説明

鉛管用フランジ形鋳鉄製排水管継手に耐火二層管を接続する方法

【課題】フランジ形排水用鋳鉄製管継手に鉛管で配管されていた排水管を、硬質塩化ビニル管の内管とこれの外周をセメントモルタル製の外管で被覆した耐火二層管に簡単に交換するための接続の方法を提供すること。
【解決手段】先細形の鉛管接続口を有するフランジ形排水用鋳鉄製管継手に、該先細形の鉛管接続口に適合する漏斗状に開いた接続口と該継手のフランジに連結される接合フランジおよび耐火二層管の内管が接合される接続口を有する合成樹脂製の筒型のアダプターフランジを取付け、該アダプターフランジに該内管を接続したのち該アダプターフランジの外周をセメントモルタル製の套管で覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてマンションその他の建造物の排水管として使用されている鉛管を耐火二層管へ更新するための接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛管は不燃性、耐蝕性、柔軟性、施工性、耐衝撃性、遮音性などのすぐれた性質を兼ねていることから、排水用の管材として多く使用されてきており、現在でも学校や施設の建物などで、便器に鉛管を接続し、これを天井を介して横引き配管したのち鋳鉄製で鉛管接続用のフランジを備えた排水管継手に接続したものが見られる。この排水管継手に接続される排水縦管としては、鋳鉄管が多く使用されている。
鉛管は老朽化して腐蝕することがあり、鉛管から階下の室に漏水したり、排水の悪臭等が漂うことがあるので、配管改修の工事が要望されるが、排水管継手の接続口は鍔返し加工された鉛管の端部と接続できるように先細形の構造になっているため(特許文献1参照)、そこに垂直な切り口端部を有する硬質ポリ塩化ビニル管や鉄管を接続することは非常に困難であった。また、硬質ポリ塩化ビニル管を使用すると、配管の耐火性が損なわれるので防火の観点からは好ましくない。
【0003】
これを図8について更に詳細に説明すると、符号1は上下の接続口に鉄製の排水縦管2が接続されたフランジ形鋳鉄製排水管継手を示す。この管継手1の側方には、横引きされた鉛管3を接続するための固定フランジ4と先細形の鉛管接続口5が設けられ、この鉛管接続口5には、鉛管端部に形成されたラッパ状の鍔返し部分6が当接され、鍔返し部分6は可動フランジ7により固定フランジ4との間にボルト8で締め付けられて固定される構成になっている。一方、耐火二層管は、硬質ポリ塩化ビニル製の内管の外周をセメントモルタル製の外管で覆った構成を有し、耐火性、耐蝕性も充分で円滑な排水を行える利点があるから、これを前記鉛管と交換すれば配管の耐蝕性も向上するが、耐火二層管の内管は、その端部が通常は垂直な切り口になっており、硬質ポリ塩化ビニル製であるからこれに鍔返しを加工形成して前記先細形の鉛管接続口5に適合させることは著しく困難である。また、鉛管3の代わりに鉄管を採用するとしても、同様の困難を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−161553号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フランジ形排水用鋳鉄製管継手に鉛管で配管されていたマンション等の建造物の排水管を、硬質塩化ビニル管の内管とこれの外周をセメントモルタル製の外管で被覆した耐火性と耐蝕性の良い耐火二層管に簡単に交換するための接続の方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記課題を解決するため、先細形に形成した鉛管接続口を有するフランジ形排水用鋳鉄製管継手に、該先細形の鉛管接続口に適合する漏斗状に開いた接続口と該継手のフランジに連結される接合フランジおよび耐火二層管の内管が接合される接続口を有する合成樹脂製の筒型のアダプターフランジを取付け、該アダプターフランジに該内管を接続したのち該アダプターフランジの外周をセメントモルタル製の套管で覆うようにした。
【0007】
上記鋳鉄製管継手の先細形の鉛管接続口とアダプターフランジの漏斗状に開いた接続口をゴムパッキンを介して接続することが好ましく、上記套管をその端部に設けた耐火性テープにより上記管継手に固定してもよい。また、上記套管の内面に、耐火二層管の外周面との隙間を閉塞するとともに耐火二層管の振動を吸収するクッション材を設け、さらに、上記套管を上記管継手のフランジ部分を覆う大径部分と耐火二層管部分を覆う小径部分とからなる異形管に形成し、その管端部に環状の熱膨張性目地材を一体に接合するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の接続方法によれば、上記フランジ形排水用鋳鉄製管継手に接続された鉛管を、フランジを緩めて鉛管接続口から取り外し、代わりに取り付けた合成樹脂製の筒型のアダプターフランジの接続口に耐火二層管の内管を接合したのちセメントモルタル製の套管で覆うようにしたので、特別な施工技術を必要とせずに簡単迅速に耐火性と耐蝕性の良い耐火二層管を既存の管継手に接続でき、アダプターフランジと套管を用意すればよいので比較的安価に鉛管を交換できる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の接続方法におけるアダプターフランジの取付け状態の切断側面図
【図2】本発明の接続方法における耐火二層管接続状態の切断側面図
【図3】本発明の接続方法における完了状態の切断側面図
【図4】アダプターフランジの右側面図
【図5】套管の製作方法を示す切断側面図
【図6】図5により得られた製品の一部切断側面図
【図7】套管の脱型状態の切断側面図
