、張出部31の下側であって側構体20の内側に扉開閉装置Mを取着する広いスペースを確保できる。また、側構体20に取着された扉開閉装置Mと張出部31の下面31bとの間に隙間G(図1(a)参照)を確保できるので、この隙間Gに扉開閉装置Mの配線等を配設することができ、スペースを有効に活用できる。
【0028】
底部32は、雨水が流れる樋を構成するための部材である。底部32は、張出部31より上側に位置し、屋根構体10の下端と側構体20の外板21の上端の第3節点21aとの間に連結されており、側構体20の長手方向(図1(b)紙面垂直方向)に沿って延設されている。
【0029】
本実施の形態では、屋根構体10がダブルスキン構造の中空形材により形成されているので、底部32は、屋根構体10の外板11に第2節点11aにより連結される。また、底部32は平面をなすように構成されており、第2節点11aと節点11bとを連結する外板11及び第4節点12aと先端31aとを連結する内板12も平面をなすように構成されている。
【0030】
堰部33は、底部32に導かれた雨水が側構体20側に溢れないようにするための部材であり、底部32が連結される第3節点21aに突設されると共に、先端33aが屋根構体10側を向いて側構体20の長手方向に沿って延設されている。堰部33は、長手方向に直交する断面において外側に凸の曲面状に形成されており、外側に凸の曲面状に形成される第2パネル25の上端側の外板21と滑らかに連成されている。これにより、側構体20から堰部33に連なる鉄道車両構体1の外側面を美麗にできる。
【0031】
堰部33は、先端33aが屋根構体10側を向いて第3節点21aに突設されているので、プラットホーム上の乗客から、堰部33を雨樋として認識できないようにできる。これにより鉄道車両構体1のデザイン性を向上できる。特に、堰部33の外面(湾曲面)が円弧状の想像線f(図1(a)参照)の一部として構成され、その想像線fが屋根構体10の外形線と一致するように構成されているので、鉄道車両構体1の側方(側構体20側)から仰ぎ見ると、側構体20及び屋根構体10は継ぎ目のない湾曲面として認識できる。これにより鉄道車両構体1のデザイン性をさらに向上できる。
【0032】
底部32は、屋根構体10の外板11の下端の第2節点11aから、側構体20の外板21の上端の第3節点21aに向かって下降傾斜している。その第3節点21aに堰部33が突設されているので、底部32を第2節点11aから水平に設定した場合と比較して、堰部33の上端33aの位置を変えずに堰部33の下端(即ち第3節点21a)を下方に下げることができる。これにより、底部32を第2節点11aから水平に設定した場合と比較して、底部32及び堰部33(雨樋)の有効断面積を大きくすることができ排水量を増加できる。
【0033】
ここで、底部32を流れる雨水の流量が少ないと、底部32にゴミや砂等が溜まり易く、底部32及び堰部33(雨樋)の有効断面積が小さくなり樋部30の排水量が減少する。これに対し、底部32は第2節点11aから第3節点21a(即ち堰部33の下端)に向かって下降傾斜しているので、屋根構体10から底部32に流れ込んだ雨水は、底部32に沿って第2節点11aから堰部33の下端(第3節点21a)に向かって流れる。従って、底部32を第2節点11aから水平に設定した場合と比較して、底部32の第3節点21a側を流れる雨水の流量を多くできる。これにより、底部32の第3節点21a側にゴミや砂等を溜まり難くすることができる。流量を多くすることによりゴミや砂等が下流側に流されるからである。その結果、ゴミや砂等の堆積による底部32及び堰部33(雨樋)の有効断面積の減少を抑制することができ、樋部30の排水量が経時的に減少することを抑制できる。
【0034】
張出部31及び底部32は、複数の隔壁34,35,36により所定の間隔が保持され略平行に配置されている。具体的には、張出部31及び底部32は、第3節点21aと第1節点22aとの間に介設される隔壁34、第1節点22aと第2節点11aとの間に介設される隔壁35、第2節点11aと張出部31の先端31aとの間に介設される隔壁36により連結される。これにより、互いに略平行に配置される底部32及び張出部31の機械的強度を向上できる。
【0035】
また、張出部31及び底部32は、複数の隔壁34,35,36により略平行に配置されると共に、側構体20から屋根構体10に向けて上昇傾斜されている。これにより、張出部31及び底部32の間隔を狭くできるので、張出部31及び底部32を連結する隔壁34,35,36の短手方向(図1(b)上下方向)の長さを小さくできる。その結果、隔壁34,35,36の質量を小さくすることができ、鉄道車両構体1を軽量化できる。
【0036】
また、張出部31及び底部32が側構体20から屋根構体10に向けて上昇傾斜されているので、堰部33の高さを確保しつつ樋部30を隠し樋構造にすることができると共に、張出部31の下側の側構体20に扉開閉装置Mを取着するスペースを十分に確保できる。
