説明

鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具

【課題】牽引枠と台車枠とが左右動しての横揺れ規制具の衝突による弾性、即ちバネ定数が、衝撃が強い程高くなる非線形特性を出せるようにすることにより、横揺れ規制機構の作動中における乗車感を改善させることが可能となる鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具を開発して提供する。
【解決手段】所定量以上圧縮される場合のバネ定数が、所定量未満で圧縮される場合のバネ定数よりも高くなるように、互いに形態の異なる複数の構成要素であるゴム部21と金具21Bとから構成されるとともに、鉄道車両に支持される牽引枠と台車枠との何れか一方に取付けられる受止め部材19との当接によって牽引枠と台車枠との左右の動きを規制可能となるように、牽引枠と前記台車枠との何れか他方に取付けられる横揺れ規制具18を鉄道車両用牽引装置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車体と台車とを車両進行方向で連動させるための牽引装置、即ち、鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばボルスタレス台車等のように、鉄道車両と台車との連結構造部に、鉄道車両の車体と台車、詳しくは鉄道車両に支持される牽引枠と台車枠とを進行方向において連動連結させる牽引装置を装備することがある。その場合、牽引枠と台車枠との左右方向の相対的な動きを規制する横揺れ規制機構も必要になる。
【0003】
横揺れ規制機構は、特許文献1や特許文献2において開示されたものが知られている。特許文献1のものは、その図3等から、牽引枠(8)から垂下された左右一対の金具(17)と、台車枠(9)から立設された左右一対の金具(16)とを、若干の左右間隙を隔てて対向配置して成る構造のものである。また、特許文献2において開示される横揺れ規制機構は、その図3等から、台車枠(16)に支持されるストッパゴム(46),(48)と、牽引枠(36)の左右側壁部分(符記なし)とを、若干の左右間隙を隔てて対向配置して成る構造のものである。
【0004】
前者の従来技術(特許文献1)による横揺れ規制機構では、金属部品どうしの当接構造のように見受けられるが、その構造では左右の動き規制が唐突にメタルタッチで行われるため、乗車感が芳しくなく当接ショックもあるため、最低限度の機能しか備えていないものと思われる。後者の従来技術(特許文献2)による横揺れ規制機構では、緩衝ゴム等によるストッパを介して台車枠と牽引枠とが当接するので、左右動による衝撃が緩和される利点を有している。
【0005】
しかしながら、従来のゴムストッパ、即ち横揺れ規制具はブロック状のものであるため、衝撃に対する減衰性能はゴム故に一定のものであってそれ以上の減衰性能の向上は望めない。そのため、ストッパゴムが牽引枠に衝突した際の衝撃を十分に緩和できるまでには至らず、乗心地も芳しいものではなかった。また、ストッパゴムのへたり(疲労性)も大きいものでもあり、鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具(ストッパゴム)としては改善の余地が残されているものであった。
【特許文献1】特開平9−301163号公報
【特許文献2】特開平10−250573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、牽引枠と台車枠とが左右動しての横揺れ規制具の衝突による弾性、即ちバネ定数が、衝撃が強い程高くなる非線形特性を出せるようにすることにより、横揺れ規制機構の作動中における乗車感を改善させることが可能となる鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具を開発して提供する点にある。また、へたりが少なく耐久性に優れる横揺れ規制具を実現させることも目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具において、所定量以上圧縮される場合のバネ定数K2が、前記所定量未満で圧縮される場合のバネ定数K1よりも高くなるように、互いに形態の異なる複数の構成要素21A,21Bから構成されるとともに、鉄道車両に支持される牽引枠9と台車枠6との何れか一方に取付けられる受止め部材19との当接によって前記牽引枠9と前記台車枠6との左右の動きを規制可能となるように、前記牽引枠9と前記台車枠6との何れか他方に取付けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具において、前記複数の構成要素21A,21Bが、前記他方に取付けられるゴム製の第1構成要素21Aと、前記他方から所定間隔離された状態で前記第1構成要素21Aに一体化される硬質材製の第2構成要素21Bとから構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具において、前記第2構成要素21Bが金属材によって形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載の鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具において、前記第2構成要素21Bと前記他方との間に介装されるクッション材25が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、弾性を有する横揺れ規制具の採用によって、横移動時における牽引枠と台車枠との当接ショックが緩和される。そして、互いに形態の異なる複数の構成要素から横揺れ規制具を構成してあるので、横揺れ規制具が受止め部材との当接によって所定量以上圧縮される場合のバネ定数が、所定量未満で圧縮される場合のバネ定数よりも高くなるように、即ち、圧縮量が増すほどバネ定数が大きくなる非線形特性を得ている。これにより、牽引枠と台車枠とが軽く当接する程度の軽微な横揺れにはソフトなバネ定数での弾性当接状態となり、強く当接する大なる横揺れにはハードなバネ定数で踏ん張ることができるので、横揺れ時の乗車感を大きく向上させることが可能になる。
【0012】
その結果、牽引枠と台車枠とが左右動しての横揺れ規制具の衝突による弾性、即ちバネ定数が、衝撃が強い程高くなる非線形特性を出せるようにすることにより、横揺れ規制機構の作動中における乗車感を改善させることが可能となる鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具を提供することができる。この場合、請求項2のように、ゴム製の第1構成要素と硬質材製の第2構成要素とで横揺れ規制具を構成すれば、廉価で作り易い合理的なものとしながら、しかも従来に比べてへたりも少ない状態で請求項1の発明による効果を奏することができる利点がある。
【0013】
請求項3の発明によれば、第2構成要素を金属材で形成してあることによって、非線形特性を極端なもの(急激に立ち上がる特性)とすることができるから、第1バネ定数に比べて相当に大なる第2バネ定数が要求される場合に好適な横揺れ規制具を提供することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて説明するが、横揺れ規制具による非線形特性を三段階以上、即ち、バネ定数の変局箇所を2箇所以上有するものとすることができる。これにより、多種多用な横揺れ規制要望に答えることが可能となる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明による鉄道車両用牽引装置及び横揺れ規制具の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は台車の平面図、図2〜図4は牽引装置部分の平面図、側面図、正面図、図5は牽引リンクの平面図、図6,7は緩衝ゴムの側面図と斜視図、図8,9は横揺れ規制具の平面図と側面図、図10は横揺れ規制具の弾性変形状況を示す作用図、図11は横揺れ規制具の荷重とたわみの関係グラフを示す図、図12は比較例の横揺れ規制具を示す平面図である。
【0016】
〔実施例1〕
図1に鉄道車両用台車の一例を示す概略の平面図が示されている。この台車Dは、左右一対の車輪1,1を有する車軸2の一対と、各車軸2,2を駆動回転させる電動機3,3と、歯車装置4,4と、左右一対の空気ばね5,5と、牽引装置A、ブレーキ装置7等を台車枠6に装備してなるボルスタレス台車に構成されている。台車枠6は、左右の支持枠部6B,6Bと、これら支持枠部6B,6Bを連結する前後一対の主支持枠6A,6Aと、主支持枠6A,6Aに跨って架設される左右一対の連結枠部6C,6C等を有して構成されている。なお、図1はZリンク式の牽引装置Aを示している。
【0017】
次に牽引装置Aについて、上述のZリンク式とは別の1本リンク式のもの(基本構成は同じ)として説明する。1本リンク型の牽引装置Aは、図2〜図4に示すように、鉄道車両Bである車体フレーム8に支持される牽引枠9と台車枠6の連結枠部6Cとに亘って架設される単一の牽引リンク10を設けて構成されている。牽引枠9は、車体フレーム8にボルト止めされるフランジ9Aと、牽引リンク10を跨ぐ二股下端部9a,9aとを有しており、車体フレーム8に垂設される状態の金属製部材に形成されている。
【0018】
