説明

鉄道電気施設用の温度表示具

【課題】鉄道電気施設における接続用導電性金属部材を構成しているリード線の温度の異常上昇を簡単、迅速かつ正確に発見し、リード線の素線切れなどの障害を防止する。
【解決手段】長手方向途中で「く」字形に屈曲し、屈曲部を境として一方が取付部8、他方が表示部9となっている扁平なヒートパイプ製の本体6の前記表示部9の内側面に予め設定された温度で不可逆的に発色する示温シール11を貼付して温度表示具を構成し、ちょう架線、トロリ線、き電線同士あるいは相互間を電気的に接続せしめる各種接続用導電性金属部材あるいはこれらを構成しているリード線にこの温度表示具の前記取付部の裏面側を密着させて取り付けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鉄道電気施設用の温度表示具、詳しくは、鉄道電気施設におけるき電線、ちょう架線あるいはトロリ線に固定してこれら同士あるいは相互間を電気的に接続する各種接続用導電性金属部材やこれらを構成しているリード線に取付け、温度変化によってこれら接続用導電性金属部材やそれに接続されたリード線の異常を感知する検知具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道電気施設においては、き電線からトロリ線への負荷電流の中継を行う為やちょう架線とトロリ線とを均圧する為などにフィードイヤー、コネクタ、圧縮電線管など各種接続用導電性金属部材が用いられている。これらのうち、フィードイヤー12は図1に示す様に、トロリ線5をその左右から挟持して負荷電流を中継する接続用導電性金属部材であり、イヤー1とリード線3とから構成されており、このリード線接続部2に一端が固定されたリード線3によって、き電線4から供給される負荷電流をトロリ線5に中継する様になっている。そして、このフィードイヤー12は、図2に示すわたり線装置、図3に示すエアージョイント、図4に示すき電線分岐装置などにも用いられている。なお、図2、図3、図4中、14はちょう架線を示す。又、図2及び図3中、15は後記するコネクタ20のクランプ、図4中、18は同じく後記する圧縮金属管を示す。
【0003】
一方、コネクタ20は、ちょう架線14とトロリ線5とを均圧させる為に用いる接続用導電性金属部材であり、図5に示す様に、トロリ線5を左右から挟持するコネクタ金具17とちょう架線14を外周側から締め付けるクランプ15及びコネクタ金具17とクランプ15とを電気的に接続するリード線3とから構成されている。
【0004】
更に、圧縮電線管18は図4に示す様に、き電線4同士あるいはき電線4とき電分岐線16とを電気的に接続する為などに用いる接続用導電性金属部材であり、図6に示す様に、筒状を呈しており、き電線4やき電分岐線16に挿通せしめた後、かしめることにより、き電線4に圧着固定する様になっている。
【特許文献1】なし
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら接続用導電性金属部材は、電気容量が十分に大きく、接触抵抗が小さく、機械的振動に十分耐えることが必要であるが、常に振動や気温変化を伴う厳しい環境下で使用されるものであり、経年劣化による腐食や損傷、特にリード線接続箇所内部でのリード線の変状により接触抵抗増大による温度上昇を来たし、リード線の素線切れなどの障害が発生することがある。
【0006】
これらの障害は、通電時におけるリード線の温度の異常上昇と密接に関係するので、これら接続用導電性金属部材を構成しているリード線の通電時の温度を把握しておけば、これら障害を速やかに発見出来、適切な処置を取ることが可能となるが、これら固定用導電性金属部材は地上約4.5〜6.5メートルという比較的高い位置に設置されており、しかも鉄道電気施設において、莫大な数が存在しているので、迅速かつ正確に個々の接続用導電性金属部材を構成しているリード線3の温度の異常上昇を逐一発見することは実際上至難の技であった。
【0007】
本発明者は、鉄道電気施設におけるこれら接続用導電性金属部材を構成しているリード線の温度の異常上昇を簡単、迅速かつ正確に発見する方策を研究した結果、これを実現出来る温度表示具を開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
長手方向途中で「く」字形に屈曲し、屈曲部を境として一方が取付部、他方が表示部となっている扁平なヒートパイプ製の本体の前記表示部の内側面に予め設定された温度で不可逆的に発色する示温シールを貼付して温度表示具を構成し、ちょう架線、トロリ線、き電線同士あるいは相互間を電気的に接続せしめる各種接続用導電性金属部材あるいはこれを構成しているリード線にこの温度表示具の前記取付部の裏面側を密着させて取り付けるようにして上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本体の取付部をフィードイヤー、コネクタ、圧縮電線管などの接続用導電性金属部材そのものあるいはこれを構成しているリード線の上面に、その取付部の裏面側を密着させる様にして接合し、結束バンドや粘着テープなどの結束手段で固定し、使用に供する。こうすることにより、リード線が本体を構成しているヒートパイプのヒートシンクの役を果たし、リード線から発っせられる熱は本体に効率的に伝達される。この状態において発熱によりリード線が何らかの原因によって設定温度を超えると、表示部に貼付されている示温シールは設定温度超過の事実を感知して発色し、その事実を不可逆的に表示する。従って、鉄道事業において電気設備の保守点検を行う者は、これら接続用導電性金属部材やこれを構成しているリード線に固定された本体の表示部に貼付されている示温シールを見るだけでこれら接続用導電性金属部材及びこれを構成しているリード線の温度異常を簡単に知り、必要な措置を速やかに取ることが出来ることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ヒートパイプからなる本体に不可逆的示温シールを貼付して温度表示具を構成した点に最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0011】