【0037】
樋部30は、屋根構体10に対し、屋根構体10の外板11の下部側の節点11bと内板12の下部側の第4節点12aとの間に介設される隔壁13、第4節点12aと第2節点11aとの間に介設される隔壁37により接合されている。その結果、屋根構体10の外板11及び内板12を連結する隔壁37と底部32とが第2節点11aで接合されるので、屋根構体10と底部32との接合強度を向上できる。
【0038】
また、樋部30は、側構体20に対し、側構体20の外板21の上部側の節点21bと内板22の上部側の第1節点22aとの間に介設される隔壁23、第1節点22aと第3節点21aとの間に介設される隔壁34により接合されている。その結果、側構体20の外板21及び内板22を連結する隔壁23と張出部31とが第1節点22aで接合されるので、側構体20と張出部31との接合強度を向上できる。
【0039】
ここで、鉄道車両構体1を用いた鉄道車両が走行すると、車内圧と車外圧との差によって鉄道車両構体1に圧力荷重が加わる。そうすると樋部30に曲げモーメント(図1(b)紙面と平行方向)が加わる。底部32及び張出部31はそれぞれ平面をなすように構成されているので、樋部30に曲げモーメントが加わっても、底部32及び張出部31には面内力として負荷される。その結果、底部32及び張出部31には面外変形がほとんど生じず、樋部30の変形が抑制される。これにより樋部30に生じる応力を低減できる。
【0040】
また、第2節点11aと節点11bとを連結する外板11及び第4節点12aと先端31aとを連結する内板12も平面をなすように構成されているので、樋部30に曲げモーメントが加わっても、第2節点11aと節点11bとを連結する外板11及び第4節点12aと先端31aとを連結する内板12には面内力として負荷される。その結果、第2パネル15(図1(a)参照)には面外変形がほとんど生じず、第2パネル15の変形が抑制される。これにより第2パネル15に生じる応力を低減できる。
【0041】
また、第2パネル15の外板11は節点11b及び第2節点11aを最短距離で結び、第2パネル15の内板12は第4節点12a及び先端31aを最短距離で結んでいる。同様に、底部32は第2節点11a及び第3節点21aを最短距離で結び、張出部31は第1節点22a及び先端31aを最短距離で結んでいる。これにより、第2パネル15の外板11や内板12、底部32や張出部31を曲面状に形成する場合と比較して、鉄道車両構体1を軽量化できる。
【0042】
次に図2を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、底部32が第2節点11aから第3節点21aに向かって下降傾斜し、張出部31が第1節点22aから張出部31の先端31aに向かって上昇傾斜する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、底部132が第2節点11aから第3節点21aに向かって水平に設定され、張出部131が第1節点22aから張出部131の先端131aに向かって水平に設定される場合について、第1実施の形態と対比して説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0043】
図2(a)は一部(樋部30)を拡大して示した第1実施の形態における鉄道車両構体1の拡大断面図であり、図2(b)は一部(樋部130)を拡大して示した第2実施の形態における鉄道車両構体101の拡大断面図である。図2(b)に示すように、樋部130は、鉄道車両構体101の客室側(内側)に位置する張出部131と、その張出部131より上側に位置する底部132と、その底部132に突設される堰部133とを備えて構成されている。
【0044】
張出部131は、第1節点22aから先端131aに向かって水平に設定されている。この場合、第1節点22aから先端31a(図2(a)参照)に向かって張出部31が上昇傾斜される鉄道車両構体1と比較して、張出部131の下側のスペースSが小さくなるが、張出部131によって側構体20の内側に扉開閉装置Mを取着するスペースを確保できる。
【0045】
底部132は、屋根構体10の外板11の下端の第2節点11aから、側構体20の外板21の上端の第3節点21aに向かって水平に設定されている。この場合、堰部133の上端133aが堰部33(図2(a)参照)の上端33aと同じ高さに設定されるときは、第2節点11aから第3節点21aに向かって底部32(図2(a)参照)が下降傾斜される鉄道車両構体1の堰部33の高さH1と比較して、堰部133の高さH2は低くなる。しかし、堰部133が屋根構体10側を向いて突設されているので、鉄道車両構体101の樋部130を隠し樋構造にできる。