【図8】従来のフランジ形排水用鋳鉄製管継手の配管状態を示す切断側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図面に基づき説明すると、図1乃至図3において、符号1から8までのものは先に説明した従来例のものと同様である。本発明は、フランジ形鋳鉄製排水管継手1をそのまま利用し、その鉛管接続口5に接続されていた鉛管を取り外し、鉛管の代わりに、硬質ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂製の内管9とその外周を覆うセメントモルタル製の外管10とから成る耐火二層管11を接続する方法を提案するもので、鉛管接続口5に合成樹脂製の筒型のアダプターフランジ12を図1及び図2に見られるようにボルト8で取付け、図2及び図3に見られるように耐火二層管11の内管9を該アダプターフランジ12の内管の接続口13に差し込んで接着剤で接合し、該アダプターフランジ12の外周をセメントモルタル製の套管14で覆うようにした。26は鉛管接続口5とアダプターフランジ12との間に介在されるゴムパッキンである。
【0011】
該アダプターフランジ12は、概略筒状のもので、その一端側には前記先細形の鉛管接続口5に適合する漏斗状に開いた接続口15と該排水管継手1の固定フランジ4に連結される接合フランジ16を備え、他端側には内管の接続口13が形成される。この接合フランジ16には、図4に見られるように、固定フランジ4のボルト穴4aと対応したボルト穴16aが設けられ、これらの穴にボルト8を挿通して締め付けることで該排水管継手1と一体に接合される。
【0012】
セメントモルタル製の套管14は、該排水管継手1の固定フランジ4から耐火二層管11の外管10の外周までを覆う長さを有し、その内孔17は固定フランジ4の周囲を覆う大径部分17aと該外管10を覆う小径部分17bが連続した孔を有する異形管に形成した。そして套管14の両端面には熱膨張性目地部材18を取り付け、火災に遭遇したときに熱膨張して該套管14と固定フランジ4および套管14と外管10との隙間を閉鎖してその内部のアダプターフランジ12が火災熱による損傷を蒙らないようにした。小径部分17bの内面には、これと外管10周面との接触による騒音を防止するための耐熱性材料からなるクッション材19を設け、套管14を耐火性テープ20によりフランジ4に固定した。この套管14は、耐火二層管11を接続口15へ接続する前に、耐火二層管11に挿通した状態で用意される。
【0013】
この套管14は、図5及び図6に示したような合成樹脂製の継手などの異形管21を利用して金型成形すると比較的簡単に製作可能であり、該異形管21の両端部に環状の熱膨張性目地部材18を嵌着した状態で金型22に収め、金型22と異形管21との間に設けた隙間23にセメントモルタルを圧入し、そのモルタルが未硬化のうちに金型22を解体して図6に見られるようなモルタルで被覆された異形管21を取り出す。そしてこの異形管21を高温の養生室において養生すると、異形管21が熱で膨張するとともにモルタルの被覆も押し広げられ、この状態でモルタルの硬化が進行する。養生室から異形管21を取り出すと、周囲の温度の低下に伴って異形管21の膨張が解かれ、モルタルの被覆との間に僅かな隙間が生じるようになる。
この状態の異形管21を、図7に示したように円筒形の治具24に直立状態で載せ、プランジャー25で異形管21の後部を押すとモルタルの被覆から異形管21が脱形し、モルタル被覆からなる套管14が簡単に安価に得ることができる。
【0014】
以上のように、本発明の方法によれば、鉛管3を取り外した後、予め用意した合成樹脂製で漏斗状の接続口15を有するアダプターフランジ12をフランジ形排水用鋳鉄製管継手1の先細形の鉛管接続口5を有するフランジ形排水用鋳鉄製管継手1にボルト8で取付け、アダプターフランジ12の内管の接続口13に接着剤を塗布した耐火二層管11の内管9を挿入し、これらに套管14を被せ、耐火性テープ20で固定フランジ4に固定することで鉛管の代わりに耐火二層管11の接続が完了でき、腐蝕しやすい鉛管を耐火性と耐蝕性のある耐火二層管11への交換が特別の技能を要することなく行える。
【符号の説明】
【0015】
1 フランジ形鋳鉄製排水管継手、3 鉛管、4 固定フランジ、5 先細形の鉛管接続口、9 内管、10 外管、11 耐火二層管、12 アダプターフランジ、13 内管の接続口、14 套管、15 接続口、16 接合フランジ、17a 大径部分、17b 小径部分、18 熱膨張性目地部材、19 クッション材、20 耐火性テープ、21 異形管、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先細形の鉛管接続口を有するフランジ形排水用鋳鉄製管継手に、該先細形の鉛管接続口に適合する漏斗状に開いた接続口と該継手のフランジに連結される接合フランジおよび耐火二層管の内管が接合される接続口を有する合成樹脂製の筒型のアダプターフランジを取付け、該アダプターフランジに該内管を接続したのち該アダプターフランジの外周をセメントモルタル製の套管で覆うことを特徴とする鉛管用鋳鉄製排水管継手に耐火二層管を接続する方法。
【請求項2】
上記鋳鉄製排水管継手の先細形の鉛管接続口とアダプターフランジの漏斗状に開いた接続口をゴムパッキンを介して接続したことを特徴とする請求項1に記載の鉛管用鋳鉄製排水管継手に耐火二層管を接続する方法。
【請求項3】
上記套管をその端部に設けた耐火性テープにより上記管継手に固定したことを特徴とする請求項1に記載の鉛管用鋳鉄製排水管継手に耐火二層管を接続する方法。
【請求項4】
上記套管の内面に、耐火二層管の外周面との隙間を閉塞するとともに耐火二層管の振動を吸収するクッション材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の鉛管用鋳鉄製排水管継手に耐火二層管を接続する方法。
【請求項5】
上記套管を上記管継手のフランジ部分を覆う大径部分と耐火二層管部分を覆う小径部分とからなる異形管に形成し、その管端部に環状の熱膨張性目地材を一体に接合したことを特徴とする鉛管用鋳鉄製排水管継手に耐火二層管を接続する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−229725(P2012−229725A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97612(P2011−97612)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(595025224)フネンアクロス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】