牽引リンク10は、図3,図5に示すように、鋼管材で形成される牽引部材10Aと、牽引部材10Aの両端それぞれに溶着一体化される金属製の筒ボス10B,10Bとから構成されており、各筒ボス10B,10Bのそれぞれには緩衝ゴムGが内嵌装着されている。緩衝ゴムGは、筒ボス10Bに内嵌装着されるボス部11と、筒状ゴム部12と、支軸部13とを有して構成されている(図2〜図4参照)。支軸部13の両端部13a,13aは、牽引枠9に対しては二股下端部9a,9aにボルト止めされるとともに、台車枠6に対しては、一方の主支持枠6Aのみから突設されるステー6a,6aにボルト止めされる構成となっている。
【0019】
緩衝ゴムGについて詳述する。緩衝ゴムGは、図3及び図5〜図7に示すように、鉄道車両Bに支持される牽引枠9と台車枠6とに亘って架設連結される牽引リンク10の両端部に内嵌装備されるボス部11と、ボス部11に内嵌支持される筒状ゴム部12と、筒状ゴム部12の中心孔12aに貫通支承されるとともにその両端部13a,13aが牽引枠9及び台車枠6に取付けられる支軸部13と、を有して構成されている。支軸部13の各端部13aは、ボルト止め用の挿通孔13bが形成された断面形状が二面幅形(小判形)に形成されており、それらの間の部分は中心孔12aに嵌合される中央円柱部13cに形成されている。各端部13aの径寸法は、中央円柱部13cの径寸法よりも若干小さい値に設定されている。
【0020】
そして、筒状ゴム部12における車体進行方向(矢印イ方向)に対して直交(又はほぼ直交でも良い)する方向(矢印ホ方向)の引張り荷重及び圧縮荷重の作用する箇所のそれぞれ、即ち筒状ゴム部12の上端部及び下端部のそれぞれには、筒状ゴム部12の径方向に貫かれ、かつ、車体左右方向(矢印ロ方向)にも貫かれる状態の肉ぬすみ部14が設けられている。各肉ぬすみ部14の幅寸法(前後方向であって車体進行方向である矢印イ方向の平均幅)dは、例として、中央円柱部13cの径Rの約30%程度、又は、端部13aの二面幅寸法Dの約50%程度に設定されているが、当然ながらそれ以外の値であっても良い。
【0021】
また、筒状ゴム部12は、互いにゴム硬度(バネ定数)の異なる内ゴム層12Aと外ゴム層12Bとの二層から成っている。この場合、図示は省略するが、内外ゴム層12A,12Bの間に鋼板等の硬質板製の円筒仕切り部材を設けても良い。なお、この実施例1における緩衝ゴムGにおいては、車体進行方向(矢印イ方向)と、支軸部13におけるボルト挿通方向とは一致しており、各ボルト15にはせん断力は作用せず、軸力(引張り又は圧縮荷重)が作用するように設定される。
【0022】
車両Bが矢印ハ方向に進行する場合は、電動機3を駆動させて台車Dが車体を引張ることとなるので、牽引リンク10には文字通り牽引力(引張力)が作用し、車両Bが矢印ニ方向に進行する場合は、牽引リンク10に圧縮力(押圧力)が作用する。従って、いずれの進行方向でも、緩衝ゴムGは筒状ゴム部12における肉ぬすみ部14の存在しない部分でそれらの牽引荷重や圧縮荷重を受けるので、十分なゴム強度を持たせることが可能である。そして、走行振動や牽引ショック、減速ショック等の台車と車両とが相対的に上下移動して牽引リンク10がいずれかの端部を支点とした揺動移動するような場合には、緩衝ゴムGに捩り力(トーション)が作用する。この場合には、二箇所の肉ぬすみ部14,14の影響が出て筒状ゴム部12のバネ定数が柔らかい目となって、振動や各ショックが効果的に減衰されて車体に伝わるようになり、乗員に対してはソフトな乗り心地を提供できる利点がある。
【0023】
牽引枠9と台車枠6とは、車体左右方向に関しては、図4に示すように、振動等を減衰するためのダンパ16が牽引枠9の付け根部分と連結枠部6Cとに亘って架設されるとともに、連結枠6Cから突設されたアーム部材17の頂部に係止される横揺れ規制具18と、牽引枠9に形成された板金製の受け台19とが車体左右方向に近接配備されることにより、横揺れ規制機構Yが構成されている。この横揺れ規制機構Yにより、横揺れは左右のダンパ16,16によって減衰されるとともに、大きな横揺れ(横移動)に対しては、横揺れ規制具18と受け台19との当接によって対処される。
【0024】
さて、牽引枠9と台車枠6との左右の動きを規制する横揺れ規制機構Yは、図2,図4に示すように、台車枠6(牽引枠9と台車枠6との何れか一方)に取付けられる弾性を有する横揺れ規制具18と、横揺れ規制具18と当接可能な状態で牽引枠9(牽引枠9と台車枠6との何れか他方)に取付けられる受け台(受止め部材)19とを有して構成されており、横揺れ規制具18が、これが受け台19の側壁部19Aとの当接によって所定量以上圧縮される場合のバネ定数K2が、所定量未満で圧縮される場合のバネ定数K1よりも高くなるように、互いに形態の異なる複数の構成要素21A,21Bから構成されている。
【0025】