【0046】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。また、上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば屋根構体10及び側構体20に配置される隔壁13,23の数は適宜設定することが可能である。
【0047】
上記各実施の形態では、屋根構体10がダブルスキン構造の中空形材により構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、屋根構体10をシングルスキン構造とすることは当然可能である。この場合も、屋根構体10と側構体20との間に樋部30,130を設けることにより、上記各実施の形態と同様の効果を実現できる。
【0048】
上記各実施の形態では、底部32が第2節点11aから第3節点21aに下降傾斜する場合、底部132が第2節点11aから第3節点21aに水平に設定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、底部32,132を第2節点11aから第3節点21aに上昇傾斜するように構成することは当然可能である。この場合も、底部132を第2節点11aから第3節点21aに水平に設定した場合と比較して、底部32,132の第2節点11a側を流れる雨水の流量を多くでき、ゴミや砂等の堆積によって底部32,132及び堰部33,133(雨樋)の有効断面積が経時的に減少することを抑制できる。
【0049】
上記各実施の形態では、屋根構体10の第1パネル14及び第2パネル15、側構体20の第1パネル24及び第2パネル25を摩擦撹拌接合によって接合する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の接合方法を採用することは当然可能である。他の接合方法としては、例えば、MIG溶接、TIG溶接、プロジェクション溶接等が挙げられる。
【符号の説明】
【0050】
1,101 鉄道車両構体
10 屋根構体
11 外板
11a 第2節点
12 内板
12a 第4節点
13 隔壁
20 側構体
21 外板
21a 第3節点
22 内板
22a 第1節点
23 隔壁
31,131 張出部
31a,131a 先端
32,132 底部
33,133 堰部
M 扉開閉装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根構体と、
その屋根構体の両側に配設されると共に、外板および内板が複数の隔壁で連結されるダブルスキン構造の中空形材により形成され、側扉を開閉する扉開閉装置が少なくとも一方に取着される一対の側構体と、
その側構体の内板の上端の第1節点に連結されると共に、その第1節点から他方の側構体側を向いて張り出し、前記側構体の長手方向に沿って前記屋根構体が先端に連結される張出部と、
その張出部より上側に位置し、前記屋根構体の下端の第2節点と前記側構体の外板の上端の第3節点との間に連結されると共に、前記側構体の長手方向に沿って延設される底部と、
その底部が連結される前記第3節点に突設されると共に、先端が前記屋根構体側を向いて前記側構体の長手方向に沿って延設される堰部とを備えていることを特徴とする鉄道車両構体。
【請求項2】
前記底部は、前記第2節点から前記第3節点に向かって下降傾斜していることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両構体。
【請求項3】
前記張出部は、前記第1節点から前記張出部の先端に向かって上昇傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両構体。
【請求項4】
前記隔壁は、前記第3節点と前記第1節点との間、その第1節点と前記第2節点との間、その第2節点と前記張出部の先端との間にそれぞれ介設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鉄道車両構体。
【請求項5】
前記屋根構体は、外板および内板が複数の隔壁で連結されるダブルスキン構造の中空形材により形成されるものであり、
前記隔壁は、前記屋根構体の外板の所定部と前記屋根構体の内板の所定の第4節点との間、その第4節点と前記第2節点との間に介設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の鉄道車両構体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−82278(P2013−82278A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222631(P2011−222631)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)