図7はこの発明に係る鉄道施設用の温度表示具の実施例1の側面図、図8はその取付状況を示した拡大斜視図、図9は同じく設定温度超過の際の拡大斜視図である。
【0012】
図7、図8、図9中、6はこの表示具の本体であり、扁平なヒートパイプ製であり、長手方向途中で「く」字形に屈曲しており、屈曲部7を境として一方が取付部8,他方が表示部9となっている。そして、この本体6内は真空となっており、その内壁は毛細管構造をなし、少量の作動液が封入されている。なお、この内部構造はヒートパイプ一般のものと全く同じである。
【0013】
そして、この本体1の表示部9の内面側には予め設定された温度で発色することにより、設定温度超過の事実を不可逆的に表示する示温シール11が貼付されている。この示温シール11は、石油系ワックスや各種化学物質の熱による融解作用を利用してマスキングされている色紙などの識別体10を外部から視認出来る様にしたものであり、特開2001−83020や実開平6−87834などがこれに該当し、既に各種産業分野において広く利用されている。なお、この実施例においては、70℃において識別体10が赤く発色する様に設定された示温シール11を用いた。
【0014】
この実施例1は上記の通りの構成を有し、図7に示す様に、本体6の取付部8を接続用導電性金属部材、例えば、フィードイヤー12を構成しているリード線3の上面に、その取付部8の裏面側を密着させる様にして接合し、結束バンドや粘着テープなどの結束手段13で固定し、使用に供する。こうすることにより、リード線3が本体6を構成しているヒートパイプのヒートシンクの役を果たし、フィードイヤー12やこれを構成しているリード線3から発っせられる熱は本体6に効率的に伝達される。なお、上記説明は本体6をフィードイヤー12に固定した場合をその一例として行ったが、ちょう架線14とトロリ線5とを均圧させるコネクタ20、き電線4同士あるいはき電線4とき電分岐線16とを接続する圧縮電線管18やこれから延びるリード線3に本体6を取り付けても良いことはもちろんである。この状態においてリード線3が何らかの原因による発熱で設定温度(この実施例においては70℃)を超えると、表示部9に貼付されている示温シール11は設定温度超過の事実を感知して発色し、その事実を不可逆的に表示する。従って、鉄道電気事業において電気設備の保守点検を行う者は、フィードイヤー12、コネクタ20、圧縮電線管18などの接続用導電性金属部材あるいはこれを構成しているリード線3に固定された本体6の表示部9に貼付されている示温シール11を見るだけで、これら接続用導電性金属部材及びリード線3の温度異常を簡単に知り、必要な措置は速やかに取ることが出来る。従って、電気鉄道の保守点検要員は、点検用車両又は営業車先頭に乗りながら、連続的に点検作業を行うことも可能となり、作業スピードが飛躍的に向上する効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0015】
鉄道電気における電気施設を利用する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】フィードイヤーを用いてき電線とトロリ線とを電気的に接続した一例の側面図。
【図2】フィードイヤーを用いたわたり線装置の一例の斜視図。
【図3】フィードイヤーを用いたエアジョイントの一例の斜視図。
【図4】フィードイヤーを用いたき電線分岐装置の一例の斜視図。
【図5】コネクタを用いてちょう架線とトロリ線とを均圧させた状態の側面図。
【図6】圧縮電線管の一例の側面図。
【図7】この発明に係る鉄道施設用の温度表示具の実施例1の側面図。
【図8】同じく、その取付状況を示した拡大斜視図。
【図9】同じく、設定温度超過の際の状況を示した拡大斜視図。
【符号の説明】
【0017】
1 挟持部
2 リード線接続部
3 リード線
4 き電線
5 トロリ線
6 本体
7 屈曲部
8 取付部
9 表示部
10 識別体
11 示温シール
12 フィードイヤー
13 結束手段
14 ちょう架線
15 クランプ
16 き電分岐線
17 コネクタ金具
18 圧縮電線管
20 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向途中で「く」字形に屈曲し、屈曲部を境として一方が取付部、他方が表示部となっている扁平なヒートパイプ製の本体の前記表示部の内側面に予め設定された温度で不可逆的に発色する示温シールを貼付し、ちょう架線、トロリ線、き電線同士あるいは相互間を電気的に接続せしめる各種接続用導電性金属部材あるいはこれらを構成するリード線に前記取付部の裏面側を密着させて取り付けるようにしたことを特徴とする鉄道電気施設用の温度表示具。
【請求項2】
接続用導電性金属部材が、トロリ線を左右から挟持してき電線からの負荷電流を中継するフィードイヤーであることを特徴とする請求項1記載の鉄道電気施設用の温度表示具。
【請求項3】
接続用導電性金属部材が、トロリ線を左右から挟持してちょう架線とトロリ線とを均圧させるコネクタであることを特徴とする請求項1記載の鉄道電気施設用の温度表示具。
【請求項4】
接続用導電性金属部材が、き電線同士あるいはき電線とき電分岐線とを接続する圧縮電線管であることを特徴とする請求項1記載の鉄道電気施設用の温度表示具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−236582(P2009−236582A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81011(P2008−81011)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(591139781)アセイ工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】