横揺れ規制具18は、図8,図9に示すように、金属板から成るベースプレート20と、ベースプレート20の表面に加硫接着等によって一体化されるストッパゴム21とから構成されている。ベースプレート20には、その頭部22aがストッパゴム21で隠される状態の取付けボルト22,22が一体装備されており、それら取付けボルト22,22が前後に並ぶ状態でアーム部材17の表面板17Aに螺着されている。
【0026】
ストッパゴム21は、その大部分を為すゴム部(第1構成要素の一例)21Aと、ゴム部21Aの前後上下の中心位置に一体的に配置される金具(第2構成要素の一例)21Bとで構成されている。ベースプレート20に一体化されるゴム部21Aの前後中央位置には、平面視でベースプレート側が長い台形を為して上下に貫通されて、ベースプレート20の内側面20aとで囲まれる状態の抜き孔23が形成されている。そして、その抜き孔23に短径側となる外側面24がほぼ臨む状態で、裁頭円錐台形状の金具21Bがゴム部21Aに埋設装備されている。これにより、金具21Bはベースプレート20から左右方向に距離H離れる状態に配置されている。
【0027】
取付けボルト22,22で螺着されているベースプレート20は、機能的には台車枠6と同等の固定部材であることから、横揺れ規制具18は、台車枠6に取付けられるゴム部21A(ゴム製の第1構成要素)と、台車枠6から所定間隔H離された状態でゴム部21Aに一体化される金具21B(硬質材製の第2構成要素)とから構成されている、と言うことができる。
【0028】
つまり、鉄道車両に支持される牽引枠9と台車枠6とに亘って架設される牽引リンク10と、前記牽引枠9と前記台車枠6との左右の動きを規制する横揺れ規制機構Yとを有して成る鉄道車両用牽引装置であって、前記横揺れ規制機構Yが、前記牽引枠9と前記台車枠6との何れか一方に取付けられる弾性を有する横揺れ規制具18と、前記横揺れ規制具18と当接可能な状態で前記牽引枠9と前記台車枠6との何れか他方に取付けられる受止め部材19とを有して構成されており、前記横揺れ規制具18が、これが前記受止め部材19との当接によって所定量以上圧縮される場合のバネ定数K2が、前記所定量未満で圧縮される場合のバネ定数K1よりも高くなるように、互いに形態の異なる複数の構成要素21A,21Bを有して構成されている。
【0029】
次に、横揺れ規制機構Yの、特に横揺れ規制具18の作用を説明する。曲線通過等によって車体フレーム8と台車Dとが横移動し、牽引枠9と台車枠6とが図4に示す状態から横移動して行き、図10(a)に示すように、受け台19の側壁部19Aとストッパゴム21とが当接する状態になる。図10(a)の状態から尚も牽引枠9と台車枠6とが相対横移動すると、主に抜き孔23周囲のゴム部21Aが圧縮されての弾性力が生じるようになる。これは、図11に示すストッパゴム21のたわみ(撓み)と荷重との関係グラフのように、ほぼ比較的値の小さい第1バネ定数K1でもって凡そ線形な特性を示す。尚、図11のグラフの線形部分が正確な線形でない(僅かに非線形になっている)のは、ゴム部21の形状から来る非線形特性が出ていると考えられる。
【0030】
さらに牽引枠9と台車枠6とが相対横移動して、図10(b)のように、ベースプレート20の内側面20aに金具21Bが当接するような状況になると、金具21Bのリジッドな特性により、もはやそれ以上の相対横移動が生じないように牽制阻止される。即ち、牽引枠9と台車枠6とが抜き孔23の左右幅に相当する距離Hで相対横移動するまでは、横揺れ規制具18が弾性的に抗するが、距離H以上になると無限に大きい第2バネ定数K2でもって抗する状態がもたらされる(図11参照)。但し、金具21Bと抜き孔23との間にゴム薄膜部30が存在していると、図11に示すように、距離H離れたバネ定数の変化点の前後においてはなだらかに(穏やかに)変化する状態になる。これは、横揺れ規制具18を納入する相手先が、極端なバネ定数の増加を好む場合に有効な手段である。
【0031】
横揺れ規制具18の比較例として、図12に示すように、実施例1による横揺れ規制具18から金具21Bを省いて全ゴム構造のストッパゴム21を有するものを考える。この場合でも、牽引枠9と台車枠6との相対横移動によって抜き孔23が潰れるまでは、図11に示すように、第1バネ定数K1でもって弾性変形する。そして、距離H以上に弾性変形する場合には、抜き孔23の崩壊に伴う圧縮面積の増大により、第1バネ定数K1よりも大きい第3バネ定数K3でもって弾性変形する状態になる(図11の一点破線の部分を参照)。従って、弱い非線形特性を発揮する横揺れ規制具18には構成されているが、バネ定数の増大程度が足りない場合には、本発明品を採用することとなる。つまり、距離Hが、請求項で言う「所定量」、「所定間隔」に相当している。尚、第3バネ定数K3よりも第2バネ定数K2の方が大(K2>K3)である。
【0032】
〔別実施例〕
図8に仮想線で示すように、金具21Bの内側(牽引枠側)にもゴム薄膜部31を形成すれば、横移動時における側壁部19Aと金具21Bとの直接の当接、所謂メタルタッチが抑制又は防止できる利点が得られる。尚、内外のゴム薄膜部30,31は無くても良いし、何れか一方だけあっても良い。そして、金具21Bの形状は裁頭円錐台以外の形状でも良く、またその厚みをゴム部21Aの抜き孔23を除く部分の厚みよりも薄くして、三段階の非線形特性が出せる構成としても良い。さらに、ゴム部21の抜き孔23を省略した横揺れ規制具18でも良い。
【0033】
第1構成要素21Aを、ゴム部21Aに代えてエラストマーや繊維強化ゴム等の弾性を有するその他の材料で形成可能である。また、第2構成要素21Bを、金具21Bに代えて、合成樹脂材(プラスチック)や、ゴム部21Aより硬度の高い(硬い)ゴム、或いは、セラミック等の第1構成要素21Bよりも高い(大きい)バネ定数を有する材料から構成しても良い。構成要素は3つ以上あっても良い。請求項に言う「互いに形態の異なる」とは、互いにゴム硬度が違うこと、互いに材質がことなること、互いに形状や大きさが異なること等を総称した定義である。尚、金属材は無限大又はそれに近いバネ定数を持つ弾性材である、と言うことができる。
【0034】
図8に仮想線で示すように、第2構成要素である金具21Bとベースプレート20(台車枠6と同義であって「前記他方」に相当)との間に介装されるゴム等の弾性材か成るクッション材25を設ける構成でも良い。この構成とすれば、ゴム部21のみが弾性変形する最も小さいバネ定数の状態と、ゴム部21とクッション材25とが共に弾性変形する中間のバネ定数の状態と、クッション材25が圧壊する等によって第2構成要素(金具等)21Bが実質的にベースプレート20に当接しての最も大きいバネ定数の状態と、の三段階の非線形特性の横揺れ規制具18(即ち、横揺れ規制機構Y)が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】鉄道車両の台車の一例を示す平面図
【図2】図1の牽引装置部分の平面図
【図3】図2の牽引装置の側面図
【図4】図3の牽引装置の正面図
【図5】牽引リンクの構造を示す一部切欠きの平面図
【図6】牽引リンク用緩衝ゴムの側面図
【図7】図6の緩衝ゴムの斜視図
【図8】実施例1による横揺れ規制具の一部切欠きの平面図
【図9】図8の横揺れ規制具の側面図
【図10】横揺れ規制具の変形状態を示し、(a)は受け台との当接開始時の作用図、(b)は金具がベースプレートに当接した状態の作用図
【図11】実施例1及び比較例の横揺れ規制具夫々の荷重と撓みとの関係グラフ
【図12】比較例による横揺れ規制具の平面図
【符号の説明】
【0036】
6 台車枠
9 牽引枠
10 牽引リンク
18 横揺れ規制具
19 受止め部材
21A 第1構成要素
21B 第2構成要素
25 クッション材
K1 所定量未満で圧縮される場合のバネ定数
K2 所定量以上圧縮される場合のバネ定数
Y 横揺れ規制機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量以上圧縮される場合のバネ定数が、前記所定量未満で圧縮される場合のバネ定数よりも高くなるように、互いに形態の異なる複数の構成要素から構成されるとともに、鉄道車両に支持される牽引枠と台車枠との何れか一方に取付けられる受止め部材との当接によって前記牽引枠と前記台車枠との左右の動きを規制可能となるように、前記牽引枠と前記台車枠との何れか他方に取付けられている鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具。
【請求項2】
前記複数の構成要素が、前記他方に取付けられるゴム製の第1構成要素と、前記他方から所定間隔離された状態で前記第1構成要素に一体化される硬質材製の第2構成要素とから構成されている請求項1に記載の鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具。
【請求項3】
前記第2構成要素が金属材によって形成されている請求項2に記載の鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具。
【請求項4】
前記第2構成要素と前記他方との間に介装されるクッション材が設けられている請求項2又は3に記載の鉄道車両用牽引装置の横揺れ規制具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−51420(P2009−51420A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221465(P2007−221465)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】